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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118431
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】重合体
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/08 20060101AFI20240823BHJP
   C08F 32/08 20060101ALI20240823BHJP
   C08F 8/14 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
C08G61/08
C08F32/08
C08F8/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024004557
(22)【出願日】2024-01-16
(31)【優先権主張番号】P 2023024600
(32)【優先日】2023-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻本 貴士
(72)【発明者】
【氏名】江畑 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】清水 大智
【テーマコード(参考)】
4J032
4J100
【Fターム(参考)】
4J032CA45
4J032CB01
4J032CC03
4J032CD03
4J032CD09
4J032CE03
4J032CF03
4J032CG02
4J100AR21P
4J100BA02P
4J100BA05P
4J100BA12P
4J100BA15P
4J100BA20P
4J100BA28P
4J100BA40H
4J100BA40P
4J100BA41P
4J100BA51P
4J100BB01H
4J100BB01P
4J100BB11P
4J100BC04H
4J100BC04P
4J100BC09P
4J100BC43H
4J100BC43P
4J100BC44P
4J100BC48P
4J100BC49P
4J100BC53P
4J100CA01
4J100CA03
4J100CA31
4J100DA25
4J100DA61
4J100DA63
4J100HA13
4J100HC09
4J100HE05
4J100HE41
4J100JA33
(57)【要約】      (修正有)
【課題】中アッベ数を有し、屈折率、耐熱性、Tg等のバランスに優れた新規重合体。
【解決手段】下記一般式(A1)および(B1)で表される繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する、重合体。

[一般式(A1)および(B1)中、Ra~Rcは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基等の極性基、または炭素数1~10の脂肪族炭化水素基等を表し;Xは酸素原子等を表し;Rは炭素数4~15の芳香族炭化水素基等を表し;Yは単結合等を表し;R’は水素原子または炭素数1~8の脂肪族炭化水素基等を表し;n1は0または1の整数を表し;mは0~3の整数を表す(但し、n1が0かつXが酸素原子のとき、mは0である。)。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(A1)および(B1)で表される繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する、重合体。
【化1】
[一般式(A1)および(B1)中、
a、Rb、およびRcは、それぞれ独立に、下記(i)~(iv)のいずれかを表し、RbとRcが、相互に結合してアルキリデン基を形成してもよく、RaとRb、またはRaとRcが、相互に結合して、結合するそれぞれの原子を含む環状構造を形成してもよく、
(i)水素原子、
(ii)ハロゲン原子、
(iii)アルコキシ基、水酸基、エステル基、シアノ基、アミノ基、アミド基、チオール基、およびチオエステル基からなる群より選ばれた極性基、
(iv)ハロゲン原子、または前記(iii)により置換されていてもよい、炭素数1~10の鎖式炭化水素基、脂環式炭化水素基、もしくは芳香族炭化水素基;
Xは、酸素原子または硫黄原子を表し;
Rは、置換されていてもよい、炭素数4~15の芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表し;
Yは、単結合、-O-、-C(O)-、-NH-、-NR-、または-S-を表し;
R’は、水素原子、または置換されていてもよい、炭素数1~8の鎖式炭化水素基、脂環式炭化水素基、もしくは芳香族炭化水素基を表し;
1は0または1の整数を表し;
mは0~3の整数を表す(但し、n1が0、かつXが酸素原子のとき、mは0である。)。]
【請求項2】
さらに、下記一般式(A2)および(B2)で表される繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項1に記載の重合体。
【化2】
[一般式(A2)および(B2)中、
x、Ry、およびRzは、それぞれ独立に、前記(i)~(iv)のいずれかを表し、RyとRzが、相互に結合してアルキリデン基を形成してもよく、RxとRy、またはRxとRzが、相互に結合してそれぞれが結合する炭素原子を含む環状構造を形成してもよく;
R"は、炭素数1~8の鎖式炭化水素基を表し;
Xは、酸素原子または硫黄原子を表し;
2は、0または1の整数を表す。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
光学レンズ、光学フィルム等の光学部品は、液晶表示装置等の表示装置、デジタルカメラや携帯電話用カメラ等のカメラモジュールレンズ、イメージセンサ等の光センサなどに用いられている。光学部品の材料として、光学ガラスあるいは光学用透明樹脂が使用されている。中でも光学用透明樹脂(特に熱可塑性透明樹脂)からなる光学レンズは、射出成形により大量生産が可能で、しかも非球面レンズの製造も容易であるという利点を有している。一方、光学用透明樹脂を光学レンズとして用いる場合、屈折率やアッベ数等の光学特性以外にも、透明性、耐熱性、低複屈折性が求められるため、樹脂の優れた特性バランスが要求される。
【0003】
また、光学レンズは、目的とする性能を持たせるための調整のために、異なる光学特性を有する複数のレンズを組み合わせてレンズユニットを作成して使用されることも多い。レンズ設計の幅を広げるために、様々な光学特性を有する樹脂(例えば、低屈折率かつ高アッベ数の樹脂、中屈折率かつ中アッベ数の樹脂等)に需要があり、中でも、レンズ性能の微調整を行うことが可能であるという観点から、中アッベ数の樹脂の需要が高まっている。
【0004】
所望の特性を有する樹脂を得るために、様々な樹脂の合成方法が開示されている。原料モノマーに対して官能基化を行うことで、目的とする特性を有する重合体(樹脂)を得る例は数多く存在するものの、重合体に対して官能基化を行うことで、目的とする特性を有する重合体を得る例は数例にとどまっている(例えば、特許文献1~2)。重合体に対して官能基化を行うことで、基本となる重合体から数種類の異なる特性を有する重合体を合成できるため、複数種類の重合体を効率よく合成することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-231253号公報
【特許文献2】特開2006-160786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の通り、光学用透明樹脂には、様々な異なる光学特性を有する樹脂の合成が求められることに加え、さらに該樹脂には、優れた透明性、耐熱性等も求められる。しかしながら、原料モノマーに対して官能基化を行い重合するというような主流の合成方法では、合成上の制限もあることから、求められている多様な重合体の需要を充分に満たせていなかった。このため、優れた特性バランスを有する(特に、中アッベ数を有し、かつその他特性のバランスに優れる)新規重合体が強く望まれていた。
【0007】
本発明は、前記問題を解決するものであり、中アッベ数を有し、かつ屈折率、耐熱性、ガラス転移温度等のバランスに優れた新規の重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討を行った。その結果、特定の繰り返し単位を有する重合体により前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明の態様例を以下に示す。
