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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118409
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/12 20060101AFI20240823BHJP
   F04B 39/00 20060101ALI20240823BHJP
   F04C 18/02 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
F04B39/12 G
F04B39/00 106Z
F04C18/02 311Q
F04C18/02 311P
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023174361
(22)【出願日】2023-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2023024620
(32)【優先日】2023-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】足立 徹
(72)【発明者】
【氏名】川田 武史
【テーマコード(参考)】
3H003
3H039
【Fターム(参考)】
3H003AB06
3H003AC03
3H003CD01
3H003CF02
3H039AA02
3H039AA12
3H039BB25
3H039CC02
3H039CC03
3H039CC27
(57)【要約】
【課題】高電圧がアースと短絡した場合、一部の筐体部品間の抵抗による電位差が発生してしまうことを抑制することができる電動圧縮機を提供する。
【解決手段】電動圧縮機1は、第1ハウジング10と、第2ハウジング30と、カバー20と、ノズル80とを備えている。また、第1ハウジング10は、第2ハウジング30とで第1ガスケット91を挟んだ状態で配置されている。また、カバー20は、第2ハウジング30とで第2ガスケット92を挟んだ状態で配置されている。また、カバー20に形成された連通路21は、カバー20に形成された第1連通路22と、第2ハウジング30に形成され、第1連通路22と背圧室34とを連通する第2連通路23とを有している。また、ノズル80は、第2連通路23と連通するように第1連通路22の内部に挿入されている。そして、第2ハウジング30には、ノズル80と当接する当接面26が形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮するための動力を付与するモータ駆動部が配置された第1ハウジングと、
前記モータ駆動部の駆動によって冷媒を圧縮する圧縮室が形成された第2ハウジングと、
前記圧縮室で圧縮された高圧冷媒が至る吐出室を有するカバーと、
ノズルとを備え、
前記第1ハウジングは、前記第2ハウジングとで第1ガスケットを挟んだ状態で配置され、
前記カバーは、前記第2ハウジングとで第2ガスケットを挟んだ状態で配置され、
前記カバー及び前記第2ハウジングには、前記吐出室から前記カバー及び前記第2ハウジングを経由して、前記圧縮室の前記吐出室側とは反対側に形成された背圧室に至る連通路が形成され、
前記連通路は、前記カバーに形成された第1連通路と、前記第2ハウジングに形成され、前記第1連通路と前記背圧室とを連通する第2連通路とを有し、
前記ノズルは、前記第2連通路と連通するように前記第1連通路の内部に挿入され、
前記第2ハウジングには、前記ノズルと当接する当接面が形成される
電動圧縮機。
【請求項2】
前記カバー、前記第2ガスケット、前記第2ハウジング、前記第1ガスケット、及び、前記第1ハウジングは、ボルトによってこの並び順で締結され、
前記ボルトは、前記第2ハウジングと非接触となるように、前記第2ハウジングに形成された挿通穴に挿通されている
請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項3】
前記ノズルには、前記第1連通路と前記第2連通路とを連通可能な絞り孔が形成され、
前記絞り孔の径は、前記第1連通路の径及び前記第2連通路の径よりも小さい
請求項1又は2に記載の電動圧縮機。
【請求項4】
前記第2ハウジングと前記ノズルとの間で働く応力は、前記第2ハウジングと前記ノズルとの間を除き、前記第2ガスケットを介して前記第2ハウジングと前記カバーとの間で働く応力よりも大きい
請求項1又は2に記載の電動圧縮機。
【請求項5】
前記当接面と当接する前記ノズルの被当接面の表面粗さは、前記当接面の表面粗さよりも粗い、又は
前記当接面の表面粗さは、前記当接面と当接する前記ノズルの被当接面の表面粗さよりも粗い
請求項1又は2に記載の電動圧縮機。
【請求項6】
前記ノズルは、テーパー状をなしている
請求項1又は2に記載の電動圧縮機。
【請求項7】
前記第2ハウジングに固定され、前記第2ハウジング内に配置された固定スクロールと、
前記モータ駆動部により回転しつつ、前記固定スクロールとの間に冷媒を圧縮する前記圧縮室を形成する可動スクロールとを備え、
前記背圧室は、前記可動スクロールの背面に位置し、前記第2ハウジングと前記可動スクロールとの間に形成される
請求項1又は2に記載の電動圧縮機。
【請求項8】
前記第1連通路は、前記カバーにおける前記第2ガスケット側の面に形成された穴を有し、
前記穴には、前記ノズルが挿入され、
前記穴の内周面の表面粗さは、前記カバーにおける前記第2ガスケット側の面の表面粗さよりも粗い
請求項1又は2に記載の電動圧縮機。
【請求項9】
前記第1連通路は、前記カバーにおける前記第2ガスケット側の面に形成された穴を有し、
前記穴には、前記ノズルが挿入され、
前記ノズルは、前記穴に圧入されることで、前記穴の内部に固定される
請求項1又は2に記載の電動圧縮機。
【請求項10】
前記ノズルの硬度と、前記カバーの硬度とは異なる
