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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118445
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】排水管および雨水排水装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/122 20060101AFI20240823BHJP
   F16L 47/03 20060101ALI20240823BHJP
   F16L 9/12 20060101ALI20240823BHJP
   E03C 1/12 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
E03C1/122 Z
F16L47/03
F16L9/12
E03C1/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024020974
(22)【出願日】2024-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2023024487
(32)【優先日】2023-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】岡本 響子
(72)【発明者】
【氏名】田中 将成
(72)【発明者】
【氏名】芦塚 良介
【テーマコード(参考)】
2D061
3H019
3H111
【Fターム(参考)】
2D061AA04
2D061AA05
2D061AB10
2D061AC05
2D061AC10
2D061DA05
3H019GA02
3H111BA15
3H111CB29
3H111DA07
3H111DB05
(57)【要約】
【課題】排水性能を向上させる。
【解決手段】排水管61は、雨水を排水する排水管61であって、ポリオレフィン系樹脂製であり、外径Dと肉厚Tの比であるSDR値が23より大きい、屋内に配置されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水を排水する排水管であって、
ポリオレフィン系樹脂製であり、外径と肉厚の比であるSDR値が23より大きい、
屋内に配置されている、
排水管。
【請求項2】
前記排水管の端部同士は、電気融着継手によって接合され、
前記排水管の端部内には、コアが配置される、
請求項1に記載の排水管。
【請求項3】
前記電気融着継手は、電熱線を含み、
前記コアは、前記電熱線に対して、前記排水管の径方向の内側に配置される、
請求項2に記載の排水管。
【請求項4】
前記排水管の端部には、加工管が設けられている、
請求項1に記載の排水管。
【請求項5】
前記排水管の端部には、フランジが設けられている、
請求項1に記載の排水管。
【請求項6】
前記排水管の端部には、パッキン接触部が設けられている、
請求項1に記載の排水管。
【請求項7】
前記排水管の端部同士は、接合部材によって機械的に接合される、
請求項1に記載の排水管。
【請求項8】
前記排水管には、流入口から雨水が流入し、
前記流入口には、サイフォン現象を誘発可能なサイフォン誘発部が設けられている、
請求項1に記載の排水管。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の排水管を含む雨水排水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水管および雨水排水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から下記特許文献1に記載の排水管および雨水排水装置が知られている。この排水管では、外径と肉厚の比であるSDR値が23以下である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7136624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の排水管では、排水性能に改善の余地がある。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、排水性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1>本発明の一態様に係る排水管は、雨水を排水する排水管であって、ポリオレフィン系樹脂製であり、外径と肉厚の比であるSDR値が23より大きい、屋内に配置されている。
【0007】
排水管のSDR値が23より大きい。よって、排水管の外径に対して排水管の肉厚が小さくなり、結果として、排水管の内径が大きくなる。これにより、小さい外径の排水管であっても排水性能を高めることができる。
その結果、例えば、配管スペースを削減することが可能になり、設計の自由度を高めること等ができる。また、例えば、屋内におけるこの排水管以外の配管(例えば、他の排水管や空調用の配管、給水用の配管)との干渉が発生し難くなる。
【0008】
<2>上記<1>に係る排水管では、前記排水管の端部同士は、電気融着継手によって接合され、前記排水管の端部内には、コアが配置される構成を採用してもよい。
【0009】
排水管の端部同士が電気融着接合される場合、電気融着接合時に生じる熱により、排水管の内面に皺が発生するおそれがある。
ここで本態様では、排水管の端部内にコアが配置される。よって、排水管の内面に皺が生じようとしても、排水管の内面において溶融した樹脂が流れることを、コアによって抑制することができる。これにより、排水管の内面における皺の発生を抑制することができる。
【0010】
<3>上記<2>に係る排水管では、前記電気融着継手は、電熱線を含み、前記コアは、前記電熱線に対して、前記排水管の径方向の内側に配置される構成を採用してもよい。
【0011】
コアが、電熱線の径方向の内側に配置される。よって、排水管の端部のうち、電気融着接合時に特に溶融し易い部分にコアが配置される。これにより、皺の発生を効果的に抑制することができる。
【0012】
<4>上記<1>から<3>のいずれか1態様に係る排水管では、前記排水管の端部には、加工管が設けられている構成を採用してもよい。
【0013】
排水管の端部に、加工管が設けられている。この場合、排水管同士の接合時に加工管を利用することで、例えば、排水管の端部同士を電気融着接合せずに機械的に接合することができる。これにより、排水管の内面に皺が発生するのを防止することができる。
【0014】
<5>上記<1>から<4>のいずれか1態様に係る排水管では、前記排水管の端部には、フランジが設けられている構成を採用してもよい。
【0015】
排水管の端部に、フランジが設けられている。この場合、排水管同士の接合時にフランジを利用することで、例えば、排水管の端部同士を電気融着接合せずに機械的に接合することができる。これにより、排水管の内面に皺が発生するのを防止することができる。
【0016】
<6>上記<1>から<5>のいずれか1態様に係る排水管では、前記排水管の端部には、パッキン接触部が設けられている構成を採用してもよい。
【0017】
排水管の端部に、パッキン接触部が設けられている。これにより、排水管同士の接合部分におけるシール性を高めることができる。
【0018】
<7>上記<1>から<6>のいずれか1態様に係る排水管では、前記排水管の端部同士は、接合部材によって機械的に接合される構成を採用してもよい。
【0019】
排水管の端部同士が接合部材によって機械的に接合される。よって、排水管の端部同士を電気融着接合せずに機械的に接合することができる。これにより、排水管の内面に皺が発生するのを防止することができる。
【0020】
<8>上記<1>から<7>のいずれか1態様に係る排水管では、前記排水管には、流入口から雨水が流入し、前記流入口には、サイフォン現象を誘発可能なサイフォン誘発部が設けられている構成を採用してもよい。
【0021】
流入口に、サイフォン現象を誘発可能なサイフォン誘発部が設けられている。よって、排水管における排水能力が更に高められ、小さい外径の排水管であっても排水性能を一層高めることができる。
【0022】
<9>本発明の一態様に係る雨水排水装置は、上記<1>から<8>のいずれか1態様に係る排水管を含む。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、排水性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態に係る雨水排水装置を示す斜視図である。
図2図1に示す雨水排水装置に含まれるサイフォン誘発部を示す斜視図である。
図3図1に示す雨水排水装置に含まれる排水管を示す断面図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る雨水排水装置に含まれる排水管を示す側面図である。
図5】本発明の第3実施形態に係る雨水排水装置に含まれる排水管を示す側面図である。
図6図5に示すVI-VI断面矢視図である。
図7】本発明の第4実施形態に係る雨水排水装置に含まれる排水管を示す断面図(ただし、一部側面を含む)である。
図8図7に示す配管構造の受口と差口との接合前の状態を示す図である。
図9】本発明の第1変形例に係る雨水排水装置に含まれる排水管を示す断面図である。
図10】本発明の第2変形例に係る雨水排水装置の排水部材を示す断面図である。
図11】本発明の第3変形例に係る雨水排水装置の排水部材を示す斜視図である。
