(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118490
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】光学装置及びフォーカス補正方法
(51)【国際特許分類】
G02B 7/28 20210101AFI20240826BHJP
G03F 1/84 20120101ALI20240826BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
G02B7/28 N
G03F1/84
G01B11/00 G
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024792
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000115902
【氏名又は名称】レーザーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】細見 実
【テーマコード(参考)】
2F065
2H151
2H195
【Fターム(参考)】
2F065AA02
2F065AA06
2F065AA09
2F065CC21
2F065FF51
2F065LL12
2H151AA15
2H151BB31
2H151GB11
2H195BD14
2H195BD20
(57)【要約】
【課題】フォーカスの位置合わせを向上させることができる光学装置及びフォーカス補正方法を提供する。
【解決手段】本実施形態にかかる光学装置は、照明光L11が試料60で反射した検出光L12を検出する検出器20と、照明光L11で試料60を照明するとともに、試料60で反射した検出光L12を検出器20に導く光学系10と、光学系10に含まれる光学素子の位置のドリフト量を示す変位ドリフトを測定する変位測定部40と、変位ドリフトと、検出器20で検出された検出光L12が焦点を結ぶ場合の試料60と光学系10との間の距離のドリフト量を示すフォーカスドリフトと、の相関関係を記憶する記憶部52と、測定した変位ドリフトから、相関関係を用いることにより、フォーカスドリフトを予測する予測部53と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光が試料で反射した反射光を検出する検出器と、
前記照明光で前記試料を照明するとともに、前記試料で反射した前記反射光を前記検出器に導く光学系と、
前記光学系に含まれる光学素子の位置のドリフト量を示す変位ドリフトを測定する変位測定部と、
前記変位ドリフトと、前記検出器で検出された前記反射光が焦点を結ぶ場合の前記試料と前記光学系との間の距離のドリフト量を示すフォーカスドリフトと、の相関関係を記憶する記憶部と、
測定した前記変位ドリフトから、前記相関関係を用いることにより、前記フォーカスドリフトを予測する予測部と、
を備えた光学装置。
【請求項2】
前記変位ドリフトは、前記光学素子の基準位置からの前記ドリフト量を示し、
前記フォーカスドリフトは、前記試料と前記光学系との間の基準となる基準距離からの前記ドリフト量を示す、
請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記変位測定部は、
前記光学素子に固定されたミラーと、
レーザ光を出射するレーザと、
前記ミラーに対して出射された前記レーザ光と、前記ミラーで反射した前記レーザ光との干渉から前記ミラーの位置を検出する干渉計と、
を含む、
請求項1に記載の光学装置。
【請求項4】
前記光学系は、凹面鏡及び凸面鏡を有するシュバルツシルト光学系を含み、
前記凸面鏡は、前記凸面鏡の光軸に平行な第1方向に延びた第1部材及び前記光軸に直交する第2方向に延びた第2部材を含むホルダに固定され、
前記ミラーは、前記第2部材を介して前記光学素子に固定され、
前記変位測定部は、前記第2方向に沿って出射したレーザ光と、前記ミラーで前記第2方向の逆向きに反射した前記レーザ光との干渉から前記位置を測定する、
請求項3に記載の光学装置。
【請求項5】
前記試料と、前記光学系との間の距離を制御する制御部と、
をさらに備え、
前記制御部は、前記予測部で予測された前記フォーカスドリフトに基づいて、前記距離を制御する、