請求項1又は2に記載の電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来の電動コンプレッサが開示されている。この電動コンプレッサは、導電性金属材料によって構成されたコンプレッサケースと、導電性金属材料によって構成され、コンプレッサケースに対してその軸線方向一方側に配置されて、インバータ回路を収容するインバータケースと、インバータケースの開口部を塞ぐ蓋と、インバータケース及び蓋の間に挟まれてインバータケース及び蓋の間を密閉するシール部材と、インバータ回路からインバータケースに伝搬される電磁波ノイズをインバータケースからコンプレッサケース及び蓋のうち少なくとも一方に伝える導電部材とを備えている。シール部材は、電気絶縁性材料によって構成されている。そして、導電部材は、インバータケースおよび蓋の間の導通を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6455627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電動コンプレッサのように、コンプレッサケース、インバータケース及び蓋のように複数の筐体部品が連結する構造では、インバータケースと蓋との導通を図ることで、電磁波ノイズを低減することができる。しかしながら、電気絶縁性材料のシール部材がインバータケースと蓋との間に介在するため、高電圧がアースと短絡した場合、十分な接地抵抗を得ることができない。また、位置決め用のピンが筐体部品間に配置されているものの、ピンが筐体部品と完全に接触していない場合、接触していたとしても振動により位置決め用のピンが緩み、筐体部品から離間してしまう場合がある。このため、複数の筐体部品における一部の筐体部品間の抵抗によって電位差が発生してしまうという課題がある。
【0005】
本開示は、高電圧がアースと短絡した場合、一部の筐体部品間の抵抗による電位差が発生してしまうことを抑制することができる電動圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の一態様に係る電動圧縮機は、冷媒を圧縮するための動力を付与するモータ駆動部が配置された第1ハウジングと、前記モータ駆動部の駆動によって冷媒を圧縮する圧縮室が形成された第2ハウジングと、前記圧縮室で圧縮された高圧冷媒が至る吐出室を有するカバーと、ノズルとを備え、前記第1ハウジングは、前記第2ハウジングとで第1ガスケットを挟んだ状態で配置され、前記カバーは、前記第2ハウジングとで第2ガスケットを挟んだ状態で配置され、前記カバー及び前記第2ハウジングには、前記吐出室から前記カバー及び前記第2ハウジングを経由して、前記圧縮室の前記吐出室側とは反対側に形成された背圧室に至る連通路が形成され、前記連通路は、前記カバーに形成された第1連通路と、前記第2ハウジングに形成され、前記第1連通路と前記背圧室とを連通する第2連通路とを有し、前記ノズルは、前記第2連通路と連通するように前記第1連通路の内部に挿入され、前記第2ハウジングには、前記ノズルと当接する当接面が形成される。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る電動圧縮機によれば、高電圧がアースと短絡した場合、一部の筐体部品間の抵抗による電位差が発生してしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態に係る電動圧縮機を示す斜視図である。
図2図2は、実施の形態に係る電動圧縮機を示す断面図である。
図3図3は、電動圧縮機におけるノズルと第1連通路と第2連通路とを示す部分拡大断面図である。
図4図4は、電動圧縮機におけるノズルと第2ハウジングの当接面とを示す部分拡大図である。
図5図5は、電動圧縮機におけるノズルと第1連通路と第2連通路とを示す別の部分拡大断面図である。
図6図6は、電動圧縮機におけるノズルと第1連通路と第2連通路とを示すさらに別の部分拡大断面図である。
図7図7は、電動圧縮機におけるノズルと第1連通路と第2連通路とを示すさらに別の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置等は、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また全ての実施の形態において、各々の内容を組み合わせることもできる。
【0010】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、同じ構成部材については同じ符号を付している。また、以下の実施の形態において、略平行等の表現を用いている。例えば、略平行は、完全に平行であることを意味するだけでなく、実質的に平行である、すなわち、例えば数%程度の誤差を含むことも意味する。また、略平行は、本開示による効果を奏し得る範囲において平行という意味である。他の「略」を用いた表現についても同様である。
【0011】
以下の説明において、電動圧縮機の前後方向をX軸方向と称し、X軸方向と垂直な方向をY軸方向と称す。また、X軸方向における、電動圧縮機のインバータハウジング側をプラス方向側と称し、電動圧縮機のカバー側をマイナス方向側と称す。また、Y軸方向における、電動圧縮機の吐出口側をプラス方向側と称し、電動圧縮機のノズル側をマイナス方向側と称す。図2以降においても、同様に適用する。
【0012】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0013】
(実施の形態)
まず、電動圧縮機1の構成について図1図4を用いて説明する。
【0014】
図1は、実施の形態に係る電動圧縮機1を示す斜視図である。図2は、実施の形態に係る電動圧縮機1を示す断面図である。図3は、電動圧縮機1におけるノズル80と第1連通路22と第2連通路23とを示す部分拡大断面図である。図4は、電動圧縮機1におけるノズル80と第2ハウジング30の当接面26とを示す部分拡大図である。
【0015】
電動圧縮機1は、スクロール型電動圧縮機である。電動圧縮機1は、図示しない車両に搭載されており、車両の冷凍回路を構成している。冷凍回路は、電動圧縮機1、蒸発器、膨張弁及び凝縮器で構成される車両用空調装置の冷凍回路である。
【0016】
図1及び図2に示すように、電動圧縮機1では、X軸方向に沿って、インバータハウジング5、第3ガスケット93、第1ハウジング10、第1ガスケット91、第2ハウジング30、第2ガスケット92、及び、カバー20がボルト等によってこの並び順で連結されることで構成されている。
【0017】
このような電動圧縮機1は、インバータハウジング5と、第1ハウジング10と、カバー20と、第2ハウジング30と、駆動軸40と、モータ駆動部50と、固定スクロール60と、可動スクロール70と、ノズル80とを備えている。
【0018】
インバータハウジング5には、モータ駆動部50を駆動制御させるための電力を供給するインバータ回路6が収容されている。インバータ回路6は、インバータハウジング5に接地されている。
【0019】
