(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118417
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】タンパク質の効率的吸収食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 33/17 20160101AFI20240823BHJP
A23L 13/60 20160101ALI20240823BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20240823BHJP
A23B 4/005 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
A23L33/17
A23L13/60 Z
A23L5/00 M
A23B4/005
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023196306
(22)【出願日】2023-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2023024756
(32)【優先日】2023-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】512134761
【氏名又は名称】河北 正
(74)【代理人】
【識別番号】100106378
【弁理士】
【氏名又は名称】宮川 宏一
(72)【発明者】
【氏名】河北 正
【テーマコード(参考)】
4B018
4B035
4B042
【Fターム(参考)】
4B018MD20
4B018MD34
4B018ME14
4B018MF03
4B018MF04
4B018MF07
4B018MF14
4B035LC06
4B035LE11
4B035LG15
4B035LG21
4B035LG42
4B035LP12
4B035LP44
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4B035LP59
4B042AC04
4B042AD39
4B042AE10
4B042AG01
4B042AG02
4B042AG03
4B042AG04
4B042AG07
4B042AH01
4B042AK09
4B042AP02
4B042AP21
4B042AP23
4B042AP30
(57)【要約】
【課題】タンパク質を迅速かつ効率的に体内に吸収して咀嚼筋を含めた体中の様々な筋肉及び関節の腱や筋を強化することができるタンパク質の効率的吸収食品を提供する。
【解決手段】加熱調理済みの肉を少なくとも人が咀嚼しないで嚥下しても喉や食道に詰まることがない程度まで小切片状に粉砕した状態にした一定量の粉砕肉片の塊と、この粉砕肉片の塊を密封充填した充填容器とからなり、粉砕肉片の塊は、充填容器を開けた状態で所望の量だけ食べ物を口に入れる食器によって取り出し可能な程度の固まり具合で充填容器に密封充填されており、かつ充填容器は、粉砕肉片の塊を密封充填した状態で高温殺菌されているタンパク質の効率的吸収食品によってタンパク質を迅速かつ効率的に体内に吸収して咀嚼筋を含めた体中の様々な筋肉及び関節の腱や筋を強化する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱調理済みの肉を少なくとも人が咀嚼しないで嚥下しても喉や食道に詰まることがない程度まで小切片状に粉砕した状態にした一定量の粉砕肉片の塊と、この粉砕肉片の塊を密封充填した充填容器とからなり、
前記粉砕肉片の塊は、前記充填容器を開けた状態で食べ物を口に入れる食器によって所望の量だけ取り出し可能な程度の固まり具合で当該充填容器に密封充填されており、
かつ前記充填容器は、前記粉砕肉片の塊を密封充填した状態で高温殺菌されて長期保存を可能としたことを特徴とするタンパク質の効率的吸収食品。
【請求項2】
前記粉砕肉片だけを前記充填容器に密封充填する代わりに当該粉砕肉片とゼラチンを混ぜた状態で当該充填容器に密封充填していることを特徴とする請求項1に記載のタンパク質の効率的吸収食品。
【請求項3】
前記粉砕肉片だけを前記充填容器に密封充填する代わりに当該粉砕肉片とでんぷんを混ぜた状態で当該充填容器に密封充填していることを特徴とする請求項1に記載のタンパク質の効率的吸収食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質を迅速かつ効率的に体内に吸収して咀嚼筋を含めた体中の様々な筋肉及び関節の腱や筋を強化することができるタンパク質の効率的吸収食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人生100年時代を迎えるにあたって、健康寿命もそれに極力近くすることが重要となっている。しかしながら、実際のところ、60歳代や70歳代から歯周病や歯槽膿漏、虫歯の放置、歯肉のやせ細りなどによって咬合機能が低下してしまうことが多くなっている。このような、咬筋、側頭筋、外側翼突筋、内側翼突筋からなる咀嚼筋の働きが廃用性萎縮により低下してしまう。
【0003】
これによって、食べる際にある程度の咬合力を有する肉類をそれまで食べていた頻度が徐々に減少していき、体中の筋肉の状態を委縮させることなく極力維持することが難しくなったり、関節の滑らかな動きに必要不可欠なコラーゲンを消化器官から吸収する量が徐々に減少したりする。
【0004】
このような、状態を続けていくと咬合筋の機能低下が更に進んでいき、体中に必要なタンパク質の吸収量が極端に低下してしまい、いわゆるフレイルやサルコペニアの発生に至ってしまう。
【0005】
一旦フレイルやサルコペニアになると、上述したように咬合筋の機能低下と相まって年齢が高くなるにつれて食べ物からタンパク質を効率的に吸収することが難しくなっていき、フレイルやサルコペニアが急激に悪化していく。
【0006】
そのため、上述したように人生100年時代と言ってもその後半をはつらつと活動しながら生活することができずいわゆる寝たきり状態で食べるものも咀嚼力を必要としない極めて柔らかくした野菜スープなどの流動食や柔らかくしたうどんなどの食材でできたほとんど流動食に近い食べ物のみしか食べられなくなり、人生の高齢化した際の後半の生活が極めて味気無くなったまま、人生を終えてしまうことになる。
【0007】
従って、高齢になっても常に十分な量のタンパク質を摂取して筋肉の萎縮を防止すると共に、筋肉量の低下を防ぐことが重要である。そのためにも、筋肉細胞を作るのに最も効果的なタンパク質を十分に含む肉を日々摂取することが大切であり、これによって一旦咬合力が低下した高齢者であっても元の咬合力に戻るまで咀嚼筋の機能を回復させることが特に重要となっている。
【0008】
なお、咬合力が低下して嚥下障害が生じた場合であっても、体に栄養として摂取できる食品については既にいくつか知られている(例えば特許文献1や特許文献2を参照)。
【特許文献1】特許第6472920号公報
【特許文献2】特開2018-134034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した引用文献1においては、畜肉のすり身に卵白、塩及び油を加え、冷やしながら混合してペースト状混合物を得て、ペースト状混合物を型に入れ、更に真空包装袋に入れて脱気し、真空パックとし、真空パックごとペースト状混合物の芯温が80~85℃となるまで加熱して成型加熱加工物を得て、加熱終了後、急速冷却し、成型加熱加工物の芯温を4℃以下とすることで製造する食品が開示されている。
【0010】
しかしながら、引用文献1において開示された食品では、タンパク質を効率的に摂取して新たな筋肉をつけるための肉以外の物が含まれていて、これらの余分なものがタンパク質の効率的吸収を妨げてしまう。つまり、肉だけではなく卵を混ぜたりするのでいち早くタンパク質を吸収することができる効果が得られるとは考えられない。
【0011】
また、上述した引用文献2においては、干し芋の加熱と干し芋の加圧を同時に行う加熱加圧工程により、干し芋の加工品を製造する内容が開示されている。そして、加熱加圧工程の前に、干し芋をカットする工程を設けても良く、加熱・加圧工程の後に干し芋を破砕する工程を設けても良い点が開示されている。
【0012】
しかしながら、引用文献2において開示された食品は、芋を細かくしたものであり、これを摂取しても体の中にでんぷんから糖分になるのみで筋肉を作ることは不可能であり、咀嚼量の機能低下の防止や改善、フレイル・サルコペニアの防止及び改善を図ることは不可能である。
【0013】
即ち、芋自体がでんぷんでタンパク質とは全く異なるものであり、オーラルフレイルの予防及び改善には何ら寄与しないだけでなく、芋のでんぷんが糖質になってかえって血糖値が上がって高齢者にとって余分なエネルギーや糖分を吸収することになり、かえって好ましくないと考えられる。
【0014】
