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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118466
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】発電設備
(51)【国際特許分類】
   F03B 13/08 20060101AFI20240823BHJP
   E02B 9/00 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
F03B13/08
E02B9/00 A
E02B9/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024024120
(22)【出願日】2024-02-20
(31)【優先権主張番号】P 2023024367
(32)【優先日】2023-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023101486
(32)【優先日】2023-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592141765
【氏名又は名称】株式会社久保製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 博
(74)【代理人】
【識別番号】100167427
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 守
【テーマコード(参考)】
3H074
【Fターム(参考)】
3H074AA10
3H074AA12
3H074BB09
3H074CC28
3H074CC39
3H074CC45
(57)【要約】
【課題】水を有効活用できる発電設備を提供する提供する。
【解決手段】水流によって発電する発電装置6aが設けられる、水路3を有する本体2と、本体2の水路3の下流側に設けられる貯留部30と、を備え、本体2は、供給流路5と発電流路6と、を有しており、発電流路6は、鉛直方向に延びる中間部を有し、一端が貯留部30に浸漬され、他端が一端よりも下方に位置するように配置された配管であり、中間部には発電装置6aが設けられており、供給流路5は、水路3の上流側から下流側に向かって高さが高くなるように設けられた複数段の揚水室5a~5eを有しており、複数段の揚水室5a~5eには、下方の揚水室から上方の揚水室に揚水する揚水装置10が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水流によって発電する発電装置が設けられる、水路を有する本体と、
該本体の水路の下流側に設けられる貯留部と、を備え、
前記本体は、
前記貯留部に対して水路の水を供給する供給流路と、
前記貯留部から水が供給され供給された水を前記本体において水路の上流側に流す発電流路と、を有しており、
該発電流路は、
鉛直方向に延びる中間部を有し、該中間部よりも該本体の下流側に位置する一端が前記貯留部に浸漬され、該中間部よりも該本体の上流側に位置する他端が前記一端よりも下方に位置するように配置された配管であり、
該配管には前記発電装置が設けられており、
前記供給流路は、
水路の上流側から下流側に向かって高さが高くなるように設けられた複数段の揚水室を有しており、
前記揚水室には、
下方の揚水室から上方の揚水室に揚水する揚水装置が設けられている
ことを特徴とする発電設備。
【請求項2】
前記揚水装置は、
上部と水路の下流側とに開口を有する揚水容器と、
該揚水容器を昇降させる昇降装置と、を備えており、
該昇降装置は、
該揚水装置が設けられている揚水室の下段に位置する下段揚水室に設けられた下段揚水装置の下段揚水容器または水路から前記揚水容器に水を受け入れる下部受水位置と、
該揚水装置の揚水容器の水路の下流側の下流側開口から、該揚水装置が設けられている揚水室の上段に位置する上段揚水室に設けられた上段揚水装置の上段揚水容器の上部の上部開口を通して該揚水容器内の水を前記上段揚水装置の上段揚水容器に供給する上部給水位置と、の間で移動可能に設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の発電設備。
【請求項3】
前記揚水容器の下流側の下流側開口は常時開口されており、
該揚水容器および前記揚水室は、
前記揚水容器が前記下部受水位置と前記上部給水位置との間を移動する間において、該該揚水装置が設けられている揚水室の水路の下流側の壁面および前記上段揚水装置の上段揚水容器の水路の下流側の壁面とによって前記下流側開口が液密に塞がれる構造を有している
ことを特徴とする請求項2記載の発電設備。
【請求項4】
前記揚水容器の下流側の下流側開口には、該下流側開口を開閉する開閉扉が設けられている
ことを特徴とする請求項3記載の発電設備。
【請求項5】
前記揚水装置は、
該揚水装置が設けられている前記揚水室の下流側に設けられた水路の流路方向と交差する揺動軸と、
該揺動軸に上下方向揺動可能に設けられた揚水容器と、
該揚水容器を揺動させる揺動装置と、を備えており、備えており、
該揚水容器は、
水路の上流側に設けられた上流側開口と、上部に設けられた上部開口と、を有しており、
前記揺動装置は、
前記揚水装置の揚水容器が設けられている揚水室の下段に位置する下段揚水室に設けられた下段揚水装置の下段揚水容器または水路から水を受け入れる下部受水位置と、
該揺動装置が設けられている揚水室の上段に位置する上段揚水室に設けられた上段揚水装置の上段揚水容器の上流側開口および上部開口を通して該揚水容器内の水を前記上段揚水装置の上段揚水容器に供給する上部給水位置と、の間で移動可能に設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の発電設備。
【請求項6】
前記揚水容器は、
水路の下流側に設けられた下流側壁が、前記上部給水位置において前記上段揚水装置の上段揚水容器に向かって下傾する傾斜面となっており、
該傾斜面は、
その上端が、前記上部給水位置において前記下部受水位置に配置されている前記上段揚水装置の上段揚水容器の上端よりも上方に位置するように設けられている
ことを特徴とする請求項5記載の発電設備。
【請求項7】
前記発電流路は、
サイフォン効果によって前記貯留部から前記本体において水路の上流側に向かって水が流れるように設けられている
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の発電設備。
【請求項8】
水流によって発電する発電装置が設けられる、水路を有する本体と、
該本体の水路の下流側に設けられる貯留部と、を備え、
前記本体は、
前記貯留部に対して水路の水を供給する供給流路と、
