(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011844
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 3/24 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
H02K3/24 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114125
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小澤 明
(72)【発明者】
【氏名】中尾 勇介
【テーマコード(参考)】
5H603
【Fターム(参考)】
5H603AA12
5H603AA14
5H603BB09
5H603BB12
5H603CA02
5H603CA04
5H603CB01
5H603CC11
5H603CC17
5H603CD02
5H603CD04
5H603CD13
5H603CD21
5H603CE02
5H603CE05
(57)【要約】
【課題】回転子の冷却効率を向上可能な回転電機を提供する。
【解決手段】回転電機は、筐体と、固定子と、前記固定子に囲まれた回転軸まわりに回転可能なシャフトと、前記固定子と前記シャフトとの間で前記回転軸の径方向に延びた突極と、前記突極に巻き付けられた巻線と、を有し、前記シャフトに取り付けられた回転子と、前記回転子の表面から前記固定子に向かって突出する障壁と、を備え、前記巻線は、第1の部分と、第2の部分と、第3の部分と、第4の部分と、を有し、前記第1の部分を貫通して前記径方向における前記第1の部分の両端に開口する第1の通路が設けられ、前記突極は、前記周方向において前記第1の部分と前記第2の部分との間に位置するとともに、前記軸方向において前記第3の部分と前記第4の部分との間に位置し、前記第1の通路は、前記周方向において前記突極と前記障壁との間に位置する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体に収容された固定子と、
前記固定子に囲まれた回転軸まわりに回転可能なシャフトと、
前記固定子と前記シャフトとの間で前記回転軸の径方向に延びた突極と、前記突極に巻き付けられた巻線と、を有し、前記シャフトに取り付けられた回転子と、
前記回転子の表面から前記固定子に向かって突出する障壁と、
を備え、
前記巻線は、第1の部分と、前記第1の部分から前記回転軸まわりの周方向に離間した第2の部分と、前記回転軸の軸方向における前記第1の部分の一方の端と前記軸方向における前記第2の部分の一方の端とを接続する第3の部分と、前記軸方向における前記第1の部分の他方の端と前記軸方向における前記第2の部分の他方の端とを接続する第4の部分と、を有し、前記第1の部分を貫通して前記径方向における前記第1の部分の両端に開口する第1の通路が設けられ、
前記突極は、前記周方向において前記第1の部分と前記第2の部分との間に位置するとともに、前記軸方向において前記第3の部分と前記第4の部分との間に位置し、
前記第1の通路は、前記周方向において前記突極と前記障壁との間に位置する、
回転電機。
【請求項2】
前記第1の通路は、前記突極から離間するとともに前記第1の部分を貫通して前記径方向における前記第1の部分の両端に開口する孔である、
請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記巻線は、前記径方向に積層された螺旋状の導電体と螺旋状の絶縁体とを有し、
前記障壁は、前記導電体の一部である、
請求項1又は2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記巻線は、前記径方向に積層された螺旋状の導電体と螺旋状の絶縁体とを有し、
前記障壁は、前記絶縁体の一部である、
請求項1又は2に記載の回転電機。
【請求項5】
前記回転子は、前記突極に取り付けられるとともに前記径方向において前記突極と前記固定子との間に位置するとともに前記径方向において前記巻線と前記固定子との間に位置するポールヘッド、をさらに有し、
前記ポールヘッドには、前記第1の通路に連通するとともに前記周方向において前記突極と前記障壁との間に位置する第2の通路が設けられ、
前記障壁は、前記ポールヘッドの一部である、
