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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118447
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】排水管および雨水排水装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/122 20060101AFI20240823BHJP
   F16L 1/00 20060101ALI20240823BHJP
   F16L 9/128 20060101ALI20240823BHJP
   E03C 1/12 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
E03C1/122 Z
F16L1/00 B
F16L9/128
E03C1/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024021216
(22)【出願日】2024-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2023024240
(32)【優先日】2023-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】岡本 響子
(72)【発明者】
【氏名】田中 将成
(72)【発明者】
【氏名】芦塚 良介
【テーマコード(参考)】
2D061
3H111
【Fターム(参考)】
2D061AA04
2D061AA05
2D061AB10
2D061AC05
2D061AC10
2D061BG10
2D061DA05
3H111BA15
3H111BA26
3H111CB04
3H111CB24
3H111CB29
3H111CC03
3H111DA07
3H111DB05
(57)【要約】
【課題】耐圧性能を向上させる。
【解決手段】排水管61は、雨水を排水する排水管61であって、ポリオレフィン系樹脂製であり、外径Dと肉厚Tの比であるSDR値が17未満であり、屋内に配置されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水を排水する排水管であって、
ポリオレフィン系樹脂製であり、外径と肉厚の比であるSDR値が17未満であり、 屋内に配置されている、
排水管。
【請求項2】
前記排水管の樹脂に繊維が混合されている、
請求項1に記載の排水管。
【請求項3】
前記排水管が、中間層として金属層を含む3層以上の多層管である、
請求項1に記載の排水管。
【請求項4】
雨水が流入する流入口と、
上端が前記流入口に接続され、縦方向に沿って配置された第1管部と、
前記第1管部の下端に接続され、横方向に沿って配置された第2管部と、
上端が前記第2管部に接続され、縦方向に沿って配置された第3管部と、を備える雨水排水装置に用いられる排水管であって、
前記排水管は、少なくとも前記第3管部の一部に用いられる、
請求項1に記載の排水管。
【請求項5】
前記雨水排水装置は、
前記第3管部の下端に接続される継手と、
前記継手に接続され、横方向に沿って配置された第4管部と、を更に備え、
前記排水管は、前記第3管部の下端に用いられる、
請求項4に記載の排水管。
【請求項6】
前記排水管には、流入口から雨水が流入し、
前記流入口には、サイフォン現象を誘発可能なサイフォン誘発部が設けられている、 請求項1に記載の排水管。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の排水管を含む雨水排水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水管および雨水排水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から下記特許文献1に記載の排水管および雨水排水装置が知られている。この排水管では、外径と肉厚の比であるSDR値が17以上である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7136624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の排水管では、耐圧性能に改善の余地がある。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、耐圧性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1>本発明の一態様に係る排水管は、雨水を排水する排水管であって、ポリオレフィン系樹脂製であり、外径と肉厚の比であるSDR値が17未満であり、屋内に配置されている。
【0007】
排水管のSDR値が17未満である。よって、排水管の外径に対して排水管の肉厚が大きくなり、耐圧性能を高めることができる。さらに、この排水管を建物の排水管として用いる場合、建物の最下層において管の管内圧が高くなり易い。よって、これらのような排水管として本態様に係る排水管を適用した場合、耐圧性能を高めるという作用効果が顕著に奏功される。
また、排水管の外径を同一としつつ排水管の肉厚を変更することで、例えば、内径が異なる複数の排水管を、複数の受口を有する継手を用いて接続するときにおいても、各受口の内径を同一とすることができる。
【0008】
<2>上記<1>に係る排水管では、前記排水管の樹脂に繊維が混合されている構成を採用してもよい。
<3>上記<1>に係る排水管では、前記排水管が、中間層として金属層を含む3層以上の多層管である構成を採用してもよい。
【0009】
排水管の樹脂に繊維が混合されていたり、排水管が、中間層として金属層を含む3層以上の多層管であったりする場合、排水管の耐圧性能をより向上させることができる。
【0010】
<4>上記<1>から<3>のいずれか1態様に係る排水管では、雨水が流入する流入口と、上端が前記流入口に接続され、縦方向に沿って配置された第1管部と、前記第1管部の下端に接続され、横方向に沿って配置された第2管部と、上端が前記第2管部に接続され、縦方向に沿って配置された第3管部と、を備える雨水排水装置に用いられる排水管であって、前記排水管は、少なくとも前記第3管部の一部に用いられる構成を採用してもよい。
<5>上記<4>に係る排水管では、前記雨水排水装置は、前記第3管部の下端に接続される継手と、前記継手に接続され、横方向に沿って配置された第4管部と、を更に備え、前記排水管は、前記第3管部の下端に用いられる構成を採用してもよい。
【0011】
排水管が、少なくとも第3管部の一部に用いられたり、排水管が、第3管部の下端に用いられたりする場合、排水管が、雨水排水装置において管内圧が高くなり易い箇所に用いられることから、耐圧性能を高めるという作用効果が顕著に奏功される。
【0012】
<6>上記<1>から<5>のいずれか1態様に係る排水管では、前記排水管には、流入口から雨水が流入し、前記流入口には、サイフォン現象を誘発可能なサイフォン誘発部が設けられている構成を採用してもよい。
【0013】
流入口に、サイフォン現象を誘発可能なサイフォン誘発部が設けられている。よって、排水管内が排水で満たされて管内圧が高くなり易くなる。その結果、耐圧性能を高めるという作用効果が顕著に奏功される。
【0014】
<7>本発明の一態様に係る雨水排水装置では、上記<1>から<6>のいずれか1態様に係る排水管を含む。
【0015】
耐圧性能が不足する管を雨水排水装置に用いる場合、例えば設計時に、雨水排水装置における管内圧を推定する。そして、必要に応じて、管を途中で縮径して流速を高めることで管内圧を下げたり、管内圧を開放するための通気管を設けたりする、という設計を検討する。
これに対して、耐圧性能に優れた本態様に係る排水管を用いることで、このような設計の必要性が生じ難くなり、雨水排水装置の設計自由度が向上する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、耐圧性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る雨水排水装置を示す斜視図である。
図2図1に示す雨水排水装置を示すブロック図である。
図3図1に示す雨水排水装置に含まれるサイフォン誘発部を示す斜視図である。
図4図1に示す雨水排水装置に含まれる排水管を示す断面図である。
図5】本発明の第1変形例に係る雨水排水装置を示すブロック図である。
図6】本発明の第2変形例に係る雨水排水装置を示すブロック図である。
図7】本発明の第3変形例に係る雨水排水装置に設けられた雨水排水継手の拡大断面図である。
図8】第4変形例の雨水排水継手の拡大断面図である。
図9】第5変形例の雨水排水継手の拡大断面図である。
図10】本発明の雨水排水継手の固定部の第1形態の拡大図である。
図11】本発明の雨水排水継手の固定部の第2形態の拡大図である。
図12】本発明の雨水排水継手の固定部の第2形態の断面図である。
図13】本発明の雨水排水継手の固定部の第3形態の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1から図4を参照し、本発明の一実施形態に係る雨水排水装置を説明する。
