(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118460
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】積層シート、建材、電子デバイス、移動体内外装
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20240823BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20240823BHJP
【FI】
H05K9/00 M
B32B7/025
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024023426
(22)【出願日】2024-02-20
(31)【優先権主張番号】P 2023024148
(32)【優先日】2023-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】遠山 秀旦
(72)【発明者】
【氏名】合田 亘
(72)【発明者】
【氏名】松居 久登
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 誠
【テーマコード(参考)】
4F100
5E321
【Fターム(参考)】
4F100AA17A
4F100AB10A
4F100AB18A
4F100AH08A
4F100AK01A
4F100AK42B
4F100BA02
4F100CA23A
4F100EH66A
4F100GB07
4F100GB31
4F100GB41
4F100JA05B
4F100JA20B
4F100JD08
4F100JG01A
4F100JG05B
4F100YY00B
5E321AA01
5E321AA23
5E321AA41
5E321AA44
5E321AA46
5E321BB21
5E321BB23
5E321BB25
5E321BB32
5E321BB33
5E321BB44
5E321CC16
5E321GG11
5E321GH01
(57)【要約】
【課題】外観を損なわず成型性・折り曲げ性を備え、障害物での電磁波の減衰を抑制させる積層シートを提供する。
【解決手段】少なくとも、表面抵抗率が1.0×109Ω/□以上1.0×1012Ω/□以下のA層と、厚みが1.0μm以上1.0×103μm以下かつ24GHzで測定した際の複素比誘電率の虚部が1.0×10-4以上2.0×10-1以下であるB層を有し、24GHzのS21(透過減衰量)をS11(反射減衰量)で割った値が0.000以上0.900以下である積層シート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、表面抵抗率が1.0×109Ω/□以上1.0×1012Ω/□以下のA層と、厚みが1.0μm以上1.0×103μm以下かつ24GHzで測定した際の複素比誘電率の虚部が1.0×10-4以上2.0×10-1以下であるB層を有し、24GHzのS21(透過減衰量)をS11(反射減衰量)で割った値が0.000以上0.900以下である積層シート。
【請求項2】
B層が、複素比誘電率の実部が2.5以上20.0以下のB1層を有する、請求項1に記載の積層シート。
【請求項3】
B層が、ガラス転移温度(Tg)50度以上150度以下かつ結晶化度が0%以上20%以下のB2層を有する、請求項2に記載の積層シート。
【請求項4】
B1層とB2層が別の層であり、B1層とB2層が交互に5層以上積層したユニットを含む、請求項3に記載の積層シート。
【請求項5】
10cm×10cmの領域に関して厚みを100点評価した際、平均値との誤差が±31%以下である点が80点以上存在する、請求項1から4のいずれかに記載の積層シート。
【請求項6】
流れ方向10点×幅方向2点の領域から5mmおきに20個のサンプルを採取し、それぞれのサンプル断面にて0.5mmおきに5点ずつ前記B層の厚みを評価した際、平均値との誤差が±31%以下である点が80点以上存在する、請求項1から4のいずれかに記載の積層シート。
【請求項7】
A層が典型金属元素の酸化物を含む、請求項1から4のいずれかに記載の積層シート。
【請求項8】
A層がアルミニウム(Al)と亜鉛(Zn)を含む、請求項7に記載の積層シート。
【請求項9】
B層とA層とが隣接しており、当該A層1層に含まれる全てのAl元素の原子数に対する、B層とA層との界面からA層の中間位置までの間に存在するAlの原子数比率が50%超過である、請求項8に記載の積層シート。
【請求項10】
10cm×10cmの領域に関してA層の表面抵抗率を20点評価した際の標準偏差を、平均値で割った値(T値)が0.0以上2.0以下である、請求項1から4のいずれかに記載の積層シート。
【請求項11】
A層の表面抵抗率をR[Ω/□]、B層の複素比誘電率の実部をPとしたとき、以下の式を満たすA層とB層とを有する、請求項1から4のいずれかに記載の積層シート。
0.1≦P/Log10(R+1)≦5.0
【請求項12】
厚みが1μm以上1.0×103μm以下かつ24GHzで測定した際の複素比誘電率の虚部が1.0×10-4以上2.0×10-1以下である層を有し、かつ走査型広がり抵抗顕微鏡(SSRM)での抵抗値の比が0.0091以上110以下である層対を有している積層シート。
【請求項13】
少なくとも、後述するA’層と、厚みが1.0μm以上1.0×103μm以下かつ24GHzで測定した際の複素比誘電率の虚部が1.0×10-4以上2.0×10-1以下であるB層を有し、24GHzのS21(透過減衰量)をS11(反射減衰量)で割った値が0.000以上0.900以下である積層シート。
A’層は、厚みが50nm~450nmであり、絶縁性のポリマーと導電性フィラーを有する層、金属酸化物層、および金属フッ化物層より選ばれる1種の層である。
【請求項14】
表面抵抗率が1.0×109Ω/□以上1.0×1012Ω/□以下かつ最表層でないA層と、前記A層と隣接する層とを有し、前記A層と前記A層に隣接する層との1つの界面を基準に走査型広がり抵抗顕微鏡(SSRM)で抵抗値を評価した際、界面からA層側に50nmぶん評価した抵抗値(r1)と、界面から隣接する層側に50nmぶん評価した抵抗値(r2)について、r1/r2の値が0.0083~120である積層シート。
【請求項15】
請求項1、12、13、14のいずれかに記載の、ウィンドウフィルム用積層シート。
【請求項16】
請求項1、12、13、14のいずれかに記載の積層シートを有する、建材。
【請求項17】
請求項1、12、13、14のいずれかに記載の積層シートを有する、電子デバイス。
【請求項18】
請求項1、12、13、14のいずれかに記載の積層シートを有する、移動体内外装。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、障害物での電磁波の減衰を抑制させる積層シートに関する。
【背景技術】
【0002】
ミリ波帯域の電磁波の利用が広がる中、高周波電磁波特有の減衰の大きさ、直進性の高さのために、通信範囲が狭いことが課題となっている。
【0003】
例えば窓ガラスではメタマテリアルにより電磁波の減衰を抑制し、さらに電磁波の向きを操作することで通信範囲を最適化するといった技術が開示されている(特許文献1、2)。また熱線反射層が設けられた窓ガラスでは熱線反射層での電磁波の反射による減衰が発生することから、熱線反射層の電磁波透過性を高める技術も知られている(特許文献3)。特許文献4には、電波を遮蔽してしまうガラスなどの構造物に誘電体を貼り付けることで透過率を向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2012/008551号
【特許文献2】特開2002-171120号公報
【特許文献3】国際公開第2013/122181号
【特許文献4】国際公開第2021/093719号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1、2に示したようなメタマテリアル技術は形成されたパターンが変形するような折り曲げや成型は行えず、また透明性が要求される場合にはパターンが可視光線透過率の低下を引き起こすなどして外観を損なうという課題があった。また特許文献3に記載の技術は熱線反射層の電磁波透過率を高めるものであり、ガラスでの反射による電磁波減衰を抑えることはできていなかった。特許文献4に記載の技術は貼り付ける誘電体が非常に厚いため、平坦な構造物以外に用いることはできなかった。
【0006】
以上の背景を踏まえ、本発明では外観を損なわず成型性・折り曲げ性を備え、障害物での電磁波の減衰を抑制させる積層シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の好ましい一態様は次の構成からなる。
(1)少なくとも、表面抵抗率が1.0×109Ω/□以上1.0×1012Ω/□以下のA層と、厚みが1.0μm以上1.0×103μm以下かつ24GHzで測定した際の複素比誘電率の虚部が1.0×10-4以上2.0×10-1以下であるB層を有し、24GHzのS21(透過減衰量)をS11(反射減衰量)で割った値が0.000以上0.900以下である積層シート。
(2)B層が、複素比誘電率の実部が2.5以上20.0以下のB1層を有する、(1)に記載の積層シート。
(3)B層が、ガラス転移温度(Tg)50度以上150度以下かつ結晶化度が0%以上20%以下のB2層を有する、(1)または(2)に記載の積層シート。