図12】本発明の第4変形例に係る雨水排水装置の排水部材を断面で示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1実施形態)
以下、図1から図3を参照し、本発明の第1実施形態に係る雨水排水装置を説明する。 本実施の形態の雨水排水装置10は、図1に示すように、建造物(建築物)100に設置された雨水排水システム1の一部を構成する。
【0026】
雨水排水システム1は、建造物100の屋上105に降った雨水を地面近傍に移動させて下水管に排水する。雨水排水システム1は、1つの雨水排水装置10を備えていてもよく、2つ以上の雨水排水装置10を備えていてもよい。雨水排水システム1が2つの雨水排水装置10を備えている場合、2つの雨水排水装置10は、建造物100の対向する側面の近傍に配置されていてもよい。
【0027】
雨水排水装置10は、複数の流入口51と、複数の立て配管部52と、1又は複数の横引き配管部53と、立て配管部54と、排水部(不図示)と、を有する。
流入口51は、屋上105に配置され、屋上105に降った雨水が流入する。図示の例では、雨水排水装置10は、流入口51を複数備えているが、1つのみ備えていてもよい。図2に示すように、流入口51には、ルーフドレン11が設けられている。
【0028】
ルーフドレン11は、建造物100の屋上105に設けられている。ルーフドレン11は、例えば、屋上の水(例えば雨水)を排水する。ルーフドレン11は、屋上スラブS上に配置されている。屋上スラブSには、貫通孔S1が設けられている。貫通孔S1は、屋上スラブSを上下方向に貫通している。ルーフドレン11は、貫通孔S1上に配置されている。なお、屋上スラブSの下方には、パイプスペースが設けられている。パイプスペースは、例えば、パネル(天井パネル)等によって下方から覆われている。
【0029】
ルーフドレン11は、サイフォン現象を誘発可能である。ルーフドレン11は、ベースプレート14と、筒15と、蓋16と、リブ17と、を備えている。ベースプレート14は、環状である。ベースプレート14は、貫通孔S1と同軸に配置されている。筒15は、ベースプレート14の内周縁から下方に延びている。蓋16は、ベースプレート14の内周縁および筒15を上方から覆う。リブ17は、ベースプレート14から上方に延びている。リブ17は、ベースプレート14と蓋16とを連結する。リブ17は、ベースプレート14の周方向に間隔をあけて複数配置されている。周方向に隣り合うリブ17の間には、開口18が設けられている。なお図示の例では、蓋16およびリブ17が一体に成形されている。これらの蓋16およびリブ17は、エアバッフルを構成している。
【0030】
屋上の水は、前記開口18を通過するときにリブ17によって整流される。その結果、ルーフドレン11に流入する水に空気が混入し難くなる。このとき、例えば、屋上105の水の水位が蓋16の高さ以上であると、ルーフドレン11に流入する水に空気が一層混入し難くなる。結果として、雨水排水装置10においてサイフォン現象が誘発され易くなる。前記開口18を通過した水は、筒15の上端内に設けられた落し口を更に通過して下方に流れる。
【0031】
なお、蓋16およびリブ17のうちの一方がなくてもよい。この場合でも、ルーフドレン11はサイフォン現象を誘発可能である。ルーフドレン11は、蓋16のみによりサイフォン現象を誘発可能であってもよく、リブ17のみによりサイフォン現象を誘発可能であってもよい。また、蓋16およびリブ17の両方がなくてもよい。ルーフドレン11が、サイフォン現象を誘発可能でなくてもよい。例えば、ルーフドレン11が、ごみ除け(ストレーナー)として用いられていてもよい。また、ルーフドレン11の構成は上記構成に限られない。例えば、ベースプレート14と前記エアバッフルとの間に、クランプリングなどの他の部材があってもよい。
【0032】
図1に示すように、立て配管部52は、複数の流入口51の各々から下方に向かって配置されている。立て配管部52は、略鉛直方向(上下方向ともいえる)に沿って配置されている。立て配管部52の上端は、流入口51に繋がっている。立て配管部52の下端は、横引き配管部53に繋がっている。立て配管部52の下端は、パイプスペースに位置している。立て配管部52の下端は、前記パネル(天井パネル)の上方に位置している。立て配管部52の下端は、例えば、エルボやチーズ等を介して、横引き配管部53に接続されている。
【0033】
横引き配管部53は、横方向に沿って配置されており、複数の立て配管部52のそれぞれの下端に繋がっている。横引き配管部53は、パイプスペースに位置している。横引き配管部53は、後述する立て配管部54の上端に接続される。横引き配管部53は、立て配管部54側の端が、反対側の端と水平または反対側の端よりも低くなるように配置されている。
【0034】
立て配管部54は、縦方向に沿って配置されている。立て配管部54は途中階でオフセットし横引き部分を含んでも良い。立て配管部54の上端は横引き配管部53に接続されている。
排水部は、立て配管部54を通った雨水を建造物100の外側に排出する。立て配管部54を通って落下してきた雨水は、排水部を通って建造物100の外側に排出され、図示しない雨水マスを介して下水管に排出される。排水部には、図示しない雨水貯留槽が接続されていてもよい。
【0035】
以上のような雨水排水装置10において、立て配管部52、横引き配管部53および立て配管部54は、屋内に配置されている。そして本実施形態では、雨水排水装置10は、排水管61を含む。排水管61は、立て配管部52、横引き配管部53および立て配管部54の少なくとも一部を構成する。例えば、立て配管部52、横引き配管部53および立て配管部54の全ての管材(継手を除いた部材)が排水管61によって構成されていてもよい。
【0036】
(排水管61の材質)
排水管61は、ポリオレフィン系樹脂製である。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレンもしくはポリプロピレンが挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂としては特に限定されない。たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びエチレン-α-オレフィン共重合体等が挙げられる。成形体の強度、および、高温下での成形体の伸び率を向上させる観点からは、ポリエチレンまたはポリプロピレンであることが好ましく、ポリエチレンであることがより好ましい。
【0037】
さらに、ポリエチレン(PE)としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)及び高密度ポリエチレン(HDPE)等が挙げられる。ポリプロピレン(PP)としては、ホモPP、ブロックPP及びランダムPP等が挙げられる。ポリブテンとしては、ポリブテン-1等が挙げられる。エチレン-α-オレフィン共重合体は、エチレンに対して、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン又は1-オクテン等のα-オレフィンを数モル%程度の割合で共重合させた共重合体であることが好ましい。
これらのポリオレフィン樹脂は、1種が単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0038】
(排水管61の材質の第1変形例)
排水管61の樹脂に繊維が混合されていてもよい。この場合、例えば、排水管61が、配向したガラス繊維が含まれる中間層を有する多層管であってもよい。排水管61の第2例として、径方向の内側から外側に向けて、第1層、第2層および第3層が積層されている3層構造の多層管を以下に説明する。
【0039】
[第1層および第3層]
第1層および第3層は、いずれも同じポリオレフィン系樹脂を主成分として構成される樹脂層である。したがって、第2層の両面で機械的特性が揃うとともに、排水管61の製造効率も良い。なお、本実施形態では、第1層と第3層とが互いに異なるポリオレフィン系樹脂から構成されることを除外するものではない。
【0040】
ポリオレフィン系樹脂としては特に限定されない。たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びエチレン-α-オレフィン共重合体等が挙げられる。成形体の強度、および、高温下での成形体の伸び率を向上させる観点からは、ポリエチレンまたはポリプロピレンであることが好ましく、ポリエチレンであることがより好ましい。
【0041】
さらに、ポリエチレン(PE)としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)及び高密度ポリエチレン(HDPE)等が挙げられる。ポリプロピレン(PP)としては、ホモPP、ブロックPP及びランダムPP等が挙げられる。ポリブテンとしては、ポリブテン-1等が挙げられる。エチレン-α-オレフィン共重合体は、エチレンに対して、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン又は1-オクテン等のα-オレフィンを数モル%程度の割合で共重合させた共重合体であることが好ましい。
これらのポリオレフィン樹脂は、1種が単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0042】