本実施の形態の雨水排水装置10は、図1および図2に示すように、建造物100に設置された雨水排水システム1の一部を構成する。
【0019】
雨水排水システム1は、建造物(建築物)100の屋上105に降った雨水を地面近傍に移動させて下水管に排水する。雨水排水システム1は、1つの雨水排水装置10を備えていてもよく、2つ以上の雨水排水装置10を備えていてもよい。雨水排水システム1が2つの雨水排水装置10を備えている場合、2つの雨水排水装置10は、建造物100の対向する側面の近傍に配置されていてもよい。
【0020】
雨水排水装置10は、複数の流入口51と、複数の第1管部52と、1又は複数の第2管部53と、第3管部54と、第4管部55と、を有する。
流入口51は、屋上105に配置され、屋上105に降った雨水が流入する。図示の例では、雨水排水装置10は、流入口51を複数備えているが、1つのみ備えていてもよい。図3に示すように、流入口51には、ルーフドレン11が設けられている。
【0021】
ルーフドレン11は、建造物100の屋上105に設けられている。ルーフドレン11は、例えば、屋上の水(例えば雨水)を排水する。ルーフドレン11は、屋上スラブS上に配置されている。屋上スラブSには、貫通孔S1が設けられている。貫通孔S1は、屋上スラブSを上下方向に貫通している。ルーフドレン11は、貫通孔S1上に配置されている。なお、屋上スラブSの下方には、パイプスペースが設けられている。パイプスペースは、例えば、パネル(天井パネル)等によって下方から覆われている。
【0022】
ルーフドレン11は、サイフォン現象を誘発可能である。ルーフドレン11は、ベースプレート14と、筒15と、蓋16と、リブ17と、を備えている。ベースプレート14は、環状である。ベースプレート14は、貫通孔S1と同軸に配置されている。筒15は、ベースプレート14の内周縁から下方に延びている。蓋16は、ベースプレート14の内周縁および筒15を上方から覆う。リブ17は、ベースプレート14から上方に延びている。リブ17は、ベースプレート14と蓋16とを連結する。リブ17は、ベースプレート14の周方向に間隔をあけて複数配置されている。周方向に隣り合うリブ17の間には、開口18が設けられている。なお図示の例では、蓋16およびリブ17が一体に成形されている。これらの蓋16およびリブ17は、エアバッフルを構成している。
【0023】
屋上の水は、前記開口18を通過するときにリブ17によって整流される。その結果、ルーフドレン11に流入する水に空気が混入し難くなる。このとき、例えば、屋上105の水の水位が蓋16の高さ以上であると、ルーフドレン11に流入する水に空気が一層混入し難くなる。結果として、雨水排水装置10においてサイフォン現象が誘発され易くなる。前記開口18を通過した水は、筒15の上端内に設けられた落し口を更に通過して下方に流れる。
【0024】
なお、蓋16およびリブ17のうちの一方がなくてもよい。この場合でも、ルーフドレン11はサイフォン現象を誘発可能である。ルーフドレン11は、蓋16のみによりサイフォン現象を誘発可能であってもよく、リブ17のみによりサイフォン現象を誘発可能であってもよい。また、蓋16およびリブ17の両方がなくてもよい。ルーフドレン11が、サイフォン現象を誘発可能でなくてもよい。また、ルーフドレン11の構成は上記構成に限られない。例えば、ベースプレート14と前記エアバッフルとの間に、クランプリングなどの他の部材があってもよい。
【0025】
図1および図2に示すように、第1管部52は、複数の流入口51の各々から下方に向かって配置されている。第1管部52は、略鉛直方向(上下方向ともいえる)に沿って配置されている。第1管部52の上端は、流入口51に繋がっている。第1管部52の下端は、第2管部53に繋がっている。第1管部52の下端は、パイプスペースに位置している。第1管部52の下端は、前記パネル(天井パネル)の上方に位置している。第1管部52の下端は、例えば、エルボやチーズ等を介して、第2管部53に接続されている。
【0026】
第2管部53は、横方向に沿って配置されており、複数の第1管部52のそれぞれの下端に繋がっている。第2管部53は、パイプスペースに位置している。第2管部53の端には、後述する第3管部54の上端に接続されている。第2管部53は、第3管部54側の端が、反対側の端と水平または反対側の端よりも低くなるように若干傾斜して配置されている。
【0027】
第3管部54は、縦方向に沿って配置されている。第3管部54の上端は第2管部53に接続されている。第3管部54は、途中階でオフセットし横引き部分を含んでも良い。第3管部54の下端は、第4管部55に接続されている。
第4管部55は、第3管部54の下端に接続されている。第3管部54を通って落下してきた雨水は、第4管部55を通って雨水マス56に排出される。
【0028】
以上のような雨水排水装置10では、流入口51には、雨水が流入する。第1管部52の上端は流入口51に接続される。第1管部52は、縦方向に沿って配置される。第2管部53は、第1管部52の下端に接続される。第2管部53は、横方向に沿って配置される。第3管部54の上端は、第2管部53に接続される。第3管部54は、縦方向に沿って配置される。第4管部55は、横方向に沿って配置される。
ここで、第3管部54と第4管部55との間には、継手57が設けられている。継手57は、第3管部54の下端に接続される。第4管部55は、継手57に接続されている。継手57は、いわゆる脚部継手である。継手57は、エルボである。
【0029】
以上のような雨水排水装置10において、第1管部52、第2管部53、第3管部54および第4管部55は、屋内に配置されている。そして本実施形態では、雨水排水装置10は、図4に示すような排水管61を含む。排水管61は、第1管部52、第2管部53、第3管部54および第4管部55の少なくとも一部を構成する。例えば、第1管部52、第2管部53、第3管部54および第4管部55の全ての管材(継手を除いた部材)が排水管61によって構成されていてもよい。
【0030】
排水管61は、ポリオレフィン系樹脂製である。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレンもしくはポリプロピレンが挙げられる。図4に示すように、排水管61のSDR値は17未満である。SDR値は、外径Dと肉厚Tの比であり、SDR値=外径D/肉厚Tである。
なお、排水管61の外径としては、例えば、60.0mm~216.0mm等が挙げられる。特に流量の大きくなる下流側等では、排水管61の外径が、例えば76.0mm~216.0mmであることが望ましい。また、第1管部52、第2管部53および第3管部54において、同じ内径の排水管61を用いてもよいし、異なった内径の排水管61を用いてもよい。例えば、排水方向の上流側から下流側に向けて、排水管61の内径を小さくしてもよく大きくしてもよい。例えば、第3管部54において、排水方向の上流側から下流側に向けて排水管61の内径が小さくなっていてもよい。さらに例えば、第2管部53において、排水方向の上流側から下流側に向けて排水管61の内径が大きくなっていてもよい。
【0031】
図示の例では、排水管61は、少なくとも第3管部54の一部に用いられる。排水管61は、少なくとも第3管部54の下端に用いられる。言い換えると、第3管部54のうち、継手57に接続される部分が、排水管61である。
ここで、SDR値が17以上の管を、排水管61と区別するため、薄肉排水管という。薄肉排水管のSDR値は、例えば、20~22である。排水管61と薄肉排水管との外径が同一の場合、SDR値の大小関係から、薄肉排水管は、排水管61よりも内径が大きくなり薄肉となる。例えば、雨水排水装置10において、第1管部52、第2管部53に、薄肉排水管を用いてもよい。さらにこの場合において、第3管部54の上端にも薄肉排水管を用いてもよい。これらの場合、例えば、雨水排水装置10における建物の高層階側の配管において、外径を同一としつつも内径を大きくすることができる。その結果、キャビテーションの発生を抑制することができる。なお、排水管61と薄肉排水管とを同一外径とした場合、例えば、これらの両排水管を、同径の受口を有する継手で接続することができる。ただし、排水管61は薄肉排水管に比べて内径が小さくなるので、例えば、薄肉排水管が排水管61の下流側に位置する場合には、排水管61と薄肉排水管との接続に、継手としてのインクリーザが用いられてもよい。
【0032】
(排水管61の第1例)
排水管61として、高密度ポリエチレン管(PE100)を採用してもよい。
なお、排水管61が高密度ポリエチレン管である場合における最高許容圧力は、以下の(1)式で求められる。
【0033】
σ50/St=(P・D-t)/2t ・・・ (1)
【0034】
ここで、(1)式における各変数は以下の通りである。
σ50:建物用ポリエチレン管材料PE100の50年クリープ強さ(MPa)
St:安全率(-)
P:最高許容圧力(MPa)
D:排水管61の外径(mm)
t:排水管61の肉厚(mm)
なおσ50=10(MPa)であり、St=2である。
【0035】
