(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118494
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】電子線硬化型インク組成物および積層体
(51)【国際特許分類】
C09D 11/101 20140101AFI20240826BHJP
【FI】
C09D11/101
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024799
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000219912
【氏名又は名称】東京インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】林 克彦
(72)【発明者】
【氏名】加嶋 啓史
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AD21
4J039EA04
4J039GA02
(57)【要約】
【課題】本発明は、硬化前後において低臭で、硬化後においては延伸性に優れ、耐水・耐アルコール性、耐溶剤性を有し、VOCの発生が少ない電子線硬化型のインク組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】
環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(CTFA)と、ポリマー化合物と、を含み、光重合開始剤を含まず、前記CTFAと前記ポリマー化合物との合計量に対して、前記CTFAの含有量が60質量%以上90質量%以下で、かつ電子線硬化型インク組成物全量に対して、前記ポリマー化合物の含有量が10質量%以上40質量%以下である、電子線硬化型インク組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(CTFA)と、ポリマー化合物と、を含み、
光重合開始剤を含まず、
前記CTFAと前記ポリマー化合物との合計量に対して、前記CTFAの含有量が60質量%以上90質量%以下で、かつ
電子線硬化型インク組成物全量に対して、前記ポリマー化合物の含有量が10質量%以上40質量%以下である、電子線硬化型インク組成物。
【請求項2】
さらに、前記電子線硬化型インク組成物の全量に対して0.5質量%以下の多官能(メタ)アクリル系モノマーを含む、請求項1記載の電子線硬化型インク組成物。
【請求項3】
基材上に、請求項1または2記載の電子線硬化型インク組成物の硬化皮膜が形成された積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子線硬化型インク組成物、およびこのインク組成物を基材に印刷または塗布し硬化させた積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線、電子線などの活性エネルギー線によって硬化する活性エネルギー線硬化型インク組成物は、塗布、オフセット、グラビア、インクジェットなどの印刷方法を問わず、広く使用されており、現在でもその開発が活発に行われている。
活性エネルギー線硬化型インク組成物は、活性エネルギー線重合性モノマーを主成分としているが、そのうち、最も広く使用されている紫外線硬化型のインク組成物は、硬化に必要な重合開始剤や増感剤といった添加物を含有しており、これらの分解物、残留物や未反応モノマーに起因する臭気、揮発成分(VOC、Volitile Organic Compounds)また、印刷物が食品容器であれば、それらの内容物への移行(溶出物)の問題が生ずる。
【0003】
例えば、特許文献1には、「少なくとも50重量%の環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(CTFA)及びフリーラジカル光開始剤を含み、揮発性有機化合物をほとんど含まない放射線硬化型インクジェットインク」が開示されている。このインクジェットインクは、低粘度、低臭であるうえ、その紫外線硬化型インクにより形成された硬化膜の硬化速度及びフレキシブル性(延伸性)に優れる、とされている。
さらに、特許文献2には、CTFAを含有する活性エネルギー線硬化型インク組成物が開示され、延伸性に加えてタックの軽減を可能とする硬化膜を形成することができる、とされている。
【0004】
特許文献1のインクは、低粘度、低臭で、延伸性に優れるものではあるが紫外線硬化型インクであり、特許文献2のインクも、延伸性に加えてタックの軽減を可能とする硬化膜を形成するものであるが、実施例に開示されている記載によると実質的には紫外線硬化型インクである。従って、重合開始剤、増感剤といった添加物を含有し、これらの分解物や残留物による臭気、VOCや溶出物の発生は避けられない。
【0005】
最近では、電子線発生装置の小型化、低廉化にともない、上記した紫外線硬化型インクの問題点を解決するものとして電子線硬化型インクの開発が進められている。すなわち、重合開始剤、増感剤といった添加物が不要となる電子線硬化型インクにすることで、これらの分解物や残留物による臭気、VOCや溶出物の発生を抑制でき、例えば特許文献3のような電子線硬化型インクが開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献3において、電子線硬化型インクでは、「一般に、電子線の照射による樹脂硬化時には、光重合性モノマーが揮発して煙が発生し易くなるという問題があった。」とされているように、光重合性モノマーの揮発成分や、これら揮発成分に電子線が照射されることによりポリマー化した微粒子が白煙のように見えたと考えられ、すなわちVOCの発生が問題として指摘されている。そこで、当該特許文献3では、重合開始剤を含有しない電子線硬化性樹脂に紫外線を照射して少なくとも表層を高分子化させた後、電子線を照射して深部を高分子化させ、全体を硬化させる硬化方法によって、光重合性モノマーの揮発および煙の発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2010-540751号公報
【特許文献2】特開2018-70760号公報
【特許文献3】特開2017-132895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
確かに、特許文献1および特許文献2で開示されているインク組成物は低臭で、その硬化物は延伸性に優れるものであるが、紫外線硬化型インクである限り、重合開始剤、増感剤といった添加物を含有し、硬化した際の臭気が発生する。また、電子線の照射による硬化について、まったく検討されず、その延伸性についての記載も示唆もない。また、特許文献3の硬化方法でも、電子線照射時のVOCの発生を低減できるかもしれないが、はじめの紫外線照射時にVOCが発生し、更に紫外線および電子線の二つの照射装置を併用しなければならない。また、硬化後の延伸性については、記載も示唆もない。
また、延伸性を有していても、硬化皮膜の耐性(耐溶剤性、耐水性)が弱いと、例えば加熱延伸成形された後に、アルコールや水などに接触した際に、硬化皮膜が剥がれたり、別の物品に付着する問題が生じる。この耐性について、特許文献1~3においては、何ら検討されておらず、記載も示唆もない。
【0009】
従って、本発明は、硬化前後において低臭で、硬化後においては延伸性に優れ、耐水・耐アルコール性、耐溶剤性を有し、VOCの発生が少ない電子線硬化型インク組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討した結果、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(CTFA)とポリマー化合物とを含有するインク組成物を電子線で硬化させることによって前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、
(1) 環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(CTFA)と、ポリマー化合物と、を含み、
光重合開始剤を含まず、
前記CTFAと前記ポリマー化合物との合計量に対して、前記CTFAの含有量が60質量%以上90質量%以下で、かつ
電子線硬化型インク組成物全量に対して、前記ポリマー化合物の含有量が10質量%以上40質量%以下である、電子線硬化型インク組成物、
(2) さらに、前記電子線硬化型インク組成物の全量に対して0.5質量%以下の多官能(メタ)アクリル系モノマーを含む、(1)記載の電子線硬化型インク組成物、
(3) 基材上に、(1)または(2)記載の電子線硬化型インク組成物の硬化皮膜が形成された積層体、