以上の説明に関連して、年齢に関わらず日々の食事におけるタンパク質の効率的な摂取が如何に大切かについて説明する。年齢や体重によって1日に筋肉などの組織の合成している量や分解している量は異なる。しかしながら、例えば体重が60Kgの成人の場合、おおよそ1日180g程度タンパク質を筋肉の合成や分解に利用している。そして、この1日180gの内訳として、その後の100gは体内に貯蔵されているアミノ酸から再利用しており、 残りの80gは食事から摂取していると言われている。
【0015】
これらのことから、特別なトレーニング等を行なっていないような場合によっては、成人の一日に必要なタンパク質は、体重1kgあたり約1gとなる。そのため、高齢者の場合は、その年齢に起因して消化吸収能力の低下が生じているので、体重1kgあたり約1.2gのタンパク質が必要となる。即ち、高齢者の場合においては、目安として一回の食事で手の平サイズのタンパク質を食事により摂取することが必要となる。
【0016】
本発明の目的は、タンパク質を迅速かつ効率的に体内に吸収して咀嚼筋を含めた体中の様々な筋肉及び関節の腱や筋を強化することができるタンパク質の効率的吸収食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述の課題を解決するために、本発明の請求項1に記載のタンパク質の効率的吸収食品は、
加熱調理済みの肉を少なくとも人が咀嚼しないで嚥下しても喉や食道に詰まることがない程度まで小切片状に粉砕した状態にした一定量の粉砕肉片の塊と、この粉砕肉片の塊を密封充填した充填容器とからなり、
前記粉砕肉片の塊は、前記充填容器を開けた状態で食べ物を口に入れる食器によって所望の量だけ取り出し可能な程度の固まり具合で当該充填容器に密封充填されており、
かつ前記充填容器は、前記粉砕肉片の塊を密封充填した状態で高温殺菌されて長期保存を可能としたことを特徴としている。。
【0018】
また、請求項2に記載のタンパク質の効率的吸収食品は、
前記粉砕肉片だけを前記充填容器に密封充填する代わりに当該粉砕肉片とゼラチンを混ぜた状態で当該充填容器に密封充填していることを特徴としている。
【0019】
また、請求項3に記載のタンパク質の効率的吸収食品は、
前記粉砕肉片だけを前記充填容器に密封充填する代わりに当該粉砕肉片とでんぷんを混ぜた状態で当該充填容器に密封充填していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、タンパク質を迅速かつ効率的に体内に吸収して咀嚼筋を含めた体中の様々な筋肉及び関節の腱や筋を強化することができるタンパク質の効率的吸収食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に関するタンパク質の効率的吸収食品に関する各実施形態の基本的な製造工程を分かり易く示した工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の具体的な実施形態及び変形例を説明するに先立って、最初に本発明の要旨をなす基本形態について説明する。すなわち、以下の基本形態の各構成要素については、それ以降に説明する具体的な実施形態及び変形例にそれぞれ対応していることを注記しておく。
【0023】
第1の基本形態を構成するタンパク質の効率的吸収食品は、加熱調理済みの肉を少なくとも人が咀嚼しないで嚥下しても喉や食道に詰まることがない程度まで小切片状に粉砕した状態にした一定量の粉砕肉片の塊と、この粉砕肉片の塊を密封充填した充填容器とからなり、前記粉砕肉片の塊は、前記充填容器を開けた状態で食べ物を口に入れる食器(スプーンや箸、フォーク等の食事の際に用いる食べ物を口に入れる食器)によって所望の量だけ取り出し可能な程度の固まり具合で当該充填容器に密封充填されており、かつ前記充填容器は、前記粉砕肉片の塊を密封充填した状態で高温殺菌されて長期保存を可能としたことを特徴としている。
【0024】
また、第2の基本形態を構成するタンパク質の効率的吸収食品は、第1の基本形態を構成するタンパク質の効率的吸収食品において、前記粉砕肉片だけを前記充填容器に密封充填する代わりに当該粉砕肉片とゼラチンを混ぜた状態で当該充填容器に密封充填していることを特徴としている。
【0025】
また、第3の基本形態を構成するタンパク質の効率的吸収食品は、第1の基本形態を構成するタンパク質の効率的吸収食品において、前記粉砕肉片だけを前記充填容器に密封充填する代わりに当該粉砕肉片とでんぷんを混ぜた状態で当該充填容器に密封充填していることを特徴としている。
【0026】
なお、上述の第1の基本形態乃至第3の基本形態において調理する肉の種類としては、具体例については以下に詳細に説明するが、とりあえず基本的には牛肉であって、脂身のない部分か少ない部分が最も好ましく、牛肉以外でも例えば豚肉、羊肉、鶏肉、馬肉等を使用しても構わない。更には、これらの肉以外であっても、例えば熊肉、猪肉、鹿肉、ヤギ肉等タンパク質を豊富に含んでいる肉を利用することも本発明の形態の中に含まれるものである。
【0027】
なお、この際もできれば牛肉と同様に脂身のない部分か少ない部分を利用するのが良い。また、以上の多種類の肉を混ぜ合わせた状態で粉砕して小切片状にしてもよく、これらの肉を別々に粉砕して小切片状にした状態にしてから混ぜ合わせても良い。
【0028】
また、調理した肉を粉砕する際に生じる肉汁についても廃棄することなく、これを全て有効活用して小切片状の肉の塊の中に含ませるのも好ましい一形態である。また、調理した肉を粉砕して小切片状にするのと同時に、肉の両端の腱の部分についての調理した後に粉砕して小切片状にしてから小切片状の肉の塊を混ぜ合わせても後に詳細に説明する更なる非常に有用な変形形態である。
【0029】
この場合においても、もちろん粉砕して小切片状にする前に調理した肉自体と調理した肉の両端の腱の部分を纏めて同時に粉砕しても良く、調理前の肉を小切片状に粉砕する工程と調理前の腱を小切片状に粉砕する工程を別々に行い、これ以外の工程後に小切片状の肉と腱とを混ぜ合わせても良い。
【0030】
いずれの方法によっても、いわゆる肉と腱がハイブリット状に混ざり合った塊を効率良く製造することができる。また、この場合に使用する腱は肉と例えば双方とも牛肉などの同じ種類のものを使ってもよく、肉については牛肉を使って腱については熊肉や猪肉を使うような異なる種類の肉と腱の組み合わせとしても良い。
【0031】
以下、本発明に関するタンパク質の効率的吸収食品に関する各実施形態について図面に基づいて説明する。なお、本発明においては、加熱調理後の肉を小切片状に粉砕してこれを用いたタンパク質の効率的吸収食品の製造方法を含めて説明しており、特に咀嚼能力の低下した高齢者や変化障害気味の高齢者が毎日十分な量のタンパク質を効率的に吸収して咀嚼筋の機能回復を図るに加えて、フレイルやサルコペニアの予防と発生後の進行の防止や改善を主目的としている。
【0032】
そのため、本発明に関する食品を積極的に摂取することが重要となってくるので、食欲増進のための風味を増す適当な調味料を第1の実施形態におけるように小切片状に粉砕する前に肉を加熱調理する段階で加えても良く、加熱調理後の肉を小切片状に粉砕した後や、第2の実施形態におけるように小切片状に粉砕した肉にゼラチンを混ぜて攪拌した後に食欲増進のための風味を増す適当な調味料を加えても良い。また、第3の実施形態におけるように小切片状に粉砕した肉にでんぷんを混ぜて攪拌した後に食欲増進のための風味を増す適当な調味料を加えても良い。もちろん、これらの調味料を加えることなく加熱調理後の肉を小切片状に粉砕した状態で製造したタンパク質の効率的吸収食品として提供して、これを食する人達が必要に応じて調味料を使ったりしても良い。
【0033】
最初に第1の実施形態に関するタンパク質の効率的吸収食品について説明する。
図1は、本発明に関するタンパク質の効率的吸収食品に関する各実施形態の基本的な製造工程を分かり易く示した工程図であり、第1の実施形態はこの
図1の左側のフロー工程図によって製造されている(
図1における第1の実施形態の製造工程を示すプロセスP1参照)。
【0034】
本発明の第1の実施形態に関するタンパク質の効率的吸収食品は、加熱調理済みの肉を小切片状に粉砕した状態で缶に充填した後密封して当該缶ごと高温加熱してこの缶詰の中身である小切片状の肉全体の殺菌を図って長期保存を可能とした形態を有している。
【0035】
本実施形態において使用される肉は、タンパク質が豊富に含まれかつ体内に速やかに消化吸収されてアミノ酸を経て体中の筋肉やコラーゲン繊維を作る元となる牛肉、豚肉、羊肉、馬肉等のいわゆる哺乳類動物の食用肉や鶏肉等が好ましい一例として挙げられる。
【0036】
これらの肉を、通常の咀嚼力を有する人達が食する程度に加熱調理した後、必要に応じて味や風味を向上させる調味料を加える。例えば、牛肉の場合は、いわゆる一定の塊を有するステーキ肉として加熱調理して一定の塊の肉を通常の咀嚼力を有する人であればそのまま咀嚼して嚥下すことができるような形態にする。豚肉や羊肉、鶏肉、馬肉の場合についても同様に加熱調理した一定の塊の肉を通常の咀嚼力を有する人であればそのまま咀嚼して嚥下すことができるような形態にする。
