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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118505
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】圧電デバイス用ポリマー材料
(51)【国際特許分類】
   H10N 30/857 20230101AFI20240826BHJP
   C08L 71/03 20060101ALI20240826BHJP
   C08G 65/24 20060101ALI20240826BHJP
   C08G 65/26 20060101ALI20240826BHJP
   H10N 30/20 20230101ALI20240826BHJP
   H10N 30/30 20230101ALI20240826BHJP
【FI】
H10N30/857
C08L71/03
C08G65/24
C08G65/26
H10N30/20
H10N30/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024818
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000108993
【氏名又は名称】株式会社大阪ソーダ
(72)【発明者】
【氏名】矢嶋 尚也
(72)【発明者】
【氏名】北川 紀樹
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 太郎
【テーマコード(参考)】
4J002
4J005
【Fターム(参考)】
4J002CH021
4J002CH031
4J002CH041
4J002DA046
4J002EK036
4J002EK046
4J002EN036
4J002EN046
4J002EN076
4J002EV046
4J002EV056
4J002EV126
4J002EV206
4J002EV326
4J002FD146
4J002GQ04
4J005AA04
4J005AA05
4J005AA06
4J005AA10
(57)【要約】
【課題】圧電デバイス用途における柔軟でソフトな材料を提供する目的において、高誘電フィラーの添加を必須とすることなく、高分子材料そのものの誘電率を向上させることが課題となっている。
【解決手段】主鎖がポリオキシエチレン骨格からなるポリエーテル系重合体、又はその架橋物が高い誘電性を有していることを見出し、課題を解決できる圧電デバイス用ポリマー材料であることを見出した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖がポリオキシエチレン骨格からなるポリエーテル系重合体、又はその架橋物を有する圧電デバイス用ポリマー材料。
【請求項2】
主鎖がポリオキシエチレン骨格からなるポリエーテル系重合体が、エピハロヒドリン類、アルキレンオキサイド類、グリシジル類から選択される化合物に由来する構成単位を少なくとも1つ以上含む請求項1に記載の圧電デバイス用ポリマー材料。
【請求項3】
請求項1、又は2に記載の圧電デバイス用ポリマー材料を用いた圧電デバイス用素子。
【請求項4】
請求項3に記載の圧電デバイス素子を備える圧電デバイス。
【請求項5】
センサ、又はアクチュエータである請求項4に記載の圧電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエーテル系重合体、又はその架橋物を有する圧電デバイス用ポリマー材料、圧電デバイス素子、センサ、アクチュエータ等の圧電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエーテル重合体は、原料となるオキシラン化合物の種類を選択することにより、様々な性質をもつポリマーとなるため、自動車用ゴム部品、電気、電子機器用ゴム部材、土木、建築用ゴム資材、各種工業用ゴム部材、各種プラスチックブレンド用ポリマー、高分子固体電解質等の広範な分野で使用されている。
【0003】
また、一般的にエピクロルヒドリン系ゴムと呼ばれるポリエーテル重合体、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン-エチレンオキシド共重合体、エピクロルヒドリン-エチレンオキシド-アリルグリシジルエーテル三元共重合体は、優れた耐熱性、耐油性、耐燃料油性、耐オゾン性、低温特性、半導電特性などを有していることから、自動車用ゴム部品や電気、電子機器用ゴム部材として広く利用されている。
【0004】
一方で、電気を力に変換する誘電エラストマー材料は、アクチュエータやセンサなどの材料として有用である。中でも、エラストマーが大きな変位や力を得るために重要な特性の一つが誘電率であり、誘電エラストマーを用いたデバイスを高機能化するうえで、エラストマー材料の高誘電率化が求められている。