【0009】
[1] 下記一般式(A1)および(B1)で表される繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する、重合体。
【0010】
【化1】
【0011】
[一般式(A1)および(B1)中、
a、Rb、およびRcは、それぞれ独立に、下記(i)~(iv)のいずれかを表し、RbとRcが、相互に結合してアルキリデン基を形成してもよく、RaとRb、またはRaとRcが、相互に結合して、結合するそれぞれの原子を含む環状構造を形成してもよく、
(i)水素原子、
(ii)ハロゲン原子、
(iii)アルコキシ基、水酸基、エステル基、シアノ基、アミノ基、アミド基、チオール基、およびチオエステル基からなる群より選ばれた極性基、
(iv)ハロゲン原子、または前記(iii)により置換されていてもよい、炭素数1~10の鎖式炭化水素基、脂環式炭化水素基、もしくは芳香族炭化水素基;
Xは、酸素原子、または硫黄原子を表し;
Rは、置換されていてもよい、炭素数4~15の芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表し;
Yは、単結合、-O-、-C(O)-、-NH-、-NR-、または-S-を表し;
R’は、水素原子、または置換されていてもよい、炭素数1~8の鎖式炭化水素基、脂環式炭化水素基、もしくは芳香族炭化水素基を表し;
1は0または1の整数を表し;
mは0~3の整数を表す(但し、n1が0、かつXが酸素原子のとき、mは0である。)。]
【0012】
[2] さらに、下記一般式(A2)および(B2)で表される繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する、[1]に記載の重合体。
【0013】
【化2】
【0014】
[一般式(A2)および(B2)中、
x、Ry、およびRzは、それぞれ独立に、前記(i)~(iv)のいずれかを表し、RyとRzが、相互に結合してアルキリデン基を形成してもよく、RxとRy、またはRxとRzが、相互に結合してそれぞれが結合する炭素原子を含む環状構造を形成してもよく;
R"は、炭素数1~8の鎖式炭化水素基を表し;
Xは、酸素原子または硫黄原子を表し;
2は、0または1の整数を表す。]
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、中アッベ数を有し、かつ屈折率、耐熱性、ガラス転移温度等のバランスに優れた新規の重合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施例1で得られる重合体1の1H-NMRチャートである。
図2図2は、実施例22で得られる重合体22の1H-NMRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について好適態様も含めて詳細に説明する。
[重合体]
本発明に係る重合体(以下「本重合体」ともいう。)は、下記一般式(A1)および(B1)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる少なくとも1種(以下「繰り返し単位(I)」ともいう。)を含有する。
【0018】
【化3】
【0019】
<繰り返し単位(I)>
繰り返し単位(I)は、前記一般式(A1)および(B1)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる少なくとも1種である。本重合体は、前記単位(I)を有することにより、高い屈折率および高いアッベ数を示す。
【0020】
(Ra、Rb、およびRc
前記一般式(A1)および(B1)において、Ra、Rb、およびRcは、それぞれ独立に、下記(i)~(iv)のいずれかの原子または基を表す。RbとRcは、相互に結合してアルキリデン基を形成してもよい。RaとRb、またはRaとRcは、相互に結合して、結合するそれぞれの原子を含む環状構造を形成してもよい。
(i)水素原子
(ii)ハロゲン原子
(iii)アルコキシ基、水酸基、エステル基、シアノ基、アミノ基、アミド基、チオール基、およびチオエステル基からなる群より選ばれた極性基
(iv)ハロゲン原子、または前記(iii)により置換されていてもよい、炭素数1~10の鎖式炭化水素基、脂環式炭化水素基、もしくは芳香族炭化水素基
【0021】
・ハロゲン原子
前記ハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0022】
・アルコキシ基
前記アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、フェノキシ基が挙げられ、炭素数1~10のアルコキシ基が好ましい。
【0023】
・エステル基
前記エステル基の例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基、フルオレニルオキシカルボニル基、ビフェニリルオキシカルボニル基などのアリーロキシカルボニル基が挙げられ、炭素数1~10の置換基を有するエステル基が好ましい。
【0024】
・アミノ基
前記アミノ基の例としては、アミノ基(-NH2)、メチルアミノ基(-NHCH3)、ジエチルアミノ基(-N(CH2CH32)、フェニルアミノ基(-NHC65)が挙げられ、アミノ基(-NH2)が好ましい。また、メチルアミノ基等の置換アミノ基の場合、炭素数1~10の置換基を有するアミノ基が好ましい。
【0025】
・アミド基
前記アミド基の例としては、1級アミド基(-C(O)NH2)、メチルアミド基(-C(O)NHCH3)等の2級アミド基、またはジエチルアミド基(-C(O)N(CH2CH32)等の3級アミド基が挙げられ、1級アミド基(-C(O)NH2)が好ましい。2級または3級アミド基の場合、炭素数1~10の置換基を有するアミド基が好ましい。
【0026】
・チオエステル基
前記チオエステル基の例としては、メチルチオカルボニル基、エチルチオカルボニル基などのアルキルチオカルボニル基;フェニルチオシカルボニル基、ナフチルチオカルボニル基などのアリールチオカルボニル基が挙げられ、炭素数1~10の置換基を有するチオエステル基が好ましい。
【0027】
・鎖式炭化水素基
前記鎖式炭化水素基としては、炭素数1~10の鎖式炭化水素基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、iso-プロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、iso-ブチル基、iso-ペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、ペンタン-3-イル基、iso-ヘキシル基、1,1-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、テキシル基、3-メチルペンタン-3-イル基、ヘプタン-4-イル基、2,4-ジメチルペンタン-2-イル基、3-エチルペンタン-3-イル基、4,4-ジメチルペンチル基、4-メチルヘプタン-4-イル基、4-プロピルヘプタン-4-イル基、2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル基などの直鎖状または分岐状のアルキル基;ビニル基、アリル基、ブタ-3-エン-1-イル基、クロチル基、メタリル基、ペンタ-4-エン-1-イル基、プレニル基、ペンタ-1,4-ジエン-3-イル基、ヘキサ-5-エン-1-イル基、2-メチルペンタ-4-エン-2-イル基などの直鎖状または分岐状のアルケニル基が挙げられる。
【0028】
・脂環式炭化水素基
前記脂環式炭化水素基の例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などのシクロアルキル基が挙げられ、炭素数5~10の脂環式炭化水素基が好ましい。前記脂環式炭化水素基は、環内に不飽和結合を有さない。
【0029】
・芳香族炭化水素基
前記芳香族炭化水素基の例としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、インデニル基、フルオレニル基、アントラセニル基などが挙げられ、炭素数5~10の芳香族炭化水素基が好ましい。
【0030】
(X)
前記一般式(A1)および(B1)において、Xは、酸素原子または硫黄原子を表し、酸素原子が好ましい。
【0031】
(R)