(4)B1層とB2層が別の層であり、B1層とB2層が交互に5層以上積層したユニットを含む、(3)に記載の積層シート。
(5)10cm×10cmの領域に関して厚みを100点評価した際、平均値との誤差が±31%以下である点が80点以上存在する、(1)から(4)のいずれかに記載の積層シート。
(6)流れ方向10点×幅方向2点の領域から5mmおきに20個のサンプルを採取し、それぞれのサンプル断面にて0.5mmおきに5点ずつ前記B層の厚みを評価した際、平均値との誤差が±31%以下である点が80点以上存在する、(1)から(5)のいずれかに記載の積層シート。
(7)A層が典型金属元素の酸化物を含む、(1)から(6)のいずれかに記載の積層シート。
(8)A層がアルミニウム(Al)と亜鉛(Zn)を含む、(7)に記載の積層シート。
(9)B層とA層とが隣接しており、当該A層1層に含まれる全てのAl元素の原子数に対する、B層とA層との界面からA層の中間位置までの間に存在するAlの原子数比率が50%超過である、(7)または(8)に記載の積層シート。
(10)10cm×10cmの領域に関してA層の表面抵抗率を20点評価した際の標準偏差を、平均値で割った値(T値)が0.0以上2.0以下である、(1)から(9)のいずれかに記載の積層シート。
(11)A層の表面抵抗率をR[Ω/□]、B層の複素比誘電率の実部をPとしたとき、以下の式を満たすA層とB層とを有する、(1)から(10)のいずれかに記載の積層シート。
【0008】
0.1≦P/Log10(R+1)≦5.0
(12)厚みが1.0μm以上1.0×103μm以下かつ24GHzで測定した際の複素比誘電率の虚部が1.0×10-4以上2.0×10-1以下である層を有し、かつ走査型広がり抵抗顕微鏡(SSRM)での抵抗値の比が0.0091以上110以下である層対を有している積層シート。
(13)少なくとも、後述するA’層と、厚みが1.0μm以上1.0×103μm以下かつ24GHzで測定した際の複素比誘電率の虚部が1.0×10-4以上2.0×10-1以下であるB層を有し、24GHzのS21(透過減衰量)をS11(反射減衰量)で割った値が0.000以上0.900以下である積層シート。
A’層は、厚みが50nm~450nmであり、絶縁性のポリマーと導電性フィラーを有する層、金属酸化物層、および金属フッ化物層より選ばれる1種の層である。
(14)表面抵抗率が1.0×109Ω/□以上1.0×1012Ω/□以下かつ最表層でないA層と、前記A層と隣接する層とを有し、前記A層と前記A層に隣接する層との1つの界面を基準に走査型広がり抵抗顕微鏡(SSRM)で抵抗値を評価した際、界面からA層側に50nmぶん評価した抵抗値(r1)と、界面から隣接する層側に50nmぶん評価した抵抗値(r2)について、r1/r2の値が0.0083~120である積層シート。
(15)(1)から(14)のいずれかに記載の、ウィンドウフィルム用積層シート。
(16)(1)から(14)のいずれかに記載の積層シートを有する、建材。
(17)(1)から(14)のいずれかに記載の積層シートを有する、電子デバイス。
(18)(1)から(14)のいずれかに記載の積層シートを有する、移動体内外装。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、外観を損なわず成型性・折り曲げ性を備え、障害物での電磁波の減衰を抑制させる積層シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】積層シートの全体厚みを測定する際の測定点の一例を模式的に示す俯瞰図である。
【
図2】積層シートのサンプル面積が小さい場合における積層シートの全体厚みを測定する際の測定点の一例を模式的に示す俯瞰図である。
【
図3】積層シートのB層厚みを測定する際における、積層シートからの測定サンプル切り出し箇所の一例を示す俯瞰図である。なお図中のXは長手方向、YはXと直角となる方向である。
【
図4】積層シートのB層厚みを測定する際における測定箇所の一例を示す断面図である。なお図中のXは長手方向、Zは厚み方向である。
【
図5】積層シートのA層とA層と隣接する層の抵抗率を測定する際における測定箇所の一例を示す断面図である。
【
図6】電磁波透過性を評価する際の位置関係をレーダーの横から見た際の模式図である。
【
図7】電磁波透過性を評価する際の位置関係をレーダーの後ろから見た際の模式図である。
【
図8】好ましい延伸倍率の範囲を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の本発明の積層シートの好ましい一態様は、少なくとも、表面抵抗率が1.0×109Ω/□以上1.0×1012Ω/□以下のA層と、厚みが1.0μm以上1.0×103μm以下かつ24GHzで測定した際の複素比誘電率の虚部が1.0×10-4以上2.0×10-1以下であるB層を有し、24GHzのS21(透過減衰量)をS11(反射減衰量)で割った値が0.000以上0.900以下である積層シート、である。本態様とすることにより外観を損なわず成型性・折り曲げ性を備え、障害物での電磁波の減衰を抑制させる積層シートを提供することができる。
【0012】
本発明の積層シートは、表面抵抗率が1.0×109Ω/□以上1.0×1012Ω/□以下の層(以降これをA層と呼ぶことがある)少なくとも1層を有することが好ましい。特に好ましくはA層が最表層となっている場合であり、本構成とすることで大気層と障害物の間のインピーダンスの変化を緩やかにし、反射による電磁波の減衰を抑えることができる。つまり本フィルムがない場合には大気と障害物の界面でのインピーダンス変化が大きいため大きな反射が発生してしまう。そこで大気、A層、障害物の順にインピーダンスを変化させてゆくことで、反射を抑制することができる。同様の観点から、大気、A層、後述するB層、障害物の順にインピーダンスを変化させてゆくことで、反射をより抑制することができる。インピーダンスを変更する方法としては誘電率・透磁率・導電性を制御する方法が考えられる。従来の可視光領域における反射による電磁波の減衰抑制では誘電率(屈折率)を制御する例が多かったが、発明者らは検討の結果、ミリ波帯域の通信では最表層の表面抵抗率を1.0×109Ω/□以上1.0×1012Ω/□以下の範囲とすることで反射を大きく抑制させることができることを見出した。なお、最表層の表面抵抗率は実施例に記載の方法で求めるものとする。なお、A層が露出していない場合は、剥離か研磨を行い当該層内部が露出するようにして同様に測定するものとする。また、A層は表面抵抗率が1.0×109Ω/□以上1.0×1012Ω/□以下の層であり、例えば、表面抵抗率が1.0×109Ω/□以上1.0×1012Ω/□以下となる層(a1層)が存在し、さらに表面抵抗率が1.0×109Ω/□以上1.0×1012Ω/□以下となる層(a2層)が隣接して存在する場合は、a1層とa2層をまとめてA層として扱うものとする。なお、例えば、表面抵抗率が1.0×109Ω/□以上1.0×1012Ω/□以下となる層(a3層)が存在し、その上に表面抵抗率が1.0×109Ω/□以上1.0×1012Ω/□以下とならない層(Q層)が存在し、さらにその上に表面抵抗率が1.0×109Ω/□以上1.0×1012Ω/□以下となる層(a4層)が存在する場合は、a3層、a4層それぞれがA層に該当する。
【0013】
具体的には最表層の表面抵抗率を1.0×109Ω/□以上とすることにより、最表層のインピーダンスを大気のインピーダンスに近づけ大気から本発明の積層シートに電磁波が入射する際の反射を抑えることができるので、ミリ波帯域における反射による電磁波の減衰を抑えることができる。つまり、大気のインピーダンスが377Ωであり、表面抵抗率を1.0×109Ω/□以上とすることで最表層のインピーダンスが377Ωに近づくためと考えられる。同様の観点から当該表面抵抗率は5.0×109Ω/□以上であることがより好ましい。また、最表層の表面抵抗率を1.0×1012Ω/□以下の範囲とすることにより、A層のインピーダンスを後述するB層のインピーダンスに近づけてAB層間での電磁波の反射を抑えることができるので、ミリ波帯域における反射による電磁波の減衰を抑えることができる。その理由として後述するようにB層は電磁波の吸収を抑えるために複素比誘電率の虚部が低いことから大気よりもインピーダンスが小さく、最表層の表面抵抗率を1.0×1012Ω/□以下とすることでA層のインピーダンスがB層のインピーダンスに近くなるからと考えられる。同様の観点から当該表面抵抗率は1.0×1011Ω/□以下であることがより好ましい。なおB層のインピーダンスが周波数依存性を示す場合は透過したい電磁波の周波数帯域でのインピーダンスを考慮して、表面抵抗率を設計することが好ましいが、上述したように、ミリ波帯域用においては特に表面抵抗率が1.0×109Ω/□以上1.0×1012Ω/□以下の範囲とすることが好ましい。
【0014】
なお、本発明の積層シートには表面抵抗率が1.0×109Ω/□以上1.0×1012Ω/□以下の層が複数あってもよいが、片方の最表層において表面抵抗率が1.0×109Ω/□以上1.0×1012Ω/□以下の層を有していることが好ましい。
【0015】
また、A層が積層シートの最表層になく、内部にある場合も積層シート内の層間のインピーダンス変化を緩和し、反射を抑制することが可能となる。特に窓ガラスなど外環境に直接触れる場合はA層よりも表層側にハードコートや耐候層を設けることが想定される。そういった場合においては、一般的にはハードコートや耐候層のインピーダンスと後述するB層のインピーダンスとは大きく離れているが、表面抵抗率が1.0×109Ω/□以上1.0×1012Ω/□以下の層(A層)のインピーダンスはその間に位置することができるのでA層が内部にある場合もハードコートや耐候層と後述するB層との間におけるインピーダンス変化を緩和することができる。同様の観点から、本発明の積層シートは最表層、A層、B層の順に各層を有することが好ましい。
