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特開2024-118467成形機制御装置、成形システム、成形機制御方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118467
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】成形機制御装置、成形システム、成形機制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/77 20060101AFI20240823BHJP
【FI】
B29C45/77
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2024034403
(22)【出願日】2024-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2023036958
(32)【優先日】2023-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023181468
(32)【優先日】2023-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】522436802
【氏名又は名称】株式会社プラーツ
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 元
(72)【発明者】
【氏名】徳満 勝久
(72)【発明者】
【氏名】長田 直也
(72)【発明者】
【氏名】木田 拓充
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AP02
4F206AP05
4F206AR02
4F206JA07
4F206JF01
4F206JL02
4F206JM04
4F206JN11
4F206JN14
4F206JP13
4F206JP14
4F206JP17
4F206JQ41
4F206JQ51
(57)【要約】
【課題】溶融樹脂に加えるべき目標圧力を適切な圧力に設定することができる成形機制御装置、成形システム、成形機制御方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】成形機制御装置1は、溶融樹脂を加圧する際に発生するAE波を計測するAE波センサ26A、26Bにより検出されたAE波の振幅の大きさを示すAE波情報を取得するAE波情報取得部111と、吐出ノズル22から吐出する溶融樹脂の指示流量と、AE波情報が示す振幅の大きさと、吐出ノズル22のノズル径と、に基づいて、シリンダ21内の溶融樹脂を加圧機構23により加圧するときの目標圧力を推定する目標圧力推定部115と、シリンダ21内の溶融樹脂に加わる圧力が目標圧力となるように制御する圧力制御部116と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融樹脂を収容するシリンダと、シリンダに連通した吐出ノズルと、前記シリンダ内の溶融樹脂を加圧することにより、吐出ノズルから溶融樹脂を吐出させる加圧機構と、を備える成形機を制御する成形機制御装置であって、
前記溶融樹脂を加圧する際に発生するアコースティックエミッション波を計測するアコースティックエミッション波センサにより検出されたアコースディックエミッション波の振幅の大きさを示すアコースティックエミンション波情報を取得する第1アコースティックエミッション波情報取得部と、
前記吐出ノズルから吐出する前記溶融樹脂の指示流量と、前記アコースティックエミッション波情報が示す振幅の大きさと、吐出ノズルのノズル径と、に基づいて、前記シリンダ内の溶融樹脂を前記加圧機構により加圧するときの目標圧力を推定する目標圧力推定部と、
前記シリンダ内の前記溶融樹脂に加わる圧力が目標圧力となるように制御する圧力制御部と、を備える、
成形機制御装置。
【請求項2】
前記シリンダ内の溶融樹脂の温度を取得する第1温度情報取得部を更に備え、
前記目標圧力推定部は、前記溶融樹脂の指示流量と、前記アコースティックエミッション波情報が示す振幅の大きさと、吐出ノズルのノズル径と、とともに、前記溶融樹脂の温度と、に基づいて、前記シリンダ内の溶融樹脂を前記加圧機構により加圧するときの目標圧力を推定する、
請求項1に記載の成形機制御装置。
【請求項3】
前記アコースティックエミッション波センサは、少なくとも前記吐出ノズルに装着され、前記吐出ノズルに伝達するアコースティックエミッション波を検出する、
請求項1または2に記載の成形機制御装置。
【請求項4】
前記指示流量と、前記溶融樹脂の温度と、前記アコースティックエミッション波情報が示す振幅の大きさと、前記吐出ノズルのノズル径と、から前記目標圧力を推定するための圧力推定モデルを示す圧力推定モデル情報を記憶する圧力推定モデル記憶部と、
利用者により指定された変更後の目標圧力を示す変更後圧力情報を取得する圧力取得部と、
前記指示流量と、前記溶融樹脂の温度と、前記アコースティックエミッション波情報が示す振幅の大きさと、前記ノズル径と、前記変更後圧力情報が示す前記目標圧力と、に基づいて、前記圧力推定モデル情報を生成し、生成した前記圧力推定モデル情報で前記圧力推定モデル記憶部が記憶する前記圧力推定モデル情報を更新するモデル更新部と、を更に備え、
前記目標圧力推定部は、前記圧力推定モデルを用いて、前記指示流量と、前記溶融樹脂の温度と、前記アコースティックエミッション波情報が示す振幅の大きさと、前記吐出ノズルのノズル径と、から前記目標圧力を推定する、
請求項1または2に記載の成形機制御装置。
【請求項5】
溶融樹脂を収容するシリンダと、シリンダに連通した吐出ノズルと、前記シリンダ内の溶融樹脂を加圧することにより、吐出ノズルから溶融樹脂を吐出させる加圧機構と、を備える成形機と、
前記溶融樹脂を加圧する際に発生するアコースティックエミッション波を計測するアコースティックエミッション波センサにより検出されたアコースディックエミッション波の振幅の大きさを示すアコースティックエミッション波情報を取得するアコースティックエミッション波情報取得部と、
前記吐出ノズルから吐出する前記溶融樹脂の指示流量と、前記アコースティックエミッション波情報が示す振幅の大きさと、吐出ノズルのノズル径と、に基づいて、前記シリンダ内の溶融樹脂を前記加圧機構により加圧するときの目標圧力を推定する目標圧力推定部と、
前記シリンダ内の前記溶融樹脂に加わる圧力が目標圧力となるように制御する圧力制御部と、を備える、
成形システム。
【請求項6】
前記加圧機構は、
前記シリンダ内に収容された樹脂を搬送するスクリュと、
前記スクリュの基端部に連結されたモータと、を有し、
前記スクリュが前記溶融樹脂を搬送するときの前記モータのトルクと、前記モータに供給する電流の電流値と、の相関情報に基づいて、前記成形機から吐出する前記溶融樹脂のレオロジ特性を判定するレオロジ特性判定装置を更に備える、
請求項5に記載の成形システム。
【請求項7】
前記アコースティックエミッション波センサにより検出されたアコースディックエミッション波のピーク強度と、前記シリンダ内の溶融樹脂の温度と、の相関情報に基づいて、前記成形機から吐出する前記溶融樹脂のレオロジ特性を判定するレオロジ特性判定装置を更に備える、
請求項5に記載の成形システム。
【請求項8】
溶融樹脂を収容するシリンダと、シリンダに連通した吐出ノズルと、前記シリンダ内の溶融樹脂を加圧することにより、吐出ノズルから溶融樹脂を吐出させる加圧機構と、を備える成形機を制御する成形機制御方法であって、
前記溶融樹脂を加圧する際に発生するアコースティックエミッション波を計測するアコースティックエミッション波センサにより検出されたアコースディックエミッション波の振幅の大きさを示すアコースティックエミッション波情報を取得するステップと、
前記吐出ノズルから吐出する前記溶融樹脂の指示流量と、前記アコースティックエミッション波情報が示す振幅の大きさと、吐出ノズルのノズル径と、に基づいて、前記シリンダ内の溶融樹脂を前記加圧機構により加圧するときの目標圧力を推定するステップと、