である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電子線硬化型インク組成物(以下、単に「インク組成物」ともいう)は、その硬化皮膜が耐水性を有し、さらに耐溶剤性および延伸性に優れるので、例えば、基材に塗工し硬化させてから、加熱延伸を伴う成形を実施したとしても、割れのない耐水・耐アルコール性、耐溶剤性を有する硬化皮膜を形成できる。また、そのインク組成物を製造するときから、硬化皮膜の形成に至るまでVOCの発生が少ない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、本実施形態は、本発明を実施するための一形態に過ぎず、本発明は本実施形態によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更実施の形態が可能である。
【0014】
以下の説明において、(メタ)アクリル、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリルないし(メタ)アクリロイルは、それぞれアクリルおよびメタクリル、アクリレートおよびメタクリレート、アクリルアミドおよびメタクリルアミド、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリル、アクリロイルおよびメタクリロイルを意味する。
【0015】
本発明の電子線硬化型インク組成物は、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(CTFA)と、ポリマー化合物と、を含む。
【0016】
本発明で用いるCTFAの含有量は、前記電子線硬化型インク組成物において、前記CTFAと前記ポリマー化合物との合計量に対して、60質量%以上90質量%以下が好ましく、65質量%以上85質量%以下がより好ましく、70質量%以上80質量%以下がさらに好ましい。含有量が60質量%未満では耐水・耐アルコール性、耐溶剤性が低下することがあり、90質量%を超えるとVOC発生が多くなる傾向を示す。
【0017】
本発明で用いるCTFAは、前記した通り低粘度の低臭性モノマーとして知られており、それ自体は低VOCであるといえるが、これを電子線で重合硬化させたときには、相応のVOCが発生する。
なお、本発明において、VOC発生量とは、硬化前重量から硬化後重量を引いた重量減少量としている。
【0018】
本発明で用いるポリマー化合物としては、特に制限はなく、種々の樹脂を使用することができる。付加重合系、重縮合系、重付加重合系および付加縮合系などを使用することができ、これらの樹脂は、単独または2種以上組み合わせて使用しても良い。
【0019】
(メタ)アクリル樹脂、ハロゲン含有ビニル系樹脂、酸ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、スチレン系樹脂、スチレン/アルカジエン系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、ポリビニルエーテル、(ポリブタジエンなどの)ジエン系樹脂などの分子内に少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物からなる付加重合系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂またはその変性体、ポリカーボネート、繊維素樹脂などの縮重合系樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、ケトン樹脂、ポリエーテル樹脂などの重付加重合系樹脂、フェノールレゾール樹脂、フェノールノボラック樹脂、ナフトールノボラック、尿素樹脂などの付加縮合系樹脂などが挙げられる。
【0020】
本発明で用いる分子内に少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド[例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなど]、(メタ)アクリレートアセチルアセテート、ビニル化合物[例えばビニルアルコール、アルケノン、ビニルエーテル(ビニルメチルエーテルなど]、ビニルエステル[例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなど]、ハロゲン化ビニル[例えば塩化ビニルなど]、ハロゲン化ビニリデン[例えば塩化ビニリデンなど]、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、フッ素含有ビニル化合物、ケイ素含有ビニル化合物、N-ビニル化合物[例えばビニルピロリドン、ビニルピリジン、N-ビニルカルバゾールなど]、ビニルイソシアナート[例えばビニルイソシアナート、イソプロペニルイソシアナートなど]など、芳香族ビニル化合物[例えばスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレンなど]、マレイミド化合物[例えばマレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなど]、脂肪族不飽和モノカルボン酸およびその無水物ならびにエステル化合物[例えばマレイン酸、フマル酸、マレイン酸無水物、フマル酸無水物、コハク酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、アルキルもしくはアルケニルコハク酸無水物、マレイン酸のモノアルキルエステル、フマル酸のモノアルキルエステルなど]、不飽和ニトリル[例えば(メタ)アクリロニトリルなど]、アリル化合物(アリルエーテル、アリルエステル、ハロゲン化アリル[例えば塩化アリルなど]、アリルアルコール)、共役ジエン化合物[例えばブタジエン、イソプレンなど]、エチレン性不飽和オレフィン類[例えばエチレン、プロピレンなど]、不飽和スルホン酸類[例えばスチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ソーダ、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸など]、不飽和リン酸類[例えばモノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェートなど]などが挙げられる。
【0021】
(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリルモノマーの単独重合物または共重合物、さらにはこれらの(メタ)アクリルモノマーと共重合し得る付加重合性モノマーとの共重合物などが挙げられる。
【0022】
前記(メタ)アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルの重合体または共重合体であることが好ましく、なかでも、(m1)C1~8のアルキル基を有するエステルの少なくとも一つであることがより好ましく、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、スルホエチルアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレートなどが挙げられる。
【0023】
(m2)また、芳香環含有(メタ)アクリレート[例えばベンジル(メタ)アクリレートなど]なども好ましい。
【0024】
そのほか、以下の(m3)、(m4)、(m5)も好ましい。
(m3)水酸基および/またはエーテル結合含有(メタ)アクリレートとして、
ポリオール(後記b21)および/または(後記b23)、好ましくは水酸基当量が600以下のもの)の(メタ)アクリレート[例えばジオール(C2~12の脂肪族2価アルコール、そのアルキレンオキサイド(以下AOと略記)付加物および2価フェノールのAO付加物[例えばエチレングリコール(以下EGと略記)、ポリエチレングリコール(p=2~20)(以下PEGと略記)、ポリプロピレングリコール(p=2~20)(以下PPGと略記)およびビスフェノールAのエチレンオキサイド(以下EOと略記)付加物])のモノ(メタ)アクリレート、および3価~8価またはそれ以上のポリオール(脂肪族多価アルコール[例えばグリセリン(以下GLと略記)、トリメチロールプロパン(以下TMPと略記)、ポリエステルポリオール(以下PEと略記)、ソルビトールなど、それらのAO付加物など])のモノ(メタ)アクリレート、
前記ポリオールのハイドロカルビル(C1~20)エーテルの(メタ)アクリレート[例えばメトキシPEG(メタ)アクリレート]、
前記ポリオールのモノ(メタ)アクリレート(ジオールのモノ(メタ)アクリレートなど)のカルボン酸(C1~30のモノカルボン酸、例えば脂肪族モノカルボン酸[例えばギ酸、オレイン酸、アセト酢酸など]、脂環式モノカルボン酸[例えばシクロヘキサンカルボン酸、アビエチン酸など]、アルキル基(C1~10)および/またはハロゲン(Cl、Brなど)で核置換(置換度1~3)されていてもよい芳香族モノカルボン酸[例えば安息香酸、キシレンカルボン酸、2-メチル-4-クロロ安息香酸など])エステル[例えば(メタ)アクリロイルオキシエチル、(メタ)アクリロイルオキシプロピルアセチルアセテートなど]、
および多官能(メタ)アクリレート[例えば前記ポリオールのポリ(メタ)アクリレート(2価アルコールのジ(メタ)アクリレートなど)]、
【0025】