【0016】
なお、A層が内部にある場合には、層間のインピーダンス変化を緩和する観点から隣り合う層と近い電気的物性であると好ましい。具体的には積層シートの断面をミクロトームやイオンミリングなど任意の方法で露出させ、A層とA層に隣接する層との1つの界面を基準に走査型広がり抵抗顕微鏡(SSRM)で抵抗値を評価した際、界面からA層側に50nmぶん評価した抵抗値(r1)と、界面から隣接する層側に50nmぶん評価した抵抗値(r2)について、r1/r2の値が0.0083~120であることが好ましい。同様の観点からr1/r2の値が0.1~10であることがより好ましい。また、同様の観点からA層の両方の界面について、隣接層1、A層、隣接層2とした場合、順に隣接層1抵抗値(r3)、A層側(隣接層1寄り)抵抗値(r4)、A層側(隣接層2寄り)抵抗値(r5)、隣接層2抵抗値(r6)としたとき、r3/r4の値が0.0083~120かつr5/r6の値が0.0083~120であることがより好ましく、r3/r4の値が0.01~100かつr5/r6の値が0.01~100であることがさらに好ましい。
【0017】
走査型広がり抵抗顕微鏡(SSRM)は原子間力顕微鏡(AFM)の応用技術であり、これにより微細な領域において高い分解能で電気特性を評価することができる。具体的に、バイアスが印加された試料の断面を導電性探針で走査し、抵抗値の分布を二次元的に計測することで探針直下の広がり抵抗の分布を求めることができる。これを各層で平均化し、各層の抵抗値を求めることができる。なお、本顕微鏡観察では、試料にバイアス電圧を加えて、探針直下に存在するキャリアを探針に流入させ、その電流を対数アンプで増幅して、抵抗値として計測する。このとき、印加したバイアス電圧は、探針の直下で急激に減衰するため、探針に流入できるキャリアは、探針の極近傍に存在するものに限られ、これを抵抗値として検出することになる。このような局所的な抵抗を広がり抵抗と呼ぶ。詳細な測定方法は実施例に記載の方法とする。
【0018】
ここで層とは積層シートの内、積層シートの面内方向に広がった一部分を意味しており、必ずしも均一である必要はない。具体的には粒子を含有した不均一な部分を有する場合や、厚み方向に物性が変化する場合でも一つの層として呼称する場合がある。
【0019】
A層の表面抵抗率や隣接する層との抵抗値の比を上記範囲とする方法には、例えばA層について絶縁性のポリマーと導電性フィラーを有する層とする方法が挙げられる。ポリマーは熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が考えられるが成型性の観点からはA層は熱可塑性樹脂を有することが好ましい。特にポリエチレンテレフタレートやその共重合体、ポリブチレンテレフタレートやその共重合体、ポリカーボネート、ポリアクリルより選ばれる1種以上の樹脂を有することが好ましい。これら樹脂は透明性に優れ、外観の観点から好ましい。導電性のフィラーとしては炭素系粒子、金属系粒子、導電性有機粒子より選ばれる1種以上を有することが好ましい。外観との両立の観点からは金属ナノ粒子および/またはカーボンナノチューブを用いることが特に好ましい。他にもA層は金属酸化物層および/または金属フッ化物層であることが好ましい。金属酸化物層や金属フッ化物層はスパッタや蒸着、化学気相成長(CVD)等で形成することができる。A層を金属酸化物層および/または金属フッ化物層とすると透明性、薄膜化が容易となるので好ましい。金属酸化物は酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化ニオブ、酸化インジウム、酸化スズやこれら金属酸化物を含む2種類以上の合金であることが好ましい。金属フッ化物はフッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化アルミニウム、フッ化アンチモンや、これら金属フッ化物を含む2種類以上の合金であることが好ましい電気特性を大きく悪化させない範囲内で着色や光沢をもたせることも可能である。
【0020】
すなわち、本発明の積層シートの好ましい一態様は、少なくとも、後述するA’層と、厚みが1.0μm以上1.0×103μm以下かつ24GHzで測定した際の複素比誘電率の虚部が1.0×10-4以上2.0×10-1以下であるB層を有し、24GHzのS21(透過減衰量)をS11(反射減衰量)で割った値が0.000以上0.900以下である積層シート、である。
A’層は、絶縁性のポリマー中と導電性フィラーを有する層、金属酸化物層、および金属フッ化物層より選ばれる1種の層である。
【0021】
なお、本明細書における好ましい一態様において、A層をA’層に置き換えた態様も本発明に係る好ましい一態様である。また、A’層が金属酸化物層、および金属フッ化物層より選ばれる1種の層である場合はA’層の厚みが50nm~450nmであることが好ましい。
【0022】
電磁波の透過性の観点から、本発明の積層シートは、10cm×10cmの領域に関してA層の表面抵抗率を20点評価した際の標準偏差を、平均値で割った値(T値)が0.0以上2.0以下であることが好ましい。本発明者らは種々の積層シートで検討したところ、A層の表面抵抗率のバラツキがミリ波帯域の電磁波の透過率に非常に大きく影響を与えることを見出した。T値が2.0を超える場合、A層面内で表面抵抗率にむらが発生している状態であり、部分的な電磁波反射によって干渉することで電磁波の透過率が大きく減少すると推測している。サンプリングの仕方など、T値の測定方法は実施例に記載の通りとする。同様の観点からT値はより好ましくは0.0以上1.5以下であり、さらに好ましくは0.0以上1.0以下である。なお、A層が複数存在する場合は少なくとも1つのA層においてT値が0.0以上2.0以下であることが好ましく、すべてのA層においてT値が0.0以上2.0以下であることがより好ましい。また、最表層に位置するA層においてT値が0.0以上2.0以下であることが好ましい。
【0023】
T値を該範囲とする方法としては、例えば厚みムラの小さいシートに蒸着またはスパッタにて金属酸化物層および/または金属フッ化物層を製膜する方法を好ましく挙げることができる。なかでもスパッタ法で設けることがより好ましい。特にA層を酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化亜鉛と酸化アルミニウムの複合酸化物より選ばれる1種以上の金属酸化物を含む層とすることが安定した表面抵抗率の層を形成する点で好ましい。また金属酸化物を蒸着またはスパッタで作成する場合は製膜時のフィルム温度を精密に一定に制御し、フィルム幅に対して十分大きい蒸着/スパッタ源を用いる方法とすることが好ましい。ほかにも、例えば導電性フィラーを用いる場合には、フィラーを均一に分散させることが有効であり、フィラーに樹脂との相互作用を高める表面処理を施す方法や、十分に強い剪断力で混練する方法が挙げられる。
【0024】
また本発明の積層シートは厚みが1.0μm以上1.0×103μm以下かつ24GHzで測定した際の複素比誘電率の虚部が1.0×10-4以上2.0×10-1以下となる層(B層)を、少なくとも一つ有することが好ましい。B層は後述するように複数の層からなる場合もあるため、積層シート内で厚みが1.0μm以上1.0×103μm以下かつ24GHzで測定した際の複素比誘電率の虚部が1.0×10-4以上2.0×10-1以下となる任意の層をB層と定義する。なお、ここでは複素比誘電率は、比誘電率を複素表現で表した値であり、厚みおよび24GHzにおける複素比誘電率は実施例に記載の方法で求めるものとする。なお、例えば複素比誘電率の虚部が1.0×10-4以上2.0×10-1以下の層(b1層)と隣接して複素比誘電率の虚部が1.0×10-4以上2.0×10-1以下の層(b2層)が存在するという場合は、b1層とb2層をまとめてB層とみなし、複素比誘電率の虚部が1.0×10-4以上2.0×10-1以下の層(b3層)と隣接して複素比誘電率の虚部が1.0×10-4以上2.0×10-1以下ではない層(U層)が存在し、さらにU層と隣接してb3層の反対側に複素比誘電率の虚部が1.0×10-4以上2.0×10-1以下の層(b4層)が存在するという場合はb3層、b4層のそれぞれが別のB層とみなす。
【0025】
B層は障害物での電磁波の減衰の原因である干渉反射を抑制するために設けられる層であり、1.0μm以上1.0×103μm以下の厚みを有することで電磁波の位相をずらし、干渉を抑制することが可能になる。つまり従来は障害物表面で反射した電磁波と、障害物に入射し障害物の裏面で反射することで位相が障害物の光学厚み分ずれた電磁波が干渉しあうことで強め合い、強い干渉反射が発生し、透過する電磁波が大きく減衰してしまう場合があった。ここで光学厚みとは層厚みに複素比誘電率の実部の平方根を掛けた値であり、電磁波が層を横断するときと同時間内に真空中を進む距離に相当する。本発明のフィルムを用いることで障害物の厚みや素材を変えることなく、干渉する周波数帯域をずらして透過性を上げることができる。
【0026】