第1層および第3層は、後述の第2層のように繊維を含まない。内層である第1層は、排水管61の内部を流れる水に、第2層に含まれる繊維が混入しないように第2層の内周面をコートする。また、第3層は、たとえば排水管61を継手とエレクトロフュージョン接合などにより融着接合する場合に、継手との融着接合容易性を確保することができる。
【0043】
上記の他、第1層および第3層には、後述の第2層と同様に相溶化剤およびその他の成分を含んでいてもよい。ただし、後述の第2層に含まれるような繊維は実質的に含まない。
【0044】
[第2層]
第2層は、マトリックス樹脂と繊維とを含む繊維強化樹脂層である。第2層は配向層によって構成される。
【0045】
(配向層)
第2層では、繊維が第1層の外周に沿う方向に配向されている。具体的には、軸心Oに垂直な面で排水管61を切断した場合の断面において、繊維の平均繊維長の10%以上の長さを有する繊維のうち、少なくとも10%、好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも80%のものの方向が、繊維の中点と軸心Oとを結んだ直線の垂線方向に対して±15°以内に収まっている。このような配向層を第2層として含むことによって、排水管61が良好な耐圧性能を有する。
【0046】
なお、繊維の配向態様は、たとえば走査電子顕微鏡を用いて断面を観察することによって確認することができる。観察条件としては特に限定されないが、日本電子社製走査電子顕微鏡JSM-6701Fを用い、蒸着厚み10nm、加速電圧15kV、倍率25倍で観察してよい。
【0047】
(マトリックス樹脂)
マトリックス樹脂は、ポリオレフィン系樹脂である。ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、第1層および第3層の構成樹脂として挙げたものと同様である。第2層のマトリックス樹脂は、第1層および第2層を構成する樹脂と同じであっても異なっていてもよいが、第1層、第2層および第3層の全ての層に同じ樹脂を用いる場合、隣接する層が互いになじみやすく、界面剥離を効果的に抑制することができる点で好ましい。
【0048】
(繊維)
繊維としては、低線膨張性等の観点から、ガラス繊維が用いられる。
【0049】
ガラス繊維は短繊維、すなわち不連続長繊維であり、その繊維長はたとえば0.01mmから20mm以下、好ましくは0.05mm以上10mm以下である。繊維長が上記下限値以上であることにより、好ましい耐圧性能を得ることができる。繊維長が上記上限値以下であることにより、繊維を配向させ易い。さらに、ガラス繊維の繊維長をこの範囲内とすることにより、成形体の強度、寸法安定性を高め、高温下での伸び率を向上させることができる。以上の効果をより一層高める観点からは、ガラス繊維の繊維長は好ましくは0.1mm以上3mm以下である。なお、繊維長とは、第2層に含まれる繊維の長さの平均(すなわち平均繊維長)を意味する。
【0050】
ガラス繊維の繊維径は、1μm以上30μm以下である。繊維径が上記下限値以上であることにより、好ましい耐圧性能を得ることができる。繊維径が上記上限値以下であることにより、繊維を配向させ易い。さらに、ガラス繊維の繊維径をこの範囲内とすることにより、成形体の強度、寸法安定性及び高温下での伸び率を向上させることができる。成形体の強度、寸法安定性及び高温下での伸び率を一層効果的に向上させる観点からは、ガラス繊維の繊維径は好ましくは5μm以上20μm以下、より好ましくは5μm以上15μm以下である。なお、繊維径とは、第2層に含まれる繊維それぞれの最大径の平均を意味する。
【0051】
ガラス繊維は表面処理されていてもかまわない。表面処理剤としては、メタクリルシラン、アクリルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン、ビニルシラン及びエポキシシラン等が挙げられる。この中でも、アミノシランが好ましい。
【0052】
第2層にガラス繊維を含ませることにより、第2層の強度および寸法安定性を向上させることができる。さらに、第2層に含まれるガラス繊維の量は、第2層を製造するための樹脂組成物全体を100重量%として、10重量%以上60重量%未満である。ガラス繊維の量の下限を上述のとおりとすることにより、排水管61の良好な耐圧性を効率よく得ることができる。また、ガラス繊維の量の上限を上述のとおりとすることにより、第2層の破壊モードを延性的破壊へ遷移させ易くすることができる。したがって、第2層の脆性的破壊を生じにくくさせることができる。このような効果をより一層効果的に高める観点からは、第2層に含まれる繊維の量は、好ましくは20重量%以上50重量%以下である。
【0053】
ガラス繊維は、ポリオレフィン収束剤により収束されたものであってもよい。ポリオレフィン収束剤は、ガラス繊維を収束させることができれば特に限定されないが、具体的にはポリオレフィンである。当該ポリオレフィンは、マトリックス樹脂と同様のものであってもよい。つまり、マトリックス樹脂がポリエチレンであれば、収束剤もポリエチレンであってよい。さらに、収束剤としての当該ポリオレフィンには、変性ポリオレフィンが含まれる。ポリオレフィン収束剤の具体例としては、マレイン酸変性ポリオレフィン、およびシラン変性ポリオレフィン等が挙げられる。第2層に低線膨張係数を具備させる観点からは、ポリオレフィン収束剤はシラン変性ポリオレフィンであることが好ましい。
【0054】
ガラス繊維を良好に収束させる観点からは、ポリオレフィン収束剤の密度は、好ましくは0.85g/cm以上、好ましくは1.1g/cm以下である。
ガラス繊維を良好に収束させる観点からは、ポリオレフィン収束剤のMFR(メルトマスフローレイト)は好ましくは0.01g/10分以上、好ましくは16g/10分以下である。上記MFRは、JIS K7210に基づいて、温度190度、荷重2.16kgfの条件で測定された値である。
【0055】
ガラス繊維をポリオレフィン収束剤により収束させる方法としては、どのような方法でもよい。マトリックス樹脂とポリオレフィン収束剤との合計100重量部に対する繊維の量は、好ましくは6重量部以上、より好ましくは12重量部以上、更に好ましくは19重量部以上、好ましくは533重量部以下、より好ましくは171重量部以下、更に好ましくは138重量部以下である。繊維の量を上記の範囲とすることによって、成形体の強度、寸法安定性及び高温下での伸び率を向上させることができる。
【0056】
第2層には相溶化剤が含まれてよい。相溶化剤としては、たとえば、変性ポリオレフィンおよび塩素化ポリオレフィンなどが挙げられる。変性ポリオレフィンとしては、たとえば、マレイン酸変性ポリオレフィンおよびシラン変性ポリオレフィンなどが挙げられる。相溶化剤は、1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用してもよい。第2層に低線膨張係数を具備させる観点からは、相溶化剤はシラン変性ポリオレフィンであることが好ましく、さらに、繊維がガラス繊維であることが好ましい。
【0057】
なお、相溶化剤としての変性ポリオレフィンは、上述の収束剤としての変性ポリオレフィンとは区別される。第2層に含まれる相溶化剤の量は、第2層を製造するための樹脂組成物全体を100重量%として、たとえば1重量%以上10重量%以下である。相溶化剤の含有量をこのような範囲とすることによって、成形体の強度、寸法安定性及び高温下での伸び率を向上させることができる。成形体の強度、寸法安定性及び高温下での伸び率をより一層効果的に高める観点からは、第2層に含まれる相溶化剤の量は、好ましくは2重量%以上9重量%以下である。
【0058】
第2層には、上述以外の他の成分が含まれてよい。当該他の成分は、第2層を製造するための樹脂組成物からガラス繊維を除いた成分を100重量%とすると、ポリオレフィン系樹脂の含有量が、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、更に好ましくは95重量%以上となる量で用いられてよい。ポリオレフィン系樹脂の含有量の範囲に含まれる上限値は、99.99重量%、または99.9重量%であってもよい。
【0059】
他の成分としては、マトリックス樹脂としてのポリオレフィン系樹脂以外の他の熱可塑性樹脂が挙げられる。但しこの場合、熱可塑性樹脂は副成分であり、その含有量は、ポリオレフィン系樹脂の含有量よりも少ない。
【0060】
他の成分として、酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤は、成形体の高温下での耐久性をより一層高めたり、銅などの金属による耐久性の低下を抑えたりする観点で用いることができる。
上記酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤及びラクトン系酸化防止剤等が挙げられる。酸化防止剤は、1種が単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0061】