ここでいう、AOとしては、C2~12またはそれ以上のAO、例えばEO、プロピレンオキサイド(以下POと略記)、1,2-、2,3-および1,3-ブチレンオキサイド(以下BOと略記)、テトラヒドロフラン(以下THFと略記)、α-オレフィンオキサイド、スチレンオキサイド、エピハロヒドリン[エピクロルヒドリンなど]、およびこれらの2種以上の併用(ランダムおよび/またはブロック)などが挙げられる。
【0026】
(m4)カチオン性基(アミノ基もしくは4級アンモニウム塩基)含有(メタ)アクリレートとして、
1~3級アミノ基含有(メタ)アクリレート(アミノ(ヒドロキシ)アルキル(C2~4)(メタ)アクリレート[例えばアミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロピル(メタ)アクリレートなど]、(ジ)アルキル(C1~4)アミノアルキル(C2~4)(メタ)アクリレート[例えば(ジ)メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(ジ)メチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、3-(ジ)メチルアミノ-2-ヒドロキシ-プロピル(メタ)アクリレートなど])、
複素環アミノ含有(メタ)アクリレート(モルホリノアルキル(C2~4)(メタ)アクリレート[例えばモルホリノエチル(メタ)アクリレート]、ピペリジノアルキル(C2~4)[例えばピペリジノエチル(メタ)アクリレートなど])、
それらの中和物および4級化物(後記カチオン性基を含有する酸類および4級化剤による中和物および4級化物)[例えば(メタ)アクリルロイルオキシエチルトリアルキル(C1~4)アンモニウム塩(クロライド、メトサルフェート、アセテートなど)など])、
【0027】
(m5)アニオン性基(カルボキシル基もしくはスルホ基)含有(メタ)アクリレートとして、
(メタ)アクリル酸のラクトン(C3~12)付加物((メタ)アクリル酸のε-カプロラクトン1~5モル付加物など)およびスルホアルキル(C2~4)(メタ)アクリレート[例えばスルホプロピル(メタ)アクリレートなど]、
それらの塩、例えばアミン類[例えばトリエチルアミン、アルカノールアミン、モルホリンなど]の塩および/またはアルカリ金属塩(ナトリウムなど)などであることが好ましい。
【0028】
前記カチオン性基を含有するには、4級アンモニウム塩基含有ジオール、3級アミノ基含有ジオールおよびそれらの塩(カルボン酸塩など)が含まれ、アルキル(C1~8)ジアルカノール(C2~4)アミン[例えばN-メチルジエタノールアミンなど]およびジアルキル(C1~6)アルカノール(C2~4)アミン[例えばN,N-ジメチルエタノールアミンなど]、ならびにこれらの酸類(有機酸たとえばC1~8のカルボン酸[例えば酢酸など]、スルホン酸[例えばトルエンスルホン酸など]、無機酸[例えば塩酸、硫酸、リン酸など])による中和物および4級化剤(C1~8のアルキル基もしくはベンジル基を有する、硫酸エステル、炭酸エステル、ハライドなど[例えば硫酸ジメチル、炭酸ジメチル、メチルクロライド、ベンジルクロライドなど])による4級化物などが挙げられる。
【0029】
これら(メタ)アクリルモノマーと共重合し得る付加重合性モノマーとしては、メタクリル酸、アクリル酸、オレフィン系モノマー(アルケン[例えばエチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、3-メチルブテン-1、1-ペンテン、ヘプテン-1、4-メチルペンテン-1、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン、1-オレフィン(C20~36)など]およびシクロアルケン[シクロヘキセンなど]、アルカジエン(C4~12の鎖状アルカジエン[例えばブタジエン、イソプレン、ネオプレン、1,3-または1,4-ペンタジエン、1,6-ヘキサジエン、1,3-または1,7-オクタジエン、1,3-ドデカジエンなど]、C5~12の環状アルカジエン[例えばシクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、ビニルシクロヘキセン、エチリデンビシクロヘプテンなど]およびテルペン[例えばピネン、リモネンなど])、スチレン系モノマー(スチレン、ハイドロカルビル置換スチレン[例えばα-またはo-メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、α-メチルスチレンダイマーなど]、クロチルベンゼン、ビニルナフタレンおよびインデン、ならびに多官能芳香族不飽和炭化水素[例えばジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、トリビニルベンゼンなど])、イソブチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルアルコール、フルオロエチレン、マレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ビニルスルホン酸などが挙げられる。
【0030】
ハロゲン含有ビニル系樹脂は、ハロゲン含有ビニルモノマーの単独共重合物または共重合物、さらにはこれらのハロゲン含有ビニルモノマーと共重合し得る付加重合性モノマーとの共重合物などが挙げられる。例えば、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂などが挙げられる。
【0031】
前記ハロゲン含有ビニルモノマーとしては、塩化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、アリルクロライドまたはメタリルクロライド、モノ-またはジ-クロルスチレン、クロロプレン、ハロゲン化オレフィン、ハロゲン置換アルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
これらハロゲン含有ビニルモノマーと共重合し得る付加重合性モノマーとの共重合物としては、前記(メタ)アクリル酸エステル、前記スチレン系モノマー、前記オレフィン系モノマーなどの付加重合性モノマーが例示できる。
【0032】
酸ビニル系樹脂は、ビニルエステル系モノマーまたはビニルエステル系モノマーと共重合し得る付加重合性モノマーとの共重合物などが挙げられる。例えば、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル-エチレン共重合体、酢酸ビニル-スチレン共重合体、アクリル-酢酸ビニル共重合体、アクリル-塩化ビニル共重合体、アクリル-スチレン共重合体、アクリル-エチレン共重合体などが挙げられる。
【0033】
ビニルエステル系モノマーとしては、不飽和モノオールとC1~30のモノカルボン酸とのエステル(ビニルエステル[例えばビニルホルメート、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ビニルベンゾエート、ビニルメトキシアセテートなど]、不飽和モノオールとポリカルボン酸とのモノエステル(多官能ビニルエステル)、不飽和モノオールとポリカルボン酸とのポリエステル(多官能ビニルエステル[ジエステルなど])、不飽和モノオールと不飽和モノカルボン酸[例えば(メタ)アクリル酸、(イソ)クロトン酸、ケイヒ酸など]とのエステル((メタ)アクリレートなど)、もしくは不飽和モノオールと不飽和ジカルボン酸[例えばマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸およびメサコン酸]とのエステル、不飽和モノオールと不飽和ジカルボン酸のモノアルキル(C1~20)エステル[例えばマレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、イタコン酸モノブチルエステルなど]とのエステル、不飽和モノオールと不飽和カルボン酸無水物[例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸など]とのエステルなどが挙げられる。
【0034】
前記不飽和モノオールとしては、
(a1)C2~24の不飽和1価アルコール[例えばビニルアルコール、アリルアルコール、イソプロペニルアルコール、クロトニルアルコールなど]、
【0035】
(a2)芳香族不飽和アルコール[例えばシンナミルアルコール、p-ヒドロキシルスチレンなど]、アルキノール[例えばプロパルギルアルコールなど]、
【0036】
(a3)不飽和(ポリ)エーテルモノオール[例えばビニルエーテル、アリルエーテル、イソプロペニルエーテル、クロトニルエーテル、シンナミルエーテル、ビニルフェニルエーテルなど]、
【0037】
(a4)前記不飽和1価アルコールのAO(C2~4)付加物または不飽和エーテル(前記不飽和モノオールのハイドロカルビル(C1~20)エーテル[例えばメトキシポリエチレングリコールアリルエーテルなど]などが挙げられる。
【0038】
前記モノカルボン酸としては、
(b1)前記(m3)の水酸基および/またはエーテル結合含有(メタ)アクリレート、
【0039】
(b2)ポリオールの(メタ)アクリレート、
【0040】