前記貯留部から水が供給され供給された水を前記本体において水路の上流側に流す発電流路と、を有しており、
該発電流路は、
鉛直方向に延びる中間部を有し、該中間部よりも該本体の下流側に位置する一端が前記貯留部に浸漬され、該中間部よりも該本体の上流側に位置する他端が前記一端よりも下方に位置するように配置された配管であり、
該配管には前記発電装置が設けられており、
前記供給流路は、
前記貯留部と連通された上部流路と、
前記配管の他端と連通された下部流路と、
該下部流路から前記上部流路に揚水する、水を貯留した状態で前記下部流路と前記上部流路との間で昇降する昇降容器を有する揚水装置と、を備えている
ことを特徴とする発電設備。
【請求項9】
前記揚水装置は、
前記昇降容器が昇降する昇降室を備えており、
前記昇降室の下部側方には、前記下部流路と連通された給入口が設けられており、
前記昇降室の上部側方には、前記上部流路と連通された排水口が設けられており、
前記昇降容器は、
前記昇降室の下部の給水位置まで下降すると前記給入口から水を受け入れる受水口と、前記昇降室の上部の排水位置まで上昇すると前記排水口から水を排出する排水口と、を有している
ことを特徴とする請求項8記載の発電設備。
【請求項10】
前記揚水装置は、
前記下部流路の流路方向に沿って並ぶように設けられた複数の前記昇降室を備えており、
各昇降室にそれぞれ前記昇降容器が設けられている
ことを特徴とする請求項8記載の発電設備。
【請求項11】
前記発電流路は、
サイフォン効果によって前記貯留部から前記本体において水路の上流側に向かって水が流れるように設けられている
ことを特徴とする請求項8から10のいずれか一項に記載の発電設備。
【請求項12】
船舶に設けられる発電設備であって、
船舶の船首側に設けられた流入口と船舶の船尾側に設けられた該流出口とをつなぐ流路部と、
該流路部に配置された発電部と、を備えており、
前記発電部は、
前記流路部の流入口と連通された給水口と該給水口よりも下方に位置し前記流路部の流出口と連通された排水口との間をつなぐ発電流路を備えており、
該発電流路に、前記給水口から前記排水口に向かって落下する水によって発電を行う発電装置が設けられている
ことを特徴とする発電設備。
【請求項13】
前記流路部は、
前記流出口が前記流入口よりも下方に位置するように設けられている
ことを特徴とする請求項12記載の発電設備。
【請求項14】
前記流路部は、
前記流出口が船舶の喫水線よりも上方に設けられており、
前記流路部における前記発電部よりも下流側の部分から前記流出口まで該流路部内の水を揚水する揚水装置を備えている
ことを特徴とする請求項12記載の発電設備。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電設備に関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料を使用する火力発電に代えて、自然エネルギーを利用する発電が注目されている。かかる自然エネルギーを利用する発電設備としては、ダムによって貯留した水を利用した水力発電があるが、かかる水力発電にはダムを建設しなければならず、非常に大規模な工事が必要となるし、ダムを建設できるする場所は限られている。
【0003】
ダムを建設することなく、水を利用した水力発電技術として、サイフォンの作用を利用した技術が開発されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2012-11119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、特許文献1の技術では、十分な発電量を得ることが難しく、サイフォンの作用を利用して大規模な発電をできる技術が求められている。
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、水を有効活用できる発電設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<発電設備>
第1発明の発電設備は、水流によって発電する発電装置が設けられる、水路を有する本体と、該本体の水路の下流側に設けられる貯留部と、を備え、前記本体は、前記貯留部に対して水路の水を供給する供給流路と、前記貯留部から水が供給され供給された水を前記本体において水路の上流側に流す発電流路と、を有しており、該発電流路は、鉛直方向に延びる中間部を有し、該中間部よりも該本体の下流側に位置する一端が前記貯留部に浸漬され、該中間部よりも該本体の上流側に位置する他端が前記一端よりも下方に位置するように配置された配管であり、該配管には前記発電装置が設けられており、前記供給流路は、水路の上流側から下流側に向かって高さが高くなるように設けられた複数段の揚水室を有しており、前記揚水室には、下方の揚水室から上方の揚水室に揚水する揚水装置が設けられていることを特徴とする。
<昇降型>
第2発明の発電設備は、第1発明において、前記揚水装置は、上部と水路の下流側とに開口を有する揚水容器と、該揚水容器を昇降させる昇降装置と、を備えており、該昇降装置は、該揚水装置が設けられている揚水室の下段に位置する下段揚水室に設けられた下段揚水装置の下段揚水容器または水路から前記揚水容器に水を受け入れる下部受水位置と、該揚水装置の揚水容器の水路の下流側の下流側開口から、該揚水装置が設けられている揚水室の上段に位置する上段揚水室に設けられた上段揚水装置の上段揚水容器の上部の上部開口を通して該揚水容器内の水を前記上段揚水装置の上段揚水容器に供給する上部給水位置と、の間で移動可能に設けられていることを特徴とする。
第3発明の発電設備は、第2発明において、前記揚水容器の下流側の下流側開口は常時開口されており、該揚水容器および前記揚水室は、前記揚水容器が前記下部受水位置と前記上部給水位置との間を移動する間において、該該揚水装置が設けられている揚水室の水路の下流側の壁面および前記上段揚水装置の上段揚水容器の水路の下流側の壁面とによって前記下流側開口が液密に塞がれる構造を有していることを特徴とする。
第4発明の発電設備は、第3発明において、前記揚水容器の下流側の下流側開口には、該下流側開口を開閉する開閉扉が設けられていることを特徴とする。
<シーソー型>
第5発明の発電設備は、第1発明において、前記揚水装置は、該揚水装置が設けられている前記揚水室の下流側に設けられた水路の流路方向と交差する揺動軸と、該揺動軸に上下方向揺動可能に設けられた揚水容器と、該揚水容器を揺動させる揺動装置と、を備えており、備えており、該揚水容器は、水路の上流側に設けられた上流側開口と、上部に設けられた上部開口と、を有しており、前記揺動装置は、前記揚水装置の揚水容器が設けられている揚水室の下段に位置する下段揚水室に設けられた下段揚水装置の下段揚水容器または水路から水を受け入れる下部受水位置と、該揺動装置が設けられている揚水室の上段に位置する上段揚水室に設けられた上段揚水装置の上段揚水容器の上流側開口および上部開口を通して該揚水容器内の水を前記上段揚水装置の上段揚水容器に供給する上部給水位置と、の間で移動可能に設けられていることを特徴とする。