前記シリンダ内の前記溶融樹脂に加わる圧力が目標圧力となるように制御するステップと、を含む、
成形機制御方法。
【請求項9】
コンピュータを、
溶融樹脂を収容するシリンダと、シリンダに連通した吐出ノズルと、前記シリンダ内の溶融樹脂を加圧することにより、吐出ノズルから溶融樹脂を吐出させる加圧機構と、を備える成形機が、前記溶融樹脂を加圧する際に発生するアコースティックエミッション波を計測するアコースティックエミッション波センサにより検出されたアコースディックエミッション波の振幅の大きさを示すアコースティックエミッション波情報を取得するアコースティックエミッション波情報取得部、
前記吐出ノズルから吐出する前記溶融樹脂の指示流量と、前記アコースティックエミッション波情報が示す振幅の大きさと、吐出ノズルのノズル径と、に基づいて、前記シリンダ内の溶融樹脂を前記加圧機構により加圧するときの目標圧力を推定する目標圧力推定部、
前記シリンダ内の前記溶融樹脂に加わる圧力が目標圧力となるように制御する圧力制御部、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形機制御装置、成形システム、成形機制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
溶融樹脂を収容するシリンダと、吐出ノズルと、吐出ノズルから溶融樹脂を吐出させるピストンと、を備え、吐出ノズルから吐出される溶融樹脂の指示流量、溶融樹脂の温度並びに溶融樹脂の温度から見積もった溶融樹脂の塑性粘度の理論値等に基づいて、シリンダ内の溶融樹脂に対するターゲット圧力を算出し、シリンダ内の溶融樹脂の圧力をターゲット圧力となるように制御する射出成形機が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-154934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された射出成形機では、射出成形機が実際に使用されている環境等に起因してシリンダ内に収容された溶融樹脂の塑性粘度が、溶融樹脂の塑性粘度の理論値と乖離している場合がある。この場合、ターゲット圧力を適切に算出できない虞がある。
【0005】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたもので、溶融樹脂に加えるべき目標圧力を適切な圧力に設定することができる成形機制御装置、成形システム、成形機制御方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る成形機制御装置は、
溶融樹脂を収容するシリンダと、シリンダに連通した吐出ノズルと、前記シリンダ内の溶融樹脂を収容するシリンダと、シリンダに連通した吐出ノズルと、前記シリンダ内の溶融樹脂を加圧することにより、吐出ノズルから溶融樹脂を吐出させる加圧機構と、を備える成形機を制御する成形機制御装置であって、
前記溶融樹脂を加圧する際に発生するアコースティックエミッション波を計測するアコースティックエミッション波センサにより検出されたアコースディックエミッション波の振幅の大きさを示すアコースティックエミッション波情報を取得するアコースティックエミッション波情報取得部と、
前記吐出ノズルから吐出する前記溶融樹脂の指示流量と、前記アコースティックエミッション波情報が示す振幅の大きさと、吐出ノズルのノズル径と、に基づいて、前記シリンダ内の溶融樹脂を前記加圧機構により加圧するときの目標圧力を推定する目標圧力推定部と、
前記シリンダ内の前記溶融樹脂に加わる圧力が目標圧力となるように制御する圧力制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、目標圧力推定部が、吐出ノズルから吐出する溶融樹脂の指示流量と、溶融樹脂を加圧する際に発生するアコースティックエミッション波の振幅の大きさと、吐出ノズルのノズル径と、に基づいて、シリンダ内の溶融樹脂を加圧機構で加圧するときの目標圧力を推定する。これにより、溶融樹脂のレオロジ特性を反映したアコースティックエミッション波の振幅の大きさを加味して溶融樹脂を加圧する際の目標圧力が推定されるので、目標圧力を溶融樹脂の実際の物性に応じて適切に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態1に係る成形機システムの構成の一例を示す図である。
図2】実施の形態1に係る成形機制御システムの構成を示すブロック図である。
図3】実施の形態1に係るAE波センサで検出されるAE波の一例を示す図である。
図4】実施の形態1に係る圧力推定モデル記憶部が記憶する圧力推定モデルの説明図である
図5】実施の形態1に係る制御装置が実行する圧力制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6】AE波の振幅の大きさと溶融樹脂の温度との相関関係を示す図である。
図7】本発明の実施の形態2に係る成形機システムの構成の一例を示す図である。
図8】実施の形態2に係るレオロジ判定装置の構成を示すブロック図である。
図9】スクリュのトルクの大きさとモータに供給する電流の電流値との相関関係を示す図である。
図10】実施の形態2に係るレオロジ判定装置が実行するレオロジ判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図11】本発明の実施の形態3に係る成形機システムの構成の一例を示す図である。
図12】実施の形態3に係るレオロジ判定装置の構成を示すブロック図である。
図13】AE波の特徴量を算出する方法を説明するための図である。
図14】(A)はAE波のピーク強度とMFIとの相関関係を示す図であり、(B)はAE波のピーク強度と溶融樹脂の温度との相関関係を示す図である。
図15】実施の形態3に係るレオロジ判定装置が実行するレオロジ判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態に係る成形機制御装置について図面を参照しながら説明する。本実施の形態に係る成形機制御装置は、溶融樹脂を収容するシリンダと、シリンダに連通した吐出ノズルと、シリンダ内の溶融樹脂を加圧することにより、吐出ノズルから溶融樹脂を吐出させる加圧機構と、を備える射出成形機を制御するものである。この射出成形機制御装置は、溶融樹脂を加圧する際に発生するアコースティックエミッション波を計測するアコースティックエミッション波センサにより検出されたアコースディックエミッション波の振幅の大きさを示すアコースティックエミッション波情報を取得するアコースティックエミッション波情報取得部と、吐出ノズルから吐出する溶融樹脂の指示流量と、アコースティックエミッション波情報が示す振幅の大きさと、吐出ノズルのノズル径と、に基づいて、シリンダ内の溶融樹脂を加圧機構により加圧するときの目標圧力を推定する目標圧力推定部と、シリンダ内の溶融樹脂に加わる圧力が目標圧力となるように制御する圧力制御部と、を備える。
【0010】
本実施の形態に係る成形機システムは、図1に示すように、成形機2と、金型3と、成形機2の動作を制御する成形機制御装置1と、を備える。成形機2は、溶融樹脂を収容するシリンダ21と、シリンダ21に連通した吐出ノズル22と、シリンダ21内の溶融樹脂を加圧することにより、吐出ノズル22から溶融樹脂を吐出させる加圧機構23と、を備える。シリンダ21は、筒状であり、内側に溶融樹脂の搬送スペース21aが設けられている。また、シリンダ21には、樹脂を受け入れる漏斗状のホッパ24が設けられている。更に、シリンダ21の外壁における搬送スペース21aに対応する部分には、バンド状のヒータ25A、25B、25Cが巻回されている。吐出ノズル22には、シリンダ21の搬送スペース21a内に連通する吐出孔22aが形成されている。
【0011】
加圧機構23は、搬送スペース21a内に収容された樹脂を搬送するスクリュ231と、軸受(図示せず)を介してシリンダ21に支持され、スクリュ231の基端部に連結されたモータ232と、モータ232を駆動するドライバ233と、を有する。ドライバ233は、成形機制御装置1から入力される制御信号に基づいて、スクリュ231に連結されたモータ232を駆動することによりスクリュ231を回転させる。また、ドライバ233は、シリンダ21内の溶融樹脂を射出するためにモータ232を駆動させる毎に、溶融樹脂の射出を実行したことを通知する射出通知信号を成形機制御装置1へ出力する。