ここでいう、ポリオールとしては、以下の(b21)、(b22)、(b23)などが挙げられる。
【0041】
(b21)低分子ポリオール(30以上150未満の水酸基当量を有する、2価またはそれ以上の多価アルコールが好ましい)、
【0042】
2価アルコールとして、
(b211)C2~12またはそれ以上の脂肪族、脂環式および芳香族2価アルコール[例えばアルキレングリコール、ジアルキレングリコール、EG、ジエチレングリコール、PEG(p=2~20)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、PPG(p=2~20)1,2-、1,3-、2,3-および1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5ペンタンジオールおよび1,6-ヘキサンジオール、環状基を有する低分子ジオール、ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン、ビスフェノール類など]、
【0043】
(b212)(b211)のAO付加物(付加モル数1~20)、
【0044】
3価~8価またはそれ以上の多価アルコールとして、
(b213)TMP、GL、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、キシリトールおよびマンニトール、PE、
【0045】
(b214)(b213)のAO付加物(付加モル数1~20)、
などであることが好ましい。
【0046】
前記PEには、縮合型ポリエステルポリオール(b2131)、ポリラクトンポリオール(b2132)、ポリカーボネートポリオール(b2133)およびヒマシ油系ポリオール(b2134)が含まれる。
(b2131)にはポリオールとカルボキシル基を含む化合物(d1)との重縮合物、
(b2132)にはポリオールへのラクトン(h1)の重付加物、
(b2133)にはポリオールへのアルキレンカーボネート(h2)の重付加物、
(b2134)にはヒマシ油およびポリオールもしくはAOで変性されたヒマシ油が含まれる。
【0047】
前記カルボキシル基を含む化合物(d1)としては、
(d11)脂肪族ジカルボン酸[例えばコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸 、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸など]、
(d12)脂環式ジカルボン酸[例えばダイマー酸など]、
(d13)芳香族ジカルボン酸[例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸など]、
(d14)3価またはそれ以上のポリカルボン酸[例えばトリメリット酸、ピロメリット酸など]などが挙げられる。
【0048】
(h1)ラクトンとしては、C4~12のラクトン[例えば4-ブタノリド、5-ペンタノリド、6-ヘキサノリドなど]などが挙げられる。
【0049】
(h2)アルキレンカーボネートとしては、C2~8のアルキレンカーボネート[例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど]などが挙げられる。
【0050】
(b2131)としては、例えばポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリエチレンプロピレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール、ポリブチレンヘキサメチレンアジペートジオール、ポリジエチレンアジペートジオール、ポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペートジオール、ポリ(3-メチルペンチレンアジペート)ジオール、ポリエチレンアゼレートジオール、ポリエチレンセバケートジオール、ポリブチレンアゼレートジオール、ポリブチレンセバケートジオール、ポリネオペンチルテレフタレートジオールなどが挙げられる。
【0051】
(b2132)としては、例えばポリカプロラクトンジオール、ポリバレロラクトンジオール、ポリカプロラクトントリオールなどが挙げられる。
【0052】
(b2133)としては、ポリヘキサメチレンカーボネートジオールなどが挙げられる。
【0053】
(b2134)としては、ヒマシ油、トリメチロールプロパン変性ヒマシ油、ペンタエリスリトール変性ヒマシ油、ヒマシ油のEO(4~30モル)付加物などが挙げられる。
【0054】
(b22)また、これらの分子間または分子内脱水物[例えばジグリセリン、ジペンタエリスリトール、ソルビタンなど]、糖類[例えばグルコース、フルクトース、ショ糖など]およびその誘導体(グリコシド[例えばα-メチルグルコシド])などが挙げられる。
【0055】
(b23)さらに活性水素原子含有化合物(f)のAO低モル付加物などが挙げられる。
【0056】
ここでいう、AOとしては、C2~12またはそれ以上のAO、例えばEO、PO、1,2-、2,3-および1,3-BO、THF、α-オレフィンオキサイド、スチレンオキサイド、エピハロヒドリン[エピクロルヒドリンなど]、およびこれらの2種以上の併用(ランダムおよび/またはブロック)などが挙げられる。
【0057】
ここでいう、活性水素原子含有化合物(f)には、2~8個またはそれ以上の活性水素原子を有する化合物が挙げられる。活性水素原子を有する化合物としては、水酸基を含む化合物(f1)、アミノ基を含む化合物(f2)、メルカプト基を含む化合物(f3)および前記カルボキシル基を含む化合物(f4)などが挙げられる。
【0058】
(f1)水酸基を含む化合物としては、前記多価アルコール(b213)、低分子ポリオールの分子間または分子内脱水物(b22)および多価フェノール(k1)などが挙げられる。
【0059】
(k1)多価フェノールとしては、単環多価フェノール(k11)およびビスフェノール類(k12)が挙げられる。
(k11)単環多価フェノールとしては、ピロガロール、カテコール、ヒドロキノンなどが挙げられる。
(k12)ビスフェノール類としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどが挙げられる。
【0060】
(f2)アミノ基を含む化合物としては、モノアミン(f21)およびポリアミン(f22)などが挙げられる。
【0061】
(f21)モノアミンとしては、アンモニア(f211)、1級モノアミン(f212)、アルカノールアミン(f213)および2級モノアミン(f214)などが挙げられる。
(f212)1級モノアミンとしては、C1~20のモノハイドロカルビルアミン[例えばブチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、ベンジルアミンなど]などが挙げられる。
(f213)アルカノールアミンとしては、C2~4のヒドロキシアルキル基を有するアミン[例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなど]などが挙げられる。
(f214)2級モノアミンとしては、例えば、ジブチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルアミン、ジプロピルアミンなどが挙げられる。
【0062】
(f22)ポリアミンとしては、脂肪族ポリアミン(f221)、ポリアルキレンポリアミン(f222)、脂環式ポリアミン(f223)、芳香脂肪族ポリアミン(f224)、芳香族ポリアミン(f225)および複素環式ポリアミン(f226)などが挙げられる。
(f221)脂肪族ポリアミンとしては、例えばエチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。
(f222)ポリアルキレンポリアミンとしては、例えばジエチレントリアミンなどが挙げられる。
(f223)脂環式ポリアミンとしては、例えばジシクロヘキシルメタンジアミン、イソホロンジアミンなどが挙げられる。
(f224)芳香脂肪族ポリアミンとしては、例えばキシリレンジアミンなどが挙げられる。
(f225)芳香族ポリアミンとしては、例えばフェニレンジアミン、トリレンジアミン、ジエチルトリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、ジフェニルエーテルジアミン、ポリフェニルメタンポリアミンなどが挙げられる。
(f226)複素環式ポリアミンとしては、例えばピペラジン、N-アミノエチルピペラジンなどが挙げられる。
【0063】
(f3)メルカプト基を含む化合物としては、前記多価アルコール(b213)に相当する(OHの少なくとも一部がSHに置換わった)ポリチオール、グリシジル基含有化合物と硫化水素との反応で得られるポリチオールなどが挙げられる。
【0064】