また、インバータハウジング5は、第1ハウジング10のX軸プラス方向側に設けられ、第3ガスケット93を介して第1ハウジング10に連結されている。第3ガスケット93は、第1ハウジング10とインバータハウジング5との間のシール性を高めることができる。
【0020】
第1ハウジング10は、冷媒を圧縮するための動力を付与するモータ駆動部50が配置された有底筒状をなした金属製のモータハウジングである。第1ハウジング10は、第2ハウジング30のX軸プラス方向側に設けられ、第1ガスケット91を介して第2ハウジング30に連結されている。つまり、第1ハウジング10は、第2ハウジング30とで第1ガスケット91を挟んだ状態で配置されている。第1ガスケット91は、第1ハウジング10と第2ハウジング30との間のシール性を高めることができる。
【0021】
第1ハウジング10は、第1底壁11と、第1周壁12とを有している。
【0022】
第1底壁11は、第1ハウジング10のX軸プラス方向側の端部(前端)に位置しており、第1ハウジング10の径方向に沿って延びている。第1周壁12は、筒状をなしている。具体的には、第1周壁12は、第1底壁11と接続しており、第1底壁11から駆動軸40の駆動軸心Oに沿って延びている。第1ハウジング10は、第1底壁11と第1周壁12とにより、モータ室17を形成している。なお、駆動軸心Oは、X軸方向と略平行である。
【0023】
第1ハウジング10には、吸入口13と、支持部14とが形成されている。吸入口13は、Y軸プラス方向側の第1周壁12に形成されており、モータ室17と連通している。なお、吸入口13は、第1底壁11に形成されてもよい。吸入口13は、図示しない蒸発器と接続されており、蒸発器を経た冷媒をモータ室17内に吸入させる。つまり、モータ室17は、吸入室を兼ねている。支持部14は、円筒状をなしており、内部に第1軸受19が設けられている。
【0024】
カバー20は、第2ハウジング30のX軸マイナス方向側の端部(後端)に位置しており、第1ハウジング10の径方向に沿って延びている。カバー20は、第2ガスケット92を介して第2ハウジング30に連結されている。つまり、カバー20は、第2ハウジング30とで第2ガスケット92を挟んだ状態で配置されている。第2ガスケット92は、カバー20と第2ハウジング30との間のシール性を高めることができる。カバー20は、固定スクロール60と可動スクロール70との間の圧縮室60aで圧縮された高圧冷媒が至る吐出室20aを形成する。カバー20には、吐出室20aと、吐出口20bと、連通路21の一部である第1連通路22とが形成されている。
【0025】
吐出室20aは、カバー20内において、X軸プラス方向側に位置した凹みによって形成されている。吐出口20bは、吐出室20aと連通しており、カバー20の外部に向かって開口している。吐出口20bは、図示しない凝縮器と接続されている。
【0026】
また、吐出室20aには、高圧冷媒に含まれる油を回収するためのオイルセパレータ95を配置する油分離室96が形成されている。オイルセパレータ95で分離された油は、油分離室96に貯留される。この油は、第1連通路22に配置されているフィルタ90を経て、第2連通路23を流通することにより、固定スクロール60及び可動スクロール70等の摺動箇所に供給されて潤滑する。
【0027】
第1連通路22は、吐出室20aからカバー20の外周面に近づくように所定距離延びる第1穴22aと、第2ハウジング30の第2周壁32からX軸マイナス方向に沿って所定距離延び、第1穴22aの先端と連通する第2穴22bとで構成されている。本実施の形態では、第1穴22aはX軸方向及びY軸方向に対して傾斜する方向に沿って延び、第2穴22bはその延びる方向がX軸方向と略平行であるが、これらには限定されない。第1連通路22は、第2ハウジング30における第2周壁32の第2連通路23に至るように形成されていればよく、第1穴22a及び第2穴22bの構成に限定されない。例えば、第1連通路22は、3つ以上の穴で構成されていてもよい。
【0028】
第2穴22bには、オイルセパレータ95で分離された油に含まれる不純物を除去するフィルタ90と、柱状をなした金属製のノズル80とが挿入されている。
【0029】
第2ハウジング30は、カバー20のX軸プラス方向側の端面に接続されており、カバー20から駆動軸40の駆動軸心Oに沿って延びている。つまり、第2ハウジング30は、カバー20と第1ハウジング10との間に配置され、カバー20と第1ハウジング10とで挟まれている。
【0030】
第1ハウジング10、第2ハウジング30及びカバー20は、カバー20側から挿入される複数のボルト7によって、締結されることで、一体的に構成されている。つまり、第2ハウジング30は、第1ハウジング10及びカバー20に挟持されつつ、第1ハウジング10及びカバー20に連結されている。具体的には、カバー20、第2ガスケット92、第2ハウジング30、第1ガスケット91、及び、第1ハウジング10は、金属製のボルト7によってこの並び順で締結されている。ボルト7は、第2ハウジング30と非接触となるように、第2ハウジング30に形成された挿通穴32aに挿通されている。このため、ボルト7は、カバー20と第1ハウジング10とを導通させているが、第2ハウジング30と導通し難い。
【0031】
第2ハウジング30には、モータ駆動部50の駆動によって冷媒を圧縮する圧縮室60aが形成されている。具体的には、第2ハウジング30は、有底筒状をなした金属製の容器であり、電動圧縮機1の圧縮室60aを形成するための圧縮機構となる固定スクロール60と可動スクロール70とを収容している。第2ハウジング30は、第2底壁31と、第2周壁32とを有している。
【0032】
第2底壁31は、第2ハウジング30のX軸プラス方向側の端部(前端)に位置しており、第2ハウジング30の径方向(Y軸方向)に延びている。第2底壁31は、モータ駆動部50と可動スクロール70との間に配置されている。第2底壁31には、モータ室17の容積を小さくするように、モータ駆動部50に向かって突出するボス33が形成されている。ボス33の先端部には、貫通孔33aが形成されている。ボス33内には、第2軸受44と、シール材45とが設けられている。ボス33の外径は、モータ駆動部50のコイルエンドの内径よりも小さく形成されている。
【0033】
第2周壁32は、筒状をなしている。具体的には、第2周壁32は、第2底壁31と接続しており、第2底壁31から駆動軸40の駆動軸心Oに沿って延びている。第2周壁32は、内部に固定スクロール60と可動スクロール70とを収容している。