前記一般式(A1)および(B1)において、Rは、置換されていてもよい、炭素数4~15の芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表し、置換されていてもよい炭素数4~15の芳香族炭化水素基が好ましい。前記炭素数4~15の芳香族炭化水素基または芳香族複素環基が複数の置換基を有するとき、隣接する置換基同士が相互に結合して、結合するそれぞれの原子を含む環状構造を形成してもよい。
前記芳香族炭化水素基の例としては、前述した(iv)に記載の芳香族炭化水素基の例と同様のものが挙げられ、炭素数5~10の芳香族炭化水素基が好ましい。
【0032】
・芳香族複素環基
前記芳香族複素環基の例としては、フラニル基、ピリジニル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピロリル基が挙げられ、原子数5~10の芳香族複素環基が好ましい。
【0033】
(Y)
前記一般式(A1)および(B1)において、Yは、単結合、-O-、-C(O)-、-NH-、-NR-、または-S-を表し、単結合、-O-、-C(O)-、または-NH-が好ましく、単結合がより好ましい。また、後述するmが0のとき、Yは単結合である。
【0034】
(R’)
前記一般式(A1)および(B1)において、R’は、水素原子、または置換されていてもよい、炭素数1~8の鎖式炭化水素基、脂環式炭化水素基、もしくは芳香族炭化水素基を表す。
前記炭素数1~8の鎖式炭化水素基、脂環式炭化水素基、または芳香族炭化水素基の例としては、前述した(iv)に記載の鎖式炭化水素基、脂環式炭化水素基、または芳香族炭化水素基の例と同様のものが挙げられる。R’は、水素原子、メチル基、またはエチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0035】
(n1
前記一般式(A1)および(B1)において、n1は、0または1の整数を表す。
【0036】
(m)
前記一般式(A1)および(B1)において、mは、0~3の整数を表し、0または1が好ましく、0がより好ましい。
但し、本重合体において、「n1が0、かつXが酸素原子」のとき、mは0である。
【0037】
前記一般式(A1)で表される繰り返し単位の例としては、下記式(A1-1)~(A1-37)で表される繰り返し単位が挙げられ、屈折率と熱安定性のバランスが良い傾向にあるという観点から、下記式(A1-1)~(A1-18)、(A1-34)、(A1-36)、(A1-37)で表される繰り返し単位が好ましい。
る。
【0038】
【化4】
【0039】
【化5】
【0040】
【化6】
【0041】
前記一般式(B1)で表される繰り返し単位の例としては、下記式(B1-1)~(B1-22)で表される繰り返し単位が挙げられ、屈折率と熱安定性のバランスが良い傾向にあるという観点から、下記式(B1-1)~(B1-9)、(B1-19)、(B1-21)、(B1-22)で表される繰り返し単位が好ましく、下記式(B1-1)で表される繰り返し単位がより好ましい。
【0042】
【化7】
【0043】
【化8】
【0044】
本重合体は、射出成形における加工性が優れる傾向にあるという観点から、前記一般式(A1)で表される繰り返し単位を少なくとも1種含有することが好ましい。
【0045】
<繰り返し単位(II)>
本重合体は、アッベ数が高くなる傾向にあるという観点から、さらに下記一般式(A2)および(B2)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる少なくとも1種(以下「繰り返し単位(II)」ともいう。)を含有することが好ましい。
【0046】
【化9】
【0047】
(Rx、Ry、およびRz
前記一般式(A2)および(B2)において、Rx、Ry、およびRzは、それぞれ独立に、前記(i)~(iv)のいずれかの原子または基を表す。RyとRzは、相互に結合してアルキリデン基を形成してもよく、RxとRy、またはRxとRzは、相互に結合して、結合するそれぞれの原子を含む環状構造を形成してもよい。
前記一般式(A2)および(B2)において、前記(i)~(iv)中の各原子または各基の例示および好ましい態様は、前記一般式(A1)および(B1)の説明で挙げられているものと同様のものが挙げられる。
【0048】
(n2
前記一般式(A2)および(B2)において、n2は、0または1の整数を表す。
【0049】
(X)
前記一般式(A2)および(B2)において、Xは、酸素原子または硫黄原子を表し、酸素原子が好ましい。
【0050】
(R”)
前記一般式(A2)および(B2)において、R”は、炭素数1~8の鎖式炭化水素基を表し、炭素数1~3の鎖式炭化水素基が好ましく、炭素数1~2の鎖式炭化水素基がより好ましい。
前記炭素数1~8の鎖式炭化水素基の例としては、前述した(iv)に記載の鎖式炭化水素基の例と同様のものが挙げられる。R”は、メチル基またはエチル基が好ましい。
【0051】
前記一般式(A2)で表される繰り返し単位の例としては、下記式(A2-1)~(A2-6)で表される繰り返し単位が挙げられ、下記式(A2-1)~(A2-3)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0052】
【化10】
【0053】
前記一般式(B2)で表される繰り返し単位の例としては、下記式(B2-1)~(B2-5)で表される繰り返し単位が挙げられ、下記式(B2-1)~(B2-3)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0054】
【化11】
【0055】
本重合体は、射出成形における加工性が優れる傾向にあるという観点から、繰り返し単位(I)に加えて、繰り返し単位(II)として、前記一般式(A2)で表される繰り返し単位を少なくとも1種含有することが好ましい。
【0056】
<その他の繰り返し単位>
また、本重合体は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、前記繰り返し単位(I)および(II)以外のその他の繰り返し単位を含有してもよい。
【0057】
前記その他の繰り返し単位の例としては、下記式(A3-1)~(A3-17)、(B3-1)~(B3-14)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0058】
【化12】
【0059】
【化13】
【0060】
<本重合体の物性>
本重合体は、繰り返し単位(I)のみで構成されてもよい。本重合体が繰り返し単位(I)のみで構成されるときの繰り返し単位(I)の含有割合は、全繰り返し単位中、100モル%である。
また、本重合体に、繰り返し単位(I)以外の構成単位(例えば、繰り返し単位(II)やその他の繰り返し単位)が含まれる場合、繰り返し単位(I)の含有割合は、全繰り返し単位中、好ましくは1~99モル%、より好ましくは3~97モル%、さらに好ましくは5~94モル%である。
【0061】
本重合体に繰り返し単位(II)が含まれる場合、繰り返し単位(II)の含有割合は、特に限定されるものではないが、全繰り返し単位中、好ましくは1~99モル%、より好ましくは3~97モル%、さらに好ましくは6~95モル%である。
本重合体に前記その他の繰り返し単位が含まれる場合、その他の繰り返し単位の含有割合は、全繰り返し単位中、好ましくは0.1~50モル%、より好ましくは0.5~30モル%、さらに好ましくは1~20モル%である。但し、各繰り返し単位の含有割合の合計が100モル%となる。
【0062】
本重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されるものではないが、好ましくは20,000~150,000、より好ましくは30,000~100,000、さらに好ましくは35,000~60,000である。Mwが前記範囲より小さい場合には、成形品の強度が低いものとなる場合がある。一方、Mwが前記範囲より大きい場合には、溶液粘度が高くなりすぎて、本発明の重合体の生産性や成形性、加工性が悪化する場合がある。
【0063】
本重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、特に限定されるものではないが、好ましくは1.2~10、より好ましくは1.5~4.0、さらに好ましくは1.6~2.8である。Mw/Mnが前記範囲にある重合体は、例えばフィルム用途などに好適に用いることができる。
【0064】