請求項1に記載の光学装置。
【請求項6】
照明光が試料で反射した反射光を検出する検出器と、
前記照明光で前記試料を照明するとともに、前記試料で反射した前記反射光を前記検出器に導く光学系と、
を備えた光学装置のフォーカス補正方法であって、
前記光学系に含まれる光学素子の位置のドリフト量を示す変位ドリフトと、前記検出器で検出された前記反射光が焦点を結ぶ場合の前記試料と前記光学系との間の距離のドリフト量を示すフォーカスドリフトと、の相関関係を記憶させるステップと、
前記変位ドリフトを測定するステップと、
測定した前記変位ドリフトから、前記相関関係を用いることにより、前記フォーカスドリフトを予測するステップと、
を備えたフォーカス補正方法。
【請求項7】
前記変位ドリフトは、前記光学素子の基準位置からの前記ドリフト量を示し、
前記フォーカスドリフトは、前記試料と前記光学系との間の基準となる基準距離からの前記ドリフト量を示す、
請求項6に記載のフォーカス補正方法。
【請求項8】
前記光学装置は、変位測定部をさらに備え、
前記変位測定部は、
前記光学素子に固定されたミラーと、
レーザ光を出射するレーザと、
前記ミラーに対して出射された前記レーザ光と、前記ミラーで反射した前記レーザ光との干渉から前記ミラーの位置を検出する干渉計と、
を含み、
前記変位ドリフトを測定するステップにおいて、
前記ミラーに対して出射された前記レーザ光と、前記ミラーで反射した前記レーザ光との干渉から前記ミラーの位置を検出することにより、前記変位ドリフトを測定する、
請求項6に記載のフォーカス補正方法。
【請求項9】
前記光学系は、凹面鏡及び凸面鏡を有するシュバルツシルト光学系を含み、
前記凸面鏡は、前記凸面鏡の光軸に平行な第1方向に延びた第1部材及び前記光軸に直交する第2方向に延びた第2部材を含む支持部材に固定され、
前記ミラーは、前記第2部材を介して前記光学素子に固定され、
前記変位ドリフトを測定するステップにおいて、
前記第2方向に沿って出射したレーザ光と、前記ミラーで前記第2方向の逆向きに反射した前記レーザ光との干渉から前記位置を測定する、
請求項8に記載のフォーカス補正方法。
【請求項10】
前記フォーカスドリフトを予測するステップにおいて予測された前記フォーカスドリフトに基づいて、前記距離を制御するステップをさらに備えた、
請求項6に記載のフォーカス補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学装置及びフォーカス補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レンズ等を含む光学素子に測定光を透過させ、入射方向と反対側に取り付けたミラーからの反射光をCCD等のカメラで検出する測定システムが開示されている。特許文献1の測定システムは、レンズが膨張して光学素子内の光路が変化すると、カメラに記録される干渉パターンに変化が生じることから、この変化を基にミラーの形状変化を導き出し、マニピュレータを使って光学素子の位置を調整している。
【0003】
特許文献2及び特許文献3には、熱負荷により発生するミラー間隔の変化を距離センサで測定し、その測定結果に基づいて、ミラー間隔を調整するEUV露光装置が開示されている。特許文献2の距離センサには、レーザ干渉計や静電容量センサが用いられており、鏡筒内に取り付けられたミラーの位置をピエゾ素子等のアクチュエータを用いて調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2015―512145号公報
【特許文献2】特開2008―130850号公報
【特許文献3】特開2000-286189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、EUVマスク等の試料を照明する照明光として、EUV光を用いる欠陥検査装置では、その焦点深度の浅さから1℃以内の温度変化による熱膨張でもデフォーカスが起きてしまう。このようなフォーカスドリフトを含む画像には、ボケが発生し、疑似欠陥として検出されることが問題となっている。
【0006】
