(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118373
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】複数の回転翼を備える無人航空機による運搬方法
(51)【国際特許分類】
B64U 10/13 20230101AFI20240823BHJP
B64U 10/17 20230101ALI20240823BHJP
B66C 1/14 20060101ALI20240823BHJP
B64U 101/67 20230101ALN20240823BHJP
B64U 101/64 20230101ALN20240823BHJP
【FI】
B64U10/13
B64U10/17
B66C1/14 C
B64U101:67
B64U101:64
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024750
(22)【出願日】2023-02-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.試験の実施 試験日:令和4年7月21日、試験場所:鳥取県東伯郡北栄町由良宿由良川傍海岸 2.放送による公開 放送日:令和4年9月28日、放送社:鳥取中央有線放送株式会社、番組名「みつまちeyes」、タイトル「空飛ぶ海洋ごみ~北溟産業(有)環境ドローン開発の軌跡~」 3.ウェブサイトの掲載 掲載日:令和4年9月30日、ウェブサイトのアドレス〈https://www.youtube.com/watch?v=RJi8cynvpQ4〉「海岸漂着ごみドローン回収_北溟産業skyer」
(71)【出願人】
【識別番号】503377098
【氏名又は名称】北溟産業有限会社
(71)【出願人】
【識別番号】515102770
【氏名又は名称】ルーチェサーチ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】523061205
【氏名又は名称】株式会社skyer
(74)【代理人】
【識別番号】100118393
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 康裕
(72)【発明者】
【氏名】中川 優広
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 孝治
【テーマコード(参考)】
3F004
【Fターム(参考)】
3F004EA21
3F004LA05
3F004LB03
3F004LB04
(57)【要約】
【課題】 本発明は、複数の回転翼を備える無人航空機による運搬方法であって、無人航空機が運搬対象物を容易に装着し、安定して運搬する運搬方法を提供することを目的とする。
【解決手段】紐状部材2の先端側を運搬対象物4に装着する装着工程S6において、ホバリング状態のドローン1から紐状部材2が垂れ下がった状態となっており、垂れ下がった紐状部材2の先端側が、運搬対象物4が置かれた配置面Gにまで達していることを特徴とする運搬方法である。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人航空機無人航空機と、無人航空機に接続された紐状部材と、を用い、紐状部材の先端側に装着された運搬対象物を運搬する無人航空機による運搬方法であって、
紐状部材の先端側を運搬対象物に装着する工程において、
ホバリング状態の無人航空機から紐状部材が垂れ下がった状態となっており、
垂れ下がった紐状部材の先端側が、運搬対象物が置かれた配置面にまで達していることを特徴とする無人航空機による運搬方法。
【請求項2】
ホバリング状態の無人航空機は、運搬対象物の真上から離れて位置していることを特徴とする無人航空機による運搬方法。
【請求項3】
運搬対象物は、収容袋に収容された状態で置かれており、
紐状部材の先端側を収容袋に接続することにより、紐状部材が運搬対象物に装着されていることを特徴とする無人航空機による運搬方法。
【請求項4】
紐状部材は、無人航空機側がチェーン部材、運搬対象物に装着される先端側が紐部材、からなることを特徴とする無人航空機による運搬方法。
【請求項5】
紐状部材は、水平方向に自由回転可能な接続部材を介して無人航空機に直接接続されていることを特徴とする無人航空機による運搬方法。
【請求項6】
