(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118479
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】車体後部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20240826BHJP
【FI】
B62D25/08 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024760
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】井上 智之
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB08
3D203BB12
3D203BB24
3D203BB25
3D203BB55
3D203BB56
3D203BB62
3D203BC05
3D203BC10
3D203CA25
3D203CA73
3D203CB03
3D203CB19
3D203DA32
3D203DA53
(57)【要約】
【課題】後部座席の組付け作業性を良好に保ちつつ、後部座席部の剛性を高める。
【解決手段】リアホイールハウスWHの車両前方側において、サイドシル110およびリアピラー130に結合されているリアフェンダーアーチ部120の車幅方向内側に設けられた補剛ブラケット310と、車両用シートの車両下方側に車幅方向に延在して設けられたシートヒンジ330と、を備え、補剛ブラケット310には、車幅方向外側に向かって凹む凹部RSが形成され、凹部RSの車幅方向内側には、シートヒンジ330の車幅方向外側端部が凹部RSの車幅方向外側面と空間を有して近接して配設されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リアホイールハウスの車両前方側において、サイドシルおよびリアピラーに結合されているリアフェンダーアーチ部の車幅方向内側に設けられた補剛ブラケットと、
車両用シートの車両下方側に車幅方向に延在して設けられたシートヒンジと、
を備え、
前記補剛ブラケットには、車幅方向外側に向かって凹む凹部が形成され、
前記凹部の車幅方向内側には、前記シートヒンジの車幅方向外側端部が前記凹部の車幅方向外側面と空間を有して近接して配設されていることを特徴とする車体後部構造。
【請求項2】
車幅方向内側からの側面視において、前記補剛ブラケットの前記凹部と重複するように貫通孔が形成され、前記補剛ブラケットの車幅方向内側に前記補剛ブラケットを覆って配設されるカバーブラケットをさらに備え、
前記シートヒンジは、前記カバーブラケットの貫通孔に貫通させて配設されていることを特徴とする請求項1に記載の車体後部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車などの車両においては、側面から衝突を受けても、車幅方向内側への変形量を低減させるような車体構造が要求されている。
車両の後部座席付近への側面からの衝突(以下、側突と記載する)に対する剛性を向上させるためには、後部座席ドア、ロッカ(サイドシル)、リアピラーあるいはリアフェンダーアーチ等の後部フレーム構造等の剛性を向上させることによって、車幅方向外側の構成部材が、車幅方向内側へ侵入してくることを防ぐ必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1においては、車両側部に配置されたロッカ(サイドシル)と、リアピラーと、ロッカとリアピラーとを連結する補強部材と、補強部材の車両内側に配置されたシート部材と、車両側突時の荷重をシート部材へ伝達する荷重伝達部材と、を備えることで、側突時にサイドドアに加わった荷重を効率的にシート部材へ伝達する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、シートヒンジブラケットとシートヒンジとが接合あるいは一体化されていることによって、シートを車両側部に固定する際の組付け作業に時間がかかってしまう虞があるという課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、後部座席の組付け作業性を良好に保ちつつ、後部座席部の剛性を高める車体の後部座席構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
形態1;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、リアホイールハウスの車両前方側において、サイドシルとリアピラーとを結合しているリアフェンダーアーチ部の車幅方向内側に設けられたブラケットと、車両用シートの車両下方側に車幅方向に延在して設けられたシートヒンジと、を備え、前記ブラケットには、車幅方向内側に凹部が形成され、前記凹部の車幅方向内側には、前記シートヒンジの車幅方向外側端部が前記凹部の車幅方向外側面と空間を有して近接して配設されている車体後部構造を提案している。