フェノール系酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤であることが好ましい。ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、ベンゼンプロパン酸、3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ、C7-C9側鎖アルキルエステル、3,3’,3’’,5,5’,5’’-ヘキサ-tert-ブチル-a,a’,a’’-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、4,6-ビス(ドデシルチオメチル)-o-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス[(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-キシリル)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-[4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン2-イルアミノ]フェノール、及びジエチル[{3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル}メチル]ホスフォネート等が挙げられる。
【0062】
リン系酸化防止剤としては、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、トリス[2-[[2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェフィン-6-イル]オキシ]エチル]アミン、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス[2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)-6-メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸、及びテトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)(1,1-ビフェニル)-4,4’-ジイルビスホスフォナイト等が挙げられる。
ラクトン系酸化防止剤としては、3-ヒドロキシ-5,7-ジ-tert-ブチル-フラン-2-オンとo-キシレンとの反応生成物等が挙げられる。
【0063】
成形体の高温下での耐久性を一層高めたり、銅などの金属による耐久性の低下を抑えたりする観点からは、上記酸化防止剤は、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル又は2,4,6-トリス(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシベンシル)メシチレンであることが好ましく、上記ポリオレフィン系樹脂組成物は、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル又は2,4,6-トリス(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシベンシル)メシチレンを含むことが好ましい。
【0064】
酸化防止剤の含有量は、第2層を製造する樹脂組成物を100重量%とすると、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下、更に好ましくは0.5重量%以下である。酸化防止剤の含有量が上記下限以上であることにより、成形体の高温下での耐久性がより一層高くなり、上記上限を超える含有量では、成形体の高温下での耐久性は変わらないため、上記上限以下とすることにより、過剰な酸化防止剤の使用が抑えられる。
【0065】
第2層には、必要に応じて、架橋剤、銅害防止剤、滑剤、光安定剤および顔料等の添加剤を含んでいてもよい。
【0066】
架橋剤としては、有機過酸化物等が挙げられる。有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、及び2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン等が挙げられる。架橋剤は、1種が単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0067】
有機過酸化物の使用量は特に限定されない。たとえば、マトリックス樹脂であるポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01重量部以上、好ましくは2重量部以下、より好ましくは1重量部以下である。
【0068】
滑剤としては特に限定されず、例えば、フッ素系滑剤、パラフィンワックス系滑剤及びステアリン酸系滑剤等が挙げられる。上記滑剤は、1種が単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
滑剤の使用量は特に限定されない。たとえば、マトリックス樹脂であるポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01重量部以上、好ましくは3重量部以下である。
【0069】
光安定剤としては特に限定されず、例えば、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系及びシアノアクリレート系等の紫外線吸収剤、並びにヒンダードアミン系の光安定剤等が挙げられる。光安定剤は、1種が単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0070】
顔料としては特に限定されず、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、スレン系及び染料レーキ系等の有機顔料、並びに酸化物系、クロム酸モリブデン系、硫化物-セレン化物系及びフェロシアン化物系等の無機顔料等が挙げられる。上記顔料は、1種が単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0071】
(層厚)
第2層の厚みは、第1層の厚みおよび第3層の厚みのいずれよりも大であることが好ましい。これによって、排水管61が、第2層によってもたらされる耐圧性能をより効果的に得ることができる。さらに、第2層の厚みは、排水管61の総厚みに対して50%以上80%以下であることが好ましい。当該厚みが上記下限値以上であることにより、排水管61が、第2層によってもたらされる耐圧性能)をより効果的に得ることができる。当該厚みが上記上限値以下であることにより、第1層による内周面コート効果および第3層の継手との融着接合容易性を効果的に得ることができる。
【0072】
(排水管61の材質の第2変形例)
排水管61が、中間層として金属層を含む3層以上の多層管であってもよい。金属層を構成する金属材料としては、例えば、鉄、真鋳、銅、ステンレス、アルミニウム、チタン、銀合金等が好適に用いられる。
【0073】
(排水管61の材質の第3変形例)
排水管61が、黒鉛を含む外層と、ポリオレフィン系樹脂(例えばポリエチレン)を主成分として構成される樹脂層である内層と、を備える多層管であってもよい。この場合、外層が黒鉛を含んでいることで、耐候性に効果がある。一方で、内層に黒鉛が混ざると、例えば、内部に通水される水や、水に含まれる塩素などと接触することで、排水管61が割れてしまうおそれがある。そのため、内層は黒鉛を含まない層であることが望ましい。
【0074】
(排水管61の材質の他の変形例)
排水管61が、第1変形例から第3変形例のような多層管である場合、それぞれの層が異なる色であってもよい。例えば、第3変形例の排水管61の更なる変形例として、外層が、例えば、黒色系統である一方、内層が、例えば、青色系統であってもよい。
【0075】
図2に示すように、排水管61のSDR値は23より大きい。SDR値は、外径Dと肉厚Tの比であり、SDR値=外径D/肉厚Tである。
なお、排水管61の外径としては、例えば、60.0mm~216.0mm等が挙げられる。特に流量の大きくなる下流側等では、排水管61の外径が、例えば76.0mm~216.0mmであることが望ましい。また、立て配管部52、横引き配管部53および立て配管部54において、同じ内径の排水管61を用いてもよいし、異なった内径の排水管61を用いてもよい。例えば、排水方向の上流側から下流側に向けて、排水管61の内径を小さくしてもよく大きくしてもよい。例えば、立て配管部54において、排水方向の上流側から下流側に向けて排水管61の内径が小さくなっていてもよい。さらに例えば、横引き配管部53において、排水方向の上流側から下流側に向けて排水管61の内径が大きくなっていてもよい。
【0076】
以下では、図2に基づいて、立て配管部52、横引き配管部53または立て配管部54のいずれかにおいて、2つの排水管61の端部が接合されている部分について説明する。2つの排水管61のうち、一方の排水管61を第1管12ということがあり、他方の排水管61を第2管13ということがある。
【0077】
排水管61の端部同士は、電気融着継手62によって接合されている。電気融着継手62は、本体63と、電熱線64と、端子65と、を含む。本体63は、ポリオレフィン系樹脂製の管(直管)である。本体63内には、排水管61の端部が嵌合されている。電熱線64は、本体63に埋設されている。電熱線64は、本体63の周方向に螺旋をなしている。端子65は、電熱線64に印加する。本体63に2つ設けられている。2つの端子65には、図示しない電源の正極および負極が接続される。端子65に接続された電源は、電熱線64に電圧を印加する。電熱線64が発熱し、本体63および排水管61が溶融することで、電気融着接合が実現される。
なお図示の例では、電気融着継手62は、ソケット(直管)であるが、エルボ(曲管)やチーズ(T字管)であってもよい。電気融着継手62がエルボの場合、本体63は曲管となり、電気融着継手62がチーズの場合、本体63はT字管となる。
【0078】