紐状部材の先端には、水平方向に自由回転可能な接続部を有する装着部材を介して運搬対象物に装着されていることを特徴とする無人航空機の運搬方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の回転翼を備える無人航空機による運搬方法であって、運搬対象物を無人航空機に接続された紐状部材に装着し、運搬する運搬方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の回転翼を備える無人航空機(以下、適宜単に「ドローン」と記す)を使った海岸ゴミの運搬方法が、非特許文献1の動画にも掲載されているように検証されている。具体的には、海岸で集めたゴミの近くにドローンを着陸させて、着陸後、ゴミを縛った紐をドローンに装着し、その後ドローンを離陸させて、目的の場所へゴミを運ぶ運搬方法となっている。
【0003】
しかしながら、海岸のような非整地では、そもそもドローンを着陸させる場所を確保することが難しい。これは、ドローンを着陸させるには、ある程度の広さや、ある程度平坦な場所が必要となるためである。そして、ゴミの運搬に用いるドローンになると、ある程度の重量を運搬するために大型のドローンを用いることになるが、大型のドローンになれば着陸場所も更に広くなり、波打ち際であったり、浸食が進んでいるような場所であったり、或いは岩場のような場所、傾斜面のような場所では、着陸場所を確保することがそもそも現実的には難しい。また、ドローンの着陸場所だけでなく、ドローンにゴミを接続する作業を行う作業者の安全を確保するための場所を確保することも難しくなる。また、砂地のような場所になると回転翼による所謂ダウンウォッシュによる砂の飛散を防止するために下に十分な大きさのシートを敷く等の対策も必要となってくる。
【0004】
そこで、ドローンの着陸場所の確保を不要とする運搬方法として、ドローンを着陸させるのではなく、ドローンを上空に静止させ、つまりドローンがホバリングした状態で、ドローンに接続された紐へゴミを取り付ける方法が考えられる。そして、このような運搬方法として、特許文献1のようなものが知られている。
【0005】
特許文献1のような運搬方法であれば、ドローンから伸びるワイヤにゴミを装着する作業工程において、ドローンの着陸場所を確保する必要がないため、大型のドローンを用いることも十分可能となる。
しかしながら、特許文献の運搬方法は、ホバリングしているドローンから伸びるワイヤは、地面から離れて空中に存在した状態となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】YouTube(登録商標)動画(OHK公式チャンネル 全国初!「ドローン」で海ごみ回収実証実験 海岸や離島など困難エリアでの搬出方法確立へ[岡山・倉敷市] 検索日:令和5年1月11日〈https://www.youtube.com/watch?v=AiCxqDBC_t0&t=33s〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このようにドローンに接続されたワイヤが、空中に存在していると、作業者がワイヤの先端を掴んだ際、瞬間的にドローンに大きな負荷が加わりドローンのバランスが崩れる危険がある。
【0009】
また、ワイヤやゴミを装着する作業中、ドローンがほぼゴミの上空に位置することになり、例えば、主ワイヤ(30)や補助ワイヤ(40)を作業者が掴んだ場合や、突然の突風のような場合に、ドローンのバランスが崩れて落下したような場合に、下で作業を行っている作業者が危険な状態となる。
【0010】
また、ドローンに接続されたワイヤは、空中に存在している間、ワイヤが回転し撚れが生じてしまうおそれもあり、撚れが生じると撚れの戻りによる回転が生じて運搬にも影響してしまう。
【0011】
そこで、本発明は、ドローンにより運搬対象物を運搬する場合に、ホバリング状態のドローンから垂れ下がた紐状部材の先端側を運搬対象物に装着する工程において、瞬間的に大きな負荷がドローンに加わることを防ぐことができるドローンによる運搬方法を提供することを目的とする。更には、ホバリング状態のドローンから垂れ下がた紐状部材の先端側を運搬対象物に装着する工程において、装着作業を行う作業者の安全を確保することができるドローンによる運搬方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の無人航空機による運搬方法は、無人航空機と、無人航空機に接続された紐状部材と、を用い、紐状部材の先端側に装着された運搬対象物を運搬する無人航空機による運搬方法であって、紐状部材の先端側を運搬対象物に装着する工程において、ホバリング状態の無人航空機から紐状部材が垂れ下がった状態となっており、垂れ下がった紐状部材の先端側が、運搬対象物が置かれた配置面にまで達していることを特徴とする。
【0013】
