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特開2024-118450ロジン系ポリエステル樹脂、インキ用組成物及びグラビアインキ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118450
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】ロジン系ポリエステル樹脂、インキ用組成物及びグラビアインキ
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/137 20060101AFI20240823BHJP
   C09D 11/104 20140101ALI20240823BHJP
【FI】
C08G63/137
C09D11/104
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024021726
(22)【出願日】2024-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2023023906
(32)【優先日】2023-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】張 慶輝
(72)【発明者】
【氏名】内野 拓耶
(72)【発明者】
【氏名】四方 亀
(72)【発明者】
【氏名】西尾 基貴
【テーマコード(参考)】
4J029
4J039
【Fターム(参考)】
4J029AA01
4J029AB01
4J029AD02
4J029AD03
4J029AE11
4J029BA02
4J029BA03
4J029BA04
4J029BA05
4J029BA07
4J029BA08
4J029BA09
4J029BA10
4J029BD02
4J029BD04A
4J029BD06A
4J029BD07A
4J029BF09
4J029BF10
4J029BF18
4J029FC01
4J029FC02
4J029FC03
4J029FC04
4J029FC05
4J029FC07
4J029FC08
4J029FC41
4J039AE06
4J039CA04
4J039DA05
4J039EA36
4J039EA39
4J039EA48
4J039GA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】密着性、耐ブロッキング性、耐摩擦性、耐油性及び耐溶剤性に優れるインキを与えるロジン系ポリエステル樹脂を提供することにある。
【解決手段】ロジン類(A)、α,β-不飽和ジカルボン酸(B)及びポリオール(C)を含む反応成分の生成物であり、
前記生成物の水酸基価が100~250mgKOH/gであるロジン系ポリエステル樹脂;当該ポリエステル樹脂を含むインキ用組成物;当該インキ用組成物を含むグラビアインキに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロジン類(A)、α,β-不飽和ジカルボン酸(B)及びポリオール(C)を含む反応成分の生成物であり、
前記生成物の水酸基価が100~250mgKOH/gであるロジン系ポリエステル樹脂。
【請求項2】
前記生成物の酸価が40~200mgKOH/gである請求項1のロジン系ポリエステル樹脂。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のロジン系ポリエステル樹脂を含むインキ用組成物。
【請求項4】
請求項3に記載のインキ用組成物を含むグラビアインキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロジン系ポリエステル樹脂、インキ用組成物及びグラビアインキに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷方式の1つに、グラビアシリンダーを使用し、印圧をかけて被印刷物にインキを転移させ画像を形成するグラビア印刷があり、その方式は通販カタログや雑誌等の出版物、商品パッケージ等の包装物等の用途で適用されている。その印刷の時に使用されるインキがグラビアインキであり、インキ性能として、基材に対する密着性、耐ブロッキング性、耐摩擦性等が要求されている。また最近では、環境負荷の低減からインキ用途でもロジン系変性樹脂等のバイオマス素材が注目されている。
【0003】
このような技術として、例えば、本出願人は、ロジン、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸および多価アルコールからなる樹脂酸反応物と2種以上の金属化合物とを反応させて得られる印刷インキ用バインダー(特許文献1)を開示している。印刷インキに用いるロジン変性樹脂として、ロジン類と、ポリオール類との反応物であり、ロジン類が特定量のモノテルペン類およびセスキテルペン類を含む発明も開示されている(特許文献2)。これらの樹脂では、密着性が発現される一方、ポリオールが少ないために低い水酸基価となり、耐ブロッキング性と耐摩擦性が不十分である、又は油や溶剤に対する耐性(以下、前者を“耐油性”、後者を“耐溶剤性”ともいう。)に課題がある等、両立が困難なものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-041486号公報