排水管61の端部内には、コア66が配置される。コア66は、排水管61内に嵌合されている。コア66は、例えば、金属製であってもよく、FRP製であってもよく、エンジニアリングプラスチック製であってもよい。コア66は、電気融着接合時に溶融せず、かつ、電気融着接合時に排水管61の内面における樹脂の流れを抑える部材であればよい。コア66は、例えば、樹脂に繊維が混合された繊維強化樹脂製であってもよい。この場合、繊維として、例えば、ガラス繊維等が採用されていてもよい。
【0079】
図3に示すように、コア66には、ストッパー66aが設けられていてもよい。ストッパー66aは、コア66を排水管61に挿入するときに、排水管61内へのコア66の過剰な挿入を規制する。図示の例では、ストッパー66aが排水管61の端面に接することで、排水管61内へのコア66の過剰な挿入が規制されている。第1管12内に嵌合されたコア66のストッパー66a、および、第2管13内に嵌合されたコア66のストッパー66aが、互いに接していてもよい。なおストッパー66aは、コア66の外面に設けられた縦リブであってもよい。この場合、縦リブ(ストッパー66a)は、排水管61の内面に接して食い込む。
【0080】
コア66は、電熱線64に対して、排水管61の径方向の内側に配置される。排水管61の端部同士の接合部分において、コア66が存在する範囲R1は、電熱線64が存在する範囲R2よりも、排水管61の軸方向に広い(長い)。排水管61の内周面のうち、電熱線64が存在する範囲R2に位置する部分には、コア66が配置されている。
【0081】
以上説明したように本実施形態に係る雨水排水装置10では、排水管61のSDR値が23より大きい。よって、排水管61の外径に対して排水管61の肉厚が小さくなり、結果として、排水管61の内径が大きくなる。これにより、小さい外径の排水管61であっても排水性能を高めることができる。
その結果、例えば、配管スペースを削減することが可能になり、設計の自由度を高めること等ができる。また、例えば、屋内における雨水排水装置10の排水管61以外の配管(例えば、他の排水管(生活排水用の排水管)や空調用の配管、給水用の配管)との干渉が発生し難くなる。
【0082】
排水管61の端部同士が電気融着接合される場合、電気融着接合時に生じる熱により、排水管61の内面に皺が発生するおそれがある。
ここで本実施形態では、排水管61の端部内にコア66が配置される。よって、排水管61の内面に皺が生じようとしても、排水管61の内面において溶融した樹脂が流れることを、コア66によって抑制することができる。これにより、排水管61の内面における皺の発生を抑制することができる。
コア66が、電熱線64の径方向の内側に配置される。よって、排水管61の端部のうち、電気融着接合時に特に溶融し易い部分にコア66が配置される。これにより、皺の発生を効果的に抑制することができる。
【0083】
流入口51に、サイフォン現象を誘発可能なサイフォン誘発部11が設けられている。よって、排水管61における排水能力が更に高められ、小さい外径の排水管61であっても排水性能を一層高めることができる。ただし、サイフォン誘発部11は、流入口51とは異なる場所に設けられていてもよい。例えば、後述するように、サイフォン誘発部11が、排水管路110の一部(例えば、立て配管部52、54の一部など)に設けられていてもよい。
【0084】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る雨水排水装置10Aを、図4を参照して説明する。 なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0085】
本実施形態に係る雨水排水装置10Aでは、排水管61の端部同士が、電気融着接合に代えて、機械的に接合されている。図示の例では、排水管61の端部同士は、いわゆるフランジ接合されている。
【0086】
本実施形態では、排水管61である第1管12、第2管13それぞれの端部に、加工管12a、13aが設けられている。第1管12は、本管12cと、加工管12aと、を備えている。第2管13は、本管13cと、加工管13aと、を備えている。本管12c、13cは、内径および外径が実質的に全長にわたって同等な管材である。本管12c、13cは、いわゆる押出成型品である。第1管12のSDR値や、第2管13のSDR値は、この本管12c、13cのSDR値を意味する。
【0087】
加工管12a、13aは、本管12c、13cにバット融着されている。加工管12a、13aと本管12c、13cとの間のビード12d、13dは、加工管12a、13aと本管12c、13cとをバット融着するときに発生する。図示の例では、加工管12a、13aは、いわゆる射出成型品である。加工管12a、13aでは、内径および外径のうちの少なくとも一方が、実質的に全長にわたって同等ではない。
【0088】
本実施形態では、加工管12a、13a(排水管61の端部)には、フランジ19a、19bが設けられている。第1管12の加工管12aには、フランジ19a、19bとして第1フランジ19aが設けられている。第2管13の加工管13aには、フランジ19a、19bとして第2フランジ19bが設けられている。図示の例では、各フランジ19a、19bは、第1管12の加工管12aや第2管13の加工管13aと一体である。
【0089】
ただしフランジ19a、19bは、第1管12の加工管12aや第2管13の加工管13aと別体であってもよい。フランジ19a、19bは、第1管12や第2管13に対して上下方向に相対的に移動可能であってもよい。言い換えると、フランジ19a、19bが、いわゆるルーズフランジであってもよい。例えば、第1フランジ19aがルーズフランジで、第2フランジ19bが、第2管13(加工管13a)と一体のフランジであってもよい。第2フランジ19bがルーズフランジで、第1フランジ19aが、第1管12(加工管12a)と一体のフランジであってもよい。第1フランジ19aおよび第2フランジ19bの両方がルーズフランジであってもよい。また、フランジ19a、19bとして、第1管12や第2管13とは独立したフランジを含む継手部材(例えば、日本金属継手協会規格「JPF MDJ-002」で規定されている排水鋼管用可とう継手)を用いてもよい。
【0090】
そして本実施形態では、第1管12および第2管13は、第1管12の外周面および第2管13の外周面よりも径方向の外側で機械的に接合されている。本実施形態では、第1管12および第2管13を接合する機械的な接合として、フランジ19a、19bを利用したボルト接合(いわゆるフランジ接合)が採用されている。
【0091】
雨水排水装置10Aは、第1管12と第2管13とを機械的に接合する接合部材20を備えている。接合部材20は、少なくともボルト21を含んでいる。本実施形態では、接合部材20は、ボルト21に加えてナット22を含んでいる。接合部材20の少なくとも一部は、第1管12(本管12c)の外周面および第2管13(本管13c)の外周面よりも径方向の外側に配置されている。本実施形態では、接合部材20の全体が、第1管12の外周面および第2管13の外周面よりも径方向の外側に配置されている。図示の例では、ボルト21およびナット22が、第1管12の外周面および第2管13の外周面よりも径方向の外側に配置されている。その結果、本実施形態では、第1管12および第2管13は、第1管12の外周面および第2管13の外周面よりも径方向の外側で機械的に接合されている。
【0092】
ボルト21は、第1フランジ19aおよび第2フランジ19bを上下方向に貫通する。ボルト21の頭部と、ナット22と、は、第1フランジ19aおよび第2フランジ19bを上下方向に挟む。これにより、第1管12および第2管13が機械的に接合(ボルト接合)されている。
【0093】
ここで本実施形態では、雨水排水装置10Aは、パッキン23(ガスケット)を備えている。第1管12および第2管13にパッキン接触部23aが設けられている。パッキン接触部23aとは、パッキン23が接触する部分である。パッキン23は、第1管12と第2管13との間を止水(シール)する。パッキン23は、弾性部材(例えば、ゴム)であってもよく、弾性部材でなくてもよい。パッキン23は、環状である。図示の例では、パッキン23は、第1フランジ19aと第2フランジ19bとの間に配置されている。パッキン23は、第1フランジ19aおよび第2フランジ19bとともに、ボルト21およびナット22によって上下方向に挟まれている。このような雨水排水装置10Aでは、パッキン接触部23aは、第1管12の端面および第2管13の端面に設けられている。
【0094】
以上説明したように、本実施形態に係る雨水排水装置10Aによれば、排水管61の端部に、加工管12a、13aが設けられている。この場合、排水管61同士の接合時に加工管12a、13aを利用することで、例えば、排水管61の端部同士を電気融着接合せずに機械的に接合することができる。これにより、排水管61の内面に皺が発生するのを防止することができる。
【0095】
排水管61の端部に、フランジ19a、19bが設けられている。この場合、排水管61同士の接合時にフランジ19a、19bを利用することで、例えば、排水管61の端部同士を電気融着接合せずに機械的に接合することができる。これにより、排水管61の内面に皺が発生するのを防止することができる。
【0096】
排水管61の端部に、パッキン接触部23aが設けられている。これにより、排水管61同士の接合部分におけるシール性を高めることができる。
【0097】
排水管61の端部同士が接合部材20によって機械的に接合される。よって、排水管61の端部同士を電気融着接合せずに機械的に接合することができる。これにより、排水管61の内面に皺が発生するのを防止することができる。