請求項1又は2に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、突極形の回転子を備えた回転電機が知られている。突極形の回転子において、当該回転子の中心部から複数の突極が突き出ており、当該突極のそれぞれには巻線が巻き付けられる。巻線は、電流が流れることによって磁力を発生させるとともに発熱する。巻線は、例えば、回転子が回転することにより回転電機の内部に生じる気流によって冷却され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の回転電機において、気流は、突極および巻線の表面に沿って流れることで、巻線を冷却する。しかし、複数の突極のそれぞれにおける回転方向の背面側にて気流の剥離が生じ、回転子の冷却効率が低下することがある。
【0005】
本発明が解決する課題の一例は、回転子の冷却効率を向上可能な回転電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の回転電機は、筐体と、前記筐体に収容された固定子と、前記固定子に囲まれた回転軸まわりに回転可能なシャフトと、前記固定子と前記シャフトとの間で前記回転軸の径方向に延びた突極と、前記突極に巻き付けられた巻線と、を有し、前記シャフトに取り付けられた回転子と、前記回転子の表面から前記固定子に向かって突出する障壁と、を備え、前記巻線は、第1の部分と、前記第1の部分から前記回転軸まわりの周方向に離間した第2の部分と、前記回転軸の軸方向における前記第1の部分の一方の端と前記軸方向における前記第2の部分の一方の端とを接続する第3の部分と、前記軸方向における前記第1の部分の他方の端と前記軸方向における前記第2の部分の他方の端とを接続する第4の部分と、を有し、前記第1の部分を貫通して前記径方向における前記第1の部分の両端に開口する第1の通路が設けられ、前記突極は、前記周方向において前記第1の部分と前記第2の部分との間に位置するとともに、前記軸方向において前記第3の部分と前記第4の部分との間に位置し、前記第1の通路は、前記周方向において前記突極と前記障壁との間に位置する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の回転電機によれば、回転子の冷却効率を向上可能な回転電機を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態の回転電機の断面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の回転子の断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の
図2のA-A線上における回転子の断面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の
図2のB-B線上における回転子の断面図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態の回転子の断面図である。
【
図6】
図6は、第3実施形態の回転子の断面図である。
【
図7】
図7は、第3実施形態の回転子の斜視図である。
【
図8】
図8は、第3実施形態の回転子の変形例1の斜視図である。
【
図9】
図9は、第3実施形態の回転子の変形例2の斜視図である。
【
図10】
図10は、第3実施形態の回転子の変形例2の断面図である。
【
図11】
図11は、第3実施形態の回転子の変形例2-1の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態に係る回転電機1を図面に基づいて説明する。以下に記載する実施形態の構成、並びに当該構成によってもたらされる作用及び結果(効果)は、あくまで一例であって、以下の記載内容に限られるものではない。
【0010】
また、以下に開示される複数の実施形態には、同様の構成要素が含まれる。よって、以下では、それら同様の構成要素には共通の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される。なお、本明細書では、序数は、部品や部材を区別するためだけに用いられており、順番や優先度を示すものではない。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る回転電機1の断面図である。本実施形態の回転電機1は、例えば、突極形の同期機である。
図1に示すように、回転電機1は、筐体2と、固定子3と、シャフト4と、回転子5と、二つの軸受7と、を備える。なお、回転電機1は、この例に限定されない。
【0012】
以下の各図では、便宜上、互いに直交する三方向が定義されている。X方向は、筐体2の長手方向に沿う方向であり、前後方向とも称され得る。Y方向は、筐体2の短手方向に沿う方向であり、左右方向とも称され得る。Z方向は、筐体2の上下方向に沿う方向であり、上下方向とも称され得る。なお、本実施形態における前後左右上下のような方向を示す表現は、便宜上の呼称であり、回転電機1の位置、姿勢、及び使用態様を限定するものではない。