【0012】
成形機2のシリンダ21および吐出ノズル22には、シリンダ21、吐出ノズル22の内側で発生したアコースティックエミッション波(以下、「AE(Acoustic Emission)波」と称する。)を検知するAE波センサ26A、26Bが装着されている。AE波センサ26A、26Bは、それぞれ、例えば圧電素子を有し、検知したAE波を示すAE波信号を定期的に生成して成形機制御装置1へ出力する。
【0013】
また、成形機2のシリンダ21および吐出ノズル22には、シリンダ21、吐出ノズル22の内側に存在する溶融樹脂の温度を検知する温度センサ27A、27Bが配設されている。温度センサ27A、27Bは、それぞれ、温度センサを有し、温度センサで検知した温度を示す温度検知信号を生成して成形機制御装置1へ出力する。
【0014】
金型3は、内側の溶融樹脂が充填される充填領域S3が形成されており、周壁の一部に充填領域S3内へ溶融樹脂を導入するための導入孔3aが形成されている。そして、金型3は、射出成形を行う際、導入孔3aが成形機2の吐出ノズル22の吐出孔22aと連通した状態で配置される。
【0015】
成形機制御装置1は、例えばプログラマブルロジックコントローラを含んで実現されており、図2に示すように、処理ユニット101と、入力部105と、インタフェース171、172、173と、を備える。処理ユニット101は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリと、半導体メモリ等の不揮発性メモリと、を有する。不揮発性メモリは、処理ユニット101の各種機能を実現するためのプログラムを記憶している。入力部105は、例えばキー入力装置を有する。入力部105は、成形機2の利用者により操作されると、その操作内容を示す操作情報を処理ユニット101へ出力する。インタフェース171は、AE波センサ26A、26Bから入力されるAE波信号をAE波情報に変換して処理ユニット101へ転送する。インタフェース172は、温度センサ27A、27Bから入力される温度検知信号を温度情報に変換して処理ユニット101へ転送する。インタフェース173は、処理ユニット101から転送されてくる制御情報を制御信号に変換して成形機2のドライバ233へ出力する。また、インタフェース173は、ドライバ233から前述の射出通知信号が入力されると、入力された射出通知信号を射出通知情報に変換して処理ユニット101へ転送する。
【0016】
処理ユニット101では、CPUが、不揮発性メモリが記憶するプログラムを揮発性メモリに読み込んで実行することにより、AE波情報取得部111、振幅代表値算出部112、温度情報取得部113、指示流量取得部114、目標圧力推定部115、圧力制御部116、圧力取得部117およびモデル更新部118として機能する。また、不揮発メモリは、AE波情報記憶部131と、温度情報記憶部132と、指示流量記憶部133と、振幅代表値記憶部134と、パラメータ記憶部135と、圧力推定モデル記憶部136と、変更後圧力記憶部137と、を有する。AE波情報記憶部131は、AE波センサ26A、26Bにより計測されたAE波の振幅を示すAE波情報を、計測したAE波センサ26A、26Bを識別するセンサ識別情報に対応づけて記憶する。このAE波情報記憶部131は、例えば図3に示すように、成形機2において、射出成形を行ったときに発生するAE波の振幅値を示すAE波情報を時系列で記憶している。
【0017】
図2に戻って、温度情報記憶部132は、温度センサ27A、27Bにより計測された溶融樹脂の温度を示す温度情報を、計測した温度センサ27A、27Bを識別するセンサ識別情報に対応づけて記憶する。指示流量記憶部133は、利用者により設定された吐出ノズル22から吐出する溶融樹脂の流量を示す指示流量情報を記憶する。振幅代表値記憶部134は、AE波情報記憶部131が記憶する過去の少なくとも1回の射出成形時それぞれにおいてAE波センサ26A、26Bにより計測されたAE波の振幅の代表値を示す振幅代表値情報を記憶する。ここで、振幅の代表値としては、例えば過去の複数回の射出成形時それぞれにおいて計測されたAE波の振幅の平均値、最大値、最小値、中間値等を採用することができる。パラメータ記憶部135は、成形機2の寸法等の仕様に関するパラメータ情報を記憶し、例えば吐出ノズル22の吐出孔22aのノズル径を示す情報を記憶する。
【0018】
圧力推定モデル記憶部136は、前述の指示流量と、シリンダ21、吐出ノズル22の内側に存在する溶融樹脂の温度と、AE波情報が示すAE波の振幅の大きさと、吐出ノズル22のノズル径と、から目標圧力を推定するための圧力推定モデルを示す圧力推定モデル情報を記憶する。この圧力推定モデルは、例えば順伝播型のニューラルネットワークである。この場合、圧力推定モデル記憶部136は、ニューラルネットワークの構造を示す情報と、そのニューラルネットワークにおける重み係数を示す情報と、を記憶する。ここで、ニューラルネットワークの構造を示す情報には、ニューラルネットワークのノード数、層数、各ノードに対応する重み係数および活性化関数それぞれを示す情報が含まれる。このニューラルネットワークは、図4に示すように入力層L10、隠れ層L20および出力層L30を有する。入力層L10には、前述の指示流量と、シリンダ21、吐出ノズル22の内側に存在する溶融樹脂の温度と、AE波情報が示すAE波の振幅の大きさと、吐出ノズル22のノズル径と、が入力される。
【0019】
隠れ層L20は、予め設定された数M[j]のノードx[j,i](1≦i≦M[j]、M[j]は正の整数)を含むN(Nは正の整数)個の層から構成されている。即ち、隠れ層L20は、各ノード列同士が繋がれた構造を有する。ここで、各ノードx[j,i]の出力y[j,i]は、下記式(1)の関係式で表される。
【数1】
ここで、W[j,i,k]は、重み係数を示し、f(*)は、活性化関数を示す。活性化関数としては、シグモイド関数、ランプ関数、ステップ関数等の非線形関数が用いられる。隠れ層L20は、ノードに入力される情報が前の層の各ノードの出力にそれぞれに重み係数を乗じたものの総和となっている。そして、総和を引数とする活性化関数の出力が次の層へ伝達される。出力層L30は、隠れ層L20の最終層からの出力x[j,i]に基づいて、目標圧力の期待値を出力する。ここで、出力層L30は、例えばソフトマックス関数を用いた処理を実行する。この場合、圧力推定モデル記憶部136は、式(1)で表されるニューラルネットワークの隠れ層L20の構造を示す情報および重み係数W[j,i,k]を示す情報と、出力層L30で使用する関数を示す情報と、を記憶する。
【0020】
図2に戻って、変更後圧力記憶部137は、利用者が入力部105を介して入力した変更後の目標圧力を示す変更後圧力情報を記憶する。プレ射出時圧力記憶部138は、成形機2が樹脂製品を繰り返し射出成形する前に、ダミーで溶融樹脂を射出させるプレ射出を行う際に溶融樹脂に加える目標圧力と、吐出ノズル22から吐出させる溶融樹脂の流量と、の相関関係を示す相関テーブル情報を記憶する。
【0021】
AE波情報取得部111は、AE波センサ26A、26Bそれぞれに対応する前述のAE波情報を取得すると、取得したAE波情報を、対応するAE波センサ26A、26Bを識別するセンサ識別情報に対応づけてAE波情報記憶部131に時系列で記憶させる。振幅代表値算出部112は、前述の射出通知情報を取得すると、AE波情報記憶部131が記憶する過去の少なくとも1回の射出成形時に取得されたAE波情報が示すAE波の振幅の大きさについての前述の代表値を算出する。そして、振幅代表値算出部112は、算出した代表値を示す振幅代表値情報を振幅代表値記憶部134に記憶させる。ここで、振幅代表値算出部112は、AE波情報記憶部131がAE波情報を1つだけ記憶している場合、そのAE波情報をそのまま振幅代表値情報として振幅代表値記憶部134に記憶させる。
【0022】