上記(1)式から、SDR値が21、17、11、8.5それぞれの場合における最高許容圧力Pを求めると、順に0.5MPa,0.6MPa、1.0MPa、1.6MPaとなる。このように、SDR値が小さいほど、最高許容圧力Pが高くなる。
【0036】
ここで、SDR値が17の場合、最高許容圧力Pが0.6MPaとなる。縦方向に沿って配置された立管の上端から満水状態で水を流下させた場合において、立管の内圧をベルヌーイの法則に基づいて推定すると、上端から64m下方の位置で0.63MPaとなる。よって、SDR値が17の場合、立管の内圧が前記位置で最高許容圧力Pを超える。そのため、例えば、上記第3管部54の上端から64m下方の位置より下方(例えば、70m程度の位置)では、排水管61を用いることが好ましい。
【0037】
(排水管61の第2例)
排水管61の樹脂に繊維が混合されていてもよい。この場合、例えば、排水管61が、配向したガラス繊維が含まれる中間層を有する多層管であってもよい。排水管61の第2例として、径方向の内側から外側に向けて、第1層、第2層および第3層が積層されている3層構造の多層管を以下に説明する。
【0038】
[第1層および第3層]
第1層および第3層は、いずれも同じポリオレフィン系樹脂を主成分として構成される樹脂層である。したがって、第2層の両面で機械的特性が揃うとともに、排水管61の製造効率も良い。なお、本実施形態では、第1層と第3層とが互いに異なるポリオレフィン系樹脂から構成されることを除外するものではない。
【0039】
ポリオレフィン系樹脂としては特に限定されない。たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びエチレン-α-オレフィン共重合体等が挙げられる。成形体の強度、および、高温下での成形体の伸び率を向上させる観点からは、ポリエチレンまたはポリプロピレンであることが好ましく、ポリエチレンであることがより好ましい。
【0040】
さらに、ポリエチレン(PE)としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)及び高密度ポリエチレン(HDPE)等が挙げられる。ポリプロピレン(PP)としては、ホモPP、ブロックPP及びランダムPP等が挙げられる。ポリブテンとしては、ポリブテン-1等が挙げられる。エチレン-α-オレフィン共重合体は、エチレンに対して、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン又は1-オクテン等のα-オレフィンを数モル%程度の割合で共重合させた共重合体であることが好ましい。
これらのポリオレフィン樹脂は、1種が単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0041】
第1層および第3層は、後述の第2層のように繊維を含まない。内層である第1層は、排水管61の内部を流れる水に、第2層に含まれる繊維が混入しないように第2層の内周面をコートする。また、第3層は、たとえば排水管61を継手とエレクトロフュージョン接合などにより融着接合する場合に、継手との融着接合容易性を確保することができる。
【0042】
上記の他、第1層および第3層には、後述の第2層と同様に相溶化剤およびその他の成分を含んでいてもよい。ただし、後述の第2層に含まれるような繊維は実質的に含まない。
【0043】
[第2層]
第2層は、マトリックス樹脂と繊維とを含む繊維強化樹脂層である。第2層は配向層によって構成される。
【0044】
(配向層)
第2層では、繊維が第1層の外周に沿う方向に配向されている。具体的には、軸心Oに垂直な面で排水管61を切断した場合の断面において、繊維の平均繊維長の10%以上の長さを有する繊維のうち、少なくとも10%、好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも80%のものの方向が、繊維の中点と軸心Oとを結んだ直線の垂線方向に対して±15°以内に収まっている。このような配向層を第2層として含むことによって、排水管61が良好な耐圧性能を有する。
【0045】
なお、繊維の配向態様は、たとえば走査電子顕微鏡を用いて断面を観察することによって確認することができる。観察条件としては特に限定されないが、日本電子社製走査電子顕微鏡JSM-6701Fを用い、蒸着厚み10nm、加速電圧15kV、倍率25倍で観察してよい。
【0046】
(マトリックス樹脂)
マトリックス樹脂は、ポリオレフィン系樹脂である。ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、第1層および第3層の構成樹脂として挙げたものと同様である。第2層のマトリックス樹脂は、第1層および第2層を構成する樹脂と同じであっても異なっていてもよいが、第1層、第2層および第3層の全ての層に同じ樹脂を用いる場合、隣接する層が互いになじみやすく、界面剥離を効果的に抑制することができる点で好ましい。
【0047】
(繊維)
繊維としては、低線膨張性等の観点から、ガラス繊維が用いられる。
【0048】
ガラス繊維は短繊維、すなわち不連続長繊維であり、その繊維長はたとえば0.01mmから20mm以下、好ましくは0.05mm以上10mm以下である。繊維長が上記下限値以上であることにより、好ましい耐圧性能を得ることができる。繊維長が上記上限値以下であることにより、繊維を配向させ易い。さらに、ガラス繊維の繊維長をこの範囲内とすることにより、成形体の強度、寸法安定性を高め、高温下での伸び率を向上させることができる。以上の効果をより一層高める観点からは、ガラス繊維の繊維長は好ましくは0.1mm以上3mm以下である。なお、繊維長とは、第2層に含まれる繊維の長さの平均(すなわち平均繊維長)を意味する。
【0049】
ガラス繊維の繊維径は、1μm以上30μm以下である。繊維径が上記下限値以上であることにより、好ましい耐圧性能を得ることができる。繊維径が上記上限値以下であることにより、繊維を配向させ易い。さらに、ガラス繊維の繊維径をこの範囲内とすることにより、成形体の強度、寸法安定性及び高温下での伸び率を向上させることができる。成形体の強度、寸法安定性及び高温下での伸び率を一層効果的に向上させる観点からは、ガラス繊維の繊維径は好ましくは5μm以上20μm以下、より好ましくは5μm以上15μm以下である。なお、繊維径とは、第2層に含まれる繊維それぞれの最大径の平均を意味する。
【0050】
ガラス繊維は表面処理されていてもかまわない。表面処理剤としては、メタクリルシラン、アクリルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン、ビニルシラン及びエポキシシラン等が挙げられる。この中でも、アミノシランが好ましい。
【0051】
第2層にガラス繊維を含ませることにより、第2層の強度および寸法安定性を向上させることができる。さらに、第2層に含まれるガラス繊維の量は、第2層を製造するための樹脂組成物全体を100重量%として、10重量%以上60重量%未満である。ガラス繊維の量の下限を上述のとおりとすることにより、排水管61の良好な耐圧性を効率よく得ることができる。また、ガラス繊維の量の上限を上述のとおりとすることにより、第2層の破壊モードを延性的破壊へ遷移させ易くすることができる。したがって、第2層の脆性的破壊を生じにくくさせることができる。このような効果をより一層効果的に高める観点からは、第2層に含まれる繊維の量は、好ましくは20重量%以上50重量%以下である。
【0052】
ガラス繊維は、ポリオレフィン収束剤により収束されたものであってもよい。ポリオレフィン収束剤は、ガラス繊維を収束させることができれば特に限定されないが、具体的にはポリオレフィンである。当該ポリオレフィンは、マトリックス樹脂と同様のものであってもよい。つまり、マトリックス樹脂がポリエチレンであれば、収束剤もポリエチレンであってよい。さらに、収束剤としての当該ポリオレフィンには、変性ポリオレフィンが含まれる。ポリオレフィン収束剤の具体例としては、マレイン酸変性ポリオレフィン、およびシラン変性ポリオレフィン等が挙げられる。第2層に低線膨張係数を具備させる観点からは、ポリオレフィン収束剤はシラン変性ポリオレフィンであることが好ましい。
【0053】
ガラス繊維を良好に収束させる観点からは、ポリオレフィン収束剤の密度は、好ましくは0.85g/cm以上、好ましくは1.1g/cm以下である。
ガラス繊維を良好に収束させる観点からは、ポリオレフィン収束剤のMFR(メルトマスフローレイト)は好ましくは0.01g/10分以上、好ましくは16g/10分以下である。上記MFRは、JIS K7210に基づいて、温度190度、荷重2.16kgfの条件で測定された値である。
【0054】
ガラス繊維をポリオレフィン収束剤により収束させる方法としては、どのような方法でもよい。マトリックス樹脂とポリオレフィン収束剤との合計100重量部に対する繊維の量は、好ましくは6重量部以上、より好ましくは12重量部以上、更に好ましくは19重量部以上、好ましくは533重量部以下、より好ましくは171重量部以下、更に好ましくは138重量部以下である。繊維の量を上記の範囲とすることによって、成形体の強度、寸法安定性及び高温下での伸び率を向上させることができる。
