(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118501
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】熱媒体管理システム、熱媒体供給装置、及び、電動車両
(51)【国際特許分類】
B60H 1/22 20060101AFI20240826BHJP
B60L 58/24 20190101ALI20240826BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240826BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20240826BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240826BHJP
H01M 10/633 20140101ALI20240826BHJP
【FI】
B60H1/22 651Z
B60L58/24
B60H1/22 671
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/633
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024806
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松村 尭之
(72)【発明者】
【氏名】石関 徹也
【テーマコード(参考)】
3L211
5H031
5H125
【Fターム(参考)】
3L211AA10
3L211AA11
3L211BA02
3L211BA03
3L211BA15
3L211DA26
3L211DA28
3L211DA41
3L211DA61
3L211EA12
3L211EA32
3L211EA77
3L211FA02
3L211GA41
3L211GA61
3L211GA93
5H031KK08
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC22
5H125BC19
5H125CD08
5H125CD09
5H125DD02
5H125EE51
5H125EE61
5H125FF24
5H125FF27
(57)【要約】
【課題】走行開始後における車載機器の温調や車室内の空調に要する電力を低減させ、電動車両の航続距離を長くする。
【解決手段】バッテリから供給される電力によって走行し、前記バッテリの温度調整と車室内の空調を行う熱媒体回路を備えた電動車両と、前記電動車両の外部に設けられ、熱媒体の温度調整を行うと共に熱媒体を前記熱媒体回路に供給する熱媒体供給装置と、を備え、前記熱媒体供給装置において、前記電動車両における空調要求に基づく熱媒体の空調目標温度及び前記熱媒体回路の熱媒体の温度を示す情報を取得し、前記熱媒体供給装置の熱媒体の温度が、前記熱媒体回路の熱媒体の温度よりも前記空調目標温度に近い場合に、前記熱媒体供給装置の熱媒体を前記熱媒体回路に供給する、熱媒体管理システムを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリから供給される電力によって走行し、前記バッテリの温度調整と車室内の空調を行う熱媒体回路を備えた電動車両と、
前記電動車両の外部に設けられ、熱媒体の温度調整を行うと共に熱媒体を前記熱媒体回路に供給する熱媒体供給装置と、を備え、
前記熱媒体供給装置において、前記電動車両における空調要求に基づく熱媒体の空調目標温度及び前記熱媒体回路の熱媒体の温度を示す情報を取得し、前記熱媒体供給装置の熱媒体の温度が、前記熱媒体回路の熱媒体の温度よりも前記空調目標温度に近い場合に、前記熱媒体供給装置の熱媒体を前記熱媒体回路に供給する、熱媒体管理システム。
【請求項2】
前記電動車両において、
前記熱媒体供給装置から前記電動車両に熱媒体が供給された後、前記電動車両の熱媒体回路の熱媒体が前記空調目標温度範囲にない場合、
前記電動車両に備えられた熱源を用いて熱媒体の温度調整を行う、請求項1記載の熱媒体管理システム。
【請求項3】
電動車両に搭載された熱媒体回路に熱媒体を供給する熱媒体供給装置であって、
熱媒体を貯留するタンクと、
前記タンクに貯留された熱媒体の温度調整を行う温度調整部と、
前記温度調整部を制御すると共に、前記タンクにおける熱媒体の流入及び流出を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記電動車両における空調要求に基づく熱媒体の空調目標温度及び前記熱媒体回路の熱媒体の温度を示す情報を取得し、前記タンクに貯留された熱媒体の温度が、前記熱媒体回路の熱媒体の温度よりも前記空調目標温度に近い場合に、前記タンクに貯留された熱媒体を前記熱媒体回路に供給する、熱媒体供給装置。