第6発明の発電設備は、第5発明において、前記揚水容器は、水路の下流側に設けられた下流側壁が、前記上部給水位置において前記上段揚水装置の上段揚水容器に向かって下傾する傾斜面となっており、該傾斜面は、その上端が、前記上部給水位置において前記下部受水位置に配置されている前記上段揚水装置の上段揚水容器の上端よりも上方に位置するように設けられていることを特徴とする。
第7発明の発電設備は、第1から第6発明のいずれかにおいて、前記発電流路は、サイフォン効果によって前記貯留部から前記本体において水路の上流側に向かって水が流れるように設けられていることを特徴とする。
<発電設備>
第8発明の発電設備は、水流によって発電する発電装置が設けられる、水路を有する本体と、該本体の水路の下流側に設けられる貯留部と、を備え、前記本体は、前記貯留部に対して水路の水を供給する供給流路と、前記貯留部から水が供給され供給された水を前記本体において水路の上流側に流す発電流路と、を有しており、該発電流路は、鉛直方向に延びる中間部を有し、該中間部よりも該本体の下流側に位置する一端が前記貯留部に浸漬され、該中間部よりも該本体の上流側に位置する他端が前記一端よりも下方に位置するように配置された配管であり、該配管には前記発電装置が設けられており、前記供給流路は、前記貯留部と連通された上部流路と、前記配管の他端と連通された下部流路と、該下部流路から前記上部流路に揚水する、水を貯留した状態で前記下部流路と前記上部流路との間で昇降する昇降容器を有する揚水装置と、を備えていることを特徴とする。
第9発明の発電設備は、第8発明において、前記揚水装置は、前記昇降容器が昇降する昇降室を備えており、前記昇降室の下部側方には、前記下部流路と連通された給入口が設けられており、前記昇降室の上部側方には、前記上部流路と連通された排水口が設けられており、前記昇降容器は、前記昇降室の下部の給水位置まで下降すると前記給入口から水を受け入れる受水口と、前記昇降室の上部の排水位置まで上昇すると前記排水口から水を排出する排水口と、を有していることを特徴とする。
第10発明の発電設備は、第9発明において、前記揚水装置は、前記下部流路の流路方向に沿って並ぶように設けられた複数の前記昇降室を備えており、各昇降室にそれぞれ前記昇降容器が設けられていることを特徴とする。
第11発明の発電設備は、第8から第10発明のいずれかにおいて、前記発電流路は、サイフォン効果によって前記貯留部から前記本体において水路の上流側に向かって水が流れるように設けられていることを特徴とする。
<船舶用発電設備>
第12発明の発電設備は、船舶に設けられる発電設備であって、船舶の船首側に設けられた流入口と船舶の船尾側に設けられた該流出口とをつなぐ流路部と、該流路部に配置された発電部と、を備えており、前記発電部は、前記流路部の流入口と連通された給水口と該給水口よりも下方に位置し前記流路部の流出口と連通された排水口との間をつなぐ発電流路を備えており、該発電流路に、前記給水口から前記排水口に向かって落下する水によって発電を行う発電装置が設けられていることを特徴とする。
第13発明の発電設備は、第12発明において、前記流路部は、前記流出口が前記流入口よりも下方に位置するように設けられていることを特徴とする。
第14発明の発電設備は、第12発明において、前記流路部は、前記流出口が船舶の喫水線よりも上方に設けられており、前記流路部における前記発電部よりも下流側の部分から前記流出口まで該流路部内の水を揚水する揚水装置を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
<発電設備>
第1から第11発明によれば、水を利用した発電を効率よく実施することができる。
<船舶用発電設備>
第12から第14発明によれば、船舶の推力を利用して、水による発電を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】揚水装置10を設けた本実施形態の発電設備1の概略平面図である。
図2】本実施形態の発電設備1の発電水路6の概略説明図である。
図3】揚水装置10を設けた本実施形態の発電設備1の供給流路5の概略説明図である。
図4】揚水装置10の作動の説明図であって、(A)は揚水室5eに設けた揚水容器11が下部受水位置に配置されている状態の概略説明図であり、(B)は揚水室5eに設けた揚水容器11が上部給水位置に配置されている状態の概略説明図である。
図5】揚水装置20を設けた本実施形態の発電設備1の概略平面図である。
図6】揚水装置20を設けた本実施形態の発電設備1の供給流路5の概略説明図である。
図7】揚水装置20の作動の説明図であって、(A)は揚水室5eに設けた揚水容器21が下部受水位置に配置されている状態の概略説明図であり、(B)は揚水室5eに設けた揚水容器21が上部給水位置に配置されている状態の概略説明図である。
図8】昇降容器40を有する揚水装置を揚水室5bに設けた発電設備1の概略平面図である。
図9】昇降容器40を有する揚水装置を揚水室5bに設けた発電設備1の水路3の概略平面図であって、図10のIV線概略断面矢視図である。
図10】昇降容器40を有する揚水装置揚水室5bに設けた供給流路5の概略説明図である。
図11】発電設備1の発電水路6の概略説明図である。
図12】船舶用の発電設備Dの概略説明図であって、(A)は(B)のA-A線断面図であり、(B)は(A)のB-B線断面図である。
図13】揚水装置Spを備えた船舶用の発電設備Dの概略説明図である。
図14】本実施形態の発電設備1の発電水路6に他の発電装置6bを設けた概略説明図である。
図15】本実施形態の発電設備1の発電水路6に他の発電装置6bを設けた概略説明図である。
図16】他の実施形態の発電設備1Dの概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示すように、本実施形態の発電設備1は、水流によって発電する発電装置6aが設けられる、水路3を有する本体2と、本体2において水路3の下流側に設けられる貯留部30と、を備えている。なお、図中の矢印は水の流れを示している。
【0011】
<貯留部30>
図1図3に示すように、本実施形態の発電設備1は、本体2と隣接するように貯留部30が設けられている。この貯留部30は、所定の量の水を貯留しておくことができる貯留空間30hを有するものである。この貯留部30は、後述するように、本体2の供給流路5から水が供給されるとその水を貯留し、本体2の発電流路6に対して貯留した水を供給できる機能を有している。例えば、貯留部30は、その上端に形成された開口やその側壁の上部側面に形成された開口などの受水口30a(図3参照)を通して供給流路5から水が供給されるようになっている。