酸ビニル系樹脂は、なかでも、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニル(酢酸ビニル樹脂)、酢酸ビニルや(メタ)アクリル酸の共重合体ならびにこれらと少なくとも1種の他の付加重合性モノマー、好ましくは、脂肪族もしくは脂環式不飽和炭化水素であるオレフィン系モノマー(モノエン)(アルケン[例えばエチレン、プロピレン、ペンテン-1、1-オレフィン(C20~36)など]、およびシクロアルケン[例えばシクロヘキセンなど])、アルカジエン(C4~12の鎖状アルカジエン[例えばブタジエン、イソプレン、ネオプレン、1,3-ドデカジエンなど]、C5~12の環状アルカジエン[例えばシクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、 ビニルシクロヘキセン、エチリデンビシクロヘプテンなど])、およびテルペン[例えばピネン、リモネンなど]との共重合体、特に酢酸ビニル-エチレン共重合体、アクリル-酢酸ビニル共重合体、アクリル-エチレン共重合体、酢酸ビニルや(メタ)アクリル酸と他の付加重合性モノマーとの共重合体、特に塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル-スチレン共重合体、アクリル-スチレン共重合体などおよびその部分加水分解物が挙げられる。
【0065】
ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルをアルカリ、酸、アンモニア水などによって、けん化することによる公知の方法で得ることができる。前記ポリビニルアルコールは、完全けん化ポリビニルアルコールであってもよく、部分けん化ポリビニルアルコールであってもよい。また、前記ポリビニルアルコールとしては、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂、部分けん化エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂など、ビニルアルコールと共重合可能なモノマーとビニルアルコールとの共重合体でもよい。
【0066】
ポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコールとアルデヒド化合物とを塩酸などの酸触媒の存在下で脱水縮合させることによる公知の方法で得ることができる。前記アルデヒド化合物は、例えば、C1~19の直鎖状、分枝状、環状飽和、環状不飽和、または、芳香族のアルデヒド化合物が挙げられる。例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオニルアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、tert-ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒドなどが挙げられる。アルデヒド化合物は、単独または2種以上組み合わせて使用してもよい。また、前記アルデヒド化合物はホルムアルデヒドを除き、1以上の水素原子がハロゲンなどにより置換されたものであってもよい。
また、ポリビニルアセタールは、ポリ酢酸ビニルに、ホルムアルデヒドやn-ブチルアルデヒドを反応させて得ることもできる。
【0067】
ポリビニルブチラールは、ポリ酢酸ビニルに、酸触媒とともにポリビニルアルコールやブチルアルデヒドなどを縮合させることによる公知の方法で得ることができる。
【0068】
スチレン系樹脂は、スチレン、α-アルキル(C1~4)スチレン[例えばα-メチルスチレンなど]、アルキル(C1~4)スチレン[例えばビニルトルエンなど]、ハロスチレン[例えばクロロスチレン、ブロモスチレンなど]、ヒドロキシスチレン、メトキシスチレン、シアノスチレン、アセチルスチレンなどのスチレン誘導体などのスチレン化合物、好ましくはスチレンを含む原料モノマーの付加重合物であることが好ましい。
【0069】
スチレン/アルカジエン系樹脂は、スチレンと少なくとも1種のアルカジエンの(共)重合体およびスチレンと少なくとも1種のアルカジエンと少なくとも1種の他の付加重合性モノマーとの共重合体が挙げられる。ここで、他の付加重合性モノマーとは、(メタ)アクリル酸エステル、カルボキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、オレフィン系モノマー(モノエン)、テルペン[例えばピネン、リモネンなど]、エポキシ基(グリシジル基など)含有モノマー、ニトリル基含有モノマー、不飽和モノ-またはポリオール、不飽和エーテル、ビニルエステル系モノマー、ハロゲン含有ビニル系モノマー、上前記以外の、カチオン性基(アミノ基もしくは4級アンモニウム塩基)含有不飽和モノマー、不飽和ケトン、イオウ含有不飽和モノマー、イソシアネート基不飽和モノマーからなる群から選ばれ、なかでも、(メタ)アクリル酸エステル(さらに好ましくは、アルキル(メタ)アクリレート)、およびニトリル基含有モノマー(特にアクリロニトリル)がより好ましい。例えば、ブタジエン-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、シクロペンタジエン-スチレン共重合体などが挙げられる。
【0070】
アクリロニトリル系樹脂としては、ポリアクリロニトリル、およびアクリロニトリルと少なくとも1種の他の付加重合性モノマー[例えばメタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、N-メチルアクリルアミド、エチルアクリルアミド、2-メチル-5-ビニルピリジンなど]、(メタ)アクリル酸エステル、芳香族不飽和炭化水素、オレフィン系モノマー(モノエン)および酢酸ビニルとの共重合体が挙げられる。
【0071】
ポリビニルエーテルは、一般にビニルエーテルモノマーと触媒であるプロトン酸や金属ハロゲン化物などのルイス酸とを用いて、カチオン重合することによる公知の方法で得ることができる。より詳しくは、プロトン酸としてのハロゲン化水素[例えば塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素など]と触媒である金属のハロゲン化物[例えばFeCl3、FeBr3、GaCl3、TaCl5、MoCl5、WCl6など]とを用いてカチオン重合させる。また、ポリビニルエーテルは、ビニルエーテルモノマーと無水マレイン酸とのラジカル共重合によりコポリマーとして得られる。
【0072】
ジエン系樹脂は、アルカジエン、例えばC4~12の鎖状アルカジエン[例えばブタジエン、イソプレン、ネオプレン、1,3-または1,4-ペンタジエン、1,6-ヘキサジエン、1,3-または1,7-オクタジエン、1,3-ドデカジエンなど]、およびC5~12の環状アルカジエン[例えばシクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、ビニルシクロヘキセン、エチリデンビシクロヘプテンなど]を公知のイオン重合法やラジカル重合法によって、単独重合または共重合させることによって得ることができる。
【0073】
ポリエステル樹脂は、例えばポリオール類とポリカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体(例えば酸無水物、低級アルキル(C1~4)エステルなど)をエステル化またはエステル交換、ポリオール類とオキシカルボン酸の重縮合、開始剤(オキシカルボン酸、ポリオール類および/またはポリカルボン酸、あるいはこれらの部分重縮合物)に前記(h1)ラクトン(C4~12)[例えば4-ブタノリド、5-ペンタノリド、6-ヘキサノリド]、または酸無水物とAOの反応により得ることができる。エステル化またはエステル交換は、通常100~250℃の反応温度で、必要により触媒および/または溶剤を用いて、行うことができ、触媒および溶剤としては、ポリエステル化反応に通常用いられるものが使用できる。触媒としては、例えばジブチル錫ジラウレート、オクチル酸錫、p-トルエンスルホン酸、ナフテン酸リチウムなどが挙げられ、溶剤としては、ケトン類[例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど]、芳香族炭化水素類[例えばテトラリン、トルエン、キシレンなど]などが挙げられる。
【0074】
前記ポリオール類としては、前記低分子ポリオール(b21)および/またはポリエーテルポリオールなどが挙げられる。
【0075】
前記低分子ポリオール(b21)のうち、なかでも脂肪族2~4価アルコールおよびこれら2種以上を併用することが好ましく、ジオール(特にネオペンチルグリコール、2-ブチル-2-エチルプロパンジオールおよび1,6-ヘキサンジオールから選ばれる少なくとも1種)と3価アルコールおよび/または4価アルコール(特にトリメチロールプロパンおよび/またはペンタエリスリトール)との併用がさらに好ましい。
【0076】
前記ポリエーテルポリオールは、少なくとも2個の活性水素基を有する化合物と、AOを重付加重合または重付加共重合(ブロックおよび/またはランダム)させて得ることができる。