【0034】
また、第2ハウジング30には、連通路21の一部である第2連通路23が形成されている。第2連通路23は、第1連通路22の第2穴22bにおけるX軸プラス方向側の開口と接続されている。具体的には、第2連通路23は、第2周壁32に形成されている第3穴23aと、第2底壁31に形成されている第4穴23bとで構成されている。
【0035】
第3穴23aは、第1連通路22の第2穴22bにおけるX軸プラス方向側の開口と接続されている。第3穴23aは、第2周壁32においてX軸方向に沿って延びている。本実施の形態の第3穴23aは、ノズル80側の開口部分において幅広くなるような凹部が形成されている。第4穴23bは、第3穴23aの先端側(X軸プラス方向側の端部)に連通し、駆動軸40に近づくように、第3穴23aの先端側から背圧室34まで延びている。
【0036】
このようなカバー20及び第2ハウジング30には、吐出室20aからカバー20(第1連通路22)及び第2ハウジング30(第2連通路23)を経由して、圧縮室60aの吐出室20a側とは反対側に形成された背圧室34に至る連通路21が形成されている。本実施の形態の図2では、連通路21は、吐出室20aからカバー20及び第2ハウジング30だけを経由して可動スクロール70の背面の背圧室34に至る場合を例示している。
【0037】
なお、第4穴23bはY軸方向に対して傾斜する方向に沿って延びているが、これには限定されない。また、本実施の形態では、第3穴23aはその延びる方向がX軸方向と略平行であり、第4穴23bはY軸方向に対して傾いているが、これには限定されない。第2連通路23は、カバー20における第1連通路22から背圧室34に至るように形成されていればよく、第3穴23a及び第4穴23bの構成に限定されない。例えば、第2連通路23は、3つ以上の穴で構成されていてもよい。
【0038】
ノズル80は、フィルタ90と、第2ハウジング30の第2連通路23の開口部との間に配置され、第2連通路23と対向するように第1連通路22の第2穴22bに挿入されている。ノズル80は、第2穴22b内で摺動しないように、第2穴22b内に嵌め合わされて固定されている。
【0039】
図3に示すように、ノズル80は、弁体本体81と、突出部82とを有している。
【0040】
弁体本体81は、円柱状をなしている。弁体本体81は、絞り孔83を除き、連通路21の開口(第2穴22bの開口)を塞ぐことが可能である。
【0041】
突出部82は、弁体本体81よりも小径な円柱状をなしている。突出部82は、弁体本体81から突出し、フィルタ90に挿入されている。
【0042】
ノズル80には、第2穴22bと第2連通路23とを連通可能な絞り孔83が形成されている。絞り孔83の孔径は、第1連通路22の径及び第2連通路23の径よりも小さい。具体的には、絞り孔83の孔径は、第1連通路22の第2穴22b及び第2連通路23の第3穴23aのそれぞれの孔径よりも小さい。絞り孔83は、X軸方向に沿って延びる貫通孔であり、弁体本体81から突出部82に跨って形成されている。絞り孔83は、常に第1連通路22の第2穴22bと第2連通路23の第3穴23aとを連通させている。
【0043】
ノズル80における弁体本体81の一端面の一部は、第2ハウジング30と当接している。弁体本体81の一端面は、X軸プラス方向側の面(被当接面81a)である。つまり、第2ハウジング30には、第1連通路22と対向するように、ノズル80と当接する当接面26が形成されている。つまり、第2連通路23の第3穴23aの一部を埋めるように、第2ハウジング30の第2連通路23の第3穴23aに当接面26が形成されているため、弁体本体81は、第2連通路23の第3穴23aの開口かつ当接面26と対向するように配置される。
【0044】
図4に示すように、図4の二点鎖線で示す弁体本体81と第2ハウジング30の第3穴23aとを重ねて見た場合、弁体本体81は、第2ハウジング30における第2連通路23の第3穴23aと重なっている。このため、弁体本体81の一端面の一部は、第2ハウジング30と当接することで、ノズル80と第2ハウジング30とが導通することとなる。
【0045】
また、ノズル80は、カバー20の第2穴22bに挿入されているため、カバー20と導通している。このため、第2ハウジング30は、ノズル80を介してカバー20と導通することができる。
【0046】
ノズル80は、弾性体85を有している。弾性体85は、Oリングである。弾性体85は、ノズル80の弁体本体81の外周側に巻き付けられている。これにより、弾性体85は、第2穴22bと第3穴23aとの間をシールすることで、この間の冷媒の流動を抑制している。
【0047】
駆動軸40は、駆動軸心Oを構成し、X軸方向に沿って延びる円柱状をなしている。駆動軸40は、第1ハウジング10及び第2ハウジング30に渡って配置され、駆動軸心O周りで回転可能に設けられている。駆動軸40は、小径部41と、大径部42と、偏心ピン43とを有している。
【0048】
小径部41は、駆動軸40のX軸プラス方向側に位置している。大径部42は、小径部41よりもX軸マイナス方向側に位置している。大径部42は、小径部41よりも大径に形成されている。偏心ピン43は、大径部42に固定されている。偏心ピン43は、大径部42のX軸マイナス方向側の端面において、駆動軸心Oから偏心した位置に配置されている。偏心ピン43は、小径部41よりも小径をなす円柱状に形成されており、大径部42の端面からX軸マイナス方向に沿って延びている。
【0049】
駆動軸40は、第1ハウジング10及び第2ハウジング30内に設けられている。そして、駆動軸40の小径部41は、第1軸受19を介して、第1ハウジング10の支持部14に回転可能に軸支されている。大径部42及び偏心ピン43は、ボス33の貫通孔33aに挿通されて、ボス33内に進入している。ボス33内において、大径部42のX軸マイナス方向の部分は、第2軸受44に回転可能に軸支されている。こうして、駆動軸40は、第1ハウジング10及び第2ハウジング30内で駆動軸心O周りに回転可能となっている。また、シール材45によって、第2ハウジング30と駆動軸40との間、つまり、大径部42とボス33の貫通孔33aとの間が封止されている。さらに、偏心ピン43は、ボス33内でブッシュ47と嵌合している。
【0050】
モータ駆動部50は、モータ室17内に収容され、駆動軸40を駆動軸心O周りで回転させる回転力を付与する。モータ駆動部50は、ステータ50aと、ロータ50bとを有している。
【0051】