【0005】
例えば特許文献1において、高誘電フィラーをゴムに混錬することで高誘電率化を達成しているが、ゴム硬度が高く柔らかさが求められる誘電エラストマーとしては好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-291206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
圧電デバイス用途における柔軟でソフトな材料を提供する目的において、高誘電フィラーの添加を必須とすることなく、高分子材料そのものの誘電率を向上させることが課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題について鋭意研究の結果、主鎖がポリオキシエチレン骨格からなるポリエーテル系重合体、又はその架橋物が高い誘電性を有していることを見出し、上記課題を解決できることを見出した。
【0009】
本発明は、以下のように記載することもできる。
項1 主鎖がポリオキシエチレン骨格からなるポリエーテル系重合体、又はその架橋物を有する圧電デバイス用ポリマー材料。
項2 主鎖がポリオキシエチレン骨格からなるポリエーテル系重合体が、エピハロヒドリン類、アルキレンオキサイド類、グリシジル類から選択される化合物に由来する構成単位を少なくとも1つ以上含む項1に記載の圧電デバイス用ポリマー材料。
項3 項1、又は2に記載の圧電デバイス用ポリマー材料を用いた圧電デバイス用素子。
項4 項3に記載の圧電デバイス素子を備える圧電デバイス。
項5 センサ、又はアクチュエータである項4に記載の圧電デバイス。
【発明の効果】
【0010】
本発明の主鎖がポリオキシエチレン骨格からなるポリエーテル系重合体、又はその架橋物は、高い誘電率を有しており、高誘電フィラーを必須としないため、柔軟であることから、センサ、又はアクチュエータ等の圧電デバイス用ポリマー材料として非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明について詳細に説明する。本発明の圧電デバイス用ポリマー材料は主鎖がポリオキシエチレン骨格からなるポリエーテル系重合体、又はその架橋物を有する。
【0012】
本発明の圧電デバイス用ポリマー材料は主鎖がポリオキシエチレン骨格からなるポリエーテル系重合体、又はその架橋物を有する。
【0013】
主鎖がポリオキシエチレン骨格からなるポリエーテル系重合体としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、n-ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイド類、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、1-ブトキシ-2,3-エポキシプロパン(n-ブチルグリシジルエーテル)、アリルグリシジルエーテル、1,2-エポキシ-3-フェノキシプロパン(フェニルグリシジルエーテル)などのグリシジル類、エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリンなどのエピハロヒドリン類、スチレンオキサイドなどから選択される化合物を重合させて得られる重合体であることが好ましく、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロロヒドリン、アリルグリシジルエーテルから選択される化合物を重合させて得られる重合体であることがより好ましい。
【0014】
主鎖がポリオキシエチレン骨格からなるポリエーテル系重合体としては、エピハロヒドリン類、アルキレンオキサイド類、グリシジル類から選択される化合物に由来する構成単位を少なくとも1つ以上含むことが好ましい。主鎖がポリオキシエチレン骨格からなるポリエーテル系重合体は、共重合体の場合には、各構成単位とのモル比率はH-NMRスペクトルにより求められる。
【0015】
主鎖がポリオキシエチレン骨格からなるポリエーテル系重合体としては、エピハロヒドリン類、及びグリシジル類から選択される化合物に由来する構成単位を少なくとも1つ有することが好ましい。
【0016】
主鎖がポリオキシエチレン骨格からなるポリエーテル系重合体としては、エピハロヒドリン類に由来する構成単位としては、0~100モル%を有するが好ましく、10~100モル%を有することがより好ましく、25~100モル%を有することが特に好ましい。エピハロヒドリン類に由来する構成単位としては、1種の単量体由来の構成単位で構成されていてもよく、2種以上の単量体由来の構成単位で構成されていてもよい。
【0017】