【0013】
本実施形態の回転電機1は、例えば、全閉形の回転電機である。このため、筐体2の内部に、当該筐体2の外部から隔てられた閉空間が設けられる。なお、回転電機1は、この例に限定されない。例えば、回転電機1は、開放形の回転電機であっても良い。
【0014】
筐体2は、金属等により箱型に形成される。筐体2は、固定子3と回転子5とを収容している。前後方向(X方向)における筐体2の両端には、X方向に開口した開口部21が設けられている。
【0015】
固定子3は、固定子鉄心31と、固定子巻線32と、を有する。固定子鉄心31は、筐体2に固定されている。固定子鉄心31は、径方向における回転子5の外側に位置し、回転子5を囲む円筒状に形成されている。固定子巻線32は、軸方向に延びるように固定子鉄心31の内周部31aに形成された複数のスロット(不図示)内を貫通して、当該固定子鉄心31に固定されている。
【0016】
シャフト4は、固定子3に囲まれた回転軸Axまわりに回転可能なように、二つの軸受7を介して筐体2に支持されている。言い換えると、二つの軸受7は、シャフト4を筐体2に対して回転可能に支持している。回転軸Axは、例えば、シャフト4の中心軸(中心線)である。なお、回転軸Axは、シャフト4の中心軸と異なっても良い。
【0017】
以下の説明では、便宜上、回転軸Axの軸方向、径方向、および周方向が定義されている。軸方向は、回転軸Axに沿う方向である。径方向は、回転軸Axと直交する方向である。周方向は、回転軸Axまわりの方向である。なお、以下の説明では、特に言及しない限り、軸方向、径方向、および周方向は、回転軸Axの軸方向、径方向、および周方向である。
【0018】
シャフト4は、筐体2の開口部21を貫通するように、回転軸Axに沿って軸方向に延びている。シャフト4のうち軸方向の両端部4a、4bの間の部分は、筐体2に収容されている。一方、シャフト4の軸方向の両端部4a、4bは、筐体2から外部に突出している。
【0019】
一方の端部4aは、例えば、種々の結合対象と結合される。また、他方の端部4bには、外扇が固定されている。外扇は、例えば外扇カバーに覆われ、シャフト4と一体に回転する。
【0020】
シャフト4における二つの軸受7と回転子5とのそれぞれの間には、内扇41が固定されている。内扇41は、シャフト4と一体に回転し、閉空間において冷却用気体を循環させる。
【0021】
図2は、第1実施形態に係る回転子5の断面図である。
図2に示すように、回転子5は、回転子鉄心51と、複数の回転子巻線52と、複数のポールヘッド53と、複数の絶縁層54と、複数のブラケット55とを有する。なお、回転子巻線52は巻線の一例である。
【0022】
図1に示すように、回転子鉄心51は、シャフト4のうち軸方向の両端部4a、4bの間の部分に取り付けられている。このため、回転子鉄心51は、筐体2に収容されるとともに、シャフト4と一体に回転する。
【0023】
図2に示すように、回転子鉄心51は、中央部510と、四つの突極511を有する。中央部510は、シャフト4に取り付けられている。突極511は、径方向の四つの方向において、中央部510から固定子鉄心31の内周部31aに向かって径方向外側に突出している。言い換えると、突極511は、固定子3とシャフト4との間で回転軸Axの径方向に延びている。
【0024】
回転子巻線52は、回転子鉄心51の突極511の側面511aに巻き付いている。言い換えると、回転子巻線52は、突極511を囲んでいる。側面511aは、突極511が延びる方向と交差する方向(例えば軸方向および周方向)に向く突極511の外面である。回転子巻線52は、例えば、ブラケット55によって突極511に固定されている。
【0025】
回転子巻線52は、導電体521と、絶縁体522と、を有する。さらに、回転子巻線52には、複数の孔523が設けられている。なお、孔523は第1の通路の一例である。
【0026】
導電体521および絶縁体522のそれぞれは、突極511の側面511aに巻き付く螺旋状に形成される。導電体521および絶縁体522は、径方向において交互に配置されるよう積層している。すなわち、回転子巻線52は、径方向に積層された螺旋状の導電体521と螺旋状の絶縁体522との積層構造である。
【0027】
導電体521は、例えば、金属等で形成されるとともに回転軸Axに沿う方向に延びている略平坦な複数の板材により形成される。導電体521の複数の板材は、例えば溶接によって螺旋状に接合される。絶縁体522は、例えば、合成樹脂等で形成され、導電体521と同様な形状に形成される。