ステータ50aは、モータ室17内において、第1周壁12の内周面に固定されている。ステータ50aは、第1ハウジング10のX軸プラス方向側に配置されたインバータ回路6と電気的に接続されている。
【0052】
ステータ50aは、ステータコアと、コイルエンドとを有している。ステータコアは円筒状に形成されている。ステータコアには、コイルが捲回されている。コイルエンドは、ステータコアから軸方向で前後に突出する環状をなしている。コイルエンドは、コイルの一部によって形成されている。ここで、上記のように、ボス33の外径は、コイルエンドの内径よりも小さいため、コイルエンドとボス33との干渉が回避されている。
【0053】
ロータ50bは、円筒状であるステータ50aの内側に配置されており、駆動軸40の小径部41に固定されている。ロータ50bは、ステータ50a内で回転することにより、駆動軸40を駆動軸心O周りで回転させる。
【0054】
図1及び図3に示すように、固定スクロール60は、第2ハウジング30に固定され、第2ハウジング30内に配置されている。固定スクロール60は、固定基板61と、固定渦巻壁62とを有している。
【0055】
固定基板61は、固定スクロール60のX軸マイナス方向側に位置しており、円盤状に形成されている。固定基板61には、吐出ポート63が形成されている。吐出ポート63は、固定スクロール60が第2ハウジング30に固定されることによって形成される吐出室20aと対向している。吐出ポート63は、固定基板61内を駆動軸心O方向に沿って延びており、圧縮室60aと吐出室20aとを連通している。
【0056】
固定基板61には、吐出ポート63のカバー20側の開口を開閉するための弁体である吐出リード弁94が、ピン等の固定部材によって取付けられている。固定部材及び吐出リード弁94は、吐出室20a内に配置されている。吐出リード弁94は、弾性変形することにより、吐出ポート63のカバー20側における開口の開閉を行う。なお、吐出リード弁94は、弾性変形量を調整するリテーナを有する。
【0057】
固定渦巻壁62は、固定基板61のX軸プラス方向側の面から、可動スクロール70に向かって立ち上がるように延びている渦巻状の壁である。
【0058】
図1及び図2に示すように、可動スクロール70は、第2ハウジング30内に設けられており、固定スクロール60と第2ハウジング30の第2底壁31との間に配置されている。可動スクロール70は、可動基板71と、可動渦巻壁72とを有している。
【0059】
可動基板71は、可動スクロール70のX軸プラス方向側に位置しており、円盤状に形成されている。可動基板71には、第3軸受46を介してブッシュ47が回転可能に支持されている。可動スクロール70は、ブッシュ47及び偏心ピン43を通じて、駆動軸心Oから偏心した位置で駆動軸40と接続されている。可動渦巻壁72は、可動基板71のX軸マイナス方向側の面から、固定基板61に向かって立ち上がるように延びている渦巻状の壁である。
【0060】
固定スクロール60と可動スクロール70とは、互いに噛み合わされている。つまり、可動渦巻壁72が固定渦巻壁62に合わさり、噛み合っている。つまり、可動スクロール70は、固定スクロール60との間に冷媒を圧縮する圧縮室60aを形成している。具体的には、固定スクロール60と可動スクロール70との間には、固定基板61、固定渦巻壁62、可動基板71及び可動渦巻壁72によって、圧縮室60aが形成される。圧縮室60aは、吐出ポート63を介して吐出室20aと連通している。
【0061】
可動スクロール70と第2底壁31との間には、金属製プレート79が設けられている。金属製プレート79と第2底壁31との間には、背圧室34回りに位置するOリング78が設けられている。可動スクロール70は、Oリング78の弾性変形時の復元力によって、金属製プレート79を介して固定スクロール60側に付勢されている。可動スクロール70は、金属製プレート79及びOリング78を介して第2底壁31と当接している。金属製プレート79は、金属製の板によって形成されている。
【0062】
可動基板71及び金属製プレート79により、固定ブロック3のボス33内には、背圧室34が形成されている。つまり、第2ハウジング30と可動スクロール70との間には、可動スクロール70の背面に位置する背圧室34が形成されている。背圧室34は、Oリング78と金属製プレート79とによって封止されている。背圧室34は、内部の冷媒の圧力によって、可動スクロール70を固定スクロール60側に付勢することで、圧縮室60aを好適に封止する。
【0063】
このような電動圧縮機1では、インバータ回路6によって、モータ駆動部50が制御されることにより、駆動軸40が駆動軸心O周りで回転する。これにより、可動スクロール70が回転し、可動基板71が固定渦巻壁62の先端を摺動するとともに、固定渦巻壁62と可動渦巻壁72とが互いに摺動する。この際、可動スクロール70は、自転阻止ピンによって自転が規制されて公転のみ可能となっている。可動スクロール70が回転することにより、モータ室17内の冷媒が吸入通路を経て圧縮室60a内に吸入される。そして、圧縮室60aは、可動スクロール70の回転によって、容積を減少させつつ、内部の冷媒を圧縮する。
【0064】
第3穴23a内の冷媒の圧力は吐出室20a内の高圧冷媒の圧力よりも低いため、吐出室20a内の高圧冷媒は、第1連通路22へ至り、第1連通路22のノズル80の絞り孔83を経由して、第2穴22bから第2連通路23の第3穴23aへ僅かに流入する。つまり、ノズル80が第1連通路22と第2連通路23との間を塞ぐように配置されているため、吐出室20aの高圧冷媒は、ノズル80の絞り孔83を経由して、第1連通路22の第2穴22bから第2連通路23の第3穴23aに僅かに流れ込む。このとき、ノズル80が第3穴23aへ向けて押し付けられるため、ノズル80の被当接面81aが当接面26から離間し難くなる。このため、第2ハウジング30は、ノズル80を介してカバー20と、より確実に導通することができる。
【0065】
また、電動圧縮機1において、カバー20、第1ガスケット91、第1ハウジング10、第2ガスケット92、及び、第2ハウジング30を組み付ける場合、ノズル80の一部が第2穴22bから僅かに飛び出た状態となるようにノズル80をカバー20の第2穴22bに挿入する。そして、カバー20、第1ガスケット91、第1ハウジング10、第2ガスケット92、及び、第2ハウジング30をボルト7で締結する際に、ノズル80の被当接面81aが第2連通路23の第3穴23aを形成する第2周壁32の当接面26と当接して押し当てられる。これにより、ノズル80がカバー20と導通するとともに、ノズル80が第2ハウジング30とも導通する。このとき、被当接面81aが当接面26に押し当てられることで、第2ハウジング30とノズル80との間で働く応力は、第2ハウジング30とノズル80との間を除き、第2ガスケット92を介して第2ハウジング30とカバー20との間で働く応力よりも大きくなる。このため、被当接面81aが当接面26から離間し難くなる。