これにより、紐状部材が設置面にまで達しているので、紐状部材の長さに余裕があることから、作業者が紐状部材を掴んだ際等、瞬間的に大きな力が無人航空機に加わることを防ぐことができる。また、紐状部材が配置面に達しているので、その後の装着作業中での紐状部材の揺れや捩じれも防ぐことができる。
【0014】
また、本発明の無人航空機による運搬方法は、ホバリング状態の無人航空機は、運搬対象物の真上から離れて位置していることを特徴とする。
これにより、無人航空機が運搬対象物の真上から離れて位置しているため、万が一無人航空機が落下したような場合でも装着作業中の作業者の安全を確保することができる。
【0015】
また、本発明の無人航空機による運搬方法は、運搬対象物は、収容袋に収容された状態で置かれており、紐状部材の先端側を収容袋に接続することにより、紐状部材が運搬対象物に装着されていることを特徴とする。
【0016】
運搬対象物には海岸のゴミのように様々な形状のものあるため、そのまま運搬すると運搬中に無人航空機のバランスが崩れるおそれがあるが、収容袋に収容することによりゴミの状態が収容袋の形状に規制され、収容袋内で安定するため運搬中のバランスを取りやすくなる。
【0017】
また、本発明の無人航空機による運搬方法は、紐状部材は、無人航空機側がチェーン部材、運搬対象物に装着される先端側が紐部材、からなることを特徴とする。
【0018】
無人航空機にとっては軽量化が非常に重要なため、紐状部材としてもできるだけ軽量なものを使用したいため、金属製ワイヤよりも、できるだけ軽い超高強力・高弾性繊維のものを望ましいが、軽量な紐状部材のみになってしまうと、ダウンウォッシュにより垂れ下がっている紐状部材が巻き上げられて無人航空機の回転翼に絡まるおそれがある。そこで、チェーン部材と紐部材の組み合わせで軽量な紐部材の巻き上げを防ぐことができる。
【0019】
また、本発明の無人航空機による運搬方法は、紐状部材は、水平方向に自由回転可能な接続部材を介して無人航空機に直接接続されていることを特徴とする。
これにより、紐状部材の揺れや振動が接続部材の回転によって吸収することで、無人航空機への影響を抑えることができる。また、接続部材は水平方向だけでなく、更に垂直方向に回転可能としてもよい。また、紐状部材は、無人航空機にウインチを介して接続された構成ではなく、直接接続された構成となっていることから、ウインチに要する重量を削減でき、またウインチの動作による作業時間を削減することができる。
【0020】
また、本発明の無人航空機による運搬方法は、紐状部材の先端には、水平方向に自由回転可能な接続部を有する装着部材を介して運搬対象物に装着されていることを特徴とする。
【0021】
これにより、運搬対象物による揺れや振動が接続部の回転によって吸収されることで、紐状部材へ生じる揺れや振動を抑えることができる。その結果、無人航空機への影響が抑えられる。また、装着部材は水平方向だけでなく、更に垂直方向に回転可能としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係るドローンによる運搬方法を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るドローンの構成の一部を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る紐状部材を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る装着部材を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る運搬対象物を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る運搬工程を示すフロー図である。
【
図7】Aは、本発明の一実施形態に係る下降工程の途中を示す図であり、Bは下降工程の終了時を示す図である。
【
図8】Aは本発明の実施形態に係る退避工程を示す図であり、Bはホバリング工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施形態及び図面を参照にして本発明を実施するための形態を説明するが、以下に示す実施形態は、本発明をここに記載したものに限定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。なお、この明細書における説明のために用いられた各図面においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて表示しており、必ずしも実際の寸法に比例して表示されているものではない。
【0024】
[実施形態]