【0028】
図3は、
図2のA-A線上における回転子5の断面図である。
図3に示すように、例えば、回転子巻線52は、第1の部分52aと、第2の部分52bと、第3の部分52cと、第4の部分52dと、を有する。第1の部分52a、第2の部分52b、第3の部分52c、および第4の部分52dのそれぞれは、導電体521の一部と絶縁体522の一部とを有する。第1の部分52a、第2の部分52b、第3の部分52c、および第4の部分52dのそれぞれにおいて、導電体521と絶縁体522とが径方向に積層されている。
【0029】
第1の部分52aは、
図3の例では、回転子巻線52の左側(+Y方向)の部分を構成する。第1の部分52aは、突極511に対して周方向における一方向に隣接する。第2の部分52bは、
図3の例では、回転子巻線52の右側(-Y方向)の部分を構成する。第2の部分52bは、突極511に対して周方向における他方向に隣接する。このため、第2の部分52bは、回転軸Axまわりの周方向において、第1の部分52aから離間して位置する。
【0030】
周方向における第1の部分52aの幅は、周方向における第2の部分52bの幅よりも大きい。なお、第1の部分52aの幅および第2の部分52bの幅は、この例に限られない。
【0031】
第3の部分52cは、
図3の例では、回転子巻線52の前側(+X方向)の部分を構成する。第3の部分52cは、突極511に対して軸方向における一方向に隣接する。第3の部分52cは、第1の部分52aの軸方向における一方の端52a1と、第2の部分52bの軸方向における一方の端52b1とを接続している。
【0032】
第4の部分52dは、
図3の例では、回転子巻線52の後側(-X方向)の部分を構成する。第4の部分52dは、突極511に対して軸方向における他方向に隣接する。第4の部分52dは、第1の部分52aの軸方向における他方の端52a2と、第2の部分52bの軸方向における他方の端52b2とを接続している。
【0033】
突極511は、周方向において第1の部分52aと第2の部分52bとの間に位置し、軸方向において第3の部分52cと第4の部分52dとの間に位置する。このように、回転子巻線52は、突極511を囲む。
【0034】
本実施形態では、回転子5は、例えば
図2における時計回り方向に回転する。複数の孔523は、突極511に対して回転子5の回転方向と反対側に隣接する第1の部分52aに設けられている。しかし、孔523の位置はこれに限られず適宜変更されても良い。
【0035】
複数の孔523は、回転子鉄心51の突極511から離間している。なお、回転子巻線52に、孔523の代わりに、突極511に隣接する切り欠きが設けられても良い。
図3に示すように、複数の孔523は、回転軸Axの軸方向に互いに離間している。
【0036】
図2に示すように、各孔523は、第1の部分52aを貫通して、回転軸Axの径方向における第1の部分52aの両端52a3,52a4に開口する孔である。すなわち、各孔523は、第1の部分52aにおいて積層された導電体521と絶縁体522とを貫通している。端52a3は、回転軸Axの径方向の外側における第1の部分52aの端である。端52a4は、径方向の内側における第1の部分52aの端である。
【0037】
図4は、
図2のB-B線上における回転子5の断面図である。
図4に示すように、孔523は、径方向に対して斜めに傾斜している。例えば、端52a4に開口する孔523の端は、端52a3に開口する孔523の端よりも、前側(+X方向)に位置する。なお、孔523の両端の位置は、この例に限られない。
【0038】
径方向に対して斜めに傾斜する孔523は、例えば、各第1の部分52aにおいて積層する導電体521及び絶縁体522に設けられた孔(孔523の一部)の位置をずらすことにより形成される。なお、孔523は、この例に限られず、他の方法により径方向に対して斜めに延びるよう形成されても良い。また、孔523は傾斜せずに回転軸Axと直交する方向に開口しても良い。
【0039】
図2に示すように、各ポールヘッド53は、対応する突極511の回転軸Axの径方向の外側における端部に取り付けられる。各ポールヘッド53は、突極511の側面511aから軸方向及び周方向に張り出している。これにより、各ポールヘッド53は、回転子巻線52を径方向外側から押さえる。このため、ポールヘッド53は、径方向において突極511と固定子鉄心31の内周部31aとの間に位置する。さらに、ポールヘッド53は、径方向において回転子巻線52と固定子鉄心31の内周部31aとの間に位置する。
【0040】