【0066】
<作用効果>
次に、本実施の形態における電動圧縮機1の作用効果について説明する。
【0067】
以上のように、本実施の形態における電動圧縮機1は、冷媒を圧縮するための動力を付与するモータ駆動部50が配置された第1ハウジング10と、モータ駆動部50の駆動によって冷媒を圧縮する圧縮室60aが形成された第2ハウジング30と、圧縮室60aで圧縮された高圧冷媒が至る吐出室20aを有するカバー20と、ノズル80とを備えている。また、第1ハウジング10は、第2ハウジング30とで第1ガスケット91を挟んだ状態で配置されている。また、カバー20は、第2ハウジング30とで第2ガスケット92を挟んだ状態で配置されている。また、カバー20及び第2ハウジング30には、吐出室20aからカバー20及び第2ハウジング30を経由して、圧縮室60aの吐出室20a側とは反対側に形成された背圧室34に至る連通路21が形成されている。また、連通路21は、カバー20に形成された第1連通路22と、第2ハウジング30に形成され、第1連通路22と背圧室34とを連通する第2連通路23とを有している。また、ノズル80は、第2連通路23と連通するように第1連通路22の内部に挿入されている。そして、第2ハウジング30には、ノズル80と当接する当接面26が形成されている。
【0068】
これによれば、カバー20と第2ハウジング30との間に第2ガスケット92が配置されていても、ノズル80がカバー20と第2ハウジング30とを導通させることができる。
【0069】
したがって、高電圧がアースと短絡した場合、カバー20、及び、第2ハウジング30のうちの一部の筐体部品間の抵抗による電位差が発生してしまうことを抑制することができる。
【0070】
特に、本実施の形態のようなカバー20と第2ハウジング30とを導通させるノズル80を採用していない従来の電動圧縮機におけるカバーと第2ハウジングとの抵抗値に対し、本実施の形態では、カバー20と第2ハウジング30とがノズル80を介して導通しているため、数万分の1の抵抗値となることが判った。これにより、本実施の形態の電動圧縮機1は、従来の電動圧縮機に比べてより有利な効果を有する。
【0071】
また、本実施の形態における電動圧縮機1において、第2ハウジング30に固定され、第2ハウジング30内に配置された固定スクロール60と、モータ駆動部50により回転しつつ、固定スクロール60との間に冷媒を圧縮する圧縮室60aを形成する可動スクロール70とを備える。そして、背圧室34は、可動スクロール70の背面に位置し、第2ハウジング30と可動スクロール70との間に形成される。
【0072】
この場合においても、上述と同様の作用効果を奏する。
【0073】
また、本実施の形態における電動圧縮機1において、カバー20、第2ガスケット92、第2ハウジング30、第1ガスケット91、及び、第1ハウジング10は、ボルト7によってこの並び順で締結されている。そして、ボルト7は、第2ハウジング30と非接触となるように、第2ハウジング30に形成された挿通穴32aに挿通されている。
【0074】
これによれば、モータ駆動部50を駆動するための高電圧がアースと短絡した場合、カバー20と第2ハウジング30との間に第2ガスケット92が配置されていても、ノズル80がカバー20と第2ハウジング30とを導通させることができる。
【0075】
また、ボルト7によってカバー20と第1ハウジング10とが導通されている。このため、カバー20と、第1ハウジング10と、第2ハウジング30とが導通することとなっている。
【0076】
このため、高電圧がアースと短絡した場合、カバー20、第1ハウジング10、及び、第2ハウジング30のうちの一部の筐体部品間の抵抗による電位差が発生してしまうことを抑制することができる。
【0077】
特に、本実施の形態のようなカバー20と第2ハウジング30とを導通させるノズル80を採用していない従来の電動圧縮機におけるカバーと第2ハウジングとの抵抗値、及び、カバーと第1ハウジングとの抵抗値に対し、本実施の形態では、カバー20と第2ハウジング30とがノズル80を介して導通しているため、数万分の1の抵抗値となることが判った。これにより、本実施の形態の電動圧縮機1は、従来の電動圧縮機に比べてより有利な効果を有する。
【0078】
また、本実施の形態における電動圧縮機1において、ノズル80には、第1連通路22と第2連通路23とを連通可能な絞り孔83が形成されている。そして、絞り孔83の径は、第1連通路22の径及び第2連通路23の径よりも小さい。
【0079】
これによれば、ノズル80が第1連通路22と第2連通路23との間を塞ぐように配置されているため、吐出室20a内の高圧冷媒の圧力は、第2連通路23内の冷媒の圧力よりも高くなっている。例えば、電動圧縮機1が車両に搭載された場合、車両が振動したとしても、ノズル80が高圧冷媒の圧力によって第2連通路23へ向けて押し付けられた状態が維持されるため、ノズル80の被当接面81aが当接面26から離間し難い。その結果、本実施の形態の電動圧縮機1によれば、電動圧縮機1が車両に搭載されても、カバー20と第2ハウジング30、カバー20と第1ハウジング10の導通を長期間に亘って維持することができる。
【0080】
また、ノズル80が絞り孔83を除き第1連通路22と第2連通路23との連通を塞ぐように配置されているため、絞り孔83は、第1連通路22から第2連通路23への高圧冷媒の過度な流入を抑制することができる。
【0081】
また、本実施の形態における電動圧縮機1において、第2ハウジング30とノズル80との間で働く応力は、第2ハウジング30とノズル80との間を除き、第2ガスケット92を介して第2ハウジング30とカバー20との間で働く応力よりも大きい。
【0082】
これによれば、カバー20の第2穴22bにノズル80を挿入し、カバー20、第2ガスケット92、第2ハウジング30、第1ガスケット91、及び、第1ハウジング10のこの並び順で配列されるようにボルト7で締結することで、ノズル80の被当接面81aが第2ハウジング30の当接面26に強く押し付けられる。このため、ノズル80と第2ハウジング30との導通をより強固にすることができる。