本重合体の屈折率nDは、好ましくは1.510以上、より好ましくは1.518以上、さらに好ましくは1.525以上、特に好ましくは1.530以上である。前記屈折率nDは、プリズムカプラを用いて、408nm,633nm、および830nmのレーザー光源により、フィルムサンプルの任意の5箇所の屈折率を測定し、得られた値をコーシーの式にて回帰計算して、589.2nmにおける屈折率を算出して求めた値である。
【0065】
また、本重合体のアッベ数は、好ましくは35~55、より好ましくは36~54、さらに好ましくは37~53の範囲である。アッベ数が前記範囲にあると、レンズに用いた際に、所謂、中アッベ数を有するレンズを得ることができる。前記アッベ数は、下記式により算出された値を意味する。
ν=(nD-1)/(nF-nC
(前記式中、νはアッベ数であり、nD、nF、およびnCは、前記屈折率の回帰計算により求めた589.2nm、486.1nm、および656.3nmにおける各屈折率である。)
【0066】
本重合体のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは90~370℃である。前記Tgの下限値は、より好ましくは110℃であり、さらに好ましくは120℃であり、特に好ましくは123℃である。前記Tgの上限値は、より好ましくは250℃であり、さらに好ましくは200℃である。Tgが前記下限値より低いと、光学レンズなどの最終商品が変形し、実用に耐えられなくなる場合がある。
【0067】
[本重合体の製造方法]
本重合体は、環状オレフィン系開環(共)重合体の製造方法または環状オレフィン系配位(共)重合体の製造方法により好適に製造することができる。具体的には、環状オレフィン系開環(共)重合体の製造方法の場合、環状オレフィン系モノマーを、開環重合することにより、さらに必要に応じて水素添加することにより、前記一般式(A1)または(A2)等で表される繰り返し単位を有する重合体を得ることができる。環状オレフィン系配位(共)重合体の製造方法の場合、環状オレフィン系モノマーを、配位重合することにより、前記一般式(B1)または(B2)等で表される繰り返し単位を有する重合体を得ることができる。
【0068】
本重合体の製造方法としては、例えば、
<1>1種または2種以上の環状オレフィン系モノマーを開環重合または配位重合する方法;および
<2>1種または2種以上の環状オレフィン系モノマーを開環重合または配位重合し、単独重合体または共重合体を製造後、単独重合体または共重合体の有する繰り返し単位を変性させる方法が挙げられる。
【0069】
得られる重合体の有する各繰り返し単位の含有割合が、目的の含有割合となれば、本重合体の製造方法に特に制限はなく、原料である環状オレフィン系モノマーの入手容易性、重合体の有する繰り返し単位の変性のし易さ(所望の官能基の導入のし易さ)等を考慮して適宜決定すればよい。後述する実施例において、本重合体は、前記<2>に記載の方法により製造する。なお、前記<2>に記載の方法における変性前の単独重合体または共重合体は、市販品を用いてもよい。
【0070】
重合体の有する繰り返し単位の変性方法は、公知の方法であれば特に制限はなく、例えば、繰り返し単位がエステル構造を有する場合、所望の官能基を有するエステルを用いて、エステル交換反応により変性することができる。前記エステル交換反応は、公知の条件(触媒、溶媒、温度等)を用いる原料等を考慮し適宜選択して行うことができる。
【0071】
<開環重合>
前記開環重合工程には、環状オレフィン系化合物の開環重合に使用可能な触媒を制限なく用いることができるが、下記触媒成分(a)、(b)および(c)を用いて行うことが好ましい。
(a)有機アルミニウム化合物
(b)ニトリル、ケトン、エーテル、およびエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物
(c)タングステン化合物、モリブデン化合物、レニウム化合物、バナジウム化合物、チタン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物
【0072】
前記触媒成分(a)である有機アルミニウム化合物としては、下記一般式(10)で表されるものが好ましい。
AlRn3-n …(10)
[一般式(10)中、Rは直鎖アルキル基または分枝アルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表し、0<n≦3である。]
【0073】
また、前記触媒成分(a)として、アルミニウムオキシ化合物を用いることもできる。具体的には、例えば、(C253Al、(iBu)3Al、(C252AlCl、(C251.5AlCl1.5、(C25)AlCl2、メチルアルモキサンが挙げられる。
前記触媒成分(a)は、1種単独でも、2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0074】
前記触媒成分(b)としては、ニトリル基含有化合物、ケトン化合物、エーテル基含有化合物、およびエステル基化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を特に制限なく用いることができる。
好ましいニトリル基含有化合物としては、下記一般式(11)で表される化合物を挙げることができ、好ましいケトン化合物は下記一般式(12)で表される化合物を挙げることができ、好ましいエーテル基含有化合物は下記一般式(13)で表される化合物を挙げることができ、好ましいエステル基含有化合物としては下記一般式(14)で表される化合物を挙げることができる。
【0075】
3-CN …(11)
3-CO-R4 …(12)
3-O-(Z-O)p-R4 …(13)
5-CO2-R4 …(14)
[一般式(11)~(14)中、R3、R4およびR5は、炭素数1~20の直鎖状または分枝状のアルキル基、炭素数5~20の脂環式炭化水素基、炭素数2~20の直鎖状または分岐状のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基を表す。Zはメチレン、炭素数2~4のアルキレン基、pは0~3の整数を表す。但し、R5の任意の水素原子が、水酸基で置換されていてもよい。]
【0076】
前記一般式(11)の化合物としては、例えば、アセトニトリル、ベンゾニトリルが挙げられる。
前記一般式(12)の化合物としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノンが挙げられる。
前記一般式(13)の化合物としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、メチルエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルが挙げられる。
【0077】
前記一般式(14)の化合物としては、酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル、酢酸ブチルエステル、酢酸フェニルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸ブチルエステル、安息香酸メチルエステル、安息香酸エチルエステル、5-メチル-5-メトキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、2-メチル-2-メトキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、8-メチル-8-メトキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、2-メチル-2-メトキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカンが挙げられる。
前記触媒成分(b)は、1種単独でも、2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0078】
前記触媒成分(c)としては、タングステン化合物、モリブデン化合物、レニウム化合物、バナジウム化合物、チタン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を特に制限なく使用することができる。
触媒成分(c)として好適に用いられる化合物としては、Olefin Metathesis and Metathesis Polymerization(K. J. IVIN, J. C. MOL, Academic Press 1997)に記載されている化合物が挙げられ、例えば、WCl6、WOCl4、W(CO)6、MoCl5、MoO3、Mo(CO)6、ReCl5、Re27、ReOCl3、VCl4、VOCl3、V25、TiCl4が挙げられる。これらは、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