周方向における第1の部分52aの幅は、ポールヘッド53のうち突極511の側面511aから張り出した部分の幅よりも大きい。このため、回転子巻線52の第1の部分52aの一部は、ポールヘッド53から周方向に張り出している。
【0041】
径方向の外側におけるポールヘッド53の端面53aは、周方向に延びる円弧状の曲面である。端面53aの半径は、固定子鉄心31の内周部31aの半径より短い。これにより、端面53aが内周部31aから離間し、端面53aと内周部31aとの間に気流が通ることが可能な隙間が形成される。
【0042】
絶縁層54は、例えば、合成樹脂等で形成された層である。絶縁層54は、突極511と回転子巻線52との間で径方向に延びた部分と、回転子巻線52とポールヘッド53との間で略周方向に延びた部分と、を有する。言い換えると、絶縁層54は、L字形状の断面を有する。
【0043】
回転電機1は、障壁6をさらに備える。障壁6は、周方向においてポールヘッド53から離間している。障壁6は、第1の部分52aの端52a3から固定子鉄心31の内周部31aに向かって突出する。端52a3は、回転子5の表面である。障壁6は、例えば、端52a3からポールヘッド53に向かって傾斜して延びている。径方向の外側における障壁6の端は、ポールヘッド53の端面53aよりも回転軸Axに近い。このため、障壁6は、固定子鉄心31の内周部31aから離間している。本実施形態の障壁6は、端52a3から直線状に延びた板状であるが、これに限らない。例えば、障壁6は、端52a3から曲線状に延びていても良い。
【0044】
障壁6は、例えば、回転子巻線52の径方向外側の端部に位置する導電体521の一部を切り起こして設けられている。すなわち、障壁6は導電体521の一部である。このため、障壁6は、各孔523の縁から延びている。障壁6は、各孔523の周方向に並ぶ二つの縁のうち、突極511から遠い方の縁から延びている。言い換えると、孔523は、周方向において突極511と障壁6との間に位置している。
【0045】
図1に示す軸受7は、例えば、すべり軸受等である。二つの軸受7は、筐体2の開口部21に設けられている。すなわち、シャフト4では、回転子鉄心51は、軸方向において二つの軸受7の間に位置している。
【0046】
回転電機1が稼働することで、シャフト4の回転に伴って、当該シャフト4に取り付けられている回転子5と内扇41とが回転する。内扇41が回転することで、筐体2の閉空間で気流が発生する。また、回転子5が回転することで、回転子5の表面に沿って気流が流れる。
【0047】
回転子5の表面に沿って流れる気流は、例えば回転子巻線52の第2の部分52b、第3の部分52c、および第4の部分52dの表面に沿って流れ、回転子巻線52を冷却する。また、気流は、ポールヘッド53の端面53aに沿って、回転方向の反対側(背面側)に流れる。
【0048】
回転子巻線52の第1の部分52aと、当該第1の部分52aに設けられた孔523及び障壁6とは、回転方向の背面側に位置する。気流は、ポールヘッド53を通過した後、障壁6に衝突する。
【0049】
障壁6に衝突した気流は、障壁6に誘導されて孔523へ向かう。気流は、回転子巻線52を冷却しながら孔523を通過する。孔523を通過した気流は、他の突極511の表面に沿って流れ、当該他の突極511に巻き付けられた回転子巻線52の障壁6に接触する。以降、気流は、同様な手順で回転子5全体を冷却する。
【0050】
孔523は、上述のように斜めに傾斜している。このため、気流は、孔523を通過することで前側(+X方向)に送られる。従って、孔523は、内扇41によって循環している冷却用気体を軸方向の前側に誘導することができる。
【0051】
以上のように、本実施形態の回転電機1は、筐体2と、固定子3と、シャフト4と、回転子5と、障壁6と、を備える。固定子3は、筐体2に収容されている。シャフト4は、固定子3に囲まれた回転軸Axまわりに回転可能である。回転子5は、シャフト4に取り付けられており、突極511と、回転子巻線52と、を有する。突極511は、固定子3とシャフト4との間で回転軸Axの径方向に延びている。回転子巻線52は、突極511に巻き付けられている。障壁6は、回転子5の表面から固定子3に向かって突出している。回転子巻線52は、第1の部分52aと、第2の部分52bと、第3の部分52cと、第4の部分52dと、を有する。第2の部分52bは、第1の部分52aから回転軸Axまわりの周方向に離間している。第3の部分52cは、回転軸Axの軸方向における第1の部分52aの一方の端52a1と軸方向における第2の部分52bの一方の端52b1とを接続している。第4の部分52dは、軸方向における第1の部分52aの他方の端52a2と軸方向における第2の部分52bの他方の端52b2とを接続している。さらに、回転子巻線52には、孔523が設けられている。孔523は、第1の部分52aを貫通して径方向における第1の部分52aの両端52a3,52a4に開口している。突極511は、周方向において第1の部分52aと第2の部分52bとの間に位置するとともに、軸方向において第3の部分52cと第4の部分52dとの間に位置する。孔523は、周方向において突極511と障壁6との間に位置する。
