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特開2024-118488高所作業装置用長尺材建て起こし装置、及び長尺材の建て起こし方法
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  • 特開-高所作業装置用長尺材建て起こし装置、及び長尺材の建て起こし方法 図1
  • 特開-高所作業装置用長尺材建て起こし装置、及び長尺材の建て起こし方法 図2
  • 特開-高所作業装置用長尺材建て起こし装置、及び長尺材の建て起こし方法 図3
  • 特開-高所作業装置用長尺材建て起こし装置、及び長尺材の建て起こし方法 図4A
  • 特開-高所作業装置用長尺材建て起こし装置、及び長尺材の建て起こし方法 図4B
  • 特開-高所作業装置用長尺材建て起こし装置、及び長尺材の建て起こし方法 図4C
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118488
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】高所作業装置用長尺材建て起こし装置、及び長尺材の建て起こし方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 1/62 20060101AFI20240826BHJP
   B66F 9/06 20060101ALI20240826BHJP
   B66F 11/04 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
B66C1/62 C
B66F9/06 Q
B66F11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024790
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】391033115
【氏名又は名称】株式会社カナモト
(71)【出願人】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(74)【代理人】
【識別番号】100183357
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義美
(72)【発明者】
【氏名】藤原 信義
(72)【発明者】
【氏名】植木 良
(72)【発明者】
【氏名】吉田 唯哉
(72)【発明者】
【氏名】安保 篤康
(72)【発明者】
【氏名】村石 辰徳
(72)【発明者】
【氏名】増田 隆行
(72)【発明者】
【氏名】羽根田 健
(72)【発明者】
【氏名】市川 達也
【テーマコード(参考)】
3F004
3F333
【Fターム(参考)】
3F004AA08
3F004AB12
3F004AH01
3F004EA04
3F333AA08
3F333AB03
3F333AC11
(57)【要約】
【課題】長尺材の建て起こし作業を安全かつ効率よく簡易に図り得る高所作業装置用長尺材建て起こし装置とこの装置を用いた長尺材の建て起こし方法を提供する
【解決手段】昇降機構5により昇降可能な作業床7を備えた高所作業装置1に使用される長尺材建て起こし装置21であって、作業床7側に取り付けられる第一部材23と、長尺材P側に取り付けられる第二部材51と、第一部材23と第二部材51との間にわたって架け渡される第三部材87と、で構成され、第一部材23は、作業床7側に固定される取付固定部27と、第三部材87を連結する連結部33と、鉛直方向で下方への荷重を受ける荷重受け部37とを少なくとも含み、第二部材51は、長尺材Pを固定する固定部53と、固定部53の外面側に設けられる第三部材連結部77と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降機構により昇降可能な作業床を備えた高所作業装置に使用される長尺材建て起こし装置であって、
前記作業床側に取り付けられる第一部材と、
前記長尺材側に取り付けられる第二部材と、
前記第一部材と前記第二部材との間にわたって掛け渡される第三部材と、で構成され、