温度情報取得部113は、温度センサ27A、27Bそれぞれに対応する前述の温度情報を取得し、取得した温度情報を、対応する温度センサ27A、27Bを識別するセンサ識別情報に対応づけて温度情報記憶部132に記憶させる。ここで、温度情報取得部113は、温度センサ27A、27Bに対して温度情報の送信を要求する温度要求信号を送信することにより、温度センサ27A、27Bそれぞれに対応する温度情報を取得する。或いは、温度情報取得部113は、温度センサ27A、27Bそれぞれから自発的且つ定期的に送信される温度検知信号がインタフェース172で変換されてなる温度情報を取得するものであってもよい。
【0023】
受付部119は、利用者が入力部105に対して行った操作を受け付ける。ここで、受付部119は、目標圧力の変更するための圧力変更操作を受け付けると、受け付けた圧力変更操作の操作内容に基づいて、変更後の目標圧力を示す変更後圧力情報を生成して圧力取得部117に通知する。また、受付部119は、吐出ノズル22から吐出される溶融樹脂の流量を指示するための流量指示操作を受け付けると、受付部119は、受け付けた流量指示操作の操作内容に基づいて、利用者が指示した流量を示す指示流量情報を指示流量取得部114に通知する。
【0024】
指示流量取得部114は、受付部119から指示流量情報が通知されると、通知された指示流量情報を指示流量記憶部133に記憶させる。圧力取得部117は、受付部119から前述の変更後圧力情報が通知されると、通知された変更後圧力情報を変更後圧力記憶部137に記憶させる。
【0025】
目標圧力推定部115は、吐出ノズル22から吐出する溶融樹脂の指示流量と、溶融樹脂の温度と、AE波の振幅の代表値と、吐出ノズル22のノズル径と、に基づいて、シリンダ21内の溶融樹脂を加圧機構23により加圧するときの目標圧力を推定する。具体的には、目標圧力推定部115は、圧力推定モデル記憶部136が記憶する圧力推定モデル情報が示す圧力推定モデルを用いて、振幅代表値記憶部134が記憶する振幅代表値情報が示す代表値、温度情報記憶部132が記憶する温度情報が示す溶融樹脂の温度、指示流量記憶部133が記憶する指示流量情報が示す流量およびパラメータ記憶部135が記憶するパラメータ情報が示す吐出ノズル22のノズル径と、から、目標圧力の期待値を算出する。そして、目標圧力推定部115は、推定した目標圧力の期待値を示す目標圧力情報を圧力制御部116に通知する。
【0026】
圧力制御部116は、目標圧力情報が通知されると、成形機2による射出成形時にシリンダ21内の溶融樹脂に加わる圧力が、通知された目標圧力情報が示す目標圧力となるように制御するための制御情報を生成し、生成した制御情報を、成形機2の加圧機構23のドライバ233へ出力する。プレ射出時圧力設定部120は、プレ射出時圧力記憶部138が記憶する相関テーブル情報を参照して、指示流量記憶部133が記憶する指示流量情報が示す流量に対応するプレ射出時の目標圧力を特定し、特定した圧力を示す目標圧力情報を圧力制御部116に通知する。
【0027】
モデル更新部118は、指示流量記憶部133が記憶する指示流量情報と、温度情報記憶部132が記憶する、利用者が前述の圧力変更操作を行った時点の直近の温度情報と、利用者が前述の圧力変更操作を行った時点の直近の振幅代表値情報と、パラメータ記憶部135が記憶する吐出ノズル22のノズル径を示す情報と、変更後圧力記憶部137が記憶する変更後圧力情報と、を用いて、圧力推定モデルを新たに生成する。そして、モデル更新部118は、新たに生成した圧力推定モデルを示す圧力推定モデル情報を用いて、圧力推定モデル記憶部136が記憶する圧力推定モデル情報を更新する。このモデル更新部118は、圧力取得部117が変更後圧力情報を取得する毎に、圧力推定モデル記憶部136が記憶する圧力推定モデル情報を更新する。ここで、モデル更新部118は、まず、圧力推定モデル記憶部136が記憶する圧力推定モデル情報が示す圧力推定モデルを用いて、指示流量記憶部133が記憶する指示流量情報が示す指示流量と、温度情報記憶部132が記憶する、利用者が前述の圧力変更操作を行った時点の直近の温度情報が示す温度と、利用者が前述の圧力変更操作を行った時点の直近の振幅代表値情報が示す振幅代表値と、吐出ノズル22のノズル径と、から、目標圧力の期待値を算出する。次に、モデル更新部118は、変更後圧力記憶部137が記憶する変更後圧力情報が示す目標圧力と更新前の圧力推定モデルを用いて算出した目標圧力の期待値との誤差を算出する。そして、モデル更新部118は、算出された誤差に基づく誤差逆伝播法(バックプロパゲーション)により圧力推定モデルの重み係数を決定し、決定した重み係数を示す情報を圧力推定モデル記憶部136に記憶させる。
【0028】
次に、本実施の形態に係る成形機制御装置1が実行する成形機制御処理について、図5を参照しながら説明する。なお、この成形機制御処理は、成形機制御装置1へ電源が投入された後、利用者が、成形機2を用いた射出成形処理を開始するために、利用者が、前述の流量指示操作を行ったことを契機として開始される。また、図5に示す成形機制御処理は、成形機2を用いて同一の流量で溶融樹脂を金型3に射出して同一の樹脂製品を繰り返し作製する場合を示している。ここで、利用者は、成形機制御処理が開始されると、まず、前述の流量指示操作を行った後、樹脂製品を作製する前に、成形機2にダミーで溶融樹脂を射出させるプレ射出を少なくとも1回行い、その後、成形機2を用いて同一の樹脂製品を繰り返し射出成形させる。なお、AE波情報取得部111は、AE波センサ26A、26Bそれぞれに対応する前述のAE波情報を定期的に取得する毎に、取得したAE波情報を、対応するAE波センサ26A、26Bを識別するセンサ識別情報に対応づけてAE波情報記憶部131に時系列で記憶させていくものとする。
【0029】
まず、利用者が前述の流量指示操作を行うと、受付部119が、流量指示操作を受け付けて、受け付けた流量指示操作の操作内容に基づいて、利用者が指示した流量を示す指示流量情報を生成して指示流量取得部114に通知する。そして、指示流量取得部114は、通知される指示流量情報を取得し、取得した指示流量情報を指示流量記憶部133に記憶させる(ステップS101)。
【0030】
次に、プレ射出時圧力設定部120は、プレ射出時圧力記憶部138が記憶する相関テーブル情報を参照して、指示流量記憶部133が記憶する指示流量情報が示す流量に対応するプレ射出時の目標圧力を特定する(ステップS102)。続いて、圧力制御部116は、成形機2による射出成形時にシリンダ21内の溶融樹脂に加わる圧力が、プレ射出時圧力設定部120により特定された目標圧力となるように制御するための制御情報を生成し、生成した制御情報を、成形機2の加圧機構23のドライバ233へ出力する(ステップS103)。その後、振幅代表値算出部112は、前述の射出通知情報を取得すると(ステップS104)、プレ射出成形が完了したか否かを判定する(ステップS105)。ここで、振幅代表値算出部112は、射出通知情報を予め設定された回数だけ繰り返し取得した場合、プレ射出成形が完了したと判定する。振幅代表値算出部112が、未だプレ射出成形が完了していないと判定すると(ステップS105:No)、再びステップS103の処理が実行される。一方、振幅代表値算出部112が、プレ射出成形が完了したと判定すると(ステップS105:Yes)、AE波情報記憶部131が記憶する過去の少なくとも1回の射出成形時に取得されたAE波情報が示すAE波の振幅の大きさについての前述の代表値を算出する。そして、振幅代表値算出部112は、算出した代表値を示す振幅代表値情報を振幅代表値記憶部134に記憶させる(ステップS106)。
【0031】
次に、温度情報取得部113は、溶融樹脂を射出するよう指示する射出指示イベントが発生したか否かを判定する(ステップS107)。この射出指示イベントは、例えば利用者が入力部105を介して溶融樹脂を射出して樹脂製品を成形するための操作を行った場合に発生したり、樹脂製品を自動的に繰り返し成形するために予め設定された時間間隔で発生したりする。温度情報取得部113は、未だ射出指示イベントが発生していないと判定する限り(ステップS107:No)、ステップS107の処理が繰り返し実行される。一方、温度情報取得部113は、射出指示イベントが発生したと判定すると(ステップS107:Yes)、温度センサ27A、27Bそれぞれに対応する前述の温度情報を取得し、取得した温度情報を、対応する温度センサ27A、27Bを識別するセンサ識別情報に対応づけて温度情報記憶部132に記憶させる(ステップS108)。
