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  • 特開-ドライブシャフト 図1
  • 特開-ドライブシャフト 図2
  • 特開-ドライブシャフト 図3
  • 特開-ドライブシャフト 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118388
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】ドライブシャフト
(51)【国際特許分類】
   F16D 3/20 20060101AFI20240823BHJP
   F16C 3/02 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
F16D3/20 Z
F16C3/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023036963
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】390010227
【氏名又は名称】株式会社三五
(72)【発明者】
【氏名】小池 佳史
(72)【発明者】
【氏名】野津 健太郎
【テーマコード(参考)】
3J033
【Fターム(参考)】
3J033AA01
3J033AB03
3J033BA01
3J033BA07
3J033BC02
3J033BC10
(57)【要約】
【課題】固定式等速自在継手と摺動式等速自在継手が中空の中間シャフトの両端に取付けられる構造において、強度が高くトルク伝達容量の増大が容易なドライブシャフトを提案する。
【解決手段】中間シャフトは全体に亘って中空であり、固定式等速自在継手のインナーレースに軸部が同軸状に一体形成されるとともに該軸部に中間シャフトの一端開口が外嵌合し、摺動式等速自在継手のトリポードに軸部が同軸状に一体形成されるとともに該軸部に前記中間シャフトの他端開口が外嵌合している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定式等速自在継手と摺動式等速自在継手が中間シャフトの両端に取付けられるドライブシャフトにおいて、
中間シャフトは全体に亘って中空であり、
固定式等速自在継手のインナーレースには軸部が同軸状に一体形成され該軸部に前記中間シャフトの一端開口が外嵌合し、
摺動式等速自在継手のトリポードには軸部が同軸状に一体形成され該軸部に前記中間シャフトの他端開口が外嵌合する、
ことを特徴とするドライブシャフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空シャフトの両端に等速自在継手を取付けたドライブシャフトに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の駆動系に使用されるドライブシャフトは、固定式等速自在継手と摺動式等速自在継手が、中間シャフトの両端に取付けられる構造が一般的である。最近では、軽量化および回転慣性の減少のために、中間シャフトを中空化することがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
一体型かつ中空の中間シャフトを用いた従来のドライブシャフトを、図4に基づいて詳述する。このドライブシャフト101は前輪用ドライブシャフトであり、インボード側には摺動式等速自在継手103が連結され、アウトボード側には固定式等速自在継手104が連結されている。摺動式等速自在継手103としてトリポード型等速自在継手が示され、固定式等速自在継手104は、8個のボールを用いたツェッパ型等速自在継手が示されている。摺動式等速自在継手103は、外側継手部材105、内側継手部材としてのトリポード部材106とローラ107とからなり、トリポード部材106に形成した3本の脚軸108にローラ107が回転自在に嵌合されている。ローラ107は外側継手部材105に形成されたトラック溝109に転動自在に収容されている。
【0004】
トリポード部材106と中空シャフト102の一端がスプライン130(セレーションも含まれる。以下、同じ)により内嵌合され、止め輪111によって軸方向に固定されている。外側継手部材105の外周と中空シャフト102の外周にブーツ120の両端部が取り付けられ、継手内部が密封されている。継手内部には潤滑剤としてのグリースが封入されている。
【0005】
一方、固定式等速自在継手104は、外側継手部材112、内側継手部材113、ボール114および保持器115とからなる。外側継手部材112の球面状内周面118には軸方向に曲線状に湾曲した8本のトラック溝116が形成されている。内側継手部材113の球面状外周面119には、外側継手部材112のトラック溝116に対向するトラック溝117が形成され、両トラック溝116、117間にボール114が配置されている。
【0006】
ボール114は保持器115に収容され、保持器115の内外周面は内側継手部材(インナーレース)113の球面状外周面119と外側継手部材112の球面状内周面118にそれぞれ嵌合している。内側継手部材113へ中空シャフト102の他端がスプライン131により内嵌合され、止め輪122によって軸方向に固定されている。外側継手部材112の外周と中空シャフト102の外周にブーツ121の両端部が取り付けられ、継手内部が密封されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007-315463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、内側継手部材(インナーレース)113やトリポード部材106に大径の開口を設け、その開口内へ中空シャフト102が嵌り込む所謂内嵌合であるので、強度上、開口周囲の肉厚を多く(径方向に厚く)確保する必要があり、十分に確保できないとこの部位が最弱部位となり易い。また、上記の開口と周縁肉厚の関係から、インナーレースやトリポートの軽量化・小型化が困難である。更に、トルク伝達容量を増やそうとすると、中空シャフト102の径を大きくする必要があるが、それには開口の大径化が伴うため開口周囲の肉厚確保と背反となり、大径化は困難である。