【0055】
第2層には相溶化剤が含まれてよい。相溶化剤としては、たとえば、変性ポリオレフィンおよび塩素化ポリオレフィンなどが挙げられる。変性ポリオレフィンとしては、たとえば、マレイン酸変性ポリオレフィンおよびシラン変性ポリオレフィンなどが挙げられる。相溶化剤は、1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用してもよい。第2層に低線膨張係数を具備させる観点からは、相溶化剤はシラン変性ポリオレフィンであることが好ましく、さらに、繊維がガラス繊維であることが好ましい。
【0056】
なお、相溶化剤としての変性ポリオレフィンは、上述の収束剤としての変性ポリオレフィンとは区別される。第2層に含まれる相溶化剤の量は、第2層を製造するための樹脂組成物全体を100重量%として、たとえば1重量%以上10重量%以下である。相溶化剤の含有量をこのような範囲とすることによって、成形体の強度、寸法安定性及び高温下での伸び率を向上させることができる。成形体の強度、寸法安定性及び高温下での伸び率をより一層効果的に高める観点からは、第2層に含まれる相溶化剤の量は、好ましくは2重量%以上9重量%以下である。
【0057】
第2層には、上述以外の他の成分が含まれてよい。当該他の成分は、第2層を製造するための樹脂組成物からガラス繊維を除いた成分を100重量%とすると、ポリオレフィン系樹脂の含有量が、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、更に好ましくは95重量%以上となる量で用いられてよい。ポリオレフィン系樹脂の含有量の範囲に含まれる上限値は、99.99重量%、または99.9重量%であってもよい。
【0058】
他の成分としては、マトリックス樹脂としてのポリオレフィン系樹脂以外の他の熱可塑性樹脂が挙げられる。但しこの場合、熱可塑性樹脂は副成分であり、その含有量は、ポリオレフィン系樹脂の含有量よりも少ない。
【0059】
他の成分として、酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤は、成形体の高温下での耐久性をより一層高めたり、銅などの金属による耐久性の低下を抑えたりする観点で用いることができる。
上記酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤及びラクトン系酸化防止剤等が挙げられる。酸化防止剤は、1種が単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0060】
フェノール系酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤であることが好ましい。ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、ベンゼンプロパン酸、3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ、C7-C9側鎖アルキルエステル、3,3’,3’’,5,5’,5’’-ヘキサ-tert-ブチル-a,a’,a’’-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、4,6-ビス(ドデシルチオメチル)-o-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス[(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-キシリル)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-[4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン2-イルアミノ]フェノール、及びジエチル[{3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル}メチル]ホスフォネート等が挙げられる。
【0061】
リン系酸化防止剤としては、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、トリス[2-[[2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェフィン-6-イル]オキシ]エチル]アミン、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス[2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)-6-メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸、及びテトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)(1,1-ビフェニル)-4,4’-ジイルビスホスフォナイト等が挙げられる。
ラクトン系酸化防止剤としては、3-ヒドロキシ-5,7-ジ-tert-ブチル-フラン-2-オンとo-キシレンとの反応生成物等が挙げられる。
【0062】
成形体の高温下での耐久性を一層高めたり、銅などの金属による耐久性の低下を抑えたりする観点からは、上記酸化防止剤は、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル又は2,4,6-トリス(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシベンシル)メシチレンであることが好ましく、上記ポリオレフィン系樹脂組成物は、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル又は2,4,6-トリス(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシベンシル)メシチレンを含むことが好ましい。
【0063】
酸化防止剤の含有量は、第2層を製造する樹脂組成物を100重量%とすると、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下、更に好ましくは0.5重量%以下である。酸化防止剤の含有量が上記下限以上であることにより、成形体の高温下での耐久性がより一層高くなり、上記上限を超える含有量では、成形体の高温下での耐久性は変わらないため、上記上限以下とすることにより、過剰な酸化防止剤の使用が抑えられる。
【0064】
第2層には、必要に応じて、架橋剤、銅害防止剤、滑剤、光安定剤および顔料等の添加剤を含んでいてもよい。
【0065】
架橋剤としては、有機過酸化物等が挙げられる。有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、及び2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン等が挙げられる。架橋剤は、1種が単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0066】
有機過酸化物の使用量は特に限定されない。たとえば、マトリックス樹脂であるポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01重量部以上、好ましくは2重量部以下、より好ましくは1重量部以下である。
【0067】
滑剤としては特に限定されず、例えば、フッ素系滑剤、パラフィンワックス系滑剤及びステアリン酸系滑剤等が挙げられる。上記滑剤は、1種が単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
滑剤の使用量は特に限定されない。たとえば、マトリックス樹脂であるポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01重量部以上、好ましくは3重量部以下である。
【0068】
光安定剤としては特に限定されず、例えば、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系及びシアノアクリレート系等の紫外線吸収剤、並びにヒンダードアミン系の光安定剤等が挙げられる。光安定剤は、1種が単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0069】
顔料としては特に限定されず、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、スレン系及び染料レーキ系等の有機顔料、並びに酸化物系、クロム酸モリブデン系、硫化物-セレン化物系及びフェロシアン化物系等の無機顔料等が挙げられる。上記顔料は、1種が単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0070】
(層厚)