【特許文献2】特開2022-176707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、密着性、耐ブロッキング性、耐摩擦性、耐油性及び耐溶剤性に優れるインキ用組成物及びグラビアインキを与えるロジン系ポリエステル樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題解決に鋭意検討したところ、特定の物性を有するロジン系ポリエステル樹脂を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のロジン系ポリエステル樹脂、インキ用組成物及びグラビアインキに関する。
【0007】
1.ロジン類(A)、α,β-不飽和ジカルボン酸(B)及びポリオール(C)を含む反応成分の生成物であり、
前記生成物の水酸基価が100~250mgKOH/gであるロジン系ポリエステル樹脂。
【0008】
2.前記生成物の酸価が40~200mgKOH/gである前項1のロジン系ポリエステル樹脂。
【0009】
3.前項1又は2に記載のロジン系ポリエステル樹脂を含むインキ用組成物。
【0010】
4.前項3に記載のインキ用組成物を含むグラビアインキ。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るロジン系ポリエステル樹脂によれば、インキ用組成物とした際に、密着性、耐ブロッキング性、耐摩擦性、耐油性及び耐溶剤性に優れ、当該組成物は、特にグラビアインキに好適である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明における各含有量、物性値等の数値範囲は、項目ごとに記載された数値から適宜選択して設定される。例えば、数値Mがm、m、m(なお、m<m<mとする。)である場合、その数値範囲としては、m以上、m以上、mを超える、mを超える、m以下、m以下、m未満、m未満、m以上m以下(m~m)、m以上m以下(m~m)、m以上m以下(m~m)、m以上m未満、m以上m未満、m以上m未満、mを超えてm以下、mを超えてm以下、mを超えてm以下、mを超えてm未満、mを超えてm未満、mを超えてm未満等が挙げられる。
【0013】
本発明のロジン系ポリエステル樹脂は、ロジン類(A)(以下、(A)成分という。)、α,β-不飽和ジカルボン酸(B)(以下、(B)成分という。)及びポリオール(C)(以下、(C)成分という。)を含む反応成分の生成物である。
【0014】
(A)成分は、ロジン類であり、天然ロジン、変性ロジンが挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0015】
天然ロジンとは、マツ科の植物から採取される樹脂酸の混合物であり、生産方法によって、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンに分類される。当該樹脂酸としては、アビエチン酸を主とし、それ以外にはネオアビエチン酸、パラストリン酸、デヒドロアビエチン酸、レボピマル酸、ピマル酸、イソピマル酸、サンダラコピマル酸等が含まれる。また、天然ロジンとして、ジヒドロアガチン酸、コムン酸等を含んだものも使用できる。これらは、単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0016】
マツ科の植物としては、例えば、馬尾松、赤松、黒松、大王松、テーダ松、ケシア松、メルクシ松、スラッシュ松、湿地松、カリビア松等が挙げられる。
【0017】
また、天然ロジンとして、当該ロジンを精製させたもの(以下、精製ロジンともいう。)も使用できる。
【0018】
精製ロジンは、例えば、減圧蒸留法、抽出法、再結晶法等の精製方法により、天然ロジンを精製することにより得られる。また、精製条件としては、特に限定されない。
【0019】
減圧蒸留法の場合は、温度が200~300℃程度であり、減圧度が60~3000Paで蒸留を行う。
【0020】
抽出法の場合は、天然ロジンをアルカリ水溶液とし、該水溶液中で溶けていない不ケン化物を各種の有機溶剤により抽出した後、残った水層を中和する。
【0021】
再結晶法の場合は、(a1)成分を良溶剤としての有機溶剤に溶解し、ついで該有機溶剤を留去して濃厚な溶液とし、更に貧溶剤としての有機溶剤を加えることにより得られる。
【0022】
良溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;クロロホルム等の有機ハロゲン;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0023】