【0052】
第1の部分52aが回転方向の背面側になるように回転した時、回転子5の表面に流れる気流は障壁6と接触する。周方向における突極511と障壁6との間には、孔523が設けられている。そのため、障壁6と接触した気流は、回転子巻線52の第1の部分52aを貫通している孔523を通過しながら流れる。これにより、気流は回転子巻線52を冷却しながら流れる。従って、回転電機1では、回転子5の冷却効率を向上可能である。
【0053】
また、本実施形態では、孔523は、突極511から離間するとともに第1の部分52aを貫通して径方向における第1の部分52aの両端52a3,52a4に開口する孔である。これにより、例えば、回転子巻線52は、溝が設けられる場合と比べて、孔523を通過する気流との接触面積が増加する。従って、孔523は、回転子巻線52を冷却しやすくする。
【0054】
また、本実施形態では、回転子巻線52は、径方向に積層された螺旋状の導電体521と、螺旋状の絶縁体522と、を有する。障壁6は、導電体521の一部である。障壁6は、積層された導電体521を有する回転子巻線52の一部である。これにより、回転電機1は、障壁6を溶接等で回転子巻線52に取り付ける必要がなくなる。従って、障壁6は、回転子5が回転する遠心力によって回転子巻線52から分離しにくくなる。
【0055】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態の回転子5Aの断面図である。
図5に示すように、第2実施形態の回転子5Aは、下記に説明される構成を除き、前記第1実施形態の回転子5と同様の構成を備えている。よって、第2実施形態によっても、前記第1実施形態と同様の構成に基づく効果が得られる。
【0056】
第2実施形態では、回転子5Aは、前記第1実施形態の障壁6と異なる障壁6Aを有する。障壁6Aは、例えば、回転子巻線52の径方向外側の端部に位置する絶縁体522の一部を切り起こして設けられている。すなわち、障壁6は絶縁体522の一部である。
【0057】
以上のように、回転子巻線52は、径方向に積層された螺旋状の導電体521と螺旋状の絶縁体522とを有する。障壁6Aは、絶縁体522の一部である。障壁6Aは、積層された絶縁体522を有する回転子巻線52の一部である。これにより、回転電機1は、障壁6Aを溶接等で巻線に取り付ける必要がなくなる。従って、障壁6Aは、回転子5Aが回転する遠心力によって回転子巻線52から分離しにくくなる。
【0058】
<第3実施形態>
図6は、第3実施形態の回転子5Bの断面図である。
図7は、第3実施形態の回転子5Bの斜視図である。
図6、7に示すように、第3実施形態の回転子5Bは、下記に説明される構成を除き、前記第1実施形態の回転子5と同様の構成を備えている。よって、第3実施形態によっても、前記第1実施形態と同様の構成に基づく効果が得られる。
【0059】
第3実施形態では、回転子5Bは、前記第1、2実施形態のポールヘッド53と異なるポールヘッド53Bと、前記第1、2実施形態の障壁6、6Aと異なる障壁6Bを有する。ポールヘッド53Bは、延長部531を有する。さらに、ポールヘッド53Bには、開口部532が設けられている。なお、開口部532は第2の通路の一例である。
【0060】
延長部531は、ポールヘッド53Bの側面から周方向における第1の部分52aの端まで延びるとともに、第1の部分52aを覆う部分である。すなわち、延長部531は、ポールヘッド53Bの一部である。
【0061】
延長部531の高さは、ポールヘッド53Bの他の部分の高さよりも低くなっている。言い換えると、延長部531は、ポールヘッド53Bの端面53aから径方向内側に凹んだ部分である。これにより、ポールヘッド53Bの端面53aを流れる気流は第1の部分52aの端52a3に誘導される。
【0062】
開口部532は、延長部531を貫通し、回転軸Axの径方向における延長部531の両端に開口する孔である。開口部532は、回転子巻線52の孔523と連通するとともに、周方向において突極511と障壁6Bとの間に位置する。
【0063】