第2層の厚みは、第1層の厚みおよび第3層の厚みのいずれよりも大であることが好ましい。これによって、排水管61が、第2層によってもたらされる耐圧性能をより効果的に得ることができる。さらに、第2層の厚みは、排水管61の総厚みに対して50%以上80%以下であることが好ましい。当該厚みが上記下限値以上であることにより、排水管61が、第2層によってもたらされる耐圧性能)をより効果的に得ることができる。当該厚みが上記上限値以下であることにより、第1層による内周面コート効果および第3層の継手との融着接合容易性を効果的に得ることができる。
【0071】
(排水管61の第3例)
排水管61が、中間層として金属層を含む3層以上の多層管であってもよい。金属層を構成する金属材料としては、例えば、鉄、真鋳、銅、ステンレス、アルミニウム、チタン、銀合金等が好適に用いられる。
【0072】
(排水管61の第4例)
排水管61が、黒鉛を含む外層と、ポリオレフィン系樹脂(例えばポリエチレン)を主成分として構成される樹脂層である内層と、を備える多層管であってもよい。この場合、外層が黒鉛を含んでいることで、耐候性に効果がある。一方で、内層に黒鉛が混ざると、例えば、内部に通水される水や、水に含まれる塩素などと接触することで、排水管61が割れてしまうおそれがある。そのため、内層は黒鉛を含まない層であることが望ましい。
【0073】
(排水管61の他の変形例)
排水管61が、第2例から第4例のような多層管である場合、それぞれの層が異なる色であってもよい。例えば、第4例の排水管61の変形例として、外層が、例えば、黒色系統である一方、内層が、例えば、青色系統であってもよい。
【0074】
以上説明したように、本実施形態に係る排水管61によれば、排水管61のSDR値が17未満である。よって、排水管61の外径に対して排水管61の肉厚が大きくなり、耐圧性能を高めることができる。さらに、この排水管61を建物の排水管61として用いる場合、建物の最下層において管の管内圧が高くなり易い。よって、これらのような排水管61として本実施形態に係る排水管61を適用した場合、耐圧性能を高めるという作用効果が顕著に奏功される。
また、排水管61の外径を同一としつつ排水管61の肉厚を変更することで、例えば、内径が異なる複数の排水管61を、複数の受口を有する継手を用いて接続するときにおいても、各受口の内径を同一とすることができる。
【0075】
排水管61の樹脂に繊維が混合されていたり、排水管61が、中間層として金属層を含む3層以上の多層管であったりする場合、排水管61の耐圧性能をより向上させることができる。
【0076】
耐圧性能が不足する管を雨水排水装置10に用いる場合、例えば設計時に、雨水排水装置10における管内圧を推定する。そして、必要に応じて、管を途中で縮径して流速を高めることで管内圧を下げたり、管内圧を開放するための通気管を設けたりする、という設計を検討する(なお、管を途中で縮径する形態の例示として、排水部材101、101A、101Cを後述する)。
これに対して、耐圧性能に優れた本実施形態に係る排水管61を用いることで、このような設計の必要性が生じ難くなり、雨水排水装置10の設計自由度が向上する。
【0077】
排水管61が、少なくとも第3管部54の一部に用いられたり、排水管61が、第3管部54の下端に用いられたりする場合、排水管61が、雨水排水装置10において管内圧が高くなり易い箇所に用いられることから、耐圧性能を高めるという作用効果が顕著に奏功される。
流入口51に、サイフォン現象を誘発可能なサイフォン誘発部11が設けられている。よって、排水管61内が排水で満たされて管内圧が高くなり易くなる。その結果、耐圧性能を高めるという作用効果が顕著に奏功される。ただし、サイフォン誘発部11は、流入口51とは異なる場所に設けられていてもよい。例えば、後述するように、サイフォン誘発部11が、配管102の一部(例えば、立て配管部52、54の一部など)に設けられていてもよい。
【0078】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0079】
雨水排水装置10は、上記構成に限られない。
例えば、図5に示す第1変形例に係る雨水排水装置10Aや、図6に示す第2変形例に係る雨水排水装置10Bのように、雨水排水装置10A、10Bに雨水貯留槽58が接続されていてもよい。この場合、継手57として、エルボに代えてチーズを採用することができる。そして、雨水排水装置10A、10Bは、継手57と雨水貯留槽58とを接続する第5配管59を備える。第5配管59には、第1バルブ60aが設けられている。第1バルブ60aは、例えば、雨水貯留槽58における雨水の貯留量に応じて開閉する。なお、図6に示す雨水排水装置10Bのように、第4管部55に、第2バルブ60bが更に設けられていてもよく、図5に示す雨水排水装置10Aのように、第4管部55に第2バルブ60bが設けられていなくてもよい。
【0080】
前記実施形態では、ルーフドレン11がサイフォン現象を誘発可能であるとしたが、本発明はこれに限られない。
例えば、ルーフドレン11が単なるごみ除けであり、雨水排水装置10、10A、10Bにおいて、サイフォン現象が生じなくてもよい。
さらに例えば、ルーフドレン11とは異なる部材がサイフォン現象を誘発可能であってもよい。この場合、ルーフドレン11と前記異なる部材のうちの両方がサイフォン現象を誘発可能であってもよく、ルーフドレン11と前記異なる部材のうちの前記異なる部材のみがサイフォン現象を誘発可能であってもよい。
このような前記異なる部材(サイフォン現象を誘発可能である部材)としては、例えば、図7から図9に示すような、第3変形例から第5変形例に係る排水部材101A、101B、101C(サイフォン誘発部、フィン付き継手、レデューサ)が例示される。排水部材101A、101B、101Cは、雨水排水装置10において上部配管102aと下部配管102bとの間に配置され、これらの上部配管102aと下部配管102bとを接合する。上部配管102aや下部配管102bは、例えば、前述の立て配管部52、横引き配管部53、立て配管部54の一部である。排水部材101A、101B、101Cは、例えば、立て配管部52、横引き配管部53、立て配管部54のうちのいずれか1か所以上に設けられていてもよく、立て配管部52に設けられていてもよい。なお以下では、上部配管102aや下部配管102bを特に区別しない場合、配管102ということがある。また、排水部材101A、101B、101Cを特に区別しない場合、排水部材101ということがある。
【0081】
(第3変形例)
図7に示すように、第3変形例の排水部材(雨水排水継手)101Aは、継手本体110と複数のフィン120とを有する。なお排水部材101Aは、配管102に設けられたレデューサである。排水部材101A(レデューサ)は、通水部分の断面積が縮小する構成を有する。図示の例では、排水部材101Aの通水部分の断面積がフィン120によって縮小しているが、フィン120を設けることに代えて、または、フィン120を設けることに加えて、通水部分の内径自体が小さくなっていることで、通水部分の断面積が縮小していてもよい。
継手本体110は、鉛直上下方向に沿った中心軸線O1を有する円筒管であり、上端に形成された入口側接続部(第1端部)111と、下端に形成された出口側接続部(第2端部)112と、これらの間に形成された直管部113と、を有する。
入口側接続部111はリング形状を有し、上部配管(配管)102aの下端に対して同軸に接続され、固定部103において固定されている。出口側接続部112もリング形状を有し、下部配管(配管)102bの上端に対して同軸に接続され、固定部103において固定されている。固定部103の詳細は後述する。
【0082】
直管部113は、入口側接続部111と出口側接続部112との間に挟まれた位置に配置され、入口側接続部111及び出口側接続部112と同軸をなす円筒管である。上部配管102a、排水部材101A、および下部配管102bそれぞれの呼び径を統一してもよい。この場合には、同じ種類(同じ呼び径)の管材で施工できるので、施工性に優れた雨水排水装置10とすることができる。
また、直管部113の内径寸法も、上部配管102aの内径寸法及び下部配管102bの内径寸法に等しい。従って、上部配管102a、排水部材101A、および下部配管102bそれぞれの内部を通って鉛直方向に延在する流路は、フィン120が配置された部分を除き、鉛直方向の各位置において同一内径を有する円柱状の内部空間を形成している。すなわち、上部配管102aから排水部材101Aを介して下部配管102bに向かう流路は、上部配管102a及び排水部材101A間の接続箇所、および、排水部材101A及び下部配管102b間の接続箇所のいずれの位置においても、段差がなくスムーズに接続されていることが好ましい。
【0083】
本変形例において、縮小部128は、フィン120により構成される。フィン120は、排水部材101Aの直管部113の内壁面113aに対して一体に形成された複数の羽根である。本変形例の場合は、4枚のフィン120を、直管部113の中心軸線O1を中心とした周方向に等角度間隔(90°間隔)で配置している。なお、フィン120の枚数は4枚のみに限らず、2枚、3枚、あるいは5枚以上、さらには10枚以上としてもよい。各フィン120は、互いに同じ形状寸法を有し、また管軸方向に沿った位置も全て同じになっている。
【0084】
