(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118403
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】情報認証媒体、転写箔、および情報認証媒体の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/18 20060101AFI20240823BHJP
G02B 5/32 20060101ALI20240823BHJP
B42D 25/328 20140101ALI20240823BHJP
B42D 25/435 20140101ALI20240823BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20240823BHJP
B23K 26/57 20140101ALN20240823BHJP
【FI】
G02B5/18
G02B5/32
B42D25/328
B42D25/328 120
B42D25/435
B32B7/06
B23K26/57
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023134371
(22)【出願日】2023-08-22
(31)【優先権主張番号】P 2023023909
(32)【優先日】2023-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】篠原 健志
(72)【発明者】
【氏名】柴田 城
【テーマコード(参考)】
2C005
2H249
4E168
4F100
【Fターム(参考)】
2C005HA02
2C005HA04
2C005HB02
2C005HB03
2C005JA06
2C005JB08
2C005JB09
2C005LB07
2H249AA03
2H249AA07
2H249AA13
2H249AA50
2H249AA60
2H249AA64
2H249CA01
2H249CA05
2H249CA09
2H249CA15
2H249CA22
4E168AE05
4E168DA02
4E168DA03
4E168DA04
4E168DA23
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4F100DD01
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4F100GB90
4F100JL11
4F100JN18
4F100JN28
(57)【要約】
【課題】情報認証媒体における真贋判定の正確性向上を可能にした情報認証媒体、転写箔、および情報認証媒体の製造方法を提供する。
【解決手段】支持層15から剥離可能に支持層15と接着層13との間に配置されて可視情報を記録された回折格子を備えた転写層10Aを備え、レーザーの照射部位を発色するレーザー発色層に転写層10Aを重ねるように転写されてレーザーを照射される転写箔であって、可視情報は、第1部分と、第1部分と識別可能な第2部分と、を備え、転写層の凹凸構造は、第1部分を記録されたサブ波長構造である第1構造と、第2部分を記録された第2構造と、を備え、第1構造は、レーザーの導波モード共鳴を励振する空間周波数を有し、第2構造は、導波モード共鳴を励振しない空間周波数である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザーの照射部位を発色するレーザー発色層と、
可視情報を記録された回折格子を備えて前記レーザー発色層に重なる転写体と、
を備え、
前記レーザー発色層と前記転写体とに前記レーザーを照射される情報認証媒体であって、
前記転写体は、
前記情報認証媒体を構成する被転写体に接着層を介して転写箔から転写され、
前記回折格子は、
前記接着層と、
凹凸構造を備えたホログラム形成層と、
前記凹凸構造と前記接着層とに挟まれて前記凹凸構造に追従する凹凸形状を有し、かつ前記凹凸構造および前記接着層よりも高い屈折率を有した反射層と、を備え、
前記可視情報は、
第1部分と、
前記第1部分と識別可能な第2部分と、を備え、
前記凹凸構造は、
前記第1部分を記録されたサブ波長構造である第1構造と、
前記第2部分を記録された第2構造と、を備え、
前記第1構造は、前記レーザーの導波モード共鳴を励振する空間周波数を有し、
前記第2構造は、前記導波モード共鳴を励振しない空間周波数である
ことを特徴とする情報認証媒体。
【請求項2】
レーザーの照射部位を発色したレーザー発色層と、
前記照射部位に重なり、かつ可視情報を記録された回折格子を備えた転写体と、
を備える情報認証媒体であって、
前記転写体は、
前記情報認証媒体を構成する被転写体に接着層を介して転写箔から転写され、
前記回折格子は、
前記接着層と、
凹凸構造を備えたホログラム形成層と、
前記凹凸構造と前記接着層とに挟まれて前記凹凸構造に追従する凹凸形状を有し、かつ前記凹凸構造および前記接着層よりも高い屈折率を有した反射層と、を備え、
前記可視情報は、
前記照射部位に重なる第1部分と、
前記第1部分と識別可能な第2部分と、を備え、
前記凹凸構造は、
前記第1部分を記録されたサブ波長構造である第1構造と、
前記第2部分を記録された第2構造と、を備え、
前記第1構造は、前記レーザーの導波モード共鳴を励振する空間周波数を有し、
前記第2構造は、前記導波モード共鳴を励振しない空間周波数であり、
前記接着層のなかで前記照射部位および前記第1部分に重なる部分は、前記転写体のなかで気泡を区切る
ことを特徴とする情報認証媒体。
【請求項3】
前記第1部分は、前記可視情報の輪郭であり、
前記第2部分は、前記第1部分に隣接する
請求項1に記載の情報認証媒体。
【請求項4】
前記第1部分は、前記可視情報の輪郭であり、
前記第2部分は、前記第1部分に隣接する
請求項2に記載の情報認証媒体。
【請求項5】
前記第2部分は、
前記接着層のなかで前記第1部分と前記第2部分とに重なる部分に前記レーザーが照射されて、前記接着層のなかで前記照射部位および前記第1部分に重なる部分が前記転写体のなかで気泡を含み、かつ前記接着層のなかで前記照射部位および前記第2部分に重なる部分が前記転写体のなかで気泡を含まないことによって、前記第1部分から識別されるように構成される
請求項1に記載の情報認証媒体。
【請求項6】
前記第2部分は、
前記接着層のなかで前記第1部分と前記第2部分とに重なる部分に前記レーザーが照射されて、前記接着層のなかで前記照射部位および前記第1部分に重なる部分が前記転写体のなかで気泡を含み、かつ前記接着層のなかで前記照射部位および前記第2部分に重なる部分が前記転写体のなかで気泡を含まないことによって、前記第1部分から識別されるように構成される
請求項2に記載の情報認証媒体。
【請求項7】
前記第2部分は、前記第1部分に隣接し、
前記第2構造の空間周波数は、前記第1構造の空間周波数の0.5倍以下である
請求項1から6のいずれか一項に記載の情報認証媒体。
【請求項8】
前記第2部分は、前記第1部分に隣接し、
前記第2構造の空間周波数は、前記第1構造の空間周波数の1.5倍以上である
請求項1から6のいずれか一項に記載の情報認証媒体。
【請求項9】
前記レーザーの波長は、900nm以上1100nm以下であり、
前記第1構造の空間周波数は1550本/mmである
請求項1から6のいずれか一項に記載の情報認証媒体。
【請求項10】
前記レーザーの波長は、900nm以上1100nm以下であり、
前記第1構造の空間周波数は1550本/mmであり、
前記第2部分は、前記第1部分に隣接し、
前記第2構造の空間周波数は、155本/mm以上1390本/mm以下である
請求項1から6のいずれか一項に記載の情報認証媒体。
【請求項11】
前記レーザーの波長は、900nm以上1100nm以下であり、
前記第1構造の空間周波数は1550本/mmであり、
前記第2部分は、前記第1部分に隣接し、
前記第2構造の空間周波数は、2325本/mm以上3100本/mm以下である
請求項1から6のいずれか一項に記載の情報認証媒体。
【請求項12】
前記凹凸構造における段差は、0.5μm以上1.5μm以下であり、
前記反射層の厚さは、0.05μm以上0.1μm以下であり、
前記接着層の厚さは、3.0μm以上6.0μm以下である
請求項1から6のいずれか一項に記載の情報認証媒体。
【請求項13】
前記第1部分と前記第2部分とは、
別々に文字、記号、絵柄からなる群から選択されるいずれか1つであり、かつ前記第2部分のなかに前記第1部分が配置されている
請求項5または6に記載の情報認証媒体。
【請求項14】
支持層と、
前記支持層から剥離可能に前記支持層に支持された転写層であって、可視情報を記録された回折格子を備えた前記転写層と、を備え、
被転写体に転写された前記転写層の一部である転写体がレーザーの照射部位を発色するレーザー発色層に重ねられて前記レーザーを照射される転写箔であって、
前記回折格子は、
前記被転写体に接着する接着層と、
凹凸構造を備えたホログラム形成層と、
前記凹凸構造と前記接着層とに挟まれて前記凹凸構造に追従する凹凸形状を有し、かつ前記凹凸構造および前記接着層よりも高い屈折率を有した反射層と、を備え、
前記可視情報は、
第1部分と、
前記第1部分と識別可能な第2部分と、を備え、
前記凹凸構造は、
前記第1部分を記録されたサブ波長構造である第1構造と、
前記第2部分を記録された第2構造と、を備え、
前記第1構造は、前記レーザーの導波モード共鳴を励振する空間周波数を有し、