【請求項4】
前記熱媒体回路と前記タンクとを接続して1つの循環回路を形成し、
前記制御部は、前記タンクに貯留された熱媒体を前記循環回路に循環させて熱媒体を前記タンクから前記熱媒体回路に供給する、請求項3記載の熱媒体供給装置。
【請求項5】
前記熱媒体供給装置は、前記電動車両に搭載されたバッテリを充電する充電設備に併設され、
前記バッテリの充電中に、熱媒体を前記タンクから前記熱媒体回路に供給する、請求項3又は請求項4記載の熱媒体供給装置。
【請求項6】
バッテリから供給される電力によって走行し、少なくとも前記バッテリの温度調整を行う熱媒体回路を備えた電動車両であって、
前記熱媒体回路は、
請求項3記載の熱媒体供給装置から供給される熱媒体を流入させる流入口と、前記熱媒体供給装置へ熱媒体を流出させる流出口と、を含む、電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱媒体管理システム、熱媒体供給装置、及び、電動車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両に搭載されたバッテリから供給される電力によって走行用モータを駆動するハイブリッド自動車(HV:Hybrid Vehicles、PHV:Plug-in Hybrid Vehicles)や電気自動車(EV:Electric Vehicles)等の電動車両が普及している。このような電動車両では、ユーザの自宅や外出先に設置された充電設備においてバッテリを充電し、電動車両の走行と車室内の空調及びバッテリ等車載機器の温調に要する電力を蓄えている。
【0003】
バッテリは、充電と放電により温度が上昇し、温度はバッテリの寿命と充電容量に直接影響を及ぼす。このため、例えば、特許文献1には、充電ステーションと電動車両との間に、充電ステーションから供給される冷却水を循環させる外部冷却水回路を形成し、この冷却水によって充電中のバッテリを冷却することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102020208550号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バッテリは、所定の温度範囲内の環境下で用いられることで適切な性能が確保され、期待されるライフサイクルを実現できるものであり、上記温度範囲外の環境下で充放電が継続されるとバッテリの性能の低下や劣化又は損傷を招く。このため、電動車両では、熱源となる冷媒回路の冷媒と水等の熱媒体を介して車室内の空調を行うと共にバッテリを含む車載機器の温調を行っている。
【0006】
従って、バッテリ等の温調に用いられる熱媒体は、電動車両の走行中に目標温度となるように温調されるので、電動車両が充電設備に到着した直後や目的地に到着した直後など、走行終了直後も目標温度に維持されている。
一方、電動車両において、走行終了後は、熱媒体に蓄えられた熱が時間の経過に伴って自然放熱され、次回の走行開始時には熱媒体の温度が目標温度よりも低下又は上昇する。特に、充電設備におけるバッテリの充電中は、充電設備から供給される電流によるバッテリ自身の温度上昇はもちろん、外気の影響により熱媒体の温度が変動し、充電中や充電後の走行開始時に熱媒体の温度が目標温度よりも低下又は上昇している場合がある。
【0007】
これに対して、特許文献1の技術では、充電中にバッテリの冷却はなされるが電動車両の熱媒体の温調までは行われていない。このため、電動車両が、熱媒体の温度が目標温度に満たない状態で走行を開始すると、走行中に熱媒体の温調のためにバッテリに蓄えられた電力を消費することとなり、電動車両の航続距離が短くなるという問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題に対処することを課題としている。すなわち、走行開始後における車載機器の温調や車室内の空調に要する電力を低減させ、電動車両の航続距離を長くすること、などが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために、本発明の一態様に係る熱媒体管理システムは、以下の構成を具備するものである。