また、前記触媒成分(c)として例示したこれら化合物は、必要に応じて、アルコール等を用いて変性されていてもよい。
【0079】
環状オレフィン系開環(共)重合体の製造においては、開環重合触媒として、前記触媒成分(a)、(b)および(c)を併用することが好ましいが、触媒成分(a)および(b)をあらかじめ接触させてなる混合物(X)と、触媒成分(b)および(c)をあらかじめ接触させてなる混合物(Y)とを用いて開環重合を行うことがより好ましい。
【0080】
触媒成分(a)および(b)を接触させて、混合物(X)を調製する操作は、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下、室温から100℃の範囲で好適に実施することができる。混合比は特に限定されないが、触媒活性の観点から、触媒成分(a)と(b)とのモル比((b)/(a))が、1/1~100/1の範囲であることが好ましい。混合時に使用する溶媒は、トルエン、シクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒を用いることができる。混合物(X)は、作成後、直ちに重合に使用することができる。
【0081】
また、触媒成分(b)および(c)を接触させて、混合物(Y)を調製する操作も、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下、室温から100℃の範囲で好適に実施することができる。混合比は特に限定されないが、触媒活性の観点から、触媒成分(b)と(c)とのモル比((b)/(c))が、1/1~100/1の範囲であることが好ましい。混合時に使用する溶媒も前記混合物(X)と同様の炭化水素系溶媒を用いることができる。混合物(Y)についても、作製後、直ちに重合に使用することができるが、添加する触媒成分(b)の種類によっては経時的に変質する場合があるため、作製後1時間以内に使用することが好ましく、30分以内に使用することがより好ましい。
【0082】
環状オレフィン系モノマーの共重合を、混合物(X)と混合物(Y)とを用いて行うことにより、それぞれの触媒成分を別々に重合系に添加する場合よりも、分子量分布が狭い重合体を容易に製造することができる。これにより、分子量分布の広い重合体中に含まれる、溶媒に溶解しにくい高分子量成分を実質的に含まず、光学用途の成形体の製造により好適な環状オレフィン系(共)重合体を得ることができる。
【0083】
重合系に添加する混合物(X)と、混合物(Y)の使用割合は、特に限定は無いが、触媒活性の観点から、触媒成分(b)と(c)との金属原子のモル比((a)/(c))が、1/1~50/1の範囲であることが好ましく、1.5/1~30/1の範囲であることがより好ましい。
【0084】
環状オレフィン系モノマーに対する触媒成分(c)の使用量は、モノマー全量と触媒成分(c)とのモル比(モノマー全量/(c))が、500/1より大きい範囲が好ましく、1,000/1より大きい範囲がより好ましい。前記比率が小さい、すなわち触媒量が多い範囲だと、得られる重合体中に残留する触媒量が多くなり、(共)重合体の色相、劣化性に大きな影響をおよぼす場合がある。
【0085】
重合溶媒としては、環状オレフィン系モノマーと、触媒成分(a)~(c)とを溶解あるいは分散するものを用いることができる。重合溶媒の具体例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどのアルカン類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナンなどのシクロアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメンなどの芳香族炭化水素類;クロロブタン、ブロムヘキサン、塩化メチレン、ジクロロエタン、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン、クロロホルム、テトラクロロエチレンなどのハロゲン化アルカン類;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸iso-ブチル、プロピオン酸メチルなどの飽和カルボン酸エステル類;ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどのエーテル類を挙げることができる。
これらの中でも、得られる(共)重合体の溶解性が良好な、芳香族炭化水素類を含有することが好ましい。また、これらの重合溶媒は単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0086】
環状オレフィン系開環(共)重合体の製造においては、得られる環状オレフィン系(共)重合体が、用途に応じて所望のMwとなるよう、適宜重合反応条件を調整することができ、開環(共)重合反応において、分子量調節剤を用いることもできる。
【0087】
分子量調節剤の具体例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセンなどのα-オレフィン類およびスチレンが挙げられ、1-ブテン、1-ヘキセンが好ましい。分子量調節剤は、単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0088】
分子量調節剤の使用量としては、特に限定されるものではないが、環状オレフィン系モノマー1モルに対して、好ましくは0.005~0.6モル、より好ましくは0.02~0.5モルの範囲である。
【0089】
開環(共)重合反応を行う際の反応時間は特に限定されないが、通常0.1~10時間、好ましくは0.1~5時間、より好ましくは0.1~3時間である。また、反応温度は通常50~180℃、好ましくは70~160℃程度の範囲である。
【0090】
<水素添加(水素化)>
前述のように、環状オレフィン系モノマーを開環重合した環状オレフィン系開環(共)重合体は、そのままで用いることもできるが、分子内にオレフィン性不飽和結合を有しており、用途によっては耐熱性が充分でないことから、さらに水素化(水素添加)を行ってもよい。
【0091】
前記水素化の方法には、公知の方法を適用できる。例えば、特開昭63-218726号公報、特開平1-132626号公報、特開平1-240517号公報、特開平2-10221号公報、特開2005-162617公報、特開2005-162618公報、特開2005-213370公報、特開2007-1967公報、特開2007-106932公報に記載された触媒や溶媒および温度条件などを適用することで、水素化を実施することができる。
【0092】
環状オレフィン系開環(共)重合体のオレフィン性不飽和結合の水素添加率としては、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、特に好ましくは99モル%以上である。なお、本発明における水素化とは、分子内のオレフィン性不飽和結合に対するものであり、環状オレフィン系開環(共)重合体が芳香族性を有する官能基を有する場合、該官能基は屈折率など光学的な特性や耐熱性において有利に作用する場合もあるので、分子内の全不飽和結合が必ずしも水素化される必要はない。
【0093】
前述のようにして、環状オレフィン系モノマーを開環重合し、必要に応じて水素化して得られた環状オレフィン系開環(共)重合体は、必要に応じて公知の方法で、精製、脱触媒、脱溶媒などの処理をして用いてもよい。
【0094】
<配位重合>
前記配位重合工程には、環状オレフィン系化合物の配位重合に使用可能な触媒を制限なく用いることができるが、下記成分(d)、(e)および(g)を用いて得られる触媒、あるいは下記成分(f)および(g)を用いて得られる触媒を用いて行うことが好ましい。
(d)パラジウムの有機酸塩またはパラジウムのβ-ジケトネート化合物
(e)下記一般式(15)で表されるホスフィン化合物
P(R1)2(R2) …(15)
[前記一般式(15)中、R1はシクロペンチル基、シクロヘキシル基、またはイソプロピル基を表し、R2は炭素数3~10の炭化水素基を表す。]
【0095】
(f)下記一般式(16)で表される2価パラジウムのホスフィン錯体、
Pd[P(R1)2(R2)]n2 …(16)
[前記一般式(16)中、R1はシクロペンチル基、シクロヘキシル基、またはイソプロピル基を表し、R2は炭素数3~10の炭化水素基を表し、Xは有機酸アニオンまたはβ-ジケトネートアニオンを表し、nは1または2を示す。]