すなわち、全てのフィン120は、図7に示すように、縦断面視あるいは側面視で二等辺三角形でかつ、その底辺が直管部113の内壁面113aに対して一体をなすように接続されている。よって、各フィン120は、内壁面113aから管軸(中心軸線)に向かって突出するようにそれぞれ形成されている。これらフィン120を形成する二等辺三角形の等辺の一方である直線状の上辺121が流路内の上流側(鉛直方向の上側)に配置され、他方である直線状の下辺122が流路内の下流側(鉛直方向の下側)に配置されている。そして、これら上辺121及び下辺122間が、接続点123において接続されている。ここで、雨水排水継手101の形状は上記に限定されず、第1端部111と第2端部112の間で、第1端部111の通水面積より小さい通水面積で構成される縮小部128を有していればよい。例えば、フィン120の長さ、形状は特に限定されない。例えば、フィン120の形状は、二等辺三角形の形状のみに限らず、例えば直角三角形の形状であってもよいし、あるいは台形の形状であってもよい。また、排水部材101Aの直管部113に代えて絞り管部を設け、絞り管部にフィンを設けてもよい。排水される雨水が圧力損失を起こすことを誘発する形態のフィン120の形状のレデューサであれば、公知のものを用いることができる。さらにフィン120がなくてもよく、単に絞り管部のみがあっても、排水部材11Aがレデューサとして機能することができる場合がある。
【0085】
各フィン120は、それぞれ、管軸を間に挟んで反対側の周方向位置に対向するように他のフィン120が配置されている。本変形例の場合は、上述の通り、管軸に沿ってみた場合、4枚のフィン120が等角度間隔で配置されているため、管軸を間に挟んで互いに対向する一対のフィン120が、二対、配置されることになる。
そして、これらフィン120の各上辺121は、流路内に向かってせり出した薄い傾斜面を形成している。これら傾斜面は、上辺121の最上端位置では内壁面113aに接続され、この最上端位置から下流側に向かうにしたがって内壁面113aからの突出高さが徐々に高くなり、そして接続点123の位置で内壁面113aからの突出高さが最も高くなる。このように配置された上辺121による薄い傾斜面は、その上流側から流れ落ちてくる雨水に面しているため、この雨水が傾斜面に当たることで流路抵抗を付与する。
【0086】
各フィン120の各下辺122も、流路内に向かってせり出した薄い傾斜面を形成している。これら傾斜面は、下辺122の最下端位置では内壁面113aに接続され、この最下端位置から上流側に向かうにしたがって内壁面113aからの突出高さが徐々に高くなり、そして接続点123の位置で内壁面113aからの突出高さが最も高くなる。つまり、各上辺121に形成された傾斜面と、各下辺122に形成された傾斜面は、互いに同じ形状寸法を有しており、その傾斜方向が、鉛直方向において接続点123を境として逆向きになっている。
【0087】
各フィン120の左側面124と右側面125は、それぞれ二等辺三角形の形状を有する平面であり、互いに平行をなしている。従って、各フィン120は、その上端位置から下端位置にかけての各位置で板厚が一定になっている。左側面124及び右側面125は流路内に入り込んでいるため、雨水が各フィン120を通過する際、左側面124及び右側面125に接することによる粘性抵抗を雨水に付与する。したがって、雨水に対し、上辺121によって形成された前記傾斜面が当たることによる抵抗と、左側面124及び右側面125との接触による粘性抵抗との両方を付与する。
【0088】
なお、フィン120の形状は、図7に例示した二等辺三角形の形状のみに限らず、例えば直角三角形の形状であってもよいし、あるいは台形の形状であってもよい。
【0089】
(第4変形例)
図8に示すように、第4変形例の排水部材(雨水排水継手)101Bは、継手本体150と、複数のフィン151と、フィン付きリング152と、を有する。
継手本体150は、鉛直上下方向に沿った管軸を有する円筒管である直管部113と、直管部113の上端に対して一体に形成された入口側接続部111と、直管部113の下端に対して同軸に接続された出口側接続部112とを有する。
【0090】
出口側接続部112には、各フィン151を内周面に有するフィン付きリング152が、接続部154aを介して一体に接続されている。
フィン付きリング152は、相対的に上流側に位置する上流端縁152aと、相対的に下流側に位置する下流端縁152bと、これら上流端縁152a及び下流端縁152b間を接続する縮流部152cと、縮流部152cの内周面に管軸を中心とした周方向に等角度間隔で配置された複数のフィン151とを有する。
【0091】
上流端縁152a及び下流端縁152bは、ともに環状をなすフランジ部分であり、直管部113の内周面の内径に近い外径寸法を有する。よって、上流端縁152a及び下流端縁152bは、直管部113の内壁面113aに対して隙間を開けずに接することができる。上流端縁152aの内周面は、管軸を含む断面で見た場合、その上流側から下流側に向かって徐々に厚みが増すようになっている。よって、上流端縁152aは、直管部113内に挿入配置されるものの、内壁面113aに対して過度に大きな段差を生じず、ここを通過していく雨水の流れを乱さずスムーズに通過させる。
下流端縁152bは、接続部154aの上端に対し、過度に大きな段差を生じないように滑らかに接続されている。よって、下流端縁152bは、ここを通過していく雨水の流れを乱さずスムーズに通過させる。また、下流端縁152bは、出口側接続部112の内周面との間に環状の隙間を形成しており、この環状の隙間内に直管部113の下端が水密に嵌め込まれるようになっている。
【0092】
縮流部152cは、管軸を含む断面で見た形状がアーチ状をなしており、管軸方向の上流側から途中位置までの上半分が縮流路を形成し、続いて途中位置から管軸方向の下流側に向かう下半分が拡大流路を形成している。すなわち、上半分では、管軸に沿った方向から見た円形開口の内径が、上流側から下流側に向かうにつれて徐々に縮径し、そして下半分との境位置で最小内径となっている。そして、続く下半分では、管軸に沿った方向から見た円形開口の内径が、上流側から下流側に向かうにつれて徐々に最小内径より拡径していき、そして接続部154aとの境界位置で接続部154aの内径と等しくなっている。
【0093】
各フィン151は、管軸方向の最も上流側にある上端151aと、管軸方向の最も下流側にある下端151bと、を有する略線状の突起である。各フィン151は、管軸方向に沿って見た場合、上端151aの直下よりも若干横方向にずれた位置に下端151bが位置している。よって、これら上端151a及び下端151b間を結ぶ直線を管軸と重ねたときに交差するように、各フィン151は傾斜配置されている。そして、互いに隣り合うフィン151間に、管軸と重ねたときに交差する方向に沿った傾斜流路が形成されている。
【0094】
各フィン151は、上端151a及び下端151b間を結ぶ直線に対して垂直をなす断面で見た場合、直線上の各位置で略三角形の断面形状を有する。そして、この三角形断面の高さが、上端151aの位置から直線の中央位置までは徐々に高さが増していき、続いて直線の中央位置から下端151bにかけては徐々に高さが低くなっていく。また、これらフィン151を対向視した場合の幅寸法は、上端151aの位置から直線の中央位置までは徐々に増していき、続いて直線の中央位置から下端151bにかけては徐々に狭くなっていく。つまり、各フィン151は、管軸方向の中央位置で最も厚く、この中央位置から上端151aに向かうにつれて徐々に薄くなる。同様に、各フィン151は、中央位置から下端151bに向かうにつれて徐々に薄くなる。また、各フィン151を、上端151a及び下端151b間を結ぶ直線を含んでかつ縮流部152cの壁部の板厚方向に沿った断面で見た場合は、縮流部152cの内周面に沿った凸型のアーチ状をなしている。
各フィン151は、雨水に加える流路抵抗を、管軸方向に沿って徐々に増していくように加えていくことが可能である。
【0095】
排水部材101Bによれば、各フィン151の上辺と流入口51(図1参照)との間の流路内に、流速を下げられた雨水が一時的に溜まるようになる。これにより、流入口51内に流れ込む雨水に空気が入り込みにくくなり、サイフォン現象を確実に誘発させることが可能である。しかも、各フィン151を通過した後の雨水は、整流済みであるため、渦を巻くことなくスムーズに排水されていく。
加えて、各フィン151が形成されたフィン付きリング152を出口側接続部112と一体化し、そして直管部113の下端に同軸に嵌め込むソケット式の構造を採用している。これにより、各フィン151の取り付けや交換、さらには掃除等のメンテナンスを容易に行うことが可能となっている。
【0096】
以上説明した第4変形例の雨水排水継手101Bによれば、第3変形例と同様に、サイフォン現象により排水性能を高く維持し、さらに、配管内のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0097】
(第5変形例)
図9に示すように、第4変形例の排水部材(雨水排水継手)101Cは、継手本体110と、内管161と、複数のフィン120と、を有する。