バッテリから供給される電力によって走行し、前記バッテリの温度調整と車室内の空調を行う熱媒体回路を備えた電動車両と、前記電動車両の外部に設けられ、熱媒体の温度調整を行うと共に熱媒体を前記熱媒体回路に供給する熱媒体供給装置と、を備え、前記熱媒体供給装置において、前記電動車両における空調要求に基づく熱媒体の空調目標温度及び前記熱媒体回路の熱媒体の温度を示す情報を取得し、前記熱媒体供給装置の熱媒体の温度が、前記熱媒体回路の熱媒体の温度よりも前記空調目標温度に近い場合に、前記熱媒体供給装置の熱媒体を前記熱媒体回路に供給する、熱媒体管理システム。
【0010】
また、上記熱管理システムにおける熱媒体管理装置の一態様は、以下の構成を具備する。
電動車両に搭載された熱媒体回路に熱媒体を供給する熱媒体供給装置であって、熱媒体を貯留するタンクと、前記タンクに貯留された熱媒体の温度調整を行う温度調整部と、前記温度調整部を制御すると共に、前記タンクにおける熱媒体の流入及び流出を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記電動車両における空調要求に基づく熱媒体の空調目標温度及び前記熱媒体回路の熱媒体の温度を示す情報を取得し、前記タンクに貯留された熱媒体の温度が、前記熱媒体回路の熱媒体の温度よりも前記空調目標温度に近い場合に、前記タンクに貯留された熱媒体を前記熱媒体回路に供給する、熱媒体供給装置。
【発明の効果】
【0011】
このような特徴を有する熱媒体管理システムでは、走行開始後における車載機器の温調や車室内の空調に要する電力を低減させ、電動車両の航続距離を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る熱媒体管理システムの概略構成を示す参考図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る熱媒体管理システムにおいて、熱媒体供給装置と電動車両との間の熱媒体の流れを示す参考図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る熱媒体管理システムにおける熱媒体供給装置の概略構成を示す参考図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る熱媒体管理システムにおける熱媒体供給装置の動作を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の実施形態に係る熱媒体管理システムにおける熱媒体供給装置の別の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の説明において、同一の符号は同一の機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る熱媒体管理システム100の概略構成の一例を示す参考図である。本実施形態に係る熱媒体管理システム100は、バッテリBから供給される電力によって走行する電動車両1と、電動車両1を含む各種車両に搭載されたバッテリBに電力を供給する充電設備としての充電ステーション2とを含んで構成されている。充電ステーション2には、バッテリに電力を供給する電力供給装置40と共に、熱媒体を電動車両1の熱媒体回路(後述)に供給する熱媒体供給装置50が設けられている。
【0015】
電動車両1は、
図2に示すように、車載機器の温調や車室内の空調を行う熱管理システム3を搭載している。熱管理システム3は、熱源としての冷媒回路10と、バッテリBの温調を行う第1熱媒体回路20と、車室内の空調を行う第2熱媒体回路30と、を含んで構成されている。
【0016】
冷媒回路10は、
図2に示す例のように、冷媒が循環する回路であり、圧縮機11、第1熱交換器12、膨張弁13、第2熱交換器14、四方弁15、及び、アキュムレータ(図示せず)が冷媒配管で接続された閉回路である。この他、冷媒回路10は、例えば、第1熱交換器12の下流にレシーバを備えるような回路であってもよい。
【0017】
なお、電動車両1において車室内の暖房を行う場合には、圧縮機11から吐出された冷媒は、四方弁15、第1熱交換器12、膨張弁13、第2熱交換器14の順に流れ、第1熱交換器12が凝縮器、第2熱交換器14が蒸発器として機能する。また、電動車両1において車室内の冷房を行う場合には、圧縮機11から吐出された冷媒は、四方弁15、第2熱交換器14、膨張弁13、第1熱交換器12の順に流れ、第2熱交換器14が凝縮器、第1熱交換器12が蒸発器として機能する。
【0018】
第1熱媒体回路20は、冷媒回路10における第2熱交換器14と一体になって熱媒体と冷媒との熱交換を行う第3熱交換器21を備えている。第1熱媒体回路20では、第1ポンプP1によって圧送された熱媒体が、第3熱交換器21を通過する間に第2熱交換器14における冷媒により温調されて循環し、バッテリBの温度調整を行う。