前記第2構造は、前記導波モード共鳴を励振しない空間周波数である
ことを特徴とする転写箔。
【請求項15】
前記第2部分は、
前記接着層のなかで前記第1部分と前記第2部分とに重なる部分に前記レーザーが照射されて、前記接着層のなかで前記照射部位および前記第1部分に重なる部分が前記転写体のなかで気泡を含み、かつ前記接着層のなかで前記照射部位および前記第2部分に重なる部分が前記転写体のなかで気泡を含まないことによって、前記第1部分から識別されるように構成される
請求項14に記載の転写箔。
【請求項16】
レーザーの照射部位を発色するレーザー発色層に転写箔の転写体を重ねるラミネート工程であって、前記転写体が可視情報を記録された回折格子を備える前記ラミネート工程と、
前記レーザー発色層のなかで前記転写体に重なる部分に前記レーザーを照射するレーザー照射工程と、
を含む情報認証媒体の製造方法であって、
前記転写体は、前記情報認証媒体を構成する被転写体に接着層を介して前記転写箔から転写され、
前記回折格子は、
前記接着層と、
凹凸構造を備えたホログラム形成層と、
前記凹凸構造と前記接着層とに挟まれて前記凹凸構造に追従する凹凸形状を有し、かつ前記凹凸構造および前記接着層よりも高い屈折率を有した反射層と、を備え、
前記可視情報は、
第1部分と、
前記第1部分と識別可能な第2部分と、を備え、
前記凹凸構造は、
前記第1部分を記録されたサブ波長構造である第1構造と、
前記第2部分を記録された第2構造と、を備え、
前記第1構造は、前記レーザーの導波モード共鳴を励振する空間周波数を有し、
前記第2構造は、前記導波モード共鳴を励振しない空間周波数であり、
前記レーザー照射工程は、
前記接着層のなかで前記照射部位および前記第1部分に重なる部分が前記転写体のなかで気泡を区切るように前記照射部位に前記レーザーを照射して前記気泡を形成する
ことを特徴とする情報認証媒体の製造方法。
【請求項17】
前記レーザー照射工程は、
前記接着層のなかで前記第1部分と前記第2部分とに重なる部分に前記レーザーを照射して、前記接着層のなかで前記照射部位および前記第1部分に重なる部分が前記転写体のなかで気泡を含み、かつ前記接着層のなかで前記照射部位および前記第2部分に重なる部分が前記転写体のなかで気泡を含まないことによって、前記第1部分から前記第2部分を識別可能にする
請求項16に記載の情報認証媒体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、転写箔から転写された転写体を備える情報認証媒体、転写箔、および情報認証媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パスポートや運転免許証などの情報認証媒体は、認証対象を可視化した文字や絵柄である可視情報を不可逆的に記録されている。可視情報の一例は、光学可変素子(Optical Variable Device:OVD)に記録される。光学可変素子は、光学可変素子の視認される方向の変更に従って光学可変素子の再生する可視情報を変更する。可視情報の他例は、レーザー発色層に記録される。可視情報を記録する方法は、レーザー発色層のなかで変色によって文字や画像を表示できる部位にレーザーを照射する。
【0003】
例えば、情報認証媒体の第1例は、被覆層、発泡層、光学可変素子、およびレーザー発色層を備える。発泡層、および光学可変素子は、被覆層とレーザー発色層との間に配置されている。光学可変素子は、発泡層とレーザー発色層との間に配置されている。情報認証媒体の第1例は、発泡層と光学可変素子との間にさらに発泡促進部を備える。発泡促進部は、発泡促進部と接する部分を発泡層のなかで発泡しやすくする。発泡層の一例は、発泡層の一部が所定温度以上であるときに当該一部の形成材料を分解して気体を生じる。発泡促進部の一例は、赤外線を散乱するインキ、赤外線を反射するインキ、あるいは赤外線を吸収するインキである。
【0004】
レーザー発色層に記録された可視情報は、光学可変素子に記録された可視情報の付加を要求することによって、光学可変素子の抜き取りによる偽造を抑制する。発泡層は、レーザーの照射によって発泡する。被覆層は、レーザー発色層から光学可変素子を剥がすときに、被覆層を剥がすための応力によって発泡層の状態を保ちがたくする。これにより、情報認証媒体は、被覆層を剥がすことによる偽造も抑制する(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した情報認証媒体の第1例は、光学可変素子を偽造防止構造体から取り外すことによる偽造を抑制する。一方、発泡促進部が光学可変素子と別の層であることは、発泡層の可視情報が光学可変素子の可視情報と不整合であることを許容する。こうした不整合の許容は、情報認証媒体における真贋判定の正確性を向上する観点で依然として改善の余地を残している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための情報認証媒体は、レーザーの照射部位を発色するレーザー発色層と、可視情報を記録された回折格子を備えて前記レーザー発色層に重なる転写体と、を備え、前記レーザー発色層と前記転写体とに前記レーザーを照射される情報認証媒体であって、前記転写体は、前記情報認証媒体を構成する被転写体に接着層を介して転写箔から転写され、前記回折格子は、前記接着層と、凹凸構造を備えたホログラム形成層と、前記凹凸構造と前記接着層とに挟まれて前記凹凸構造に追従する凹凸形状を有し、かつ前記凹凸構造および前記接着層よりも高い屈折率を有した反射層と、を備え、前記可視情報は、第1部分と、前記第1部分と識別可能な第2部分と、を備え、前記凹凸構造は、前記第1部分を記録されたサブ波長構造である第1構造と、前記第2部分を記録された第2構造と、を備え、前記第1構造は、前記レーザーの導波モード共鳴を励振する空間周波数を有し、前記第2構造は、前記導波モード共鳴を励振しない空間周波数である。
【0008】
上記課題を解決するための情報認証媒体は、レーザーの照射部位を発色したレーザー発色層と、前記照射部位に重なり、かつ可視情報を記録された回折格子を備えた転写体と、を備える情報認証媒体であって、前記転写層は、前記情報認証媒体を構成する被転写体に接着層を介して転写箔から転写され、前記回折格子は、前記接着層と、凹凸構造を備えたホログラム形成層と、前記凹凸構造と前記接着層とに挟まれて前記凹凸構造に追従する凹凸形状を有し、かつ前記凹凸構造および前記接着層よりも高い屈折率を有した反射層と、を備え、前記可視情報は、前記照射部位に重なる第1部分と、前記第1部分と識別可能な第2部分と、を備え、前記凹凸構造は、前記第1部分を記録されたサブ波長構造である第1構造と、前記第2部分を記録された第2構造と、を備え、前記第1構造は、前記レーザーの導波モード共鳴を励振する空間周波数を有し、前記第2構造は、前記導波モード共鳴を励振しない空間周波数であり、前記接着層のなかで前記照射部位および前記第1部分に重なる部分は、前記転写体のなかで気泡を区切る。
【0009】
上記課題を解決するための転写箔は、支持層と、前記支持層から剥離可能に前記支持層に支持された転写層であって、可視情報を記録された回折格子を備えた前記転写層と、を備え、被転写体に転写された前記転写層の一部である転写体がレーザーの照射部位を発色するレーザー発色層に重ねられて前記レーザーを照射される転写箔であって、前記回折格子は、前記被転写体に接着する接着層と、凹凸構造を備えたホログラム形成層と、前記凹凸構造と前記接着層とに挟まれて前記凹凸構造に追従する凹凸形状を有し、かつ前記凹凸構造および前記接着層よりも高い屈折率を有した反射層と、を備え、前記可視情報は、第1部分と、前記第1部分と識別可能な第2部分と、を備え、前記凹凸構造は、前記第1部分を記録されたサブ波長構造である第1構造と、前記第2部分を記録された第2構造と、を備え、前記第1構造は、前記レーザーの導波モード共鳴を励振する空間周波数を有し、前記第2構造は、前記導波モード共鳴を励振しない空間周波数である。
【0010】
上記課題を解決するための情報認証媒体の製造方法は、レーザーの照射部位を発色するレーザー発色層に転写箔の転写体を重ねるラミネート工程であって、前記転写体が可視情報を記録された回折格子を備える前記ラミネート工程と、前記レーザー発色層のなかで前記転写体に重なる部分に前記レーザーを照射するレーザー照射工程と、を含む情報認証媒体の製造方法であって、前記転写体は、前記情報認証媒体を構成する被転写体に接着層を介して前記転写箔から転写され、前記回折格子は、前記接着層と、凹凸構造を備えたホログラム形成層と、前記凹凸構造と前記接着層とに挟まれて前記凹凸構造に追従する凹凸形状を有し、かつ前記凹凸構造および前記接着層よりも高い屈折率を有した反射層と、を備え、前記可視情報は、第1部分と、前記第1部分と識別可能な第2部分と、を備え、前記凹凸構造は、前記第1部分を記録されたサブ波長構造である第1構造と、前記第2部分を記録された第2構造と、を備え、前記第1構造は、前記レーザーの導波モード共鳴を励振する空間周波数を有し、前記第2構造は、前記導波モード共鳴を励振しない空間周波数であり、前記レーザー照射工程は、前記接着層のなかで前記照射部位および前記第1部分に重なる部分が前記転写体のなかで気泡を区切るように前記照射部位に前記レーザーを照射して前記気泡を形成する。
【0011】