【0008】
形態2;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、車幅方向内側からの側面視において、前記補剛ブラケットの前記凹部と重複するように貫通孔が形成され、前記補剛ブラケットの車幅方向内側に前記補剛ブラケットを覆って配設されるカバーブラケットをさらに備え、前記シートヒンジは、前記カバーブラケットの貫通孔に貫通させて配設されている車体後部構造を提案している。
【発明の効果】
【0009】
本発明の1またはそれ以上の実施形態によれば、後部座席の組付け作業性を良好に保ちつつ、後部座席部の剛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る車体後部構造を、後部座席を透視し上方から見た斜視図である。
【
図2】
図1に示された後部座席シート部および耐側突ヒンジ部を拡大し上方から見た斜視図である。
【
図3】
図2に示された補剛ブラケットの三面図である。
【
図4】
図2に示されたBK部を矢印AA方向から見たA―A線に沿う断面図である。
【
図5】
図2に示された矢印BB方向から見たA―A線に沿う断面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る車体後部構造における側面衝突時の変形を上方から見た平面図であり、(a)は衝突前の平面図であり、(b)および(c)は側面衝突時の変形を時系列で示した平面図である。
【
図7】
図2に示されたシートヒンジの変形例1を示し矢印AA方向から見たA―A線に沿う断面図である。
【
図8】
図2に示されたシートヒンジの変形例2を示し矢印AA方向から見たA―A線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、
図1から
図6を用いて、本実施形態に係る車体後部構造Sが適用された車両Vについて説明する。なお、図面に適宜示される矢印FRは、
図1に示す車両前方(正面)を示し、矢印UPは正面視上方を示し、矢印LHは正面視左方を示している。また、以下の説明において、上下、前後、左右の方向を用いて説明するときには、特に断りのない限り、正面視での上下方向、正面視での前後方向、正面視での左右方向を示すものとする。
【0012】
<実施形態>
図1から
図5を用いて、車両Vに備えられた、本実施形態に係る車体後部構造Sの構成について説明する。車体後部構造Sは、車幅方向において左右対称に配設されており、本実施形態においては、車両Vの正面視において右方側の車体後部構造Sを例示して説明する。
【0013】
<車両Vの構成>
車両Vは、例えば、内燃エンジンあるいはモータを駆動源とした自動車である。なお、車両Vは、例えば、内燃エンジンとモータとの複数の駆動源を有するハイブリッド自動車であってもよい。
【0014】
<車体後部構造Sの構成>
図1に示すように、車両Vの車体後部構造Sには、後部フレーム構造BF(
図1のドットハッチング部)と、耐側突ヒンジ部300と、後部座席シート部200と、を含んで構成されている。
<後部フレーム構造BFについて>
後部フレーム構造BFは、センターピラー100と、サイドシル110と、リアフェンダーアーチ部120と、リアピラー130と、フロアトンネル部140と、リアサイドフレーム150と、フロアフロントクロスメンバ160と、フロアセンタークロスメンバ170と、フロアリアクロスメンバ180と、リアクロスメンバ190と、を含んで構成されている。後部フレーム構造BFは、車両Vの車両後方部において、井桁状に骨格が構成されている。後部フレーム構造BFを構成している各部材は、高剛性を有する金属等により形成され、略矩形閉断面形状をなしている。また、サイドシル110と、リアフェンダーアーチ部120と、リアサイドフレーム150と、フロアフロントクロスメンバ160と、フロアリアクロスメンバ180と、に囲まれた後部フレーム構造BFの車両上方側には、図示しないフロアパネルが、後部フレーム構造BFそれぞれに溶接等により結合されている。
【0015】
センターピラー100は、フロントドア用開口部FOとリアドア用開口部ROとの間に配置され、車両上下方向に延在する骨格をなしている。センターピラー100の車両上方側端は、車両上方部を車両前後方向に延在しているルーフサイドフレームRFに溶接等により結合されている。また、センターピラー100の車両下方側端は、サイドシル110に溶接等により結合されている。
【0016】