【0019】
第1熱媒体回路20は、流路切替弁としての三方弁V1~V4と及び四方弁V5が設けられ、熱媒体が循環する流路を適宜切り替えられるようになっている。
また、第1熱媒体回路20には、後述する熱媒体供給装置50と第1熱媒体回路20とを接続する接続部5が設けられている。接続部5は、熱媒体供給装置50から第1熱媒体回路20に熱媒体を流入させる流入口510と、第1熱媒体回路20から熱媒体供給装置50へ熱媒体を流出させる流出口520とを含んでいる。
【0020】
第2熱媒体回路30は、冷媒回路10における第1熱交換器12と一体になって熱媒体と冷媒との熱交換を行う第4熱交換器31を備えている。第2熱媒体回路30では、第2ポンプP2によって圧送された熱媒体が、第4熱交換器31を通過する間に第1熱交換器12における冷媒により温調されて循環し、車室内の空調を行う。
【0021】
第2熱媒体回路30では、第4熱交換器31において第1熱交換器12を通過する冷媒によって温調された熱媒体を室内熱交換器32に流通させ、熱媒体の熱により室内熱交換器32を通過する空気の温度調整を行う。室内熱交換器32は、電動車両1に設けられる空調ユニット7に配備され、ダンパ35の開閉によって外気または内気を選択的に取り込み、ブロワ34によって送風された空気を温度調整して車室内に供給することで、車室内の空調を行う。
【0022】
続いて、
図3を参照して、充電ステーション2において、電力供給装置40と併設される熱媒体供給装置50について説明する。熱媒体供給装置50は、車両外部に設けられ、所定温度に調整した熱媒体を必要に応じて電動車両1の第1熱媒体回路20に供給する。
図3に示すように、熱媒体供給装置50は、熱媒体を貯留するタンク51を含む熱媒体貯留部54と、タンク51に貯留された熱媒体の温度調整を行う温度調整部52と、温度調整部52を制御すると共に、タンク51における熱媒体の流入及び流出を制御する制御部53とを備えている。
【0023】
熱媒体貯留部54は、熱媒体が循環する経路上に設けられたタンク51を含む第3熱媒体回路70を含んでいる。第3熱媒体回路70は、温度調整部52の冷媒回路60における第6熱交換器64(後述)と一体になって熱媒体と冷媒との熱交換を行う第7熱交換器71と、流路切替弁としての三方弁V6,V7、及び、第3ポンプP3を備えている。タンク51に貯留された熱媒体は、第3熱媒体回路70において第3ポンプP3によって圧送されて第7熱交換器71を通過し、この間に、温度調整部52の冷媒回路60において第6熱交換器64を通過する冷媒と熱交換して所定温度に調整される。
【0024】
また、第3熱媒体回路70には、第3熱媒体回路70から電動車両1の第1熱媒体回路20へ熱媒体を流出させる流出口72と第1熱媒体回路20から第3熱媒体回路70に熱媒体を流入させる流入口73とが設けられている。なお、本実施形態では、流出口72及び流入口73における熱媒体の流入出は、第3熱媒体回路70の経路上に設けられた三方弁V6,V7によって制御される。また、三方弁V6,V7の制御に限らず、流出口72と流入口73にそれぞれ開閉弁を設けて、流出口72及び流入口73における熱媒体の流入出を制御しても良い。
【0025】
流出口72及び流入口73は、それぞれ可撓性を有する熱媒体配管T1,T2を介して電動車両1の流入口510及び流出口520と接続され、これにより第1熱媒体回路20と第3熱媒体回路70とで一つの熱媒体回路が形成される。言い換えると、流出口72及び流入口73と流入口510及び流出口520とが接続されることで第1熱媒体回路20とタンク51とが接続されて熱媒体が循環する1つの循環回路が形成され、タンク51の熱媒体が第1熱媒体回路20に供給される。
【0026】
温度調整部52は、熱源として、例えば、冷媒回路60を備えている。冷媒回路60は、圧縮機61、第5熱交換器62、膨張弁63、第6熱交換器64、四方弁65、及び、アキュムレータ(図示せず)が冷媒配管で接続された閉回路である。
【0027】
冷媒回路60において、タンク51に貯留された熱媒体の冷却時には、圧縮機61から吐出された冷媒は、四方弁65、第5熱交換器62、膨張弁63、第6熱交換器64の順に流れ、第5熱交換器62が凝縮器、第6熱交換器64が蒸発器として機能する。また、タンク51に貯留された熱媒体の加熱時には、圧縮機61から吐出された冷媒は、四方弁65、第6熱交換器64、膨張弁63、第5熱交換器62の順に流れ、第6熱交換器64が凝縮器、第5熱交換器62が蒸発器として機能する。
【0028】