【0012】
<本体1>
図1に示すように、本実施形態の発電設備1は、本体2は、水路3と、供給流路5と、発電流路6と、を備えている。
【0013】
なお、図1では、供給流路5と発電流路6がそれぞれ2つ設けられているが、供給流路5と発電流路6を設ける数はとくに限定されない。また、供給流路5と発電流路6とは同じ数を設けなくてもよい。例えば、2つの供給流路5と1つの発電流路6を設けてもよいし、1つの供給流路5と2つの発電流路6を設けてもよい。しかし、供給流路5と発電流路6とを同数設けるようにすれば(つまり1つの供給流路5と1つの発電流路6を1セットとするようにすれば)、セット数を調整することで発電量のことなる本実施形態の発電設備1を容易に設計施工することができる。
【0014】
<水路3>
図1に示すように、本体2には、水を流すための水路3が設けられている。より詳しくいえば、本体2には、発電流路6から排出される水を供給流路5に供給するための水路3が設けられている。この水路3は、供給流路5と発電流路6とによって貯留部30によって貯留部30と連通されており、水路3と貯留部30との間で水が循環するように設けられている。具体的には、水路3には、供給流路5に向かって水を流す第一水路3aと、発電流路6から水が供給され発電流路6から供給された水を第一水路3aに供給する第二水路3bと、を有している。例えば、図1に示すように、水路3は、第一水路3aと第二水路3bとが互いに流路方向が平行でありかつ水の流れる方向が逆向きになるように設けることができる。
【0015】
なお、以下では、第一水路3aを水が流れる方向の上流側(図1では右側)を水路3の上流側といい、第一水路3aを水が流れる方向の下流側(図1では左側)を水路3の下流側という。したがって、水路3の第二水路3bでは、実際に水が流れる上流下流と、水路3の上流下流が逆になることになる。
【0016】
<供給流路5>
図1および図3に示すように、本体2は、水を流す水路3の第一水路3aから供給される水を貯留部30に供給する供給流路5が設けられている。上述した貯留部30の受水口30aは水路3の第一水路3aよりも上方に設けられており、供給流路5は、水路3の第一水路3aの位置から貯留部30の受水口30aの位置まで水を揚水して、貯留部30に水路3の第一水路3aの水を供給する機能を有している。具体的には、供給流路5には複数段の揚水室5a~5eが設けられており、複数段の揚水室5a~5eのうち、揚水室5aを除く揚水室5b~5eに設けられた揚水装置10によって順次水を揚水することによって貯留部30に水路3の第一水路3aの水を供給する機能を有している。揚水装置10の詳細は後述する。
【0017】
<発電流路6>
図2に示すように、本体2は、貯留部30内の水を利用して発電する発電装置6aが設けられた発電流路6を備えている。発電流路6は、貯留部30内の水を水路3の第二水路3bに向かって流す配管であり、上部配管7、中間配管8、下部配管9によって構成されている。まず、中間配管8は、その軸方向が鉛直方向に延びるように設けられた配管である。この中間配管8の下部の内部には、発電装置6aが設けられている。この発電装置6aは、中間配管8内を鉛直に流れる水によってタービン等を回して発電できる機能を有するものである。
【0018】
なお、発電装置6aはとくに限定されない。例えば、イムール工業株式会社製の水中タービン発電機等の公知の発電機を採用することができる。また、この中間配管8が、請求項1にいう「中間部」に相当するものとなり、この中間配管8の下端が、請求項1にいう「本体の上流側に位置する他端」に相当する端部になる。
【0019】
また、発電装置は、発電流路6において発電可能な位置であれば、どの位置に設けてもよい。例えば、チューブラ水車等の発電機を採用すれば、図14に示すように下部配管9内に設けることも可能である(図14の発電装置6b参照)。
【0020】
図2に示すように、中間配管8の上端には上部配管7の一端が接続されている。この上部配管7は、略U字状に形成された配管であり、その他端7aが貯留部30の貯留空間30h内の水W1に浸漬されている。この上部配管7の他端7aが、請求項1にいう「中間部よりも本体の下流側に位置する一端」に相当する端部になる。したがって、上部配管7の他端は、中間配管8の下端よりも上方に位置するように設けられる。
【0021】
図2に示すように、中間配管8の下端には下部配管9の一端が接続されている。この下部配管9は、その他端9aが水路3の第二水路3b内の水W2に浸漬された状態となるように設けられている。この下部配管9は、その流路の断面積が中間配管8の下端に接続された一端から他端に向かって緩やかに広がるように形成されている。つまり、下部配管9は、一般的なドラフトチューブとして機能する形状に形成されている。
【0022】
本実施形態の発電設備1は、以上のような構成を有するので、上部配管7の他端から下部配管9の他端まで水を流せば、サイフォン効果よる水流を発電流路6内に発生させることができる。すると、発電流路6内の水流を利用して発電装置6aによって発電することができる。
しかも、供給流路5を通して水路3の水を貯留部30の貯留空間30hに供給しているので、貯留部30→発電流路6→水路3→供給流路5→貯留部30の順に水を流して水を循環させることができる(図1参照)。したがって、水を有効に利用することができる。
【0023】
なお、上記例では、サイフォン効果より水流が発電流路6内に発生する場合を説明した。発電流路6は必ずしもサイフォン効果よる水流が発生するような構造となっていなくてもよい。例えば、上記例では、サイフォン効果を発生させるために上部配管7を略U字状とした場合を説明したが、上部配管7必ずしも略U字状でなくてもよく、特別なポンプなどの動力源によって水流を発生させることなく、貯留部30の貯留空間30h内の水W1に浸漬されている他端7aから上部配管7内に水が流入し下部配管9の他端9aまで流れる水流が発電流路6内に発生するようになっていればよい。例えば、図16に示すように、本体2の上部に設けられている貯水池30から単に重力によって水が発電流路6に流入するような構造としてもよい。
【0024】
<揚水装置10>
つぎに、揚水装置10について説明する。
【0025】
<複数段の揚水室5a~5e>
まず、揚水装置10が設けられる複数段の揚水室5a~5eを説明する。
図3に示すように、供給流路5には、複数段の揚水室5a~5eが設けられている。この複数段の揚水室5a~5eは、上流側(図1~3では右側)以外の3方向に形成された側壁を有しており、上流側は側壁がない開口となった室である(図1参照)。この複数段の揚水室5a~5eのうち、最上段に位置する揚水室5a以外の揚水室5b~5eには揚水装置10が設けられている。
【0026】
