(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118379
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】工具
(51)【国際特許分類】
B23F 21/16 20060101AFI20240823BHJP
B23C 5/28 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
B23F21/16
B23C5/28
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033766
(22)【出願日】2023-03-06
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2023024225
(32)【優先日】2023-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松 修治
【テーマコード(参考)】
3C025
【Fターム(参考)】
3C025FF00
(57)【要約】
【課題】ねじ形状をなす歯が備わった工具によるワーク加工において、ワークの加工部分の周辺から効率的に切屑を取り除くことが可能な工具、を提供する。
【解決手段】工具は、外周面26に開口を有する複数の第1孔36を有する第1シャフト21Aと、ねじ形状をなす歯43と、複数の第1孔36を通過する流体を歯43に向けて吐出可能な複数の第2孔41とを有し、第1シャフト21Aに嵌められる歯部40とを備える。工具は、第1シャフト21Aと異なる第2シャフト21Bに歯部40を嵌めて用いることが可能である。第1シャフト21Aには、第1シャフト21Aの軸方向の第1領域110に複数の第1孔36が設けられる。第1領域110は、外周面26に開口を有する複数の第1孔36が設けられている第2シャフト21Bの軸方向の第2領域120と異なる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具であって、
外周面に開口を有する複数の第1孔を有する第1シャフトと、
ねじ形状をなす歯と、前記複数の第1孔を通過する流体を前記歯に向けて吐出可能な複数の第2孔とを有し、前記第1シャフトに嵌められる歯部とを備え、
前記工具は、前記第1シャフトと異なる第2シャフトに前記歯部を嵌めて工具として用いることが可能であり、
前記第1シャフトには、前記第1シャフトの軸方向の第1領域に前記複数の第1孔が設けられ、
前記第1領域は、外周面に開口を有する前記複数の第1孔が設けられている前記第2シャフトの軸方向の第2領域と異なる、工具。
【請求項2】
前記複数の第2孔は、前記歯部の内周面に開口を有し、
前記第1シャフトの外周面における前記複数の第1孔の各開口面積と、前記歯部の内周面における前記複数の第2孔の各開口面積とが、互いに異なる、請求項1に記載の工具。
【請求項3】
前記歯部の内周面における前記複数の第2孔の各開口面積は、前記第1シャフトの外周面における前記複数の第1孔の各開口面積よりも小さい、請求項2に記載の工具。
【請求項4】
前記第2孔は、前記第1シャフトの周方向に変位しながら、前記第1シャフトの半径方向に延びる、請求項1から3のいずれか1項に記載の工具。
【請求項5】
流体が通過可能で軸方向に延びる第3孔を有するシャフト部と、
前記シャフト部の外周に設けられ、ねじ形状をなす歯と、
前記第3孔に嵌められるプラグとを備え、
前記シャフト部には、前記第3孔を流れてくる流体を前記歯に向けて吐出可能であり、前記シャフト部の外周面に開口を有する複数の第4孔が設けられ、
前記プラグは、前記シャフト部の軸方向において前記複数の第4孔のうちの一部を閉塞する、工具。
【請求項6】
前記シャフト部および前記歯は、一体の金属からなる、請求項5に記載の工具。
【請求項7】
前記第4孔は、前記シャフト部の周方向に変位しながら、前記シャフト部の半径方向に延びる、請求項5または6に記載の工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工具に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特開2003-251528号公報(特許文献1)には、自動旋盤に取り付けられ、ワークに対してホブ加工を行なうホブユニットが開示されている。ホブユニットは、軸周りに回転駆動されるホブカッタ軸と、ホブカッタ軸の先端に支持されるホブ工具とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に開示されるワークに歯車を加工するためのホブ工具、または、歯車の歯面を研削するためのCBN電着砥石といった、ねじ形状をなす歯が備わった工具が知られている。このような工具においては、ワークの加工部分の周辺から効率的に切屑を取り除くことで、工具またはワークの損傷を防ぎ、加工を安定させることが求められる。
【0005】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、ねじ形状をなす歯が備わった工具によるワーク加工において、ワークの加工部分の周辺から効率的に切屑を取り除くことが可能な工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の1つの局面に従った工具は、第1シャフトと、歯部とを備える。第1シャフトは、複数の第1孔を有する。第1孔は、第1シャフトの外周面に開口を有する。歯部は、ねじ形状をなす歯と、複数の第2孔とを有する。複数の第2孔は、複数の第1孔を通過する流体を歯に向けて吐出可能である。歯部は、第1シャフトに嵌められる。工具は、第1シャフトと異なる第2シャフトに歯部を嵌めて工具として用いることが可能である。第1シャフトには、第1シャフトの軸方向の第1領域に複数の第1孔が設けられる。第1領域は、外周面に開口を有する複数の第1孔が設けられている第2シャフトの軸方向の第2領域と異なる。
【0007】
この発明の別の局面に従った工具は、シャフト部と、ねじ形状をなす歯と、プラグとを備える。シャフト部は、第3孔を有する。第3孔は、流体が通過可能でシャフト部の軸方向に延びる。歯は、シャフト部の外周に設けられる。プラグは、第3孔に嵌められる。シャフト部には、複数の第4孔が設けられる。複数の第4孔は、第3孔を流れてくる流体を歯に向けて吐出可能である。第4孔は、シャフト部の外周面に開口を有する。プラグは、シャフト部の軸方向において複数の第4孔のうちの一部を閉塞する。
【発明の効果】
【0008】
この発明に従えば、ねじ形状をなす歯が備わった工具によるワーク加工において、ワークの加工部分の周辺から効率的に切屑を取り除くことが可能な工具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】この発明の実施の形態1における工具を示す断面図である。
【
図2】
図1中の工具を構成する歯部および第1シャフトと、歯部が選択的に嵌められる第2シャフトおよび第3シャフトとを示す分解組み立て図である。