貧溶剤としては、例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、デカリン等の脂環族炭化水素等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0024】
変性ロジンとは、前記天然ロジンを各種反応により変性させたものをいう。変性ロジンとしては、例えば、天然ロジンの部分水素化物(部分水素化ロジン)、天然ロジンの完全水素化物(完全水素化ロジン)、天然ロジンの不均化物(不均化ロジン)、天然ロジンの重合物(重合ロジン)、重合ロジンの部分水素化物(部分水素化重合ロジン)、重合ロジンの完全水素化物(完全水素化重合ロジン)又はこれらのエステル化物(部分水素化ロジンエステル、完全水素化ロジンエステル、不均化ロジンエステル、重合ロジンエステル、部分水素化重合ロジンエステル、完全水素化ロジン重合エステル)等が挙げられる。また、これらの変性ロジンは、変性した後に精製したものも使用できる。さらに、変性ロジン中には、未反応の天然ロジンが含まれていても良い。これらは、単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0025】
これらの(A)成分の中でも、(B)成分及び/又は(C)成分と反応しやすい点から、天然ロジンが好ましい。
【0026】
(B)成分は、α,β-不飽和ジカルボン酸であり、2つのカルボキシ基(-COOH)を有し、かつ、少なくとも1つのC=O結合のすぐ隣で互いに隣接するα炭素原子とβ炭素原子との間で、二重結合又は三重結合を有する化合物を指す。
【0027】
(B)成分としては、例えば、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、ムコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。また、(B)成分は、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩やアンモニウム塩等の塩で使用しても良い。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。中でも、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましい。
【0028】
(B)成分の使用量としては、後述する酸価及び水酸基価を有するロジン系ポリエステル樹脂が得られ、当該樹脂を用いて形成されるインキ皮膜が密着性、耐ブロッキング性、耐摩擦性、耐油性及び耐溶剤性に優れたものとなる点から、不揮発分重量で、(A)成分100重量部に対して、10~30重量部が好ましく、12~27重量部がより好ましく、20~25重量部がさらに好ましい。
【0029】
(C)成分は、ポリオールであり、少なくとも2つのヒドロキシ基(-OH)を有する化合物を指す。(C)成分としては、脂肪族ポリオール、脂環族ポリオール、芳香族ポリオールに分類されるが、脂肪族ポリオール、脂環族ポリオールが好ましい。なお、(C)成分は、単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0030】
脂肪族ポリオールとしては、例えば、
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、2-エチル-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、2,2,4-トリメチルペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール等の脂肪族ジオール;
グリセリン、ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリエチロールエタン、トリメチロールプロパン等の脂肪族トリオール;
ジグリセリン、エリスリトール、トレイトール、ペンタエリスリトール等の脂肪族テトラオール;
アラビニトール、キシリトール等の脂肪族ペンタオール;
ソルビトール、マンニトール、イジトール、ジペンタエリスリトール等の脂肪族ヘキサオール;
トリペンタエリスリトール等の脂肪族オクタノール等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0031】
脂環族ポリオールとしては、例えば、
1,2-シクロペンタンジオール、1,3-シクロペンタンジオール、1,1-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロオクタンジオール、1,5-シクロオクタンジオール、5-ノルボルネン-2,2-ジメタノール、5-ノルボルネン-2,3-ジメタノール、ノルボルナン-2,3-ジメタノール、ノルボルナン-2,5-ジメタノール、2,6-デカヒドロナフタレンジメタノール、1,3-アダマンタンジオール、1,4-アダマンタンジオール、2,4-アダマンタンジオール、トリシクロデカンジメタノール等の脂環族ジオール;
1,2,3-シクロペンタントリオール、1,2,4-シクロペンタントリオール、1,2,3-シクロヘキサントリオール、1,3,5-シクロヘキサントリオール、1,2,3-シクロオクタントリオール等の脂環族トリオール;