サイドシル110は、車幅方向両側の車両下方部に、車両前後方向に延在されている。サイドシル110は、車幅方向両側における骨格であり、また、両側のサイドシル110の間には、フロアトンネル部140が車両前後方向に延材している。車幅方向両側のサイドシル110とフロアトンネル部140との間には、車幅方向にフロアフロントクロスメンバ160およびフロアセンタークロスメンバ170が配設され、フロアフロントクロスメンバ160およびフロアセンタークロスメンバ170は、サイドシル110とフロアトンネル部140とに溶接等により結合されている。
【0017】
リアフェンダーアーチ部120は、リアドア用開口部ROの車両後部下方側に配置され、リアホイールハウスWHの車両前方側において、サイドシル110、リアピラー130およびリアサイドフレーム150に溶接等により結合されている。リアフェンダーアーチ部120は、車両用シートとしての後部座席シート部200の車幅方向下部外側に配設されている。また、リアフェンダーアーチ部120の車幅方向内側には、後述する補剛ブラケット310およびカバーブラケット320が設けられている。
【0018】
リアピラー130は、リアドア用開口部ROの車両後方側に配置され、車両上下方向に延在されている。リアピラー130は、車幅方向両側における骨格である。リアピラー130の車両上方側端は、ルーフサイドフレームRFに溶接等により結合され、また、リアピラー130の車両下方側端は、リアフェンダーアーチ部120に溶接等により結合されている。
【0019】
フロアトンネル部140は、車両底部において、車両上方側の車室内側に張り出し車両下方側が開放された略U字形状を成し、車幅方向中央部の車両前後方向に延設されている。フロアトンネル部140の車両下方側には、プロペラシャフト等が収容されている。
【0020】
車両Vの後方側には、車幅方向両側のリアサイドフレーム150と、フロアリアクロスメンバ180と、リアクロスメンバ190と、によって、車両後方側における骨格が形成されている。
また、センターピラー100と、サイドシル110と、リアフェンダーアーチ部120と、リアピラー130と、フロアトンネル部140と、フロアフロントクロスメンバ160と、フロアセンタークロスメンバ170と、ルーフサイドフレームRFと、によって、後部座席シート部200の車幅方向外側および車両下方側における環状および井桁状の強固な骨格が形成されている。
【0021】
<後部座席シート部200について>
後部座席シート部200は、
図2に示すように、リアピラー130の車幅方向内側に配置され、フロアセンタークロスメンバ170の車両上方側に配置されている図示しないフロアパネルに固定されている。後部座席シート部200は、ヘッドレスト部210と、シートクッション部220と、シートバック部230と、を含んで構成されている。
【0022】
ヘッドレスト部210は、シートバック部230の車両上方端部の車幅方向中央部に設けられており、シートバック部230部から車両上方側へ突出して配設されている。
【0023】
シートクッション部220は、乗員Pの着座面であり、後部座席シート部200の車両下方部に配設され、乗員Pの臀部から大腿部を支える。シートクッション部220の車両下方側には、図示しない固定部が設けられており、シートクッション部220は、固定部を介して車両Vのフロアパネルに固定されている。
【0024】
シートバック部230は、乗員Pの背部を支える。シートバック部230は、シートクッション部220の車両後方側の車両上下方向に向けて、起立した状態で配設されている。シートバック部230の内側には、図示しないクッションと、シートバックフレーム231と、を含んで構成されている。
【0025】
シートバックフレーム231は、シートバック部230の骨格を形成し、シートバック部230の車両上方部を車幅方向に延在するフレームと、シートバック部230の車幅方向両側に車両上下方向に延在するフレームとが、溶接等により結合されて形成されている。シートバックフレーム231の車両下方側は、シートヒンジ330(シートヒンジ330L、330R)に溶接等により結合されている。シートヒンジ330が支持ブラケット340およびカバーブラケット320によって支持されていることによって、シートバックフレーム231は、支持ブラケット340およびカバーブラケット320に、車両前後方向へ回転可能に固定されている。
【0026】
<耐側突ヒンジ部300について>
図2に示すように、耐側突ヒンジ部300は、シートヒンジ330(シートヒンジ330L、330R)と、補剛ブラケット310と、カバーブラケット320と、支持ブラケット340と、を含んで構成されている。
【0027】
(補剛ブラケット310について)