主鎖がポリオキシエチレン骨格からなるポリエーテル系重合体としては、アルキレンオキサイド類に由来する構成単位としては、0~100モル%を有するが好ましく、0~90モル%を有することがより好ましく、0~75モル%を有することが特に好ましい。アルキレンオキサイド類に由来する構成単位としては、1種の単量体由来の構成単位で構成されていてもよく、2種以上の単量体由来の構成単位で構成されていてもよい。
【0018】
主鎖がポリオキシエチレン骨格からなるポリエーテル系重合体としては、グリシジル類に由来する構成単位としては、0~15モル%を有するが好ましく、1~10モル%を有することがより好ましく、2~7モル%を有することが特に好ましい。グリシジル類に由来する構成単位としては、1種の単量体由来の構成単位で構成されていてもよく、2種以上の単量体由来の構成単位で構成されていてもよい。
【0019】
主鎖がポリオキシエチレン骨格からなるポリエーテル系重合体において、全構成単位を100モル%とした場合に、エピハロヒドリン類に由来する構成単位、アルキレンオキサイド類に由来する構成単位との合計が85~100モル%であることが好ましく、90~100モル%であることがより好ましく、100モル%であってよい。
【0020】
主鎖がポリオキシエチレン骨格からなるポリエーテル系重合体において、全構成単位を100モル%とした場合に、エピハロヒドリン類に由来する構成単位、アルキレンオキサイド類に由来する構成単位、グリシジル類に由来する構成単位との合計が85~100モル%であることが好ましく、90~100モル%であることがより好ましく、100モル%であってよい。
【0021】
主鎖がポリオキシエチレン骨格からなるポリエーテル系重合体の具体例としては、エピクロロヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド-アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン-アリルグリシジルエーテル共重合体、エチレンオキサイド-プロピレンオキサイド-アリルグリシジルエーテル共重合体が例示される。
【0022】
主鎖がポリオキシエチレン骨格からなるポリエーテル系重合体の分子量は特に制限されないが、通常ムーニー粘度表示でML1+4(100℃)=30~150程度である重合体であることが好ましい。
【0023】
ポリエーテル重合体の製造方法としては、オキシラン化合物を開環重合させ得るものを触媒として使用し、モノマーを重合させることによって製造できる。重合温度は、例えば、-20~100℃の範囲である。この重合は、溶液重合、スラリー重合のいずれでもよい。前記触媒としては、例えば、有機アルミニウムを主体としこれに水やリンのオキソ酸化合物やアセチルアセトン等を反応させた触媒系、有機亜鉛を主体としこれに水を反応させた触媒系、有機錫-リン酸エステル縮合物触媒系等が挙げられる。
【0024】
主鎖がポリオキシエチレン骨格からなるポリエーテル系重合体は架橋されていてもよく、架橋物であることが好ましい。
【0025】
主鎖がポリオキシエチレン骨格からなるポリエーテル系重合体を架橋する方法は特に限定されないが、主鎖がポリオキシエチレン骨格からなるポリエーテル系重合体を架橋剤にて架橋された架橋物であることが好ましい。
【0026】
架橋剤としては、塩素原子の反応性を利用する架橋剤、側鎖二重結合の反応性を利用する架橋剤を例示することができ、塩素原子の反応性を利用する架橋剤としては、ポリアミン系架橋剤、チオウレア系架橋剤、チアジアゾール系架橋剤、メルカプトトリアジン系架橋剤、ピラジン系架橋剤、キノキサリン系架橋剤、ビスフェノール系架橋剤等が挙げられる。側鎖二重結合の反応性を利用する架橋剤としては、硫黄系架橋剤、有機酸化物系架橋剤等が挙げられ、有機酸化物系架橋剤であることが好ましい。
【0027】
ポリアミン系架橋剤としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンテトラミン、p-フェニレンジアミン、クメンジアミン、N,N’-ジシンナミリデン-1,6-ヘキサンジアミン、エチレンジアミンカーバメート、ヘキサメチレンジアミンカーバメート等があげられる。
【0028】
チオウレア系架橋剤としては、エチレンチオウレア、1,3-ジエチルチオウレア、1,3-ジブチルチオウレア、トリメチルチオウレア等があげられる。
【0029】
チアジアゾール系架橋剤としては、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、2-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール-5-チオベンゾエート等があげられる。
【0030】