少なくとも2個の活性水素基を有する化合物としては、脂肪族多価アルコール類(2価アルコール類[例えばEG、PG、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオールなど]および3価アルコール類[例えばGL、TMP、ペンタエリスリトール、シュークローズなど]など)、多価フェノール類[例えば、ビスフェノールA、ピロガロールなど]、アミン類(アルカノールアミン[例えばトリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、モノエタノールアミンなど]、脂肪族ポリアミン[例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなど]、芳香族ポリアミン[例えばトリレンジアミン、メチレンジアニリン、ポリメチレンポリフェニルアミンなど])、ポリカルボン酸類(脂肪族ポリカルボン酸[例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、ダイマー酸など]、芳香族カルボン酸[例えばフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸など])などが挙げられる。なかでも、脂肪族多価アルコール類とアミン類が好ましく、脂肪族多価アルコール類が特に好ましい。
【0077】
また、AOとしては、C2~4のEO、PO、1,2-BOなどが挙げられる。これらは2種類以上を併用してもよい。この場合、結合様式は、ランダムまたはブロックのいずれであってもよい。
【0078】
ポリエーテルポリオールには、前記活性水素原子含有化合物のAO低モル付加物(b23)も好ましい。
【0079】
ここでいう、AOおよび活性水素原子含有化合物は、前記と同様であるものが好ましい。
【0080】
ポリカルボン酸としては、前記カルボキシル基を含む化合物(d1)が好ましく、2価~8価またはそれ以上のポリカルボン酸、C4~40またはそれ以上の脂肪族、脂環式および芳香族カルボン酸が挙げられ、前記脂肪族ジカルボン酸(d11)、脂環式ジカルボン酸(d12)、芳香族ジカルボン酸(d13)、ならびに3価またはそれ以上のポリカルボン酸(d14)のポリカルボン酸が挙げられる。なかでも、C2~10の脂肪族ジカルボン酸、C8~18の芳香族ジカルボン酸、C9~18の3~4価またはそれ以上の芳香族ポリカルボン酸およびこれらの2種以上の併用が好ましく、脂肪族ジカルボン酸(特にアジピン酸および/またはセバシン酸)、芳香族2~4価カルボン酸(特にイソフタル酸、テレフタル酸およびトリメリット酸から選ばれる少なくとも1種)ならびにこれらの併用がさらに好ましい。
オキシカルボン酸としては、C4~12のヒドロキシアルカン酸、例えば前記(h1)ラクトン(C4~12)[例えば4-ブタノリド、5-ペンタノリド、6-ヘキサノリド]に相当する酸が含まれる。
【0081】
繊維素樹脂は、無水グルコースユニットの2、3、6位の炭素に結合している水酸基が、次の群に例示する化学グループで置換されたセルロース誘導体である。
群:硝酸エステル基、酢酸エステル基、プロピオン酸エステル基、酪酸エステル基、メチルエーテル基、エチルエーテル基など
これらの置換基によって、例えば、ニトロセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、プロピオン酸セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどを得ることができる。
【0082】
ポリカーボネート樹脂は、例えば、ジヒドロキシル化合物とアルキレンカーボネート(C2~8のアルキレンカーボネート[例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど])とを反応させて、重縮合およびエステル交換することにで得ることができる。また、ジヒドロキシル化合物とジフェニルカーボネートとをエステル交換することで得ることができる。また、ジヒドロキシル化合物とホスゲン(塩化カルボニル)とを反応させて、界面重縮合させることで得ることができる。
ジヒドロキシル化合物としては、例えば、前記2価アルコール(b211)、2価フェノールおよびこれらのAO付加物などが挙げられ、具体的には、ビスフェノール類(4,4’-ジヒドロキシジアリール(シクロ)アルカンおよびそのハロゲン置換体[例えばビスフェノールA、4,4’-ジヒドロキシジフェニル-2,2-ブタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニル-2,2-(4-メチル)ペンタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニル-1,1-シクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’,5,5’-テトラクロルジフェニル-2,2-プロパンなど]が挙げられる。なかでも、ビスフェノールAが好ましい。
【0083】
ケトン樹脂は、ポリケトン樹脂、ケトン樹脂、ケトンアルデヒド樹脂とも呼ばれ、ケトンとホルムアルデヒドをアルカリ触媒縮合させることで得ることができる。
ケトンとしては、脂肪族ケトン、環状ケトン、好ましくはシクロヘキサノンならびに、C1~8の1つまたは複数のアルキル置換シクロヘキサノン[例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、シクロへキサノン、メチルシクロヘキサノン、4-tert-ブチルシクロヘキサノン、4-tert-アミルシクロヘキサノン、2-sec-ブチルシクロヘキサノン、2-tert-ブチルシクロヘキサノン、2-メチルシクロヘキサノン、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンなど]などが挙げられる。
アルデヒドとしては、無分岐または分岐アルデヒド、脂肪族アルデヒド、芳香族アルデヒド[例えばホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ドデカナール、ベンズアルデヒドなど]などが挙げられ、単独または混合物の状態のホルムアルデヒドを使用することが好ましい。
【0084】
ポリエーテル樹脂は、通常、環状アルキレンオキシドまたは環状アルキレンイミンを開環重合することで得ることができる。
ポリエーテル樹脂は、開環重合などにより得られたエーテル結合を主鎖に有するポリマーで、例えば、ポリエチレンオキシド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂(PEI)などが挙げられる。
【0085】
フェノールレゾール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを用いて、塩基性触媒の存在下にて縮合反応させることで得ることができる。
【0086】
フェノール類としては、フェノールおよびフェノールの誘導体を意味し、例えばフェノールの他に、クレゾール、キシレノール、アルキル(C2~10)フェノール、p-クロルフェノール、ビスフェノールA、ジヒドロキシジフェニルメタン、p-ter-ブチルフェノール、p-フェニルフェノール、p-クミルフェノール、p-ノニルフェノール、さらに塩素または臭素で置換されたハロゲン化フェノールなどが挙げられる。
【0087】
アルデヒド類としては、分岐または分岐アルデヒド、脂肪族アルデヒド、芳香族アルデヒド[例えばホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ドデカナール、ベンズアルデヒド、トリオキサン、テトラオキサンなど]などが挙げられる。
【0088】
塩基性触媒としては、酸化ナトリウムや水酸化カルシウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物や、アルカリ土類金属の酸化物を挙げられる他、ジメチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ナフタレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジシアンジアミド、N,N-ジメチルベンジルアミンなどのアミン類、アンモニア、ヘキサメチレンテトラミンや、その他2価金属のナフテン酸塩や2価金属の水酸化物などが挙げられる。
【0089】
フェノールノボラック樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを用いて、酸性触媒の存在下にて縮合反応させることで得ることができる。
【0090】
フェノール類としては、前記と同様のものが挙げられる。
アルデヒド類としては、前記と同様のものが挙げられる。
酸性触媒としては、塩酸、硫酸、過塩素酸、リン酸などの無機酸や、シュウ酸、ギ酸、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、キシレンスルホン酸などの有機酸、さらに、酸化亜鉛、塩化亜鉛、酸化マグネシウム、酢酸亜鉛などの酸性物質が挙げられる。
【0091】
ナフトールノボラックは、例えば、ナフトール成分とアルデヒドとを、酸性触媒の存在下にて縮合反応させることで得ることができる。
ナフトール成分としては、1-ナフトール、2-ナフトールなどが挙げられる。
アルデヒドとしては、前記アルデヒド類が挙げられる。
酸性触媒としては、前記と同様のものが挙げられる。
【0092】