【0037】
本実施形態に関するタンパク質の効率的吸収食品は、上述した肉の塊を例えばミルミキサーなどの粉砕機によって小切片状まで粉砕して缶の中に詰めて缶詰の形態とし、缶詰ごと高温殺菌することで缶の中に充填した小切片状の肉全体も高温殺菌するようになっている。これによって、缶詰の形態となったこのタンパク質の効率的吸収食品の長期保存を可能としている。
【0038】
小切片状に粉砕された肉の各粉砕片大きさは、通常の食事で肉の塊を口の中に入れて咀嚼して小さく咬み砕いた状態よりも更に小さくなっている。具体的には、小切片状に粉砕された肉の全てが1mm程度の大きさ、又は2mm程度の大きさ、若しくは3mm程度の大きさ等の範囲内におさまっている。即ち、小切片状に粉砕された肉の全ては、平均して上述したような非常に小さい肉切片として大きさが均一化している。
【0039】
このように本実施形態に関する小切片状の肉片は、粉砕工程で通常口の中で咬み砕いて細かな肉片にして嚥下する大きさよりも遥かに小さい小切片状になるまで粉砕されることで、各小切片状の肉片の表面は乾燥した状態となり、内部が粉砕前の肉の塊を加熱調理した際の肉汁を含んだ状態となっている。
【0040】
各小切片状の肉片がこのような極めて細かい小切片状の肉粒からなるため、本実施形態の缶詰を開封してこれらの小切片状の肉粒をそのまま口に入れることで、口の中で肉切片の表面が唾液と混ざり口の中に含んだ小切片状の肉粒が全ていわゆるスラリーと呼ばれるドロドロと流動化した状態となって、通常の肉を食べるときと異なって咀嚼することなく食道を通って消化器官に流れ込んでいく。
【0041】
近年は医療技術の飛躍的発達に伴い人生100年時代の超高齢化が現実化している。しかしながら、高齢者の全てが健康な歯茎を100年近くまで維持できるわけではなく、虫歯や歯槽膿漏、歯や歯茎のメンテナンス、甘いものを多食したり、そのまま歯磨きを怠り虫歯が急速に進行したり、歯茎の定期的なケアを怠って歯槽膿漏が進行したりしてその年齢近くまで健康な歯の状態を維持することは難しいのが現状である。
【0042】
そのため、虫歯や歯槽膿漏が進行すると歯根や歯根膜が損傷すると共に揺動が生じて、やがてはそれが進行して元々健康だった歯がその役割を果たさなくなる。
【0043】
このように咀嚼力が急激に低下すると、例えば高齢になっても極めて重要な摂取成分であるタンパク質を他の食材よりも格段に多く含みかつ効率的に体内で吸収することができる肉類について、咀嚼力の低下により十分咀嚼できないことに起因してこれらの肉類及びこれに含まれるタンパク質を十分細かく口の中で咀嚼して消化器官に取り込むことが困難になっていくが、本発明によると上述したように小切片状の肉が唾液と混ざり合ってドロドロと流動化したスラリー状となりながら消化器官に流れ込んでいく。
【0044】
これによって、オーラルフレイルにより咀嚼力を生じさせる咬筋、側頭筋、内側翼突筋、外側翼突筋の筋力が著しく低下した高齢者にとっても必要かつ十分なタンパク質を通常咀嚼した以上の細かい肉の小切片として消化器官から効率的に吸収することができる。
【0045】
このように、本発明によると、肉を小切片状に粉砕することで口に入れた際に唾液と混ざり合って溶けてドロドロとしたスラリー状となるので、一回の食事に必要なタンパク質を食道に詰まらせることなく安全かつ確実に消化器官に送ることができる非常に優れた利点を有している。
【0046】
また、本実施形態に関するタンパク質の効率的吸収食品によると、これを毎朝食することで、肉が元々小切片となっているので通常咀嚼して飲み込んだ肉片よりも格段に小さくなっており、これに伴って消化器官に入った肉の表面積が大きくなっている。これによって、肉に含まれたタンパク質が小腸などの消化器官で効率良く吸収され、体中の筋肉を新たに作ったり関節の滑らかな曲げ伸ばしに必須であるコラーゲン繊維の減少を防いだりすることができる。
【0047】
これに加えて、肉に含まれるトリプトファンというアミノ酸が体内でセロトニンやメラトニンに変換される。セロトニンを体内充分に吸収することでストレスを和らげたり、メラトニンによって体内時計を調整したりして、心身共にそのコンディションを向上させることができる。
【0048】
即ち、毎日の朝食の際に本実施形態に関するタンパク質の効率的吸収食品を食することによって、効率的にタンパク質を摂取でき、体内時計のリセットや筋肉分解の防止、ダイエット効果、更には睡眠の質や集中力を高めるといった効果が期待できる。これに加えて、本実施形態に関するタンパク質の効率的吸収食品によって朝食時にタンパク質を摂取することで、体温を上げる働きもあり、活動的な一日を送ることが可能となる。
【0049】
なお、筋肉は絶えず分解と合成を繰り返している。そのため、朝食でタンパク質を摂取しないと筋肉の合成に必要なタンパク質が不足し筋肉が縮小してしまい、身体がフレイル状態に陥る遠因となっている。そこで、本発明に関するタンパク質の効率的吸収食品を食することによって、効率的にタンパク質を摂取して筋肉を合成できると共に、関節の滑らかな動きに必要不可欠なコラーゲン繊維組織の減少を防止することが可能となる。
【0050】
以上述べたように、本発明に関するタンパク質の効率的吸収食品を朝食や昼食に食することで、一般的にタンパク質が不足しがちな朝食や昼食にもしっかりと均等に摂取することができ、体中の様々な筋肉の合成や関節の滑らかな動きに必要不可欠なコラーゲンを維持するにあたって良い影響を得ることができる。
【0051】
また、本発明に関するタンパク質の効率的吸収食品を朝食や昼食に食することにより、タンパク質をしっかり摂取することでトリプトファンを体中に吸収させておくことができ
筋肉にも睡眠にも心理的にも良い影響を及ぼすことができる。
【0052】
また、本発明に関するタンパク質の効率的吸収食品は、特許文献1に記載の食品のようにパウチの形態をなしておらず、しっかりとした缶詰の形態を有しかつ缶詰になった状態で缶詰ごと高温殺菌されているので、どのような環境においても長期に亘って保存可能であり、かつ特許文献1に記載の食品のように中身をパウチの形態で密封した場合に生じ易い現象である予期せぬ外力によって破裂して中身が流出して使い物にならなくなるのを防止することができる。
【0053】
なお、本発明に類似する肉の加工形態として肉の塊を挽き肉にすることが挙げられる。挽き肉は、通常挽き肉機で加工される。具体的には、肉の塊を挽き肉機を使って押し潰して細長く連続的に押し出して製造している。そのため、挽き肉は、本発明のようにミルミキサーで代表されるミキサーやそれ相当の裁断機で細かい小切片状に独立して裁断される形態、即ち、元々調理した肉を独立して細かい小切片状に粉砕する形態とは異なっている。
【0054】
これに加えて、挽き肉は、一般的に直径が5mm程度と本発明に関する小切片状の肉よりもかなり大きく(太く)かつこれが連なった状態で形成されている。そして、このような連なった状態の挽き肉に熱をかけて調理してハンバーグやコロッケなどの食品にしている。
【0055】
つまり挽き肉機はあくまで調理前の肉を細長く加工するための食品加工装置であり、調理後の肉の塊を本発明のように細かい小切片状まで粉砕するのと本質的に異なっている。これに加えて、挽き肉は、あくまで調理前の肉の材料である。具体的には、例えばハンバーグとして調理する際には、挽き肉だけではなくパン粉などのつなぎが必要になり、咀嚼して口の中で細かくして消化器官に送ることが必要となってくる。
【0056】
これでは咀嚼力の極端に低下した高齢者にとって嚥下することが大変であるばかりか、食物の一部が喉に詰まってしまう危険性を招く恐れがある。しかしながら、第1の実施形態に関するタンパク質の効率的吸収食品によると、非常に細かい小切片状の肉片が唾液と混ざってスラリー状になってから自然と徐々に消化器官に流れ込んでいくので、このような危険性を回避することができる。
【0057】
また、挽き肉は、比重があり重いため、スープ等に混ぜた時に沈殿をしてしまい、スープと一緒に挽き肉を摂取しようとした際に沈殿した挽き肉がスープ皿に残ってしまうことで、所望の量を食すことができないことが多い。
【0058】
しかしながら、第1の実施形態に関するタンパク質の効率的吸収食品によると非常に細かい小切片状の肉片のそれぞれに十分な浮力が働いてスープのような液体中の全体に常に攪拌状態で存在するようになり、最も摂取すべきタンパク質からなる食品である肉がスープ皿の底に沈殿して残ってしまうことがない。これによって、小切片状に粉砕された肉を残すことなく全て食べることができる。
【0059】
続いて、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と等価的な構成要素については、第1の実施形態の説明を流用してその説明を省略する。具体的には、第1の実施形態で具体的に例示した食用の肉の塊を加熱調理してミルミキサー等の粉砕機を用いてこの加熱調理後の肉の塊を粉砕し、第1の実施形態と同様の大きさまで肉を小切片状に加工することに関しては、第1の実施形態と同様である。
【0060】