障壁6Bは、ポールヘッド53Bの延長部531の一部を切り起こして設けられている。すなわち、障壁6Bはポールヘッド53Bの一部である。障壁6Bは、開口部532の縁から延びている。障壁6Bは、開口部532の周方向に並ぶ二つの縁のうち、突極511から遠い方の縁から延びている。延長部531は、ポールヘッド53Bと同じ材質(例えば金属)である。そのため、ポールヘッド53Bは、第1実施形態および第2実施形態と比較し、遠心力に対して回転子巻線52を抑える力を増すことができる。
【0064】
(第3実施形態の変形例1)
第3実施形態では、障壁6Bは、ポールヘッド53Bの延長部531の一部を切り起こして設けられていたが、これに限らない。
図8は、第3実施形態の回転子5Bの変形例1の斜視図である。
図8に示すように、変形例1の回転子5Bは、ポールヘッド53Bの替わりに側板61を備えたポールヘッド53Cを有する。
【0065】
側板61は、前後方向(X方向)における障壁6Bの両端から延長部531に向かって延びるように障壁6Bに取り付けられた三角形状の板である。側板61を障壁6Bに取り付ける方法は、例えば、溶接、接着、プレス加工による一体成形等である。これにより、開口部532は、回転子5Bの表面を流れる気流を取り込みやすくなる。なお、本変形例の構成は、前記第1実施形態及び前記2実施形態にも適用可能である。すなわち、障壁6、6Aに側板61が取り付けられてもよい。
【0066】
(第3実施形態の変形例2)
第3実施形態では、開口部532が開口する部分である延長部531の高さは、ポールヘッド53Bの他の部分の高さよりも低くなっていたが、これに限らない。
図9は、第3実施形態の回転子5Bの変形例2の斜視図である。
図9に示すように、変形例2では、ポールヘッド53Cの替わりにポールヘッド53Dが設けられ、延長部531及び開口部532が設けられていない。変形例2では、ポールヘッド53Dにおける曲面状の端面53aを有する部分が回転子巻線52の第1の部分52aを覆っている。
【0067】
図10は、第3実施形態の回転子5Bの変形例2の断面図である。
図10に示すように、変形例2のポールヘッド53Dの形状は、第1実施形態のポールヘッド53の形状と異なる。なお、第1実施形態のポールヘッド53、第2実施形態のポールヘッド53、第3実施形態のポールヘッド53B、及び第3実施形態の変形例1のポールヘッド53Cは、以下に説明する形状を有しても良い。
【0068】
ポールヘッド53Dの端面53aは、周方向に延びる円弧状の曲面である。変形例2におけるポールヘッド53Dの端面53aの半径は、固定子3の内周部31aの半径よりも小さい。端面53aの中心は、固定子3の中心(回転軸Ax)から離間している。これにより、ポールヘッド53Dのうち回転子巻線52の第1の部分52aを覆っている部分の端面53aは、ポールヘッド53Dの端面53aにおいて回転軸Axから最も離間している頭頂部53a1よりも固定子3の内周部31aから離間している。
【0069】
変形例2では、回転子5Bには、ポールヘッド53Dに開口部532Bが設けられている。開口部532Bは、ポールヘッド53Dの一部を貫通して孔523と連通するとともに、回転軸Axの径方向におけるポールヘッド53Dの両端に開口する孔である。このため、開口部532Bは、端面53aに開口する。
【0070】
開口部532Bは、傾斜部533と、直部534とを含む。傾斜部533及び直部534は、開口部532Bの一部であり、互いに連通している。直部534は、孔523に連通するとともに、孔523が延びる方向に延びている。傾斜部533は、端面53aと直部534との間に位置する部分であり、端面53aに開口している。傾斜部533の周方向に並ぶ二つの縁のうち突極511に近い方の縁は、直部534の縁からポールヘッド53Dの頭頂部53a1に向かって斜めに傾斜している。開口部532Bと同一のX軸上以外の部分には、傾斜部533が存在しない。そのため、ポールヘッド53Dは、変形例1に比べて遠心力に対して回転子巻線52を抑える力を増すことができる。
【0071】
障壁6Bは、例えば、鋳造、切削加工、又は鋳造後の切削加工によってポールヘッド53Dの開口部532Bに傾斜部533と直部534とを分断する壁を形成した後、この壁を切り起こして設けられる。すなわち、障壁6Bはポールヘッド53Dの一部である。障壁6Bは、切り起こされた後、当該障壁6Bにおける回転軸Axから最も離間している部分がポールヘッド53Dの頭頂部53a1を通過する回転子5Bの仮想的な外径面5B1を超えないように内側に折り曲げられる。なお、傾斜部533は、障壁6Bを切り起こした後、切削加工によって形成しても良い。
【0072】
障壁6Bは、開口部532Bの周方向に並ぶ二つの縁のうち、突極511から遠い方の縁から傾斜部533に沿って延びている。言い換えると、開口部532Bは、周方向において突極511と障壁6Bとの間に位置している。