干渉反射を抑制するためには少なくともλ/4以上の光学厚みを有することが好ましい。ここでλは目的とする電磁波の波長を意味する。また光学厚みとは媒質の厚みに屈折率(複素比誘電率の実部の平方根)を掛けた値であり、電磁波が媒質中を進むときと同時間内に真空中を進む距離に相当し、波長と比較することで媒質を通過した前後での位相のずれが推定できる。光学厚みがλ/4以上あることで障害物が厚く、位相を大きくずらす必要がある場合にも対応可能となる。厚くなりすぎると扱いにくくなることも考慮すると、少なくとも1つのB層の光学厚みは好ましくは9.5μm以上1.1×103μm以下であり、さらに好ましくは6.3×101μm以上8.5×102μm以下である。つまり周波数帯や取り回しを考慮すると、少なくとも1つのB層の厚みは1.0×101μm以上5.0×102μm以下であり、さらに好ましくは4.0×101μm以上3.0×102μm以下であることが好ましい。
【0027】
また、干渉反射を抑えたとしてもB層の複素比誘電率の虚部が1.0×10-4未満である場合は隣接する層とのインピーダンスの差が大きくなることで、界面での反射による減衰が大きくなる場合がある。またB層の複素比誘電率の虚部が2.0×10-1を超える場合には、B層内部で電磁波のエネルギーが熱エネルギーに変換されてしまい、減衰が大きくなる場合がある。よってB層の複素比誘電率の虚部を1.0×10-4以上2.0×10-1以下とすることが好ましい。同様の観点からB層の複素比誘電率の虚部はさらに好ましくは1.0×10-4以上1.5×10-1以下であり、最も好ましくは1.0×10-4以上1.0×10-1以下である。
【0028】
複素比誘電率の虚部を該範囲とする方法は、例えばB層を構成する樹脂の極性基の割合を調整する方法が挙げられる。複素比誘電率の虚部は、極性基の構成からおおよそクラウジス・モソッティの関係式およびクラマース・クローニッヒの関係式から推察され、本発明の積層シートに求められる複素比誘電率の虚部の範囲を満たす樹脂としてはポリカーボネート、ABS樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、液晶ポリマー、ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステルといった熱硬化性樹脂などが挙げられる。すなわち、B層はポリカーボネート、ABS樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、液晶ポリマー、ポリオレフィン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂より選ばれる1種以上の樹脂を含むことが好ましい。複素比誘電率の虚部の調整のためにフッ素系置換基やヒドロキシ基を有することもできる。
【0029】
本発明の積層シートは24GHzのS21(透過減衰量)をS11(反射減衰量)で割った値(S21/S11)が0.000以上0.900以下であることが好ましい。従来の電磁波透過性の材料は電磁波をどれだけ透過するか(透過減衰量)または反射するか(反射減衰量)のいずれか一方で議論されてきたが、発明者らが種々の積層シートについて検討した結果、両方の値の比において好ましい領域があることを発見した。もともとS21/S11は0から無限大の値を取りうるが、そのなかでもS21/S11が0に近いことが好ましい。
【0030】
想定されるメカニズムとしては、障害物での減衰は反射に加えて吸収と散乱が存在するが、中でも反射は信号源へのノイズとなるため最も避けたい減衰要因となる。つまり、透過減衰量だけでは吸収による減衰と散乱による減衰と反射による減衰を並列に評価するため、反射の影響を低く見積もっていた。また、反射減衰量だけでは吸収による減衰と散乱による減衰の影響を考慮できていなかったと考えられる。よって、透過減衰量と反射減衰量の影響を同時に加味できるS21/S11を0.000以上0.900以下とすることで、全体的な電磁波の透過特性を向上できると考えている。同様の観点からS21/S11は好ましくは0.000以上0.030以下であり、さらに好ましくは0.000以上0.020以下である。なお、上記S21(透過減衰量)、S11(反射減衰量)は実施例に記載の方法で求めるものとする。
【0031】
本発明の積層シートは前記B層が、複素比誘電率の実部2.5以上20.0以下のB1層を有することが好ましい。
【0032】
当該複素比誘電率の実部が2.5以上であることで光路長を長くし、薄膜でも十分に位相をずらして干渉を抑制することが可能となる。また当該複素比誘電率の実部が20.0超過である場合は隣接する層との界面での反射が問題となる場合がある。当該複素比誘電率の実部はより好ましくは2.5以上15.0以下であり、さらに好ましくは3.0以上10.0以下である。当該複素比誘電率の実部を該範囲とする方法は例えばB1層を構成する樹脂に高分極性の官能基を共重合させる方法が挙げられる。ここでもクラウジス・モソッティの関係式よりおおよその設計を行うことが可能である。また用途によっては透明性などの物性を損なわない程度に導電性材料や高誘電率のセラミック材料を添加する方法も挙げられる。
【0033】
本発明の積層シートは前記B層が、ガラス転移温度(Tg)50度以上150度以下かつ結晶化度が0%以上20%以下のB2層を有することが好ましい。Tgや結晶化度は示差熱量分析(DSC)を用いて求めるものとする。Tgが50度未満の場合には使用環境で十分な強度が得られない場合がある。またTgを150℃以下とすることで加工時に良好な可撓性や成型性を得ることができる。結晶化度が20%以下の層を有することで、透明性が高まり、また加工時に良好な可撓性や成型性を得ることができる。Tgの範囲は好ましくは50度以上120度以下であり、更に好ましくは50度以上90度以下であり、特に好ましくは50度以上75度以下である。Tgを該範囲とする方法としては例えば層を構成する樹脂に適切な共重合成分を添加する方法が挙げられる。ポリエステルであれば例えばテレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、ダイマー酸、ナフタレンジカルボン酸、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、イソソルビド、ポリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、フルオレングリコールなどから3種類以上の成分を有することが好ましい。結晶化度はより好ましくは15%以下、更に好ましくは10%以下である。結晶化度を該範囲とする方法としては、製膜時に適当な温度で熱結晶化もしくは融解・急冷することが好ましい。具体的にはTg以上の温度で熱処理することで結晶化度を向上させ、融点付近で熱処理後に急冷することで結晶化度を下げることができる。
【0034】
本発明の積層シートは前記B1層と前記B2層が別の層であり、交互に5層以上積層したユニットを含むことが好ましい。例えば、B1層/B2層/B1層/B2層/B1層構成のものは、B1層とB2層が交互に5層以上積層したユニット、に該当する。より好ましくは15層以上、更に好ましくは49層以上である。積層構成とすることでB1層とB2層の機能を分離し、複素比誘電率の実部は高いが加工性に劣るB1層をB2層でサポートすることが可能になる。各層厚みが薄いほど光学的に均一に近づき散乱がなく透明性の高い積層シートが得られる。層数は製膜時に所望の層数のマルチマニホールドダイやフィードブロックやスタティックミキサー等を用いることで調整できる。
【0035】
本発明の積層シートは10cm×10cmの領域に関して厚みを100点評価した際、平均値との誤差が±31%以下である点が80点以上存在することが好ましい。
【0036】
本発明者らは種々の積層シートで検討したところ、積層シートの厚みバラツキがミリ波帯域の電磁波の透過率に非常に大きく影響を与えることを見出した。さらに好ましくは±20%以下の点が80点以上、特に好ましくは±10%以下の点が80点以上、最も好ましくは±5%以下の点が80点以上である。厚み範囲を±31%以下とすることで、厚みに影響される干渉による減衰をむらなく抑えることが可能になる。また表面散乱による減衰も抑えることができる。更には厚み誤差によって僅かに位相がずれた電磁波同士が干渉することで、抑制困難な共振波が発生することやそれによる透過率の低下も抑制できると考えている。
【0037】
厚み誤差を該範囲とする方法は、例えば製膜時の延伸倍率・温度を好適な範囲とする方法が挙げられる。具体的にはポリエステルであれば延伸温度はTg以上Tg+20℃以下の範囲が好ましい。延伸倍率は、未延伸の積層シートを延伸温度で延伸し応力歪み曲線を描いた際に、延伸張力が連続的に増加する範囲内の倍率とする方法が好ましい(
図8)。延伸温度が低すぎる場合はネッキング延伸による厚みむらが発生する場合があり、高すぎる場合はドロー延伸となり延伸張力が連続的に増加する範囲が得られない場合がある。また延伸張力が連続的に低下または変化しない領域で延伸すると、延伸初期に僅かな応力むらで誘電的に延伸され薄くなった部分が更に優先的に延伸されることになり厚みむらが大きくなる場合がある。
【0038】
本発明の積層シートは流れ方向10点×幅方向2点の領域から5mmおきに20個のサンプルを採取し、それぞれのサンプル断面にて0.5mmおきに5点ずつ前記B層の厚みを評価した際、つまり合計100点の厚みを評価した際に、平均値との誤差が±31%以下である点が80点以上存在することが好ましい。さらに好ましくは±20%以下の点が80点以上、特に好ましくは±10%以下の点が80点以上、最も好ましくは±5%以下の点が80点以上である。B層は干渉抑制のための層であり、厚み範囲を±31%以下とすることで、厚みに影響される干渉による減衰をむらなく抑えることが可能になる。厚み誤差を該範囲とする方法としては、例えば前段落の方法に加えてB層を構成する樹脂を好ましい物性の樹脂とする方法が挙げられる。具体的には高分子量な樹脂や分岐を有する樹脂を用いることで絡み合いによる延伸張力の連続的増加を狙う方法が挙げられる。