また、この肉の小切片状の肉片を第2の実施形態において登場するゼラチンと混ぜ合わせることは、第2の実施形態における特有のプロセスであるが、その後これらの混合物を缶詰に充填して密封し、缶詰ごと高温加熱して缶詰内の小切片状の肉片とゼラチンの混合物を同時に加熱殺菌することは第1の実施形態と等価的なプロセスとなっている。
【0061】
図1は、上述したように本発明に関するタンパク質の効率的吸収食品に関する各実施形態の基本的な製造工程を分かり易く示した工程図であり、第2の実施形態はこの
図1の真ん中のフロー工程図によって製造されている(
図1における第2の実施形態の製造工程を示すプロセスP2参照)。
【0062】
本発明の第2の実施形態に関するタンパク質の効率的吸収食品は、第1の実施形態に関するタンパク質の効率的吸収食品における粉砕した小切片状の肉を充填する代わりに粉砕後の小切片状の肉とゼラチンを混ぜた状態で充填する形態を有している。
【0063】
この第2の実施形態に関するタンパク質の効率的吸収食品によると、第1の実施形態において述べた本発明の作用効果と同様の作用効果を生じさせることに加えて、以下の更なる作用効果を発揮することができる。
【0064】
具体的には、粉砕後の小切片状の肉とゼラチンを十分に攪拌して混ぜた状態で缶に充填した形態を取ることで、密封加熱殺菌後の缶詰を開けた後に中身をカップに入れて例えば電子レンジで加熱すると、ゲル化したゼラチンが液状化して十分な量の小切片状の肉を含んだスープ状と化してカップから食物を咀嚼することなくスープを呑み込む要領で必要かつ十分な量のタンパク質を摂取することができる。これに加えて、加熱してスープ状となった状態においてはある程度の温まった温度となっているので、これを食することで体を温めることもでき、消化器官への負担を軽くすることが可能となる。
【0065】
続いて、本発明の第3の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態及び第2の実施形態と等価的な構成要素については、これらの実施形態の説明を流用してその説明を省略する。具体的には、第3の実施形態で具体的に例示した食用の肉の塊を加熱調理してミルミキサー等の粉砕機を用いてこの加熱調理後の肉の塊を粉砕し、第1及び第2の実施形態と同様の大きさまで肉を小切片状に加工することに関しては、第1及び第2の実施形態と同様である。
【0066】
また、この肉の小切片状の肉片を第3の実施形態において登場するでんぷんと混ぜ合わせることは、第3の実施形態における特有のプロセスであるが、その後これらの混合物を缶詰に充填して密封し、缶詰ごと高温加熱して缶詰内の小切片状の肉片とでんぷんの混合物を同時に加熱殺菌することは第1及び第2の実施形態と等価的なプロセスとなっている。
【0067】
図1は、上述したように本発明に関するタンパク質の効率的吸収食品に関する各実施形態の基本的な製造工程を分かり易く示した工程図であり、第3の実施形態はこの
図1の右側のフロー工程図によって製造されている(
図1における第3の実施形態の製造工程を示すプロセスP3参照)。
【0068】
本発明の第3の実施形態に関するタンパク質の効率的吸収食品は、粉砕した小切片状の肉を充填する代わりに粉砕後の小切片状の肉とでんぷんを混ぜた状態で充填する形態を有している。
【0069】
より具体的には第3の実施形態においては、上述したようにステップ4において、ステップ3における小切片状に粉砕した肉にゼラチンを混ぜて十分に攪拌した後に缶に充填して形態にする代わりに、小切片状に粉砕した肉でんぷんを混ぜて十分に攪拌した後に缶に充填して形態にする。
【0070】
このような形態とすることで、缶詰を開けて中身を例えば小皿に移し、電子レンジなどで温めることによってでんぷんがある程度の硬さを有するようになる。これによって、食品自体が一食で摂取するのに必要かつ十分な量のタンパク質を含んだ細かい小切片状の肉とでんぷんの混ざり合った柔らかい餅状又は衣のない肉コロッケ状の食品として咀嚼機能がある程度低下していても十分な咬み応えを感じながら食することが可能になる。
【0071】
また、缶詰から出した食品の量を調節することで、加熱後の柔らかく固まった食品の大きさを自由に変えることができ、肉団子程度の大きさにしたり、この肉団子の幾つかを串で刺して焼き鳥状の形態にしたり、若しくは纏めて加熱して衣のないコロッケ程度の大きさまで大きくしたりすることが可能である。
【0072】
これによって、この第3の実施形態に関するタンパク質の効率的吸収食品によると、例えばこれを食する高齢者に対して様々なバリエーションの形態で食べ物を提供することができ、各高齢者の個別の好みに応じるようにしたり、食べ物を提供するごとにその形態を変えたりして食事を楽しんでもらうことができるようになる。
【0073】
以下に本発明に関するタンパク質の効率的吸収食品が有する特有のメリット、即ち、焼いた肉をミルミキサー等の粉砕機で小切片状に粉砕して缶詰の形態でもパッケージングした本発明の利点について、本発明の発明者が主張する優位点を列挙する。
(1)肉を焼かなくて済む。これによって肉が食べたいと思った時、すぐに食べられ、肉をわざわざ調理する場合に比べて10分間以上の時間が節約できる。また肉を焼くと、部屋の壁、床、換気扇の汚れ、調理器具の清掃など、後始末が大変であるが、本発明は缶詰の形態を有しており、既に調理してあるので、このような手間がかからない。
(2)既に加熱してあるので、いつでも思い立った際にすぐに食べられる。
(3)オーラルフレイルを発生した人でも、肉が粉砕してあるので容易に食べられる。
(4)高齢者だけでなく乳幼児であっても、液体状にすれば飲み込みやすいので、タンパク質をたくさん摂取できて、栄養学的に優位である。
(5)特に第2の実施形態の場合、嚥下障害のある人たちにとっても、ゼリー状であるので飲み込みやすい利点がある。
(6)サルコペニア予防のためにタンパク質が必要であるが、肉が粉砕して全て小切片になっているので、加工し易く、スープ状に容易に仕上げられ、タンパク質を効率的に摂取することができる。
(7)くず粉などのでんぷんを混入させれば固形状に加工できるので、固形状の肉料理として調理することができ、通常の肉料理を食べる感覚に近づけることが可能である。
(8)精肉であると、調理の際の衛生状態を厳重に管理しないと細菌感染の危険性が伴うが、本発明では缶詰の形態とした後に缶詰ごと加熱殺菌処理していないので細菌感染などの衛生面での危険性が無い。
(9)長期間の保存が可能であるので、非常食としても災害発生時の非常食として保管しておいて使用することが可能である。
(10)震災時などの非常時にタンパク質の供給が容易である。
(11)野外のキャンプでの食材として手軽に持参できる利点がある。
(12)缶詰の形態とすることで外観が固形となるので、取り出す際にテーブル等が汚れる心配がない。
【0074】
以上に加えて、人生100年時代と言われる昨今において、勤め人の定年についても60代から70代へと延長されていく傾向にあり、このような年齢になっても朝食を早く済ませて出勤するようにライフスタイルが変化しつつある。そのため、朝食に十分な時間を割けない場合も生じてくるため、体調維持のためだけでなく年齢が高くなることで生じ易くなるフレイルやサルコペニアの発生や進行を防止するのに本発明は極めて優れている。
【0075】
具体的には本発明に関するタンパク質の効率的吸収食品の缶詰を開けて短時間で十分な量のタンパク質を朝食時に手軽に摂取できるようになる。即ち、朝食の際にわざわざブロック状(かたまり状)の肉を加熱調理した後に食べるにはかなりの時間と労力が必要となってしまうのでフレイルやサルコペニアの発生や進行を防止するために朝食の際にこのような食べ方でタンパク質を体内に取り込むことは困難である。
【0076】
しかしながら、本発明に関するタンパク質の効率的吸収食品であれば、加工調理済みの肉を非常に細かい小切片状に粉砕してあるので、そのまま口に含むだけで唾液で溶けてトロトロとした状態で簡単に嚥下することができる。即ち、本発明に関するタンパク質の効率的吸収食品を朝食としてとることによって、タンパク質を朝から効率的に摂取することが可能となる。
【0077】
以上説明したように、本発明によると、最終工程で本発明に関する小切片状の肉やこれにゼラチンを混ぜたもの、でんぷんを混ぜたものを缶詰に詰めてその後高温殺菌することで長期間に亘って保存することができる。パウチなど柔らかい容器で保存した場合に、パウチが劣化してしまうことや保存期限が早めに経過してしまったり、パウチの破損で中身が流出してしまったりするのを、缶詰の形態にして保管することで防止することができる。
【0078】
以上に補足して、本発明における小切片状の肉とする前の肉の塊の種類としては、人間がタンパク質を最も効率的にかつ、迅速的に摂取することができる、人間と近い哺乳類である牛肉や豚肉などの肉が適しているが、その他、日常的に家庭で使用されている一般的な食材である鶏肉などの肉も動物性タンパク質として効率的かつ迅速に摂取することができるので望ましい。
【0079】