内管161は、継手本体110の内部において同軸上に配置されている。内管161は、管軸に沿った上流側から下流側に向かって先細りとなる逆円錐台形状に構成されている。内管161は、下方に向かって先細りとなる内壁面161a及び外壁面161bを有する。内管161の上端には円形入口開口が形成され、内管161の下端には上端よりも小径の円形出口開口が形成されている。内管161の外壁面161bは、一対のフィン120により、直管部113の内壁面113aに対して離間した状態で固定されている。
【0098】
これにより、排水部材101C内には、内壁面113aと外壁面161bとの間に形成された第1流路と、内壁面161a内に形成された第2流路との2つが形成されている。よって、この排水部材101C内に流れ込んだ雨水は、第1流路を流れるものと、第2流路を流れるものとの2つに分岐して流れる。これらのうち、第1流路を流れる雨水は、流路面積が縮小することによる流路抵抗を受けて減速する。また、第2流路を流れる雨水は、一対のフィン120に当たることで流路抵抗を受けて減速する。
【0099】
また、渦を巻きながら通過しようとする雨水を、各フィン120によって整流させることもできる。よって、排水部材101Cによれば、雨水に対して適切な流路抵抗を付与して流速を下げるとともに、雨水の整流も同時に行える。
【0100】
これにより、排水部材101Cの構成によれば、第1流路及び第2流路と流入口51との間の流路内に、流速を下げられた雨水が一時的に溜まるようになる。したがって、流入口51内に流れ込む雨水に空気が入り込みにくくなり、サイフォン現象を確実に誘発させることが可能である。
【0101】
以上説明した第5変形例の雨水排水継手101Cによれば、他の変形例と同様に、サイフォン現象により排水性能を高く維持し、さらに、配管102のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0102】
なお、雨水排水継手101はフィン120を有する上記の形態に限定されず、継手の内径そのものが小さくなっていてもよい。
【0103】
雨水排水継手101の直管部113の外周面には、保温材(グラスウールやロックウールなど)や遮音材を巻いても良い。縮小部128は流速が上がり、排水音が建造物100の屋内に伝わりやすい。このような構成とすることで、排水音が建造物100の屋内に拡散することを防ぐことができる。
【0104】
雨水排水継手101は耐火性を有していてもよい。具体的には、雨水排水継手101の外周面に耐火材を巻いたり、熱膨張性の耐火材層を継手に内層しても良い。耐火材層は熱膨張黒鉛を含有した、熱可塑性樹脂組成物で形成されても良い。このような構成とすることで、雨水排水継手101が防火区画貫通(スラブ貫通)しやすくなるとともに、耐火性の高い雨水排水装置10とすることができる。
【0105】
図10から図13に、雨水排水継手101と配管102(上部配管または下部配管)との固定部103の一例を示す。
本変形例において、雨水排水継手101の端部と配管102(上部配管または下部配管)の端部とは、機械的に接合されている。機械的な接合としては、例えば、フランジ接合、ハウジング継手を用いることができる。
【0106】
図10に、雨水排水継手101と配管102(上部配管または下部配管)がフランジ接合である場合の固定部103Aを示す。
雨水排水継手101と配管102(上部配管または下部配管)との固定がフランジ接合である場合、上部配管102aの下端、下部配管102bの上端、並びに雨水排水継手101の第1端部111及び第2端部112には加工管104が設けられている。加工管104は、配管102または雨水排水継手101とバット融着されている。加工管104と配管102及び雨水排水継手101との間のビード106は、加工管104と配管102、または加工管104と雨水排水継手101をバット融着するときに発生する。加工管104は、いわゆる射出成型品である。加工管104では、内径及び外径のうちの少なくとも一方が、実質的に全長にわたって同等ではない。加工管104には、フランジ131が設けられている。図示の例では、上部配管102aの下端に接続された加工管104と、雨水排水継手101の第1端部111に接続された加工管104と、がフランジ接合され固定されているが、下部配管102bとの接続が同様にフランジ接合で固定されていてもよい。
【0107】
各フランジ131(132)は、例えば、加工管104と一体である。各フランジ131(132)は、例えば、加工管104と別体であってもよい。フランジ131(132)は、加工管104に対して上下方向に相対的に移動可能であってもよい。言い換えると、フランジ131(132)が、いわゆるルーズフランジであってもよい。
また、フランジ131(132)として、加工管104とは独立したフランジ131(132)を含む継手部材(例えば、日本金属継手協会規格「JPF MDJ-002」で規定されている排水鋼管用可とう継手)を用いてもよい。
なお例えば、配管102および加工管104が、押出成形により一体成型されていて、フランジ131(132)が、一体成型された配管102および加工管104に後加工されてもよい。
【0108】
また、配管102及び雨水排水継手101は、配管102の外周面及び雨水排水継手101の外周面よりも径方向の外側でフランジ接合されている。配管102及び雨水排水継手101のフランジ接合として、フランジ131(132)を利用したボルト接合が採用されている。ボルト133及びナット134は、配管102の外周面及び雨水排水継手101の外周面よりも径方向の外側に配置されている。その結果、配管102及び雨水排水継手101は、配管102の外周面及び雨水排水継手101の外周面よりも径方向の外側でボルト133及びナット134により接合されている。
ボルト133は、フランジ131及びフランジ132を上下方向に貫通する。ボルト133の頭部と、ナット134と、は、フランジ131及びフランジ132を上下方向に挟む。これにより、配管102及び雨水排水継手101がボルト固定される。
【0109】
ここで、フランジ接合部は、パッキン135(ガスケット)を備える。配管102及び雨水排水継手101にパッキン接触部131a、132aが設けられている。パッキン接触部131a、132aは、パッキン135が接触する部分である。パッキン135は、配管102と雨水排水継手101との間を止水(シール)する。パッキン135は、弾性部材(例えば、ゴム)であってもよく、弾性部材でなくてもよい。パッキン135は、環状である。パッキン135は、例えば、フランジ131とフランジ132との間に配置されている。パッキン135は、フランジ131及びフランジ132とともに、ボルト133及びナット134によって上下方向に挟まれている。また、パッキン接触部131a、132aは、配管102の端面及び雨水排水継手101の端面に設けられている。これにより、配管102及び雨水排水継手101同士の接合部分におけるシール性を高めることができる。
よって、配管102に対する雨水排水継手101の水密性を確保できる。これにより、配管102内への空気の侵入、及び配管102からの水漏れを抑制し、サイフォン現象を確実に誘発させることができる。
【0110】
なお、本変形例では、配管102及び雨水排水継手101の端部に加工管104が設けられているが、加工管104がなくてもよい。例えば、配管102及び雨水排水継手101の端部に直接、フランジ131(132)が設けられていてもよい。この場合、押出成型により製造された配管102の端部を加工することで、配管102と一体のフランジ131(132)を形成してもよい。この場合、ビード106がなくてもよい。
【0111】
配管102及び雨水排水継手101の端部に加工管104が設けられてフランジ接合される場合、配管102及び雨水排水継手101はポリエチレン管であることが好ましい。配管102及び雨水排水継手101の端部に直接、フランジ131(132)が設けられている場合、その素材は特に限定されず、例えば、ステンレスであってもよく、炭素鋼であってもよく、ポリエチレンであってもよく、塩化ビニルであってもよい。また、配管102及び雨水排水継手101の端部に直接、フランジ131(132)が設けられている場合、耐火二層管を用いてもよい。耐火二層管とは、内管は塩化ビニル管であり、外管が繊維モルタルで加工されているものであり、水流音の遮音性、耐食性、耐震性、耐火性などに優れる。
【0112】
図11図12に、雨水排水継手101と配管102(上部配管または下部配管)とがハウジング継手により接合される場合の固定部103Bを示す。
図11に示すように、雨水排水継手101と配管102との固定部103Bは、接合部材130を備える。すなわち、フランジ接合に代えて、接合部材130を用いて配管102に雨水排水継手101を接合、固定する。
【0113】
接合部材130は、周方向に2分割されている。接合部材130は、継手として2つの分割体を備える。各分割体は、半円弧状の両端から突片136が突出されている。各分割体における半円弧状の部分は、重ね合わされることにより配管102及び雨水排水継手101の外周に沿って配置される。突片136は、配管102及び雨水排水継手101に対して周方向外側に突出される。2つの分割体は、各突片136がボルト133、ナット(図示せず)で接合される。
【0114】