【0039】
本発明の積層シートは前記B層がポリエステル樹脂を主成分とすることが成型性、透明性、電磁波透過性などの観点から好ましい。なお、ポリエステル樹脂を主成分とする、とは当該層100質量%中、ポリエステル樹脂を50質量%以上含むことをいう。ポリエステル樹脂とは、芳香族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸とジオールとを主たる構成成分とする単量体からの重合により得られる縮重合体のことである。
【0040】
ここで、芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4′-ジフェニルジカルボン酸、4,4´-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4´-ジフェニルスルホンジカルボン酸などを挙げることができる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸とそれらのエステル誘導体などが挙げられる。ジカルボン酸成分はこれらのうち1種類を用いても良く、2種以上を併用して用いてもよい。
【0041】
また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2-ビス(4-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート、スピログリコールなどを挙げることができる。中でもエチレングリコールが好ましく用いられる。これらのジオール成分は1種類のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0042】
成型性を考慮して芳香族ジカルボン酸を含むことが好ましい。導電性粒子の分散性を考慮してエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオールのうち少なくともいずれか一つを含むことが好ましい。
また、前記B層は二軸配向していることが好ましい。
【0043】
本発明の積層シートはA層が典型金属元素の酸化物を含むことが好ましい。典型金属元素とは、Li、Be、Na、Mg、K、Ca、Rb、St、Cs、Ba、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Ta、Sn、Pb、Biを含み、B、Si、Ge、As、Sb、Teを含まない。なお、A層は典型金属元素以外の元素を含んでいてもよい。典型金属元素の酸化物を用いることで、軽量かつ透明性の高い反射抑制層とすることが容易となる。また遷移元素と比較して地表表面に豊富に存在する点や毒性が少ない点もコストや取り扱いの容易さから好ましい。Al、Zn、Sbなどの12、13、14族元素を用いることが安定性や表面抵抗率の調整の観点から好ましい。AlとZnを両方含むことが水分によるA層の劣化軽減の観点から特に好ましい。
【0044】
また、B層とA層とが隣接しており、当該A層1層に含まれる全てのAl元素の原子数に対する、B層とA層との界面からA層の中間位置までの間に存在するAlの原子数比率が50%超過であることが好ましい。例えば、A層がAlとZnを含む場合において、B層寄りの部分においてAl元素の比率が高くかつZn元素の比率が低く、またA層のその逆側の部分においてAl元素の比率が低くかつZn元素の比率が高いような状態が挙げられる。
【0045】
Alは、B層との界面付近で、B層が含有する水分やB層側から侵入する水分により、水酸化や酸化が進行することにより、酸化膜保護層を形成し、A層の内層への水酸化や酸化が進行することを抑制できる。一方で、最表層にA層が存在する場合は大気中のイオンや酸素によりAlの酸化劣化が進行しやすくなる。よって、本態様とすることにより、B層側から侵入する水分によるA層の劣化をより軽減できるとともに、A層表層側のAlの酸化による劣化を軽減することが出来る。なお、A層の劣化とはA層の抵抗値が大幅に変わってしまうことを指す。
【0046】
上記したA層を得るための方法として、AlとZnの両金属を同時に蒸着する工程で形成する場合であれば、AlとZnがそれぞれ入った蒸発源を設けること、そしてAlとZnがそれぞれ入った蒸発源の設置間距離を調節する方法を好ましく例示することができる。
【0047】
また本発明の積層シートはA層の表面抵抗率をR[Ω/□]、B層の複素比誘電率の実部をPとしたとき、以下の式1を満たすA層とB層とを有することが好ましい。
【0048】
式1:0.1≦P/Log10(R+1)≦5.0
本発明ではA層で反射を抑制し、B層で干渉を抑制することを旨としている。一方で前記のようにB層の複素比誘電率の実部が高すぎると隣接した層との物性差(インピーダンスの急な変化)により反射が大きくなり、電磁波の透過量が減衰してしまう。発明者は薄膜化が可能な複素比誘電率の実部をB層が保ったままでA層とB層の界面で起きる反射を抑制できる領域を探索したところ、B層の複素比誘電率の実部に合わせてA層の導電性を調整することで界面の反射を抑制できることを見出した。もしくは用途によって厚膜化が許されるのであれば、表面反射を無くすようにA層の導電性を設計したのちに、B層の複素比誘電率の実部を調整することも可能である。P/Log10(R+1)が5を超える場合はA層のインピーダンスが大きくなりすぎており、P/Log10(R+1)が0.1を下回る場合はB層のインピーダンスが大きくなりすぎていると推察する。P/Log10(R+1)の範囲は好ましくは0.2以上1.0以下であり、さらに好ましくは0.3以上0.8以下である。なお、例えば、A層/B層に該当する部分/B層には該当しない部分/B層に該当する部分、といった構成のように、B層が複数ある場合は、A層に隣接するB層の複素比誘電率の実部をPとして採用した場合に、上記態様となることが好ましい。
【0049】
本発明の積層シートはA層、B層に加えて粘着層を有してもよい。例えばA層/B層/粘着層の順に配置することで障害物に直接貼り付けることができる。その際は粘着層で起きる位相のずれまで考慮して、B層の厚みおよび複素比誘電率を設計することが好ましい。また粘着層での損失を低減する観点から、粘着層の複素比誘電率の虚部が0.05以下であることが好ましい。取り扱いの容易さから粘着層の厚みは10μm以上が好ましく、粘着層での損失低減の観点から300μm以下が好ましい。20μm以上100μm以下が特に好ましい。
【0050】
粘着層の組成はアクリル、ウレタン、シリコーン、ゴムなどの樹脂を用いることができるが、透明性や汎用性の観点からアクリル系の樹脂を用いることが好ましい。
【0051】
またハードコート層を有していてもよい。例えばハードコート層/A層/B層の順位配置することでA層を外部からのキズや衝撃、酸化、水酸化、加水分解から保護することができる。ただしA層の反射抑制効果を損ねる可能性がある。
【0052】
また、上記した観点から、本発明に係る積層シートの好ましい一態様は、厚みが1.0μm以上1.0×103μm以下かつ24GHzで測定した際の複素比誘電率の虚部が1.0×10-4以上2.0×10-1以下である層を有し、かつSSRMでの抵抗値の比が0.0091以上110以下である層対を有している積層シート、である。SSRMでの抵抗値の比が0.0091以上110以下である層対を有していることで層間のインピーダンス変化を緩和でき、また1.0μm以上1.0×103μm以下かつ24GHzで測定した際の複素比誘電率の虚部が1.0×10-4以上2.0×10-1以下である層を有することにより、電磁波の位相をずらし、干渉を抑制しつつ、隣接する層とのインピーダンスの差が小さくなり、界面での反射による減衰が小さくできる。また、電磁波のエネルギーが熱エネルギーに変換されてしまうことを抑制できる。なお、前記層対のうちの1つが前記A層やその好ましい一態様であると好ましく、もう一つの層が前記B層やその好ましい一態様であると好ましい。より好ましくはSSRMでの抵抗値の比が0.01以上100以下である。
【0053】
窓ガラスのような透明性が求められる用途へ適用する際には、透明かつ大面積としてガラス全体に貼る方法と、不透明かつ小面積としてガラスの一部に貼る方法が上げられる。本発明では透明性を有することから、使用方法としてはガラス全体に貼ることが好ましい。意匠性やプライバシー保護の観点からあえて半透明として、ガラスの一部に貼る方法も好ましい使用方法である。
【0054】
貼り付ける対象物が平坦でない場合には、設置時に対象物に追従して変形させる方法と事前に対象物の形状に合わせて成型してから設置する方法があげられる。特に熱可塑性樹脂を用いている場合には事前に成型しておく方法を好ましく用いることができる。
【0055】
本発明の積層シートは、外観を損なわず成型性・折り曲げ性を備え、障害物での電磁波の減衰を抑制させることができるので、ウィンドウフィルム用に好適に用いることができる。特に、本発明の積層シートを有する建材や電子デバイス、移動体の内外装は電磁波の減衰を抑制できるだけでなく外観に優れる。具体的には本発明の積層シートは移動体や建築物の窓ガラスやパーテーション、通信機器を保護・収納するケースや棚などにも好適に用いることができる。通信機器(携帯電話、スマートフォン、パソコン、レーダー、センサー、無線基地局など)の筐体や移動体の内外装にも好適に用いられる。移動体としては車両やドローンなどが含まれる。