以上のようにして、超高齢化社会と言われる人生100年時代において、その後半部分でまるで谷底で落ちたようになってその後の人生を過ごすようなことにならないよう、再び人生の歩みのペースを元に戻して充実した人生を最後まで全うできると共に100年の大半においてQ・O・L(クオリティー・オブ・ライフ)を維持することができる。
【0080】
なお、上述した本発明における肉の種類は上述したものに限定されずいわゆる、哺乳類の肉であれば人間の筋力の増加とコラーゲン減少の防止の観点から哺乳類の肉が最も好ましく、ジビエ(猪肉、熊肉、鹿肉など)の肉であっても本発明の肉として使用することが可能である。
【実施例0081】
以下に2つの実施例について例示的かつ具体的に説明するが、本発明は、以下の2つの実施例に限定されるものでないことは言うまでもない。即ち、上述した第1の実施形態乃至第3の実施形態の各実施形態における粉砕した小切片状の肉の大きさが1mm~3mm程度の範囲内で任意に選択して組み合わせることで、本発明特有の作用効果を発揮できることを強調しておく。
(1)実施例1
(第1ステップS1-1)
実施例1においては、嚥下能力のレベルが極めて低い高齢者に本発明を適応した具合について具体的に説明する。1mm程度(粉砕した肉の粒の大きさが例えば球形上に近ければ、1mm程度、そのまま口に入れて唾液に混ぜて容易に飲み込んでいくことができると共に、コンソメスープやそば汁などの液体に混ぜて極めて容易に1日に必要なタンパク質を摂取することができる。
(第2ステップS1-2)
ステップS1-1のような本発明にかかる粒状の肉を毎朝摂取することで1日分のタンパク質をある一定期間消化吸収して消化器官でペプチドからアミノ酸に変化して消化器官(腸)で吸収することで衰えた筋肉が改善する。これに伴い咀嚼力も若干向上してきた場合においては、本発明にかかる粉砕した肉の粒の大きさを直径2mmにすると共に、必要に応じてゼラチンに撹拌した状態で缶に密封させた状態の第2ステップの本発明に切り替える。
(第3ステップS1-3)
ステップS1-2を一定期間続けることで体の筋肉のみならず内蔵機能か改善され消化機能も増加してきて一定のレベルに達してきた場合には、ステップS1-2からステップS1-3に切り替える。このステップS1-3の食品の粒の大きさは3mm程度にする。この場合、毎朝缶をあけて、肉だけが充填した本発明を食べるとステップ1のような1mm、よりもステップS1-3に関しては3mmになっているのでステップS1-1の粒よりも大きさ(重量)が3の3乗=27倍となり、この肉の粒だけを摂取しようとする人たちにとっても肉を単に流動食のように飲み込むようなものではなく適当に咀嚼しながら消化器官に送ることができて肉を食べる感覚を脳の視床下部に情動的に実感することができる。それまでの咀嚼力が低下していた段階に比べて食べ物を食べられることを実感することができ、それまでにない喜びを実感することができる。
(2)実施例2
実施例2は、実施例1におけるほど咀嚼力が極端に低下していないが、通常の咀嚼力に比べてみるとかなり低下している状態におけるタンパク質の効率的吸収を図るための実施例である。
(第1ステップS2-1)
実施例2においては、第1ステップS2-1として実施例1におけるステップS1-1乃至ステップS1-3の何れか、若しくは実施例1のようにそれぞれ順々に繰り返すか、若しくは第2の実施形態のようにゼラチンを混ぜた状態で、実施例1におけるステップS1-1乃至ステップS1-3の何れか若しくは実施例1のようにそれぞれ順々に繰り返す。これによって、十分な量のタンパク質を吸収して、全身のフレイルやサルコペニアの改善を徐々に図ると共に、咀嚼筋のオーラルフレイルを或る程度改善させる。
(第2ステップS2-2)
これを加熱して咬み応えを或る程度有するまで固くした後に実際に咀嚼して嚥下してもらうようにする。このように本発明に関するタンパク質の効率的吸収食品を少なくとも毎日の朝食時に咀嚼機能の衰えが少ない高齢者や咀嚼機能が回復途中にある高齢者に提供してある程度の咀嚼機能を働かせて口の中で咬み砕いた後に嚥下するように習慣づけてもらうことで、以下のような作用効果を発揮するようになる。
【0082】
具体的には、この段階になると上述したように、視床下部が刺激されて情動的な観点から肉を食べているという感覚を実感できるので、ほとんど流動食を流し込んでいたような時期と異なり、食べ物を食べるという人間の3大欲求(人間の基本的な3大欲求・食欲、性欲、睡眠欲)の中の食欲を満たして気分的に若返り、精神衛生上も非常に好ましい結果に繋がっていく。
【0083】
これと共に、この段階まで達すると、結果的にそれまで十分な量の肉を継続して摂取し続けることになり、体全体の筋肉の萎縮の進行を止めることだけではなく、更には筋肉量を積極的に増やすことに繋がり、様々な運動能力も向上させることができる。
【0084】
具体的には、手や足の運動機能の向上を図ることにも十分に貢献し、年齢の進行と共に、食べ物から吸収しないと減少してくる関節を滑らかに動かすために必要でかつ関節痛にならないためのコラーゲンを増加させることができる。これによって、上述した視床下部を通して情動面で食べ物を食べる喜びを再び感じ始めて毎日、食事をとることに対するモチベーションを向上させることに加えて、今まで手足などの身体部位の機能が衰えていて、かつ各関節のコラーゲン減少による関節痛に悩まされていた人がこれとは逆に、手足などの身体部位を動かせると共に、動きに伴う関節の痛みから解放されて、日々明るく朗らかな生活を送るようになれる。
【0085】
このように、各身体部位の動きの自由度が向上したことを実感できると、いわゆる昔から言われる「心身一如」と呼ばれる「身も心も一体であること。」(大修館・四字熟語辞典より)からも分かるように、身体的に健康になるだけでなく心身時にも明るく健康になっていくことができる。
【0086】
そして、身体の動きが以前よりも軽やかになることでベッドで流動食を口から流し込んでいた状態から、ベッドを離れて歩き回り室内の窓から外の風景を見て四季の移り変わりを実感したり住居から外に出て近くを散策したりして、様々な発見をしたり、知人と会って会話を楽しんだりすることができるようになる。
【0087】
このように上述の実施例で紹介した各ステップを実行したり、それ以外に各高齢者の個別の体調に合わせた様々なステップを選択して実行したりすることで、タンパク質を効率的に摂取していくことによって、近年の人生100年時代と言われている超高齢化社会において人生の道半ばで思わぬ筋力の低下による咀嚼機能の低下によりその後の残りの人生を活動的に送っていけなくなっていく感覚とそれに伴う精神的不安から解放されると共に、これとは真逆の日々の日常的な活動的状態を獲得すると共に、精神的な安らぎや希望を獲得することができる。
【0088】
なお、本発明は、上述の各実施形態に材料や寸法が限定されるものでなく、本発明の目的や作用効果を発揮しうる範囲内で様々な種類の肉材をより細かい小切片状に粉砕したり、それぞれが大きさの異なる小切片状にしたりしたものを利用しても良い。
【0089】
また、例えば肉の種類としては、上述した実施形態に挙げた肉の種類に限定されず、例えば上述したようにジビエ料理などに使われる猪肉、熊肉、鹿肉などを用いても十分な量のタンパク質を食品に含ませることができる。又は、様々な哺乳類の肉を小切片状に粉砕した後に混ぜ合わせても良い。つまり、タンパク質の効率的吸収の観点から見て、哺乳類の肉や鳥類の肉が好ましいと本発明の発明者は考える。
【0090】
なお、上述したジビエ料理などに利用する猪肉、熊肉、鹿肉を利用するにあたって、山間部から人間の居住地域に餌を求めて出てきた熊や猪や鹿であって駆除された肉を使う場合に、これを食品として加工・販売した際の収益の一部をこれらの動物が人家に現れることなく本来の山間部で生息できるような工夫を行うために利用すると、人間と動物の本来の共存関係に少しでも貢献することができるので好ましいと言える。
【0091】
以下に、歯科医療の実務に今まで長年携わってきた発明者本人による本発明の優位点に関する知見を述べる。
(1)筋肉や腱は、3箇月ごとに新しい筋肉や腱に循環する(組織的に新しく置き換わる)。その時に、筋肉を生成するタンパク質が欠乏すると、タンパク質合成能力減少により正常な筋や腱が再生されなくなる。ここで、正常な筋肉や腱の再生を促していくことが極めて重要なことが分かる。それ故、筋肉や腱の再生のために充分なタンパク質を効率良く供給するために、粉砕機によって小切片状の粉粒形状になった肉片(肉粒)からなる本発明品が最適な形態であると言える。
(2)ステーキなどに代表される肉の塊を咀嚼した場合と、これと同様の肉の塊を本発明に従って粉砕した小切片状の肉粒にした場合とを比較すると、両者の表面積が格段に異なり、前者の咀嚼後の肉片の総表面積に比べて後者の小切片状に粉砕した肉粒の総表面積が大きくなることに加えて、絶対的な大きさの格段に小さい後者の小切片状の肉粒が消化器官の中に広く分散することで、タンパク質に対する消化液による化学反応が効率良く作用する。これによって消化器官におけるタンパク質の消化や吸収の効率が本発明によって格段に向上する。その結果、本発明によると、筋肉の分解と再生の循環を確実に行うことで、筋肉量の継時的な減少に起因して発生や悪化するフレイルやサルコペニアの防止や改善に対して本発明は極めて有効であることが理解できる。