【0009】
上記のような課題に鑑み、本発明は、固定式等速自在継手と摺動式等速自在継手が中空の中間シャフトの両端に取付けられる構造において、強度が高くトルク伝達容量の増大が容易なドライブシャフトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明のドライブシャフトにおいては、中間シャフトは全体に亘って中空であり、固定式等速自在継手のインナーレースに軸部が同軸状に一体形成されるとともに該軸部に中間シャフトの一端開口が外嵌合し、摺動式等速自在継手のトリポードに軸部が同軸状に一体形成されるとともに該軸部に前記中間シャフトの他端開口が外嵌合しているものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、インナーレースに軸部が一体化しトリポードに軸部が一体化していて、それぞれの軸部に中間シャフトが外嵌合するので、嵌合部の強度を確保できるとともに、軽量でトルク伝達容量の増大が容易なドライブシャフトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係るドライブシャフトの断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るトリポードの斜視図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るインナーレースの斜視図である。
図4】従来のドライブシャフトの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の望ましい実施形態について図1図3を参照して説明する。
【0014】
図1はドライブシャフト1の全体を断面図で示している。全長に亘って中空である中間シャフト2が中央に配され、図の右手側の端部に固定式等速自在継手3が、図の左手側の端部に摺動式等速自在継手8が、それぞれ取り付けられて、ドライブシャフト1を構成している。
【0015】
固定式等速自在継手3の要部であるインナーレース6について、図3にて説明する。樽状の胴部32には6本のトラック溝31が刻まれており、トラック溝31内をそれぞれのボール5が転動する。同様にボール5は、外側継手部材4の内側に設けられた図示しないトラック溝内も転動する。各ボール5は、保持器7にて動きを制御されている。そして、胴部32と同軸状に、取付け軸である軸部30が形成されている。すなわち、胴部32には従来の嵌合用開口が存在しない。
【0016】
この軸部30の外側に中間シャフト2の一端が外嵌合し固定される。具体的な固定方法としては、圧入のみでも良いし、圧入時に塑性締結加工を加えても良いし、圧入後に電子ビーム等の各種溶接を加えても良い。本図では省略しているが、軸部30にはセレーションを含むスプラインが設けられる。なお、軸部30以外の構造については、従来の固定式等速自在継手を踏襲している。このように、インナーレースの胴部に同軸状に軸部を一体形成するには、閉塞鍛造工法を採用すると良い。
【0017】
次に、摺動式等速自在継手8の要部であるトリポード10について、図2にて説明する。樽状の胴部22から3本の脚部21が放射状に延出している。脚部21には、図示しないローラ12が回転自在に取付けられる。ローラ12は、外側構成部材9内面のトラック溝11内を摺動する。そして、胴部22と同軸状に、取付軸である軸部20が形成され、セレーションを含むスプラインが設けられる。すなわち、胴部22には従来の嵌合用開口が無い。
【0018】
この軸部20の外側に中間シャフト2の他端が外嵌合し固定される。具体的な固定方法としては、圧入のみでも良いし、圧入時に塑性締結加工を加えても良いし、圧入後に電子ビーム等の各種溶接を加えても良い。なお、軸部20以外の構造については、従来のツエッパ型等速自在継手を踏襲している。そして、トリポードの胴部に同軸状に軸部を一体形成するには、閉塞鍛造工法を採用すると良い。
【0019】
以上のように、インナーレース6とトリポード10のそれぞれの軸部20、30に中間シャフト2の端部が外嵌合して、ドライブシャフト1が構成される。このようなドライブシャフト1においては、インナーレースやトリポードに従来のような開口が存在しないので、嵌合部周辺が最弱部位となる懸念が無くなり、強度や伝達トルク容量を保ったままインナーレースやトリポード、および継手全体としての軽量化・小型化が容易となる。また、伝達トルク容量を増大させるために各軸部と中間シャフトの嵌合径を拡大することも容易となる。もちろん、全域に亘って中間シャフト2を中空化できるので、軽量化も確保できる。
【0020】
以上、本発明の実施形態を説明してきたが、本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱し範囲の変更があっても本発明に包含される。
【符号の説明】
【0021】
1 ドライブシャフト
2 中間シャフト
3 固定式等速自在継手
6 インナーレース
8 摺動式等速自在継手
10 トリポード
20、30 軸部
22、32 胴部
図1
図2
図3
図4