本開示は、このような問題点を鑑みてなされたものであり、フォーカスの位置合わせを向上させることができる光学装置及びフォーカス補正方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の一態様にかかる光学装置は、照明光が試料で反射した反射光を検出する検出器と、前記照明光で前記試料を照明するとともに、前記試料で反射した前記反射光を前記検出器に導く光学系と、前記光学系に含まれる光学素子の位置のドリフト量を示す変位ドリフトを測定する変位測定部と、前記変位ドリフトと、前記検出器で検出された前記反射光が焦点を結ぶ場合の前記試料と前記光学系との間の距離のドリフト量を示すフォーカスドリフトと、の相関関係を記憶する記憶部と、測定した前記変位ドリフトから、前記相関関係を用いることにより、前記フォーカスドリフトを予測する予測部と、を備える。
【0008】
上記の光学装置では、前記変位ドリフトは、前記光学素子の基準位置からの前記ドリフト量を示し、前記フォーカスドリフトは、前記試料と前記光学系との間の基準となる基準距離からの前記ドリフト量を示してもよい。
【0009】
上記の光学装置では、前記変位測定部は、前記光学素子に固定されたミラーと、レーザ光を出射するレーザと、前記ミラーに対して出射された前記レーザ光と前記ミラーで反射した前記レーザ光との干渉から前記ミラーの位置を検出する干渉計と、を含んでもよい。
【0010】
上記の光学装置では、前記光学系は、凹面鏡及び凸面鏡を有するシュバルツシルト光学系を含み、前記凸面鏡は、前記凸面鏡の光軸に平行な第1方向に延びた第1部材及び前記光軸に直交する第2方向に延びた第2部材を含むホルダに固定され、前記ミラーは、前記第2部材を介して前記光学素子に固定され、前記変位測定部は、前記第2方向に沿って出射したレーザ光と、前記ミラーで前記第2方向の逆向きに反射した前記レーザ光との干渉から前記位置を測定してもよい。
【0011】
上記の光学装置では、前記試料と、前記光学系との間の距離を制御する制御部と、をさらに備え、前記制御部は、前記予測部で予想された前記フォーカスドリフトに基づいて、前記距離を制御してもよい。
【0012】
本実施形態の一態様にかかるフォーカス補正方法は、照明光が試料で反射した反射光を検出する検出器と、前記照明光で前記試料を照明するとともに、前記試料で反射した前記反射光を前記検出器に導く光学系と、を備えた光学装置のフォーカス補正方法であって、前記光学系に含まれる光学素子の位置のドリフト量を示す変位ドリフトと、前記検出器で検出された前記反射光が焦点を結ぶ場合の前記試料と前記光学系との間の距離のドリフト量を示すフォーカスドリフトと、の相関関係を記憶するステップと、前記変位ドリフトを測定するステップと、測定した前記変位ドリフトから、前記相関関係を用いることにより、前記フォーカスドリフトを予測するステップと、を備える。
【0013】
上記のフォーカス補正方法では、前記変位ドリフトは、前記光学素子の基準位置からの前記ドリフト量を示し、前記フォーカスドリフトは、前記試料と前記光学系との間の基準となる基準距離からの前記ドリフト量を示してもよい。
【0014】
上記のフォーカス補正方法では、前記光学装置は、変位測定部をさらに備え、前記変位測定部は、前記光学素子に固定されたミラーと、レーザ光を出射するレーザと、前記ミラーに対して出射された前記レーザ光と前記ミラーで反射した前記レーザ光との干渉から前記ミラーの位置を検出する干渉計と、を含み、前記変位ドリフトを測定するステップにおいて、前記ミラーに対して出射された前記レーザ光と、前記ミラーで反射した前記レーザ光との干渉から前記ミラーの位置を検出することにより、前記変位ドリフトを測定してもよい。
【0015】
上記のフォーカス補正方法では、前記光学系は、凹面鏡及び凸面鏡を有するシュバルツシルト光学系を含み、前記凸面鏡は、前記凸面鏡の光軸に平行な第1方向に延びた第1部材及び前記光軸に直交する第2方向に延びた第2部材を含む支持部材に固定され、前記ミラーは、前記第2部材を介して前記光学素子に固定され、前記変位ドリフトを測定するステップにおいて、前記第2方向に沿って出射したレーザ光と、前記ミラーで前記第2方向の逆向きに反射した前記レーザ光との干渉から前記位置を測定してもよい。
【0016】