なお、最上段に位置する揚水室5aは、その貯留部30側の側壁に排水口が設けられており、この排水口が貯留部30の受水口30aと連通されている。この排水口を通して、揚水室5aに揚水された水が受水口30aを通して貯留部30に供給される。なお、揚水室5aの貯留部30側の側壁と貯留部30の側壁とが共通化されている場合には、貯留部30の受水口30aが排水口となる。
【0027】
<揚水装置10>
図3に示すように、揚水室5b~5eに設けられた揚水装置10は、揚水容器11と、この揚水容器11を昇降する昇降装置15と、を備えている。
【0028】
<揚水容器11>
図3に示すように、揚水容器11は、内部に水が供給される空間11hを有する中空な容器である。この揚水容器11は、底壁11aと、底壁11aにおける上流側の端縁と側方の端縁に立設された側壁11b~11dと、を備えている(図1参照)。つまり、揚水容器11は、上部に設けられた開口(上部開口)と、空間11hの2つの側壁11c,11dの下流側端部間に設けられた開口(下流側開口)と、が形成された構造を有している。この揚水容器11は、その底壁11aおよび側壁11b~11dの下流側の端縁が揚水室5b~5eの下流側の側壁5wと密着した状態で移動できるように設けられている。つまり、揚水容器11の底壁11aおよび側壁11b~11dの下流側の端縁(以下では単に揚水容器11の下流側の端縁という場合がある)と揚水室5b~5eの下流側の側壁5wの表面との間がほぼ液密になるように、揚水容器11は形成されている。しかも、後述するように、揚水容器11が上部給水位置まで移動する間も、揚水容器11の下流側の端縁と揚水室5b~5eの下流側の側壁5wの表面との間がほぼ液密になるように、揚水容器11は形成されている(図4参照)。
【0029】
なお、図示しないが、揚水室5eに設けられている揚水容器11は、底壁11aの下方に水が溜まっても揚水容器11が所定の位置まで下降できるようになっている。例えば、揚水容器11の底壁11aに、貫通孔を設け、この貫通孔を開閉するように揺動する蓋状部材を設ける。そして、蓋状部材は、下方から水圧が加わると上方に揺動するようにする。すると、揚水室5e内に水が溜まっても、蓋状部材が揺動して貫通孔を開けば水の抵抗を軽減して揚水容器11が下方に移動できるようになる。
【0030】
また、後述するように、揚水容器11が上部給水位置まで移動する際には、揚水容器11の下流側の端縁は、上段の揚水室(図4では揚水室5d)に設けられている揚水容器11の側壁11bの上流側の表面(以下では単に上段揚水容器11の前面という場合がある)に沿って移動する。したがって、揚水容器11の下流側の端縁と上段揚水容器11の前面との間もほぼ液密になるように、揚水容器11は形成されている。
【0031】
<昇降装置15>
昇降装置15は、揚水室5b~5e内において、下部受水位置と上部給水位置との間で揚水容器11を昇降させるものである。この昇降装置15の構成はとくに限定されないが、例えば、シリンダ機構などを採用することができる。
【0032】
ここで、下部受水位置とは、揚水装置10の揚水容器11に下段に位置する揚水室(下段揚水室)に設けられた揚水装置(下段揚水装置)の揚水容器(下段揚水容器)から供給される水を受け入れる位置である(図4(A)参照)。例えば、揚水室5b~5dに設けられた揚水装置10であれば、揚水室5c~5eに設けられた揚水装置10の揚水容器11から水が供給される位置である。なお、揚水室5eでは、水路3の第一水路3aから水が供給される位置になる。つまり、揚水室5eでは、揚水容器11の上端は水路3の第一水路3aの水面よりも上部開口が下方に位置する位置が下部受水位置となる。
【0033】
また、上部給水位置とは、揚水装置10の揚水容器11から上段に位置する揚水室(上段揚水室)に設けられた揚水装置(上段揚水装置)の揚水容器(上段揚水容器)に水を供給する位置である(図4(B)参照)。例えば、揚水室5c~5eに設けられた揚水装置10であれば、揚水室5b~5dに設けられた揚水装置10の揚水容器11に水を供給する位置である。なお、揚水室5bに設けられた揚水装置10であれば、揚水容器11の底壁11aの上面が揚水室5aの底面と同じ高さになる位置になる。
【0034】
以上のような構造を有するので、揚水室5b~5eに設けられた揚水装置10を順次作動させれば、水路3の第一水路3→揚水室5daから供給される水を、揚水室5e→揚水室5d→揚水室5c→揚水室5b→揚水室5aの順に揚水して、揚水室5aから貯留槽30に水を供給することができる。
【0035】
なお、揚水容器11の下流側の端縁と揚水室5b~5eの下流側の側壁5wの表面との間、および、揚水容器11の下流側の端縁と上段揚水容器11の前面との間が、互いに摺動可能かつほぼ液密になるように維持する方法はとくに限定されない。例えば、揚水容器11の下流側の端縁や、揚水室5b~5eの下流側の側壁5wの表面、上段揚水容器11の前面に、シール部材などを設けて液密とすることができる。
【0036】
また、揚水容器11の底壁11aは、水平になっていてもよいが、下流側に向かって下傾した傾斜面となっていてもよい。揚水容器11の底壁11aを傾斜面とすれば、上部給水位置において、揚水装置10の揚水容器11から上段揚水室の上段揚水装置の上段揚水容器に水をスムースに供給することができる。
【0037】
また、揚水容器11は、側壁11bだけを設けて、側壁11c,11dを設けなくてもよい。この場合には、揚水室5b~5eの側面と揚水容器11の底壁11aと側壁11bの側方の端縁との間が互いに摺動可能かつほぼ液密になるように維持すればよい。
【0038】
<開閉扉を設ける場合>
また、揚水容器11において、側壁11cの下流側の端縁と側壁11dの下流側の端縁との間の開口(下流側開口)に、この下流側開口を開閉する開閉扉を設けてもよい。この場合、開閉扉を閉じた状態では、底壁11a、側壁11b~11dおよび開閉扉によって、上部開口を除き空間11hを液密に維持できる。そして、上部給水位置まで揚水容器11が上昇すると開閉扉が開くようにしておけばよい。すると、上述したように、揚水容器11の底壁11aおよび側壁11b~11dの下流側の端縁と揚水室5b~5eの下流側の側壁5wの表面との間等を液密にする必要がない。なお、この場合、開閉扉の構造や開閉扉を開くタイミングを制御する構成はとくに限定されない。例えば、下流側開口に沿って移動するシャッターを設け、このシャッターをばね等によって常時上方に付勢した状態としておき、このシャッターに引っ掛かる突起を上段揚水容器11の前面に設けておく。すると、下段揚水容器11が上段揚水容器11の前面に沿って移動するとシャッターに突起が引っ掛かり下段揚水容器11が上昇するとシャッターが下段揚水容器11の移動に追従できず下流側開口が開かれるようになる。
【0039】
<他の揚水装置20>
図5図7に示すように、揚水室5b~5eに設ける揚水装置は、上述したような揚水装置10に限られず、以下のような揚水装置20としてもよい。
【0040】