1,2,3,4-シクロペンタンテトラオール、1,2,3,4-シクロヘキサンテトラオール、1,2,3,5-シクロヘキサンテトラオール、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラオール、1,2,3,4-シクロオクタンテトラオール、1,2,5,6-シクロオクタンテトラオール等の脂環族テトラオール等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0032】
これらの中でも、脂肪族ポリオールが好ましく、脂肪族トリオール、脂肪族テトラオールがより好ましく、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールがさらに好ましい。
【0033】
(C)成分の使用量としては、後述する酸価及び水酸基価を有するロジン系ポリエステル樹脂が得られ、当該樹脂を用いて形成されるインキ皮膜が密着性、耐ブロッキング性、耐摩擦性、耐油性及び耐油性に優れたものとなる点から、不揮発分重量で、(A)成分100重量部に対して、10~40重量部が好ましく、15~35重量部がより好ましく、20~30重量部がさらに好ましい。
【0034】
また、本発明のロジン系ポリエステル樹脂には、添加剤が含まれても良い。添加剤としては、例えば、脱水剤、結晶核剤、可塑剤、流動性改良剤、耐候剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。また添加剤は、ロジン系ポリエステル樹脂の製造前、製造中、製造後に適宜添加できる。
【0035】
添加剤の含有量としては、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100重量部に対して、5重量部以下が好ましく、2重量部以下がより好ましい。
【0036】
本発明のロジン系ポリエステル樹脂の製造方法としては、例えば、(A)成分、(B)成分及び(C)成分、必要に応じて、前記添加剤を反応させること等が挙げられる。また、添加順序や添加方法については特に限定されず、これらの成分を一括して反応させても良く、(A)成分と(B)成分とを反応させてから、(C)成分を加えて反応させても良い。また、反応条件としては、反応温度が150~290℃(好ましくは180~260℃)であり、反応時間が3~24時間(好ましくは3~12時間)である。さらに、圧力も常圧下、加圧下、減圧下を自由に選択して反応させることができる。
【0037】
前記の反応においては、触媒を添加しても良い。触媒としては、例えば、硫酸、塩化水素、三フッ化ホウ素等の無機酸;シュウ酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等の有機酸;、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフェート、トリフェニルホスファイト、トリシクロヘキシルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフェート、トリシクロヘキシルホスファイト等のリン化合物;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛等の金属酢酸塩;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム等の金属炭酸塩;トリエチルアミン、トリフェニルアミン等のアミン等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。また、触媒の使用量としては、(A)成分100重量部に対して、0.1~3重量部が好ましく、0.1~2重量部がより好ましい。
【0038】
得られたロジン系ポリエステル樹脂の物性としては、水酸基価が100~250mgKOH/gである。ここでの水酸基価は、JIS K0070に準拠した方法で測定した値である。水酸基価が100mgKOH/g未満であると、インキ皮膜が充分に形成されず、耐ブロッキング性及び耐摩擦性が劣りやすくなり、250mgKOH/gを超えると、反応系中の(C)成分が多いため、未反応の(C)成分が残存しやすくなる、又は加熱によって(C)成分が揮発し、ロジン系ポリエステル樹脂の収率が低下しやすくなる。また、前記の数値範囲よりロジン系ポリエステル樹脂の水酸基価の上限及び下限としては、例えば、100mgKOH/g、105mgKOH/g、110mgKOH/g、115mgKOH/g、120mgKOH/g、125mgKOH/g、130mgKOH/g、135mgKOH/g、140mgKOH/g、145mgKOH/g、150mgKOH/g、160mgKOH/g、170mgKOH/g、180mgKOH/g、190mgKOH/g、200mgKOH/g、210mgKOH/g、220mgKOH/g、230mgKOH/g、240mgKOH/g、250mgKOH/gが挙げられる。
【0039】