上記各構成によれば、転写体にレーザーが照射されるとき、可視情報の第1部分を記録された第1構造は、可視情報の第2部分を記録された第2構造よりも発熱する。第1構造の局所的な発熱は、被転写体と接着層との界面のなかで第1構造と重なる部分、接着層のなかで第1構造と重なる部分、あるいは剥離層と転写層との界面のなかで第1構造に重なる部分に気泡を形成する。これにより、可視情報の第1部分を記録された第1構造の位置が気泡の位置に整合するように、転写体のなかに自己整合的に気泡が形成される。このように、可視情報の第1部分を記録された第1構造の位置が気泡の位置に整合するため、気泡を利用した可視情報の真贋判定の正確性が高まる。
【0012】
上記情報認証媒体において、前記第1部分は、前記可視情報の輪郭であり、前記第2部分は、前記第1部分に隣接してもよい。
上記構成によれば、可視情報の輪郭を記録された第1構造に気泡が重ねられると共に、可視情報のなかで輪郭に隣接する部分を記録された第2構造に気泡が重ねられない。このため、可視情報の輪郭に重なる気泡の存在、および可視情報の輪郭に隣接する部分に重なる気泡の不存在の検出によって可視情報の真贋判定が可能ともなる。すなわち、可視情報の輪郭という認識されやすい部分の観察によって真贋判定の正確性が高まる。そのため、情報認証媒体の信頼性が高まる。
【0013】
上記情報認証媒体において、前記第2部分は、前記接着層のなかで前記第1部分と前記第2部分とに重なる部分に前記レーザーが照射されて、前記接着層のなかで前記照射部位および前記第1部分に重なる部分が前記転写体のなかで気泡を含み、かつ前記接着層のなかで前記照射部位および前記第2部分に重なる部分が前記転写体のなかで気泡を含まないことによって、前記第1部分から識別されるように構成されてもよい。
【0014】
上記構成によれば、第1部分と第2部分とに重なる部分にレーザーを照射することを真贋判定の工程に組み込むことが可能ともなる。そして、第1部分と第2部分とに重なる部分が発色を要する部位として予想されない場合、これに反し、敢えて当該部分にレーザーを照射することが、真贋判定に組み込まれるため、真贋判定の信頼性も高まる。
【0015】
上記情報認証媒体において、前記第1部分と前記第2部分とは、別々に文字、記号、絵柄からなる群から選択されるいずれか1つであり、かつ前記第2部分のなかに前記第1部分が配置されてもよい。
【0016】
上記構成によれば、第2部分が文字、記号、絵柄からなる群から選択されるいずれか1つであるから、第2部分の全体にわざわざレーザを照射して第2部分の全体をさらに発色させることは、レーザーの照射による発色として予想されにくい。このため、第2部分の全体に敢えてレーザーを照射して第1部分を気泡によって可視化することは、真贋判定の信頼性をさらに高める。
【0017】
上記情報認証媒体において、前記第2部分は、前記第1部分に隣接し、前記第2構造の空間周波数は、前記第1構造の空間周波数の0.5倍以下でもよい。
上記情報認証媒体において、前記第2部分は、前記第1部分に隣接し、前記第2構造の空間周波数は、前記第1構造の空間周波数の1.5倍以上でもよい。
【0018】
上記各構成によれば、第1構造の位置が気泡の位置に整合するように、転写体のなかに自己整合的に気泡が形成されると共に、第2構造に重なる気泡が形成されにくい。すなわち、可視情報の第1部分に重なる気泡が形成される一方、第1部分に隣接する第2部分に重なる気泡が形成されにくい。このため、可視情報の第1部分を記録された第1構造が気泡に重なることの識別の正確性が高まる。結果として、気泡を利用した可視情報の真贋判定の正確性がさらに高まる。
【0019】
上記情報認証媒体において、前記レーザーの波長は、900nm以上1100nm以下であり、前記第1構造の空間周波数は1550本/mmでもよい。
上記構成によれば、真贋判定の正確性向上の実効性が高まる。
【0020】
上記情報認証媒体において、前記レーザーの波長は、900nm以上1100nm以下であり、前記第1構造の空間周波数は1550本/mmであり、前記第2部分は、前記第1部分に隣接し、前記第2構造の空間周波数は、155本/mm以上1390本/mm以下でもよい。
【0021】
上記情報認証媒体において、前記レーザーの波長は、900nm以上1100nm以下であり、前記第1構造の空間周波数は1550本/mmであり、前記第2部分は、前記第1部分に隣接し、前記第2構造の空間周波数は、2325本/mm以上3100本/mm以下でもよい。
【0022】
上記各構成によれば、第1構造の位置が気泡の位置に整合するように、転写体のなかに自己整合的に気泡が形成されると共に、第2構造に重なる気泡が形成されにくい。すなわち、可視情報の第1部分に重なる気泡が形成される一方、第1部分に隣接する第2部分に重なる気泡が形成されにくい。このため、可視情報の第1部分を記録された第1構造が気泡に重なることの識別の正確性が高まる。結果として、気泡を利用した可視情報の真贋判定の正確性がさらに高まる。
【0023】
上記情報認証媒体において、前記凹凸構造における段差は、0.5μm以上1.5μm以下であり、前記反射層の厚さは、0.05μm以上0.1μm以下であり、前記接着層の厚さは、3.0μm以上6.0μm以下でもよい。
【0024】
上記構成によれば、真贋判定の正確性向上の実効性が高まる。
【発明の効果】
【0025】
本開示の情報認証媒体、転写箔、および情報認証媒体の製造方法によれば、情報認証媒体における真贋判定の正確性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、転写箔の層構成を示す断面図である。
【
図2】
図2は、転写層に記録された可視情報の輪郭を示す平面図である。
【
図3】
図3は、可視情報の輪郭における空間周波数を示す断面図である。
【
図4】
図4は、可視情報の内部における空間周波数を示す断面図である。
【
図5】
図5は、可視情報の外部における空間周波数を示す断面図である。
【
図6】
図6は、可視情報の輪郭における作用を示す作用図である。
【
図7】
図7は、可視情報の輪郭における気泡を示す断面図である。
【
図8】
図8は、可視情報の輪郭における気泡を示す断面図である。
【
図9】
図9は、情報認証媒体における可視情報の輪郭を示す平面図である。
【
図10】
図10は、情報認証媒体の層構成を示す構成図である。
【
図11】
図11は、情報認証媒体の製造方法を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、転写層に記録された可視情報の変更例を示す平面図である。
【
図13】
図13は、情報認証媒体における可視情報の変更例を示す平面図である。
【
図14】
図14は、情報認証媒体における可視情報の変更例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1から
図11を参照して、転写箔10、情報認証媒体、および情報認証媒体の製造方法の一実施形態を説明する。情報認証媒体は、被転写体と、転写箔10から被転写体に転写された転写体を備える。情報認証媒体は、情報認証媒体に記録される情報の認証に、情報認証媒体に搭載される転写体の真贋判定を用いられる媒体である。情報認証媒体は、IDカードやパスポートである。
【0028】
[転写箔10]
図1が示すように、転写箔10は、転写層10A、剥離層14、および支持層15を備える。剥離層14は、転写層10Aと支持層15との間に配置されている。剥離層14は、支持層15に接する側面を備える。剥離層14は、転写層10Aに接する側面を備える。剥離層14は、支持層15に接する側面とは反対側の側面で転写層10Aに接している。支持層15は、剥離層14と転写層10Aとを支持している。
【0029】
転写層10Aは、ホログラム形成層11、反射層12、および接着層13を備える。反射層12は、ホログラム形成層11と接着層13との間に配置されている。ホログラム形成層11は、剥離層14に接する側面を備える。ホログラム形成層11は、反射層12に接する側面を備える。ホログラム形成層11は、剥離層14に接する側面とは反対側の側面で反射層12に接している。剥離層14は、ホログラム形成層11、反射層12、および接着層13を支持している。
【0030】
ホログラム形成層11のなかで剥離層14に接する側面は、剥離層14の側面に追従する平面形状を有する。反射層12そのものは、ホログラム形成層11の表面に追従する凹凸形状を有する。接着層13のなかで反射層12に接する側面は、反射層12の表面に追従する凹凸形状を有する。
【0031】
[支持層15]
支持層15は、剥離層14、および転写層10Aを支持する。支持層15は、耐熱性を有した樹脂基材である。支持層15は、樹脂フィルムでもよいし、紙類でもよい。支持層15は、溶融転写型印刷に用いられる基材でもよい。支持層15は、単層構造でもよいし、多層構造でもよい。支持層15に耐熱性の向上、機械的な強度の向上、および曲面に対する追従性の向上を要求される場合、支持層15の厚さは、3μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0032】
支持層15の構成材料は、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、セロファン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリイミド、ナイロン、ポリ塩化ビニリデンからなる群から選択されるいずれか一種でもよい。支持層15の構成材料は、合成紙でもよいし、コンデンサペーパーでもよいし、パラフィン紙でもよい。
【0033】
[剥離層14]