図6に示すように、揚水装置20は、揚水容器21を揺動させる揺動装置25と、を備えている。
【0041】
<揚水容器21>
図6に示すように、揚水容器21は、内部に水が供給される空間21hを有する中空な容器である。この揚水容器11は、底壁21aと、底壁21aにおける下流側の端縁と側方の端縁に立設された側壁21b~21dと、を備えている(図5参照)。つまり、揚水容器21は、上部に設けられた開口(上部開口)と、空間11hの2つの側壁21c,21dの水路の上流側に設けられた開口(上流側開口)と、が形成された構造を有している。
【0042】
<揺動装置25>
揺動装置25は、揚水室5b~5e内において、揚水容器21を下部受水位置と上部給水位置との間で揺動させるものである。具体的には、後述する上部給水位置に配置された状態において、揚水容器21の下流側の側壁21b(下流側壁)の上端が、揚水装置20の揚水容器21から上段に位置する揚水室(上段揚水室)に設けられた揚水装置(上段揚水装置)の揚水容器(上段揚水容器)の底壁の上面と同等程度の高さに位置するように揚水容器21を揺動させるものである(図7参照)。この揺動装置25の構成はとくに限定されないが、例えば、揚水室5b~5eの側壁に回転可能に設けられた回転軸26と、この回転軸26を回転させるモータなどの駆動源(図示せず)と、によって構成することができる。つまり回転軸26を上段揚水室の上流側端部近傍に設けておき、この回転軸26に揚水容器21の下流側の側壁21bの上端近傍を固定しておく。すると、駆動源によって回転軸26を回転させることによって、揚水容器21を下部受水位置と上部給水位置との間で揺動させることができ、しかも、上部給水位置では、揚水容器21内の水を上段揚水装置の上段揚水容器に供給することができる。
【0043】
ここで、下部受水位置とは、揚水装置20の揚水容器21に下段に位置する揚水室(下段揚水室)に設けられた揚水装置(下段揚水装置)の揚水容器(下段揚水容器)から供給される水を受け入れる位置である(図7(A)参照)。例えば、揚水室5b~5dに設けられた揚水装置20であれば、揚水室5c~5eに設けられた揚水装置20の揚水容器21から水が供給される位置である。なお、揚水室5eでは、水路3の第一水路3aから水が供給される位置になる。つまり、揚水室5eでは、揚水容器11の底壁21aの上面が水路3の第一水路3aの水面よりも下方に位置する位置が下部受水位置となる。
【0044】
また、上部給水位置とは、揚水装置20の揚水容器21から上段揚水室に設けられた上段揚水装置の上段揚水容器に水を供給する位置である(図7(B)参照)。例えば、揚水室5c~5eに設けられた揚水装置20であれば、揚水室5b~5dに設けられた揚水装置20の揚水容器21に水を供給する位置である。なお、揚水室5bに設けられた揚水装置20であれば、揚水容器21の下流側の側壁21bの上端が揚水室5aの底面と同じ高さになる位置になる。
【0045】
以上のような構造を有するので、揚水室5b~5eに設けられた揚水装置20を順次作動させれば、水路3の第一水路3→揚水室5daから供給される水を、揚水室5e→揚水室5d→揚水室5c→揚水室5aの順に揚水して、揚水室5aから貯留槽30に水を供給することができる。
【0046】
なお、揚水容器21は、側壁21bだけを設けて、側壁21c,21dを設けなくてもよい。この場合には、揚水室5b~5eの側面と揚水容器21の底壁21aと側壁21bの側方の端縁との間が互いに摺動可能かつほぼ液密になるように維持すればよい。揚水室5b~5eの側面と揚水容器21の底壁21aと側壁21bの側方の端縁との間を互いに摺動可能かつほぼ液密になるように維持する方法はとくに限定されない。例えば、揚水室5b~5eの側面や揚水容器21の底壁21aと側壁21bの側方の端縁にシール部材などを設けて液密とすることができる。
【0047】
また、揚水容器21の下流側の側壁21bは、揚水容器21が上部給水位置に配置された状態において、下流側に向かって下傾する傾斜面となるように形成してもよい。つまり、揚水容器21の下流側の側壁21bは、揚水容器21が上部給水位置に配置された状態において、上段揚水装置の上段揚水容器に向かって下傾する傾斜面となっていてもよい。揚水容器21の下流側の側壁21bをかかる傾斜面とすれば、上部給水位置において、揚水装置20の揚水容器21から上段揚水室の上段揚水装置の上段揚水容器に水をスムースに供給することができる。
【0048】
また、揚水容器21が上部給水位置に揺動した際に、揚水室5b~5e内(とくに揚水室5e内)に水が入って揚水容器21が上部給水位置から下部受水位置に戻る抵抗となる場合がある。この抵抗に抗して揚水容器21を下部受水位置に戻すために、揺動装置25は揚水容器21を上部給水位置から下部受水位置に戻す力を発生させる装置を設けてもよい。例えば、常時、揚水容器21を上部給水位置から下部受水位置に戻す力を発生させるバネを揚水容器21と揚水室5b~5eとの間に設けておく。すると、駆動源が回転軸26を回転させて揚水容器21を上部給水位置から下部受水位置に戻す力を軽減することができる。
【0049】
また、図示しないが、揚水容器21の底壁21aに、その下方に水が溜まっても水圧を逃がす構成としても、揚水容器21が下部受水位置に戻すことができる。例えば、揚水容器21の底壁21aに、貫通孔を設け、この貫通孔を開閉するように揺動する蓋状部材を設ける。そして、蓋状部材は、下方から水圧が加わると上方に揺動するようにする。すると、揚水室5e内に水が溜まっても、蓋状部材が揺動して貫通孔を開けば水の抵抗を軽減して揚水容器21を下部受水位置に戻すことができる。
【0050】
<発電設備1C>
上述したような発電設備1Cにおいて、供給流路5は、以下のよう構成としてもよい。
【0051】
図8図10に示すように、本体2は、水を流す水路3の第一水路3aから供給される水を貯留部30に供給する供給流路5が設けられている。上述した貯留部30の受水口30a(図10参照)は水路3の第一水路3aよりも上方に設けられており、供給流路5は、水路3の第一水路3aの位置から貯留部30の受水口30aの位置まで水を揚水して、貯留部30に水路3の第一水路3aの水を供給する機能を有している。具体的には、供給流路5には受水口30aと連通された揚水室5aと、水路3の第一水路3aと連通された給水室5cと、給水室5c内の水を揚水室5aまで揚水する揚水装置を備えた複数の揚水室5bを備えている。
【0052】
<複数段の揚水室5a,給水室5c>
揚水室5aは、貯留部30の受水口30aと連通された流路であり、揚水装置によって揚水された水が供給される室である。なお、揚水室5aが特許請求の範囲にいう上部流路に相当する。
給水室5cは、水路3の第一水路3aと連通された連通された流路であり、水路3の第一水路3aから揚水装置によって揚水する水が供給される室である。なお、給水室5cが特許請求の範囲にいう下部流路に相当する。