ボルト133は、重ね合わされた2つの分割体の各突片136を水平方向に貫通する。ボルト133の頭部及びナットは、重ね合わされた各突片136同士を水平方向に挟み込む。これにより、2つの分割体が、配管102及び雨水排水継手101を水平方向に挟み込んで接合する。ボルト133が絞め込まれることで、2つの分割体(すなわち、接合部材130)によって配管102及び雨水排水継手101を掴む強度が高くなる。
【0115】
なお、接合部材130に代えて、日本水道協会規格「水道用ポリエチレン管金属継手」(JWWA B 116:2012)に準ずる他の構成を採用することも可能である。例えば、ボルト133が、接合部材130の突片136を水平方向ではなく上下方向に貫通してもよい。この場合であっても、ボルト133が絞め込まれることで、接合部材130によって本管及び雨水排水継手101を掴む強度が高くなる構成を採用することができる。
【0116】
ここで、図12に示すように、加工管104の外周には、溝部137が設けられている。溝部137は、加工管104の外周の周方向に延びる溝である。溝部137は、周方向の全周にわたって連続して延びている。各溝部137には、接合部材130の軸方向の両端がそれぞれ嵌合する。これにより、接合部材130による配管102及び雨水排水継手101の接合がより強固になる。
【0117】
また、パッキン135が、配管102及び雨水排水継手101に対して径方向の外側から嵌合している。1つのパッキン135が、配管102側及び雨水排水継手101側に跨って嵌合されている。パッキン135は、接合部材130によって径方向の外側から覆われている。パッキン135は、接合部材130における上端と下端との間に位置している。
【0118】
加工管104の外周面には、パッキン接触部131a、132aが設けられている。パッキン接触部131a、132aは、加工管104の外周面のうち、グルーブよりも接合部側に位置する部分である。このように、パッキン接触部131a、132aが、配管102及び雨水排水継手101の端面ではなく外周面にあることで、配管102及び雨水排水継手101の端面同士が突き当たる。
【0119】
このような構造によれば、配管102に対する雨水排水継手101の水密性を確保できる。これにより、配管102内への空気の侵入、及び配管102からの水漏れを抑制し、サイフォン現象を確実に誘発させることができる。
【0120】
なお、配管102及び雨水排水継手101の端部に加工管104がなくてもよい。例えば、配管102の端部に直接、グルーブが設けられていてもよい。この場合、押出成型により製造された配管102の端部を、例えば切削加工することで、配管102にグルーブを形成することができる。この場合、ビード106がなくてもよい。配管102及び雨水排水継手101の端部に加工管104が設けられて接合部材130により接合される場合、配管102及び雨水排水継手101はポリエチレン管であることが好ましい。配管102及び雨水排水継手101の端部に直接、接合部材130が設けられる場合、その素材は特に限定されず、例えば、ステンレスであってもよく、炭素鋼であってもよく、ポリエチレンであってもよく、塩化ビニルであってもよい。
【0121】
上記のようなネジを使用するハウジング継手やフランジ接合の場合、ネジが排水時の振動で緩まないように、ばねワッシャーやUナット、ダブルナットを用いて固定してもよい。
【0122】
図13に、雨水排水継手101と配管102(上部配管または下部配管)が電気融着で固定される場合の固定部(電気融着部)103Cを示す。
電気融着継手は、本体141と、電熱線142と、端子143と、を含む。本体141は、ポリオレフィン系樹脂製の管(直管)である。本体141内には、配管102及び雨水排水継手101の端部が嵌合されている。電熱線142は、本体141に埋設されている。電熱線142は、本体141の周方向に螺旋をなしている。端子143は、電熱線142に印加する。端子143は、本体141に2つ設けられている。2つの端子143には、図示しない電源の正極及び負極が接続される。端子143に接続された電源は、電熱線142に電圧を印加する。電熱線142が発熱し、本体141が配管102及び雨水排水継手101とともに溶融することで、電気融着接合が実現される。
【0123】
以上説明したように、前記変形例の雨水排水継手101は、雨水が流入する第1端部111と、雨水が流出する第2端部112と第1端部111と第2端部112の間で、第1端部111の通水面積より小さい通水面積で構成される縮小部128と、を有し、第1端部111と第2端部112とが、他の部材にボルト固定される。
大型で排水量の多い雨水排水装置10では、縮小部128における流速の上昇が顕著となり、排水管の振動が大きくなる。このとき、上記のように、第1端部111と第2端部112が配管102に対してボルト固定されていれば、排水管と縮小部128の接続部において応力が集中した場合であっても、水漏れの発生を防止することができる。よって、高い排水量を維持したまま、接続部の強度を維持することができる。
【0124】
また、前記変形例における雨水排水継手101は、雨水が流入する第1端部111と、雨水が流出する第2端部112と第1端部111と第2端部112の間で、第1端部111の通水面積より小さい通水面積で構成される縮小部128と、を有し、第1端部111と第2端部112とが、他の部材に電気融着により接合されてもよい。
第1端部111と第2端部112が配管102に対して電気融着されていれば、配管102と縮小部128の接続部において応力が集中した場合であっても、水漏れの発生を防止することができる。よって、高い排水量を維持したまま、接続部の強度を維持することができる。また、第1端部111と第2端部112が配管102に対して電気融着される場合、施工に必要なスペースが小さい。そのため、特に施工スペースが制限される屋内配管において、施工スペースを確保することが容易となる。
【0125】
また、縮小部128が管軸中心に向かって延びるフィン120を有していてもよい。
このような構成であれば、配管102から各フィン120の上辺121までの間の流路内に、流速を下げられた雨水が一時的に溜まるようになるので、雨水排水継手101に流れ込む雨水に空気が入り込みにくくなり、サイフォン現象を確実に誘発させることが可能である。しかも、各フィン120を通過した後の雨水は、整流済みであるため、渦を巻くことなくスムーズに排水されていく。よって、より高い排水量を維持することができる。
【0126】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【実施例0127】
実施例1~6、比較例1、2の排水管を準備した。
実施例1~3、比較例1、2の排水管は、いずれも上記第1例の高密度ポリエチレン管である。実施例1~3、比較例1、2では、SDR値を異ならせた。
実施例4、5の排水管は、いずれも上記第2例の多層管(中間層が繊維補強樹脂層)である。実施例4では、繊維の配向方向が管軸方向である。実施例5では、繊維の配向方向が周方向である。
実施例6の排水管は、上記第3例の多層管(中間層が金属層)である。
【0128】
これらの各排水管について、最高許容圧力、破壊水圧をそれぞれ求めた。
最高許容圧力は、設計時の許容圧力を示す。最高許容圧力が高いほど耐圧性能が高く、自由度の高い配管設計が行えることを示す。
破壊水圧は、これ以上の圧力がかかると管が破壊する圧力を示す。通常排水時、管内圧力に余裕を持った配管設計を行うが、管内の詰まりやバルブ誤作動などのトラブルにより短期的に最高許容ある力より高い圧力が発生した場合でも、破壊水圧以下であれば漏水は発生しない。破壊水圧が低いと漏水のリスクが高まり、高いほど安全な配管材料と言える。
【0129】
そして、最高許容圧力についての評価1と、破壊水圧についての評価2と、評価1、2に基づく総合評価と、を実施した。結果を以下の表1に示す。
【0130】
【表1】
【0131】
なお評価1、評価2、総合評価の基準はそれぞれ以下の通りである。
【0132】
(評価1)
〇:管内圧力が高まりやすい高層建物(70m程度)でも、自由度の高い配管設計が可能である。
△:低層建物(70m以下程度)であれば、自由度の高い配管設計が可能である。
×:耐圧性能が低く、配管自由度が低い。
【0133】
(評価2)
〇:破壊水圧が高く、高層建物(70m程度)でもトラブル発生時、短期的な耐圧性能を発揮する。
△:低層建物(70m以下程度)であれば、短期的な破壊水圧を発揮する。
×:破壊水圧が低く、トラブル発生時高い圧力で漏水を生じるリスクがある。
【0134】
(総合評価)
〇:評価1、2がいずれも〇。
△:評価1、2の一方が〇、他方が△。または、評価1、2の両方が△。
×:評価1、2の1つ以上が×。
【0135】
以上から、実施例1~6の排水管は、比較例1、2の排水管よりも総合評価が優れていることが確認できた。
【符号の説明】
【0136】
10、10A、10B 雨水排水装置
51 流入口
52 第1管部
53 第2管部
54 第3管部
55 第4管部
56 雨水マス
57 継手
58 雨水貯留槽
59 第5配管
60a 第1バルブ
60b 第2バルブ
D 外径
T 肉厚
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13