補剛ブラケット310は、リアホイールハウスWHの車両前方側において、サイドシル110およびリアピラー130に結合されているリアフェンダーアーチ部120の車幅方向内側に設けられている。補剛ブラケット310は、鋼鉄等をプレス成型等によって形成された部材であり、リアフェンダーアーチ部120の車幅方向内側に溶接等により結合されている。
図3に示すように、補剛ブラケット310は、車幅方向を板厚方向とし、車両上下方向に平面が形成されている。また、補剛ブラケット310の車両上下方向および車両前後方向の周囲部は、車幅方向外側に配設されているリアフェンダーアーチ部120と嵌合可能に屈曲されている。
補剛ブラケット310には、車幅方向外側に向かって凹む凹部RSが形成されている。凹部RSは、
図3のハッチング部で示すように、車両後方側よりも車両前方側が車幅方向外側に向かって、略円筒状の部材を収容可能に凹んでいる。補剛ブラケット310の車両前方側には、凹部RSの底面としての平面が形成されている。
【0028】
(カバーブラケット320について)
カバーブラケット320は、鋼鉄等をプレス成型等によって形成された部材であり、
図4に示すように、補剛ブラケット310を覆うようにリアフェンダーアーチ部120の車幅方向内側に溶接等により結合されている。
カバーブラケット320は、車幅方向を板厚方向とし、車両前後方向を長手方向とした側面視において略矩形状に形成され、車幅方向外側には、半楕円状の空間が形成されている。カバーブラケット320の車幅方向内側には、略円形の貫通孔HLが、車幅方向内側から見て補剛ブラケット310の凹部RSと重複するように形成されている。
カバーブラケット320の貫通孔HLは、シートヒンジ330を貫通させて回転可能に支持している。
【0029】
(シートヒンジ330(シートヒンジ330L、330R)について)
シートヒンジ330(シートヒンジ330L、330R)は、
図2に示すように、後部座席シート部200の内部に設けられているシートバックフレーム231の車両下方側に溶接等により結合され、後部座席シート部200において、車両下方部の骨格をなしている。シートヒンジ330は、後部座席シート部200の車両下方側に車幅方向に延在して設けられた、鋼鉄等の部材で形成された丸棒あるいはパイプ状の棒材であり、車幅方向内側端は、支持ブラケット340に回転可能に嵌合し、支持されている。
また、シートヒンジ330の車幅方向外側におけるリアフェンダーアーチ部120には、カバーブラケット320が設けられ、シートヒンジ330は、カバーブラケット320によって回転可能に支持されている。
シートヒンジ330の車幅方向外側端は、
図4に示すように、リアフェンダーアーチ部120に設けられている後述するカバーブラケット320を貫通し支持され、補剛ブラケット310が有する凹部RSの車幅方向外側面と空間SPを有して近接して配設されている。
【0030】
(支持ブラケット340について)
支持ブラケット340は、シートヒンジ330を回転可能に支持する軸受けである。
図5に示すように、支持ブラケット340に設けられている軸受け孔には、シートヒンジ330の車幅方向内側の一方端部が回転可能に嵌合し、軸受け孔は、シートヒンジ330を支持している。支持ブラケット340の車両下方側は、図示しないフロアパネルを介して、フロアセンタークロスメンバ170にボルト等によって強固に固定されている。
【0031】
<作用・効果>
上記のように構成された本実施形態に係る車体後部構造Sは、側面衝突が発生した場合には、衝突物は、車両車幅方向どちらか片側の外側から衝突する。以下、
図5および
図6を用いて、車体後部構造Sの組付け性および側面衝突が発生した場合の作用について説明する。
【0032】
(組付け作業について)
車体後部構造Sにおいて後部座席シート部200を車両Vに組付ける際には、例えば、シートバック部230、シートクッション部220、ヘッドレスト部210の順に組付ける。
【0033】
シートバック部230は、シートヒンジ330をリアフェンダーアーチ部120に組付け、支持ブラケット340をフロアセンタークロスメンバ170に組付けていく。
リアフェンダーアーチ部120には、あらかじめ耐側突ヒンジ部300としての補剛ブラケット310およびカバーブラケット320が固定されている。カバーブラケット320の車幅方向内側には、略円形の貫通孔HLが、車幅方向内側から見て補剛ブラケット310の凹部RSと重複するように形成されている。
図5に示すように、シートヒンジ330の車幅方向外側端は、リアフェンダーアーチ部120に設けられているカバーブラケット320を貫通し支持させ、補剛ブラケット310が有する凹部RSの車幅方向外側面と空間SPを有して近接して配設させる。シートヒンジ330の車幅方向外側端は、補剛ブラケット310と空間SPを確保するため、耐側突ヒンジ部300としての補剛ブラケット310およびカバーブラケット320に固定はされていない。