剥離層14は、支持層15に剥離可能に支持される。剥離層14は、支持層15から容易に剥離される剥離性を有する。剥離層14の一部は、転写に際して支持層15から剥離される。転写箔10は、剥離層14の一部が剥離すると共に、接着層13の一部が被転写体に接着することによって、剥離層14の一部と接着層13の一部とに支持される転写層10Aを被転写体に転写する。支持層15から剥離した剥離層14は、転写後の転写層10Aを覆うことによって、転写後の転写層10Aを保護する。剥離層14に剥離性と柔軟性との向上を要求される場合、剥離層14の厚さは、0.1μm以上5μm以下であることが好ましく、0.75μm以上1.75μm以下であることがより好ましく、1.0μm以上1.5μm以下であることがさらに好ましい。
【0034】
剥離層14の構成材料は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、および電子線硬化性樹脂からなる群から選択されるいずれか一種でもよい。剥離層14の柔軟性や箔切れ性の向上を要求される場合、剥離層14の構成材料は、熱可塑性樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂は、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、セルロース系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、エポキシ系樹脂、スチレンアクリレート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ゴム系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種でもよい。
【0035】
剥離層14に箔切れ性や耐摩耗性の向上を要求される場合、剥離層14の構成材料は、石油系ワックスや植物系ワックスなどの各種ワックスを含有してもよい。剥離層14に箔切れ性や耐摩耗性の向上を要求される場合、剥離層14の構成材料は、ステアリン酸などの高級脂肪酸の金属塩、シリコンオイルなどの滑剤、テフロン(登録商標)パウダー、ポリエチレンパウダー、シリコーン系微粒子、アクリルニトリル系微粒子などの有機フィラー、およびシリカ微粒子などの無機フィラーを含有してもよい。
【0036】
剥離層14は、塗工液を用いた溶液コーティングによって形成されてもよいし、押出コーティングによって形成されてもよい。塗工液は、溶剤に剥離層14の構成材料を混合することによって形成される。塗布方法は、グラビアコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ワイヤーバーコート法、ダイコート法、ディップコート法からなる群から選択されるいずれか一種でもよい。
【0037】
[転写層10A]
転写層10Aは、回折格子を備える。回折格子は、可視情報11AE(
図2を参照)を記録されている。回折格子に可視情報11AEを再生させる可視光は、剥離層14から転写層10Aに入射してもよいし、被転写体から転写層10Aに入射してもよい。転写層10Aに記録されている可視情報11AEは、文字、記号、絵柄からなる群から選択される少なくとも1つでもよい。
【0038】
転写層10Aに記録された可視情報11AEは、個人情報でもよいし、個人情報以外の情報でもよい。転写層10Aに記録された可視情報11AEは、それぞれ生体情報でもよいし、非生体情報でもよい。個人情報以外の情報は、絵柄でもよいし、情報認証媒体の発行元でもよいし、情報認証媒体の発行年月日でもよい。生体情報は、生体の特徴のなかで認証される個人に特有の特徴である。非生体情報は、氏名、生年月日、年齢、血液型、性別、国籍、住所、本籍地、電話番号、所属、および身分からなる群から選択される少なくとも1つでもよい。
【0039】
ホログラム形成層11は、回折格子を構成する凹凸構造を備える。凹凸構造は、サブ波長構造を備える。反射層12そのものは、凹凸構造の表面である凹凸面に追従する形状を有する。転写層10Aの回折格子における屈折率は、凹凸構造の凹凸が繰り返される方向に、高屈部と低屈部とを交互に繰り返す。高屈部の屈折率は、低屈部の屈折率よりも高い。高屈部に隣接する2つの低屈部の屈折率は、相互に等しくてもよいし、相互に異なってもよい。高屈部は、単位体積における反射層12の占有体積を低屈部の占有体積よりも高める。
【0040】
転写箔10の一部は、転写層10Aの転写に際して、支持層15から剥離層14を剥離される。転写箔10の一部は、転写層10Aの転写に際して、被転写体に接着層13を接着する。被転写体に転写された転写層10Aの一部は、情報認証媒体を構成する転写体である。情報認証媒体を構成する転写体は、剥離層14から転写体に向けて、あるいは被転写体から転写体に向けて、レーザーL(
図6を参照)を照射される。
【0041】
転写体の回折格子は、転写体に入射するレーザーLの位相を整合させる。転写体に入射したレーザーLのなかで回折格子に回折された光の一部は、導波モード共鳴によって伝播する。導波モード共鳴は、回折格子の位相整合によって回折格子に励振される共鳴である。転写体の回折格子に入射するレーザーLの一部は、共鳴波E(
図6を参照)として閉じ込められる。共鳴波Eの閉じ込められる範囲は、レーザーLが導波モード共鳴によって伝播する範囲である。
【0042】
レーザーLが共鳴波Eとして閉じ込められる範囲は、反射層12に接する凹凸構造の空間周波数によって制限される。共鳴波Eとして閉じ込められるレーザーLは、当該レーザーLの伝播する範囲を発熱させて、これにより転写箔10の内部に気泡12A(
図7,8を参照)を形成する。一方、凹凸構造に閉じ込められずに転写体を透過したり、凹凸構造以外に入射するレーザーLは、情報認証媒体のレーザー発色層22,32(
図10を参照)を発色させる。なお、共鳴波Eとして閉じ込められるレーザーLは、情報認証媒体のレーザー発色層22,32を発色してもよいし、レーザー発色層22,32を発色しなくてもよい。
【0043】
レーザーLの波長は、接着層13に吸収されて転写体の内部に気泡12A(
図7,8を参照)を形成する特定波長である。レーザーLの波長は、レーザー発色層22,32(
図10を参照)を発色させるための特定波長である。特定波長は、遠赤外域でもよいし、近赤外域でもよいし、可視光域でもよい、紫外域でもよい。気泡12Aに位置の精度向上を要求する場合、レーザーLの特定波長は、900nm以上1100nm以下であることが好ましい。レーザーLによる発色に安定性の向上を要求する場合、レーザーLの特定波長は、1020nm以上1090nm以下の近赤外波長であることが好ましい。
【0044】
[ホログラム形成層11]
図2が示すように、ホログラム形成層11は、前景領域11A、背景領域11B、および輪郭領域11Cを備える。輪郭領域11Cは、前景領域11Aを縁取る。前景領域11Aの形状は文字、記号、絵柄からなる群から選択される少なくとも一種としてもよい。
図2は、輪郭領域11Cの形状が図形を含む絵柄の一例である星形状である例を示す。前景領域11Aは、輪郭領域11Cに囲まれている。背景領域11Bは、輪郭領域11Cに対して前景領域11Aの外側に配置されている。輪郭領域11Cは、前景領域11Aと背景領域11Bとの境界である。
【0045】
前景領域11Aは、回折格子に記録された可視情報11AEのなかの前景を記録されている。可視情報11AEのなかの前景は、第2部分の一例である。背景領域11Bは、回折格子に記録された可視情報11AEのなかの背景を記録されている。可視情報11AEのなかの背景は、第2部分の一例である。輪郭領域11Cは、回折領域に記録された可視情報11AEのなかの輪郭を記録されている。可視情報11AEのなかの輪郭は、第1部分の一例である。第2部分は、可視情報11AEのなかで第1部分の周辺部分である。第2部分は、可視情報11AEのなかで第2部分に連なる。
【0046】
可視情報11AEにおける輪郭の形状は、文字、記号、絵柄からなる群から選択される少なくとも一種を縁取る。可視情報11AEのなかの前景は、可視情報11AEのなかの輪郭に囲まれている。可視情報11AEのなかの背景は、可視情報11AEのなかの輪郭に対して前景の外側に配置されている。可視情報11AEのなかの前景、および背景は、第2部分の一例である。可視情報11AEのなかの輪郭は、可視情報11AEのなかの前景と背景との境界である。
【0047】
図3が示すように、ホログラム形成層11は、回折格子を構成する凹凸構造を備える。凹凸構造は、ホログラムを形成するための微細な凹凸を備える。凹凸構造は、微細な凹と凸の周期的な繰り返しである。微細な凹凸は、凸部でもよいし、凹部でもよいし、凸部と凹部との両方でもよい。微細な凹凸の並びは、一次元方向に繰り返されてもよいし、二次元方向に繰り返されてもよい。凹凸構造は、レリーフ構造でもよい。
【0048】
ホログラム形成層11の微細な凹凸が凸部である場合、微細な凹凸の並ぶ空間的な周期W1,W2,W3は、1つの凸部における頂部と、当該凸部に隣接する他の凸部における頂部との間の間隔である。微細な凹凸が凹部である場合、微細な凹凸の並ぶ空間的な周期W1,W2,W3は、1つの凹部における底部と、当該凹部に隣接する他の凹部における底部との間の間隔である。微細な凹凸が凸部と凹部との両方である場合、微細な凹凸の並ぶ空間的な周期W1,W2,W3は、1組の凹凸における頂部と、当該凹凸に隣接する他の組の凹凸における頂部との間の間隔である。
【0049】