メルカプトトリアジン系架橋剤としては、2,4,6-トリメルカプト-1,3,5-トリアジン、2-メトキシ-4,6-ジメルカプトトリアジン、2-ヘキシルアミノ-4,6-ジメルカプトトリアジン、2-ジエチルアミノ-4,6-ジメルカプトトリアジン、2-シクロヘキサンアミノ-4,6-ジメルカプトトリアジン、2-ジブチルアミノ-4,6-ジメルカプトトリアジン、2-アニリノ-4,6-ジメルカプトトリアジン、2-フェニルアミノ-4,6-ジメルカプトトリアジン等があげられる。
【0031】
ピラジン系架橋剤としては、2,3-ジメルカプトピラジン誘導体等があげられ、2,3-ジメルカプトピラジン誘導体を例示すると、ピラジン-2,3-ジチオカーボネート、5-メチル-2,3-ジメルカプトピラジン、5-エチルピラジン-2,3-ジチオカーボネート、5,6-ジメチル-2,3-ジメルカプトピラジン、5,6-ジメチルピラジン-2,3-ジチオカーボネート等があげられる。
【0032】
キノキサリン系架橋剤としては、2,3-ジメルカプトキノキサリン誘導体等があげられ、2,3-ジメルカプトキノキサリン誘導体を例示すると、キノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、6-メチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、6-エチル-2,3-ジメルカプトキノキサリン、6-イソプロピルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、5,8-ジメチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート等があげられる。
【0033】
ビスフェノール系架橋剤としては、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン(ビスフェノールS)、1,1-シクロヘキシリデン-ビス(4-ヒドロキシベンゼン)、2-クロロ-1,4-シクロヘキシレン-ビス (4-ヒドロキシベンゼン)、2,2-イソプロピリデン-ビス(4-ヒドロキシベンゼン)(ビスフェノールA)、ヘキサフルオロイソプロピリデン-ビス(4-ヒドロキシベンゼン)(ビスフェノールAF)および2-フルオロ-1,4-フェニレン-ビス(4-ヒドロキシベンゼン)等があげられる。
【0034】
硫黄系架橋剤としては、硫黄、モルホリンジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、N,N’-ジメチル-N,N’-ジフェニルチウラムジスルフィド、ジペンタンメチレンチウラムテトラスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィドが挙げられる。
【0035】
有機酸化物系架橋剤としては、tert-ブチルヒドロパーオキサイド、p-メンタンヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキサイド、1,3-ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシベンゾエートが挙げられる。
【0036】
用いる架橋剤の量は、主鎖がポリオキシエチレン骨格からなるポリエーテル系重合体100質量部に対して0.1~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部であることがより好ましい。
【0037】
また、架橋する際には架橋剤と共に公知の促進剤(即ち、架橋促進剤)を用いることができる。
【0038】
前記架橋促進剤の例としては、チウラム系架橋促進剤、チアゾール系架橋促進剤、モルホリンスルフィド系架橋促進剤、スルフェンアミド系架橋促進剤、グアニジン系架橋促進剤、チオウレア系架橋促進剤、アルデヒド-アンモニア系架橋促進剤、ジチオカルバミン酸塩系架橋促進剤、キサントゲン酸塩系架橋促進剤、脂肪酸アルカリ金属塩系架橋促進剤、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7(以下DBUと略)塩系架橋促進剤、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン-5(以下DBNと略)塩系架橋促進剤等をあげることができる。
【0039】
チウラム系架橋促進剤としては、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等があげられる。
【0040】
チアゾール系架橋促進剤としては、メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジル・ジスルフィド、2-メルカプトベンゾチアゾールの各種金属塩、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2-(N,N-ジエチルチオ・カルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2-(4‘-モノホリノ・ジチオ)ベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド等があげられる。