前記第一部材は、前記作業床側に固定される取付固定板部と、第三部材を連結する連結部と、鉛直方向で下方へ荷重を受ける荷重受け部とを少なくとも含み、前記作業床の左右方向に間隔をあけて一対配設されており、
前記第二部材は、前記長尺材を固定する固定部と、前記固定部の外面側に設けられる第三部材連結部と、を含み、
前記第三部材は、それぞれの第一部材に取り付けられるとともに、前記第二部材の第三部材連結部にそれぞれ架け渡される吊り上げ用のワイヤーであることを特徴とする高所作業装置用長尺材建て起こし装置。
【請求項2】
前記第二部材に設けられている第三部材連結部は、前記固定部の長さ方向で中心からずれた位置に連結用孔部が穿設されていることを特徴とする請求項1に記載の高所作業用長尺材建て起こし装置。
【請求項3】
昇降機構により昇降可能な作業床を備えた高所作業装置において、請求書1又は2に記載の建て起こし装置を用いて長尺材を建て起こす方法であって、
前記作業床の所定位置に間隔をあけて前記左右の第一部材を備える工程と、
前記長尺材の均衡がとれる位置を避けるようにして、前記長尺材に前記第二部材を取り付け固定する第二部材の取付け工程と、
前記昇降機構によって前記作業床を上昇させる作業床上昇工程と、
前記作業床が上昇するにしたがって前記第三部材が緊張し、前記長尺材の一端側が徐々に持ち上げられて建て起こされていく建て起こし工程と、を含むことを特徴とする長尺材の建て起こし方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降機構によって昇降可能な作業床を有する高所作業装置に使用される長尺材の建て起こし装置及び長尺材の建て起こし方法に関する。
【背景技術】
【0002】
柱部材のような、いわゆる垂直状態で使用される長尺材は、その建込みに際して、あらかじめ水平状態から垂直状態に建て起こし、その状態で、所定の位置に吊り込む必要がある。
例えば、物流倉庫現場では階高が高い場所(6~8m)での施工が多い。階段室やエレベータ室周りの壁あるいは倉庫を区切る間仕切り壁の下地材は、一般的に、長さが6~8mで重量が20kg~100kg以上に及ぶ鋼製の角パイプやスタッドなどの長尺材を使用している。
しかし、長尺材が30kg以上になると人力で建て起こすことが困難になる。
【0003】
従来、それらを施工する際は、高所作業車の作業床上に乗った作業員が長尺材の一方の先端を持ち、作業床を上昇させながら上部まで建て起こしたりしていた。
また、天井あるいは鉄骨梁などに設置したチェーンブロックを使用し、長尺材を建て起こし、高所作業車に搭乗している作業員が上部で長尺材を受取り、取付け作業を行っていた。
このような従来の作業工程の場合、作業が非効率で資材の落下や作業員転落などの可能性があり大変危険である。
【0004】
また、特許文献1に開示されている長尺材の建て起こし装置も提案されている。
【0005】
しかし、特許文献1に開示の先行技術では、建て起こし対象となる柱部材に複数個のアンカーボルトを取り付ける必要があるばかりか、クレーン車を別途用意する必要があり、大変な作業手間を要していた。また、高所作業車の作業床に乗って作業をする者、下で長尺材を支える者、そしてクレーン車を操作する者が必要で作業者の確保及びコストが掛かっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-180674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来技術の有する課題を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、長尺材の建て起こし作業を安全かつ効率よく簡易に図り得る高所作業装置用長尺材建て起こし装置とこの装置を用いた長尺材の建て起こし方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の本発明は、昇降機構により昇降可能な作業床を備えた高所作業装置に使用される長尺材建て起こし装置であって、
前記作業床側に取り付けられる第一部材と、
前記長尺材側に取り付けられる第二部材と、
前記第一部材と前記第二部材との間にわたって掛け渡される第三部材と、で構成され、