【0053】
<複数段の揚水室5b>
揚水室5bは、給水室5cの水を揚水室5aまで揚水する揚水装置が設けられる室である。この揚水室5bは、揚水装置の昇降容器40が昇降する昇降空間を有している。この揚水室5bは、下部には水路3の第一水路3aと連通する給入口sが設けられており(図9参照)、上部には揚水室5aと連通する排水口eが設けられている(図8参照)。この給入口sおよび排水口eには、昇降空間内と外部、つまり、昇降空間内と給水室5cや揚水室5aとを液密に遮断する遮断扉が設けられている。この遮断扉は、揚水装置の昇降容器40に応じて開閉されるものである。つまり、給入口sに設けられた遮断扉は、給水室5cから揚水装置の昇降容器40に水を供給する際に開放され、所定の量の水が揚水装置の昇降容器40に供給されると閉じるように作動されている。また、排水口eに設けられた遮断扉は、揚水装置の昇降容器40から揚水室5aに水を供給する際に開放され、揚水室5aへの水の供給が終了すると閉じるように作動されている。
【0054】
<揚水装置>
図10に示すように、揚水室5bの昇降空間内には、揚水装置の昇降容器40が昇降可能に設けられている。昇降容器40は、内部に水を貯留できる貯留空間を有する構造に形成されている。また、昇降容器40は、その上部に受水口を有しており、その側面には排水口を有している。この側面の排水口には貯留空間と外部との間を連通遮断できる遮断扉が設けられている。
【0055】
揚水装置は、昇降容器40を昇降する昇降装置41を備えている。この昇降装置41は、ウインチなどの巻上機であり、ドラムに巻き取られているワイヤー41wの一端が昇降容器40に連結されている。したがって、昇降装置41によってワイヤー41wを巻き取り繰り出しすることによって昇降空間内で昇降容器40を昇降させることができる。なお、昇降空間内における昇降容器40の昇降はレールや車輪などの案内装置によってその昇降を案内すれば安定して昇降空間内で昇降容器40を昇降させることができる。また、昇降装置は、揚水室5bの昇降空間内で昇降容器40を昇降できる構成であればよく、とくに限定されない。例えば、昇降装置は、図3の昇降装置15のようなシリンダ機構を採用することも可能である。また、昇降装置としてクレーンを採用することも可能である。
【0056】
なお、昇降装置として電動式クレーンや電動式の巻上機などの電動機器を使用する場合には、本体2等に太陽光パネルと蓄電装置を有する太陽光発電設備を設置しておき、太陽光パネルが発電した電力を、直接、電動式クレーンや電動式の巻上機など昇降装置に供給したり、太陽光パネルが発電した電力を蓄電器に充電しておき必要な状況で蓄電装置から昇降装置に供給したりすることが望ましい。また、後述するように本発明の発電設備を地上に設置する場合や地上と近接した場所に設置する場合には、昇降装置等に電力を供給する太陽光発電設備は地上に設置してもよいし、太陽光パネルは地上に設置し蓄電池は本発明の発電設備の本体2等に設置してもよい。昇降装置がシリンダ機構を有する場合(図3図4参照)や、揺動装置25によって水を揚水する場合(図6図7参照)でも蓄電装置から電力供給を受けることができることは同様である。また、昇降装置等に電力を供給する設備は太陽光発電設備に限られず、自然エネルギーを利用して発電できる設備を採用することも可能である。例えば、風力発電設備や潮力発電設備などの自然エネルギー発電設備も採用することができる。この場合も、自然エネルギー発電設備を設置する場所は、本発明の発電設備の本体2等に設置してもよいし、本発明の発電設備に隣接する地上や海上等に設置してもよい。
【0057】
また、蓄電装置は、小型の蓄電池等を充電する機能を有していることが望ましい。かかる機能を有していれば、災害時に蓄電装置の電力を小型の蓄電池等に充電して小型の蓄電池等を必要な場所に運べば、本発明の発電設備から離れた場所にも電力を供給することができる。また、本発明の発電設備が発電する電力や蓄電装置に蓄電された電力は様々な用途に使用することができる。例えば、本発明の発電設備や蓄電装置に蓄電された電力によって水素を製造し水素をカートリッジ等の水素貯蔵器に貯蔵しておくようにしてもよい。すると、通常時に余剰電力で水素を製造しておけば、その水素を災害時に利用することが可能になる。また、災害時でも製造した水素を水素が必要となる設備などに供給することができる。この場合、水素製造設備を本発明の発電設備が備えていてもよいし、別途設けた水素製造設備に本発明の発電設備から電力を供給するようにしてもよい。
【0058】
また、昇降装置は、電動式クレーンと電動式の巻上機とを両方設置し、両者を交互に作動させてもよい。また、複数の電動式クレーンと電動式の巻上機を設置した場合には、いつくかの電動式クレーンと電動式の巻上機は同時に稼働し、いくつかの電動式クレーンと電動式の巻上機は作動を停止してもよい。つまり、電動式クレーンと電動式の巻上機を適宜切り換えて使用したり同時使用したりしてもよい。
【0059】
揚水装置は、昇降容器40が下方に移動した場合に、受水口と揚水室5bの給入口sとを通して給水室5cから水が昇降容器40の貯留空間内に供給できる位置まで下降させるように制御されている。例えば、昇降容器40の受水口を、受水口の上端が給水室5cの底面と同じ高さとなる位置や、受水口の上端が給水室5c内の水面より低くなる位置まで下降させるように制御されている。なお、給入口sに設けられた遮断扉は、昇降容器40が前記位置に配置されると開放され、所定の量の水が揚水装置の昇降容器40に供給されると閉じるように作動が制御されている。
【0060】
また、揚水装置は、昇降容器40が上方に移動した場合に、排水口と揚水室5bの排水口eとを通して昇降容器40の貯留空間内の水を揚水室5aに供給できる位置まで上昇させるように制御されている。例えば、昇降容器40の排水口を、排水口の下端が揚水室5aの底面が同じ高さとなる位置や、排水口の下端が揚水室5a内の水面より高くなる位置まで上昇させるように制御されている。また、揚水室5bの排水口eに設けられた遮断扉は、揚水装置の昇降容器40から揚水室5aに水を供給する際に開放され、揚水室5aへの水の供給が終了すると閉じるように作動が制御されている。
【0061】
以上のような構造を有するので、揚水室5bに設けられた揚水装置の昇降容器40を昇降させれば、給水室5cの水を揚水室5daに揚水して、揚水室5aから貯留槽30に水を供給することができる。
【0062】
<揚水室5bについて>
上記例では、揚水室5bを複数設ける場合を説明したが、揚水室5bを設ける数はとくに限定されない。揚水室5bは一つだけ設けてもよいし2つ以上設けてもよい。複数の揚水室5bを設ける場合、複数の揚水室5bの配置はとくに限定されない。図8図10に示すように、複数の揚水室5bは給水室5cの長手方向に沿って設ければ、発電設備を小型化できるという利点が得られる。
【0063】
<昇降容器40について>