【0041】
モルホリンスルフィド系架橋促進剤としては、モルホリンジスルフィドがあげられる。
【0042】
スルフェンアミド系架橋促進剤としては、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジル・スルフェンアミド、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアジル・スルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアジル・スルフェンアミド、N-第三ブチル-2-ベンゾチアジル・スルフェンアミド、N-第三ブチルージ(2-ベンゾチアゾール)スルフェンイミド等があげられる。
【0043】
グアニジン系架橋促進剤としては、ジフェニルグアニジン、ジトリルグアニジン等があげられる。
【0044】
チオウレア系架橋促進剤としては、エチレンチオウレア、ジエチレンチオウレア、ジブチルチオウレア、ジラウリルチオウレア、トリメチルチオウレア、ジフェニルチオウレア等があげられる。
【0045】
アルデヒド-アンモニア系架橋促進剤としては、ヘキサメチレンテトラミン等があげられる。
【0046】
ジチオカルバミン酸塩系架橋促進剤としては、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、N-ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛等があげられる。
【0047】
キサントゲン酸塩系架橋促進剤としては、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛、ブチルキサントゲン酸亜鉛等があげられる。
【0048】
脂肪酸アルカリ金属塩系架橋促進剤としては、ステアリン酸ナトリウム、さて亜リン酸カリウム等があげられる。
【0049】
DBU塩系架橋促進剤としては、DBU-炭酸塩、DBU-ステアリン酸塩、DBU-2-エチルヘキシル酸塩、DBU-安息香酸塩、DBU-サリチル酸塩、DBU-3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩、DBU-フェノール樹脂塩、DBU-2-メルカプトベンゾチアゾール塩、DBU-2-メルカプトベンズイミダゾール塩等があげられる。
【0050】
DBN塩系架橋促進剤としては、DBN-炭酸塩、DBN-ステアリン酸塩、DBN-2-エチルヘキシル酸塩、DBN-安息香酸塩、DBN-サリチル酸塩、DBN-3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩、DBN-フェノール樹脂塩、DBN-2-メルカプトベンゾチアゾール塩、DBN-2-メルカプトベンズイミダゾール塩等があげられる。
【0051】
架橋促進剤の量は、主鎖がポリオキシエチレン骨格からなるポリエーテル系重合体に対して0.1~15質量部であることが好ましく、0.1~10質量部であることがより好ましく、0.1~5質量部であることが特に好ましい。
【0052】
また、架橋する際には架橋剤と共に受酸剤を用いることができる。好ましくは金属化合物および/または無機マイクロポーラス・クリスタルである。金属化合物としては、周期表第II族(2族および12族)金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、亜リン酸塩、周期表III族(3族および13族)金属の酸化物、水酸化物、カルボン酸塩、ケイ酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、周期表第IV族(4族および14族)金属の酸化物、塩基性炭酸塩、塩基性カルボン酸塩、塩基性亜リン酸塩、塩基性亜硫酸塩、三塩基性硫酸塩等の金属化合物があげられる。
【0053】
前記金属化合物の具体例としては、マグネシア、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化バリウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、生石灰、消石灰、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、フタル酸カルシウム、亜リン酸カルシウム、亜鉛華、酸化錫、リサージ、鉛丹、鉛白、二塩基性フタル酸鉛、二塩基性炭酸鉛、ステアリン酸錫、塩基性亜リン酸鉛、塩基性亜リン酸錫、塩基性亜硫酸鉛、三塩基性硫酸鉛等を挙げることができ、炭酸ナトリウム、マグネシア、水酸化マグネシウム、生石灰、消石灰、ケイ酸カルシウム、亜鉛華などが好ましい。