また、ロジン系ポリエステル樹脂の酸価の上限及び下限としては、例えば、40mgKOH/g、50mgKOH/g、60mgKOH/g、70mgKOH/g、80mgKOH/g、90mgKOH/g、100mgKOH/g、110mgKOH/g、120mgKOH/g、130mgKOH/g、140mgKOH/g、150mgKOH/g、160mgKOH/g、170mgKOH/g、180mgKOH/g、190mgKOH/g、200mgKOH/g等が挙げられる。中でも優れた耐溶剤性、耐油性の点から、40~200mgKOH/gが好ましい。なお、ここでの酸価は、JIS K5601に準拠した方法で測定した値である。
【0040】
本発明のインキ用組成物は、ロジン系ポリエステル樹脂を含むものである。当該組成物は、例えば、フレキソインキ、オフセットインキ、枚葉インキ、グラビアインキ等で使用できるが、特にグラビアインキとして好適である。
【0041】
インキ用組成物におけるロジン系ポリエステル樹脂の含有量としては、インキ皮膜が優れた密着性、耐ブロッキング性、耐摩擦性、耐油性及び耐溶剤性を示しやすくする点から、インキ用組成物の全成分を100重量%として、0.1~10重量%が好ましく、0.1~5重量%がより好ましい。なお、「インキ用組成物の全成分」とは、ロジン系ポリエステル樹脂、並びに、本発明のロジン系ポリエステル樹脂以外のバインダー樹脂、顔料、有機溶剤及び添加剤等の全ての成分を意味し、例えば、ロジン系ポリエステル樹脂、本発明のロジン系ポリエステル樹脂以外のバインダー樹脂の形態が溶液(溶質+溶剤)の場合には、その溶剤も当該成分に含まれる(以下同様)。
【0042】
本発明の印刷インキ用組成物には、本発明のロジン系ポリエステル樹脂以外のバインダー樹脂(以下、単に“バインダー樹脂”ともいう。)を含んでも良い。バインダー樹脂としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、ゴム系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良く、また市販品を使用することもできる。
【0043】
ポリウレタン系樹脂としては、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとの反応生成物、当該反応から得られる末端イソシアネートのプレポリマーと、鎖伸長剤との反応生成物等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0044】
具体的な反応成分、反応条件等としては、例えば、特開2012-153883号公報、特開2004-059894号公報、特開2010-053340号公報等に記載されたもの等が挙げられる。
【0045】
セルロース樹脂としては、例えば、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース等が挙げられる。また、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0046】
ゴム系樹脂としては、例えば、塩化ゴム、環化ゴム等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0047】
ポリアミド系樹脂とは、ポリカルボン酸とポリアミンとの重縮合物である。特には、後述する有機溶剤に可溶な熱可塑性ポリアミド樹脂が好ましい。
【0048】
ポリカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、スベリン酸、グルタル酸、フマル酸、ピメリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、テレフタル酸、1、4-シクロヘキシルジカルボン酸、トリメリット酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸、重合脂肪酸等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0049】
ここで、重合脂肪酸とは、エチレン性二重結合を有する脂肪酸の環化反応等により得られるもので、一塩基性脂肪酸、二量化重合脂肪酸(ダイマー酸)、三量化重合脂肪酸(トリマー酸)等を含むものである。なお、ダイマー酸又は重合脂肪酸を構成する脂肪酸としては、は、大豆油、パーム油、米糠油等の天然油に由来するものが挙げられ、オレイン酸、リノレン酸、リノール酸から得られるものが好ましい。
【0050】
ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミン;シクロヘキシレンジアミン、イソホロンジアミン等の脂環族ポリアミン;キシリレンジアミン、芳香族ポリアミンとしてはフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ポリアミン等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0051】
ポリカルボン酸とポリアミンとの使用比率としては、カルボン酸基及びアミノ基の等量比で、(カルボン酸基)/(アミノ基)=0.8~1.2である。また反応条件としては、180~230℃で、不活性ガス存在下で行うことが好ましい。また、脱水反応のため、分留設備を備えていることが好ましい。また前記反応は減圧下で行っても良い。