【0092】
以下に本発明に関するタンパク質の効率的吸収食品の最良の実施形態について具体的に説明する。本発明に関するタンパク質の効率的吸収食品の最良の実施形態においては、使用する肉は脂身(脂肪分)のほとんどない赤身の部分を使用する。肉の種類としては、牛肉が最も好ましいが、食材として一般的に用いられている豚肉や鶏肉、羊肉、馬肉などであっても良い。また、これ以外にも猪肉や熊肉、鹿肉、ヤギ肉などを用いることも可能である。
【0093】
特に牛肉にはタンパク質に加えて、ビタミンB12や鉄分などの要素が十分に含まれているので好ましいと言える。具体的には、タンパク質により身体の筋肉自体のみならず筋肉の筋、関節のコラーゲン、内臓器官、はりのある肌やツヤのある髪の毛を作るのに役立つ。また、牛肉のタンパク質は、必須アミノ酸がバランスよく含まれている。より詳しくは、貧血予防の効果があるビタミンB12、鉄分、免疫力向上のための亜鉛等が含まれており、本発明に関するタンパク質の効率的吸収食品の元となる肉としては最適であることが言える。また、牛肉のうち本発明に関するタンパク質の効率的吸収食品の元として使うのに好ましい部位、すなわち脂肪分の少ない赤身の部分としては、フィレ肉やモモ肉等が適している。
【0094】
なお、牛肉以外であっても例えば豚肉の場合は、タンパク質の他にビタミンB群が豊富に含まれており、特にビタミンB1の含有量が極めて多くなっている。また牛肉と同様に必須アミノ酸のバランスが良く、筋肉自体や筋肉の筋や関節のコラーゲンの元となることに加えて、疲労低減や免疫機能の向上にも十分に貢献することができる。なお、本発明に関するタンパク質の効率的吸収食品の元となる肉の部位としては、牛肉と同様に脂肪分の少ない豚ヒレ肉や豚モモ肉が好ましい。
【0095】
以上の他にも鶏肉の場合はささ身やむね肉などの脂肪分が少なくタンパク質が豊富に含まれている部位を使うのが良い。更には、羊肉などは上述したカルニチンが豊富に含まれると共に、羊肉に含まれる脂肪分は人間の体温より高い温度でなければ溶け出さないため、本発明に関するタンパク質の効率的吸収食品の原材料となる肉に脂肪分を含んだ羊肉を使ってもタンパク質のみを体内に効率的に吸収させることができる。
【0096】
また、近年これらの動物が人々の居住地の中に入り込んで安全かつ平穏な生活を脅かすことが多くなり、駆除対象の動物として捕獲や駆除される場合が多くなっている。しかし、その後の処理に行政上のかなりの費用を充当させなければならない問題が生じている。
【0097】
そのため、熊肉や猪肉、鹿肉などの肉を本発明に関するタンパク質の効率的吸収食品を製造する元となる肉の材料として単独で又は適当に組み合わせて混ぜて細かく裁断すると共に、この際に生じる肉汁と共に缶詰やレトルトパウチなどでパッキングして殺菌しておくことで、豊富なタンパク質を含んだ食品として非常に安い価格で提供することができる。
【0098】
ここで以下に発明者による補足説明を行なう。本発明において食肉は、上述したように牛肉以内に馬肉、豚肉、鶏肉、その他の羊肉、鹿肉、熊肉、猪肉、ヤギ肉等様々な肉を含むものであることについて既に言及したが、これらの肉を使う部位に関しては上述した部位の他にそれぞれの動物の肉の顔面筋、肋間筋、横隔膜等、通常では食品として流通することもなく廃棄扱いとするために安全上の様々な廃棄処理をしなければならない部位についての使用可能である。更には、使役に用いられた例えばそのまま調理しても咀嚼の際に硬くて咬み切れないような食肉に適さない個体の肉も使用可能である。
【0099】
これによって、本来摂取できる要素である肉の部位をそのまま廃棄物として無駄に処理することなく、かつこの廃棄処理にかかるコストをかけずに済む。その結果、元々廃棄物扱いされていた十分なタンパク質を含む肉の部位の原材料費を極めて安く抑えると共に、従来必要とされていた廃棄処理にかかるコストをかけずに済ませながら例えば上述した缶詰容器への殺菌密封処理することができる。これによって、非常に大量の保存食としてのタンパク質を豊富に含んだ肉の缶詰を、現状において市販されている非常に高価な牛肉の缶詰などに比べてかなり安い価格で市場に供給することが可能となる。
【0100】
なお、ソーセージ、ハム、ベーコンなどは、保存に冷蔵庫が必要であるが、本発明においては最終的に缶詰の形態とすることができるので、常温で長期間の保存が可能であり、一度購入しておけば住居の通常使わない狭いデッドスペースなどを活用して長期間保管しておくことができる。そのため、冷蔵庫に必要な食品のみを保管しておくことができ、長期に亘ってみると電気の節約にも貢献する。これに加えて、非常食などとしての利用価値が非常に高まる。
【0101】
以上のような結果、本発明によると、近年社会問題となっている所得格差に伴う低所得者や年金生活だけの収入の割には出費が多くなっている高齢者、育ち盛りの子供がいる収入の低い世帯などにも必要かつ十分なタンパク質を含んだ食品を保存食や調理用の食材として提供することが可能になる。もちろん一般の家庭においてもこのような食品を日々提供することで、身体のコンディションを良好に保ちながらエンゲル係数を低くして、その結果生じた経済的余裕分を自分趣味や子供たちの塾や習い事などの費用に充てることが可能となり、日々の生活の質の向上に貢献することができる。
【0102】
その結果、収入的な問題で値段の高い食材を十分に購入することができない人達やその育ち盛りの子供たちにとってタンパク質を日常的に摂取できるようにするためのコストパフォーマンスに優れた食品として提供可能とする。これに加えて、このような肉を利用することによって、大規模災害時に発生する長期間の避難生活に備えた備蓄食品として活用することも可能となる。
【0103】
なお、本発明に関するタンパク質の効率的吸収食品の製造工程においては、上述した肉を実際に食べられるまで焼いて調理する。この焼き加減は、肉の種類によって異なり、その後に食べても特別問題がない程度までそれぞれの肉を焼く。
【0104】
具体的には、牛肉であれば、ヒレ肉やモモ肉の部分をステーキとして食する時などのように鉄板上で十分に焼いて調理する。この際、単に焼いただけでも良いし、塩や胡椒、その他適当なスパイスを加えて焼いた状態にしておいても良い。
【0105】
続いて、上述の焼いた肉をミキサーなどの粉砕機に入れて粒状になるまで粉砕する。そして、粉砕されて粒状と化した肉片をこの粉砕時に生じた肉汁も含めて全て残すことなく缶詰かレトルト製品用のパウチ等に入れて密封し、高温殺菌して長期保存可能な形態のタンパク質の効率的吸収食品とする。
【0106】
なお、上述したように密封保存されたタンパク質の効率的吸収食品は、非常に細かい粒状肉片と裁断時に生じた肉汁が混じり合った状態となっている。そして、肉汁が、細かい粒状肉片同士が単なる乾燥した粒々の集合体みたいにバラバラにならないいわゆるつなぎの役目をしている。
【0107】
すなわち、肉汁が粒状肉片の間に混ざることによって、スプーンなどで適度な量だけ掬って食べられるいわゆる粘度の十分にあるスラリー状の柔らかい固形食品の形態をなしている。
【0108】
上述したようにある程度の塊になると共に、肉汁同士で繋ぎ合った硬めのスラリー状態の形態を有することで、上述したように必要とする肉の量をスプーンで掬って周りにこぼさずそのまま口の中に入れたり、調理した料理やスープなどの中に混ぜたりすることができる。
【0109】
そのため、例えば高齢者の中で手先の動きが不自由になったり、器用さが失われたりした人達にとっても、手先や口元、衣服、食卓を汚さず簡単かつ確実に必要な量のタンパク質を自然な肉の形態で摂取することができる。
【0110】
また、口の中に入れると細かい肉粒同士をつなぎ合わせた肉汁が口中に沁み亘って自然な形での肉汁を味蕾の味覚神経で感じることができる。それにより、自然の生理作用により唾液量が増加して口の中での唾液と肉汁がよりよく混ざり合う。
【0111】
これによって、より口の中の肉粒と肉汁が十分に分泌された唾液と混ざり合ってより一層嚥下しやすくなり、高齢者による食事中の嚥下障害(誤嚥)の発生を阻止する。その結果、日常的に問題になっている餅の類の食品やそれ以外のある程度の大きさを有する食べ物が食事中に気管に詰まったり(誤嚥)、これによる誤嚥性肺炎などの重篤な事態を招くことを本発明によって未然に防止する。
【0112】
このようにして、高齢者で咀嚼力が低下した人でもあってもそれまで咀嚼力に起因して、肉類などを十分に咬んで食べることができなかった人であっても本発明に関するタンパク質摂取用補助食品によって食品を口に適当な量だけ含むことによってそれが適度な流動体になり消化器官に送られた上で、既に粒状までに裁断される状態であるので消化器官で効率良く消化されて毎日欠かさず必要とするタンパク質の量を効率的に摂取することができる。
【0113】