【0098】
なお本実施形態では、排水管61(第1管12、第2管13)の端部に加工管12a、13aが設けられているが、加工管12a、13aがなくてもよい。例えば、本管12c、13cの端部に直接、フランジ19a、19bが設けられていてもよい。この場合、押出成型により製造された本管12c、13cの端部を加工することで、本管12c、13cと一体のフランジ19a、19bを形成することができる。この場合、ビード12d、13dがなくてもよい。
【0099】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る雨水排水装置10Bを、図5および図6を参照して説明する。
なお、この第3実施形態においては、第2実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0100】
本実施形態に係る雨水排水装置10Bでは、接合部材20が、ボルト21およびナット22に加えて、継手24を更に備えている。継手24には、第1管12および第2管13が嵌合されている。図示の例では、接合部材20は、いわゆるハウジングである。継手24は、筒状である。継手24は、周方向に2分割されている。継手24は、2つの分割体24aを含む。各分割体24aは、半円弧状である。雨水排水装置10Bは、2組のボルト21およびナット22を備えている。雨水排水装置10Bは、ボルト21およびナット22を2つずつ備えている。
【0101】
2組のボルト21およびナット22のうち、第1組のボルト21およびナット22は、両分割体24aの周方向の第1端同士を接合する。2組のボルト21およびナット22のうち、第2組のボルト21およびナット22は、両分割体24aの周方向の第2端同士を接合する。ボルト21は、分割体24aの周方向の第1端または第2端(継手24のうちの第1管12および第2管13を回避した位置)を水平方向に貫通する。ボルト21の頭部およびナット22は、両分割体24aの周方向の第1端同士、または、第2端同士を水平方向に挟み込む。これにより、継手24(2つの分割体24a)が、第1管12および第2管13を水平方向に挟み込んで接合する。ボルト21が絞め込まれることで、継手24によって第1管12および第2管13を掴む強度が高くなる。
【0102】
このように本実施形態では、継手24としていわゆるハウジングを採用している。しかしながら、継手24として、ハウジングに代えて、日本水道協会規格「水道用ポリエチレン管金属継手」(JWWA B 116:2012)に準ずる他の構成を採用することも可能である。例えば、ボルト21が、継手24のうちの第1管12および第2管13を回避した位置を、水平方向ではなく上下方向に貫通してもよい。この場合であっても、ボルト21が絞め込まれることで、継手24によって第1管12および第2管13を掴む強度が高くなる構成を採用することができる。
【0103】
ここで、第1管12の加工管12aおよび第2管13の加工管13aには、グルーブ12b、13bが設けられている。グルーブ12b、13bは、周方向に延びる溝である。グルーブ12b、13bは、周方向の全周にわたって連続して延びている。第1管12の加工管12aには、グルーブ12b、13bとして第1グルーブ12bが設けられている。第2管13の加工管13aには、グルーブ12b、13bとして第2グルーブ13bが設けられている。各グルーブ12b、13bには、継手24(分割体24a)の軸方向の両端がそれぞれ嵌合する。これにより、継手24による第1管12および第2管13の接合がより強固になる。
【0104】
また本実施形態では、パッキン23は、第1管12および第2管13に対して径方向の外側から嵌合している。1つのパッキン23が、第1管12の加工管12aおよび第2管13の加工管13aに跨って嵌合されている。パッキン23は、継手24によって径方向の外側から覆われている。パッキン23は、継手24における上端と下端との間に位置している。
【0105】
以上のような雨水排水装置10Bにおいて、パッキン接触部23aは、第1管12の外周面および第2管13の外周面に設けられている。第1管12のパッキン接触部23aは、第1管12の外周面のうち、第1グルーブ12bよりも本管12cの反対側に位置する部分である。第2管13のパッキン接触部23aは、第2管13の外周面のうち、第2グルーブ13bよりも本管13cの反対側に位置する部分である。このように、パッキン接触部23aが、第1管12および第2管13の端面ではなく外周面にあることで、第1管12および第2管13の端面同士が突き当たる。
【0106】
なお本実施形態では、排水管61(第1管12、第2管13)の端部に加工管12a、13aが設けられているが、加工管12a、13aがなくてもよい。例えば、本管12c、13cの端部に直接、グルーブ12b、13bが設けられていてもよい。この場合、押出成型により製造された本管12c、13cの端部を、例えば切削加工することで、本管12c、13cにグルーブ12b、13bを形成することができる。この場合、ビード12d、13dがなくてもよい。
【0107】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る雨水排水装置10Cを、図7および図8を参照して説明する。
なお、この第4実施形態においては、第2実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0108】
本実施形態に係る雨水排水装置10Cでは、第1管12の加工管12aおよび第2管13の加工管13aのうち、一方は、受口31であり、他方は、差口32である。図示の例では、第1管12の加工管12aが受口31であり、第2管13の加工管13aが差口32である。ただし、第1管12の加工管12aが差口32であり、第2管13の加工管13aが受口31であってもよい。
【0109】
受口31には、スリット33が設けられている。スリット33は、周方向に延びている。スリット33は、受口31の周方向に沿って、半周以上、かつ、全周未満、延びている。スリット33は、受口31を径方向に貫通している。差口32には、凹部34が設けられている。凹部34は、環状である。凹部34は、差口32の外周面に設けられている。凹部34は、スリット33と上下方向の位置が同等である。
【0110】
そして本実施形態では、接合部材20が、ボルト21およびナット22に代えて、リング35およびストッパー36を備えている。
リング35は、受口31に設けられている。リング35は、スリット33内に配置されている。リング35は、スリット33から径方向の外側に向けて露出している。リング35は、上下方向から見た平面視においてC字状である。リング35は、弾性変形可能である。リング35は、例えば、リング35の周端部同士が周方向に離れるように弾性変形可能である。この場合、リング35が拡径する。リング35は、例えば、リング35の周端部同士が周方向に接近するように弾性変形可能である。この場合、リング35が縮径する。リング35は、凹部34に嵌合している。これにより、差口32が受口31から抜け出ることが規制されている。
【0111】
ストッパー36は、受口31に設けられている。ストッパー36は、凹部34に嵌合したリング35の凹部34からの離脱を規制する。ストッパー36は、環状である。ストッパー36は、周方向の全周にわたって連続して延びている。ストッパー36は、受口31の外周面に配置されている。ストッパー36は、リング35を径方向の外側から覆う。これにより、ストッパー36が、リング35が径方向の外側に向けて拡径するように弾性変形ことを規制する。ストッパー36は、受口31にスライド移動可能に設けられている。
【0112】
以上のような接合部材20では、接合部材20のうちのストッパー36が、第1管12の外周面および第2管13の外周面よりも径方向の外側に位置している。
【0113】
また本実施形態では、パッキン23は、受口31と差口32との間に設けられている。図示の例では、パッキン23は2つ設けられている。パッキン23は、第1パッキン37と、第2パッキン38と、を含む。第1パッキン37は、受口31の基端と、差口32の先端と、の間に設けられている。第1管12において、受口31は、他の部分に比べて拡径している。第1管12の内周面のうち、受口31の基端には、段が設けられている。第1パッキン37は、この段と、差口32の先端と、との間に配置されている。第2パッキン38は、受口31の内周面と、差口32の外周面と、との間に配置されている。
【0114】
以上のような雨水排水装置10Cは、2組のパッキン接触部23aを備えている。1組目のパッキン接触部23aは、受口31の内周面と、差口32の先端面と、に設けられている。2組目のパッキン接触部23aは、受口31の内周面と、差口32の外周面と、に設けられている。
【0115】
このような雨水排水装置10Cでは、図8に示すように、受口31と差口32との接合前の状態において、ストッパー36が、リング35に対して上下方向にずらされている。この状態で、差口32が受口31内に挿入されると、差口32において凹部34よりも上方に位置する部分が、リング35を強制的に弾性変形させて拡径させる。差口32が受口31に対して十分上昇し、凹部34の上下方向の位置がリング35の上下方向の位置と重なると、リング35の強制的な弾性変形が解除され、リング35が復元変形して縮径する。これにより、リング35が凹部34に嵌合される。その後、ストッパー36を上下方向にスライド移動させ、ストッパー36にリング35を径方向の外側から覆わせる。