前記第一部材は、前記作業床側に固定される取付固定板部と、第三部材を連結する連結部と、鉛直方向で下方への荷重を受ける荷重受け部とを少なくとも含み、前記作業床の左右方向に間隔をあけて一対配設されており、
前記第二部材は、前記長尺材を固定する固定部と、前記固定部の外面側に設けられる第三部材用連結部と、を含み、
前記第三部材は、それぞれの第一部材に取り付けられるとともに、前記第二部材の第三部材用連結部にそれぞれ架け渡される吊り上げ用のワイヤーであることを特徴とする高所作業装置用長尺材建て起こし装置としたことである。
【0009】
第2の本発明は、第1の本発明において、前記第二部材に設けられている第三部材用連結部は、前記固定部の長さ方向で中心からずれた位置に連結用孔部が穿設されていることを特徴とする高所作業用長尺材建て起こし装置としたことである。
【0010】
第3の本発明は、昇降機構により昇降可能な作業床を備えた高所作業装置において、第1の本発明又は第2の本発明の建て起こし装置を用いて長尺材を建て起こす方法であって、
前記作業床の所定位置に間隔をあけて前記左右の第一部材を備える工程と、
前記長尺材の均衡がとれる位置を避けるようにして、前記長尺材に前記第二部材を取り付け固定する第二部材の取付け工程と、
前記昇降機構によって前記作業床を上昇させる作業床上昇工程と、
前記作業床が上昇するにしたがって前記第三部材が緊張し、前記長尺材の一端側が徐々に持ち上げられて建て起こされていく建て起こし工程と、を含むことを特徴とする長尺材の建て起こし装方法としたことである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、長尺材の建て起こし作業を安全かつ効率よく簡易に図り得る高所作業装置用長尺材建て起こし装置及び長尺材の建て起こし方法を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】高所作業装置に本発明の長尺材建て起こし装置を配設した状態の概略斜視図である。
図2】本発明の高所作業装置の一実施形態を一部省略して示す概略斜視図である。
図3】第二部材の一実施形態であって、(a)は背面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
図4A】本発明長尺材建て起こし装置を配設した高所作業装置の作動状態を示し、長尺材に第二部材を取付固定して作業床を上昇させる前の状態を示す。
図4B】本発明長尺材建て起こし装置を配設した高所作業装置の作動状態を示し、作業床を上昇させて長尺材を建て起こしする途中の状態を示す。
図4C】本発明長尺材建て起こし装置を配設した高所作業装置の作動状態を示し、作業床を上昇させて長尺材を建て起こした状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について説明する。なお、本実施形態は本発明の一実施形態にすぎず、何等これに限定して解釈されるものではなく、本発明の範囲内で設計変更可能である。
「第一実施形態」
【0014】
本実施形態では、本発明建て起こし装置を使用する高所作業装置の一実施形態として、図に示す高所作業車を想定している。
【0015】
高所作業装置1は、走行機構3と、走行機構3の上面に配設され伸縮可能な構造を有する昇降機構5と、昇降機構5の上端側を連結し、昇降機構5によって昇降可能に構成された作業床7と、を備えた一般的な高所作業装置であって、本実施形態では、図1に示すように、搭載したバッテリで走行可能な自走式の高所作業装置(高所作業車)を想定している。
なお、高所作業装置は図示した本実施形態の高所作業装置に限定解釈されるものではなく、本発明建て起こし装置が適用可能な高所作業装置全般が対象であり、走行機構を備えない形態であっても本発明の範囲内である。また、昇降機構にあっては、本実施形態のような垂直昇降(シザース)型に限定されず任意に設計変更可能である。
【0016】
本実施形態で作業床7は、昇降機構5の上端側を連結するベース部9と、ベース部9の左枠部11と右枠部13との間にて、ベース部9上を前後スライド移動自在に備えられるスライド床部15とで構成されている。