これによって、フレイルやサルコペニアの進行を抑えたり回復させたりすることが可能になって寝たきりの時間が長かった高齢者の活動時間を増やすことでQ・O・Lを向上させることができる。
【0114】
また、胃瘻で必要な栄養分を、チューブを介して胃の中に供給しなければならないような人達に対しても、チューブの中を通過する細かさまで裁断した肉片と肉汁からなる本発明に関するタンパク質摂取用補助食品を他の栄養素を含んだ液体で薄めることによってチューブを介して1日に必要なタンパク質の摂取を可能とする。
【0115】
また、子供の健全かつ十分な発育のために必須な栄養素であるタンパク質を日々摂取することが重要であるが、肉を咬み砕くことを嫌がる子供にとっても本発明に関するタンパク質の効率的吸収食品を利用することで、通常のようにある程度の大きさを有する固い肉の塊を咬み砕くことなく必要なタンパク質を摂取することができる。
【0116】
特に乳歯から永久歯に生え変わる時期や虫歯が進行して治療が必要になった時期においては、子供であっても痛さで食べ物を十分に咀嚼できなくなることが多くなるが、本発明に関するタンパク質の効率的吸収食品捕食することにより、必要なタンパク質を摂取することができる。
【0117】
また、乳幼児の場合、乳食から常食(一般食)に移行する際においてたとえ大きさが小さい肉であってもいきなり固い肉を食べた時にのどに詰まるような危険性があるが、本発明に関するタンパク質の効率的吸収食品によってタンパク質を摂取することでそのような重大事故の発生を確実に防ぐことができる。
【0118】
また、本発明に関するタンパク質の効率的吸収食品は、働き盛りの世代の人達にも有用である。このような人達は、毎食の時間を十分に確保することができず、食事の栄養バランスが崩れたまま毎日を過ごし続ける傾向にある。そのため、長い目で見ると気がつかないうちに体調の悪化を招くようなことも多々見られる。
【0119】
特に筋肉や関節のコラーゲンなどの元となるタンパク質を十分に含みかつ身体の消化器官が効率的に吸収しやすい肉類などの食品を十分に咀嚼して食するような時間的余裕がない毎日を送ると、知らない間に筋力の衰えが生じたり、これに日々の仕事や家事などを続けたりすることと相俟って倦怠感や疲労感を受けやすくなる。
【0120】
このような状態になっても、本人ははっきりした理由が分からないまま有効な手立てを取ることができずに精神的にも多大なストレスを抱えることになってしまう。
【0121】
しかしながら、本発明に関するタンパク質の効率的吸収食品を毎日必要な量だけ欠かさず食することで、食事の時間が取れなくても十分に咀嚼した状態の肉に相当する細かく裁断した肉片が肉汁と唾液と共に混ざり合った状態で消化器官に効率的に送り込むことができる。これによって、身体の運動機能の低下を防止することができ、日々の仕事や家事、買い物、友人との会食などを億劫にならずにこなしたり楽しんだりすることが可能となる。
【0122】
また、近年は男性も子育てに参加することが社会的潮流として推奨されているが、実際には出産後の女性である母親が乳幼児の子育てを行なうことが大半を占めている。そして、乳幼児の子育てにおいては、1日の内で頻繁な授乳を行なったりオムツ替えを行なったり、夜泣きに対応して乳幼児をあやしたりしなければならず、このような生活を毎日かなりの期間に亘って続けていくことになる。そのため、母親の中には子育て中に心身とも疲労困憊してマタニティーブルーになったり、これが原因で育児放棄や虐待等を招いたりすることが社会問題化している。
【0123】
この大きな要因の1つとして子育てする母親の身体的負担が挙げられる。すなわち、子育てに毎日追われることで自分自身の疲労が溜まり、自分のための食事を十分にとることができず、これが元で筋力の低下や体調悪化を招いて更に子育てが大変になるという悪循環に陥ってしまうことが十分に考えられる。
【0124】
そこで、子育て中の母親の負担軽減のために本発明に関するタンパク質の効率的吸収食品を日々の食事の際に食することで、1日に必要なタンパク質を短時間で効率的に摂取することが可能となる。その結果、上述のような身体的負担に基づく体調悪化を防止し、長期間続く子育ての負担軽減を図って、乳幼児にも十分な愛情を注ぎながら子育て期間を送れるようにするために、本発明は十分に貢献することが可能となる。
【0125】
続いて、本発明に関するタンパク質の効率的吸収食品に対応する食肉加工二次食品の代表例である挽き肉やコンビーフと本発明に関するタンパク質の効率的吸収食品との本質的相違点について説明する。前者の挽き肉は生の肉を裁断した状態のままなので、その後に調理する手間がかかってしまう上、つなぎが肉の繊維質であるがために必要な分だけスプーンで簡単に取り分けることが難しい。
【0126】
また、例えば一人暮らしの高齢者の人達にとっては、毎日十分なタンパク質を摂取するために挽き肉を毎食調理して食べなければならず、調理に手間がかかって大変である。そればかりか、手足や腰などの具合が慢性的にかんばしくない高齢者の場合、きちんと調理して食べるのには食べる前の調理に関する身体的負担が大きいばかりでなく、調理する場所の近くをうっかり汚してしまったり、調理するのが面倒で中途半端に調理したものを食べてかえって食中毒の危険性を招いたりする。
【0127】
また、挽き肉などを調理する場合、調理中に火を使って調理の後にうっかり火を消すことを忘れて、火災の発生等の重大な事故を招く恐れが多分に生じる。しかしながら、本発明に関するタンパク質の効率的吸収食品をそのまま調理することなくスプーン等で適当な量に取り分けて食べればこのような危険性を未然に確実に回避することができる。
【0128】
一方、挽き肉のように調理することなくそのまま食べられる食肉加工品の一例として後者のコンビーフ等が挙げられる。ここで挙げたコンビーフのような類の肉製品加工品は、既に調理されているが、つなぎが脂肪分であり、毎日食していると細かく裁断した肉片からなる形態のタンパク質以外に脂肪分や塩分を自然に過剰摂取してしまうことになり、好ましくない。また、つなぎが脂肪分であるがために、スプーンで適当な量を取り分ける際に脂肪分が手先や服について汚してしまうと共に、口周りがベトついて不快感を与えてしまう。
【0129】
以上説明したように、本発明に関するタンパク質の効率的吸収食品は、上述したあらゆる世代の人達にとって日々の食生活にとって欠かすことのできない主要な栄養要素であるタンパク質を効率的かつ確実に日々摂取することができる。
【0130】
特に近年の急速な高齢化社会の到来に伴って、十分な咀嚼能力を有さない高齢の人々であっても、更には手先の自由度が以前より失われて自ら調理をして毎日タンパク質を摂取することが難しい高齢の人々であっても、毎日摂取するのに必要かつ十分なタンパク質を簡単かつ確実に消化器官に取り込むことができる。
【0131】
これに加えて、細かく粉砕されて肉汁と混ざり合った状態で口の中に入れることができるので、口の中の味蕾が敏感に反応して唾液の分泌を促し、肉汁に更に唾液が混ざることで、さほど咀嚼することなくより流動性のあるスラリー状態としたまま消化器官に流し込むことができる。
【0132】
その結果、高齢化社会の急速な到来に伴って頻繁に生じ、社会問題化している高齢者の食事中における食べ物の詰まりによる窒息などの重篤な事故の発生を未然に防止することが可能となる。また、上述した様々な世代においてそれぞれ抱えている事情に応じた問題を本発明に関するタンパク質の効率的吸収食品を利用することで解決することができる。
【0133】
更には、近年の異常気象に伴う大地震や超大型の台風の到来、線状降水帯の発生による河川の氾濫や土砂崩れの発生、熱波による山火事などの自然災害の際に安全な施設に避難して長期間の避難生活を送ることになる。このような非常事態の発生に備えて本発明に関するタンパク質の効率的吸収食品を常備しておくことで避難場所においてどうしても不足気味となるタンパク質を摂取できる。
【0134】
つまり、例えば従来の乾パンの組み合わせではなかなかしのぎづらい避難生活を細かい肉粒とこれに混ざり合った液体状の肉汁からなる本発明に関するタンパク質の効率的吸収食品を利用することで、無味乾燥な乾パン等とは異なり、細かく裁断された肉片と十分な肉汁とが混ざり合った本発明に関するタンパク質の効率的吸収食品を食することで、上述のような避難生活のしのぎつらさを緩和することが可能となる。
【0135】
これに加えて、避難所には高齢者、子供や妊婦などの人達の割合が高くなるが、いずれの人達にも本発明に関するタンパク質の効率的吸収食品をそのまま食してもらうことができて、すべての避難者に対して避難生活を送るにあたって重要な栄養素となるタンパク質を十分に摂取してもらうことができる。
【0136】
また、避難場所における避難生活を送るにあたって、どうしても水道や、電気、ガスなどのインフラ設備が十分に機能しなくなる恐れが高い。このような場合、例えば災害避難所の備蓄用保存食としてのカップ麺などに水を入れて沸騰させて食べることは不可能である。しかしながら、本発明に関するタンパク質の効率的吸収食品であれば、このような重要なインフラ設備が機能不全に陥っても何ら影響を受けることがない。
【0137】