【0083】
(その他変形例等)
以上、本開示に係る電動圧縮機について、上記実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思い付く各種変形を実施の形態に施したものも、本開示の範囲に含まれてもよい。
【0084】
例えば、上記実施の形態に係る電動圧縮機1aは、図5に示す構成であってもよい。図5は、電動圧縮機1aにおけるノズル80と第1連通路22と第2連通路23とを示す別の部分拡大断面図である。図5の構成において、ノズル180には、上記実施の形態のような弾性体が設けられていない。この場合、ノズル180は、第1連通路22に圧入されることで、第1連通路22の内部に固定されていてもよい。具体的には、ノズル180は、第1連通路22の第2穴22bに挿入(圧入)されることで、第2穴22bの内部に固定されるように嵌め込まれていてもよい。
【0085】
また、上記実施の形態に係る電動圧縮機1bは、図6に示す構成であってもよい。図6は、電動圧縮機1bにおけるノズル280と第1連通路22と第2連通路23とを示すさらに別の部分拡大断面図である。図6の構成において、ノズル280における第2ハウジング30側の被当接面281aには、視認可能な程度に微細な凹凸部が形成されていてもよい。微細な凹凸部は、被当接面281aを粗くした加工を施すことで実現することができる。この場合、当接面26と当接するノズル280の被当接面281aの表面粗さ(面粗度)は、当接面26の表面粗さよりも粗くてもよい。または、当接面26の表面粗さは、当接面26と当接するノズル280の被当接面281aの表面粗さよりも粗くてもよい。これによれば、カバー20の第2穴22bにノズル280を挿入し、カバー20、第2ガスケット92、第2ハウジング30、第1ガスケット91、及び、第1ハウジング10のこの並び順で配列されるようにボルト7で締結する場合、ノズル280の被当接面281aが第2ハウジング30の当接面26に強く押しつけられることで、微細な凹凸部が押し潰され、ノズル280と第2ハウジング30とが導通可能となる。このため、第1ハウジング10、第2ハウジング30、及び、カバー20のそれぞれの間の導通を図ることができるようになる。
【0086】
なお、図示は省略するが、第2ハウジングの当接面の表面粗さが、ノズルの被当接面の表面粗さよりも粗くてもよい。この場合、第2ハウジングのカバー側の端面において、当接面に対応する箇所だけ表面を粗くしてもよい。
【0087】
また、上記実施の形態に係る電動圧縮機において、ノズルは第2穴の内部に圧入されていてもよく、圧入されていなくてもよい。ノズルが第2穴の内部に圧入されていない場合、ノズルを単に第2穴に挿入することが出来てもよい。この場合、上記実施の形態のように、ノズルが径の異なる複数の円柱状の部材で形成されていてもよい。ノズルは、挿入側の先端が先細るような形状であることが好ましい。
【0088】
また、上記実施の形態に係る電動圧縮機1cは、図7に示す構成であってもよい。図7は、電動圧縮機1cにおけるノズル380と第1連通路22と第2連通路23とを示すさらに別の部分拡大断面図である。具体的には、ノズル380は、テーパー状をなしていてもよい。これにより、手作業等でノズル380を第2穴22bに容易に挿入することが出来るため、電動圧縮機1cの組付け性を容易にすることができる。ノズル380がこのような形状の場合、ノズル380にOリング等の弾性体を設けなくてもよい。その結果、電動圧縮機1cにおける部品点数の増大を抑制することで、電動圧縮機1cの組付け工数の増大を抑制することができる。
【0089】
また、図3図5図6及び図7に示すように、上記実施の形態に係る電動圧縮機1、1a、1b、1cにおいて、第1連通路22は、カバー20における第2ガスケット92側の面20eに形成された穴(第2穴22b)を有している。また、穴(第2穴22b)には、ノズル80、180、280、380が挿入される。そして、ノズル80、180、280、380が配置される穴(第2穴22b)の内周面の表面粗さは、カバー20におけるX軸プラス方向側の面、言い換えれば、カバー20における第2ガスケット92側の面20eの表面粗さよりも粗い。第2穴22bは、カバー20における第2ガスケット92側の面20eに形成された穴の一例である。
【0090】
これによれば、第2穴22bの内周面の表面粗さを粗くすることで、第2穴22bの内周面とノズル80、180、280、380の外周面との接触面積を増加させることができる。これにより、カバー20と第2ハウジング30との間に第2ガスケット92が配置されていても、ノズル80、180、280、380がカバー20と第2ハウジング30とを導通させることができる。したがって、高電圧がアースと短絡した場合、カバー20、及び、第2ハウジング30のうちの一部の筐体部品間の抵抗による電位差が発生してしまうことを抑制することができる。
【0091】
また、第2穴22bの内周面に接触するノズル80、180、280、380の外周面の一部分における表面粗さは、ノズル80、180、280、380における他の部分の表面粗さよりも粗くてもよい。
【0092】
また、ノズル80、180、280、380が配置される第2穴22bの内周面の表面粗さと、カバー20におけるX軸プラス方向側の面、言い換えれば、カバー20における第2ガスケット92側の面20eの表面粗さとが同等の場合であっても、ノズル80、180、280、380の外周面であって、第2穴22bの内周面に接触する一部分の外周面の表面粗さは、ノズル80、180、280、380における他の部分よりも粗くてもよく、カバー20における第2ガスケット92側の面20eの表面粗さよりも粗くてもよい。
【0093】
この場合も、ノズル80、180、280、380の外周面の一部分の表面粗さを粗くすることで、第2穴22bの内周面とノズル80、180、280、380の外周面との接触面積を増加させることができる。
【0094】
表面粗さを粗くする加工方法として、機械加工による方法がある。例えば、第2穴の場合、ドリルの送り速度を基準値よりも速くすることで、第2穴の内周面の表面粗さをカバーにおけるX軸プラス方向側の面の表面粗さよりも粗くなるように形成することができる。ノズルの場合、ノズルの外周面の一部分をヤスリ掛けすること、ノズル切削時の旋盤のチップ送り速度を速くすることで、ノズルの外周面の一部分の表面粗さを他の部分の表面粗さよりも粗くなるように形成することができる。なお、表面粗さを粗くする加工方法については、あくまでも一例であり、他の公知の加工方法を用いて加工してもよい。