そのため、リアフェンダーアーチ部120への組付け作業は、カバーブラケット320に設けられた貫通孔HLに、シートヒンジ330の車幅方向外側端を挿入する作業となる。
そして、支持ブラケット340を、シートバック部230の車両下方側のフロアパネルを介して、フロアセンタークロスメンバ170にボルト等によって固定することによって、シートバック部230は、車両Vのフロアパネルにボルト等によって固定される。
【0034】
また、シートクッション部220は、シートクッション部220の車両下方側に設けられている固定部を、車両Vのフロアパネルにボルト等によって固定することによって、フロアパネルに固定される。
【0035】
そして、ヘッドレスト部210をシートバック部230の車両上方側に挿入し、後部座席シート部200の組付け作業が終了する。
【0036】
(側突が発生した場合について)
図6(a)に示すように、衝突物FBが車両Vに側面衝突する場合には、矢印ARに示す方向から衝突エネルギーが発生する。矢印ARに示す車両側方側からの衝突エネルギーは、図示しないリアドア部、センターピラー100、サイドシル110およびリアフェンダーアーチ部120に伝達される。
【0037】
図6(b)に示すように、伝達された衝突エネルギーによって、センターピラー100およびサイドシル110は、矢印BR1に示す車幅方向内側に向かって押し込まれる。車幅方向に向かって配設されているフロアフロントクロスメンバ160は、サイドシル110から伝達される衝突エネルギーによって、車幅方向内側に押され、変形する。そして、フロアフロントクロスメンバ160は、矢印BR2に示すように、フロアフロントクロスメンバ160に結合されているフロアトンネル部140と、衝突が発生している側とは反対側のサイドシル110と、が変形する。センターピラー100、車幅方向両側のサイドシル110、フロアフロントクロスメンバ160およびフロアトンネル部140が、衝突エネルギーによって変形することによって、衝突エネルギーは、各部材に分散されるとともに吸収される。
【0038】
一方、サイドシル110に結合されているリアフェンダーアーチ部120は、矢印BR3に示すように、車幅方向内側に押し込まれるとともに、フロアセンタークロスメンバ170との結合部を支点として矢印BR4に示す方向に回転しながら変形する。補剛ブラケット310において、空間SPを有していた凹部RSと、シートヒンジ330とは、リアフェンダーアーチ部120が、車幅方向内側に押し込まれることによって、凹部RSとシートヒンジ330の車幅方向外側端とが当接する。そして、シートヒンジ330は、凹部RSによって、矢印BR3に示す車幅方向内側に向かって押し込まれる。シートヒンジ330の車幅方向内側端は、矢印BR5に示す方向に押され、支持ブラケット340を変形させる。さらに、支持ブラケット340は、側突が発生した反対側のリアフェンダーアーチ部120に設けられている凹部RSとシートヒンジ330の車幅方向外側端とを当接させることによって、側突が発生した反対側のリアフェンダーアーチ部120には、車幅方向内側に押し返す反力が発生する。そして、
図6(c)に示すように、支持ブラケット340には、矢印BR6に示す方向に反力が発生し、リアフェンダーアーチ部120には矢印BR7に示す反力が伝達され、リアフェンダーアーチ部120の変形が制限される。また、衝突エネルギーは、シートヒンジ330および支持ブラケット340を介して、側突が発生した反対側のリアフェンダーアーチ部120に分散されるとともに吸収される。
【0039】
以上のように、衝突エネルギーは、後部フレーム構造BFおよび耐側突ヒンジ部300により形成されている井桁形状を有した強固な骨格に効率よく分散されるとともに、骨格の変形によって吸収される。
【0040】
衝突エネルギーの入力が終了すると、車体後部構造Sの変形による衝突エネルギーの吸収は終了する。
【0041】
以上、説明したように、本実施形態に係る車体後部構造Sは、リアホイールハウスWHの車両前方側において、サイドシル110およびリアピラー130に結合されているリアフェンダーアーチ部120の車幅方向内側に設けられた補剛ブラケット310と、車両用シートとしての後部座席シート部200の車両下方側に車幅方向に延在して設けられたシートヒンジ330と、を備え、補剛ブラケット310には、車幅方向外側に向かって凹む凹部RSが形成され、凹部RSの車幅方向内側には、シートヒンジ330の車幅方向外側端部が凹部RSの車幅方向内側面と空間SPを有して近接して配設されている。
つまり、車体後部構造Sは、耐側突ヒンジ部300としての補剛ブラケット310とシートヒンジ330とを空間SPを有して近接した状態で配設させ、側突が発生した場合には、補剛ブラケット310と、シートヒンジ330と、を当接させ、リアフェンダーアーチ部120の変形を制限することによって、リアフェンダーアーチ部120の側突に対する剛性を高めることができる。