【0073】
(第3実施形態の変形例2-1)
障壁6Bを形成する方法は、上記方法に限らない。
図11は、第3実施形態の回転子5Bの変形例2-1の断面図である。
図11に示すように、障壁6Bは、例えば、孔523に沿って延びるように切り起こされた後、切断加工によって回転子5Bの外径面5B1を超えない範囲で切断されても良い。
【0074】
本変形例では、ポールヘッド53Dの替わりにポールヘッド53Eが用いられる。回転子巻線52の第1の部分52aは、ポールヘッド53Eのうち曲面状の端面53aを有する部分に覆われている。これにより、回転子5Bでは、回転子鉄心51が回転する場合において、回転子5Bの表面に流れる気流の抵抗が抑制される。さらに、回転電機1では、ポールヘッド53Eのうち回転子巻線52の第1の部分52aを覆う部分の曲面状の端面53aと固定子3の内周部31aとの間の平均エアギャップの距離が短くなることで、回転子5Bの漏れ磁束を減少させることができる。
【0075】
以上のように、回転子5Bは、ポールヘッド53B(53C,53D,53E)をさらに有する。ポールヘッド53B(53C,53D,53E)は、突極511に取り付けられるとともに径方向において突極511と固定子3との間に位置するとともに、径方向において回転子巻線52と固定子3との間に位置する。ポールヘッド53B(53C,53D,53E)には、開口部532(532B)が設けられている、開口部532(532B)は、孔523に連通するとともに周方向において突極511と障壁6Bとの間に位置する。障壁6Bは、ポールヘッド53B(53C,53D,53E)の一部である。これにより、ポールヘッド53B(53C,53D,53E)は、孔523の周囲に位置する部分(延長部531等)を有することとなり、径方向外側から回転子巻線52を押さえることができる。
【0076】
<第4実施形態>
図12は、第4実施形態の回転子5Cの断面図である。
図12に示すように、第4実施形態の回転子5Cは、下記に説明される構成を除き、前記第1実施形態の回転子5と同様の構成を備えている。よって、第4実施形態によっても、前記第1実施形態と同様の構成に基づく効果が得られる。
【0077】
第4実施形態では、回転子5Cは、前記第1実施形態の絶縁層54と異なる絶縁層54Cと、前記第1実施形態の障壁6と異なる障壁6Cを有する。絶縁層54Cの一部は、周方向における第1の部分52aの端まで延びるとともに、第1の部分52aを覆う。
【0078】
絶縁層54Cに、ポールヘッド53から離間した位置で当該絶縁層54Cを貫通する開口部541が設けられる。開口部541は、回転軸Axの径方向における絶縁層54Cの両端に開口する孔である。開口部541は、回転子巻線52の孔523と連通するとともに、周方向において突極511と障壁6Cとの間に位置する。
【0079】
障壁6Cは、絶縁層54Cの一部を切り起こして設けられている。すなわち、障壁6Cは絶縁層54Cの一部である。障壁6Cは、開口部541の縁から延びている。障壁6Cは、開口部541の周方向に並ぶ二つの縁のうち、突極511から遠い方の縁から延びている。なお、前記第3実施形態の変形例1と同様に、障壁6Cは側板61を有していても良い。
【0080】
以上のように、回転子5は、回転子巻線52と突極511との間に位置するとともに、回転子巻線52とポールヘッド53との間に位置する絶縁層54Cを有する。絶縁層54Cには、開口部541が設けられている、開口部541は、孔523に連通するとともに周方向において突極511と障壁6Cとの間に位置する。障壁6Cは、絶縁層54Cの一部である。これにより、絶縁層54Cは、孔523の周囲に位置する部分を有することとなり、径方向外側から回転子巻線52を押さえることができる。
【0081】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、形式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0082】
1…回転電機、2…筐体、3…固定子、4…シャフト、5、5A、5B、5C…回転子、51…回転子鉄心、511…突極、52…回転子巻線(巻線)、52a…第1の部分、52a1…一方の端、52a2…他方の端、52a3、52a4…端、52b…第2の部分、52b1…一方の端、52b2…他方の端、52c…第3の部分、52d…第4の部分、521…導電体、522…絶縁体、523…孔(第1の通路)、53、53B、53C、53D、53E…ポールヘッド、532…開口部(第2の通路)、6、6A、6B、6C…障壁、Ax…回転軸。