【0032】
続いて、目標圧力推定部115は、圧力推定モデル記憶部136が記憶する圧力推定モデル情報が示す圧力推定モデルを用いて、振幅代表値記憶部134が記憶する振幅代表値情報が示す代表値、温度情報記憶部132が記憶する温度情報が示す溶融樹脂の温度、指示流量記憶部133が記憶する指示流量情報が示す流量およびパラメータ記憶部135が記憶するパラメータ情報が示す吐出ノズル22のノズル径と、から、目標圧力を推定する(ステップS109)。その後、圧力制御部116は、成形機2による射出成形時にシリンダ21内の溶融樹脂に加わる圧力が、推定された目標圧力となるように制御するための制御情報を生成し、生成した制御情報を、成形機2の加圧機構23のドライバ233へ出力する(ステップS110)。次に、振幅代表値算出部112は、前述の射出通知情報を取得すると(ステップS111)、AE波情報記憶部131が記憶する過去の少なくとも1回の射出成形時に取得されたAE波情報が示すAE波の振幅の大きさについての前述の代表値を算出する。そして、振幅代表値算出部112は、算出した代表値を示す振幅代表値情報を振幅代表値記憶部134に記憶させる(ステップS112)。
【0033】
続いて、受付部119は、前述の圧力変更操作を受け付けたか否かを判定する(ステップS113)。ここで、受付部119が、圧力変更操作を受け付けていないと判定すると(ステップS113:No)、再びステップS107の処理が実行される。一方、受付部119は、前述の圧力変更操作を受け付けると(ステップS113:Yes)、受け付けた圧力変更操作の操作内容に基づいて、変更後の目標圧力を示す変更後圧力情報を生成する。そして、圧力取得部117は、生成された変更後圧力情報を変更後圧力記憶部137に記憶させる(ステップS114)。その後、モデル更新部118は、指示流量記憶部133が記憶する指示流量情報と、温度情報記憶部132が記憶する、利用者が前述の圧力変更操作を行った時点の直近の温度情報と、利用者が前述の圧力変更操作を行った時点の直近の振幅代表値情報と、パラメータ記憶部135が記憶する吐出ノズル22のノズル径を示す情報と、変更後圧力記憶部137が記憶する変更後圧力情報と、を用いて、圧力推定モデルを新たに生成する。そして、モデル更新部118は、新たに生成した圧力推定モデルを示す圧力推定モデル情報を用いて、圧力推定モデル記憶部136が記憶する圧力推定モデル情報を更新する(ステップS115)。次に、再びステップS107の処理が実行される。
【0034】
以上説明したように、本実施の形態に係る成形機制御装置1によれば、目標圧力推定部115が、吐出ノズル22から吐出する溶融樹脂の指示流量と、溶融樹脂の温度と、溶融樹脂を加圧する際に発生するAE波の振幅の大きさと、吐出ノズル22のノズル径と、に基づいて、シリンダ21内の溶融樹脂を加圧機構23で加圧するときの目標圧力を推定する。これにより、溶融樹脂のレオロジ特性を反映したAE波の振幅の大きさを加味して溶融樹脂を加圧する際の目標圧力が推定されるので、目標圧力を溶融樹脂の実際の物性に応じて適切に設定することができる。
【0035】
また、本実施の形態に係る成形機制御装置1は、シリンダ21、吐出ノズル22において溶融樹脂のレオロジ特性を反映したAE波をリアルタイムで検出し、検出したAE波の振幅の大きさに基づいて、目標圧力の最適化を図るといものである。
【0036】
ところで、樹脂製品の成形加工の全自動化を目的とした様々の成形機2の制御プログラムが開発されている。これらの制御プログラムは、成形条件を記載した生産記録(生産中の温度、圧力、成形速度等)、金型3の一部等に装着された圧力センサや温度センサにより検知される情報等を活用するものが多い。しかしながら、生産記録は、生産現場の成形機2の利用者により成形終了時の条件が記録されたものが多く、成形条件が最適化されるまでの経緯が記録されることはまれである。また、圧力センサ、温度センサで得られる情報のみでは、成形機2のシリンダ21内に存在する溶融樹脂の物性を十分に捉えきれない虞がある。
【0037】
これに対して、本実施の形態に係る成形機制御装置1では、溶融樹脂が変形したり破断したりする際に、内部に蓄えていた弾性エネルギが開放されることに起因して発生するAE波の振幅の大きさを検知し、検知したAE波の振幅の大きさに基づいて、射出成形時に溶融樹脂に加える目標圧力を推定する。これにより、溶融樹脂の粘度等のレオロジ特性に基づいて、目標圧力が推定されるので、目標圧力の推定程度を高めることができる。そして、本実施の形態によれば、いわゆるショートショット、バリ発生といった、初歩的な射出成形の不良の改善のみならず。シルバーストリーク、ボイド、ウェルド等の射出成形の不良の改善を図ることもできる。
【0038】
また、溶融樹脂の粘度のような溶融樹脂の物性は、同一材質且つ同一ランクを謳っている溶融樹脂であっても、複数の製造ロットで必ずしも一定ではなく、製造ロット毎にバラツキがある場合が多い。特に、いわゆる再生品の溶融樹脂の場合、製造ロット間での物性のバラツキがより顕著になることが多い。このため、溶融樹脂の実際の物性に応じて、溶融樹脂を射出する際の目標圧力を細かく調整することが好ましい。そして、最適な目標圧力を推定する場合、溶融樹脂の動的な物性を反映した物理量を加味して推定するほうが、推定精度が向上する。これに対して、本実施の形態では、溶融樹脂の温度に加えて、AE波の振幅の大きさを加味して溶融樹脂を加圧する際の目標圧力を推定するので、その分、目標圧力の推定精度を高めることができる。
【0039】
(実施の形態2)
本実施の形態に係る成形システムは、加圧機構が、シリンダ内に収容された樹脂を搬送するスクリュと、スクリュの基端部に連結されたモータと、を有するものであって、スクリュが樹脂を搬送するときのモータのトルクと、モータに供給する電流の電流値と、の相関情報に基づいて、成形機から吐出される溶融樹脂のレオロジ特性を判定するレオロジ特性判定装置を備える点で実施の形態1と相違する。
【0040】
本実施の形態に係る成形機システムは、図7に示すように、成形機2と、金型3と、成形機制御装置1と、レオロジ特性判定装置2006と、を備える。なお、図7において実施の形態1と同様の構成については図1と同一の符号を付している。成形機2の加圧機構23のモータ232には、トルク計測器2005が装着されている。トルク計測器2005は、計測したトルクを反映したトルク計測信号をレオロジ特定判定装置2006へ出力する。また、加圧機構23のドライバ233は、モータ232を回転駆動する際にモータ232へ供給する電流の電流値を反映した電流値信号をレオロジ特性判定装置2006へ出力する。
【0041】
レオロジ特性判定装置2006は、例えばパーソナルコンピュータを含んで実現されており、図8に示すように、処理ユニット601と、表示部604と、インタフェース671、672と、を備える。処理ユニット601は、CPUと、RAM等の揮発性メモリと、半導体メモリ等の不揮発性メモリと、を有する。不揮発性メモリは、処理ユニット601の各種機能を実現するためのプログラムを記憶している。表示部604は、例えば液晶ディスプレイのような表示装置を有する。インタフェース671は、トルク計測器2005から入力されるトルク計測信号をトルク計測値情報に変換して処理ユニット601へ転送する。インタフェース672は、ドライバ233から入力される電流値信号を電流値情報に変換して処理ユニット601へ転送する。
【0042】