(g)イオン性のホウ素化合物
【0096】
前記触媒を用いることにより、非常に高い重合活性を示すため、極端に少ないパラジウム化合物であっても95%を超える高い転化率で配位(共)重合体を製造することができるとともに、得られる配位(共)重合体中に残留するモノマーや金属成分を充分に低く抑制できる。
【0097】
前記成分(d)の具体例については、特開2008-045069号公報の段落[0132]に記載の成分(a)と同様のものが挙げられ、前記成分(e)の具体例については、同文献の段落[0133]に記載の成分(b)と同様のものが挙げられ、前記成分(f)の具体例については、同文献の段落[0135]に記載の成分(c)と同様のものが挙げられ、前記成分(g)の具体例については、同文献の段落[0136]、[0137]に記載の成分(d)と同様のものが挙げられる。
【0098】
前記成分(d)または(f)は、環状オレフィン系モノマー1モル当たり、パラジウム原子として通常0.0005~0.02ミリモル、好ましくは0.001~0.01ミリモル、さらに好ましくは0.001~0.005ミリモルの範囲で用いる。前記範囲で用いると、高い転化率を獲得できるため、得られる重合体は高い経済性および生産性を示す。また、配位(共)重合体中に残留する金属成分を低く抑えられるため、着色が少なく透明性に優れた成形体を得ることが可能であり、脱灰工程の省略をできることもある。
【0099】
前記成分(e)は、高重合活性の観点から、成分(d)に含まれるパラジウム原子1モルに対して、通常0.1~5モル、好ましくは0.5~2モルの範囲で使用する。
【0100】
前記成分(g)は、高重合活性の観点から、触媒成分(d)または(f)に含まれるパラジウム原子1モルに対して、通常0.5~10モル、好ましくは0.7~5.0モル、さらに好ましくは1.0~2.0モルの範囲で用いられる。
【0101】
前記成分(a)~(d)に関し、添加順序等の調整法や使用法に特に制限はなく、重合反応に供される環状オレフィン系モノマーと溶媒との混合物へ同時に、または逐次的に添加してもよい。
【0102】
前記配位重合は、重合方式はバッチ式でもよく、また、例えば適切な環状オレフィン系モノマーの供給口を装備した管型連続反応器を使用することもできる。重合反応は、必要に応じて、窒素またはアルゴン雰囲気下にて行われてもよく、空気中であってもよい。
反応温度は通常0~150℃、好ましくは10~100℃、より好ましくは20~80℃の範囲にて行われる。
【0103】
前記配位重合において用いられる溶媒は、特に限定されないが、シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタンなどの脂環式炭化水素溶媒;ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素溶媒;トルエン、ベンゼン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレンなどの芳香族炭化水素溶媒;ジクロロメタン、1,2-ジクロロエチレン、1,1-ジクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素溶媒が挙げられる。これらのうちでも脂環式炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒が好ましい。
前記溶媒は1種単独で、または2種以上を組み合わせることができる。前記溶媒は、使用モノマーの合計を100質量部としたとき、通常0~2,000質量部の範囲で用いられる。
【0104】
配位(共)重合体の製造方法においては、分子量調節剤の存在下に配位(共)重合を行うことで、得られる共重合体の分子量を任意に制御することができ、その結果、溶融成形等における流動特性などを制御できる。
分子量調節剤としては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、トリメチルビニルシラン、トリメトキシビニルシランなどのα-オレフィン化合物または置換α-オレフィン化合物;シクロペンテンなどの単環モノオレフィン化合物;スチレン、α-メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物が挙げられる。これらのうちでも、α-オレフィン化合物または単環モノオレフィン化合物を用いることが好ましく、エチレンがより好ましい。
【0105】
分子量調節剤の使用量は、環状オレフィン系環状(共)重合体の目標とする分子量、触媒成分の選択、重合温度条件の選択などによって適宜変更できるが、使用モノマーの合計に対しモル比で0.001~0.5倍の量を用いることが好ましい。また、前記分子量調節剤は1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0106】
前述のようにして、環状オレフィン系モノマーを配位重合し、環状オレフィン系配位(共)重合体は、必要に応じて公知の方法で、精製、脱触媒、脱溶媒などの処理をして用いてもよい。
【0107】
[本重合体の用途]
本重合体は、たとえばレンズ状、フィルム状、シート状、などの所望の形状に公知の方法により成形して用いることができ、光学レンズや光学フィルムなどの各種光学部品等の用途に好適に用いることができる。
【0108】
本重合体は、そのまま前記用途に用いてもよいが、本発明の効果を損なわない範囲で、耐熱劣化性や耐光性の向上のために、公知の酸化防止剤や紫外線吸収剤などの添加剤を添加して用いてもよい。添加剤としては、例えば、樹脂への添加剤として公知のフェノール系化合物、チオール系化合物、スルフィド系化合物、ジスルフィド系化合物、リン系化合物などが挙げられる。これらの少なくとも1種の添加剤を、本重合体100質量部に対して0.01~10質量部添加することで、耐熱劣化性や耐光性などの特性を向上させることができる。
【0109】
また、本重合体には、目的とする成形体の特性等に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の添加剤を添加して用いてもよい。例えば、着色されたフィルムを得ることを目的として、染料、顔料等の着色剤を添加してもよく、得られるフィルムの平滑性を向上させること目的として、レベリング剤を添加してもよい。レベリング剤としては、例えば、フッ素系ノニオン界面活性剤、特殊アクリル樹脂系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤が挙げられる。
【実施例0110】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。以下の実施例等の記載において、特に言及しない限り、「部」は「質量部」の意味で用いる。
【0111】
以下の実施例および比較例において、測定及び評価は、以下の方法により行った。
<ガラス転移温度(Tg)>
示差走査熱量計(セイコーインスツル(株)製、商品名:DSC6200)を用いて、JIS K 7121に従って補外ガラス転移開始温度(単に「ガラス転移温度(Tg)」ともいう。)を求めた。
【0112】
<繰り返し単位含有量および水素添加率>
超伝導核磁気共鳴吸収(NMR)装置(Bruker社製、商品名:AVANCE500)を用いて、重水素化クロロホルム中で1H-NMRを測定し、繰り返し単位含有量(モル%)および水素添加率を算出した。
【0113】
<モノマー転化率>
ガスクロマトグラフィー(GC、(株)島津製作所製、商品名:GC2014)を用いて重合体溶液中に含まれる残モノマーの量を分析し、モノマー転化率(%)を算出した。
【0114】
<屈折率nD
メトリコン社製PC-2010型プリズムカプラを用い、下記実施例・比較例で得られた重合体を用いて作製されたフィルムの任意の5箇所の屈折率を測定し、最大値および最小値を除く3点の平均値を採用した。なお、光源には408nm、633nm、および830nmのレーザー光源を用い、得られた屈折率からコーシーの式を用いた回帰計算により589.2nmにおける屈折率nDを算出した。
【0115】
<アッベ数>
下記式により、下記実施例・比較例で得られた重合体を用いて作製されたフィルムのアッベ数を算出した。
ν=(nD-1)/(nF-nC
前記式中、νはアッベ数であり、nD、nF、およびnCは、前記屈折率の測定結果から回帰計算により求めた589.2nm、486.1nm、および656.3nmにおける屈折率である。
【0116】
<熱安定性>