【0052】
アクリル系樹脂としては、例えば、エチレン性二重結合を有するモノマーを重合開始剤の存在下で重合させたもの等が挙げられる。エチレン性二重結合を有するモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジn-プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノn-プロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノn-プロピル(メタ)アクリレート、ジn-プロピルアミノn-プロピル(メタ)アクリレート等のアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン類;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0053】
酢酸ビニル系樹脂としては、例えば、酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0054】
バインダー樹脂の形態としては、固体、溶液、エマルジョン等が挙げられる。
【0055】
バインダー樹脂の含有量としては、インキ用組成物の全成分を100重量%として、0.1~10重量%が好ましく、0.1~7.5重量%がより好ましい。
【0056】
本発明のインキ用組成物は、更に顔料を含んでも良い。
【0057】
顔料としては、例えば、有機顔料、無機顔料を挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0058】
有機顔料としては、アゾ系、ジアゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、チオインジゴ顔料、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、ジクトピロロピロール系、イソインドリン系、カーボンブラック(例えば、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等)等が挙げられる。
【0059】
無機顔料としては、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、ベンガラ、アルミナ、マイカ(雲母)等が挙げられる。また、酸化チタンは、シリカ又はアルミナで表面被覆されたものも使用できる。
【0060】
顔料の含有量としては、インキ用組成物の全成分を100重量%として、2~40重量%が好ましく、5~35重量%がより好ましい。
【0061】
また、本発明のインキ用組成物は、更に有機溶剤を含んでも良い。
【0062】
有機溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル等のエステル;メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0063】
有機溶剤の含有量としては、インキ用組成物の全成分を100重量%として、25~70重量%が好ましく、30~60重量%がより好ましい。
【0064】
本発明のインキ用組成物には、更にロジン系ポリエステル樹脂、バインダー樹脂、顔料及び有機溶剤以外の添加剤を含んでも良い。
【0065】
添加剤としては、例えば、顔料分散剤、界面活性剤、ワックス、帯電防止剤、可塑剤等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0066】
添加剤の含有量としては、インキ用組成物の全成分を100重量%として、5重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましい。
【0067】
本発明のグラビアインキは、インキ用組成物を含むものである。
【0068】
インキ用組成物及びグラビアインキは、ロジン系ポリエステル樹脂、必要に応じて、バインダー樹脂、顔料、有機溶剤及び添加剤を、高速ミキサー、ロールミル、ボールミル、アトライター、サンドミル等を用いて練肉し、適切なインキ恒数となるように調製したものである。成分の添加順序、練肉時間等も適宜調整しても良い。
【実施例0069】
以下、実施例を挙げて、更に本発明を具体的に説明するが、本発明を限定するものではない。また特段の断りがない限り、「部」、「%」はいずれも重量基準である。
【0070】
(水酸基価)
JIS K0070に準拠して、ロジン系ポリエステル樹脂の水酸基価を測定した。
【0071】
(酸価)
JIS K5601に準拠して、ロジン系ポリエステル樹脂の酸価を測定した。
【0072】
実施例1
撹拌装置、コンデンサー、温度計、分水器及び窒素導入管を備えた反応容器に、ガムロジン100.0部を仕込み、150~170℃で加熱溶融した後に、マレイン酸15部を加えて、200℃で1.5時間反応させた。次いで、グリセリン20部及び水酸化リチウム1.5部を加えて、240~260℃で所定の酸価となる(酸価の値は表1を参照)まで反応させて、ロジン系ポリエステル樹脂を得た。得られたロジン系ポリエステルの水酸基価及び酸価を表1に示す(以下同様)。