制御部53は、タンク51に貯留された熱媒体の温度が所定温度となるように温度調整部52を制御する。本実施形態では、温度調整部52が冷媒回路60を熱源としているので、制御部53は圧縮機61の回転数や膨張弁63の開度を制御することによりタンク51に貯留された熱媒体の温度が所定温度となるように調整する。
【0029】
熱媒体供給装置50から電動車両1に供給される熱媒体は、電動車両1の走行開始時に、電動車両1においてバッテリBを含む車載機器の温調や車室内の空調のために必要な温度に予め調整されていることが好ましい。このようにすることで、電動車両1の走行中に、熱媒体の温調のために消費する電力を抑えることができる。
【0030】
そこで、前述の所定温度として、電動車両1の走行開始時にバッテリBを含む車載機器の温調や車室内の空調のために必要な温度を、例えば、制御部53が保持する記憶部(図示せず)などに予め記憶しておく。この他、所定温度として、電動車両1から取得した温度、又は、制御部53が外部のサーバと通信を行うことにより取得した温度など、適宜定めることができる。
【0031】
また、制御部53は、タンク51における熱媒体の流入及び流出を制御する。具体的には、制御部53は、第3熱媒体回路70の三方弁V6,V7を制御することでタンク51から電動車両1の第1熱媒体回路20に対する熱媒体の流入出を制御する。
制御部53は、第3熱媒体回路70の流出口72及び流入口73と電動車両1の流入口510及び流出口520が接続されると、三方弁V6,V7を制御してタンク51に貯留された熱媒体を第1熱媒体回路20に供給する。
【0032】
熱媒体供給装置50から電動車両1の第1熱媒体回路20への熱媒体の供給は、制御部53が、第3熱媒体回路70の流出口72及び流入口73と電動車両1の流入口510及び流出口520が接続されたことを検知し、所定の条件を満たすことで開始される。
【0033】
すなわち、制御部53は、電動車両1における空調要求に基づく熱媒体の空調目標温度範囲及び第1熱媒体回路20の熱媒体の温度を示す情報を取得し、第1熱媒体回路20の熱媒体の温度が空目標温度範囲にない場合に、タンク51の熱媒体を第1熱媒体回路20に供給する。
【0034】
なお、空調要求に基づく熱媒体の空調目標温度は、空調要求に基づいて第1熱媒体回路20の熱媒体に設定される目標温度であり、例えば、電動車両1における前回の空調運転終了時に空調装置に設定された温度や次回走行開始時のためにユーザが予め設定した温度で車室内の空調を行うために、第1熱媒体回路20の熱媒体に設定される。また、空調目標温度範囲は、前述の空調目標温度を含み、当該空調目標温度よりもやや低い温度からやや高い温度のような許容温度を含む温度範囲である。
【0035】
前述のように、電動車両1の走行終了後は、熱媒体に蓄えられた熱が時間の経過に伴って自然放熱され、次回の走行開始時には熱媒体の温度が空調目標温度範囲外まで低下又は上昇する場合がある。このような場合には、電動車両1の走行開始後に熱媒体の温調のためにバッテリに蓄えられた電力を消費してしまう。そこで、制御部53は、熱媒体供給装置50において所定温度、すなわち、空調や車載機器の温度調整に最適な温度に温度調整された熱媒体を電動車両1に供給する。これにより、電動車両1において、走行開始後に熱媒体の温度調整のために消費される電力を抑制することができる。
【0036】
一方、電動車両1における前回の走行終了からの経過時間や、外気温などによっては、熱媒体の温度が変動しても、変動後の温度が空調目標温度範囲内にある場合も想定される。このような場合には、電動車両1の次回の走行時に、第1熱媒体回路20の熱媒体をそのまま利用した方が好ましく、熱媒体供給装置50から熱媒体を供給しない。
【0037】
また、熱媒体供給装置50では、所定温度、つまり、熱媒体を空調や車載機器の温度調整に最適な温度に調整しているが、タンク51に貯留された熱媒体が、常に所定温度を維持しているとは限らない。例えば、タンク51の熱媒体に設定された所定温度が空調目標温度とかけ離れている場合や、温度調整部52によって熱媒体を加熱又は冷却している最中であって、タンク51の熱媒体が所定温度範囲に満たない場合も想定される。
【0038】
そこで、制御部53は、第1熱媒体回路20の熱媒体の温度とタンク51の熱媒体の温度とを比較してタンク51から第1熱媒体回路20への熱媒体の供給の可否を判断することがより好ましい。つまり、制御部53は、第1熱媒体回路20の熱媒体よりもタンク51の熱媒体の温度の方が空調目標温度に近い場合に、タンク51から第1熱媒体回路20への熱媒体を供給することがより好ましい。
【0039】