ホログラム形成層11の凹凸構造は、サブ波長構造を備える。サブ波長構造において凹凸の並ぶ空間的な周期W1,W2,W3は、可視波長以下の波長であるサブ波長である。可視波長は、可視光の波長であって、360nm以上830nm以下である。微細な凹凸の空間的な周期W1,W2,W3は、凹凸構造における空間周波数の逆数である。凹凸構造の空間周波数は、微細な凹凸の並ぶ方向における単位長さに含まれる微細な凹凸の数量である。
【0050】
ホログラム形成層11の空間周波数は、第1空間周波数として1550本/mmを含む。レーザーLの波長である特定波長が900nm以上1100nm以下である場合、1550本/mmの空間周波数は、レーザーLの強い共鳴波Eを生成できる。第1空間周波数は1390本/mmより大きく2325本/mmより小さくてもよい。この範囲であれば、レーザーLの共鳴波Eを生成できる。ホログラム形成層11のなかで空間周波数が第1空間周波数である部分は、輪郭領域11Cを含む。ホログラム形成層11のなかで空間周波数が第1空間周波数である部分は、輪郭領域11Cのみでもよいし、輪郭領域11Cに加えて輪郭領域11Cから離間した輪郭領域11C以外の部分を含めてもよい。ホログラム形成層11の凹凸構造のなかで輪郭領域11Cの凹凸構造は、第1構造の一例である輪郭構造である。輪郭構造を構成する凸部が突条である場合、あるいは輪郭構造を構成する凹部が溝である場合、輪郭構造の空間周波数は、1550本/mmである。輪郭構造における凹凸の周期W1は、1/1550mmである。
【0051】
図4が示すように、ホログラム形成層11の空間周波数は、第2空間周波数として155本/mm以上1390本/mm以下を含めてもよい。レーザーLの波長である特定波長が900nm以上1100nm以下である場合、155本/mm以上1390本/mm以下の空間周波数は、共鳴波Eの励振が抑制される。ホログラム形成層11は、輪郭領域11Cに、第1空間周波数とは異なる空間周波数を有した他の領域を隣接させている。ホログラム形成層11のなかで空間周波数が第2空間周波数である領域は、前景領域11Aでもよいし、背景領域11Bでもよいし、前景領域11Aと背景領域11Bとの両方でもよい。
【0052】
ホログラム形成層11の凹凸構造のなかで前景領域11Aの凹凸構造は、第2構造の一例である前景構造である。第2構造は、凹凸構造のなかで第1構造の周辺部分である。前景構造を構成する凸部が突条である場合、あるいは前景構造を構成する凹部が溝である場合、前景構造の空間周波数は、155本/mm以上1390本/mm以下でもよい。前景構造における凹凸の周期W2は、1/1390mm以上、1/155/mm以上でもよい。
【0053】
ホログラム形成層11の凹凸構造のなかで背景領域11Bの凹凸構造は、第2構造の一例である背景構造である。背景構造を構成する凸部が突条である場合、あるいは背景構造を構成する凹部が溝である場合、背景構造の空間周波数は、155本/mm以上1390本/mm以下でもよい。背景構造における凹凸の周期W2は、1/1390mm以上1/155/mm以上でもよい。
【0054】
図5が示すように、ホログラム形成層11の空間周波数は、第3空間周波数として2325本/mm以上3100本/mm以下を含めてもよい。レーザーLの波長である特定波長が900nm以上1100nm以下である場合、2325本/mm以上3100本/mm以下の空間周波数は、共鳴波Eの励振を効果的に抑制する。ホログラム形成層11のなかで空間周波数が第3空間周波数である部分は、前景領域11Aでもよいし、背景領域11Bでもよいし、前景領域11Aと背景領域11Bとの両方でもよい。
【0055】
前景構造を構成する凸部が突条である場合、あるいは前景構造を構成する凹部が溝である場合、前景構造の空間周波数は、2325本/mm以上3100本/mm以下でもよい。前景構造における凹凸の周期W3は、1/3100mm以上1/2325/mm以上でもよい。
【0056】
背景構造を構成する凸部が突状である場合、あるいは背景構造を構成する凹部が溝である場合、背景構造の空間周波数は、2325本/mm以上3100本/mm以下でもよい。背景構造における凹凸の周期W3は、1/3100mm以上1/2325/mm以上でもよい。
【0057】
ホログラム形成層11の一部は、剥離層14の一部と共に、転写に際して支持層15から剥離される。ホログラム形成層11に凹凸構造の形成負荷の軽減、および箔切れ性の向上を要求される場合、ホログラム形成層11の凹凸構造における段差は、0.5μm以上1.5μm以下であることが好ましく、0.75μm以上1.25μm以下であることがより好ましい。ホログラム形成層11の凹凸が凸部である場合、凹凸構造における段差は、凸部の高さである。ホログラム形成層11の凹凸が凹部である場合、凹凸構造における段差は、凹部の深さである。ホログラム形成層11の凹凸が凸部と凹部との両方である場合、凹凸構造における段差は、凹部の底部を基準とした凸部の高さである。
【0058】
ホログラム形成層11の構成材料は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、および電子線硬化性樹脂からなる群から選択されるいずれか一種またはその組合せとできる。ホログラム形成層11の柔軟性や箔切れ性の向上を要求される場合、ホログラム形成層11の構成材料は、熱可塑性樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂は、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、セルロース系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、エポキシ系樹脂、スチレンアクリレート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ゴム系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種でもよい。
【0059】
ホログラム形成層11の構成材料は、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポロエチレンナフタレート、塩化ビニルからなる群から選択される少なくとも一種でもよい。ホログラム形成層11の構成材料は、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、ニトロセルロース、アクリルスチレン共重合体、ポリカーボネートからなる群から選択される少なくとも一種でもよい。ホログラム形成層11の構成材料は、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステルウレタン、アクリルウレタン、エポキシウレタン、シリコーン、エポキシ樹脂、およびメラミン樹脂からなる群から選択される少なくとも一種でもよい。ホログラム形成層11の構成材料は、アクリル樹脂でもよいし、メタクリル樹脂でもよい。アクリル樹脂は、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレートからなる群から選択されるいずれか一種のオリゴマー、あるいはポリマーでもよい。メタクリル樹脂は、エポキシメタクリレート、ウレタンメタクリレート、ポリエステルメタクリレートからなる群から選択されるいずれか一種のオリゴマー、もしくはポリマーでもよい。
【0060】
ホログラム形成層11の凹凸構造は、ホログラム形成層11を構成する硬化性樹脂にスタンパの凹凸構造を転写することによって形成されてもよい。スタンパは、レジスト版のニッケル電鋳によって形成されてもよい。レジスト版は、レーザーや電子線の照射によって形成された凹凸構造を備える。凹凸構造が形成される前のホログラム形成層11は、塗工液を用いた溶液コーティングによって形成されてもよいし、押出コーティングによって形成されてもよい。塗工液は、溶剤にホログラム形成層11の構成材料を混合することによって形成される。塗布方法は、グラビアコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ワイヤーバーコート法、ダイコート法、ディップコート法からなる群から選択されるいずれか一種でもよい。
【0061】
[反射層12]
反射層12は、ホログラム形成層11における凹凸構造の表面である凹凸面に接している。反射層12は、輪郭構造の表面である凹凸面に接している。反射層12は、輪郭構造の凹凸面のなかの一部に接してもよいし、輪郭構造の凹凸面の全部に接してもよい。反射層12は、ホログラム形成層11のなかの輪郭構造以外の凹凸構造の凹凸面に接してもよいし、前景構造の表面である凹凸面に接してもよいし、背景構造の表面である凹凸面に接してもよい。
【0062】
反射層12そのものは、凹凸構造の表面である凹凸面に追従する形状を有する。反射層12の厚さは、ホログラム形成層11の凹凸構造における凸部の高さ、あるいは凹凸構造における凹部の深さよりも薄い。反射層12に膜厚均一性の向上、および導波モード共鳴の励振における安定性の向上を要求される場合、反射層12の厚さは、0.05μm以上0.1μm以下であることが好ましく、0.055μm以上0.09μm以下であることがより好ましい。
【0063】
反射層12は、転写層10Aの回折格子が出射する可視光の強度を高めて、これにより回折格子が出射する可視光を構造色として観察可能にする。反射層12の構成材料は、金属でもよいし、金属酸化物でもよいし、合金でもよい。反射層12を構成する金属は、アルミニウム、スズ、ニッケル、銅、銀、および金からなる群から選択されるいずれか一種である。反射層12を構成する合金は、アルミニウム、スズ、ニッケル、銅、銀、および金からなる群から選択されるいずれか一種を含む。反射層12は、真空蒸着法やスパッタリング法などの気相堆積法によって形成されてもよい。