【
図3】
図2中の歯部および第2シャフトにより構成される工具を示す断面図である。
【
図4】
図2中の歯部および第3シャフトにより構成される工具を示す断面図である。
【
図5】
図1中のV-V線上の矢視方向に見た工具を示す断面図である。
【
図6】
図5中の2点鎖線VIで囲まれた範囲の工具を示す断面図である。
【
図7】第1シャフトの被嵌合部を示す斜視図である。
【
図8】第1シャフトの被嵌合部およびキーを示す斜視図である。
【
図9】工具における第1孔および第2孔の第1変形例を示す断面図である。
【
図10】工具における第1孔および第2孔の第2変形例を示す断面図である。
【
図11】工具における第1孔および第2孔の第3変形例を示す斜視図である。
【
図12】工具における第1孔および第2孔の第4変形例を示す斜視図である。
【
図13】工具における供給孔の変形例を示す断面図である。
【
図14】工具における第2孔の第5変形例を示す工具の断面図である。
【
図15】工具における第1孔および第2孔の第6変形例を示す分解組み立て図である。
【
図16】この発明の実施の形態2における工具を示す断面図である。
【
図19】
図16中の工具のさらに別の使用形態を示す断面図である。
【
図20】この発明の実施の形態3における工具を示す断面図である。
【
図21】
図20中のXXI-XXI線上の矢視方向に見た工具を示す断面図である。
【
図22】
図21中の第4孔の変形例を示す工具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0011】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1における工具を示す断面図である。
図2は、
図1中の工具を構成する歯部および第1シャフトと、歯部が選択的に嵌められる第2シャフトおよび第3シャフトとを示す分解組み立て図である。
図3は、
図2中の歯部および第2シャフトにより構成される工具を示す断面図である。
図4は、
図2中の歯部および第3シャフトにより構成される工具を示す断面図である。
図5は、
図1中のV-V線上の矢視方向に見た工具を示す断面図である。
【0012】
図1から
図5を参照して、本実施の形態における工具100は、ワークWに歯切り加工を行なうためのホブ工具である。
【0013】
工具100は、工具100の中心軸101と、ワークWの中心軸(不図示)とが直交するように、ワークWに対して配置されている。工具100は、ねじ形状をなす歯43を有する。
図1および
図5に示されるように、歯43は、中心軸101を中心にして螺旋状に断続的に延びている。歯43をワークWの外周面と接触させつつ、工具100を中心軸101を中心に回転させることによって、ワークWの外周面に歯車を加工する。以下、工具100の構造について説明する。
【0014】
図1および
図2に示されるように、工具100は、第1シャフト21Aと、歯部40とを有する。工具100は、第1シャフト21Aに歯部40を嵌めて工具100Aとして用いることが可能である。
【0015】
第1シャフト21Aは、全体として、中心軸101を中心とする軸形状をなしている。歯部40は、全体として、中心軸101と中心とする円筒形状をなしている。歯部40は、第1シャフト21Aに嵌められている。歯部40は、第1シャフト21Aの外周上に嵌められている。第1シャフト21Aは、円筒形状を有する歯部40の内側に挿入されている。
【0016】
なお、中心軸101の軸方向、周方向および半径方向は、第1シャフト21Aの軸方向、周方向および半径方向にそれぞれ対応している。中心軸101の軸方向、周方向および半径方向は、後出の第2シャフト21Bの軸方向、周方向および半径方向にそれぞれ対応しており、後出の第3シャフト21Cの軸方向、周方向および半径方向にそれぞれ対応している。
【0017】
第1シャフト21Aは、歯部40を保持するための保持具である。第1シャフト21Aは、ホブ盤等の工作機械の主軸に接続される。第1シャフト21Aは、工作機械の主軸から回転運動が入力されることによって、歯部40と一体となって中心軸101を中心に回転する。
【0018】
第1シャフト21Aは、被嵌合部22と、先端部23と、鍔部25とを有する。先端部23は、中心軸101の軸方向における第1シャフト21Aの先端に設けられている。先端部23は、中心軸101を中心にして被嵌合部22よりも小径を有する。被嵌合部22は、歯部40が嵌められる第1シャフト21Aの主要部をなしている。被嵌合部22は、中心軸101の軸方向において、先端部23および鍔部25の間に配置されている。鍔部25は、中心軸101を中心に鍔状に広がっている。鍔部25は、中心軸101を中心にして被嵌合部22よりも大径を有する。
【0019】
歯部40は、先端部23より被嵌合部22の外周上に嵌められ、中心軸101の軸方向において鍔部25に当接される。先端部23の外周上にナット27が嵌められることによって、歯部40が鍔部25およびナット27の間に保持されている。歯部40は、第1シャフト21Aに対して着脱可能に設けられている。
【0020】
歯部40が第1シャフト21Aに嵌められた状態において、第1シャフト21A(被嵌合部22)の外周面26と、歯部40(後出の基部42)の内周面47とが、面接触している。
【0021】
第1シャフト21Aには、供給孔31と、複数の第1孔36とが設けられている。供給孔31は、中心軸101の軸方向に延びている。供給孔31は、中心軸101の軸上で延びている。供給孔31は、円形の開口をなしている。供給孔31は、中心軸101の軸方向において、第1シャフト21Aを貫通している。供給孔31には、プラグ32が挿入されている。プラグ32は、先端部23に配置されている。プラグ32は、中心軸101の軸方向における第1シャフト21Aの一方端部において、供給孔31を閉塞している。
【0022】
供給孔31には、中心軸101の軸方向における第1シャフト21Aの他方端部から、流体としての空気が供給される。供給孔31に供給される流体は、気体に限られず、たとえば、冷却液または洗浄液等の液体であってもよい。
【0023】
複数の第1孔36は、被嵌合部22に設けられている。複数の第1孔36は、中心軸101の周方向に互いに間隔を開け、かつ、中心軸101の軸方向に互いに間隔を開けて並んでいる。複数の第1孔36は、中心軸101の周方向において等間隔に並んでいる。複数の第1孔36は、中心軸101の軸方向において等間隔に並んでいる。
図2に示されるように、複数の第1孔36は、中心軸101の軸方向における第1領域110に設けられている。
【0024】
第1シャフト21Aには、複数の第1孔36として、複数の第1孔36aと、複数の第1孔36bと、複数の第1孔36cとが設けられている。複数の第1孔36aは、中心軸101の周方向において、互いに間隔を開けて並んでいる。複数の第1孔36bおよび複数の第1孔36cの各々は、複数の第1孔36aと同様の形態により設けられている。複数の第1孔36aと、複数の第1孔36bと、複数の第1孔36cとは、挙げた順に、先端部23に近い側から遠い側に向けて、中心軸101の軸方向に並んでいる。