【0116】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0117】
例えば、図9に示す第1変形例に係る雨水排水装置10Dに示すように、第1実施形態に係る雨水排水装置10において、コア66がなくてもよい。第2実施形態から第4実施形態において、パッキン23がなくてもよい。
【0118】
前記実施形態では、ルーフドレン11がサイフォン現象を誘発可能であるとしたが、本発明はこれに限られない。
例えば、ルーフドレン11が単なるごみ除けであり、雨水排水装置10、10A、10B、10C、10Dにおいて、サイフォン現象が生じなくてもよい。
さらに例えば、ルーフドレン11とは異なる部材がサイフォン現象を誘発可能であってもよい。この場合、ルーフドレン11と前記異なる部材のうちの両方がサイフォン現象を誘発可能であってもよく、ルーフドレン11と前記異なる部材のうちの前記異なる部材のみがサイフォン現象を誘発可能であってもよい。
このような前記異なる部材(サイフォン現象を誘発可能である部材)としては、例えば、図10から図12に示すような、第2変形例から第4変形例に係る排水部材11A、11B、11C(サイフォン誘発部、フィン付き継手、レデューサ)が例示される。排水部材11A、11B、11Cは、排水管路110に設けられる。排水管路110は、例えば、前述の立て配管部52、横引き配管部53、立て配管部54、を含む。排水部材11Aは、排水管路110において第1排水管路110Aと第2排水管路110Bとの間に配置され、これらの第1排水管路110Aと第2排水管路110Bとを接合する。第1排水管路110Aおよび第2排水管路110Bは、排水管路110の一部である。排水部材11A、11B、11Cは、排水管路110における任意の箇所(例えば、立て配管部52、横引き配管部53、立て配管部54のうちのいずれか1か所以上であってもよく、立て配管部52であってもよい)に設置可能である。
【0119】
(第2変形例)
図10に示すように、第2変形例の雨水排水装置10Eは、第1実施形態のドレン11に代えて排水部材(サイフォン誘発部)11Aを備える。排水部材11Aは、排水管路110に設けられたレデューサである。排水部材11A(レデューサ)は、通水部分の断面積が縮小する構成を有する。排水部材11Aは、継手本体120と、複数のフィン121とを有する。継手本体120は、鉛直上下方向に沿った中心軸線を有する円筒管であり、上端に形成された入口側接続部124と、下端に形成された出口側接続部125と、これらの間に形成された直管部123と、を有する。図示の例では、排水部材11Aの通水部分の断面積がフィン121によって縮小しているが、フィン121を設けることに代えて、または、フィン121を設けることに加えて、通水部分の内径自体が小さくなっていることで、通水部分の断面積が縮小していてもよい。
【0120】
入口側接続部124は、リング形状を有し、第1排水管路110Aの下端に対して同軸に接続され、固定部130において固定されている。出口側接続部125もリング形状を有し、第2排水管路110Bの上端に対して同軸に接続され、固定部130において固定されている。
固定部130として、第1実施形態から第4実施形態に係る雨水排水装置10、10A、10B、10Cにおける排水管61同士の接続形態と同様の接続形態を採用することが可能である。例えば、固定部130は、排水部材11Aと、第1排水管路110Aや第2排水管路110Bと、を、電気融着する構成であってもよく(例えば、第1実施形態(図3)や第1変形例(図9)に係る接続形態である電気融着継手62など)、機械的に接合する構成であってもよい(例えば、第2実施形態から第4実施形態(図4から図8)に係る接続形態である接合部材20など)。固定部130として、このような電気融着や機械的な接合を採用する場合、接続部分における耐圧性能の向上が期待される。
【0121】
直管部123は、入口側接続部124と出口側接続部125との間に挟まれた位置に配置され、入口側接続部124及び出口側接続部125と同軸をなす円筒管である。第1排水管路110A、排水部材11A、及び第2排水管路110Bそれぞれの呼び径を統一してもよい。この場合には、同じ種類(同じ呼び径)の管材で施工できるので、施工性に優れた雨水排水装置10Eとすることができる。また、直管部123の内径寸法も、第1排水管路110Aの内径寸法及び第2排水管路110Bの内径寸法に等しい。従って、第1排水管路110A、排水部材11A、及び第2排水管路110Bそれぞれの内部を通って鉛直方向に延在する流路は、後述するフィン121が配置された部分を除き、鉛直方向の各位置において同一内径を有する円柱状の内部空間を形成している。すなわち、第1排水管路110Aから排水部材11Aを介して第2排水管路110Bに向かう流路は、第1排水管路110A及び排水部材11A間の接続箇所、及び、排水部材11A及び第2排水管路110B間の接続箇所のいずれの位置においても、段差がなくスムーズに接続されている。
【0122】
フィン121は、排水部材11Aの直管部123の内壁面123aに対して一体に形成された複数の羽根である。ただし、フィン121は、直管部123に対して別体であってもよい。第2変形例の場合は、4枚のフィン121を、直管部123の中心軸線を中心とした周方向に等角度間隔(90°間隔)で配置している。なお、フィン121の枚数は4枚のみに限らず、2枚、3枚、あるいは5枚以上、さらには10枚以上としてもよい。各フィン121は、互いに同じ形状寸法を有し、また管軸方向に沿った位置も全て同じになっている。
すなわち、全てのフィン121は、縦断面視あるいは側面視において二等辺三角形で、かつ、その底辺が直管部123の内壁面123aに対して一体をなすように接続されている。よって、各フィン121は、内壁面123aから管軸(中心軸線)に向かって突出するようにそれぞれ形成されている。これらフィン121を形成する二等辺三角形の等辺の一方である直線状の上辺121aが流路内の上流側(鉛直方向の上側)に配置され、他方である直線状の下辺121bが流路内の下流側(鉛直方向の下側)に配置されている。そして、これら上辺121a及び下辺121b間が、接続点121cにおいて接続されている。
【0123】
各フィン121は、それぞれ、管軸を間に挟んで反対側の周方向位置に対向するように他のフィン121が配置されている。本変形例の場合は、上述の通り、管軸に沿ってみた場合、4枚のフィン121が等角度間隔で配置されているため、管軸を間に挟んで互いに対向する一対のフィン121が、二対、配置されることになる。
そして、これらフィン121の各上辺121aは、流路内に向かってせり出した薄い傾斜面を形成している。これら傾斜面は、上辺121aの最上端位置では内壁面123aに接続され、この最上端位置から下流側に向かうにしたがって内壁面123aからの突出高さが徐々に高くなり、そして接続点121cの位置で内壁面123aからの突出高さが最も高くなる。このように配置された上辺121aによる薄い傾斜面は、その上流側から流れ落ちてくる雨水に面しているため、この雨水が傾斜面に当たることで流路抵抗を付与する。
【0124】
各フィン121の各下辺121bも、流路内に向かってせり出した薄い傾斜面を形成している。これら傾斜面は、下辺121bの最下端位置では内壁面123aに接続され、この最下端位置から上流側に向かうにしたがって内壁面123aからの突出高さが徐々に高くなり、そして接続点121cの位置で内壁面123aからの突出高さが最も高くなる。つまり、各上辺121aに形成された傾斜面と、各下辺121bに形成された傾斜面は、互いに同じ形状寸法を有しており、その傾斜方向が、鉛直方向において接続点121cを境として逆向きになっている。
【0125】
各フィン121の左側面121dと右側面121eは、それぞれ二等辺三角形の形状を有する平面であり、互いに平行をなしている。従って、各フィン121は、その上端位置から下端位置にかけての各位置で板厚が一定になっている。左側面121d及び右側面121eは流路内に入り込んでいるため、雨水が各フィン121を通過する際、左側面121d及び右側面121eに接することによる粘性抵抗を雨水に付与する。したがって、雨水に対し、上辺121aによって形成された前記傾斜面が当たることによる抵抗と、左側面121d及び右側面121eとの接触による粘性抵抗との両方を付与する。以下、これら2つの抵抗を纏めて、フィン121による流路抵抗と呼ぶ場合がある。
【0126】
流入口51にはバッフル128(ドレン11)が設けられている。バッフル128は、ゴミ等が第1排水管路110A内へ流入することを防ぐ。バッフル128でゴミ等が除かれた雨水は、流入口51から第1排水管路110Aを介して排水部材11A内に流れ込む。
【0127】
排水部材11A内に流れ込んだ雨水は、各フィン121に当たることで流路抵抗を受け始めることになる。この流路抵抗によって、流れ込んだ雨水の流速を下げるブレーキ効果が生じる。その一方で、接続点121cよりも下流位置では下辺121bによる傾斜面の向きが上辺121aとは逆向きとなっており、内壁面123aからの突出高さが徐々に小さくなっているので、雨水に対して過度な流路抵抗を与え続けないようになっている。加えて、渦を巻きながら通過しようとする雨水を、各フィン121の左側面121d及び右側面121eによって整流させることができる。したがって、各フィン121によれば、雨水に対して適切な流路抵抗を付与して流速を下げるとともに、雨水の整流も同時に行えるものとしている。
【0128】