この種の高所作業装置(高所作業車)1には、ベース部9の左枠部11と右枠部13のそれぞれの上面前方側に安全帯を取り付けるための孔部19を備えた取付板部17が設けられている。本実施形態では、この取付板部17の孔部19を利用し、第一部材23の固定板部27をボルト締結するための締結孔部としている(図1を参照。)。
【0017】
建て起こし装置21は、作業床7側に取り付けられる第一部材23と、建て起こし対象物である長尺材P側に取り付けられる第二部材51と、第一部材23と第二部材51との間にわたって架け渡される第三部材87と、で構成されている(図2を参照。)。
本実施形態では長尺材Pは、鋼製の角パイプを想定している。
【0018】
第一部材23は、所定厚みを有する矩形平板状の基板部25と、作業床7側に固定される取付固定板部27と、第三部材87を連結する連結部33と、鉛直方向(図中、矢印Vで示す方向)で下方への荷重を受ける荷重受け部37とを少なくとも含んで構成されている。
【0019】
第一部材23は、鉛直方向Vと直交する水平方向(図中、符号Hで示す方向)で、スライド床部15の左右側面15a,15bと、ベース部9の左枠部11と右枠部13との間で形成されるそれぞれのスペースS,Sに、高所作業装置の前方側から一つずつ挿入して配設されている。
第一部材23の厚みは、スライド床部15の左右側面15a,15bと、ベース部9の左枠部11と右枠部13との間のスペースS,Sに挿入可能な厚みとする(図1及び図4A乃至図4Cを参照。)。
本実施形態において、左右の第一部材23,23は、スペースS,Sにおいて、鉛直方向V、水平方向H及び前後方向(奥行き方向)で同一位置にて作業床7に備えられている。
【0020】
取付固定板部27は、基板部25の上端後方側面から、基板部25と同一厚みで水平方向に突設した細長平板状に一体形成されている。
取付固定板部27には、作業床7側(本実施形態では、ベース部9の取付板部(締結板部)17)にボルト29にて締結固定するためのボルト締結用の孔部31が二か所並設されている。
なお、本実施形態における取付固定板部27は、図示は省略するが、先端側を延長し、その延長した領域部分に安全帯を取り付けるための孔部を設けるようにする。これにより、元々作業床に備えられている安全帯用の取付板部17の孔部を締結孔部として利用したとしても、作業床7に乗る作業者の安全性は確保し得る。また、取付固定板部27に設けるのではなく、作業床7のいずれか任意の場所に安全帯を取り付けるための取付部を備えることとしてもよい。
【0021】
連結部33は、基板部25の前方下方領域にて厚み方向に貫通し、第三部材を連結するための連結用の孔部である。本実施形態では、これら連結部(孔部)33,33に、それぞれ、第三部材87の第一のワイヤー89と第二のワイヤー91を連結するシャックル35,35を取り付けている。
【0022】
荷重受け部37は、本実施形態では、ベース部9の上面前方領域に当接する基板部25の下端後方の一部領域が荷重受け部として機能している(図1及び図2を参照。)。
【0023】
本実施形態の場合、取付固定板部27を締結板部17に締結固定した際に、ベース部9の上面前方領域に荷重受け部37が当接し、そしてその状態で連結部33がベース部9の先端領域から前方に突出して位置するように形成されている(図1参照。)。
【0024】
本実施形態では、基板部25の上端領域から鉛直方向で上方に向けて連続して一体形成された延設板部39を設けている(図1及び図2を参照。)。
延設板部39は、基板部25の上端全域25aから連続し、先窄まり状に延設された根元幅広板部41と、根元幅広板部41の先端窄まり領域41aから細板状に連続して延設された補助フック配設板部43と、を備えている。
【0025】
補助フック配設板部43の先端部分には、シャックル47などを引掛ける孔部45が設けられている。補助フック49は、建て起こし装置21を使用しない時に、第二部材51に備えたシャックル83を連結して建て起こし装置21をぶら下げ装備する。
【0026】
第二部材51は、長尺材Pを固定する固定部53と、固定部53の外面側に設けられる第三部材用連結部77と、を含んで構成されている。
【0027】
固定部53は、矩形状第一面板57と矩形状第二面板59とで側面視L字状に連続して形成された上側挟持部55と、矩形状第三面板65と矩形状第四面板67とで側面視L字状に連続して形成された下側挟持部63とにより、側面視矩形状の挟持空間A1を形成している(図2及び図3を参照。)。