【0025】
第1孔36は、中心軸101の半径方向に延びている。第1孔36は、中心軸101の半径方向内側の端部で、供給孔31と連通し、中心軸101の半径方向外側の端部で、第1シャフト21A(被嵌合部22)の外周面26に開口している。第1孔36は、円形の開口をなしている。
【0026】
歯部40は、基部42と、歯43とを有する。基部42は、中心軸101を中心とする円筒体からなり、歯43は、基部42の外周面46から突出している。歯43は、前述のとおり、中心軸101を中心にして螺旋状に断続的に延びている。本発明における歯は、ワークの加工時に、ワークと接触させる工具の部分である。歯43は、ワークWに歯車の歯面を形成する工具100の切れ刃に対応している。歯43は、中心軸101を中心にしてねじ状に配置されるラック歯形の切れ刃からなる。
【0027】
図5に示されるように、歯43は、中心軸101の周方向において、隣り合う歯43の間隔に対応する角度αが一定となるように、等ピッチで設けられている。歯43は、中心軸101の周方向において、角度α1と、角度α1とは異なる大きさの角度α2とが交互に並ぶように、不等ピッチで設けられてもよい。
【0028】
歯部40には、複数の第2孔41が設けられている。複数の第2孔41は、複数の第1孔36を通過する空気を歯43に向けて吐出可能である。
【0029】
複数の第2孔41は、基部42に設けられている。複数の第2孔41は、中心軸101の周方向に互いに間隔を開け、かつ、中心軸101の軸方向に互いに間隔を開けて並んでいる。複数の第2孔41は、中心軸101の周方向において等間隔に並んでいる。複数の第2孔41は、中心軸101の軸方向において等間隔に並んでいる。
【0030】
歯部40には、複数の第2孔41として、複数の第2孔41aと、複数の第2孔41bと、複数の第2孔41cと、複数の第2孔41dと、複数の第2孔41eと、複数の第2孔41fと、複数の第2孔41gと、複数の第2孔41hと、複数の第2孔41iとが設けられている。複数の第2孔41aと、複数の第2孔41bと、複数の第2孔41cと、複数の第2孔41dと、複数の第2孔41eと、複数の第2孔41fと、複数の第2孔41gと、複数の第2孔41hと、複数の第2孔41iとは、挙げた順に、先端部23に近い側から遠い側に向けて、中心軸101の軸方向に並んでいる。複数の第2孔41aは、中心軸101の周方向において、互いに間隔を開けて並んでいる。複数の第2孔41b~41iの各々は、複数の第2孔41aと同様の形態により設けられている。
【0031】
第2孔41は、中心軸101の半径方向に延びている。第2孔41は、中心軸101の半径方向内側の端部で、歯部40(基部42)の内周面47に開口し、中心軸101の半径方向外側の端部で、歯部40(基部42)の外周面46に開口している。第2孔41は、中心軸101の半径方向外側の端部で、中心軸101の周方向に隣り合う歯43間の谷部分で開口している。第2孔41は、円形の開口をなしている。
【0032】
複数の第2孔41のうちの一部は、複数の第1孔36と連通している。複数の第2孔41aは、それぞれ、複数の第1孔36aと連通し、複数の第2孔41bは、それぞれ、複数の第1孔36bと連通し、複数の第2孔41cは、それぞれ、複数の第1孔36cと連通している。歯部40(基部42)の内周面47において、複数の第2孔41のうちの残りの部分がなす開口は、第1シャフト21A(被嵌合部22)の外周面26により閉塞されている。歯部40(基部42)の内周面47において、複数の第2孔41d、複数の第2孔41e、複数の第2孔41f、複数の第2孔41g、複数の第2孔41hおよび複数の第2孔41iがなす開口は、第1シャフト21A(被嵌合部22)の外周面26により閉塞されている。
【0033】
図1および
図2に示されるように、歯部40を第1シャフト21Aに嵌めた工具100AによりワークWを加工する場合、中心軸101の軸方向の第1領域110に配置される歯43を用いて、ワークWに歯車を加工する。この場合に、第1シャフト21Aに設けられた供給孔31に対して空気が供給されると、空気は、供給孔31を中心軸101の軸方向に流れる間、複数の第1孔36a、複数の第1孔36bおよび複数の第1孔36cに導入される。複数の第1孔36a、複数の第1孔36bおよび複数の第1孔36cを通過する空気は、それぞれ、複数の第2孔41a、複数の第2孔41bおよび複数の第2孔41cから、第1領域110に配置される歯43に向けて吐出される。
【0034】
このような構成によれば、工具100AによりワークWを加工する場合に、第1領域110、第2領域120および第3領域130のうちの、ワークWの加工に用いられる歯43が配置される第1領域110にのみ空気が導かれるため、空気を歯43に向けて高圧で吐出することができる。これにより、ワークWの加工に用いられる歯43、および、その歯43により加工されるワークWの周辺から効率的に切屑を取り除くことができる。
【0035】
図6は、
図5中の2点鎖線VIで囲まれた範囲の工具を示す断面図である。
図7は、第1シャフトの被嵌合部を示す斜視図である。
図8は、第1シャフトの被嵌合部およびキーを示す斜視図である。
【0036】
図5から
図8を参照して、第1シャフト21Aには、キー溝57が設けられている。キー溝57は、第1シャフト21Aの外周面26に、中心軸101の軸方向に延びる溝形状をなしている。キー溝57が設けられた中心軸101の周方向における角度位置において、第1孔36は、キー溝57の底部に開口している。
【0037】
歯部40には、対向キー溝58が設けられている。対向キー溝58は、歯部40の内周面47に、中心軸101の軸方向に延びる溝形状をなしている。対向キー溝58は、中心軸101の半径方向において、キー溝57と対向している。対向キー溝58が設けられた中心軸101の周方向における角度位置において、第2孔41は、対向キー溝58の底部に開口している。
【0038】
工具100は、キー51をさらに有する。キー51は、キー溝57および対向キー溝58に挿入されている。キー51は、中心軸101の軸方向に延びている。キー51は、中心軸101の周方向において、歯部40および第1シャフト21Aの相互の位置を固定している。
【0039】
キー51には、複数の連通孔56が設けられている。連通孔56は、中心軸101の半径方向において、キー51を貫通している。複数の連通孔56は、中心軸101の軸方向において、互いに間隔を開けて設けられている。複数の連通孔56は、複数の第1孔36のうちの一部と、複数の第2孔41のうちの一部とを互いに連通させている。複数の連通孔56は、キー溝57および対向キー溝58が設けられた中心軸101の周方向における角度位置において、第1孔36a,36b,36cと、第2孔41a,41b,41cとをそれぞれ互いに連通させている。
【0040】