【0095】
また、上記実施の形態に係る電動圧縮機において、第1連通路は、カバーにおける第2ガスケット側の面に形成された穴(第2穴)を有している。また、穴(第2穴)には、ノズルが挿入される。そして、ノズルは、穴(第2穴)に圧入されることで、穴(第2穴)の内部に固定される。この場合、第2穴に固定されるようにノズルを嵌め込むことができるため、第2穴の内周面とノズルの外周面との接触面積を増加させることができる。これにより、カバーと第2ハウジングとの間に第2ガスケットが配置されていても、ノズルがカバーと第2ハウジングとを導通させることができる。
【0096】
また、ノズルの最大外径は、第2穴の最大内径よりも大きくてもよい。具体的には、第2穴の内周面に接触するノズルの外周面の一部分の最大外径が第2穴の最大内径よりも大きくてもよい。この場合、ノズルは、第2穴に圧入されることで、第2穴の内部に固定されるようにノズルを嵌め込んでもよい。
【0097】
また、上記実施の形態に係る電動圧縮機において、ノズルの硬度と、カバーの硬度とは異なっている。硬度は、モース硬度、又は、ビッカース硬さで定義される。ノズルは、例えば真鍮等の金属製である。カバーは、例えばアルミニウム等の金属製である。例えば、ノズルの硬度がカバーの硬度よりも低くてもよい。この場合、ノズルをカバーの第2穴に圧入するとき、第2穴に固定されるようにノズルを嵌め込むことができる。また、ノズルの硬度がカバーの硬度よりも高くてもよく、この場合もノズルを第2穴に圧入して嵌め込むことができる。この場合、カバーが真鍮等の金属製であり、ノズルがアルミニウム等の金属製であってもよい。このため、第2穴の内周面とノズルの外周面との接触面積を増加させることができる。これにより、カバーと第2ハウジングとの間に第2ガスケットが配置されていても、ノズルがカバーと第2ハウジングとを導通させることができる。
【0098】
また、上記で用いた数字は、全て本開示を具体的に説明するために例示するものであり、本開示の実施の形態は例示された数字に制限されない。
【0099】
その他、実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本開示は、車両等の空調装置に利用可能である。
【0101】
(付記)
以下に、上記各実施の形態に基づいて説明した電動圧縮機の特徴を示す。
【0102】
<技術1>
冷媒を圧縮するための動力を付与するモータ駆動部が配置された第1ハウジングと、
前記モータ駆動部の駆動によって冷媒を圧縮する圧縮室が形成された第2ハウジングと、
前記圧縮室で圧縮された高圧冷媒が至る吐出室を有するカバーと、
ノズルとを備え、
前記第1ハウジングは、前記第2ハウジングとで第1ガスケットを挟んだ状態で配置され、
前記カバーは、前記第2ハウジングとで第2ガスケットを挟んだ状態で配置され、
前記カバー及び前記第2ハウジングには、前記吐出室から前記カバー及び前記第2ハウジングを経由して、前記圧縮室の前記吐出室側とは反対側に形成された背圧室に至る連通路が形成され、
前記連通路は、前記カバーに形成された第1連通路と、前記第2ハウジングに形成され、前記第1連通路と前記背圧室とを連通する第2連通路とを有し、
前記ノズルは、前記第2連通路と連通するように前記第1連通路の内部に挿入され、
前記第2ハウジングには、前記ノズルと当接する当接面が形成される
電動圧縮機。
【0103】
<技術2>
前記カバー、前記第2ガスケット、前記第2ハウジング、前記第1ガスケット、及び、前記第1ハウジングは、ボルトによってこの並び順で締結され、
前記ボルトは、前記第2ハウジングと非接触となるように、前記第2ハウジングに形成された挿通穴に挿通されている
技術1に記載の電動圧縮機。
【0104】
<技術3>
前記ノズルには、前記第1連通路と前記第2連通路とを連通可能な絞り孔が形成され、
前記絞り孔の径は、前記第1連通路の径及び前記第2連通路の径よりも小さい
技術1又は2に記載の電動圧縮機。
【0105】
<技術4>
前記第2ハウジングと前記ノズルとの間で働く応力は、前記第2ハウジングと前記ノズルとの間を除き、前記第2ガスケットを介して前記第2ハウジングと前記カバーとの間で働く応力よりも大きい
技術1~3のいずれか1つに記載の電動圧縮機。
【0106】
<技術5>
前記当接面と当接する前記ノズルの被当接面の表面粗さは、前記当接面の表面粗さよりも粗い、又は
前記当接面の表面粗さは、前記当接面と当接する前記ノズルの被当接面の表面粗さよりも粗い
技術1~4のいずれか1つに記載の電動圧縮機。
【0107】
<技術6>
前記ノズルは、テーパー状をなしている
技術1~5のいずれか1つに記載の電動圧縮機。
【0108】
<技術7>
前記第2ハウジングに固定され、前記第2ハウジング内に配置された固定スクロールと、
前記モータ駆動部により回転しつつ、前記固定スクロールとの間に冷媒を圧縮する前記圧縮室を形成する可動スクロールとを備え、
前記背圧室は、前記可動スクロールの背面に位置し、前記第2ハウジングと前記可動スクロールとの間に形成される
技術1~6のいずれか1つに記載の電動圧縮機。
【0109】
<技術8>
前記第1連通路は、前記カバーにおける前記第2ガスケット側の面に形成された穴を有し、
前記穴には、前記ノズルが挿入され、
前記穴の内周面の表面粗さは、前記カバーにおける前記第2ガスケット側の面の表面粗さよりも粗い
技術1~7のいずれか1つに記載の電動圧縮機。
【0110】
<技術9>
前記第1連通路は、前記カバーにおける前記第2ガスケット側の面に形成された穴を有し、
前記穴には、前記ノズルが挿入され、
前記ノズルは、前記穴に圧入されることで、前記穴の内部に固定される
技術1~8のいずれか1つに記載の電動圧縮機。
【0111】
<技術10>
前記ノズルの硬度と、前記カバーの硬度とは異なる
技術1~9のいずれか1つに記載の電動圧縮機。
【符号の説明】
【0112】
1、1a、1b、1c 電動圧縮機
7 ボルト
10 第1ハウジング
20 カバー
20a 吐出室
20e カバーにおける第2ガスケット側の面
21 連通路
22 第1連通路
22b 第2穴(穴)
23 第2連通路
26 当接面
30 第2ハウジング
32a 挿通穴
34 背圧室
60 固定スクロール
60a 圧縮室
70 可動スクロール
80、180、280、380 ノズル
81a、281a 被当接面
83 絞り孔
91 第1ガスケット
92 第2ガスケット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7