【0064】
反射層12の屈折率は、ホログラム形成層11の屈折率よりも高い。反射層12の屈折率は、接着層13の屈折率よりも高い。凹凸構造の凹凸面に追従する反射層12は、凹凸が繰り返される方向に、単位体積における反射層12の占有体積が相対的に高い部分である高屈部と、単位体積における反射層12の占有体積が相対的に低い部分である低屈部とを交互に繰り返す。これにより、反射層12は、転写層10Aのなかで低屈部と高屈部とを交互に繰り返す。反射層12を主成分とする高屈部は、ホログラム形成層11を主成分とする低屈部と、接着層13を主成分とする低屈部とに挟まれている。
【0065】
図6が示すように、第1空間周波数の凹凸構造に回折された光は、レーザーLの波長以下の周期を有した凹凸構造によって、当該凹凸構造そのものを導波モード共鳴によって伝播する。第1空間周波数以外の空間周波数の凹凸構造に回折された光は、レーザーLの波長よりも大きい周期、あるいは低屈部と高屈部との相違を生成できない小さい周期を有した凹凸構造によって、当該凹凸構造そのものを伝播しにくい。第2空間周波数の凹凸構造に回折された光は、当該凹凸構造そのものを伝播しにくい。このため、第1空間周波数の凹凸構造は、共鳴波EとしてレーザーLを閉じ込める。
【0066】
レーザーLが導波モード共鳴によって伝播する範囲は、空間周波数が第1空間周波数である範囲に制限される。第1空間周波数を有した輪郭構造と反射層12とは、転写層10Aと対向する視点から見て輪郭構造と反射層12とが重なる範囲に、共鳴波EとしてレーザーLを閉じ込める。前景構造と反射層12とは、転写層10Aと対向する視点から見て前景構造と反射層12とが重なる範囲にレーザーLを閉じ込めない。背景構造と反射層12とは、転写層10Aと対向する視点から見て背景構造と反射層12とが重なる範囲にレーザーLを閉じ込めない。
【0067】
図7が示すように、伝播する範囲を制限されたレーザーLは、転写層10Aと対向する視点から見て輪郭構造と重なる範囲を発熱させて、これにより転写箔10の内部のなかで輪郭構造と重なる範囲に気泡12Aを形成する。伝播する範囲を制限されたレーザーLは、転写箔10の内部のなかで前景構造と重なる範囲に気泡12Aを形成しない。また、伝播する範囲を制限されたレーザーLは、背景構造と重なる範囲に気泡12Aを形成しない。
【0068】
[接着層13]
接着層13は、反射層12に接着する接着性と、被転写体に接着する接着性とを有する。接着層13の一部は、剥離層14の一部と共に、転写に際して支持層15から剥離される。転写箔10は、被転写体に接着層13の一部を接着させて、これにより接着層13の一部に支持される転写層10Aを被転写体に接着させる。
【0069】
接着層13の屈折率は、反射層12の屈折率よりも低い。接着層13の屈折率は、ホログラム形成層11の屈折率と等しくてもよいし、ホログラム形成層11の屈折率よりも低くてもよいし、ホログラム形成層11の屈折率よりも高くてもよい。
【0070】
接着層13は、第1空間周波数の凹凸構造を伝播するレーザーLを受けて、これにより当該凹凸構造と重なる部分に気泡12Aを形成する。接着層13は、輪郭構造を伝播するレーザーLを受けて、これにより転写層10Aと対向する視点から見て輪郭構造と重なる部分に気泡12Aを形成する。接着層13は、転写層10Aの内部に気泡12Aを区切る。
【0071】
図7、および
図8が示すように、気泡12Aは、接着層13の内部に配置されてもよいし、接着層13と反射層12との界面に配置されてもよいし、接着層13と被転写体との界面に配置されてもよい。気泡12Aの大きさは、転写層10Aの断面において、接着層13の厚さよりも十分に小さい。
【0072】
図9が示すように、接着層13に反射層12との密着性の向上を要求される場合、気泡12Aの大きさは、転写層10Aと対向する視点から見て、気泡12Aが輪郭領域11Cからはみ出さないような大きさであることが好ましい。気泡12Aに視認性の向上を要求される場合、気泡12Aの大きさは、転写層10Aと対向する視点から見て、輪郭領域11Cの延びる方向と直交する幅方向において、輪郭領域11Cとほぼ等しいことが好ましい。接着層13に反射層12との密着性の向上を要求される場合、気泡12Aの密度は、転写層10Aと対向する視点から見て、1つの気泡12Aが他の気泡12Aに接続しないような大きさであることが好ましい。
【0073】
接着層13に反射層12との密着性の向上、気泡12Aの形成しやすさの向上、および箔切れ性の向上を要求される場合、接着層13の厚さは、3.0μm以上6.0μm以下であることが好ましく、4.0μm以上5.0μm以下であることがより好ましい。
【0074】
接着層13の構成材料は、熱可塑性樹脂である。熱可塑性樹脂は、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、セルロース系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、エポキシ系樹脂、スチレンアクリレート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ゴム系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種でもよい。
【0075】
接着層13は、塗工液を用いた溶液コーティングによって形成されてもよい、押出コーティングによって形成されてもよい。塗工液は、溶剤に接着層13の構成材料を混合することによって形成される。塗布方法は、グラビアコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ワイヤーバーコート法、ダイコート法、ディップコート法からなる群から選択されるいずれか一種でもよい。
【0076】
[情報認証媒体]
図10が示すように、情報認証媒体は、第1透明外装基材21、第1レーザー発色層22、および第1コア層23を備える。第1レーザー発色層22は、第1透明外装基材21と第1コア層23との間に配置されている。第1レーザー発色層22は、第1透明外装基材21に接している。
【0077】
情報認証媒体は、第2透明外装基材33、第2レーザー発色層32、および第2コア層31を備える。第2レーザー発色層32は、第2透明外装基材33と第2コア層31との間に配置されている。第2レーザー発色層32は、第2透明外装基材33に接している。
【0078】
第2透明外装基材33の側面のなかで第2レーザー発色層32と対向する側面は、第1転写体10A1を転写されている。第2レーザー発色層32の側面のなかで第2透明外装基材33と対向する側面は、第2転写体10A2を転写されている。第1転写体10A1は、第2透明外装基材33の表面と対向する視点から見て、第2転写体10A2の全体に重なってもよいし、第2転写体10A2の一部に重なってもよいし、第2転写体10A2と重ならなくてもよい。
【0079】
第2レーザー発色層32は、レーザーLの照射された部位である照射部位に、レーザーLの照射によって発色した発色部32Aを備える。発色部32Aは、認証の対象となる可視発色情報を記録されている。発色部32Aの少なくとも一部は、第2透明外装基材33の表面と対向する視点から見て、第1転写体10A1と重なる部分に配置されている。発色部32Aの少なくとも一部は、第2透明外装基材33の表面と対向する視点から見て、第2転写体10A2と重なる部分に配置されている。なお、情報認証媒体は、第1転写体10A1と第2転写体10A2とのいずれか一方を割愛し、第1転写体10A1のみを備えてもよいし、第2転写体10A2のみを備えてもよい。
【0080】
情報認証媒体は、第1コア層23と第2コア層31との間にインレット41を備える。インレット41は、ICチップ、および通信回路を備える。ICチップは、認証の対象となる不可視情報を読み出し可能に記憶されている。通信回路は、アンテナ、コンデンサ、および抵抗などの各種の素子を備える。通信回路は、非接触によって、ICチップを駆動するための信号を受信すると共に、ICチップに記録された不可視情報をICチップから送信する。
【0081】
発色部32Aに記録された可視発色情報は、文字、記号、絵柄からなる群から選択される少なくとも一種である。発色部32Aに記録された可視発色情報は、回折格子に記録された可視情報11AEの輪郭を備える。発色部32Aに記録された可視発色情報は、回折格子に記録された可視情報11AEの輪郭以外を備えてもよい。
【0082】
発色部32Aに記録された可視発色情報と、ICチップが記録された不可視情報とは、それぞれ独立に個人情報でもよいし、個人情報以外の情報でもよい。発色部32Aに記録された可視発色情報と、ICチップに記憶された不可視情報とは、それぞれ独立に生体情報でもよいし、非生体情報でもよい。個人情報以外の情報は、情報認証媒体の発行元でもよいし、情報認証媒体の発行年月日でもよい。生体情報は、生体の特徴のなかで認証される個人に特有の特徴である。非生体情報は、氏名、生年月日、年齢、血液型、性別、国籍、住所、本籍地、電話番号、所属、および身分からなる群から選択される少なくとも1つでもよい。
【0083】
[透明外装基材21,33]