このような構成により、キー51が設けられた中心軸101の周方向における角度位置においても、複数の第1孔36(36a,36b,36c)を通過する空気を、複数の連通孔56を通じて複数の第2孔41(41a,41b,41c)に導くことができる。
【0041】
図1から
図5を参照して、工具100は、第1シャフト21Aとは異なる第2シャフト21Bに歯部40を嵌めて工具100Bとして用いることが可能であり、また、第1シャフト21Aおよび第2シャフト21Bとは異なる第3シャフト21Cに歯部40を嵌めて工具100Cとして用いることが可能である。
【0042】
第2シャフト21Bおよび第3シャフト21Cの各シャフトは、基本的には、第1シャフト21Aと同様の構造を有する。以下、第1シャフト21Aと異なる構造を中心にして、第2シャフト21Bおよび第3シャフト21Cの構造を説明する。
【0043】
図2および
図3に示されるように、第2シャフト21Bには、供給孔31と、複数の第1孔36とが設けられている。
【0044】
複数の第1孔36は、中心軸101の軸方向における第2領域120に設けられている。第2領域120は、第1領域110とは異なる領域である。第2領域120は、第1領域110から中心軸101の軸方向にずれた位置にある。第1領域110は、中心軸101の軸方向において、先端部23および第2領域120の間に位置している。
【0045】
第2シャフト21Bには、複数の第1孔36として、複数の第1孔36dと、複数の第1孔36eと、複数の第1孔36fとが設けられている。複数の第1孔36dと、複数の第1孔36eと、複数の第1孔36fとは、挙げた順に、先端部23に近い側から遠い側に向けて、中心軸101の軸方向に並んでいる。複数の第1孔36dは、中心軸101の周方向において、互いに間隔を開けて並んでいる。複数の第1孔36eおよび複数の第1孔36fの各々は、複数の第1孔36dと同様の形態により設けられている。
【0046】
このような構成を備える第2シャフト21Bに歯部40が嵌められた場合に、複数の第2孔41dは、それぞれ、複数の第1孔36dと連通し、複数の第2孔41eは、それぞれ、複数の第1孔36eと連通し、複数の第2孔41fは、それぞれ、複数の第1孔36fと連通している。歯部40(基部42)の内周面47において、複数の第2孔41a、複数の第2孔41b、複数の第2孔41c、複数の第2孔41g、複数の第2孔41hおよび複数の第2孔41iがなす開口は、第1シャフト21A(被嵌合部22)の外周面26により閉塞されている。
【0047】
図2および
図4に示されるように、第3シャフト21Cには、供給孔31と、複数の第1孔36とが設けられている。
【0048】
複数の第1孔36は、中心軸101の軸方向における第3領域130に設けられている。第3領域130は、第1領域110および第2領域120の各領域とは異なる領域である。第3領域130は、第1領域110および第2領域120の各領域から中心軸101の軸方向にずれた位置にある。第2領域120は、中心軸101の軸方向において、第1領域110および第3領域130の間に位置している。
【0049】
第3シャフト21Cには、複数の第1孔36として、複数の第1孔36gと、複数の第1孔36hと、複数の第1孔36iとが設けられている。複数の第1孔36gと、複数の第1孔36hと、複数の第1孔36iとは、挙げた順に、先端部23に近い側から遠い側に向けて、中心軸101の軸方向に並んでいる。複数の第1孔36gは、中心軸101の周方向において、互いに間隔を開けて並んでいる。複数の第1孔36hおよび複数の第1孔36iの各々は、複数の第1孔36gと同様の形態により設けられている。
【0050】
このような構成を備える第3シャフト21Cに歯部40が嵌められた場合に、複数の第2孔41gは、それぞれ、複数の第1孔36gと連通し、複数の第2孔41hは、それぞれ、複数の第1孔36hと連通し、複数の第2孔41iは、それぞれ、複数の第1孔36iと連通している。歯部40(基部42)の内周面47において、複数の第2孔41a、複数の第2孔41b、複数の第2孔41c、複数の第2孔41d、複数の第2孔41eおよび複数の第2孔41fがなす開口は、第1シャフト21A(被嵌合部22)の外周面26により閉塞されている。
【0051】
歯部40を第1シャフト21Aに嵌めた工具100Aを用いて、ワーク加工を繰り返すと、第1領域110に配置される歯43が摩耗したり損傷したりする。歯43は、中心軸101の軸方向における第1領域110、第2領域120および第3領域130に渡って設けられているため、このような場合に、歯部40を第1シャフト21Aに替わって第2シャフト21Bに嵌めることにより、工具100Bを用いてワーク加工を行なったり、歯部40を第1シャフト21Aに替わって第3シャフト21Cに嵌めることにより、工具100Cを用いてワーク加工を行なうことができる。
【0052】
図2および
図3に示されるように、工具100BによりワークWを加工する場合、中心軸101の軸方向の第2領域120に配置される歯43を用いて、ワークWに歯車を加工する。この場合に、第2シャフト21Bに設けられた供給孔31に対して空気が供給されると、空気は、供給孔31を中心軸101の軸方向に流れる間、複数の第1孔36d、複数の第1孔36eおよび複数の第1孔36fに導入される。複数の第1孔36d、複数の第1孔36eおよび複数の第1孔36fを通過する空気は、それぞれ、複数の第2孔41d、複数の第2孔41eおよび複数の第2孔41fから、第2領域120に配置される歯43に向けて吐出される。
【0053】
図2および
図4に示されるように、工具100CによりワークWを加工する場合、中心軸101の軸方向の第3領域130に配置される歯43を用いて、ワークWに歯車を加工する。この場合に、第3シャフト21Cに設けられた供給孔31に対して空気が供給されると、空気は、供給孔31を中心軸101の軸方向に流れる間、複数の第1孔36g、複数の第1孔36hおよび複数の第1孔36iに導入される。複数の第1孔36g、複数の第1孔36hおよび複数の第1孔36iを通過する空気は、それぞれ、複数の第2孔41g、複数の第2孔41hおよび複数の第2孔41iから、第3領域130に配置される歯43に向けて吐出される。
【0054】
このような構成によれば、工具100BによりワークWを加工する場合には、第1領域110、第2領域120および第3領域130のうちの、ワークWの加工に用いられる歯43が配置される第2領域120にのみ空気が導かれ、工具100CによりワークWを加工する場合には、第1領域110、第2領域120および第3領域130のうちの、ワークWの加工に用いられる歯43が配置される第3領域130にのみ空気が導かれるため、空気を歯43に向けて高圧で吐出することができる。これにより、ワークWの加工に用いられる歯43、および、その歯43により加工されるワークWの周辺から効率的に切屑を取り除くことができる。
【0055】
続いて、
図1から
図5中の工具100の各種変形例について説明する。
図9は、工具における第1孔および第2孔の第1変形例を示す断面図である。
図10は、工具における第1孔および第2孔の第2変形例を示す断面図である。