上記のフォーカス補正方法では、前記フォーカスドリフトを予測するステップにおいて予想された前記フォーカスドリフトに基づいて、前記距離を制御するステップをさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、フォーカスの位置合わせを向上させることができる光学装置及びフォーカス補正方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態1に係る検査装置を例示した構成図である。
【
図2】実施形態1に係る検査装置において、光学素子の変位前後の変位測定部を例示した構成図である。
【
図3】実施形態1に係る検査装置において、光学素子の変位前後の変位測定部を例示した構成図である。
【
図4】実施形態1に係る検査装置において、処理装置を例示したブロック図である。
【
図5】実施形態1に係る検査装置において、変位ドリフトと、フォーカスドリフトとの相関関係を例示したグラフであり、横軸は、X軸方向またはY軸方向等の面内方向の変位ドリフトdx、dyを示し、縦軸は、フォーカスドリフトを示す。
【
図6】実施形態1に係るフォーカス補正方法を例示したフローチャート図である。
【
図7】実施形態1に係るフォーカス補正方法において、光学素子の変位ドリフトと、フォーカスドリフトとの相関関係を取得する方法を例示したフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。以下の説明は、本開示の好適な実施形態を示すものであって、本開示の範囲が以下の実施形態に限定されるものではない。以下の説明において、同一の符号が付されたものは実質的に同様の内容を示している。
【0020】
(実施形態1)
実施形態1に係る光学装置を説明する。本実施形態に係る光学装置は、例えば、EUV光等の照明光でEUVマスク等の試料を照明することにより、試料を検査する検査装置である。なお、光学装置は、照明光で試料を照明する光学系を有していれば、検査装置に限らず、露光装置等、他の光学装置でもよい。また、試料は、照明光の照明対象となる物であれば、EUVマスクに限らない。
【0021】
図1は、実施形態1に係る検査装置を例示した構成図である。
図1に示すように、検査装置1は、光源LS、光学系10、検出器20、ステージ30、変位測定部40及び処理装置50を備えている。
【0022】
光源LSは、EUV光を含む照明光L11を生成する。ここでは、光源LSは、照明対象である試料60の露光波長と同じ13.5nmのEUV光を生成する。光源LSは、例えば、放電を利用するDPP(Discharge Produced Plasma)光源である。なお、光源LSが生成する照明光L11は、EUV光を含む光に限らず、UV(UltraViolet)光、白色光及び赤外光等の他の波長の光を含んでもよい。光源LSは、チャンバ61の内部に配置されてもよい。
【0023】
光学系10は、照明光L11で試料60を照明するとともに、試料60で反射した反射光を検出器20に導く。光学系10は、光学素子を含み、EUV光等の照明光L11を伝播させる。光学系10は、光学素子として、凹面鏡11、凹面鏡12、落とし込みミラー13、シュバルツシルト光学系14、平面鏡17、及び、凹面鏡18を備えている。シュバルツシルト光学系14は、凹面鏡15及び凸面鏡16を有している。光学系10は、これら以外に、レンズ、ミラー等の他の光学素子を含んでもよい。各光学素子は、チャンバ61内に設けられてもよい。光学系10は、試料60を撮像するための明視野光学系となっている。なお、光学系10は、試料60を撮像するための暗視野光学系でもよい。
【0024】
EUV光等の照明光L11を導くための光学系10について説明する。光源LSで生成された照明光L11は、拡がりながら進む。光源LSから出射した照射光L11は、凹面鏡11で反射する。凹面鏡11は、例えば、楕円面鏡である。凹面鏡11は、Mo膜とSi膜が交互に積層された多層膜ミラーとなっており、EUV光を反射する。凹面鏡11で反射した照射光L11は、絞られながら進む。照射光L11は、焦点IFを結んだ後、拡がりながら進む。そして、照射光L11は、凹面鏡12で反射する。
【0025】
凹面鏡12は、例えば、楕円面鏡である。凹面鏡12は、Mo膜とSi膜が交互に積層された多層膜ミラーとなっており、EUV光を反射する。凹面鏡12で反射された照明光L11は、絞られながら進んで、落とし込みミラー13に入射する。落とし込みミラー13は平面鏡であり、試料60の上方に配置されている。落とし込みミラー13で反射した照明光L11は、試料60に入射する。落とし込みミラー13は、試料60に照明光L11を集光する。このように、試料60の検査領域がEUV光である照明光L11で照明される。試料60は、ステージ30上に載置されている。