図1は、本実地形態のドローン1による運搬方法の一例を示す図である。本実施形態のドローン1による運搬方法は、具体的には、海岸に漂着したゴミを取り除くために、ドローン1を用いて運搬する際の運搬方法である。
図1は、ドローン1を用い、着陸することが難しい非整地である海岸において収集された海岸ゴミが収容された運搬対象物4を運搬する様子を示している。
【0025】
ドローン1は、複数の回転翼14を備え、遠隔操作される無人航空機のことである。ドローン1は、下側に接続部材11を備える本体中央部12と、本体中央部12の側面から水平方向に延びる封数の回転翼取付部13と、それぞれの回転翼取付部13の先端上下に取り付けられた回転翼14と、回転翼取付部13の途中から下方に延びる複数の足部15を備える。
【0026】
接続部材11には、
図1に示すように、紐状部材2が接続され、紐状部材2の先端側の装着部材3により運搬対象物4が装着されており、ドローン1による運搬が行われる。本体中央部12は、操作指令等の無線通信を行う送受部を含むコントローラと、回転翼14の駆動部等、各部に電力を供給するバッテリーを備える。
【0027】
なお、単に画像撮影を行うだけのドローンに比べ、本実施形態のような運搬作業に用いるドローン1は、重量物の運搬を行うことから電力の消費も激しくなるため、このバッテリーは大型で非常に重量があるだけでなく、複数のバッテリー(具体的には2個)を備えた構成となっている。そしてドローン1の飛行可能な時間は、安全性を考慮して10分程度であることから、運搬の各工程においてできるだけ効率よく行う必要がある。また、バッテリーの消費を抑える点で、ドローン1や紐状部材2等はできる限りの軽量化が望ましい。
【0028】
図2は、本体中央部12下側の接続部材11を示す拡大図である。接続部材11は、ドローン1の本体中央部12の下側の面に固定配置される。接続部材11は、ドローン1に固定される接続部111と、接続部111の吊り下げ軸に対して360度回転する水平回転部112と、水平回転部112に接続し吊り下げ方向に180度回転するU字状金具からなる垂直回転部113と、を備える。このような接続部材11としては、所謂回転アイボルトと呼ばれたりする金具を用いることができる。そして、この垂直回転部113には、紐状部材2の一端が固定される。
【0029】
図3は、接続部材11に接続される紐状部材2を示したものである。紐状部材2は
図1に示すようにその先端側に装着部材3を取り付けてドローン1による運搬に用いられる。紐状部材2は、異なる2つの部材を連結させて構成されており、具体的には、チェーン部材21と紐部材22とが連結されたものとなっている。そして、チェーン部材21がドローン1側であり、紐部材22が運搬対象物4側となっている。
【0030】
チェーン部材21は、例えば、金属製の環が連結された鎖からなる。そして、チェーン部材21の一方端が接続部材11に接続され、チェーン部材21の他方端は
図3にあるようなカラビナと呼ばれるような開閉部を有した取付金具23を介して紐部材22に接続されている。なお、取付金具23は必ずしも必要なものではなく、チェーン部材21と紐部材22を直接結びつけてもよく、また、他の形状の取付金具23を用いても構わない。
【0031】
紐部材22は、例えば、軽量で超高強力・高弾性繊維で構成される繊維製のロープである。また、ドローン1による運搬で使用される紐部材22は、ドローン1の移動時やホバリング時に動いてしまい撚れが生じやすくなり、撚れが生じるとその戻りにより回転が生じることになる。したがって、紐部材22は、撚れが生じ難いものが好ましく、撚りロープよりも編みロープが好ましく、本実施形態でも編みロープからなる紐部材22を用いている。また、紐部材22は、接続を容易に行えるようにするため、ロープ端に
図3に示すようなアイ加工を施している。
【0032】
このような紐状部材2は、チェーン部材21が紐部材22より短く、具体的には、チェーン部材21が3m、紐部材22が10mのものとなっている。そして、紐状部材2に紐部材22を使用することで軽量化が図れる。一方で、ドローン1の下方に垂れ下がって位置する紐状部材2は、ドローン1の回転翼14で生じるダウンウォッシュに曝されることになる。そして、紐状部材2を軽量な紐部材22のみで形成すると、このダウンウォッシュにより軽量な紐部材22が巻き上げられて、回転翼14に絡まるおそれがある。したがって、本実施形態のように、紐状部材2を、チェーン部材21と紐部材22で構成することにより、ダウンウォッシュによる回転翼14への絡まりを防止することができる。
なお、紐状部材2としてはこの他に金属製のワイヤーローブ等を用いることもできるが、上記のように本実施形態の紐状部材2が好ましい。