図9および
図10中には、
図1中の2点鎖線IXで囲まれる範囲に対応する工具の断面が示されている。
【0056】
図11は、工具における第1孔および第2孔の第3変形例を示す斜視図である。
図12は、工具における第1孔および第2孔の第4変形例を示す斜視図である。
図11および
図12中には、第1孔36が設けられる第1シャフト21Aが示されるとともに、第1孔36と対向する第2孔41の開口が2点鎖線により示されている。
【0057】
図9から
図12を参照して、これら変形例では、第1シャフト21Aの外周面26における複数の第1孔36の各開口面積と、歯部40の内周面47における複数の第2孔41の各開口面積とが、互いに異なる。
【0058】
図9および
図10に示される変形例では、第1孔36および第2孔41が、円形の開口をなしている。第1孔36がなす円形の開口の直径と、第2孔41がなす円形の開口の直径とが、互いに異なる。
【0059】
図9に示される変形例では、歯部40の内周面47における複数の第2孔41の各開口面積Sjが、第1シャフト21Aの外周面26における複数の第1孔36の各開口面積Skよりも小さい(Sj<Sk)。
図10に示される変形例では、歯部40の内周面47における複数の第2孔41の各開口面積Sjが、第1シャフト21Aの外周面26における複数の第1孔36の各開口面積Skよりも大きい(Sj>Sk)。
【0060】
図11に示される変形例では、第1孔36が、第1シャフト21Aの外周面26に、中心軸101の軸方向が短手方向に対応し、中心軸101の周方向が長手方向に対応する長円形状の開口をなしている。中心軸101の周方向における第1孔36の開口長さは、中心軸101の軸方向における第1孔36の開口長さよりも大きい。第2孔41は、歯部40の内周面47に、円形の開口をなしている。歯部40の内周面47における複数の第2孔41の各開口面積は、第1シャフト21Aの外周面26における複数の第1孔36の各開口面積よりも小さい。
【0061】
図12に示される変形例では、第1孔36が、第1シャフト21Aの外周面26に、中心軸101の周方向が短手方向に対応し、中心軸101の軸方向が長手方向に対応する長円形状の開口をなしている。中心軸101の軸方向における第1孔36の開口長さは、中心軸101の周方向における第1孔36の開口長さよりも大きい。第2孔41は、歯部40の内周面47に、円形の開口をなしている。歯部40の内周面47における複数の第2孔41の各開口面積は、第1シャフト21Aの外周面26における複数の第1孔36の各開口面積よりも小さい。
【0062】
図9から
図12に示される変形例では、複数の第1孔36の各開口面積と、複数の第2孔41の各開口面積とが、互いに異なるため、第1シャフト21Aと、第1シャフト21Aに嵌められる歯部40との間で位置ずれが生じた場合にも、第1孔36と、第2孔41とをより確実に連通させることができる。特に、
図11に示される変形例では、第1シャフト21Aと、第1シャフト21Aに嵌められる歯部40との間で、中心軸101の周方向の位置ずれが生じた場合に、第1孔36と、第2孔41とをより確実に連通させることができる。また、
図12に示される変形例では、第1シャフト21Aと、第1シャフト21Aに嵌められる歯部40との間で、中心軸101の軸方向の位置ずれが生じた場合に、第1孔36と、第2孔41とをより確実に連通させることができる。
【0063】
また、
図9、
図11および
図12に示される変形例では、歯部40の内周面47における複数の第2孔41の各開口面積が、第1シャフト21Aの外周面26における複数の第1孔36の各開口面積よりも小さい。このような構成により、相対的に大きい開口面積を有する第1孔36を通過する空気が、相対的に小さい開口面積を有する第2孔41から吐出されるため、空気をさらに高圧で歯43に向けて吐出することが可能となる。
【0064】
図13は、工具における供給孔の変形例を示す断面図である。
図13中には、
図1中の2点鎖線IXで囲まれる範囲に対応する工具の断面が示されている。
【0065】
図13を参照して、本変形例では、第1シャフト21Aに、
図1中の供給孔31に替わって、複数の供給孔61が設けられている。供給孔61は、中心軸101の軸方向に延びている。複数の供給孔61は、中心軸101からその半径方向外側に離れた位置で、中心軸101の周方向において互いに間隔を開けて設けられている。複数の第1孔36は、中心軸101の半径方向内側の端部で、複数の供給孔61とそれぞれ連通している。複数の供給孔61の各開口面積は、
図1中の供給孔31の開口面積よりも小さい。
【0066】
本変形例に示されるように、複数の第1孔36に対して空気が供給される経路は、特に限定されない。
【0067】
図14は、工具における第2孔の第5変形例を示す工具の断面図である。
図14に示される断面は、
図5に示される断面に対応している。
【0068】
図14を参照して、本変形例では、第2孔41が、中心軸101の周方向に変位しながら、中心軸101の半径方向に延びている。第2孔41は、歯部40の内周面47および外周面46の間において、中心軸101の半径方向に対して斜め方向に延びている。歯部40の内周面47における第2孔41の開口位置と、歯部40の外周面46における第2孔41の開口位置とが、中心軸101の周方向にずれている。第2孔41は、歯部40の内周面47から外周面46に向けて、工具100の回転方向に対して順方向に傾斜してもよいし、工具100の回転方向に対して逆方向に傾斜してもよい。
【0069】
第1孔36は、中心軸101の半径方向に延びている。第1孔36は、第2孔41と連なって一直線となるように、中心軸101の半径方向に対して斜め方向に延びてもよい。
【0070】
このような構成によれば、複数の第2孔41から、ワークWを加工している歯43を基準に工具100の回転方向の前方側または後方側に向けて空気が吐出される。これにより、ワークWを加工している歯43と、その歯43により加工されているワークWの歯車との間の空間に空気を効率的に供給し、かかる空間に存在する切屑をより確実に取り除くことができる。
【0071】
図15は、工具における第1孔および第2孔の第6変形例を示す分解組み立て図である。
図15を参照して、歯部40には、複数の第2孔41として、複数の第2孔41aと、複数の第2孔41bと、複数の第2孔41cと、複数の第2孔41dと、複数の第2孔41eと、複数の第2孔41fと、複数の第2孔41gとが設けられている。
【0072】
第1シャフト21Aには、複数の第1孔36として、複数の第1孔36aと、複数の第1孔36bと、複数の第1孔36cとが設けられている。歯部40が第1シャフト21Aに嵌められることによって、複数の第1孔36aは、それぞれ、複数の第2孔41aと連通し、複数の第1孔36bは、それぞれ、複数の第2孔41bと連通し、複数の第1孔36cは、それぞれ、複数の第2孔41cと連通する。歯部40(基部42)の内周面47において、複数の第2孔41d、複数の第2孔41e、複数の第2孔41fおよび複数の第2孔41gがなす開口は、第1シャフト21A(被嵌合部22)の外周面26により閉塞されている。