【0056】
特にスマートフォンなどはガラスや透明樹脂が用いられる面(画面)が電磁波透過性の高い部分となる。本フィルムをスマートフォンの画面に貼ることで通信速度・安定性が向上することを見出しており、スマートフォンに限らずガラス面や樹脂面を持つ通信機器に貼ることで通信性を向上し、ガラス面や樹脂面を保護するためのフィルムとして好適に用いることができる。特に、筐体の一部に金属など電磁波透過性の低い部材を用いる必要がある場合において顕著に効果を発揮する。
【0057】
本発明の積層シートの好ましい製造方法を以下に示す。もちろん本発明は係る例に限定して解釈されるものではない。
【0058】
まずB層の製造方法について例を示す。導電性材料やセラミックを含有させる場合はベース樹脂に、導電性材料やセラミックを所定量配合し、ニーダーやバンバリーミキサー、ミルミキサー、ロールミル、ジェットミル、ボールミルなどの公知の装置で混錬し含有させることで、誘電率調整樹脂を作成する。B層を均一な層とする場合は、ベース樹脂単体、もしくは、誘電率調整樹脂を、それぞれバッチプレスによる圧延や溶融押出により、所望の厚みのシートへ成形することで未延伸のB層が得られる。
【0059】
B層を交互積層とする場合は、B1層ならびにB2層を構成するそれぞれの樹脂は、熱風中あるいは真空下で乾燥した後、別々の押出機に供される。押出機において融点以上に加熱溶融された各樹脂は、ギヤポンプなどで均一の押出量で吐出され、フィルターなどで介して異物や変性した樹脂などが除去される。これらの樹脂は所望の積層数へと積層できる多層積層装置を介して、ダイにて目的の形状に成形されたのち、シート状に吐出される。ダイから吐出されたシートは、キャスティングドラム等の冷却体上に押出され、冷却固化されることで未延伸のB層が得られる。この際、スリット状、スポット状、面状の装置からエアーを吹き出しキャスティングドラムなどの冷却体に密着させ急冷固化させる方法、もしくは、ニップロールにて冷却体に密着させて急冷固化させる方法、ピニングよってクーロン力によって冷却体に密着させて急冷固化させる方法が厚みムラを抑制する観点から好ましい。
【0060】
多層積層装置としては、マルチマニホールドダイやフィードブロックやスタティックミキサー等を用いることができるが、特に、本発明の交互積層構造を効率よく得るためには、微細スリットを有するフィードブロックを用いることが好ましい。このようなフィードブロックを用いると、装置が極端に大型化することがないため、熱劣化による異物発生量が少なく、積層数が極端に多い場合でも、高精度な積層が可能となる。また、幅方向の積層精度も従来技術に比較して格段に向上する。また、この装置では、各層の厚みをスリットの形状(長さ、幅)で調整できるため、任意の層厚みを達成することが可能となる。また、フィードブロックで積層体を形成した後、スタティックミキサーを介して積層数が倍増するように重ね合わせて積層数を増やす方法も好適に利用できる。
【0061】
B層は未延伸の状態のシートを用いることもできるが、加工性や厚みむらの抑制の観点から二軸延伸することも好ましい。延伸は、逐次に二軸延伸してもよいし、同時に二軸延伸してもよい。また、さらに長手方向および/または幅方向に再延伸を行ってもよい。
【0062】
逐次二軸延伸の場合についてまず説明する。ここで、長手方向への延伸とは、シートに長手方向の分子配向を与えるための一軸延伸を指し、通常は、ロールの周速差により施され、1段階で行ってもよく、また、複数本のロール対を使用して多段階に行ってもよい。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、1.1~15倍が好ましく、1.5~4倍が特に好ましく用いられる。また、延伸温度としては交互積層ユニットを構成する樹脂のガラス転移温度~ガラス転移温度+100℃の範囲内に設定することが好ましい。
【0063】
このようにして得られた一軸延伸されたB層は、必要に応じてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施した後、上部に積層するA層との密着性を向上するためのプライマー層を形成することができる。インラインコーティングの工程において、プライマー層は片面に塗布してもよく、両面に同時あるいは片面ずつ順に塗布してもよい。
【0064】
幅方向の延伸とは、シートに幅方向の配向を与えるための延伸をいい、通常は、テンターを用いて、シートの両端をクリップで把持しながら搬送して、幅方向に延伸する。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、1.1~15倍が好ましく、1.5~6倍が特に好ましく用いられる。また、延伸温度としてはB層を構成する樹脂のガラス転移温度~ガラス転移温度+120℃が好ましい。こうして二軸延伸されたB層は、テンター内で延伸温度以上融点以下の熱処理を行い、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取られる。また、必要に応じて、低配向角およびシートの熱寸法安定性を付与するために熱処理から徐冷する際に、長手方向および/あるいは幅方向に弛緩処理などを併用してもよい。
【0065】
つづいて、同時二軸延伸の場合について説明する。同時二軸延伸の場合には、得られた未延伸のB層に、必要に応じてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施した後、易滑性、易接着性、帯電防止性などの機能をインラインコーティングにより付与してもよい。インラインコーティングの工程において、プライマー層はB層の片面に塗布してもよく、B層の両面に同時あるいは片面ずつ順に塗布してもよい。
【0066】
次に、B層を、同時二軸テンターへ導き、B層の両端をクリップで把持しながら搬送して、長手方向と幅方向に同時および/または段階的に延伸する。同時二軸延伸機としては、パンタグラフ方式、スクリュー方式、駆動モーター方式、リニアモーター方式があるが、任意に延伸倍率を変更可能であり、任意の場所で弛緩処理を行うことができる駆動モーター方式もしくはリニアモーター方式が好ましい。延伸の倍率は樹脂の種類により異なるが、通常、面積倍率として2~50倍が好ましく、特に4~20倍の面積倍率が好ましく用いられる。延伸速度は同じ速度でもよく、異なる速度で長手方向と幅方向に延伸してもよい。また、延伸温度としてはB層を構成する樹脂のガラス転移温度~ガラス転移温度+120℃が好ましい。
【0067】
こうして同時二軸延伸されたB層は、平面性、寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内で延伸温度以上融点以下の熱処理を行うのが好ましい。この熱処理の際に、幅方向での主配向軸の分布を抑制するため、熱処理ゾーンに入る直前および/または直後に瞬時に長手方向に弛緩処理することが好ましい。このようにして熱処理された後、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取られる。また、必要に応じて、熱処理から徐冷する際に長手方向および/あるいは幅方向に弛緩処理を行ってもよい。熱処理ゾーンに入る直前および/あるいは直後に瞬時に長手方向に弛緩処理する。
【0068】
A層を形成する方法としてはA層を樹脂で形成するか、金属酸化物で形成するかによって分けられる。樹脂で形成する場合は未延伸のB層を作成する際に更にもう1台押出機を用いてB層の片面に共押出により積層する方法が挙げられる。その場合、B層とともに延伸されることで密着性が向上する点で好ましい。ただしB層とともに延伸できることが必要となるため、導電性を調整するためのフィラーの添加量は抑える必要がある。またA層を別途B層に準ずる方法で作成したのち、B層と接着層を介してラミネートする方法が挙げられる。この場合はフィラー濃度を、延伸性を考慮せず設計することが可能であるが、ラミネート工程が入る分コストアップとなる。
【0069】
また蒸着またはスパッタで金属酸化物層を形成する場合はB層を真空蒸着機内の巻出軸から巻出して冷却ドラム上で冷却しながら、AlやZnなどの原料がそれぞれ入った蒸発源から誘導加熱法もしくは抵抗加熱法、電子ビーム法などにより加熱・溶融させ、各金属を同時に蒸着する工程で形成することができる。この場合において、各蒸発源の設置間距離が重要である。すなわち、例えばAlを原料として用いる場合にAlとB層の距離が近すぎる場合、金属層中間から表層にかけてのAl比率が高くなりすぎるため、B層側からの劣化とともに、表層側からの劣化を抑制する効果が不十分となる。各蒸発源の設置間距離を最適に調整することにより、目的とする前記AlのA層内分布を調整することができる。また、A層の表面抵抗値はそれぞれの蒸発源温度やフィルム搬送速度、蒸着処理中の雰囲気ガスにより所望の値となるよう調整できる。そのため蒸発源の温度およびフィルム搬送速度を一定とすることが、導電性のむらを抑える観点から重要となる。
【実施例0070】
以下、実施例に沿って本発明について説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。各特性は、以下の手法により測定した。
【0071】
(特性の測定方法および効果の評価方法)
本発明における特性の測定方法、および効果の評価方法は次のとおりである。
【0072】
(1)表面抵抗率