【0073】
実施例2~9、比較例2~5
表1に示す反応成分及び使用量に変更して、実施例1と同様の方法で行い、ロジン系ポリエステル樹脂をそれぞれ得た。なお、実施例9については、表1中の反応成分及び使用量に加えて、水酸化リチウム1.5部をトリフェニルホスファイト1.0部に変更して行った。
【0074】
比較例1
撹拌装置、コンデンサー、温度計、分水器及び窒素導入管を備えた反応容器に、ガムロジン100.0部を仕込み、160℃で加熱溶融した後に、マレイン酸27部を加えて、200℃で2時間反応させて、マレイン酸変性ロジンが得られた。
【0075】
【表1】
【0076】
評価例1~9、比較評価例1~5
各ロジン系ポリエステル樹脂の不揮発分濃度が50%となるように、イソプロピルアルコール:酢酸エチル=1:2(重量比)の混合溶液を加えて混合した。225mlマヨネーズ瓶にガラスビーズ80.0部、各ロジン系ポリエステル樹脂の溶液7.2部(不揮発分:3.6部)、(B)成分として、ポリウレタン系樹脂(商品名:「TSP-3477」、不揮発分濃度:30%、荒川化学工業(株)製)18部(不揮発分:5.4部)、顔料として、酸化チタン30部、有機溶剤として、イソプロピルアルコール:酢酸エチル=1:2(重量比)の混合溶液44.8部を仕込み、ペイントシェーカーで60分混練し、インキ用組成物を得た。
【0077】
これらのインキ用組成物をグラビアインキとしてそのまま用いて、以下の評価を行った。
【0078】
<密着性>
延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)の上に、バーコーターを用いて、各インキ用組成物を塗工してドライヤーで24時間後、インキ皮膜の面にセロテープ(登録商標)を圧着し、はがした時のインキの残り具合を観察し、評価基準の3以上を良好とした。結果を表2に示す(以下同様)。
(評価基準)
5.インキ皮膜の面の剥離面積が20%未満であった。
4.インキ皮膜の面の剥離面積が20%以上40%未満であった。
3.インキ皮膜の面の剥離面積が40%以上60%未満であった。
2.インキ皮膜の面の剥離面積が60%以上80%未満であった。
1.インキ皮膜の面の剥離面積が80%以上であった。
【0079】
<耐ブロッキング性>
ナイロンフィルムの上に、バーコーターを用いて、各インキ用組成物を塗工し、ドライヤーで10秒乾燥させた後、室温で24時間養生した。インキ皮膜の面と、未塗工のナイロンフィルムを合わせ、5kg/cmの荷重をかけて70℃で24時間放置した後、ナイロンフィルムを剥がした時の様子から耐ブロッキング性を評価し、評価基準の4以上を良好とした。
(評価基準)
5:フィルムを剥がす際に抵抗がなく、印刷面からインキが剥離しなかった。
4:フィルムを剥がす際に抵抗がややあり、印刷面からインキが剥離しなかった。
3:フィルムを剥がす際に抵抗があり、印刷面からインキが剥離しなかった。
2:フィルムを剥がす際に抵抗があり、印刷面からインキがやや剥離した。
1:フィルムを剥がす際に抵抗があり、印刷面からインキが多く剥離した。
【0080】
<耐摩擦性>
ナイロンフィルムの上に、バーコーターを用いて、インキ用組成物を塗工し、ドライヤーで10秒乾燥させた後、室温で24時間養生した。そのインキ皮膜の面に光沢紙を当てて、学振型摩擦堅牢度試験機(荷重200g、(株)東洋精機製作所製)を用いて、200往復した後に以下の基準で耐摩擦性を評価した。4以上を良好とした。
(評価基準)
5:インキ皮膜の面にごくわずかな傷がみられた。
4:インキ皮膜の面に軽微な点状傷があった。
3:インキ皮膜の面に軽微な線状傷がややあった。
2:インキ皮膜の面に線状傷が多数あった。
1:インキ皮膜に大きい傷があった。
【0081】
<耐油性>
ナイロンフィルムの上に、バーコーターを用いて、各インキ用組成物を塗工し、ドライヤーで10秒乾燥させた後、室温で24時間養生した。亜麻仁油をインキ皮膜の面に滴下し、綿棒にて20往復擦った際のインキ落ちの状態を経時的に目視評価し、評価基準の4以上を良好とした。
(評価基準)
5:インキ皮膜の面に傷がなかった。
4:インキ皮膜の面にごくわずかな傷があった。
3:インキ皮膜の面に点状の傷があった。
2:インキ皮膜の面に線状の傷があった。
1:インキ皮膜の面に大きい傷があった。
【0082】
<耐溶剤性>
延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)の上に、バーコーターを用いて、各インキ用組成物を塗工し、ドライヤーで10秒乾燥させた後、その上から酢酸エチルをバーコーターで10回塗布し、インキ皮膜の状態を観察し、評価基準の3以上を良好とした。
(評価基準)
5:インキ皮膜の残存面積が80%以上であった。
4:インキ皮膜の残存面積が60%以上80%未満であった。
3:インキ皮膜の残存面積が40%以上60%未満であった。
2:インキ皮膜の残存面積が20%以上40%未満であった。
1:インキ皮膜の残存面積が20%未満であった。
【0083】
【表2】