【0033】
図4は、紐状部材2の先端側に取り付けられた装着部材3を示したものである。装着部材3は
図1に示すように運搬対象物4を装着してドローン1による運搬に用いられる。装着部材3は、ラッチの付いたフック部31と、紐状部材2の先端側に接続される接続部32と、フック部31の環状部分と接続部32とにつなぐカラビナと呼ばれるような開閉部を有した取付金具33と、で構成されている。
【0034】
接続部32は、スイベルと呼ばれるような接続部品からなり、2つの接続点を互いに自由に回転できる。接続部32の一方は、紐部材22のアイ加工に接続され、他方は、取付金具33に接続される。
【0035】
このような構成の接続部32を有することで、フック部31は、吊り下げ状態において、水平方向に自由回転が可能となり、また、紐部材22の先端のアイ加工を支点にした振り子運動やフック部31の環状部分と取付金具33との接点を支点にした振り子運動による垂直方向への回転も可能となる。
【0036】
図5は、装着部材3に装着される運搬対象物4を示したものである。運搬対象物4は
図1に示すように装着部材3に装着されてドローン1による運搬に用いられる。本実施形態の運搬対象物4は、非特許文献1のように個々の海岸ゴミを直接運搬対象物とするのではなく、個々の海岸ゴミを収容袋41に収容し、収容袋41に収容されたものを運搬対象物4としてドローン1による運搬を行う。収容袋41に収容された運搬対象物4は、ドローン1では直接着陸することが困難な地表(配置面G)に置かれる。なお、収容袋41が置かれる配置面Gは、地表に限らず、波による濡れ防止の目的で低床な台を用いた配置面でも構わない。
【0037】
収容袋41は、具体的には、フレコンバックと呼ばれるフレキシブルコンテナバックを用いることができる。フレコンバックからなる収容袋41は、吊りベルト42を備え、この吊りベルト42を介して装着部材3のフック部31に装着されることになる。
【0038】
また、本実施形態においては、
図5に示すように吊りベルト42をフック部31に直接装着するのではなく、開閉可能な環状の紐状部材からなる装着具43を介して装着している。吊りベルト42をフック部31に直接装着しても構わないが、フレコンバックからなる収容袋41の吊りベルト42は、フック部31の大きさに対して大きなものとなることから、装着する際の作業に時間を要することがある。本実施形態のように装着具43を介して装着することで、吊りベルト42への紐通しとフック部31への装着を簡単に行うことができ、作業時間を節約することができる。
【0039】
また、本実施形態においては、先に記したように、非特許文献1のように個々の海岸ゴミを直接運搬対象物とするのではなく、個々の海岸ゴミを収容袋41に収容したものを運搬対象物4としている。当初、本発明の発明者も、非特許文献1のように海岸ゴミを個々に運搬対象物として運搬することを検討した。しかしながら、海岸のゴミの多くは、流木のような自然物もあるが、その多くが実際にはプラスチック製のものであり、更にはその大部分が発泡スチロールであることから、効率よく運搬する場合には、個々の海岸ゴミを直接運搬するよりも、収容袋41にまとめることで効率よく運搬でき、作業時間を節約することができることを見出した。更には、形状も様々な海岸ゴミを収容袋41に収容することで、運搬中のドローン1のバランスが安定しやすくなり、操作性や作業性が向上し、作業時間を節約することができる。なお、本実施形態においては、海岸ゴミを収容した収容袋41の重量としては15kg程度を想定している。
以上のような構成において、ドローン1による運搬対象物4の運搬が行われることになる。
【0040】
[運搬方法]
次に、図を用いて、本実施形態のドローン1による運搬方法の具体的な運搬工程を説明する。
図6は本実施形態の運搬工程を示したフロー図である。
最初にドローン1は離陸を行う(離陸工程S1)。ドローン1の離陸は、海岸近くの安全で平坦な場所のように離陸に適した場所から行えばよい。また、砂丘海岸のような場所であれば、砂の巻き上げを防いだり、着陸の際の目安となったりするシート状のものを敷いて行ってもよい。また、ドローン1で運搬した運搬対象物4は、最終的にトラックの荷台へ積んで運び出す必要があるため、離陸場所はトラックの乗り入れが容易な場所が好ましい。
【0041】
次に、離陸したドローン1は、目的地となる運搬対象物4の上空まで移動する(移動工程S2)。この移動工程S2は、
図1に示す図から移動対象物4を除いた状態のようにして移動する。つまり、ドローン1は、紐状部材2と、その先端に取り付けられた装着部材3とを垂れ下げた状態で移動を行う。本実施形態のドローン1は、本体中央部12の下側に、非特許文献1のようなウインチを取り付けていないため、このように紐状部材2等を垂れ下げた状態での移動となる。