【0073】
第2シャフト21Bには、複数の第1孔36として、複数の第1孔36cと、複数の第1孔36dと、複数の第1孔36eとが設けられている。歯部40が第2シャフト21Bに嵌められることによって、複数の第1孔36cは、それぞれ、複数の第2孔41cと連通し、複数の第1孔36dは、それぞれ、複数の第2孔41dと連通し、複数の第1孔36eは、それぞれ、複数の第2孔41eと連通する。歯部40(基部42)の内周面47において、複数の第2孔41a、複数の第2孔41b、複数の第2孔41fおよび複数の第2孔41gがなす開口は、第1シャフト21A(被嵌合部22)の外周面26により閉塞されている。
【0074】
第3シャフト21Cには、複数の第1孔36として、複数の第1孔36eと、複数の第1孔36fと、複数の第1孔36gとが設けられている。歯部40が第3シャフト21Cに嵌められることによって、複数の第1孔36eは、それぞれ、複数の第2孔41eと連通し、複数の第1孔36fは、それぞれ、複数の第2孔41fと連通し、複数の第1孔36gは、それぞれ、複数の第2孔41gと連通する。歯部40(基部42)の内周面47において、複数の第2孔41a、複数の第2孔41b、複数の第2孔41cおよび複数の第2孔41dがなす開口は、第1シャフト21A(被嵌合部22)の外周面26により閉塞されている。
【0075】
このような構成により、本変形例では、第1シャフト21Aに複数の第1孔36が設けられる第1領域110と、第2シャフト21Bに複数の第1孔36が設けられる第2領域120とが、中心軸101の軸方向において、部分的に重なっている。第2シャフト21Bに複数の第1孔36が設けられる第2領域120と、第3シャフト21Cに複数の第1孔36が設けられる第3領域130とが、中心軸101の軸方向において、部分的に重なっている。
【0076】
なお、本実施の形態では、歯部40が嵌めることが可能なシャフトが、第1シャフト21A、第2シャフト21Bおよび第3シャフト21Cの3種類である場合を説明したが、これに限られず、2種類であってもよいし、4種類以上であってもよい。また、本発明における工具は、ねじ形状をなす歯が備わっていれば、特に限定されず、たとえば、歯車の歯面を研削するためのCBN電着砥石であってもよい。
【0077】
以上に説明した、この発明の実施の形態1における工具100(100A)の構造をまとめると、本実施の形態における工具100(100A)は、外周面26に開口を有する複数の第1孔36を有する第1シャフト21Aと、ねじ形状をなす歯43と、複数の第1孔36を通過する流体としての空気を歯43に向けて吐出可能な複数の第2孔41とを有し、第1シャフト21Aに嵌められる歯部40とを備える。工具100は、第1シャフト21Aと異なる第2シャフト21B(第3シャフト21C)に歯部40を嵌めて工具100B(100C)として用いることが可能である。第1シャフト21Aには、第1シャフト21Aの軸方向の第1領域110に複数の第1孔36が設けられる。第1領域110は、外周面26に開口を有する複数の第1孔36が設けられている第2シャフト21B(第3シャフト21C)の軸方向の第2領域120(第3領域130)と異なる。
【0078】
ねじ形状をなす歯43を有する歯部40と、歯部40が選択的に嵌められる第1シャフト21A、第2シャフト21Bおよび第3シャフト21Cとは、ワークWを加工するための工具セットを構成している。
【0079】
このように構成された、この発明の実施の形態1における工具100によれば、ワークWの加工に用いられる歯43の範囲に合わせて、複数の第2孔41のうちの一部から空気を吐出させることにより、ワークWの加工部分の周辺から効率的に切屑を取り除くことができる。これにより、ワーク加工中の切屑の介在に起因した工具100およびワークWの損傷を防いで、安定したワークWの加工を実現することができる。
【0080】
なお、本実施の形態および各種変形例において説明した構成は、任意に組み合わされてもよい。
【0081】
(実施の形態2)
図16は、この発明の実施の形態2における工具を示す断面図である。
図17は、
図16中の工具を示す分解組み立て図である。本実施の形態における工具は、実施の形態1における工具100と部分的に同じ構造を備える。以下、重複する構造については、その説明を繰り返さない。
【0082】
図16および
図17を参照して、本実施の形態における工具200は、シャフト部211と、ねじ形状をなす歯43とを有する。シャフト部211は、全体として、中心軸101を中心とする軸形状をなしている。歯43は、シャフト部211の外周に設けられている。歯43は、シャフト部211の外周面46から突出し、中心軸101を中心にして螺旋状に断続的に延びている。
【0083】
シャフト部211は、シャフト121と、歯部140とを有する。シャフト121は、実施の形態1における第1シャフト21A(第2シャフト21B,第3シャフト21C)に対応している。歯部140は、実施の形態1における歯部40に対応している。歯部140がシャフト121の外周上に嵌められることによって、シャフト部211が構成されている。
【0084】
シャフト121には、実施の形態1における供給孔31に替わって、第3孔221が設けられている。第3孔221は、中心軸101の軸方向に延びている。第3孔221は、中心軸101の軸上で延びている。第3孔221は、円形の開口をなしている。第3孔221は、中心軸101の軸方向において、シャフト121を貫通している。
【0085】
第3孔221を規定するシャフト121の内周面には、雌ねじが設けられている。第3孔221には、中心軸101の軸方向におけるシャフト121の他方端部から、流体としての空気が供給される。
【0086】
シャフト部211(シャフト121,歯部140)には、実施の形態1における第1孔36および第2孔41に替わって、複数の第4孔231が設けられている。
【0087】
複数の第4孔231は、シャフト121の被嵌合部22、および、歯部140の基部42に設けられている。複数の第4孔231は、中心軸101の周方向に互いに間隔を開け、かつ、中心軸101の軸方向に互いに間隔を開けて並んでいる。複数の第4孔231は、中心軸101の周方向において等間隔に並んでいる。複数の第4孔231は、中心軸101の軸方向において等間隔に並んでいる。
【0088】
シャフト部211には、複数の第4孔231として、複数の第4孔231aと、複数の第4孔231bと、複数の第4孔231cと、複数の第4孔231dと、複数の第4孔231eと、複数の第4孔231fと、複数の第4孔231gとが設けられている。複数の第4孔231aは、中心軸101の周方向において、互いに間隔を開けて並んでいる。複数の第4孔231b~231gの各々は、複数の第4孔231aと同様の形態により設けられている。複数の第4孔231aと、複数の第4孔231bと、複数の第4孔231cと、複数の第4孔231dと、複数の第4孔231eと、複数の第4孔231fと、複数の第4孔231gとは、挙げた順に、先端部23に近い側から遠い側に向けて、中心軸101の軸方向に並んでいる。