排水部材11Aによれば、各フィン121の上辺121aと流入口51との間の流路内に、流速を下げられた雨水が一時的に溜まるようになる。これにより、バッフル128から流入口51内に流れ込む雨水に空気が入り込みにくくなり、サイフォン現象を確実に誘発させることが可能である。しかも、各フィン121を通過した後の雨水は、左側面121d及び右側面121eによって整流済みであるため、渦を巻くことなくスムーズに排水されていく。
【0129】
なお、フィン121の長さ、形状は特に限定されない。例えば、フィン121の形状は、第2変形例の二等辺三角形の形状のみに限らず、例えば直角三角形の形状であってもよいし、あるいは台形の形状であってもよい。また、排水部材11Aの直管部123に代えて絞り管部を設け、絞り管部にフィンを設けてもよい。排水される雨水が圧力損失を起こすことを誘発する形態のフィン121の形状のレデューサであれば、公知のものを用いることができる。さらにフィン121がなくてもよく、単に絞り管部のみがあっても、排水部材11Aがレデューサとして機能することができる場合がある。
【0130】
以上説明した第2変形例の雨水排水装置10Eによれば、前記実施形態と同様に、サイフォン現象により排水性能を高く維持し、さらに、排水管路110のメンテナンスを容易におこなうことができる。
【0131】
(第3変形例)
図11に示すように、第3変形例の雨水排水装置10Fは、第2変形例の排水部材11Aに代えて排水部材(サイフォン誘発部)11Bを備える。排水部材11Bは、継手本体120と、内管131と、複数のフィン132と、を有する。
内管131は、継手本体120の内部において同軸上に配置されている。内管131は、管軸に沿った上流側から下流側に向かって先細りとなる逆円錐台形状に構成されている。内管131は、下方に向かって先細りとなる内壁面131a及び外壁面131bを有する。内管131の上端には円形入口開口が形成され、内管131の下端には上端よりも小径の円形出口開口が形成されている。内管131の外壁面131bは、一対のフィン132により、直管部123の内壁面123aに対して離間した状態で固定されている。
【0132】
これにより、排水部材11B内には、内壁面123aと外壁面131bとの間に形成された第1流路と、内壁面131a内に形成された第2流路との2つが形成されている。よって、この排水部材11B内に流れ込んだ雨水は、第1流路を流れるものと、第2流路を流れるものとの2つに分岐して流れる。これらのうち、第1流路を流れる雨水は、流路面積が縮小することによる流路抵抗を受けて減速する。また、第2流路を流れる雨水は、一対のフィン132に当たることで流路抵抗を受けて減速する。
【0133】
また、渦を巻きながら通過しようとする雨水を、各フィン132によって整流させることもできる。よって、排水部材11Bによれば、雨水に対して適切な流路抵抗を付与して流速を下げるとともに、雨水の整流も同時に行える。
【0134】
これにより、排水部材11Bの構成によれば、第1流路及び第2流路と流入口51との間の流路内に、流速を下げられた雨水が一時的に溜まるようになる。したがって、バッフル128(図10参照)から流入口51内に流れ込む雨水に空気が入り込みにくくなり、サイフォン現象を確実に誘発させることが可能である。
【0135】
以上説明した第3変形例の雨水排水装置10Fによれば、第2変形例と同様に、サイフォン現象により排水性能を高く維持し、さらに、排水管路110(図10参照)のメンテナンスを容易におこなうことができる。
【0136】
(第4変形例)
図12に示すように、第4変形例の雨水排水装置10Gは、第2変形例の排水部材11Aに代えて排水部材(サイフォン誘発部)11Cを備える。排水部材11Cは、継手本体140と、複数のフィン141と、フィン付きリング142と、を有する。
継手本体140は、鉛直上下方向に沿った管軸を有する円筒管である直管部123と、直管部123の上端に対して一体に形成された入口側接続部124と、直管部123の下端に対して同軸に接続された出口側接続部144とを有する。
【0137】
出口側接続部144には、各フィン141を内周面に有するフィン付きリング142が、接続部144aを介して一体に接続されている。
フィン付きリング142は、相対的に上流側に位置する上流端縁142aと、相対的に下流側に位置する下流端縁142bと、これら上流端縁142a及び下流端縁142b間を接続する縮流部142cと、縮流部142cの内周面に管軸を中心とした周方向に等角度間隔で配置された複数のフィン141とを有する。
【0138】
上流端縁142a及び下流端縁142bは、ともに環状をなすフランジ部分であり、直管部123の内周面の内径に近い外径寸法を有する。よって、上流端縁142a及び下流端縁142bは、直管部123の内壁面123aに対して隙間を開けずに接することができる。上流端縁142aの内周面は、管軸を含む断面で見た場合、その上流側から下流側に向かって徐々に厚みが増すようになっている。よって、上流端縁142aは、直管部123内に挿入配置されるものの、内壁面123aに対して過度に大きな段差を生じず、ここを通過していく雨水の流れを乱さずスムーズに通過させる。
下流端縁142bは、接続部144aの上端に対し、過度に大きな段差を生じないように滑らかに接続されている。よって、下流端縁142bは、ここを通過していく雨水の流れを乱さずスムーズに通過させる。また、下流端縁142bは、出口側接続部144の内周面との間に環状の隙間を形成しており、この環状の隙間内に直管部123の下端が水密に嵌め込まれるようになっている。
【0139】
縮流部142cは、管軸を含む断面で見た形状がアーチ状をなしており、管軸方向の上流側から途中位置までの上半分が縮流路を形成し、続いて途中位置から管軸方向の下流側に向かう下半分が拡大流路を形成している。すなわち、上半分では、管軸に沿った方向から見た円形開口の内径が、上流側から下流側に向かうにつれて徐々に縮径し、そして下半分との境位置で最小内径となっている。そして、続く下半分では、管軸に沿った方向から見た円形開口の内径が、上流側から下流側に向かうにつれて徐々に最小内径より拡径していき、そして接続部144aとの境界位置で接続部144aの内径と等しくなっている。
【0140】
各フィン141は、管軸方向の最も上流側にある上端141aと、管軸方向の最も下流側にある下端141bと、を有する略線状の突起である。各フィン141は、管軸方向に沿って見た場合、上端141aの直下よりも若干横方向にずれた位置に下端141bが位置している。よって、これら上端141a及び下端141b間を結ぶ直線を管軸と重ねたときに交差するように、各フィン141は傾斜配置されている。そして、互いに隣り合うフィン141間に、管軸と重ねたときに交差する方向に沿った傾斜流路が形成されている。
【0141】
各フィン141は、上端141a及び下端141b間を結ぶ直線に対して垂直をなす断面で見た場合、直線上の各位置で略三角形の断面形状を有する。そして、この三角形断面の高さが、上端141aの位置から直線の中央位置までは徐々に高さが増していき、続いて直線の中央位置から下端141bにかけては徐々に高さが低くなっていく。また、これらフィン141を対向視した場合の幅寸法は、上端141aの位置から直線の中央位置までは徐々に増していき、続いて直線の中央位置から下端141bにかけては徐々に狭くなっていく。つまり、各フィン141は、管軸方向の中央位置で最も厚く、この中央位置から上端141aに向かうにつれて徐々に薄くなる。同様に、各フィン141は、中央位置から下端141bに向かうにつれて徐々に薄くなる。また、各フィン141を、上端141a及び下端141b間を結ぶ直線を含んでかつ縮流部142cの壁部の板厚方向に沿った断面で見た場合は、縮流部142cの内周面に沿った凸型のアーチ状をなしている。
各フィン141は、雨水に加える流路抵抗を、管軸方向に沿って徐々に増していくように加えていくことが可能である。
【0142】
排水部材11Cによれば、各フィン141の上辺と流入口51(図10参照)との間の流路内に、流速を下げられた雨水が一時的に溜まるようになる。これにより、バッフル128(図10参照)から流入口51内に流れ込む雨水に空気が入り込みにくくなり、サイフォン現象を確実に誘発させることが可能である。しかも、各フィン141を通過した後の雨水は、整流済みであるため、渦を巻くことなくスムーズに排水されていく。
加えて、各フィン141が形成されたフィン付きリング142を出口側接続部144と一体化し、そして直管部123の下端に同軸に嵌め込むソケット式の構造を採用している。これにより、各フィン141の取り付けや交換、さらには掃除等のメンテナンスを容易に行うことが可能となっている。
【0143】
以上説明した第4変形例の雨水排水装置10Gによれば、第2変形例と同様に、サイフォン現象により排水性能を高く維持し、さらに、排水管路110(図10参照)のメンテナンスを容易におこなうことができる。
なお第2変形例から第4変形例では、フィン121、132、141によって流路断面積を縮小させているが、これに代えて、例えば、いわゆるレデューサのように、内径を小さくすることで流路断面積を縮小させてもよい。
【0144】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0145】
10、10A、10B、10C 雨水排水装置
12a、13a 加工管
12a 加工管
13a 加工管
19a、19b フランジ
20 接合部材
23 パッキン
23a パッキン接触部
24 継手
51 流入口
61 排水管
62 電気融着継手
62 継手
64 電熱線
66 コア
D 外径
T 肉厚
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12