【0026】
ここで、検査装置1の説明の便宜のために、XYZ直交座標軸系を導入する。ステージ30の上面に直交する方向をZ軸方向とし、ステージ30の上面に平行な面をXY面とする。XY面に平行な方向を面内方向と呼ぶ。例えば、X軸方向及びY軸方向は、面内方向である。
【0027】
ステージ30は、XYZステージ等の駆動ステージである。ステージ30は、光軸と垂直なXY平面内及び光軸と平行なZ軸方向において移動する。これにより、試料60は、XY平面内及びZ軸方向に移動する。試料60の照明位置が変化するため、試料60の任意の位置を観察することができる。また、試料60が照明される検査領域を変えることができる。
【0028】
上記のように照明光L11は、試料60の検査領域を照明している。試料60で反射した反射光を検出光L12とする。検出光L12は、試料60で反射したEUV光を含む。試料60で反射した検出光L12は、シュバルツシルト光学系14に入射する。具体的には、試料60で反射した検出光L12は、凹面鏡15に入射する。凹面鏡15で反射された検出光L12は、凸面鏡16に入射する。凸面鏡16は、凹面鏡15からの検出光L12を平面鏡17に向けて反射する。平面鏡17で反射した検出光L12は、凹面鏡18で反射し、検出器20に入射する。シュバルツシルト光学系14、平面鏡17及び凹面鏡18等によって、試料60の検査領域が検出器20に拡大投影される。
【0029】
検出光L12は、検出器20で検出される。検出器20は、照明光L11が試料60で反射した検出光L12を検出する。検出器20は、CCD(Charge Coupled Device)センサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ、TDI(Time Delay Integration)センサ等の撮像装置であり、試料60を撮像する。すなわち、検出器20は、試料60の検査領域の拡大像を撮像する。
【0030】
変位測定部40は、光学系10に含まれる光学素子の位置のドリフト量を示す変位ドリフトを測定する。
図2及び
図3は、実施形態1に係る検査装置1において、光学素子の変位前後の変位測定部40を例示した構成図である。
図2及び
図3において、左側は、変位前の光学素子及び変位測定部40を示し、右側は、変位後の光学素子及び変位測定部40を示す。
図1~
図3に示すように、変位測定部40は、ミラー41、レーザ42及び干渉計43を含んでいる。
【0031】
ミラー41は、光学素子に固定されている。例えば、ミラー41は、凸面鏡16に固定されている。なお、ミラー41は、凸面鏡16を支持するホルダ45を介して凸面鏡16に固定されてもよい。
【0032】
ホルダ45は、第1部材46及び第2部材47を含む。第1部材46は、凸面鏡16の光軸Cに平行なZ軸方向に延びている。第2部材47は、光軸Cに直交する面内方向(例えば、X軸方向またはY軸方向)に延びている。凸面鏡16は、ホルダ45に固定されている。ミラー41は、ホルダ45の第2部材47を介して凸面鏡16に固定されている。なお、第1部材46及び第2部材47は、同じ熱膨張率を有する材料を含むことが好ましい。例えば、第1部材46及び第2部材47は、同じ材料を含むことが好ましい。また、第1部材46及び第2部材47は、同じ厚さを有することが好ましい。また、第1部材46のZ軸方向の長さ及び第2部材47の面内方向の長さは、同程度が好ましい。
【0033】
レーザ42は、レーザ光L13を出射する。具体的には、レーザ42は、ミラー41に対してレーザ光L13を出射する。干渉計43は、ミラー41に対して出射されたレーザ光L13と、ミラー41で反射したレーザ光L13との干渉からミラー41の位置を検出する。これにより、変位測定部40は、光軸Cに直交する面内方向に沿って出射したレーザ光L13と、レーザ光L13がミラー41で面内方向の逆向きに反射したレーザ光L13との干渉から凸面鏡16の位置を測定する。
【0034】