また、シートヒンジ330は、リアフェンダーアーチ部120に設けられている補剛ブラケット310に近接した状態で配設させるため、後部座席シート部200におけるリアフェンダーアーチ部120への組付け作業は、補剛ブラケット310の車両内側に向けられているカバーブラケット320の貫通孔HLにシートヒンジ330を挿入することによって終了させることができる。
そのため、後部座席の組付け作業性を良好に保ちつつ、後部座席部の剛性を高めることができる。
【0042】
また、本実施形態に係る車体後部構造Sは、車幅方向内側からの側面視において、補剛ブラケット310の凹部RSと重複するように貫通孔HLが形成され、補剛ブラケット310の車幅方向内側に補剛ブラケット310を覆って配設されるカバーブラケット320をさらに備え、シートヒンジ330は、カバーブラケット320の貫通孔HLに貫通させて配設されている。
つまり、シートヒンジ330の車幅方向外側端は、補剛ブラケット310と空間SPを確保するため、耐側突ヒンジ部300としての補剛ブラケット310およびカバーブラケット320に固定はされていない。したがって、リアフェンダーアーチ部120への組付け作業は、シートヒンジ330をカバーブラケット320に設けられた貫通孔HLに挿入することによって終了させることができる。
そのため、後部座席の組付け作業性を良好に保つことができる。
【0043】
<変形例1>
なお、本発明の実施形態として、シートヒンジ330(シートヒンジ330L、330R)は、略直線状の丸棒あるいはパイプ状の棒材として例示したが、
図7に示すように、シートヒンジ330A(シートヒンジ330LA、330RA)の車幅方向外側端部を車両前後方向あるいは車両上下方向に屈曲させて設けてもよい。
例えば、後部座席シート部200の構成部材の配設位置に制限が発生し、シートヒンジ330Aと、補剛ブラケット310とを略直線状に配設できない場合には、シートヒンジ330Aの車幅方向外側端部を屈曲させることにより、シートヒンジ330Aをカバーブラケット320に貫通し支持させ、補剛ブラケット310が有する凹部RSの車幅方向外側面と空間SPを有して近接して配設させることができる。
また、リアフェンダーアーチ部120への組付け作業においても、シートヒンジ330Aをカバーブラケット320に設けられた貫通孔HLに挿入することによって終了させることができる。
そのため、後部座席の組付け作業性を良好に保ちつつ、後部座席部の剛性を高めることができる。また、シートヒンジ330Aの屈曲部形状を変更させることにより、他車種への転用を容易にすることができる。
【0044】
<変形例2>
また、本発明の実施形態として、シートヒンジ330(シートヒンジ330L、330R)は、略直線状の丸棒あるいはパイプ状の棒材として例示したが、
図8に示すように、シートヒンジ330B(シートヒンジ330LB、330RB)の車幅方向外側端部にサポート部材330Ba(サポート部材330LBa、330RBa)を結合させて屈曲させてもよい。
例えば、後部座席シート部200の構成部材の配設位置に制限が発生し、シートヒンジ330Bと、補剛ブラケット310とを略直線状に配設できない場合には、シートヒンジ330Bの車幅方向外側端部にサポート部材330Baを設けることにより、サポート部材330Baをカバーブラケット320の貫通孔HLに貫通させ、補剛ブラケット310が有する凹部RSの車幅方向外側面と空間SPを有して近接して配設させることができる。
また、リアフェンダーアーチ部120への組付け作業においても、シートヒンジ330Bのサポート部材330Baをカバーブラケット320に設けられた貫通孔HLに挿入することによって終了させることができる。
そのため、後部座席の組付け作業性を良好に保ちつつ、後部座席部の剛性を高めることができる。また、サポート部材330Baの形状を変更させることにより、他車種への転用を容易にすることができる。
【0045】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0046】
100;センターピラー
110;サイドシル
120;リアフェンダーアーチ部
130;リアピラー
140;フロアトンネル部
150;リアサイドフレーム
160;フロアフロントクロスメンバ
170;フロアセンタークロスメンバ
180;フロアリアクロスメンバ
190;リアクロスメンバ
200;後部座席シート部
210;ヘッドレスト部
220;シートクッション部
230;シートバック部
300;耐側突ヒンジ部
310;補剛ブラケット
320;カバーブラケット
330;シートヒンジ
330A;シートヒンジ
330B;シートヒンジ
340;支持ブラケット
FB;衝突物
RS;凹部
SP;空間
S;車体後部構造
V;車両
WH;リアホイールハウス