下記実施例・比較例で得られた重合体を用いて作製されたフィルムについて、重量を測定後、300℃で2時間静置した。300℃で2時間静置後のフィルムの重量を測定し、重量減少率(wt%)を算出した。下記基準に従って、熱安定性を評価した。
〇:重量減少率が1.8wt%以下
△:重量減少率が1.8wt%より大きく、10wt%以下
×:重量減少率が10wt%より大きい
【0117】
[合成例1]
8-メチル-8-メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン100部、分子量調節剤として1-ヘキセン18部、およびトルエン200部を、窒素置換した反応容器に仕込み、80℃に加熱しながら攪拌した。これに、重合触媒としてトリエチルアルミニウム((C253Al)のトルエン溶液(濃度:1.5モル/L)0.17部と、t-ブタノ-ルおよびメタノールで変性された六塩化タングステン(WCl6)のトルエン溶液(濃度:0.05モル/L、モル比:t-ブタノール/メタノール/タングステン=0.35/0.3/1)1.0部を加え、80℃で3時間加熱攪拌して重合体溶液を得た。この重合反応におけるモノマー転化率は97%であった。
【0118】
得られた重合体溶液4000部をオートクレーブに入れ、これに、水素添加反応触媒としてRuHCl(CO)[P(C6533を0.48部加え、90℃まで温度を上げてから、水素を7MPaまで導入した後、最終的に165℃まで温度を上げ、導入水素ガス圧を10MPaとし3時間反応させた。得られた反応液を冷却、次いで水素ガスを放圧した後に、該反応液を大量のメタノール中に注いで得られた固体を減圧乾燥することにより、前記式(A2-1)で表される繰り返し単位を1種類のみ有する重合体(A2-1)を得た。
【0119】
[実施例1]
ガラス製耐圧ビンに窒素雰囲気下で、合成例1で得られた重合体(A2-1)100部、フェノール200部、エステル交換反応触媒としてスカンジウムトリフラート10部、およびトルエン200部を仕込み、ゴムキャップ付き王冠で封止した。前記耐圧ビンを140℃に加熱し、24時間反応させた。得られた反応液を冷却した後、テトラヒドロフラン(THF)を加え希釈した反応液をメタノール中に注いで得られた固体を、140℃で17時間減圧乾燥することにより、前記式(A2-1)および(A1-1)で表される繰り返し単位を有する重合体1(繰り返し単位のモル比率(モル%):(A2-1)/(A1-1)=31/69)を得た。図1に重合体1の1H-NMRチャートを示す。前記式(A1-1)で表される繰り返し単位の含有量(モル%)は下記式に従って算出した。
(7.36ppmピークの積分値/2)×100/{(7.36ppmピークの積分値/2)+(3.65ppmピークの積分値/3)}=69(モル%)(ここで、7.36ppmピークは、前記式(A1-1)中のフェニルエステル基(-C(O)-O-C65)のフェニル基オルト位CHの水素原子のピーク(2H)であり、3.65ppmピークは前記式(A2-1)中のメチルエステル基(-C(O)-O-CH3)のメチル基CH3の水素原子のピーク(3H)である。)
また、得られた重合体1について、前記方法に従いガラス転移温度(Tg)を測定した。結果を表1に示す。
次に、得られた重合体1を0.2μmのろ紙でろ過した液をシャーレに流し、真空乾燥機を用いて100℃で48時間乾燥させることで、厚さ100μmのフィルムを作製した。得られたフィルムについて、前記方法に従い各種評価を実施した。結果を表1に示す。
【0120】
[実施例2]
実施例1において、スカンジウムトリフラート10部をスカンジウムトリフラート20部に変えたこと以外は、実施例1と同様の操作で、重合体2を得た。得られた重合体2の有する繰り返し単位のモル比率(モル%)を表1に示す。得られた重合体2について、前記方法に従いガラス転移温度(Tg)を測定した。結果を表1に示す。
また、得られた重合体2を用いて、実施例1に記載の方法で厚さ100μmのフィルムを各々作製した。得られたフィルムについて、前記方法に従い各種評価を実施した。結果を表1に示す。
【0121】
[実施例3~20、34、および35]
実施例1において、用いるアルコールの種類を、表1に記載の通りに変更したこと以外は、実施例1と同様の操作で、重合体3~20、34、および35を得た。なお、実施例4においては、フェノール(alc1)とp-クレゾール(alc2)との混合液200部(混合比(alc1/alc2)=1/1)を使用した。得られた重合体3~20、34、重合体35の有する繰り返し単位のモル比率(モル%)を表1または2に示す。得られた重合体3~7、9~17、19、20、34、および35について、前記方法に従いガラス転移温度(Tg)を測定した。結果を表1または2に示す。
また、得られた重合体3~7、9~17、19、20、34、および35を用いて、実施例1に記載の方法で厚さ100μmのフィルムを各々作製した。得られたフィルムについて、前記方法に従い各種評価を実施した。結果を表1または2に示す。
【0122】
[実施例21]
実施例1において、フェノール200部をベンジルアルコール200部に、スカンジウムトリフラート10部をテトラブトキシチタン7部に変えたこと以外は、実施例1と同様の操作で、重合体21を得た。得られた重合体21の有する繰り返し単位のモル比率(モル%)を表2に示す。得られた重合体21について、前記方法に従いガラス転移温度(Tg)を測定した。結果を表2に示す。
また、得られた重合体21を用いて、実施例1に記載の方法で厚さ100μmのフィルムを各々作製した。得られたフィルムについて、前記方法に従い各種評価を実施した。結果を表2に示す。
【0123】
[実施例22]
実施例21において、テトラブトキシチタン7部をテトラブトキシチタン15部に変えたこと以外は、実施例21と同様の操作で、重合体22を得た。得られた重合体21の有する繰り返し単位のモル比率(モル%)を表2に示す。図2に重合体22の1H-NMRチャートを示す。前記式(A1-19)で表される繰り返し単位の含有量(モル%)は下記式に従って算出した。
(5.11ppmピークの積分値/2)×100/{(5.11ppmピークの積分値/2)+(3.65ppmピークの積分値/3)}=100(モル%)(ここで、5.11ppmピークは、前記式(A1-19)中のベンジルエステル基(-C(O)-O-CH2-C65)のベンジル位CH2の水素原子のピーク(2H)であり、3.65ppmピークは、前記式(A2-1)中のメチルエステル基(-C(O)-O-CH3)のメチル基CH3の水素原子のピーク(3H)である。)得られた重合体22について、前記方法に従いガラス転移温度(Tg)を測定した。結果を表2に示す。
また、得られた重合体22を用いて、実施例1に記載の方法で厚さ100μmのフィルムを各々作製した。得られたフィルムについて、前記方法に従い各種評価を実施した。結果を表2に示す。
【0124】
[実施例23~33]
実施例21において、用いるアルコールの種類を、表2に記載の通りに変更したこと以外は、実施例21と同様の操作で、重合体23~33を得た。得られた重合体23~33の有する繰り返し単位のモル比率(モル%)を表2に記載した。得られた重合体23~33について、前記方法に従いガラス転移温度(Tg)を測定した。結果を表2に示す。
また、得られた重合体23~32を用いて、実施例1に記載の方法で厚さ100μmのフィルムを各々作製した。得られたフィルムについて、前記方法に従い各種評価を実施した。結果を表2に示す。
【0125】
[実施例36]
実施例1において、重合体(A2-1)100部を、特許2825157号の実施例2に記載の方法で得られる重合体(A2-2)(前記式(A2-2)で表される繰り返し単位を1種類のみ有する重合体)100部に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作で、重合体36を得た。得られた重合体36の有する繰り返し単位のモル比率(モル%)を表3に示す。得られた重合体36について、前記方法に従いガラス転移温度(Tg)を測定した。結果を表3に示す。
また、得られた重合体36を用いて、実施例1に記載の方法で厚さ100μmのフィルムを作製した。得られたフィルムについて、前記方法に従い各種評価を実施した。結果を表3に示す。
【0126】
[実施例37]
実施例1において、重合体(A2-1)100部を、特許2979747号に記載の方法で得られる重合体(a-2)(前記式(A2-3)で表される繰り返し単位を1種類のみ有する重合体)100部に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作で、重合体37を得た。得られた重合体37の有する繰り返し単位のモル比率(モル%)を表3に示す。得られた重合体37について、前記方法に従いガラス転移温度(Tg)を測定した。結果を表3に示す。