処理ユニット601では、CPUが、不揮発性メモリが記憶するプログラムを揮発性メモリに読み込んで実行することにより、トルク情報取得部611、電流値情報取得部612、相関情報生成部613、レオロジ特性判定部614および判定結果出力部615として機能する。また、不揮発メモリは、計測情報記憶部631と、相関情報記憶部632と、基準相関情報記憶部633と、を有する。計測情報記憶部631は、トルク計測値情報と、電流値情報と、を対応づけて記憶する。相関情報記憶部632は、トルク計測値情報が示すトルク計測値と、電流値情報が示す電流値と、の相関関係を示す相関情報を記憶する。ここで、相関情報は、トルク計測値と電流値とについて予め設定された近似式を用いて近似したときの関数の係数値を示す。基準相関情報記憶部633は、予め設定された基準となる樹脂についてのトルク計測値と電流値との相関関係を示す近似式の係数値の基準範囲を示す基準相関情報を記憶する。ここで、標準的な樹脂のトルク計測値と電流値との相関関係は、例えば図9の「樹脂A(基準)」に対応する破線で示すような近似曲線で表される。
【0043】
図8に戻って、トルク情報取得部611は、インタフェース671から転送されるトルク計測値情報を取得すると、取得したトルク計測値情報を計測情報記憶部631に記憶させる。電流値情報取得部612は、インタフェース672から転送される電流値情報を取得すると、取得した電流値情報を、対応するトルク計測値情報に対応づけて計測情報記憶部631に記憶させる。ここで、トルク情報取得部611および電流値情報取得部612は、例えば成形機制御装置1から入力される成形機2による射出成形を開始することを通知する成型開始通知信号が入力されたことを契機して情報の取得を開始し、成形機制御装置1から入力される成形機2による射出成形が終了したことを通知する成型終了通知信号が入力されたことを契機して情報の取得を停止する。
【0044】
相関情報生成部613は、計測情報記憶部631が記憶するトルク計測値情報が示すトルク計測値と、対応する電流値情報が示す電流値と、について、予め設定された近似式を用いて近似したときの近似式の係数値を算出する。そして、相関情報生成部613は、算出した近似式の少なくとも1つの係数値を示す相関情報を相関情報記憶部632に記憶させる。
【0045】
レオロジ特性判定部614は、基準相関情報記憶部633が記憶する基準相関情報を参照して、相関情報記憶部632が記憶する相関情報が示す少なくとも1つの係数値それぞれが、基準相関情報が示す係数値の基準範囲内であるか否かを判定する。ここで、レオロジ特性判定部614が、例えば成形機2で射出しようとしている「樹脂C」について、基準相関情報が示す係数値の基準範囲内であると判定したとする。この場合、例えば図9に示すように、「樹脂C」に対応する近似曲線は、標準的な樹脂である「樹脂A」の近似曲線と類似したものとなっている。一方、レオロジ特性判定部614が、例えば成形機2で射出しようとしている「樹脂B」について、基準相関情報が示す係数値の基準範囲内であると判定したとする。この場合、例えば図9に示すように、「樹脂B」に対応する近似曲線は、標準的な樹脂である「樹脂A」の近似曲線と非類似なものとなっている。図8に戻って、レオロジ特性判定部614は、相関情報記憶部632が記憶する相関情報が示す少なくとも1つの係数値それぞれについて判定した判定結果を示す判定結果情報を判定結果出力部615に通知する。
【0046】
判定結果通知部615は、レオロジ特性判定部614から通知される判定結果情報に基づいて、利用者に成形機2で射出している樹脂の特性が標準的な樹脂の特性と類似しているか否かを通知するための判定結果通知画像を形成して表示部604に表示させる。ここで、判定結果通知部615は、レオロジ特性判定部614から通知される判定結果情報が標準的な樹脂の特性と類似していることを示す場合、使用する樹脂が「正常」であることを通知する判定結果通知画像を形成し、レオロジ特性判定部614から通知される判定結果情報が標準的な樹脂の特性と非類似であることを示す場合、使用する樹脂が「異常」であることを通知する判定結果通知画像を形成する。
【0047】
次に、本実施の形態に係るレオロジ特定判定装置2006が実行する使用している樹脂のレオロジ特性に基づいて当該樹脂の良否判定を行うレオロジ特定判定処理について図10に基づいて説明する。このレオロジ特定判定処理は、例えばレオロジ特定判定装置2006へ電源が投入された後、レオロジ特性判定処理を実行するためのプログラムが起動したことを契機として開始される。まず、成形機2が樹脂を1回射出すると、トルク情報取得部611が、樹脂が射出されたときのトルク計測値情報を取得して計測情報記憶部631に記憶させるとともに、電流値情報取得部612が、樹脂が射出されたときの電流値情報を取得して対応するトルク計測値情報に対応づけて計測情報記憶部631に記憶させる(ステップS201)。
【0048】
次に、相関情報生成部613は、計測情報記憶部631が記憶するトルク計測値情報と電流値情報とを用いて、予め設定された近似式を用いて近似したときの近似式の係数値を算出し、算出した近似式の少なくとも1つの係数値を示す相関情報を相関情報記憶部632に記憶させる(ステップS202)。
【0049】
続いて、レオロジ特性判定部614は、基準相関情報記憶部633が記憶する基準相関情報を参照して、相関情報記憶部632が記憶する相関情報が示す少なくとも1つの係数値それぞれが、基準相関情報が示す係数値の基準範囲内であるか否かを判定する(ステップS203)。ここで、レオロジ特性判定部614が、相関情報が示す係数値それぞれが、基準相関情報が示す係数値の基準範囲内であると判定したとすると(ステップS203:Yes)。この場合、判定結果通知部615は、使用する樹脂が「正常」であることを通知する判定結果通知画像を形成して表示部604に表示させた後(ステップS204)、再びステップS201の処理が実行される。一方、レオロジ特性判定部614が、相関情報が示す係数値それぞれが、基準相関情報が示す係数値の基準範囲を超えていると判定したとすると(ステップS203:No)。この場合、判定結果通知部615は、使用する樹脂が「異常」であることを通知する判定結果通知画像を形成して表示部604に表示させた後(ステップ205)、再びステップS201の処理が実行される。
【0050】
以上説明したように、本実施の形態によれば、レオロジ特性判定装置2006が、スクリュ231で溶融樹脂を搬送するときのモータ232のトルクと、モータ232に供給する電流の電流値と、の相関情報に基づいて、成形機2から吐出される溶融樹脂のレオロジ特性を判定する。これにより、利用者は、成形機2から吐出される溶融樹脂のレオロジ特性が、予め設定された基準となる樹脂のレオロジ特性と類似するか否かを把握することができる。従って、利用者が、基準となる樹脂のレオロジ特性と類似するレオロジ特性を有する溶融樹脂が成形機2から吐出されるように調整し易くなるので、成形機2から吐出される溶融樹脂の品質を一定に維持することができる。
【0051】
(実施の形態3)
本実施の形態に係る成形システムは、アコースティックエミッション波センサにより検出されたアコースディックエミッション波のピーク強度と、シリンダ内の溶融樹脂の温度と、の相関情報に基づいて、成形機から吐出される溶融樹脂のレオロジ特性を判定するレオロジ特性判定装置を備える点で実施の形態1、2と相違する。
【0052】
本実施の形態に係る成形機システムは、図11に示すように、成形機2と、金型3と、成形機制御装置1と、レオロジ特性判定装置3006と、を備える。なお、図7において実施の形態1と同様の構成については図1と同一の符号を付している。レオロジ特定判定装置3006は、AE波センサ26A、26B、温度センサ27A、27Bに接続されており、AE波センサ26A、26Bから出力されるAE波信号と、温度センサ27A、27Bから出力される温度検知信号と、が入力される。
【0053】
レオロジ特性判定装置3006は、例えばパーソナルコンピュータを含んで実現されており、図12に示すように、処理ユニット3601と、表示部604と、入力部605と、インタフェース673、674と、を備える。なお、図12において、実施の形態2と同様の構成については図8と同一の符号を付している。処理ユニット3601のハードウェア構成は、実施の形態2に係る処理ユニット601と同様である。入力部605は、例えば液晶ディスプレイ等の表示装置と、当該表示装置に重ねて配置される透明なタッチパッド等の入力装置と、を有する。インタフェース673は、AE波センサ26A、26Bから入力されるAE波信号をAE波計測値情報に変換して処理ユニット3601へ転送する。インタフェース674は、温度センサ27A、27Bから入力される温度検知信号を温度情報に変換して処理ユニット3601へ転送する。