このように構成された熱媒体管理システム100における熱媒体供給装置50の動作について
図4のフローチャートを用いて説明する。
熱媒体供給装置50では、制御部53がタンク51に貯留された熱媒体が所定温度となるように温度調整部52を制御し(ステップS11)、第3熱媒体回路70の流出口72及び流入口73と電動車両1の流入口510及び流出口520とが接続されたか否かを監視する(ステップS12)。
【0040】
熱媒体配管T1,T2によって第3熱媒体回路70の流出口72及び流入口73と電動車両1の流入口510及び流出口520が接続されると、制御部53がこれを検知する(ステップS12のYES)。
制御部53は、流出口72及び流入口73と流入口510及び流出口520との接続が検知されると、電動車両1から、第1熱媒体回路20の熱媒体の温度及び空調目標温度範囲を示す情報を取得し(ステップS13)、第1熱媒体回路20の熱媒体の現在の温度が空調目標温度範囲内にあるか否かを判定する(ステップS14)。
【0041】
制御部53は、判定の結果、第1熱媒体回路20の熱媒体の温度が空調目標温度範囲内にある場合には、三方弁V6,V7を制御して、タンク51の熱媒体を第1熱媒体回路20に供給しない(ステップS14のYES)。
【0042】
一方、制御部53は、判定の結果、第1熱媒体回路20の熱媒体の温度が空調目標温度範囲外である場合には、第3熱媒体回路70の三方弁V6,V7を切替え、熱媒体が流出口72及び流入口73に向かって流れるように制御する(ステップS14のNO)。これにより、第1熱媒体回路20とタンク51とで1つの循環回路が形成され、第1熱媒体回路20にタンク51から熱媒体が供給される(ステップS15)。
【0043】
その後、制御部53は、第1熱媒体回路20への熱媒体の供給が完了したか否かを監視し(ステップS16)、熱媒体の供給が完了した場合に(ステップS16のYES)、第3熱媒体回路70の三方弁V6,V7を切替えて熱媒体が流出口72及び流入口73に流れないように制御する(ステップS17)。これにより、第1熱媒体回路20への熱媒体の供給が完了する。
【0044】
なお、制御部53は、例えば、第1熱媒体回路20における熱媒体の温度の変化や、タンク51からの熱媒体の供給を継続した時間、ユーザによる供給停止指示を受け付けた場合などに熱媒体の供給が完了したと判定する。
【0045】
また、熱媒体供給装置50は、熱媒体管理システム100における熱媒体供給装置50において、第1熱媒体回路20の熱媒体の温度とタンク51の熱媒体の温度とを比較してタンク51から第1熱媒体回路20への熱媒体の供給の可否を判断する場合には、
図5に示すフローチャートに従って動作する。
【0046】
熱媒体供給装置50では、制御部53がタンク51に貯留された熱媒体が所定温度となるように温度調整部52を制御し(ステップS21)、第3熱媒体回路70の流出口72及び流入口73と電動車両1の流入口510及び流出口520とが接続されたか否かを監視する(ステップS22)。
【0047】
熱媒体配管T1,T2によって第3熱媒体回路70の流出口72及び流入口73と電動車両1の流入口510及び流出口520が接続されると、制御部53がこれを検知する(ステップS22のYES)。
制御部53は、流出口72及び流入口73と流入口510及び流出口520との接続が検知されると、電動車両1から、第1熱媒体回路20の熱媒体の温度、空調目標温度及び空調目標温度範囲を示す情報を取得し、第1熱媒体回路の熱媒体の現在の温度とタンク51に貯留された熱媒体の現在の温度とを比較する(ステップS23)。
【0048】
制御部53は、熱媒体の温度を比較した結果、タンク51の熱媒体の温度よりも、第1熱媒体回路20の熱媒体の温度の方が、空調目標温度又は空調目標温度範囲に近い場合には、三方弁V6,V7を制御して、タンク51の熱媒体を第1熱媒体回路20に供給しない(ステップS24のNO)。
【0049】
一方、制御部53は、熱媒体の温度を比較した結果、第1熱媒体回路20の熱媒体の温度よりも、タンク51の熱媒体の温度の方が、空調目標温度に近い場合には、第3熱媒体回路70の三方弁V6,V7を切替え、熱媒体が流出口72及び流入口73に向かって流れるように制御する(ステップS24のYES)。これにより、第1熱媒体回路20とタンク51とで1つの循環回路が形成され、第1熱媒体回路20にタンク51から熱媒体が供給される(ステップS25)。
【0050】
その後、制御部53は、第1熱媒体回路20への熱媒体の供給が完了したか否かを監視し(ステップS26)、熱媒体の供給が完了した場合に(ステップS26のYES)、第3熱媒体回路70の三方弁V6,V7を切替えて熱媒体が流出口72及び流入口73に流れないように制御する(ステップS27)。これにより、第1熱媒体回路20への熱媒体の供給が完了する。