また、得られた重合体37を用いて、実施例1に記載の方法で厚さ100μmのフィルムを作製した。得られたフィルムについて、前記方法に従い各種評価を実施した。結果を表3に示す。
【0127】
[実施例38]
実施例1において、重合体(A2-1)100部を、J. Polym. Sci., Part A: Polym. Chem. 2013, 51, 3132-3143.に記載されている重合体HROP2(繰り返し単位のモル比率(モル%):(A2-1)/(A2-4)=75/25)100部に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作で、重合体38を得た。得られた重合体38の有する繰り返し単位のモル比率を表3に示す。得られた重合体38について、前記方法に従いガラス転移温度(Tg)を測定した。結果を表3に示す。
また、得られた重合体38を用いて、実施例1に記載の方法で厚さ100μmのフィルムを作製した。得られたフィルムについて、前記方法に従い各種評価を実施した。結果を表3に示す。
【0128】
[実施例39]
実施例21において、重合体(A2-1)100部を、J. Polym. Sci., Part A: Polym. Chem. 2013, 51, 3132-3143.に記載されている重合体HROP2(繰り返し単位のモル比率(モル%):(A2-1)/(A2-4)=75/25)100部に変更したこと以外は、実施例21と同様の操作で、重合体39を得た。得られた重合体39の有する繰り返し単位のモル比率を表3に示す。得られた重合体39について、前記方法に従いガラス転移温度(Tg)を測定した。結果を表3に示す。
また、得られた重合体39を用いて、実施例1に記載の方法で厚さ100μmのフィルムを作製した。得られたフィルムについて、前記方法に従い各種評価を実施した。結果を表3に示す。
【0129】
[実施例40]
実施例1において、重合体(A2-1)100部を、J. Polym. Sci., Part A: Polym. Chem. 2013, 51, 3132-3143.に記載されている重合体HROP3(繰り返し単位のモル比率(モル%):(A2-1)/(A3-1)/(A3-2)=89/10/1)100部に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作で、重合体40を得た。得られた重合体40の有する繰り返し単位のモル比率(モル%)を表1に示す。得られた重合体40について、前記方法に従いガラス転移温度(Tg)を測定した。結果を表3に示す。
また、得られた重合体40を用いて、実施例1に記載の方法で厚さ100μmのフィルムを作製した。得られたフィルムについて、前記方法に従い各種評価を実施した。結果を表3に示す。
【0130】
[合成例2]
100mLのガラス製耐圧ビンに窒素雰囲気下で、8-メチル-8-メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン100部、トルエン300部を仕込み、ゴムキャップ付き穴あき王冠で封止した。さらに、前記耐圧ビンのゴム製パッキンを通じて、分子量調節剤としてガス状のエチレン0.029部を仕込み、60℃に加温しながら攪拌した。これに、重合触媒としてシクロペンタジエニルアリルパラジウム0.0022部、トリシクロヘキシルホスフィン0.0028部、およびトリフェニルカルベニウムペンタフルオロフェニルボレート0.0093部を順に加え、60℃で5時間攪拌して重合体溶液を得た。得られた重合体溶液を1Lの2-プロパノール中に注いで得られた固体を、80℃で17時間減圧乾燥することにより、前記式(B2-1)で表される繰り返し単位を1種類のみ有する重合体(B2-1)を得た。
【0131】
[実施例41]
実施例1において、重合体(A2-1)100部を、合成例2で得られた重合体(B2-1)100部に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作で、重合体41を得た。得られた重合体41の有する繰り返し単位のモル比率を表1に示す。得られた重合体41について、前記方法に従いガラス転移温度(Tg)を測定した。結果を表3に示す。
また、得られた重合体41を用いて、実施例1に記載の方法で厚さ100μmのフィルムを作製した。得られたフィルムについて、前記方法に従い各種評価を実施した。結果を表3に示す。
【0132】
[比較例1~3]
実施例21において、用いるアルコールの種類を、表3に記載の通りに変更したこと以外は、実施例21と同様の操作で、重合体c1~c3を得た。得られた重合体c1~c3の有する繰り返し単位のモル比率(モル%)を表3に記載した。得られた重合体c1~c3について、前記方法に従いガラス転移温度(Tg)を測定した。結果を表3に示す。
また、得られた重合体c1~c3を用いて、実施例1に記載の方法で厚さ100μmのフィルムを作製した。得られたフィルムについて、前記方法に従い各種評価を実施した。結果を表3に示す。
【0133】
[比較例4]
合成例1で得られた重合体(A2-1)100部と、スチレン共重合体(三洋化成工業(株)製:ハイマーST-95)64部、塩化メチレン2200部を混合し、重合体c4を得た。得られた重合体c4について、前記方法に従いガラス転移温度(Tg)を測定した。結果を表3に示す。
また、得られた重合体c4を用いて、実施例1に記載の方法で厚さ100μmのフィルムを作製した。得られたフィルムについて、前記方法に従い各種評価を実施した。結果を表3に示す。
【0134】
[比較例5]
比較例4において、スチレン共重合体(三洋化成工業(株)製:ハイマーST-95)64部を、α-メチルスチレン/スチレン共重合体(三井化学(株)製:FTR2140)77部に変更したこと以外は比較例4と同様の操作で、重合体c5を得た。得られた重合体c5について、前記方法に従いガラス転移温度(Tg)を測定した。結果を表3に示す。
また、得られた重合体c5を用いて、実施例1に記載の方法で厚さ100μmのフィルムを作製した。得られたフィルムについて、前記方法に従い各種評価を実施した。結果を表3に示す。
【0135】
[比較例6]
環状オレフィン重合体(三井化学(株)製、APEL APL5014CL)90部と、α-メチルスチレン/スチレン共重合体(三井化学(株)製:FTR2140)10部とをプラストミルで混練し、比較重合体c6を得た。得られた重合体c6について、前記方法に従い、ガラス転移温度(Tg)を測定した。結果を表3に示す。
また、得られた重合体c6を用いて、真空プレスにより厚さ100μmのフィルムを作成した。得られたフィルムについて、前記方法に従い各種評価を実施した。結果を表3に示す。
【0136】
【表1】
【0137】
【表2】
【0138】
【表3】
【0139】
なお、前記表1~3中のアルコール(alc1~alc35)の種類の詳細は、以下に示す通りである。
alc1:フェノール
alc2:p-クレゾール
alc3:4-tert-ブチルフェノール
alc4:4-シクロヘキシルフェノール
alc5:4-(1-アダマンチル)フェノール
alc6:4-フェニルフェノール
alc7:o-クレゾール
alc8:m-クレゾール
alc9:2-tert-ブチルフェノール
alc10:3-tert-ブチルフェノール
alc11:2,6-ジ-tert-ブチルフェノール
alc12:5-インダノール
alc13:5,6,7,8-テトラヒドロ-1-ナフトール
alc14:5,6,7,8-テトラヒドロ-2-ナフトール
alc15:4-メトキシフェノール
alc16:4-シアノフェノール
alc17:4-クロロフェノール
alc18:4-ブロモフェノール
alc19:ベンジルアルコール
alc20:ペンタメチルベンジルアルコール
alc21:4-フェニルベンジルアルコール
alc22:1-ナフタレンメタノール
alc23:2-ナフタレンメタノール
alc24:3-メトキシベンジルアルコール
alc25:3,5-ジメトキシベンジルアルコール
alc26:4-フェノキシベンジルアルコール
alc27:2-ニトロベンジルアルコール
alc28:4-トリフルオロメチルベンジルアルコール
alc29:2-フェノキシエタノール
alc30:フルフリルアルコール
alc31:p-トルエンチオール
alc32:ベンジルメルカプタン
alc33:1-ブタノール
alc34:2-インダノール
alc35:9-フルオレニルメタノール
図1
図2