光学素子の位置のドリフト量を示す変位ドリフトは、光学素子の基準位置からのドリフト量を示す。例えば、検出器20で検出された検出光L12が焦点を結ぶ場合の光学素子の所定の位置を基準位置としてもよい。また、基準試料を照明光L11で照明し、検出器20で検出された検出光L12が焦点を結ぶ場合の光学素子の位置を基準位置としてもよい。また、検査装置1が所定の温度の時に、検出器20で検出された検出光L12が焦点を結ぶ場合の光学素子の位置を基準位置としてもよい。
【0035】
EUV光等の照明光L11及び検出光L12の伝播によって、凸面鏡16の周辺等のように、EUV光の密度が増加する部分は加熱される。これにより、凸面鏡16の周辺の温度は上昇する。よって、このような温度上昇によって、凸面鏡16及びホルダ45等に熱膨張が発生し、凸面鏡16の位置が変化する。すなわち、凸面鏡16の位置がドリフトする。これにより、検出器20が検出する検出光L12のフォーカス位置がドリフトする。具体的には、温度上昇で凸面鏡16のホルダ45が熱膨張することによって、凹面鏡15と凸面鏡16との相対距離が変化し、これにより、試料60と光学系10との間の距離が変化することでフォーカス位置がドリフトする。
【0036】
このように、検出器20で検出された検出光L12が焦点を結ぶ場合の試料60と光学系10との間の距離のドリフト量をフォーカスドリフトと呼ぶ。フォーカスドリフトは、試料60と光学系10との間の基準となる基準距離からのドリフト量を示す。例えば、光学素子が基準位置に位置し、検出器20で検出された検出光L12が焦点を結ぶ場合の試料60と光学系10との間の距離を基準距離としてもよい。また、基準試料を照明光L11で照明し、検出器20で検出された検出光L12が焦点を結ぶ場合の試料60と光学系10との間の距離を基準距離としてもよい。また、検査装置1が所定の温度の時に、検出器20で検出された検出光L12が焦点を結ぶ場合の試料60と光学系10との間の距離を基準距離としてもよい。
【0037】
本実施形態の検査装置1は、ホルダ45の下部に取り付けたミラー41で、ホルダ45の面内方向の熱膨張による凸面鏡16の変位ドリフトを測定する。そして、その測定結果から、処理装置50は、検出器20において検出光L12がフォーカスする場合のフォーカスドリフトを予測する。
【0038】
ここで、凸面鏡16の周辺の熱膨張は、等方的と考えられる。よって、ホルダ45の面内方向(例えば、X軸方向及びY軸方向)の熱膨張量から、光軸C方向(フォーカス方向)であるZ軸方向の熱膨張量を予測することができる。したがって、ホルダ45の面内方向の変位ドリフトから、検出光L12がフォーカスする場合のフォーカスドリフトを予測することができる。そして、予測したフォーカスドリフトに応じて、試料60と光学系10との間のフォーカス方向における距離を調整する。例えば、ステージ30を移動させることにより、ステージ30上の試料60の位置を調整する。これにより、検出器20は、ボケが抑制された画像を撮像することができる。なお、試料60と光学系10との間のフォーカス方向における距離を調整する際には、ステージ30を移動させる代わりに、光学系10を移動させてもよい。
【0039】
光学素子の変位ドリフトとして、凸面鏡16の変位ドリフトを用いているが、これに限らず、凹面鏡15、落とし込みミラー13等の他の光学素子の変位ドリフトを用いてもよい。また、光学素子の変位ドリフトを測定する変位測定部40として、ミラー41、レーザ42及び干渉計43を用いているが、これに限らず、距離センサ等を用いて、光学素子の変位ドリフトを測定してもよい。
【0040】
さらに、光学素子の変位ドリフトを測定する際には、面内方向の変位ドリフトに限らず、Z軸方向の変位ドリフトを測定してもよい。しかしながら、シュバルツシルト光学系14における凸面鏡16は、凹面鏡15に比べて小さい。また、凸面鏡16の上方は、凹面鏡15によって覆われている。凸面鏡16の下方は、試料60で占められている。したがって、温度変化が大きい凸面鏡16のZ軸方向の変位ドリフトを測定するためのスペースの確保が困難である。そこで、本実施形態では、ホルダ45の熱膨張が等方的であることを利用し、Z軸方向の熱膨張を面内方向の熱膨張に変換している。よって、温度変化が大きい凸面鏡16の変位ドリフトを測定することができるので、フォーカスの位置合わせを向上させることができる。落とし込みミラー13についても凸面鏡16と同様のことがいえる。
【0041】