JISC2139-3-2(2018年)に準拠し測定した。150×150mmのサンプルを切り出し測定雰囲気中(23℃、65RH%)にて12時間の調湿を行った。サンプルのうちの100×100mmの領域に対して2cmずつ位置を変えながら、ロレスタ(EP MCP-T360)と測定治具(4端子電極、MCP-TP03P)またはハイレスタ (UP MCP-HT450)と測定治具(円形電極 MCP-HTP14)を用いて表面抵抗率を測定した。表面抵抗率が1×106Ω/□以上の時はハイレスタを用い、表面抵抗率が1×106Ω/□未満の時はロレスタを用いた。ハイレスタは定電圧(表面抵抗率が1×106Ω/□以上かつ1×1011Ω/□未満の時は100V、1×1011Ω/□以上かつ1×1012Ω/□未満の時は500V、1×1012Ω/□以上の時は1000V)で測定し、ロレスタは定電流(1×106Ω/□未満かつ1.999×105Ω/□以上の時は1μA、1.999×105Ω/□未満の時は10μA)で測定した。なお、A層の上に層を有する場合は当該層を研磨してA層を露出させて測定した。
【0073】
(2)全体厚み誤差
150×150mmのサンプルを切り出し、そのうちの90×90mmの領域に対して1cmずつ位置を変えながら厚み計(ニコン社製DIGIMICRO MH-15M)を用いて評価した。サンプルサイズが十分な場合の測定箇所を
図1に示す。一方でサンプルが小さい(100cm
2以下)場合は
図2に示すように、各測定点が1cmずつ離れるようにして厚みを計測し、100点評価できるまで複数枚のサンプルを測定した。
【0074】
100点評価し、上位10点と下位10点を外れ値として除外し、残りの80点の平均値を本サンプルの全体厚みの平均値とした。
【0075】
該80点のうち平均値から最も遠い値と平均値の差を、平均値で割り、100を掛けた値を全体厚み誤差(%)とした。
【0076】
(3-1)B層厚み
図3に示すように5mm×3mmのサンプルを20枚切り出した。続いて
図4に示すように、幅5mmの辺についてミクロトームを用いて断面を作成し、走査型電子顕微鏡(SEM)観察により0.8mmおきに5点のB層厚みを評価した。
【0077】
走査型電子顕微鏡(SEM)JSM-6700F形(日本電子株式会社製)を用い、加速電圧3kVの条件で積層シートの断面を観察し、断面写真を撮影、各層厚みを測定した。20枚×5点の合計100点評価し、上位10点と下位10点を外れ値として除外し、残りの80点の平均値を本サンプルのB層厚みの平均値とした。
【0078】
該80点のうち平均値から最も遠い値と平均値の差を、平均値で割り、100を掛けた値をB層厚み誤差(%)とした。
【0079】
(3-2)A層厚み
実施例1、8、9、10、17、比較例1、2、3は5mm×3mmのサンプルを切り出した、幅5mmの辺についてミクロトームを用いて断面を作成した。透過型電子顕微鏡(TEM)JEM1400Plus(日本電子株式会社製)を用いて、加速電圧100kVでの観察により0.8mmおきに5点のA層厚みを評価した。5点の平均の値を用いた。
【0080】
続いて比較例1、2、3について、JISC2139-3-2(2018年)に準拠し表面抵抗率を測定した。100×100mmのサンプルを切り出し測定雰囲気中(23℃、65RH%)にて12時間の調湿を行った。サンプルのうちの50×50mmの領域に対して25mmずつ位置を変えながら、ロレスタ(EP MCP-T360)と測定治具(4端子電極、MCP-TP03P)またはハイレスタ (UP MCP-HT450)と測定治具(円形電極 MCP-HTP14)を用いて表面抵抗率を9点測定した。表面抵抗率が1×106Ω/□以上の時はハイレスタを用い、表面抵抗率が1×106Ω/□未満の時はロレスタを用いた。ハイレスタは定電圧(表面抵抗率が1×106Ω/□以上かつ1×1011Ω/□未満の時は100V、1×1011Ω/□以上かつ1×1012Ω/□未満の時は500V、1×1012Ω/□以上の時は1000V)で測定し、ロレスタは定電流(1×106Ω/□未満かつ1.999×105Ω/□以上の時は1μA、1.999×105Ω/□未満の時は10μA)で測定した。9点の平均値を求めた。
【0081】
得られた表面抵抗率とA層厚みから検量線を作成し、残りの実施例、比較例については表面抵抗率を測定することで検量線から厚みを求めた。
【0082】
(4)B層比誘電率
まず前項の方法で確認したB層以外の厚さ分、研磨機で表面を研磨した。研磨条件は、研磨紙#800~#10000、研磨液は水で行った。その後、測定雰囲気中(23℃、65RH%)にて12時間の調湿を行った。ネットワークアナライザ(アンリツ社製 MS46122B)を用いて導波管法(WR-34)で24GHzにおけるSパラメータを測定した。そしてNicolson-Rossモデルを用いて24GHzにおける複素比誘電率の実部および虚部を算出した。
サンプルサイズ:8.64mm×4.32mm
平均処理:なし
Time Gate:なし。
【0083】
(5)S11 S21
150mm×150mmのサンプルを切り出し、測定雰囲気中(23℃、65RH%)にて12時間の調湿を行った。ネットワークアナライザ(アンリツ社製MS46122B)を用いて自由空間法(キーコム社製 DPS24-01)で24GHzにおけるSパラメータを測定した。入射角は0度で測定した。
Trace Format:Log Mag
平均処理:なし
Time Gate設定
Start:-250ps
Stop:250ps
Center:0s
Span:500ps
Sパラメータの内、S11を反射減衰量、S21を透過減衰量とした。
【0084】
(6)ガラス転移温度 結晶化度
研磨して得られたB層について、示差熱量分析(DSC)を用い、JIS K7121(2012年)に従って、窒素雰囲気下、-120℃で5分間保持後、250℃まで20℃/分の速度で測定サンプルを昇温させた。その測定結果から下記式によりガラス転移温度を算出した。
ガラス転移温度=(補外ガラス転移開始温度+補外ガラス転移終了温度)/2
なお、ガラス転移温度が2か所以上に見られる場合、本発明では50℃から90℃の範囲が重要となるため、最も70℃に近い値を採用した。また融解熱量(ΔHm)と冷結晶化熱量(ΔHc)を用い式2より結晶化度(Χc)を算出した。
式2:Χc=(ΔHm-ΔHc)/ΔHm0
ここで、ΔHm0は完全結晶体融解熱量であり、例えばPETの場合140.1J/g、PENの場合103.3J/g(参考文献Wunderlich B “Thermal analysis of Polymeric Materials”)を用いて算出した。
装置:リガク(株)製 DSCvesta Smart loader
サンプル質量:5mg
(7)Alの厚み方向分布
X線電子分光法(XPS法)により行った。アルゴンイオンエッチングを用いたスパッタリングにより、A層表面からB層方向に向けて、1回のエッチング毎に組成比率を分析した。XPS法の測定条件は以下のとおりである。
装置:QuanteraSXM(Ulvac-PHI社製)
励起X線:monochromatic AlKα
X線径:200μm
光電子脱出角度:45°(試料面に対する検出器の傾き)
Arイオンエッチング条件:2kV
エッチングレート:10nm/min以内(SiO2換算)
エッチング間隔:3nm(SiO2換算)以内/1ステップ
(8)内部の層の抵抗値
サンプルをエポキシ樹脂に包埋後、Arイオンビームにより断面出しを行った。測定はA層と隣接する層を含む2×2μmの領域について行った。室温、Arガス雰囲気中でSSRM(Bruker社製NanoScopeV Dimension Icon Glovebox)を用いて、コンタクトモードと広がり抵抗の同時測定を行った。DCバイアス電圧は+1.0Vとし、探針はダイヤモンドコートシリコンカンチレバーを用いた。
【0085】
得られた抵抗分布のデータからA層にあたる部分のうち2μm×0.4μm(512×100点)の領域の平均値をA層の抵抗値、隣接する層にあたる部分のうち2μm×0.4μm(512×100点)の領域の平均値を隣接する層の抵抗値として比を求めた。また、
図5に示すように2μm×100nmの領域についてr1/r2も求めた。
【0086】
(9)24GHz電磁波透過性
ミリ波レーダー(エスタカヤ製MIMOレーダーモジュール評価キット(AT1_01080108V) 周波数帯24.05~24.25GHz 変調帯域幅190MHz 測定距離範囲0.75~47m)を地上から1mの地点に水平に設置し、レーダーの正面3mの地点に厚み3mmのポリカーボネート板(縦20cm、横20cm、タキロンシーアイ社製PC1600)を垂直に設置した。ポリカーボネート板は
図6、7のように両端部に足((株)光製 アクリル角棒 18mm角)を設置して支持した。レーダーの検出閾値は8dBとした。
以下の指標で評価した。
A:ポリカーボネート板の片面を完全に覆うようにサンプルを貼り付けることで、レーダーに認識されなくなる。
B:ポリカーボネート板の両面を完全に覆うようにサンプルを貼り付けることで、レーダーに認識されなくなるが、片面に貼り付けるだけでは認識される。
C:ポリカーボネート板の両面を完全に覆うようにサンプルを貼り付けると、検出強度は下がるが認識される。
D:ポリカーボネート板の両面を完全に覆うようにサンプルを貼り付けると検出強度が上がる。
【0087】
(10)24GHz通信安定性
(9)と同様の構成で10秒間測定を行い、検出強度(dB)の標準偏差を算出し、以下の指標で評価した。
A:1未満
B:1以上2未満
C:2以上3未満
D:3以上。
【0088】
(11)79GHz電磁波透過性
ミリ波レーダー(エスタカヤ製MIMOレーダーモジュール評価キット(T18PE_01120112_2D) 周波数帯77~81GHz 変調帯域幅3.6GHz 測定距離範囲0.4~149m)を地上から1mの地点に水平に設置し、レーダーの正面3mの地点に厚み3mmのポリカーボネート板(縦20cm、横20cm、タキロンシーアイ社製PC1600)を垂直に設置した。ポリカーボネート板は