【0089】
第4孔231は、中心軸101の半径方向に延びている。第4孔231は、中心軸101の半径方向内側の端部で、第3孔221と連通し、中心軸101の半径方向外側の端部で、歯部140(基部42)の外周面46に開口している。第4孔231は、中心軸101の半径方向外側の端部で、中心軸101の周方向に隣り合う歯43間の谷部分で開口している。第4孔231は、円形の開口をなしている。
【0090】
工具200は、プラグ81をさらに有する。プラグ81は、第3孔221に嵌められている。中心軸101の軸方向におけるプラグ81の長さは、中心軸101の軸方向におけるシャフト部211の長さよりも小さい。中心軸101の軸方向におけるプラグ81の長さは、中心軸101の軸方向における被嵌合部22および基部42の各長さよりも小さい。プラグ81は、第3孔221に嵌められることにより、中心軸101の軸方向において複数の第4孔231のうちの一部を閉塞する。
【0091】
工具200は、プラグ81として、第1プラグ81Aと、2つの第2プラグ81Bとを有する。工具200は、第3孔221に、第1プラグ81Aと、2つの第1プラグ81Aとを嵌めて、工具200Aとして用いることが可能である。
【0092】
第1プラグ81Aは、中心軸101の軸方向において非貫通の中実体からなる。第1プラグ81Aは、全体として、中心軸101を中心とする円柱形状を有する。第1プラグ81Aには、中心軸101の軸方向における一方端部の端面から凹み、六角レンチ等の工具を嵌め合わせることが可能な有底の孔が設けられている。第1プラグ81Aの外周面には、雄ねじが設けられている。第1プラグ81Aは、第3孔221に螺合されている。第1プラグ81Aは、第3孔221における中心軸101の軸方向の空気流れを規制可能に構成されている。
【0093】
第1プラグ81Aは、先端部23に配置されている。第1プラグ81Aは、中心軸101の軸方向におけるシャフト部211(シャフト121)の一方端部において、第3孔221を閉塞している。
【0094】
第2プラグ81Bは、中心軸101の軸方向において貫通する中空体からなる。第2プラグ81Bは、全体として、中心軸101を中心とする円筒形状を有する。より特定的には、第2プラグ81Bは、六角レンチ等の工具を嵌め合わせることが可能な中空形状をなしている。第2プラグ81Bの外周面には、雄ねじが設けられている。第2プラグ81Bは、第3孔221に螺合されている。第2プラグ81Bは、第3孔221における中心軸101の軸方向の空気流れを許容可能に構成されている。
【0095】
2つの第2プラグ81Bのうちの一方は、中心軸101の軸方向において、第4孔231dおよび第4孔231eと重なる位置に設けられている。2つの第2プラグ81Bのうちの一方は、第3孔221を規定するシャフト部211の内周面において、第4孔231dおよび第4孔231eがなす開口を閉塞している。2つの第2プラグ81Bのうちの他方は、中心軸101の軸方向において、第4孔231fおよび第4孔231gと重なる位置に設けられている。2つの第2プラグ81Bのうちの他方は、第4孔231fおよび第4孔231gがなす開口を閉塞している。
【0096】
上記の第1プラグ81Aおよび2つの第2プラグ81Bのセットを第3孔221に嵌めた工具200AによりワークWを加工する場合、中心軸101の軸方向において第4孔231a、第4孔231bおよび第4孔231cと重なる領域に配置される歯43を用いて、ワークWに歯車を加工する。この場合に、第3孔221に対して空気が供給されると、空気は、第3孔221を中心軸101の軸方向に流れる間、2つの第2プラグ81Bの内部を通り、続いて、複数の第4孔231a、複数の第4孔231bおよび複数の第4孔231cに導入される。空気は、複数の第4孔231a、複数の第4孔231bおよび複数の第4孔231cから、ワークWを加工する歯43に向けて吐出される。
【0097】
図18は、
図16中の工具の別の使用形態を示す断面図である。
図19は、
図16中の工具のさらに別の使用形態を示す断面図である。
【0098】
図17および
図18を参照して、工具200は、プラグ81として、第1プラグ81Aと、第2プラグ81Bとを有する。工具200は、第3孔221に、第1プラグ81Aおよび第2プラグ81Bを嵌めて、工具200Bとして用いることが可能である。
【0099】
第1プラグ81Aは、中心軸101の軸方向において、第4孔231bと重なる位置に設けられている。第1プラグ81Aは、中心軸101の軸方向において、第4孔231cに重なる位置から、第4孔231bおよび第4孔231aに重なる位置に向かう第3孔221における空気流れを規制している。
【0100】
第2プラグ81Bは、中心軸101の軸方向において、第4孔231fおよび第4孔231gと重なる位置に設けられている。第2プラグ81Bは、第3孔221を規定するシャフト部211の内周面において、第4孔231fおよび第4孔231gがなす開口を閉塞している。
【0101】
上記の第1プラグ81Aおよび第2プラグ81Bのセットを第3孔221に嵌めた工具200BによりワークWを加工する場合、中心軸101の軸方向において第4孔231c、第4孔231dおよび第4孔231eと重なる領域に配置される歯43を用いて、ワークWに歯車を加工する。この場合に、第3孔221に対して空気が供給されると、空気は、第3孔221を中心軸101の軸方向に流れる間、第2プラグ81Bの内部を通り、続いて、複数の第4孔231c、複数の第4孔231dおよび複数の第4孔231eに導入される。空気は、複数の第4孔231c、複数の第4孔231dおよび複数の第4孔231eから、ワークWを加工する歯43に向けて吐出される。
【0102】
図17および
図19を参照して、工具200は、プラグ81として、第1プラグ81Aを有する。工具200は、第3孔221に第1プラグ81Aを嵌めて、工具200Cとして用いることが可能である。
【0103】
第1プラグ81Aは、中心軸101の軸方向において、第4孔231dと重なる位置に設けられている。第1プラグ81Aは、中心軸101の軸方向において、第4孔231eに重なる位置から、第4孔231d、第4孔231c、第4孔231bおよび第4孔231aに重なる位置に向かう第3孔221における空気流れを規制している。
【0104】
上記の第1プラグ81Aを第3孔221に嵌めた工具200CによりワークWを加工する場合、中心軸101の軸方向において第4孔231e、第4孔231fおよび第4孔231gと重なる領域に配置される歯43を用いて、ワークWに歯車を加工する。この場合に、第3孔221に対して空気が供給されると、空気は、第3孔221を中心軸101の軸方向に流れる間、複数の第4孔231e、複数の第4孔231fおよび複数の第4孔231gに導入される。空気は、複数の第4孔231e、複数の第4孔231fおよび複数の第4孔231gから、ワークWを加工する歯43に向けて吐出される。
【0105】