透明外装基材21,33は、それぞれ可視光を透過する。透明外装基材21,33は、それぞれレーザーLを透過する。透明外装基材21,33の可視光透過率は、それぞれ60%以上100%以下であることが好ましく、80%以上100%以下であることがより好ましい。透明外装基材21,33は、それぞれ単層構造体でもよいし、積層構造体でもよい。インレット41の機械的な保護の向上を要求される場合、透明外装基材21,33の厚さは、それぞれ50μm以上150μm以下が好ましく、75μm以上125μm以下がより好ましい。透明外装基材21,33は、ISO/IEC7810のID-1に準拠した形状を有してもよいし、国際民間航空機関(ICAO)のID-3に準拠した形状を有してもよい。
【0084】
透明外装基材21,33の構成材料は、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートやグリコール変性ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリプロプレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンポリアセタール、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリレート、ポリメチルメタアクリレート、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合合成樹脂、アクリルニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリシロキサン1,4-ジメチルフタレートからなる群から選択されるいずれか一種でもよい。
【0085】
[コア層23,31]
コア層23,31は、インレット41が情報認証媒体の外部から視認されないように、インレット41を隠蔽するための光学特性を有する。コア層23,31は、それぞれ白色を呈することによってインレット41を隠蔽してもよいし、コア層23,31に入射する可視光を反射、あるいは散乱することによってインレット41を隠蔽してもよい。コア層23,31は、それぞれ単層構造体でもよいし、積層構造体でもよい。インレット41の隠蔽性の向上、およびインレット41の機械的な保護の向上を要求される場合、コア層23,31の厚さは、それぞれ150μm以上250μm以下が好ましく、175μm以上225μm以下がより好ましい。
【0086】
コア層23,31の構成材料は、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリカーボネートとポリエステルとのポリマーアロイ、アクリルニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミドからなる群から選択される少なくとも一種でもよい。コア層23,31の構成材料は、酸化チタンや酸化亜鉛などの白色粉末を含有してもよい。
【0087】
[レーザー発色層22,32]
レーザー発色層22,32は、レーザーLを透過する樹脂と、レーザーLを受けて発色するレーザー発色剤と、を含む。レーザー発色層22,32は、それぞれレーザー発色層22,32のなかでレーザーLを照射された部位を不可逆的に発色する。レーザー発色層22,32の発色は、黒色以外から黒色に変色することでもよいし、レーザーLの照射前の色から黒色以外に変色することでもよい。発色性の向上を要求される場合、レーザー発色層22,32の厚さは、それぞれ150μm以上250μm以下が好ましく、175μm以上225μm以下がより好ましい。
【0088】
レーザー発色剤は、炭化によって黒色に発色してもよいし、構造変化によって発色してもよい。レーザー発色剤は、遠赤外線レーザーによって発色してもよいし、近赤外線レーザーによって発色してもよいし、可視光レーザーによって発色してもよいし、紫外線レーザーによって発色してもよい。共鳴波Eに気泡12Aの形成効率の向上を要求される場合、レーザーLの波長である特定波長は、900nm以上1100nm以下であることが好ましい。
【0089】
レーザー発色剤は、炭酸鉛、硫酸鉛、ステアリン酸鉛、鉛白からなる群から選択される鉛化合物でもよい。レーザー発色剤は、シュウ酸コバルト、炭酸コバルト、酢酸銀、黄色酸化鉄、塩基性酢酸ビスマス、水酸化ビスマス、ニッケルアセチルアセテート、乳酸ニッケル、クエン酸銅、炭酸銅からなる群から選択される重金属化合物でもよい。レーザー発色剤は、ロイコ染料と顕色剤との混合物のような有機化合物でもよい。レーザー発色層22,32は、発色を促すため発色促進剤を含有してもよい。発色促進剤は、熱応答性マイクロカプセルでもよいし、酸化チタン粒子でもよいし、シリカ粒子でもよい。レーザー発色層22,32を構成する樹脂は、ポリカーボネートでもよいし、ポリカーボネートとポリエステルとのポリマーアロイでもよい。
【0090】
[情報認証媒体の製造方法]
図11が示すように、情報認証媒体の製造方法は、転写工程(ステップS11)、およびラミネート工程(S12)を含む。情報認証媒体の製造方法は、レーザー照射工程(ステップS13)をさらに含めてもよい。
【0091】
転写工程では、被転写体である第2透明外装基材33に転写箔10から第1転写体10A1が転写される。転写工程では、被転写体である第2レーザー発色層32に転写箔10から第2転写体10A2が転写される。転写方法は、アップダウン方式によるスポット転写でもよいし、ロール転写方式によるストライプ転写でもよい。この際、転写箔10の接着層13が第2透明外装基材33に対向する状態で転写箔10の支持層15にホットスタンプやロールヘッドを押し当てる。
【0092】
次のラミネート工程では、第1透明外装基材21、第1レーザー発色層22、および第1コア層23と、転写工程後の第2透明外装基材33、転写工程後の第2レーザー発色層32、および第2コア層31との間に、インレット41が挟み込まれる。そして、ラミネート工程では、第1透明外装基材21と第2透明外装基材33との間に圧力を加える熱プレスと冷却プレスとを行う。これによって、ラミネート工程で、第1コア層23と第2コア層31とにインレット41が挟まれた状態で、第1透明外装基材21、第1レーザー発色層22、第1コア層23、第2透明外装基材33、第2レーザー発色層32、および第2コア層31を熱圧着する。
【0093】
レーザー照射工程では、ラミネート工程後の第2透明外装基材33から第2レーザー発色層32に向けてレーザーLが照射される。この際、レーザーLを照射する範囲は、輪郭構造が含まれる。また、レーザー照射工程では、ラミネート工程後の第1透明外装基材21から第1レーザー発色層22に向けてレーザーLが照射される。これによって、レーザー照射によって、第1レーザー発色層22の一部を発色すると共に、第2レーザー発色層32の一部を発色する。そして、レーザー照射工程で、接着層13のなかの輪郭構造と重なる部分に気泡12Aが形成される。
【0094】
レーザーLは、Nd:YAGレーザーやNd:YVOレーザーなどの近赤外線パルスレーザーが好ましい。これらのレーザーの発振波長は、1064nmである。レーザーLの出力は、0.25W以上0.75W以下でもよい。レーザーLのパルスエネルギーは、0.003J以上0.020J以下であり、発振周波数は、30Hz以上60Hz以下でもよい。レーザーLは、炭酸ガスレーザーなどの遠赤外線レーザー、可視光パルスレーザーでもよいし、エキシマレーザーでもよい。レーザーLは、Nd:YAGレーザーやNd:YVOレーザーなどの第3高調波を用いる紫外線レーザーでもよいし、半導体レーザーでもよい。レーザーLは、フェムト秒レーザーでもよいし、ピコ秒レーザーでもよい。気泡12Aに位置の精度向上、および形成効率の向上を要求される場合、レーザーLは、Nd:YAGレーザーやNd:YVOレーザーの第3高調波を用いる紫外線レーザーであることが好ましい。また、レーザー発色層22,32に発熱の抑制を要求される場合、レーザーLは、フェムト秒レーザーやピコ秒レーザーなどの超短パルスレーザーであることが好ましい。また、レーザーLの出力は、0.25W以上0.75W以下であることが好ましく、0.4W以上0.6W以下であることがより好ましい。
【0095】
[効果]
以上説明したように、転写箔10、情報認証媒体、および、情報認証媒体の製造方法の一実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
【0096】
(1)転写体にレーザーLが照射されるとき、可視情報11AEの第1部分を記録された第1構造は、可視情報11AEの第2部分を記録された第2構造よりも発熱する。第1構造の局所的な発熱は、被転写体と接着層13との界面のなかで輪郭と重なる部分、接着層13のなかで輪郭と重なる部分、あるいは剥離層14と転写層10Aとの界面のなかで輪郭に重なる部分に気泡12Aを形成する。これにより、可視情報11AEの第1部分の位置が気泡12Aの位置に整合するように、転写体のなかに自己整合的に気泡12Aが形成される。このように、可視情報11AEの第1部分の位置が気泡12Aの位置に整合するため、可視情報11AEの真正性が第1部分と気泡12Aとの重なりによって確かめられる。すなわち気泡12Aを利用した可視情報11AEの真贋判定の正確性が高まる。
【0097】
(2)可視情報11AEの輪郭を記録された輪郭構造に気泡12Aが重ねられると共に、可視情報11AEのなかで前景を記録された前景構造に気泡12Aが重ねられない。このため、可視情報11AEの輪郭に重なる気泡12Aの存在、および可視情報11AEの前景に重なる気泡12Aの不存在の検出によって可視情報11AEの真贋判定が可能ともなる。すなわち、可視情報11AEの輪郭という認識されやすい部分の観察によって真贋判定の正確性が高まる。そのため、真贋判定の正確性向上の実効性が高まる。