【0042】
次に、運搬対象物4の上空に到達したドローン1は、
図7Aに示す状態から、
図7Bに示す状態となるまで下降する(下降工程S3)。紐状部材2を垂れ下げたドローン1が下降することにより、最初に紐状部材2の先端に取り付けられた装着部材3が配置面Gに達し、下降を続けることで、次に紐状部材2の紐部材22も徐々に先端側から配置面Gに達していく。そして、紐部材22が2~3m程度配置面Gに達した段階でドローン1の下降を止める。
【0043】
本実施形態の運搬方法においては、ドローン1に接続された紐状部材2の紐部材22の先端側が、配置面Gに達し、弛んだ状態となるまで、ドローン1の下降を行っている。したがって、紐状部材2の紐部材22の一部は配置面Gを這った様な状態となっているため、運搬対象物4の周囲で待機している作業者が、装着部材3を掴んで、収容袋41への装着を簡単に行うことができる。また、装着の際には、特許文献1と異なり、紐部材22の先端側が配置面Gに弛んだ状態で置かれていることから、装着部材3を持ち上げたりしても、瞬間的に大きな負荷がドローン1に加わることもなく、安全に作業を行うことができる。
【0044】
一方で、このようにドローン1が運搬対象物4の上空にある時に、運搬対象物4への装着を行うと、仮に突風等でドローン1のバランスが崩れ、ドローン1が落下すると、下で作業を行っている作業者に当たるおそれもある。
【0045】
そこで、本実施形態の運搬方法においては、下降工程S3により、ドローン1に接続された紐状部材2の紐部材22の先端側が配置面Gに達した後、更に
図8Aに示すように運搬対象物4の真上から離れるように移動することで、ドローン1の退避を行う(退避工程S4)。この退避工程S4の移動目安としては、運搬対象物4の斜め45度あたりに位置するまでドローン1を斜め方向に下降移動させる。
【0046】
そして、
図8Aに示すように移動目安の位置へ退避が完了すると、ドローン1はその場所でホバリング、つまり静止した状態を維持する(ホバリング工程S5)。
【0047】
このように、退避工程S4とホバリング工程S5を経て、ドローン1がホバリング状態となった後、運搬対象物4の周囲で待機している作業者は、装着部材3を掴んで、収容袋41への装着を行う(装着工程S6)
【0048】
この装着工程S6においては、
図8Aに示すように紐部材22の先端側の多くが配置面Gに弛んだ状態で置かれていることから、装着部材3を持ち上げたりしても、瞬間的に大きな負荷がドローン1に加わることもなく、安全に作業を行うことができる。また、ドローン1は運搬対象物4の真上にいないことから、仮にドローン1がバランスを崩して落下したとしても、作業者へ直撃するおそれも低く、より安全に作業を行うことができる。また、本発明者により様々な退避位置を検証し、本実施形態のように、運搬対象物4の斜め45度あたりを退避位置とすることで、安全性だけでなく作業者の作業性、ドローン1の操縦者の操作性が確保できることを見出した。
【0049】
そして、装着工程S6が完了すると、ドローン1は退避位置でのホバリング状態から
図8Bに示すように上昇を開始する(上昇工程S7)。この時、ドローン1は、運搬対象物4の上空へ向かって斜め方向に上昇していく。そして、運搬対象物4の真上へ達したら、ドローン1は、垂直方向に上昇していき、運搬対象物4が配置面Gから離れ、
図1に示した状態となる。
【0050】
そして、ドローン1は、
図1に示した状態を維持しながら、運搬対象物4を吊り下げて運搬する(運搬工程S8)。本実施形態のドローン1は、本体中央部12の下側に、特許文献1のようなウインチを取り付けていないため、このように運搬対象物4を吊り下げた状態での移動となる。
【0051】
そして、ドローン1は、運搬対象物4を目的とする位置まで運搬すると、運搬対象物4を目的位置へ着地させるために下降をする(運搬対象物着地工程S9)。ドローン1が下降し、運搬対象物4が着地すると、周囲で待機している別の作業者は、ドローン1と運搬対象物4との装着解除、つまり収容袋41から装着部材3を取り外す(脱着工程S10)。
【0052】
なお、運搬対象物着地工程S9における運搬対象物4の目的位置は、トラックの荷台の上や、トラックの横とすればよい。トラックの横であれば、トラックに備わったクレーンを用いる等して、運搬対象物4を別途トラックの荷台上に積めばよい。
【0053】
そして、ドローン1と運搬対象物4との装着解除が完了すると、ドローン1を着陸させる(着陸工程S11)。ドローン1の着陸により本実施形態のドローン1による運搬方法は完了する。また、着陸工程S10におけるドローン1の着陸場所は、S1の離陸工程での離陸場所と同じにしておくとよい。