【0028】
矩形状第一面板57は、矩形状第二面板と連続する辺57aと反対側の辺57bから突出する第一の締結板61を連続して形成している。
【0029】
矩形状第三面板65は、矩形状第四面板67と連続する辺65aと反対側の辺65bから突出する第二の締結板69を連続して形成している。
【0030】
矩形状第二面板59と矩形状第四面板67との相対向する領域を蝶番71で開閉可能に連結するとともに、第一の締結板61と第二の締結板69とを対向させ、ボルト73により締結可能に構成している。
【0031】
上側挟持部55の内面と下側挟持部63の内面には、それぞれゴム製クッション材75が配設されており、固定される長尺材を締結固定した際のすべり止め(脱落防止)機能を発揮させている。
【0032】
第三部材用連結部77は、固定部53における矩形状第一面板57と矩形状第二面板59との連続領域にて、その連続領域の一端側から突設される第一辺部79aと、第一辺部79aよりも長尺に突設される第二辺部79bと、第一辺部79aの遊端と第二辺部79bの遊端とにわたり傾斜状に連続するテーパー辺部79cとを有する正面視で略三角形状に連続して突設される連結板部79と、連結板部79における固定部53の長さ方向L1で中心からずれた位置に穿設されている連結用孔部81と、を含んで構成されている(図3及び図4A乃至図4C参照。)。
【0033】
本実施形態では、第二辺部79bとテーパー辺部79cとが交差する広い面部領域A2に連結用孔部81が設けられており(図3(a)(c)参照。)、連結用孔部81には、第一のワイヤー89と第二のワイヤー91を連結するシャックル83を備えている。
【0034】
図中、符号85は、固定部53の強度を向上させるため、矩形所第一面板57、矩形状第二面板59、矩形状第三面板65、矩形状第四面板67の外面側に一体に突設したリブである。
上側挟持部55の長さ方向L1で直交するように突設した中央領域のリブ85aは、左右領域にて突設したリブ85bに比して大きく形成されている。また、下側挟持部63の中央領域に突設したリブ85cよりも大きく形成されている。これは、第三部材用連結部77に係る荷重に耐え得るようにするためである。
また、上側挟持部55の中央領域で突設するリブ85aは、第一の締結板61と第三部材用連結部77にわたって架け渡されている。下側挟持部63の中央領域で突設するリブ85cも第二の締結板69にわたって架け渡されている。
【0035】
第三部材87は、本実施形態では第一部材23と第二部材51との間にわたって架け渡される図示した吊り上げ用の第一のワイヤー89と第二のワイヤー91が想定されている。
第一のワイヤー89の一端ループ部89aは、一方の第一部材23の連結部33に取り付けられているシャックル35に係止され、第二のワイヤー91の一端ループ部91aは、他方の第一部材23の連結部33に取り付けられているシャックル35に係止され、第一のワイヤー89の他端ループ部89bと第二のワイヤー91の他端ループ部91bは、第二部材51の第三部材用連結部77の連結用孔部81に備えたシャックル83にそれぞれまとめて係止される。
【0036】
本実施形態によれば、第一のワイヤー89と第二のワイヤー91は、それぞれが同一長さで形成されている。
そして、それぞれの一端ループ部(一端側)89a,91aを、左右の第一部材23,23におけるそれぞれのシャックル35,35に取り付けるとともに、それぞれの他端ループ部(他端側)89b,91bを、第二部材51の第三部材用連結部77の連結用孔部81に備えた単一のシャックル83に係止する。
これにより左右の第一部材23,23と第二部材51との間には、第一のワイヤー89と第二のワイヤー91により二等辺三角形の領域が形成される(図1図4A乃至図4C参照。)。
なお、第三部材87は、建て起こし対象となる長尺材Pを安全に建て起こし可能な構成を有しているものであれば限定解釈されるものではなく本発明の範囲内で設計変更可能である。
【0037】