尿素樹脂は、アルカリ触媒の存在下、尿素類とアルデヒド、特にホルムアルデヒドとを縮合反応させることで得ることができる。また、さらなる成分、例えばメラミン、フェノールまたはこれらの混合物を追加的に有して形成される尿素誘導体であってもよい。
尿素類としては、無置換の尿素、モノメチル尿素、モノフェニル尿素、エチレン尿素、ジメチロール尿素、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素、ジメチロールプロピレン尿素、ジメチロールエチレン尿素、ジメチールヒドロキシ尿素、アルキル化ジメチロール尿素、チオ尿素、N,N’-ジメチル尿素、N,N’-ジフェニル尿素などが挙げられる。なかでも、無置換尿素とホルムアルデヒドが好ましい。
前記アルカリ触媒としては、特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどのアルカリ土類金属水酸化物、およびトリエチルアミン、ピリジンなどのアミン類などが挙げられる。
尿素誘導体としては、メラミン-尿素-ホルムアルデヒド樹脂、尿素-フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン-尿素-フェノール-ホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。
【0093】
本発明のポリマー化合物としては、なかでも、(メタ)アクリル樹脂がより好ましく、メタクリル樹脂がさらに好ましい。
【0094】
ポリマー化合物は、放射線や電子線の照射により、架橋反応を起こしたり分解、崩壊したりすることが知られている。本発明においても、(メタ)アクリル樹脂はこれらの作用を受け、分解物それ自身が再結合したり、CTFAと反応したり、また、一部は電子線架橋によって、再構成されると考えられる。
【0095】
その結果、後記実施例で確認されているように、CTFA単独より(メタ)アクリル樹脂を含有させた方が、硬化時の重量変化が小さくなる、すなわちVOC発生が少なくなることを見出した。
【0096】
前記(メタ)アクリル樹脂の含有量は、前記電子線硬化型インク組成物の全量に対して、10質量%以上40質量%以下が好ましい。40質量%を超えると電子線架橋に関与しない(メタ)アクリル樹脂が多くなり、含水エタノールに対する耐性が低下すると考えられる。10質量%未満では、結果としてCTFAの含有量が多くなるためVOCの発生が多くなる。
【0097】
前記(メタ)アクリル樹脂は、ガラス転移点Tgが30℃以上105℃未満であることが好ましい。Tgが30℃未満では、耐溶剤性が低下し、例えば105℃以上では、ブロー成形、真空成形など延伸を伴う成形温度はTgよりも高い温度で行う必要があるため、100℃前後で成形するポリエステル樹脂では成形性が低下する。
【0098】
前記(メタ)アクリル樹脂の分子量は、大きくなると、電子線硬化型インク組成物の粘度が高くなり塗工が困難になることがあるが、その場合は、加温により粘度を下げて塗工すればよいので、極端に大きくならない限り、制限はない。
【0099】
なお、特許文献2に「本発明においては、反応性を有しないポリマー成分を更に含有していても良い。このようなポリマー成分としては、アクリル樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂などが例示できる。」と記載されているように、(メタ)アクリル樹脂は活性エネルギー線では反応しないと考えられていたが、本発明で明らかなように、少なくとも電子線では何らかの反応に関与していると考えるのが妥当である。
【0100】
本発明の電子線硬化型インク組成物は、さらに、多官能(メタ)アクリル系モノマーを含む。この多官能(メタ)アクリル系モノマーは、(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、なかでもアクリロイル基を有する化合物が好ましく、その含有量は、前記電子線硬化型インク組成物の全量に対し0.0000質量%以上0.5質量%以下である。当然のことながら、その含有量が多くなると延伸性は低下する。
【0101】
前記多官能(メタ)アクリル系モノマーとして、例えば、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリアルキレングリコールジアクリレート、アルコキシ化ビスフェノールAジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、グリセリントリアクリレートなどのアクリレートモノマーが挙げられる。
【0102】
本発明の電子線硬化型インク組成物は、含有成分であるCTFA、ポリマー化合物および必要に応じて多官能(メタ)アクリル系モノマーを混合して製造するが、他に、顔料などの色材、分散剤、表面調整剤、艶消し剤、可塑剤など、種々の添加剤を含有していても良いが、VOCを考慮すると、溶剤は含まないことが好ましい。
【0103】
本発明の電子線硬化型インク組成物で用いる色材は、従来のインク組成物に通常用いられている無機顔料又は有機顔料であればどのようなものであっても良く、例えば、カーボンブラック、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムイエロー、カドミウムイエロー、チタンイエロー、酸化チタン、酸化クロム、ビリジアン、チタンコバルトグリーン、ウルトラマリンブルー、プルシアンブルー、コバルトブルー、ジケトピロロピロール、アンスラキノン、ベンズイミダゾロン、アンスラピリミジン、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料、アルミペースト、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、クレー、沈降性硫酸バリウム、パール顔料などが挙げられる。これらの含有量および分散粒径は、印刷方法やその目的に応じて適宜調整される。
【0104】
本発明の電子線硬化型インク組成物は、必要に応じて分散剤を含有しても良い。分散剤としては例えば高分子分散剤が挙げられる。この高分子分散剤の主鎖はポリエステル系、ポリアクリル系、ポリウレタン系、ポリアミン系、ポリカプロラクトン系などからなり、側鎖としてアミノ基、カルボキシル基、スルホ基、ヒドロキシル基などの極性基やこれらの塩を有するのが好ましい。
【0105】
分散剤の種類は特に限定されないが、ポリエステル系分散剤、例えば、日本ルーブリゾール社製「ソルスパース33000」、「ソルスパース32000」、「ソルスパース24000」、ビックケミー社製「Disperbyk168」、味の素ファインテクノ社製「アジスパーPB821」、エボニック・ジャパン社製「TEGO Dispers685」などが好ましい。
これらの分散剤の含有量は、色材含有量1質量部に対して0.01質量部~1.0質量部程度であることが好ましい。
【0106】
本発明の電子線硬化型インク組成物は、さらに表面調整剤を含有しても良い。表面調整剤としては特に限定されないが、例えば、ジメチルポリシロキサンを有するビックケミー社製「BYK-306」、「BYK-333」、「BYK-371」、「BYK-377」、エボニックデグサジャパン社製「TegoRad2010」「TegoRad2100」、「TegoRad2200N」、「TegoRad2300」などが挙げられる。
これらの表面調整剤の含有量は、インク組成物全量に対して0.01質量%以上1.0質量%以下であることが好ましい。この含有量にすることで、インク組成物が基材に対し好ましい濡れ性を有することとなり、基材上に印刷する際、電子線硬化型インク組成物がハジキを生じることなく濡れ広がることが可能となる。
【0107】
本発明の電子線硬化型インク組成物は、必要に応じて、艶消し剤を含有しても良い。艶消し剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウムなどの各種の粉粒体を使用することができ、単独でまたは2種以上組み合わせて使用しても良い。
【0108】
本発明の電子線硬化型インク組成物は、必要に応じて、さらに、可塑剤などの添加物を含有することができる。
【0109】
本発明の電子線硬化型インク組成物は、光重合開始剤を実質含まない。光重合開始剤を含むと、前記した通り、発煙しやすく、臭気の発生のおそれがある、また、硬化皮膜が硬くなりすぎて、延伸性が劣る(割れが生じる)おそれがある。
【0110】
本発明の電子線硬化型インク組成物は、前記CTFA、ポリマー化合物を混合し、必要に応じて、多官能(メタ)アクリル系モノマー、色材、その他の添加剤を添加して製造できる。なお、色材については、多官能(メタ)アクリル系モノマーの1種または2種以上の中で分散させてから、添加、混合してもよいが、全ての材料を混合してから分散させてもよい。
【0111】
電子線による硬化は、印刷物で一般的に使用されている条件が用いられるが、酸素による重合阻害を避けるため酸素濃度を1,000ppm以下とすることが好ましく、より好ましくは500ppm以下である。加速電圧は硬化させたい塗布膜の厚みにより決定される。塗布膜の厚みは、0.1μm以上3mm以下、好ましくは0.5μm以上1mm以下、さらに好ましくは1μm以上200μm以下である。例えば、インク組成物の比重が1g/cm3、厚みが100μm程度であれば加速電圧はおおよそ200kV程度必要となる。具体的な硬化条件としては、酸素濃度300ppm、吸収線量30kGyである。