図6、7のように両端部に足((株)光製 アクリル角棒 18mm角)を設置して支持した。レーダーの検出閾値は30dBとした。
以下の指標で評価した。
A:ポリカーボネート板の片面を完全に覆うようにサンプルを貼り付けることで、レーダーに認識されなくなる。
B:ポリカーボネート板の両面を完全に覆うようにサンプルを貼り付けることで、レーダーに認識されなくなるが、片面に貼り付けるだけでは認識される。
C:ポリカーボネート板の両面を完全に覆うようにサンプルを貼り付けると、検出強度は下がるが認識される。
D:ポリカーボネート板の両面を完全に覆うようにサンプルを貼り付けると検出強度が上がる。
【0089】
(12)79GHz通信安定性
(11)と同様の構成で10秒間測定を行い、検出強度(dB)の標準偏差を算出し以下の指標で評価した。
A:2未満
B:2以上3未満
C:3以上5未満
D:5以上。
【0090】
(13)成型性
真空成型機(成光産業株式会社製300X)にて、下記条件で成型を行った。加熱は赤外線ヒーターにて行い、温度はサンプルに“サーモラベル”(登録商標)を貼り付けて判断した。それぞれのサンプルについて3回成型テストを行った。成型後の外観を目視で確認することにより以下の評価を行った。A~Bは成型の必要な用途でも使用可能、Cは成型を必要としない用途であれば使用可能である。
加熱時間:60秒
加熱温度:110℃
真空ポンプ圧力:0.17MPa
成型の形状:幅5cm、長さ7.5cm、深さ2cmの箱型。
A:いずれのサンプルも辺と頂点に密着しておりしわがない。
B:1つまたは2つのサンプルで辺の部分に空間が残っている、または頂点付近に空気が残りしわになっている。
C:3回とも辺の部分に空間が残っている、または頂点付近に空気が残りしわになっている。
【0091】
(14)耐久性
まず電磁波透過性を評価したのち、普通紙に挟んで60℃90%RHの恒温恒湿槽内に500時間静置し、熱処理前後の電磁波透過性の変化(試験前検出強度(dB)/試験後検出強度(dB))を評価した。
A:0.95以上
B:0.8以上0.95未満
C:0.8未満。
【0092】
(製造に用いた樹脂等)
樹脂1:IV(固有粘度。単位dl/g)0.62のポリエチレンテレフタレート
樹脂2:IV0.65のポリエチレンナフタレート
樹脂3:ジオール成分全体に対してスピログリコール25mol%、ジカルボン酸成分全体に対してシクロヘキサンジカルボン酸30mol%を共重合したポリエチレンテレフタレート(PET/SPG/CHDC)(IV:0.72)
樹脂4:MFR(230℃、2.16kg荷重)0.5g/10分のホモ・ポリプロピレン
樹脂5:樹脂1 80質量部に分子量10000のポリエチレングリコール(PEG)を20質量部添加した樹脂。
樹脂6:アクリル酸n-ブチル78質量部、N-ビニル-2-ピロリドン16質量部、アクリル酸4-ヒドロキシブチル6質量部、光重合開始剤(BASF社製、「“オムニラッド”(登録商標)184」)0.05質量部、光重合開始剤(BASF社製、「“オムニラッド”(登録商標)651」)0.05質量部、チタン酸バリウム52質量部を配合した混合物。
【0093】
(実施例1)
ペレット状の樹脂1を二軸押出機に投入し、280℃で溶融させ、Tダイから冷却ロール上にキャストし、ピニングで冷却ロールに密着させることで冷却固化した。厚みはキャスト速度を変更することで調整した。続いて減圧された真空蒸着機下室にアルゴンガスと酸素を10:1(モル比)の比率で導入し、2.0×10-2Paの真空度とした。冷却ドラム下部に配置されたAl蒸発源とZn蒸発源の設置距離を調整することによりA層を形成した。
【0094】
なお、Alの含有比率は、6質量%となるよう各蒸発源温度とシートの搬送速度を調整し巻取り軸で巻き取り積層シートを得た。得られた積層シートについて、上述した評価を行った。結果を表に示す。また、A層厚みは250nmであった。なお、実施例1においてS21は1.4dB、S11は55.0dBであったため、S21/S11の値は0.025であった。
【0095】
(実施例2)
B1層を構成する樹脂として樹脂2、B2層を構成する樹脂として樹脂3を用いた。それぞれ、ペレット状で別々の二軸押出機へ投入し、両者とも270℃で溶融させて混練した。次いで、B1層が表面になるよう9層のフィードブロックにて合流させたのちスクエアミキサーを3回通した後、Tダイから冷却ロール上にキャストし、ピニングで冷却ロールに密着させることで冷却固化した。厚みはキャスト速度を変更することで調整した。以降は実施例1と同様にして積層シートを得た。
【0096】
(実施例3)
B1層を構成する樹脂として樹脂2、B2層を構成する樹脂として樹脂1を用いた。厚みはキャスト速度を変更することで調整した。以降は実施例2と同様にして積層シートを得た。
【0097】
(実施例4)
B1層を構成する樹脂として樹脂4、B2層を構成する樹脂として樹脂1を用いた。厚みはキャスト速度を変更することで調整した。以降は実施例2と同様にして積層シートを得た。
【0098】
(実施例5)
樹脂2を用い、厚みはキャスト速度を変更することで調整した以外は実施例1と同様にして積層シートを得た。
【0099】
(実施例6)
ピニングの代わりにカレンダキャストで製膜する以外は実施例2と同様にして積層シートを得た。
【0100】
(実施例7)
ピニングなしで冷却ロールへの粘着のみで製膜する以外は実施例2と同様にして積層シートを得た。
【0101】
(実施例8)
蒸発温度を低く、搬送速度を遅くする以外は実施例2と同様にして積層シートを得た。A層厚みは250nmであった。
【0102】
(実施例9)
蒸発源をSiとする以外は実施例2と同様にして積層シートを得た。A層厚みは240nmであった。
【0103】
(実施例10)
蒸発源をInとSnとする以外は実施例2と同様にして積層シートを得た。A層厚みは270nmであった。
【0104】
(実施例11)
カレンダロール速度を変えて厚みを0.35mmとする以外は実施例6と同様にして積層シートを得た。
【0105】
(実施例12)
キャスト後に逐次二軸延伸を実施する以外は実施例11と同様にして積層シートを得た。延伸方法はまず105℃でテフロン(登録商標)ロールにて搬送した後に、長手方向に、95℃で2.5倍延伸して一軸延伸フィルムを得た。この一軸延伸フィルムをテンター内で幅方向に100℃で3.6倍延伸し、続いて220℃で熱固定し、その際幅方向に1.7%弛緩し搬送工程にて冷却させた後、エッジを切断後に巻き取った。
【0106】
(実施例13)
蒸着後にハードコート層を設ける以外は実施例12と同様にして積層シートを得た。具体的にはアクリル系オリゴマー、開始剤、メチルエチルケトンを含むハードコート剤を、硬化後の平均厚みが10μmとなるようにフィルムのA層側に塗布した。塗布後、80℃のオーブン内で無風で2分間乾燥してメチルエチルケトン溶媒を揮発させた後、紫外線照射積算量が180mJ/cm2となるように紫外線照射し、目的の積層シートを得た。
【0107】
(実施例14)
ハードコート層の乾燥を強風で1分間行う以外は実施例13と同様にして積層シートを得た。
【0108】
(実施例15)
蒸着時間を長くしてA層を厚くする以外は実施例3と同様にして積層シートを得た。A層厚みは350nmであった。
【0109】
(実施例16)
ピニングの代わりにエアを吹き付けることで冷却ロールに密着させて製膜する以外は実施例2と同様にして積層シートを得た。
【0110】
(実施例17)
A層形成時にZn蒸着源を近くに配置することでA層中のZn濃度を高めた以外は実施例13と同様にして積層シートを得た。A層厚みは250nmであった。A層のインピーダンスがB層よりも低くなることで界面での反射が大きい積層シートとなった。
【0111】
(実施例18)
樹脂6を攪拌しながら粘度(10rpm、測定温度30℃)が20Pa・sになるまで紫外線を照射した。該組成物をPETフィルム(東レ製、「“ルミラー”(登録商標)100S10」)上に塗布し、ブラックライトにて、照度5mW/cm2の紫外線を300秒間照射した。さらに90℃の乾燥機で2分間乾燥し、PETフィルムを剥離して厚み310μmのシートを得た。
【0112】
続いて減圧された真空蒸着機下室にアルゴンガスと酸素を10:1(モル比)の比率で導入し、2.0×10-2Paの真空度とした。冷却ドラム下部に配置されたAl蒸発源とZn蒸発源の設置距離を調整することによりA層を形成した。
なお、Alの含有比率は、6質量%となるよう各蒸発源温度とシートの搬送速度を調整した。
【0113】
(比較例1~3)
蒸着時の搬送速度を変更することでA層厚みを変更した以外は実施例1と同様にして積層シートを得た。A層厚みは比較例1で40nm、比較例2で460nm、比較例3で600nmであった。
【0114】
(比較例4)
樹脂5を用いる以外は実施例1と同様にして積層シートを得た。
【0115】
(比較例5)
蒸着時の搬送速度を比較例3と同様にする以外は実施例13と同様にして積層シートを得た。
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
本発明の積層シートは、ガラスや樹脂プレート等の障害物に貼り付けることで電磁波透過性を高めることができる。また安定した透過性が得られる、水分・熱に対して耐久性がある、成型性があるといった特徴から、車両や建築物の窓ガラスやパーテーション、通信機器を保護・収納するケースや棚、通信機器の筐体や車両の内外装などに適用することができる。