【0054】
処理ユニット3601では、CPUが、不揮発性メモリが記憶するプログラムを揮発性メモリに読み込んで実行することにより、AE波情報取得部3611、温度情報取得部3612、特徴量算出部3613、相関情報生成部3614、樹脂種類取得部3615、MFI(Melt Flow Index)特定部3616、レオロジ特性判定部3617および判定結果出力部3618として機能する。また、不揮発メモリは、AE波情報記憶部3631と、温度情報記憶部3632と、相関情報記憶部3633と、基準相関情報記憶部3634と、MFI記憶部3635と、を有する。AE波情報記憶部3631は、成形機2でシリンダ21内の樹脂の温度を変化させながら複数回樹脂を射出したときそれぞれにおいてAE波センサ26A、26Bにより計測されたAE波の振幅を示すAE波情報を、計測したAE波センサ26A、26Bを識別するセンサ識別情報とともに、複数回の射出処理それぞれを識別する射出識別情報に対応づけて対応づけて記憶する。
【0055】
温度情報記憶部3632は、成形機2でシリンダ21内の樹脂の温度を変化させながら複数回樹脂を射出したときそれぞれにおいて温度センサ27A、27Bにより計測された溶融樹脂の温度を示す温度情報を、計測した温度センサ27A、27Bを識別するセンサ識別情報とともに、複数回の射出処理それぞれを識別する前述の射出識別情報に対応づけて記憶する。
【0056】
相関情報記憶部3633は、温度情報が示す温度と、電流値情報が示す電流値と、の相関関係を示す相関情報を記憶する。ここで、相関情報は、AE波のピーク強度と温度とについて予め設定された近似式を用いて近似したときの関数の係数値を示す。基準相関情報記憶部3634は、予め設定された基準となる樹脂についてのAE波のピーク強度と温度とMFI値との相関関係を示す近似式の係数値の基準範囲を示す基準相関情報を記憶する。ここで、AE波のピーク強度は、例えば図13に示すように、AE波の最大振幅値に相当する。また、樹脂のMFI値とAE波のピーク強度との相関関係は、例えば図14(A)に示す破線で示すような近似曲線で表され、MFI値「0.05」、「0.8」の樹脂それぞれのAE波のピーク強度と温度との相関関係は、例えば図14(B)に示す破線で示すような近似曲線で表される。
【0057】
MFI記憶部3635は、複数種類の樹脂それぞれのMFIを示すMFI情報を、樹脂の種類を示す樹脂種類情報に対応づけて記憶する。
【0058】
図12に戻って、AE波情報取得部3611は、インタフェース673から転送されるAE波情報を取得すると、取得したAE波情報をAE波情報記憶部3631に記憶させる。ここで、AE波情報取得部3631は、成形機2においてシリンダ21内の樹脂の温度を変化させながら複数回樹脂を射出したときのAE波情報を、前述の射出識別情報およびセンサ識別情報に対応づけてAE波情報記憶部3631に記憶させる。温度情報取得部3612は、インタフェース674から転送される温度情報を取得すると、取得した温度情報を計測情報記憶部631に記憶させる。ここで、温度情報取得部3612は、成形機2においてシリンダ21内の樹脂の温度を変化させながら複数回樹脂を射出したときの温度情報を、前述の射出識別情報およびセンサ識別情報に対応づけて温度情報記憶部3632に記憶させる。
【0059】
特徴量算出部3613は、AE波情報記憶部3631が記憶するAE波情報に基づいて、検出されたAE波の特徴を示す特徴量を算出する。本実施の形態では、特徴量算出部3613は、図13に示すようにAE波について、AE波の振幅が予め設定された振幅閾値以上となるAE波継続時間を特定し、特定したAE波継続時間内におけるAE波の最大振幅をAE波のピーク強度として算出する。
【0060】
相関情報生成部3614は、特徴量算出部3613により算出されたAE波のピーク強度と、温度情報記憶部3632が記憶する、AE波のピーク強度を算出するときに用いたAE波情報に対応する射出識別情報と同一の射出識別情報に対応づけられた温度情報を特定し、特定した温度情報が示す温度の平均値を算出する。そして、相関情報生成部3614は、AE波のピーク強度と、算出した温度の平均値と、について、予め設定された近似式を用いて近似したときの近似式の係数値を算出する。そして、相関情報生成部3614は、算出した近似式の少なくとも1つの係数値を示す相関情報を相関情報記憶部3633に記憶させる。
【0061】
樹脂種類取得部3615は、利用者が入力部605を介して入力した成形機2に投入した樹脂の種類を示す樹脂種類情報を取得すると、取得した樹脂種類情報をMFI特定部3616に通知する。MFI特定部3616は、MFI記憶部3635が記憶するMFI情報の中から、通知された樹脂種類情報に対応するMFI情報を特定し、特定したMFI情報をレオロジ特定判定部3617に通知する。
【0062】
レオロジ特性判定部3617は、基準相関情報記憶部3634が記憶する基準相関情報を参照して、相関情報記憶部632が記憶する相関情報が示す少なくとも1つの係数値それぞれが、基準相関情報が示す、MFI特定部3616から通知されるMFI情報が示すMFI値に対応する係数値の基準範囲内であるか否かを判定する。そして、レオロジ特性判定部3617は、相関情報記憶部3634が記憶する相関情報が示す少なくとも1つの係数値それぞれについて判定した判定結果を示す判定結果情報を判定結果出力部3618に通知する。
【0063】
判定結果通知部3618は、レオロジ特性判定部3617から通知される判定結果情報に基づいて、利用者に成形機2で射出している樹脂の特性が標準的な樹脂の特性と類似しているか否かを通知するための判定結果通知画像を形成して表示部604に表示させる。ここで、判定結果通知部615は、レオロジ特性判定部614から通知される判定結果情報が標準的な樹脂の特性と類似していることを示す場合、使用する樹脂が「正常」であることを通知する判定結果通知画像を形成し、レオロジ特性判定部614から通知される判定結果情報が標準的な樹脂の特性と非類似であることを示す場合、使用する樹脂が「異常」であることを通知する判定結果通知画像を形成する。
【0064】
次に、本実施の形態に係るレオロジ特定判定装置3006が実行する使用している樹脂のレオロジ特性に基づいて当該樹脂の良否判定を行うレオロジ特定判定処理について図15に基づいて説明する。このレオロジ特定判定処理は、例えばレオロジ特定判定装置3006へ電源が投入された後、レオロジ特性判定処理を実行するためのプログラムが起動したことを契機として開始される。まず、成形機2が樹脂をシリンダ21内の溶融樹脂の温度を変えながら複数回射出すると、AE波情報取得部3611は、複数回樹脂を射出したときのAE波情報を、前述の射出識別情報およびセンサ識別情報に対応づけてAE波情報記憶部3631に記憶させる。また、温度情報取得部3612は、複数回樹脂を射出したときの温度情報を、前述の射出識別情報およびセンサ識別情報に対応づけて温度情報記憶部3632に記憶させる(ステップS301)。
【0065】
次に、特徴量算出部3613は、AE波情報記憶部3631が記憶するAE波情報に基づいて、AE波の振幅が予め設定された振幅閾値以上となるAE波継続時間を特定し、特定したAE波継続時間内におけるAE波の最大振幅をAE波のピーク強度を、検出されたAE波の特徴を示す特徴量として算出する(ステップS302)。
【0066】
相関情報生成部3614は、特徴量算出部3613により算出されたAE波のピーク強度と、温度情報記憶部3632が記憶する、AE波のピーク強度を算出するときに用いたAE波情報に対応する射出識別情報と同一の射出識別情報に対応づけられた温度情報を特定し、特定した温度情報が示す温度の平均値を算出する。そして、相関情報生成部3614は、AE波のピーク強度と、算出した温度の平均値と、について、予め設定された近似式を用いて近似したときの近似式の係数値を算出し、算出した近似式の少なくとも1つの係数値を示す相関情報を相関情報記憶部3633に記憶させる(ステップS303)。
【0067】