本実施形態によれば、第一部材23を構成する取付固定板部27の孔部31をベース部9の孔部(締結孔部)19にボルト29を介して取付固定するとともに、ベース部9の上面前方領域に当接する基板部25の下端後方の一部領域25aが荷重受け部として機能しているため、長尺材Pによる鉛直方向で下方に掛かる荷重を十分に受けることができる。作業床7上に乗る作業者が、長尺材Pを手で持っていなくともよく、高所作業装置による長尺材Pの建て起こし作業を安全かつ効率よく簡易に図り得る。また、本実施形態の第二部材51を使用することにより、建て起こし対象とされる長尺材Pを容易かつ確実に取付固定することができ、作業効率も向上する。
【0038】
本実施形態の高所作業装置用の長尺材建て起こし装置21の使用形態(長尺材Pの建て起こし方法)について説明する。
【0039】
本実施形態では、次の工程を採用した建て起こし方法を採用することにより長尺材Pを建て起こすものとする。
【0040】
[第一部材を備える工程]
まず、鉛直方向V、水平方向H及び前後方向(奥行き方向)で同一位置にて作業床7とベース部9との間に形成されているスペースS,Sに、左右の第一部材23,23を取付固定して備える。なお、左右の第一部材23,23は常時高所作業装置1に取付固定して備えておくことも可能である。さらには、本実施形態の建て起こし装置21全体を高所作業装置1にあらかじめ配設しておくことも可能で本発明の範囲内である。
【0041】
[第二部材の取付け工程]
長尺材Pの端部をスライド移動可能な図示しない台車などの上に載せて第二部材51の取付準備をする。すなわち、第二部材51の取り付け前に、長尺材Pを床面から浮かせておくことで第二部材51をスムーズに取り付けることができる。
そして、第二部材51の固定部53のボルト73を緩め(あるいは取り外し)、長尺材Pの任意の箇所に、上側挟持部55と下側挟持部63とによって長尺材Pの外周を挟持すると共に、ボルト73を締結して第二部材51を取付固定する(図4A)。
このとき、長尺材Pの均衡がとれる位置を避けるようにして、長尺材Pに第二部材51を取り付け固定する。第二部材51の取付位置によっては長尺材Pの重心のバランスが取れる位置が存在するため、長尺材の重心のバランスが取れる位置、すなわち均衡状態となる位置を避けて第二部材51を取付固定するようにする。
本実施形態では、図示したように、長尺材Pの中心位置からずれて長尺材Pの長さ方向で二分した際に短尺領域となる位置に第二部材51を取付固定している。
【0042】
[作業床上昇工程・長尺材建て起こし工程]
【0043】
そして、作業床7上に作業者(不図示)が乗り、昇降機構5を上昇作動させて作業床7を上昇させていき、第一部材23と第二部材51との間にわたって架け渡された第三部材87である第一のワイヤー89,第二のワイヤー91にテンションが掛かる(緊張状態となる)と、作業床7の上昇に伴い、第一のワイヤー89,第二のワイヤー91によって第二部材51を介して長尺材Pが建て起こされていく。このとき、第二部材51の取付固定位置に対して荷重が重くなる片方の端部が下となるため、続けて作業床を上昇させていけば他方の端部が上昇し、長尺材Pが垂直状態とになるまで建て起こしていく(図4B)。なお、床面にいる作業者(不図示)は建て起こし作業において下がった方の片方の端部を押さえるようにする。
そして、長尺材Pが垂直に建て起こされた後、施工位置に合わせ、上端を天井又は梁に、下端を床又は腰壁などにボルト止めあるいは溶接などで固定する。
なお、実際、建て起こされる工程で長尺材Pは45度回転しながら上昇するが、図4A図4Cではその図示は省略している。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、昇降装置により昇降可能な作業床を備えている様々な高所作業装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 高所作業装置
5 昇降機構
7 作業床
21 長尺材建て起こし装置
23 第一部材
27 取付固定板部
33 連結部
37 荷重受け部
51 第二部材
53 固定部
77 第三部材用連結部
81 連結用孔部
87第三部材
89 第一のワイヤー
91 第二のワイヤー
P 長尺材
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C