なお、制御部53は、例えば、第1熱媒体回路20における熱媒体の温度の変化や、タンク51からの熱媒体の供給を継続した時間、ユーザによる供給停止指示を受け付けた場合などに熱媒体の供給が完了したと判定する。
【0051】
熱媒体供給装置50から熱媒体の供給を受けた電動車両1では、供給された熱媒体が空調目標温度となるように温調する。電動車両1では、熱源として冷媒回路10を備えているので、例えば、冷媒回路10の圧縮機11の回転数を制御して熱媒体を加熱又は冷却することにより、熱媒体の温度調整を行う。これにより、電動車両1が走行を開始した後にバッテリBから消費する電力を抑制しながら、空調要求を達成することができる。
【0052】
このように本実施形態によれば、電動車両1の外部に設けられた熱媒体供給装置において温調された熱媒体を、電動車両1に供給することができる。このとき、電動車両1の第1熱媒体回路20の熱媒体の温度が、第1熱媒体回路20の熱媒体に空調要求に基づいて設定された空調目標温度範囲内にある場合には、そのまま熱媒体を電動車両1の次の走行時に用いる。一方、電動車両の第1熱媒体回路20の熱媒体の温度が、第1熱媒体回路20の熱媒体に空調要求に基づいて設定された空調目標温度範囲外である場合には、タンク51で温調された熱媒体を電動車両1の次の走行時に用いる。つまり、電動車両1において、第1熱媒体回路20の熱媒体の温度が空調目標温度範囲内にない場合に限り、タンク51において所定温度に調整された熱媒体を第1熱媒体回路20に供給する。
【0053】
前述のように、タンク51の熱媒体は所定温度、すなわち、例えば、バッテリBを温調するために熱媒体に必要とされる最適な温度に調整されているので、電動車両1の走行開始前に、より目標温度に近い熱媒体を第1熱媒体回路20に充填することができる。本実施形態によれば、この状態で電動車両1の走行を開始させることで、電動車両1が走行を開始した後に熱媒体の温調のためにバッテリBから消費する電力を抑制することができ、電動車両1の航続距離を長くすることができる。
【0054】
また、上記動作と異なる動作を実行する場合には、電動車両の第1熱媒体回路20の熱媒体の温度とタンク51の熱媒体の温度とを比較し、第1熱媒体回路20において要求される空調目標温度に近い温度の熱媒体を、電動車両1の次の走行時に用いる。つまり、電動車両の第1熱媒体回路20の熱媒体の温度とタンク51の熱媒体の温度を比較して、タンク51の熱媒体の方が第1熱媒体回路20の熱媒体よりも空調目標温度に近い温度である場合に限り、タンク51から第1熱媒体回路20に熱媒体を供給する。
【0055】
したがって、電動車両1の走行開始前により空調目標温度に近い熱媒体を第1熱媒体回路20に充填した状態で電動車両1の走行を開始させることで、電動車両1が走行を開始した後に熱媒体の温調のためにバッテリBから消費する電力を抑制することができ、電動車両1の航続距離を長くすることができる。
【0056】
特に、充電ステーション2において、電力供給装置40と熱媒体供給装置50とを併設することで、電動車両1に対して、バッテリBの充電中に熱媒体供給装置50から熱媒体の供給を受けることができる。すなわち、充電中に、電動車両1の次の走行時に要求される目標温度により近い温度の熱媒体を、電動車両1の走行開始前に供給することができる。これにより、走行開始後における車載機器の温調や車室内の空調に要する電力を低減させ、電動車両1の航続距離を長くすることができる。
【0057】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は上述した実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
1:電動車両、2:充電ステーション、3:熱管理システム、5:接続部
7:空調ユニット、10,60:冷媒回路、30:第2熱媒体回路
11,61:圧縮機、12:第1熱交換器、13,63:膨張弁、14:第2熱交換器
15,65,V5:四方弁、20:第1熱媒体回路、21:第3熱交換器、
31:第4熱交換器、32:室内熱交換器、34:ブロワ、35:ダンパ
40:電力供給装置、50:熱媒体供給装置、51:タンク:、52:温度調整部
53:制御部、54:熱媒体貯留部、62:第5熱交換器、64:第6熱交換器
70:第3熱媒体回路、71:第7熱交換器、73,510:流入口
72,520:流出口、B:バッテリ、T1,T2:熱媒体配管
V1~V4,V6,V7:三方弁、100:熱媒体管理システム