昇降容器40は、揚水室5bの下部に水が溜まった場合でも、昇降容器40が所定の位置まで下降できるような構造を有していることが望ましい。例えば、昇降容器40の底壁に、貫通孔を設け、この貫通孔を開閉するように揺動する蓋状部材を設ける。そして、蓋状部材は、下方から水圧が加わると上方に揺動するようにする。すると、揚水室5b内に水が溜まっても、蓋状部材が揺動して貫通孔を開けば水の抵抗を軽減して昇降容器40が下方に移動できるようになる。
【0064】
<発電装置について>
発電設備1Cにおいても、 発電装置は、発電流路6において発電可能な位置であれば、どの位置に設けてもよい。例えば、チューブラ水車等の発電機を採用すれば、図15に示すように下部配管9内に設けることも可能である(図15の発電装置6b参照)。
【0065】
<発電流路6について>
発電流路6は、必ずしもサイフォン効果よる水流が発生するような構造となっていなくてもよい。本体2の上部に設けられている貯留部30から単に重力によって水が発電流路6に流入するような構造としてもよい。例えば、図16に示すように、本体2の上部に貯水池30を設けて、この貯留部30内の貯留空間30hから発電流路6内に水か流れこむような構造としてもよい。この場合には、上部配管7は単なるL字管を使用することができる。
【0066】
<発電設備の設置について>
本発明の発電設備は、地上や船舶の上など設置する場所は限られない。地上に設置する場合には、工場などの建屋に発電設備を設置してもよい。また、本体2を、河川や海上、貯水池などに浮かべることができるフロート構造を有していてもよい。フロート構造を有していれば、発電設備を河川や海上、貯水池などに設置しておき、必要なときに船舶で牽引するなどの方法で電力が必要な場所に発電設備を移動させることができる。また、病院、公共施設などの災害時などでも電力供給が優先される施設や工場などと隣接する場所にプールや貯水池などの大量の水を溜めておく貯水場所を設けた場合には、その貯水場所に発電設備を設置してもよい。河川や海上、貯水池に発電設備を設置する場合には、常時は、河川等の地盤に立設されたポールなどにその軸方向には移動できるように発電設備の本体2を連結して設置していてもよい。すると、本発明の発電設備が流されることを防止しつつ河川等の水位の変動があっても発電設備を安定した状態で維持することができる。
【0067】
<船舶用発電設備>
船舶であれば、図12に示すように発電設備Dを設けることができる。
図12に示すように、船舶Sの船底部には発電設備Dが設けられている。発電設備Dは、流路部Shと、発電部SDとから更生されている。なお、図12(B)に示すように、発電設備Dは、複数の流路部Shと複数の発電部SDとを有しているが、流路部Shおよび発電部SDを設ける数はとくに限定されず、1つでもよい。以下の説明では、一つの流路部Shとその流路Shに設けられた発電部SDについて説明する。
【0068】
図12に示すように、船舶Sの船底SBの船首側には流路Shの流入口Saが設けられている。流入口Saよりも船舶Sの船尾側の船底SBには、流入口Saよりも下方に位置するように流路Shの流出口Sbが設けられている。この流入口Saと流入口Saとの間は、配管などによって連通されている。つまり、流路Shは、配管などによって形成されている。
【0069】
流路Shの流入口Saと流出口Sbとの間には、発電部SDが設けられている。この発電部SDは、流路Shの一部を形成する発電流路を備えている。この発電流路は、流路部Shの流入口Saと連通された給水口と発電部SDとをつなぐ上流側流路Sh1と、給水口よりも下方に位置しする流出口Sbと発電部SDとの間をつなぐように設けられた下流側流路Sh2とを有している。つまり、発電流路は、給水口から供給される水が排水口に向かって落下するように設けられている。そして、この発電流路には、給水口と排水口の間に発電装置が設けられている。この発電装置は、給水口から前記排水口に向かって落下する水を利用して発電を行うものである。なお、発電装置は、において発電可能な位置であれば、どの位置に設けてもよい。例えば、発電部SDを鉛直な配管とし、下流側流路Sh2内にチューブラ水車等の発電機を採用することもできる。
【0070】
以上のような発電設備Dを船舶Sに設ければ、船舶の航行中は随時船首側の流入口Saから水が流入し流路Shを通って船尾側の流出口Sbから流出するが、流路Shの発電部SDを通過する際には、発電装置によって発電することができる。
【0071】
なお、上記例では、船尾側の流出口Sbが流入口Saよりも下方になるように設けられているが、船舶Sの航行中において流出口Sbが流入口Saよりも下方になるように設けられていればよい。船舶Sが停船している状態や船舶Sが後退しているような状態(船尾側に航行しているような状態)では、流入口Saと流出口Sbとが同じ高さになる位置や、流出口Sbが流入口Saよりも上方になる状態が生じる位置に流入口Saおよび流出口Sbを設けてもよい。
【0072】
また、流出口Sbが喫水線よりも低い位置に形成されている場合、つまり、流出口Sbが水中に位置する場合には、流路Sh内を流入口Saから流出口Sbに水が流れない可能性がある。そこで、流出口Sbを喫水線よりも高い位置に設け、流路Sh内の水を流出口Sbまで揚水する揚水装置Spを設けてもよい(図13参照)。揚水装置Spの構成はとくに限定されないが、上述した発電設備1に採用されている揚水装置を揚水装置Spとして採用することができる。なお、揚水装置Spは、複数の流路部Shを設ける場合には各水路Shに揚水装置Spをそれぞれ設けてもよい。また、複数の流路部Shに共通の揚水装置Spを設けてもよい。つまり、一つの揚水装置Spで複数の流路部Shの水を揚水するようにしてもよい。この場合、揚水装置Spの設置スペースを小さくできるので、発電設備D全体の設置スペースも小さくできる。
【0073】
また、海上を航行する船舶に発電設備Dを設ける場合には、発電設備Dを形成する装置や部材(鋼管や鋼板、水力発電装置等)は、海水に対する耐腐食性に優れた材料によって形成することが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の発電設備は、低水路と高水敷と堤防とを有する水路やその他の様々な場所に設置する構造物として適している。
【符号の説明】
【0075】
1 発電設備
2 本体
3 水路
5 供給流路
5a~5e 揚水室
6 発電流路
6a 発電装置
6b 発電装置
10 揚水装置
11 揚水容器
15 昇降装置
20 揚水装置
21 揚水容器
25 揺動装置
30 貯留部
40 昇降容器
D 発電設備
S 船舶
SB 船底
Sh 流路部
Sa 流入口
Sb 流出口
SD 発電部
Sp 揚水装置



図1
図2
図3
図4
図5
図6
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