【0112】
本発明の積層体は、基材上に前記電子線硬化型インク組成物を、塗布、印刷、ディッピングなどの方法で塗工し、電子線により硬化させ、硬化皮膜を形成させて得ることができる。
【0113】
印刷では、前記電子線硬化型インク組成物を、粘度などその印刷方法に適した物性にすることができれば、オフセット印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷など、選ぶものではない。
【0114】
基材としては、樹脂製のシート、フィルムなどが挙げられ、その上に前もって種々のコート剤が塗工されたものでもよい。
【0115】
前記電子線硬化型インク組成物の硬化皮膜は、延伸性に優れるため、得られた積層体を延伸することができる。その延伸性は、その組成物に含まれている成分の含有量により異なるので、目的に応じて調整することができる。
前記硬化皮膜は、耐水・耐アルコール性および耐溶剤性に優れるので、例えば、水性のコート剤の表面保護層として有用である。
【実施例0116】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0117】
本発明のインク組成物で使用した材料は、以下の通りである。
環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(CTFA)
ポリマー化合物(表1に示したアクリル樹脂):三菱ケミカル(株)製
ポリマー化合物(脂肪族ポリエステルウレタンジアクリレート樹脂、CN983):アルケマ社製
トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)
1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)
プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート(SR9003):アルケマ社製
ビニルカプロラクタム(VCL)
アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA):日本触媒(株)製
アクリル酸4-(1,1-ジメチルエチル)シクロヘキシル(SR217):アルケマ社製
テトラヒドロフルフリルアクリレート(THFA)
トリデシルアクリレート(TDA)
【0118】
【0119】
表1の構成モノマー分析は、以下に示す熱分解GC/MSを用いて行った。
分析対象のアクリル樹脂を、パイロライザー(ハイブリッドパイロライザーJHI-08、日本分析工業社製)により、熱分解条件(キューリーポイント法、パイロホイル590℃ 5秒)で熱分解し、その分解物を、GCMS-QP2020(島津製作所社製)のGC/MS装置を用いて次の条件に従い分析した。
カラム:Rxi-5Sil MS 30m×0.25mm×0.25μm
カラムオーブン:40℃ 10分保持→10℃/分 昇温→300℃ 10分保持
キャリアガス:ヘリウム
MSイオン源温度:230℃
MSインターフェイス温度:320℃
イオン化法:EI
スキャン範囲:m/z31~700
【0120】
<実施例1>
CTFAとアクリル樹脂であるダイヤナールBR107とを質量比90:10で混合し、攪拌機にて、60℃で2時間攪拌した。溶け残りがないことを確認後、メンブレンフィルターを用いて濾過し、実施例1のインク組成物を得た。
【0121】
実施例1と同様に、各材料を表2~5に示す組成で混合し、実施例2~14および比較例1~16のインク組成物を調製した。
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
また、表6に示す組成で混合し、比較例17および18として、特許文献1に類似のインク組成物、比較例19として、特許文献2に類似のインク組成物を調製した。
【0127】
【0128】
実施例1~14および比較例1~19のインク組成物を、以下に示すように、シートに塗工し、その硬化後臭気、延伸性、耐溶剤性(n-ヘプタン)、耐水・耐アルコール性および重量減少(VOC発生量)を評価した。結果は、同表2~6に記載した。
【0129】
電子線硬化の条件は、以下とした。
加速電圧:250kV
ビーム電流:2.1mA
酸素濃度:300ppm以下
吸収線量:30kGy
【0130】
「硬化後臭気」
透明A-PET厚み0.5mmのA4サイズシート(三菱ケミカル社製ノバクリアーA3020)に、実施例および比較例のインク組成物を、バーコーターまたはアプリケーターを使用して皮膜厚100μmで塗布後、岩崎電気社製電子線照射装置を使用して前記条件で硬化した。
この硬化物について、そのにおいを嗅いで、においのほとんど感じられないものを3、においが弱いと感じられるものを1、においが強いと感じられるものを0として、5人の平均を取り、その平均値が、○:平均値が2以上、△:平均値が2未満、1.5以上(実用上耐えうる)、×:平均値が1.5未満、として評価した。
【0131】
「延伸性」
透明A-PET厚み0.5mmのA4サイズシート(三菱ケミカル社製ノバクリアーA3020)に、実施例および比較例のインク組成物を、バーコーターまたはアプリケーターを使用して皮膜厚12、20、50および100μmの4種で塗布後、岩崎電気社製電子線照射装置を使用して前記条件で硬化した。
得られたそれぞれのシートを、成光産業社製小型真空成形機フォーミングシリーズ300Xを使用し、シート温度120℃で延伸した。
この延伸工程において、
皮膜厚12μmのシート中央部の面積50cm2を60cm2まで円柱状に延伸したときに、塗布層に割れが発生しないものを延伸倍率120%、
皮膜厚20μmのシート中央部の面積50cm2を100cm2まで円柱状に延伸したときに、塗布層に割れが発生しないものを延伸倍率200%、
皮膜厚50μmのシート中央部の面積50cm2を250cm2まで円柱状に延伸したときに、塗布層に割れが発生しないものを延伸倍率500%、
皮膜厚100μmのシート中央部の面積50cm2を500cm2まで円柱状に延伸したときに、塗布層に割れが発生しないものを延伸倍率1000%、
とし、延伸倍率1000%のものが良好、延伸倍率500%のものは実用上耐えうる、延伸倍率200%および120%のものは不良、として評価した。
【0132】
「耐溶剤性(n-ヘプタン)」
易接着PET厚み0.25mmのA4サイズシート(東洋紡社製コスモシャインA4360)に、実施例および比較例のインク組成物を、バーコーターを使用して10μmの皮膜厚で塗布後、岩崎電気社製電子線照射装置を使用して前記条件で硬化した。
この硬化物から5cm×5cmの試験片を作成し、その試験片を試験溶液であるn-ヘプタン50mlに25℃で1時間浸漬後、試験溶液を濃縮して溶出物の重量を測定し、試験溶液1mlあたりの溶出量が、〇:30μg未満、△:30μg以上50μg以下(実用上耐えうる)、×:50μgを超えるもの、として評価した。
【0133】
「耐水・耐アルコール性」
前記耐溶剤性(n-ヘプタン)で使用した試験片と同じ試験片を用い、体積比でエタノール:水=20:80の試験溶液50mlに60℃で30分間浸漬後、その試験溶液を濃縮して溶出物の重量を測定し、試験溶液1mlあたりの溶出量が、〇:30μg未満、△:30μg以上50μg以下(実用上耐えうる)、×:50μgを超えるもの、として評価した。
【0134】
「重量減少(VOC発生量)」
易接着PET厚み0.25mmのA4サイズシート(東洋紡社製コスモシャインA4360)に、実施例および比較例のインク組成物を、アプリケーターを使用して皮膜厚100μmで0.5gを塗布後、岩崎電気社製電子線照射装置を使用して前記条件で硬化した後の重量減少が、〇:1%未満、△:1%以上5%未満(実用上耐えうる)、×:5%以上、として評価した。
【0135】
表2~6から明らかなように、ポリマー化合物の含有量を10質量%とした実施例1~5およびCTFAの含有量が60質量%以上の実施例6~14では、硬化後臭気、延伸性、耐溶剤性、耐水・耐アルコール性、VOC抑制の全てで優れた性能を示している。一方、CTFAのみの比較例1、およびCTFAにポリマー化合物が5質量%含まれている比較例6~8では、延伸性、耐溶剤性および耐水・耐アルコール性は優れるが、VOCの発生は多い。CTFAと多官能(メタ)アクリル系モノマーのみを含んだ比較例2~4では、延伸性が劣り、VOC発生量が多い。ポリマー化合物の含有量が10質量%に満たない比較例5では、延伸性がやや劣り、VOCの発生が多い。また、CTFAの含有量が60質量%未満の比較例9~13では、耐溶剤性、耐水・耐アルコール性が劣る。さらに、光重合開始剤を含む比較例14~16では、CTFAの含有量が60質量%以上であっても、硬化後臭気があり、延伸性が劣る。特許文献1に類似の比較例17および18では、硬化後臭気があり、延伸性が劣る。特許文献2に類似の比較例19では、硬化後臭気があり、延伸性、耐溶剤性、耐水・耐アルコール性が劣り、VOCの発生も多い。