続いて、レオロジ特性判定部3617は、基準相関情報記憶部3634が記憶する基準相関情報を参照して、相関情報記憶部3633が記憶する相関情報が示す少なくとも1つの係数値それぞれが、基準相関情報が示す、MFI特定部3616により特定されたMFI情報が示すMFI値に対応する係数値の基準範囲内であるか否かを判定する(ステップS304)。ここで、レオロジ特性判定部3617が、相関情報が示す係数値それぞれが、基準相関情報が示す係数値の基準範囲内であると判定したとすると(ステップS304:Yes)。この場合、判定結果通知部3618は、使用する樹脂が「正常」であることを通知する判定結果通知画像を形成して表示部604に表示させた後(ステップS305)、再びステップS301の処理が実行される。一方、レオロジ特性判定部3617が、相関情報が示す係数値それぞれが、基準相関情報が示す係数値の基準範囲を超えていると判定したとすると(ステップS304:No)。この場合、判定結果通知部3618は、使用する樹脂が「異常」であることを通知する判定結果通知画像を形成して表示部604に表示させた後(ステップ306)、再びステップS301の処理が実行される。
【0068】
以上説明したように、本実施の形態によれば、レオロジ特性判定装置3006が、AE波センサ26A、26Bにより検出されたAE波のピーク強度と、成形機2のシリンダ21内の溶融樹脂の温度と、の相関情報に基づいて、成形機2から吐出される溶融樹脂のレオロジ特性を判定する。これにより、利用者は、成形機2から吐出される溶融樹脂のレオロジ特性が、予め設定された基準となる樹脂のレオロジ特性と類似するか否かを把握することができる。特に、使用する樹脂が、有機系合成高分子、無機系高分子、天然高分子、ポリマアロイ、コンポジット系素材等の高分子系材料である場合、その樹脂が、分子量、分子構造等において、予め設定された基準となる樹脂のそれらと類似するか否かを把握することができる。従って、利用者が、基準となる樹脂のレオロジ特性と類似するレオロジ特性を有する溶融樹脂が成形機2から吐出されるように調整し易くなるので、成形機2から吐出される溶融樹脂の品質を一定に維持することができる。
【0069】
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明は前述の各実施の形態によって限定されるものではない。例えば目標圧力推定部115が、吐出ノズル22から吐出する溶融樹脂の指示流量と、AE波の振幅の代表値と、吐出ノズル22のノズル径と、のみに基づいて、シリンダ21内の溶融樹脂を加圧機構23により加圧するときの目標圧力を推定するものであってもよい。図6は、3種類のPPの溶融樹脂(BC05B、PPB、AKB830)について、AE波の振幅と溶融樹脂の温度との関係を示したグラフである。図6に示すグラフから、AE波の振幅と溶融樹脂の温度との間には相関関係があることが判る。このことから、溶融樹脂の物性の温度依存性がAE波の振幅に表われているため、温度センサ27A、27Bそれぞれで検出された温度を用いずに目標圧力を推定できる。
【0070】
本構成によれば、温度センサ27A、27Bを省略することができるので、その分、成形機2の構成を簡素化することができる。
【0071】
実施の形態では、成形機2が射出成形機である例について説明したが、これに限定されるものではなく、成形機2が、押出成形機、プレス成形機、ブロー成型機等であってもよい。或いは、電界紡糸法(エレクトロスピニング法)により繊維を作製する際に使用される、溶融樹脂を吐出する溶融樹脂供給機であってもよい。
【0072】
実施の形態では、目標圧力推定部115が、AE波情報が示すAE波の振幅の大きさに基づいて、シリンダ21内の溶融樹脂を加圧機構23により加圧するときの目標圧力を推定する例について説明した。但し、これに限定されるものではなく、目標圧力推定部が、弾性波、溶融樹脂の変形や破壊に伴い発生する音波、振動等の他の種類の物理量に基づいて、目標圧力を推定するものであってもよい。
【0073】
また、目標圧力推定部115が、加圧機構23が溶融樹脂を加圧する際のモータ232に流れる電流値、モータ232に係るトルクの大きさに基づいて、溶融樹脂のレオロジ特定をリアルタイムで検出し、検出したレオロジ特性に基づいて、目標圧力を推定するものであってもよい。
【0074】
実施の形態では、特徴量算出部3613は、AE波情報記憶部3631が記憶するAE波情報に基づいて、AE波の振幅が予め設定された振幅閾値以上となるAE波継続時間を特定し、特定したAE波継続時間内におけるAE波のピーク強度を特徴量として算出する例について説明した。但し、これに限らず、特徴量算出部3613が、例えば、AE波のAE波継続時間内に現れるピークの強度の平均値、AE波のAE波継続時間内における波形形状の総面積、または、AE波のAE波継続時間内におけるAE波の包絡線について、AE波継続時間の始期からAE波のピーク強度が最大となるまでに要するに至るまでの包絡線の傾き等を特徴量として算出するものであってもよい。
【0075】
また、本発明に係る成形機制御装置1の各種機能は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、ネットワークに接続されているコンピュータに、上記動作を実行するためのプログラムを、コンピュータシステムが読み取り可能な非一時的な記録媒体(CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等)に格納して配布し、当該プログラムをコンピュータシステムにインストールすることにより、上述の処理を実行する成形機制御装置1を構成してもよい。
【0076】
また、コンピュータにプログラムを提供する方法は任意である。例えば、プログラムは、通信回線の掲示版(BBS(Bulletin Board System))にアップロードされ、通信回線を介してコンピュータに配信されてもよい。そして、コンピュータは、このプログラムを起動して、OS(Operating System)の制御の下、他のアプリケーションと同様に実行する。これにより、コンピュータは、上述の処理を実行する成形機制御装置1として機能する。
【0077】
以上、本発明の実施の形態および変形例について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明は、実施の形態および変形例が適宜組み合わされたもの、それに適宜変更が加えられたものを含む。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、射出成形機、押出成形機等に好適である。
【符号の説明】
【0079】
1:成形機制御装置、2:成形機、3:金型、3a:導入孔、21:シリンダ、21a:搬送スペース、22:吐出ノズル、22a:吐出孔、23:加圧機構、24:ホッパ、25A,25B,25C:ヒータ、26A,26B:AE波センサ、27A,27B:温度センサ、101,601:処理ユニット、105,605:入力部、111,3611:AE波情報取得部、112:振幅代表値算出部、113,3612:温度情報取得部、114:指示流量取得部、115:目標圧力推定部、116:圧力制御部、117:圧力取得部、118:モデル更新部、119:受付部、120:プレ射出時圧力設定部、131,3631:AE波情報記憶部、132,3632:温度情報記憶部、133:指示流量記憶部、134:振幅代表値記憶部、135:パラメータ記憶部、136:圧力推定モデル記憶部、137:変更後圧力記憶部、138:プレ射出時圧力記憶部、171,172,173,671,672:インタフェース、604:表示部、611:トルク情報取得部、612:電流値情報取得部、613,3614:相関情報生成部、614,3617:レオロジ特性判定部、615,3618:判定結果出力部、631:計測情報記憶部、632,3633:相関情報記憶部、633,3634:基準相関情報記憶部、2005:トルク計測器、2006,3006:レオロジ特性判定装置、3613:特徴量算出部、3615:樹脂種類取得部、3616:MFI特定部、3635:MFI記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15