このような構成によれば、工具200A、工具200Bおよび工具200Cの各工具200によりワークWを加工する場合に、ワークWの加工に用いられる歯43が配置される領域にのみ空気が導かれるため、空気を歯43に向けて高圧で吐出することができる。これにより、ワークWの加工に用いられる歯43、および、その歯43により加工されるワークWの周辺から効率的に切屑を取り除くことができる。
【0106】
また、第1プラグ81Aおよび第2プラグ81Bを適当な組み合わせで用いることによって、複数の第4孔231のうちの一部を任意に閉塞することができる。
【0107】
以上に説明した、この発明の実施の形態2における工具200の構造をまとめると、本実施の形態における工具200は、流体としての空気が通過可能で軸方向に延びる第3孔221を有するシャフト部211と、シャフト部211の外周に設けられ、ねじ形状をなす歯43と、第3孔221に嵌められるプラグ81とを備える。シャフト部211には、第3孔221を流れてくる空気を歯43に向けて吐出可能であり、シャフト部211の外周面46に開口を有する複数の第4孔231が設けられる。プラグ81は、シャフト部211の軸方向において複数の第4孔231のうちの一部を閉塞する。
【0108】
このように構成された、この発明の実施の形態2における工具200によれば、実施の形態1に記載の効果を同様に奏することができる。
【0109】
なお、実施の形態1において説明した各種の構成は、実施の形態2における工具200に適用されてもよい。たとえば、本実施の形態における工具200においても、
図9から
図12に示されるように、シャフト121における第4孔231の開口面積と、歯部140における第4孔231の開口面積とが、互いに異なる構成であってもよいし、
図14に示される変形例に倣って、第4孔231が、シャフト部211の周方向に変位しながら、シャフト部211の半径方向に延びる構成であってもよい。
【0110】
(実施の形態3)
図20は、この発明の実施の形態3における工具を示す断面図である。
図21は、
図20中のXXI-XXI線上の矢視方向に見た工具を示す断面図である。本実施の形態における工具は、実施の形態2における工具200と比較して、基本的には同様の構造を備える。以下、重複する構造については、その説明を繰り返さない。
【0111】
図20は、実施の形態2における
図18に対応する図である。
図20中には、第1プラグ81Aおよび第2プラグ81Bのセットを第3孔221に嵌めた工具300Bが示されており、中心軸101の軸方向において第4孔231c、第4孔231dおよび第4孔231eと重なる領域に配置される歯43を用いて、ワークWに歯車を加工する。図示を省略しているが、実施の形態3における工具300においても、実施の形態2における
図16および
図19に示される態様でワークWを加工することが可能である。
【0112】
図20および
図21を参照して、本実施の形態における工具300は、シャフト部211と、ねじ形状をなす歯43とを有する。シャフト部211および歯43は、一体の金属からなる。
【0113】
シャフト部211は、
図16および
図17中のシャフト121と、歯43を有する歯部140とが、金属により一体に成形された形状を有する。本実施の形態では、シャフト121および歯部140が一体であるため、
図16中のナット27が不要である。
【0114】
シャフト部211には、第3孔221と、複数の第4孔231(231a,231b,231c,231d,231e,231f,231g)とが設けられている。本実施の形態においても、第3孔221に、第1プラグ81Aおよび第2プラグ81Bが適当な組み合わせで嵌められることによって、複数の第4孔231のうちの任意の第4孔231が閉塞される。
【0115】
図22は、
図21中の第4孔の変形例を示す工具の断面図である。
図22を参照して、本変形例では、第4孔231が、中心軸101の周方向に変位しながら、中心軸101の半径方向に延びている。第3孔221を規定するシャフト部211の内周面における第4孔231の開口位置と、シャフト部211の外周面46(中心軸101の周方向に隣り合う歯43間の谷部分に対応)における第4孔231の開口位置とが、中心軸101の周方向にずれている。第4孔231は、第3孔221を規定するシャフト部211の内周面からシャフト部211の外周面46に向けて、工具300の回転方向に対して順方向に傾斜してもよいし、工具300の回転方向に対して逆方向に傾斜してもよい。
【0116】
このように構成された、この発明の実施の形態3における工具300によれば、実施の形態1および実施の形態2に記載の効果を同様に奏することができる。
【0117】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0118】
21A 第1シャフト、21B 第2シャフト、21C 第3シャフト、22 被嵌合部、23 先端部、25 鍔部、26,46 外周面、27 ナット、31,61 供給孔、32,81 プラグ、36,36a,36b,36c,36d,36e,36f,36g,36h,36i 第1孔、40,140 歯部、41,41a,41b,41c,41d,41e,41f,41g,41h,41i 第2孔、42 基部、43 歯、47 内周面、51 キー、56 連通孔、57 キー溝、58 対向キー溝、81A 第1プラグ、81B 第2プラグ、100,100A,100B,100C,200,200A,200B,200C,300,300B 工具、101 中心軸、110 第1領域、120 第2領域、121 シャフト、130 第3領域、211 シャフト部、221 第3孔、231,231a,231b,231c,231d,231e,231f,231g 第4孔。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具であって、
外周面に開口を有する複数の第1孔を有する第1シャフトと、
ねじ形状をなす歯と、前記複数の第1孔を通過する流体を前記歯に向けて吐出可能な複数の第2孔とを有し、前記第1シャフトに嵌められる歯部とを備え、
前記工具は、前記第1シャフトと異なる第2シャフトに前記歯部を嵌めて工具として用いることが可能であり、
前記第1シャフトには、前記第1シャフトの軸方向の第1領域に前記複数の第1孔が設けられ、
前記第1領域は、外周面に開口を有する前記複数の第1孔が設けられている前記第2シャフトの軸方向の第2領域と異なる、工具。
【請求項2】
前記複数の第2孔は、前記歯部の内周面に開口を有し、
前記第1シャフトの外周面における前記複数の第1孔の各開口面積と、前記歯部の内周面における前記複数の第2孔の各開口面積とが、互いに異なる、請求項1に記載の工具。
【請求項3】
前記歯部の内周面における前記複数の第2孔の各開口面積は、前記第1シャフトの外周面における前記複数の第1孔の各開口面積よりも小さい、請求項2に記載の工具。
【請求項4】
前記第2孔は、前記第1シャフトの周方向に変位しながら、前記第1シャフトの半径方向に延びる、請求項1から3のいずれか1項に記載の工具。