【0054】
なお、運搬対象物着地工程S9において運搬対象物4を目的位置へ着地させた状態では、まだ運搬対象物4の上にドローン1が位置していることから、この段階で装着の解除作業を行うことは作業者にとって危険な場合もある。また、解除作業中にドローン1がホバリング状態となるため、バッテリーを消費してしまうことになる。そこで、脱着工程S10と着陸工程S11の順番を逆にして、運搬対象物4を目的位置へ着地させた後、そのままドローン1をその近くに着陸させて、ドローン1と運搬対象物4との装着解除を行ってもよい。このような工程で行えば、ドローン1を着陸させて安全な状態となってから、作業者は脱着工程を行うことができる。また、本実施形態のドローン1は、ある程度長さを有する紐状部材2となっているため、運搬対象物4の着地場所と、ドローン1の着陸場所とが紐状部材2で届く範囲に設定することができる。
【0055】
このように、本実施形態のドローン1による運搬方法は、ドローン1と、このドローン1に接続された紐状部材2と、を用い、紐状部材2の先端側に装着された運搬対象物4を運搬する運搬方法であり、紐状部材2の先端側の装着部材3を運搬対象物4に装着する装着工程S6において、その前に下降工程S3を経ていることから、ホバリング状態のドローン1から紐状部材2が垂れ下がった状態となっており、垂れ下がった紐状部材2の先端側が、運搬対象物4が置かれた配置面Gにまで達している。
【0056】
したがって、紐状部材2の一部は配置面Gを這った様な状態となっているため、運搬対象物4の周囲で待機している作業者が、装着部材3を掴んで、収容袋41への装着を簡単に行うことができる。また、装着部材3を持ち上げたりしても、瞬間的に大きな負荷がドローン1に加わることもなく、安全に作業を行うことができる。
【0057】
更には、ホバリング工程S5におけるホバリング状態のドローン1は、その前に退避工程S4を経ていることから、運搬対象物4の真上から離れて静止している。したがって、ドローン1は運搬対象物4の真上にいないことから、仮にドローン1がバランスを崩して落下したとしても、作業者へ直撃するおそれも低く、より安全に作業を行うことができる。
【0058】
また、本実施形態においては、特許文献1と異なり、ドローン1の本体中央部12の下側に、紐状部材2を巻き取るためのウインチを備えた構成とはなっていない。つまり、ドローン1の下側に紐状部材2が直接接続されている構成となっている。したがって、ウインチのような重量物を必要としないことから、ドローン1の軽量化を実現することができ、バッテリーの消費を抑えることができる。また、ウインチを備えていないことから、ウインチによる紐状部材2の引き出し動作や巻き上げ動作に要する時間を節約することができる。そのため、各工程においてウインチの動作が必要とする時間を節約でき、作業を効率よく行うことができる。
【0059】
一方で、本実施形態においては、上記のようにウインチを備えた構成となっていないことから、紐状部材2がドローン1から常に垂れ下がった状態となっている。従って、移動工程S2、下降工程S3,運搬工程S8等においては、垂れ下がった状態の紐状部材2に、風やダウンウォッシュによる振り子運動等が生じ、その揺れによりドローン1がバランスを崩すおそれもある。そのため、ドローン1と紐状部材2との接続に接続部材11を用いることで、接続部材11の水平回転や垂直回転により、紐状部材2からの揺れを吸収することで、ドローン1への影響を抑えている。
【0060】
また、運搬工程S8においては、紐状部材2の先端側に装着されている運搬対象物4も風等の影響を受け、その揺れが紐状部材2に更に加わるおそれもある。そのため、紐状部材2と運搬対象物4との装着に装着部材3を用いることで、装着部材3の水平回転や垂直回転により、運搬対象物4からの揺れを吸収することで、ドローン1への影響を抑えている。
【0061】
なお、本実施形態のドローン1による運搬方法は、海岸に漂着したゴミの運搬に適用した例であったが、必ずしも海岸ゴミの運搬への適用のみに限ったものではない。例えば、山や崖のような急斜面においても、ドローン1の着陸場所の確保は難しいことから、このような場所での廃棄物や収穫物等の運搬に適用することもできる。
【符号の説明】
【0062】
1:ドローン
11:接続部材
111:接続部
112:水平回転部
113:垂直回転部
12:本体中央部
13:回転翼取付部
14:回転翼
2:紐状部材
21:チェーン部材
22:紐部材
3:装着部材
31:フック部
32:接続部
4:運搬対象物
41:収容袋
42:吊りベルト