【0098】
(3)可視情報11AEの輪郭を記録された輪郭構造に気泡12Aが重ねられると共に、可視情報11AEのなかで背景を記録された背景構造に気泡12Aが重ねられない。このため、可視情報11AEの輪郭に重なる気泡12Aの存在、および可視情報11AEの背景に重なる気泡12Aの不存在の検出によって可視情報11AEの真贋判定が可能ともなる。すなわち、可視情報11AEの輪郭という認識されやすい部分の観察によって真贋判定の正確性が高まる。そのため、真贋判定の信頼性が高まる。
【0099】
(4)レーザー発色層32のなかで輪郭構造と重なる部分が発色する場合、可視情報11AEの輪郭が気泡12Aに重なり、かつ発色部32Aにも重なることによって、可視情報11AEの真正性を確かめられる。このため、気泡12Aを利用した可視情報11AEの真贋判定の正確性がさらに高まる。そのうえ、レーザー発色層32のなかで周辺構造と重なる部分にレーザーLが照射されない場合、可視情報11AEの輪郭周辺において発色部32Aが輪郭のみに重なる。このため、気泡12Aを利用した可視情報11AEの真贋判定の正確性が一層に高まる。
【0100】
(5)レーザー発色層32のなかで輪郭構造と重なる部分が発色しない場合、可視情報11AEの輪郭が気泡12Aと重なり、かつ発色部32Aに重ならないことによって、可視情報11AEの真正性を確かめられる。このため、気泡12Aを利用した可視情報11AEの真贋判定の正確性がさらに高まる。そのうえ、レーザー発色層32のなかで周辺構造と重なる部分にレーザーLが照射される場合、可視情報11AEの輪郭周辺において発色部32Aが輪郭以外のみに重なる。このため、気泡12Aを利用した可視情報11AEの真贋判定の正確性が一層に高まる。
【0101】
なお、上述した実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[転写箔10]
・転写箔10は、支持層15そのものが剥離性を有している場合、あるいは支持層15そのものに離型処理が施されている場合、剥離層14を割愛してもよい。転写箔10は、支持層15と剥離層14との間に中間層を備えてもよい。中間層は、支持層15に対する転写層10Aの剥離しやすさを調節する。
【0102】
・転写箔10は、剥離層14と転写層10Aとの間に中間層を備えてもよい。中間層は、無色透明な層でもよいし、有彩色を有した層でもよいし、無彩色を有した層でもよい。中間層は、文字、記号、絵柄などをインキによって印刷された印刷層でもよい。中間層は、ホログラム形成層11から剥離層14に向けて出射される可視光を散乱させてもよいし、ホログラム形成層11から剥離層14に向けて出射される可視光を屈折させてもよい。
【0103】
・転写層10Aは、回折格子の回折による可視情報11AEとは異なる第2可視情報をさらに記録してもよい。転写層10Aは、第2可視情報を再生する光学素子をさらに備えてもよい。第2可視情報は、反射、透過、散乱、および偏光からなる群から選択される少なくとも一種によって再生されてもよい。
【0104】
[情報認証媒体]
・情報認証媒体は、第1レーザー発色層22と第1コア層23との間に中間層を備えてもよい。情報認証媒体は、第2レーザー発色層32と第2コア層31との間に中間層を備えてもよい。中間層は、第1レーザー発色層22と第1コア層23との密着性を高めてもよいし、第2レーザー発色層32と第2コア層31との密着性を高めてもよい。
【0105】
・可視情報11AEにおける第1部分は、輪郭のように、可視情報11AEのなかで第1部分以外から識別可能な部分である。可視情報11AEにおける第1部分は、文字、記号、絵柄からなる群から選択される少なくとも一種の全体であってもよい。第1空間周波数を有した第1構造は、文字、記号、絵柄からなる群から選択される少なくとも一種の全体であってもよい。この際、第1空間周波数を有した第1構造は、第2空間周波数のように、導波モード共鳴を励振しない空間周波数を有した凹凸構造によって囲まれている。
【0106】
例えば、実施形態に示したように、黒色などに変色するレーザー発色層32の発色は、可視情報11AEの鮮明さを高める。このため、レーザー発色層32のなかで発色させられる部位は、情報認証媒体の偽造抑制の他に、可視情報11AEの視認性向上や意匠性向上を目的として、星形状の縁のように可視情報11AEのなかの輪郭に設定されやすい。そして、ホログラム形成層11の第1構造は、前景領域11Aを縁取るように設定されやすい。可視情報11AEの第1部分は、前景の輪郭に設定されやすい。
【0107】
一方、上記変更例において、可視情報11AEの第1部分は、文字、記号、絵柄からなる群から選択される少なくとも一種の全体でもよい。この場合、レーザー発色層32のなかで発色する部位は、可視情報11AEのなかの輪郭ではなく、可視情報11AEのなかの輪郭以外に設定される。ホログラム形成層11の第1構造は、前景領域11Aの内部や背景領域11Bの内部に設定される。可視情報11AEの第1部分は、前景の内部や背景の内部に設定される。
【0108】
ここで、情報認証媒体は、第1構造にレーザーLを照射されるまで、情報認証媒体の利用者に、第1部分と、第1部分に連なる第2部分とを一体とする可視情報11AEを検出させてもよい。そして、情報認証媒体は、第1構造にレーザーLを照射された後、第1部分のみに記録された情報を検出させてもよい。
【0109】
例えば、
図12が示すように、情報認証媒体のホログラム形成層11は、前景領域11A、および背景領域11Bを備える。前景領域11Aにおける回折格子は、可視情報11AEの前景を記録されている。背景領域11Bにおける回折格子は、可視情報11AEの背景を記録されている。
図12は、前景が星形状の絵柄であり、背景が星形状の絵柄を縁取る矩形である例を示す。
【0110】
ホログラム形成層11は、前景領域11Aのなかに第1領域51Cをさらに備える。第1領域51Cにおける回折格子は、埋め込み情報を記録されている。埋め込み情報は、レーザーLの照射によって可視情報AEのなかに再現される。
図12は、埋め込み情報が文字「A」である例を示す。
【0111】
ホログラム形成層11の凹凸構造において、前景領域11Aの空間周波数は、背景領域11Bの空間周波数とは異なる。前景領域11Aの凹凸構造において、第1領域51Cの空間周波数は、第1領域51C以外の空間周波数とは異なる。第1領域51Cの空間周波数は、第1空間周波数である。第1空間周波数は、レーザーLの共鳴波Eを生成できる。第1空間周波数は、1550本/mmでもよい。
【0112】
前景領域11Aのなかで第1領域51C以外の領域の空間周波数は、第2空間周波数である。第2空間周波数は、共鳴波Eの励起を抑制できる。第2空間周波数は、1350本/mmでもよいし、2632本/mmでもよい。第2空間周波数と第1空間周波数との乖離は、100本/mm以上300本/mm以下でもよい。第2空間周波数が第1空間周波数よりも第1空間周波数の2倍に近い場合、第2空間周波数の1/2と第1空間周波数との乖離は、100本/mm以上300本/mm以下でもよい。これらの乖離は、レーザーLを照射される前の第1領域51Cの視認性と、前景領域11Aのなかの第1領域51C以外の領域の視認性と、の間の乖離を抑える。例えば、
図12のドットが示すように、第1領域51Cと、前景領域11Aのなかの第1領域51C以外の領域と、が恰も1つの星形状であるように、第1領域51Cが可視情報11AEを観察させる。
【0113】
図13が示すように、第1領域51C、あるいは前景領域11Aの全体にレーザーLが照射されると、情報認証媒体のなかで第1領域51Cに重なるように、気泡12Aが生成される。これにより、第1領域51Cに記録された埋め込み情報は、可視情報11AEのなかに気泡12Aによって再現される。
【0114】
ここで、前景領域11Aのなかの領域、あるいは背景領域11Bのなかの領域は、各領域の視認性や意匠性を得る観点から、黒色などに変色するレーザー発色層32の発色部位に設定されにくい。すなわち、前景領域11Aのなかの領域、あるいは背景領域11Bのなかの領域は、レーザーLの照射部位に設定されにくい部位であり、レーザーLの照射部位としてわざわざ設定されることはない。このため、レーザーLの照射部位に設定されにくい前景領域11Aや背景領域11Bに、敢えてレーザーLを照射すること、および当該照射によって埋め込み情報が再現されることは、真贋判定の信頼性を高める。
【0115】
上記変更例において、可視情報11AEの第1部分は、当該第1部分と可視情報AEの第2部分との共同によって、立体的な視覚効果や錯視効果を可視情報11AEに発現するように構成されてもよい。例えば、
図14が示すように、可視情報11AEの第1部分は、可視情報11AEの第2部分を立体的に視認させる影として配置されてもよい。この際、視覚効果や錯視効果を発現させるホログラム形成層11の第1領域51Cは、これもまた埋め込み情報として記録されてもよい。この変更例においても、視覚効果や錯視効果を発現させる部位は、可視情報11AEのなかで区々であるから、第2部分を含む範囲に敢えてレーザーLを照射すること、および当該照射によって埋め込み情報が再現されることは、真贋判定の信頼性を高める。
【符号の説明】
【0116】
10…転写箔
10A…転写層
10A1…第1転写体
10A2…第2転写体
11…ホログラム形成層
11C…輪郭領域
12…反射層
13…接着層
14…剥離層
15…支持層
21…第1コア層
22,32…レーザー発色層
23…第1透明外装基材
31…第2透明外装基材
33…第2コア層
41…インレット