検出器20で撮像された試料60の画像は、処理装置50に出力される。処理装置50は、プロセッサやメモリなどを有する演算処理装置であり、試料60の画像に基づいて、検査を行う。処理装置50は、例えば、PC(Personal Computer)、サーバ等の情報処理装置でもよい。
【0042】
図4は、実施形態1に係る検査装置1において、処理装置50を例示したブロック図である。
図4に示すように、処理装置50は、処理部51、記憶部52、予測部53及び制御部54を含んでいる。
【0043】
処理部51は、画像処理を行う。処理部51は、試料60の画像の輝度をしきい値と比較することで欠陥検査を行う。また、処理部51は、ステージ30の座標と、画像との対応付けを行う。これにより、試料60の欠陥座標を特定することができる。また、処理部51は、モニタに欠陥の画像等を表示する。これにより、ユーザが欠陥を確認することができる。
【0044】
記憶部52は、欠陥座標及び欠陥の画像を記憶する。また、記憶部52は、変位測定部40が測定した光学素子の位置、及び、変位ドリフトを記憶する。さらに、記憶部52は、検出器20で検出された検出光L12が焦点を結ぶ場合の試料60と光学系10との間の距離、及び、フォーカスドリフトを記憶する。そして、記憶部52は、変位ドリフトと、フォーカスドリフトと、の相関関係を記憶する。
【0045】
図5は、実施形態1に係る検査装置1において、変位ドリフトと、フォーカスドリフトとの相関関係を例示したグラフであり、横軸は、X軸方向またはY軸方向等の面内方向の変位ドリフトdx、dyを示し、縦軸は、フォーカスドリフトを示す。
図5に示すように、例えば、記憶部52は、変位ドリフトと、フォーカスドリフトとの相関関係として、以下の(1)式または/及び(2)式の近似式を記憶する。
【0046】
(フォーカスドリフト)=(k・dx) (1)
(フォーカスドリフト)=(k・dy) (2)
【0047】
記憶部52は、相関関係として、上記(1)式及び(2)式の1次の近似式を記憶してもよいし、2次式等、他の近似式を記憶してもよい。また、記憶部52は、相関関係として、複数の変位ドリフトと複数のフォーカスドリフトとを対応付けたテーブルを記憶してもよい。予測部53は、変位測定部40が測定した変位ドリフトから、相関関係を用いることにより、フォーカスドリフトを予測する。
【0048】
制御部54は、試料60と、光学系10との間の距離を制御する。例えば、制御部54は、ステージ30の駆動を制御する。これにより、制御部54は、予測部53で予測されたフォーカスドリフトに基づいて、試料60と、光学系10との間の距離を制御する。なお、制御部54は、ステージ30を移動させることによって、試料60と、光学系10との間の距離を制御してもよいし、光学系10を移動させることによって、試料60と、光学系10との間の距離を制御してもよい。
【0049】
次に、本実施形態のフォーカス補正方法を説明する。本実施形態のフォーカス補正方法は、検査装置1のフォーカス補正方法である。
図6は、実施形態1に係るフォーカス補正方法を例示したフローチャート図である。
図6のステップS10に示すように、まず、光学系10に含まれる光学素子の変位ドリフトと、フォーカスドリフトと、の相関関係を記憶させる。例えば、記憶部52に当該相関関係を記憶させる。
【0050】
図7は、実施形態1に係るフォーカス補正方法において、光学素子の変位ドリフトと、フォーカスドリフトとの相関関係を取得する方法を例示したフローチャート図である。
図7のステップS11に示すように、光学素子の変位ドリフトとフォーカスドリフトとを同時に取得する。まず、光学素子の位置の変位を測定する。例えば、変位測定部40に、光学素子の位置の変位を測定させる。そして、その時のフォーカスドリフトを取得させる。例えば、光学素子の位置が変化した場合に、検出器20で検出された画像が焦点を結ぶように、制御部54にステージ30を移動させる。この時のステージ30の位置から、光学素子の位置が変化した場合のベストフォーカス位置を取得する。
【0051】