以下に本発明が極めて重要な生体組織である筋肉を年齢や性別に関わらず効果的に形成していくのに如何に役立つかについての発明者の知見を述べる。具体的には、筋肉は、運動能力や体の動きを支えるために不可欠な生体組織であり、身体の運動機能を司ると共に健康維持にとって重要な役目を果たしている。
【0138】
そして、筋肉の主要な成分は筋線維であり、筋肉繊維は、筋肉の収縮と運動を行う細胞であり、代表的なタンパク質としてミオシンやアクチンと言われる筋タンパク質を含んでいる。
【0139】
ここで重要なこととしては、筋肉には、上述した2つのアミノ酸に代表される以外にこれを含めて合計20種類のアミノ酸が含まれており、そのうち9種類は体内で合成できないため、食事から摂取することが必須である点にある。具体的には、食事によって筋肉の元となるタンパク質を効率的に摂取することによって、筋繊維の形成だけでなく、筋肉の収縮を司ると共に、傷めた箇所の筋肉の修復を行う役目を果たしている。
【0140】
このようなことから分かるように、人間のあらゆる部位の運動機能を司る筋肉を健全かつ効果的に機能させるためには、以上のような役目を果たすのに唯一必要となるタンパク質を日々十分に摂取することが大切である。より具体的には、このような筋肉の衰えに基づくフレイルやサルコペニアの発症や進行を抑えるために、体内に吸収しやすいタンパク質を豊富に含む食品の形態、すなわち本発明のような食品の形態で毎日の食事からタンパク質を摂取することが非常に重要であることが理解できる。
【0141】
なお、一般的に筋肉の量を増やすためには、1日に体重1kgあたり1.2g~2.0gのタンパク質を摂取することが目安とされている。これに基づけば、体重70kgの人であると、1日あたり84~140gのタンパク質を摂取する必要がある。このような目安から高齢者の人達であってもその個人個人の体重に合わせたタンパク質を含む食品を、食事を介して消化器官に取り込んで無駄に排泄することなくこの消化器官で効率的に体内に吸収して筋肉の元にすることが極めて重要であると言える。
【0142】
このようにすることで、高齢者の人達であってもタンパク質を十分に摂取した後にそれ相応の運動やトレーニング、リハビリ等を行なって、摂取したタンパク質に基づいて筋肉を構成する筋繊維を新たに形成していくと共に、傷めた部位の筋肉や機能が劣った身体部位の筋肉の増強を図ることで、人間が本来持つ生命力の衰えを防止するだけでなく、この生命力の向上を図ることが可能になる。
【0143】
最後に本発明に関するタンパク質の効率的吸収方法の変形例について説明する。最初に身体運動機能の一般的な説明から行う。身体の各部位の動きは、骨格と骨格に付随する筋肉の収縮によって行われる。筋肉は両端の腱によって骨格に結合されている。ここで、腱は主にコラーゲン繊維や繊維組織によって構成されており、コラーゲン繊維は、関節を滑らかに動かく事にも重要な働きを果たしている。
【0144】
以上から分かるように、身体の部位を無理なく自由に動かすためには筋肉の筋力を利用した収縮に加え、筋肉と骨をつなぐ腱がしっかりした強度を保っていることが重要であることが分かる。これに加えて、身体の各部位に関して所定の動きを滑らかに行うのに非常に重要な役目を果たすあらゆる関節部位においてもコラーゲンが不足していないことが大変重要であることが分かる。
【0145】
以上のことから、肉を細かく粉砕した状態でタンパク質を体内に吸収することに加えて、これと同時に上述した動物の腱についても最大限に細かく裁断して咀嚼することなく体内に嚥下して吸収することにより、筋肉をしっかりと形成して衰えを防止すると共に、しっかりと形成された筋肉の筋力を利用して身体の各部位を動かすのに十分耐えられるよう腱の強度を維持し、更には関節を滑らかに動かすことでより身体部位の無理のない運動性の向上を図ることを求められる。
【0146】
しかしながら、腱は元々とても硬いものであり、日常的に頻繁に調理して食べる食品ではない。これに加えて、腱自体はかなり硬いものであるため、特に咀嚼力が低下した高齢者や咬む力がまだ十分ではない小児が腱を咬み砕いて食べることは難しく、かえって喉に詰まらせてしまう危険性がある。
【0147】
同様に、成人であっても腱を咬み砕いて嚥下するのに時間が掛かったり、咬み砕いた際にもろくなった歯の一部が更に欠けたりしまう場合がある。そのため、本発明におけるタンパク質の効率的吸収方法のように、腱においても加熱調理した後、肉と同様の大きさ程度まで粉砕してこの肉に混ぜて缶詰やレトルトパウチなどの密封容器に入れて殺菌処理することが本発明の変形例として非常に好適であると考えられる。
【0148】
具体的には、
図1において加熱調理した肉の塊を用意してからミルミキサー(粉砕機)で肉の塊を粉砕して肉の塊が小切片状になったら粉砕工程を終了する流れにおいて、これと同時並行して加熱調理した腱を用意してミルミキサー(粉砕機)で腱を粉砕して腱が小切片状になったら粉砕工程を終了する。
【0149】
そして、これら両者を例えば
図1に示すプロセス1に従って上述した缶やレトルトパウチに入れて密閉するか、又はプロセス2に従って小切片状に粉砕した肉にゼラチンを混入して撹拌するか、若しくはプロセス3に従って小切片状に粉砕した肉にでんぷんを混入して撹拌するかのいずれかを選択してプロセス2及びプロセス3においてはその後に缶やレトルトパウチに入れて密封し、すべての密閉後の缶やレトルトパウチを密封して高温殺菌して製造工程を終える。
【0150】
なお、肉と腱の加熱調理は別々に行って、その後に適当な割合で混ぜても良く、加熱調理前の肉と腱を適当な割合で混ぜて調理しても良い。また、ミルミキサーで粉砕する工程については、肉と腱を混ぜた状態で纏めて粉砕しても良く、若しくは肉と腱を別々に粉砕してその後に混ぜても良い。
【0151】
なお、肉を粉砕して小切片状にする工程において肉の塊及び腱についてどの程度まで粉砕するかについては、例えば高齢者や小児があえてこれらを咬み砕かなくても肉に混ざる肉汁や口に含んだ際に分泌させる唾液と共に流動食のごとく食道に流れ込んで嚥下できる程度まで粉砕することが最も好ましい。
【0152】
この粉砕の程度に関しては、この変形例に限定されず上述した実施形態において加熱調理した肉の塊のみを粉砕して上述したプロセス1乃至第3のプロセスに従って缶やレトルトパウチに密閉して殺菌処理した後に高齢者や小児がわざわざ咬み砕くことなく、そのまま肉を粉砕した際に生じる肉汁や唾液と共に嚥下できる場合についても同様である。
【0153】
なお、上述したように粉砕した肉の塊と粉砕した腱を混ぜた状態で口の中に入れた時にそれぞれ細くなった状態で口の中に広がるが、肉の触感が柔らかくかつ腱の触感が固いままなので、普段味わうことのない特別な触感を味わうことができ、すなわち食した人に対して味覚として美味の感覚を与えることができる。これによって高齢者のみならず小児にとっても食べることに抵抗がなくなりそれに応じてタンパク質のみならずコラーゲンの双方を効率的に摂取することができる。
【0154】
このようにして筋肉をつけることのみならず、傷んでいたり弱くなったりしていた腱の機能を回復させたり、関節機能を回復させたりすることで、これらの相乗効果により身体の各部位をより積極的に動かすことができるようになり、これによって更に筋力も増加していたのでこれに合わせてタンパク質を身体的摂取の量も生理学的に自然に向上していく。このようにして身体運動機能を総合的に向上させていくことができるという特有のメリットを本発明のこの変形例は有している。
【0155】
なお、上述した実施形態及びこの変形例において、粉砕する肉の種類は単一の種類の肉を粉砕しただけでも良く、異なる種類の肉を混ぜて粉砕しても構わない。また、異なる種類の肉を粉砕したものをこの粉砕後に混ぜあわせても構わない。
【0156】
更には上述の変形例において粉砕する肉と粉砕する腱の種類を異なるものにして組み合わせても良い。例えば、粉砕する肉を牛肉として、粉砕する腱を熊肉や猪肉などの腱としてこれらを粉砕前に混ぜ合わせるか、それぞれ粉砕した後に混ぜ合わせても良い。
【0157】
このように粉砕する肉と粉砕する腱の元になる種類を適当に組み合わせることも好ましい1つの変形形態と言える。例えば具体例としては、本発明で得られたタンパク質の効率的吸収食品の主たる粉砕した肉を牛肉としてその中に熊肉や猪肉などの腱を粉砕したものを含ませた食品とするようなものが一例として挙げられる。
【0158】
上述のような肉と腱の種類の組み合わせにすることによって、本発明によりタンパク質を効率的に摂取する人達にとっても主たる成分、すなわち肉の成分が牛肉であることを認識しながら食することができ、通常の日常的な感覚で違和感を持つことなく本発明によるタンパク質の効率的吸収食品から栄養分を吸収することが可能となる。
【0159】
また、当然のことながらこのような具体的な肉と腱との組み合わせに限定されず、その他の種類の肉と腱との組み合わせも可能である。すなわち、その時点で過剰流通されている肉や腱を適宜組み合わせて本発明を実施することによって非常に廉価で栄養価の高いタンパク質の効率的吸収食品を提供することが可能となる。