光学素子の位置が複数の位置に変化した場合には、各位置における各変位を測定する。そして、各変位におけるベストフォーカス位置を取得する。このように、複数の位置における複数のベストフォーカス位置を取得することにより、相関関係の精度を向上させることができる。そして、処理部51に、光学素子の所定の位置を基準位置として、各変位の変位ドリフトを算出させるとともに、所定のフォーカス位置における試料60と光学系10との間の距離を基準距離として、各ベストフォーカス位置のフォーカスドリフトを算出させる。
【0052】
次に、ステップS12に示すように、光学素子の変位ドリフトと、フォーカスドリフトとの相関関係を取得する。例えば、処理部51に、
図5に示したようなグラフをフィッティングさせることにより、近似式を導く。なお、処理部51に、近似式の代わりに、テーブルを作成させてもよい。このようにして、光学素子の変位ドリフトと、フォーカスドリフトとの相関関係を取得する。
【0053】
次に、
図6のステップS20に示すように、光学素子の変位ドリフトを測定する。例えば、光学素子の変位ドリフトを測定する際に、変位測定部40におけるミラー41に対して出射されたレーザ光L13と、ミラー41で反射したレーザ光L13との干渉からミラー41の位置を検出することにより、光学素子の変位ドリフトを測定してもよい。
【0054】
また、光学系10が凹面鏡15及び凸面鏡16を有するシュバルツシルト光学系14を含む場合には、凸面鏡16は、光軸に平行なZ軸方向に延びた第1部材46及び光軸に直交するX軸方向又はY軸方向に延びた第2部材47を含むホルダ45に固定されてもよい。その場合には、ミラー41は、第2部材47を介して光学素子に固定されてもよい。そして、X軸方向またはY軸方向を含む面内方向から照射したレーザ光L13と、当該レーザ光L13がミラー41で逆向きに反射したレーザ光L13との干渉から光学素子の位置を測定してもよい。
【0055】
次に、ステップS30に示すように、測定した変位ドリフトから、相関関係を用いることにより、フォーカスドリフトを予測する。
【0056】
なお、ステップS40に示すように、フォーカスドリフトを予測するステップS30において予想されたフォーカスドリフトに基づいて、試料60と光学系10との間の距離を制御してもよい。具体的には、制御部54に、試料60が載置されたステージ30を移動させることにより、試料60と光学系10との間の距離を制御させる。
【0057】
次に、本実施形態の効果を説明する。本実施形態の検査装置1は、あらかじめ、光学素子の変位ドリフトとフォーカスドリフトとの相関関係を記憶部52に記憶させる。そして、温度上昇により変位した光学素子の変位ドリフトから、相関関係を用いることにより、フォーカスドリフトを予測する。よって、フォーカスの位置合わせを向上させることができる。また、あらかじめ相関関係を記憶しているので、迅速に、フォーカスを合わせることができる。
【0058】
また、検査装置1は、光学素子の変位ドリフトを測定する変位測定部40を備えている。よって、温度上昇等の環境変化に迅速に対応することができる。変位測定部40は、干渉計43を含んでいるので、高精度に光学素子の変位ドリフトを測定することができる。また、変位測定部40は、シュバルツシルト光学系14の凸面鏡16の変位ドリフトを測定する。よって、検出光L12が集中する温度変化の大きい光学素子の変位ドリフトを測定するので、フォーカスドリフトの予測精度を向上させることができる。
【0059】
さらに、変位測定部40は、第1部材46及び第2部材47に固定したミラー41によって、変位ドリフトを測定する。これにより、光軸方向の熱膨張による変位を面内方向に変換することができ、温度変化の大きい凸面鏡16の変位ドリフトを測定することができる。よって、フォーカスドリフトの予測精度を向上させることができる。
【0060】
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態による限定は受けない。
【符号の説明】
【0061】
1 検査装置
10 光学系
11、12 凹面鏡
13 落とし込みミラー
14 シュバルツシルト光学系
15 凹面鏡
16 凸面鏡
17 平面鏡
18 凹面鏡
20 検出器
30 ステージ
40 変位測定部
41 ミラー
42 レーザ
43 干渉計
45 ホルダ
46 第1部材
47 第2部材
50 処理装置
51 処理部
52 記憶部
53 予測部
54 制御部
60 試料
61 チャンバ
C 光軸
IF 焦点
L11 照明光
L12 検出光
L13 レーザ光
LS 光源