【0054】
前記無機マイクロポーラス・クリスタルとは、結晶性の多孔体を意味し、無定型の多孔体、例えばシリカゲル、アルミナ等とは明瞭に区別できるものである。このような無機マイクロポーラス・クリスタルの例としては、ゼオライト類、アルミノホスフェート型モレキュラーシーブ、層状ケイ酸塩、合成ハイドロタルサイト、チタン酸アルカリ金属塩等があげられる。特に好ましい受酸剤としては、合成ハイドロタルサイトがあげられる。
【0055】
前記ゼオライト類は、天然ゼオライトの外、A型、X型、Y型の合成ゼオライト、ソーダライト類、天然ないしは合成モルデナイト、ZSM-5などの各種ゼオライトおよびこれらの金属置換体であり、これらは単独で用いても2種以上の組み合わせで用いても良い。また金属置換体の金属はナトリウムであることが多い。ゼオライト類としては酸受容能が大きいものが好ましく、A型ゼオライトが好ましい。
【0056】
前記合成ハイドロタルサイトは下記一般式(2)で表される。
MgZnAl(OH)(2(X+Y)+3Z-2)CO・wHO (2)
[式中、xとyはそれぞれx+y=1~10の関係を有する0~10の実数、zは1~5の実数、wは0~10の実数をそれぞれ示す。]
【0057】
前記一般式(2)で表されるハイドロタルサイト類の例として、Mg4.5Al(OH)13CO・3.5HO、Mg4.5Al(OH)13CO、MgAl(OH)12CO・3.5HO、MgAl(OH)16CO・4HO、MgAl(OH)14CO・4HO、MgAl(OH)10CO・1.7HO、MgZnAl(OH)12CO・3.5HO、MgZnAl(OH)12CO等をあげることができる。
【0058】
受酸剤の量は、主鎖がポリオキシエチレン骨格からなるポリエーテル系重合体に対して0~50質量部であることが好ましく、0.5~20質量部であってよく、1~10質量部であってよい。
【0059】
架橋物の製造方法としては、主鎖がポリオキシエチレン骨格からなるポリエーテル系重合体と架橋剤を含有する組成物を加熱することで架橋物とすることができる。
組成物の製造方法としては、従来ポリマー加工の分野において利用されている任意の手段、例えばオープンロール、バンバリーミキサー、各種ニーダー類等を利用することができる。
その手順としては、ポリマー加工の分野において行われている通常の手順で行うことができる。例えば、最初にポリマーのみを混練りし、次いで架橋剤、架橋促進剤以外の配合剤を投入したA練りコンパウンドを作製し、その後、架橋剤(必要に応じて更に、架橋促進剤)を投入するB練りを行う手順で行うことができる。
加熱は通常100~250℃で行われ。架橋時間は温度によって異なるが、0.5~300分の間で行われるのが普通である。架橋成型は架橋と成型を一体的に行う場合や、先に成型したア組成物に改めて加熱することで架橋物とする場合のほか、先に加熱して架橋物を成型のために加工を施す場合のいずれでもよい。架橋成型の具体的な方法としては、金型による圧縮成型、射出成型、スチーム缶、エアーバス、赤外線、あるいはマイクロウェーブによる加熱等任意の方法を用いることができる。
【0060】
圧電デバイス用ポリマー材料としては、本発明の効果を損なわない限り、上記の他に当該技術分野で行われる各種の充填剤、可塑剤、加工助剤、難燃剤、顔料、老化防止剤、導電剤等を任意で配合することができる。
【0061】
本発明で用いられる老化防止剤としては、公知の老化防止剤を使用できるが、例としては、フェニル-α-ナフチルアミン、p-トルエンスルホニルアミド-ジフェニルアミン、4,4-α,α-ジメチルベンジルジフェニルアミン、ジフェニルアミンとアセトンの高温反応生成品、ジフェニルアミンとアセトンの低温反応生成品、ジフェニルアミン,アニリン,アセトンの低温反応品、ジフェニルアミンとジイソブチルレンの反応生成品、オクチル化ジフェニルアミン、置換ジフェニルアミン、アルキル化ジフェニルアミン、ジフェニルアミン誘導体、N,N´-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N´-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N´-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N´-3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル-p-フェニレンジアミン、N,N´-ビス1-メチルヘプチル-p-フェニレンジアミン、N,N´-ビス1,4-ジメチルペンチル-p-フェニレンジアミン、N-1,3-ジメチルブチル-N´-フェニル-p-フェニレンジアミン、ジアリル-p-フェニレンジアミンの混合品、フェニル,オクチル-p-フェニレンジアミン、フェニル-α-ナフチルアミンとジフェニル-p-フェニレンジアミンの混合品、2,2,4-トリメチル-1,2ジヒドロキノリンの重合物、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、2,5-ジ-tert-アミルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、1-オキシ-3-メチル-4-イソプロピルベンゼン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2,6-ジ-tert-ブチル-α-ジメチルアミノ-p-クレゾール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノールと2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノールとオルト-tert-ブチルフェノールの混合物、スチレン化フェノール、アルキル化フェノール、アルキルおよびアラルキル置換フェノールの混合品、フェノール誘導体、2,2´-メチレン-ビス-4-メチル-6-tert-ブチルフェノール、2,2´-メチレン-ビス-4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール、2,2´-メチレン-ビス-4-エチル-6-tert-ブチルフェノール、4,4-メチレン-ビス-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、メチレン架橋した多価アルキルフェノール、アルキル化ビスフェノール、p-クレゾールとジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物、ポリブチル化ビスフェノールAの混合物、4,4-チオビス-6-tert-ブチル-3-メチルフェノール、4,4-ブチリデンビス-3-メチル-6-tert-ブチルフェノール、2,4-ビスオクチルチオメチル-O-クレゾール、ヒンダートフェノール、ヒンダートビスフェノール、2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプトメチルベンズイミダゾール、2-メルカプトベンズイメダゾールの亜鉛塩、2-メルカプトメチルベンズイミダゾールの亜鉛塩、4と5-メルカプトメチルベンズイミダゾール、4と5-メルカプトメチルベンズイミダゾールの亜鉛塩、ジオクタデシルジスルフィド、ジエチルジチオカルバミン酸ニッケル、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル、1,3-ビスジメチルアミノプロピル-2-チオ尿素、トリブチルチオ尿素、ビス2-メチル-4-3-n-アルキルチオプロピオニルオキシ-5-tert-ブチルフェニルスルフィド、ビス3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルスルフィド、混合ラウリルステアリンチオジプロピオネート、環状アセタール、ポリマーポリオール60%と水添シリカ40%の混合品、ポリエチレンとポリエチレングリコールの2分子構造による特殊ポリエチレングリコール加工品、不活性フィラーとポリマーポリオールの特殊設計混合品、複合系老化防止剤、エノールエーテル、1,2,3-ベンゾトリアゾール、3-N-サリチロイルアミノ-1,2,4-トリアゾル、トリアジン系誘導体複合物、デカメチレンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジド、N,N´-ビス3-3,5-ジ-tert-4-ヒドロキシフェニルプロピオニルヒドラジン、テトラキス-メチレン-3-3´,5´-ジ-tert-ブチル4´ヒドロキシフェニルプロピオネートメタン等があげられる。
【0062】
老化防止剤の配合量は、主鎖がポリオキシエチレン骨格からなるポリエーテル系重合体、又はその架橋物に対して0~20質量部であることが好ましく、0.1~10質量部であることがより好ましい。
【0063】
圧電デバイス用ポリマー材料は、圧電デバイス用素子として用いられることが好ましい。圧電デバイス用素子とは、圧電デバイス用ポリマー材料を圧電体として用いた素子であって、圧電効果又は逆圧電効果を示す素子である。圧電デバイス用素子としては電極が備えられた圧電デバイス用素子が例示される。
【0064】
電極としては、例えば、金、白金、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、タンタル、銀及び銅等の金属材料が挙げられる。
【0065】
本発明の圧電デバイス用素子は圧電効果及び/又は逆圧電効果を利用した、超音波センサ,圧力センサ,触覚センサ,歪みセンサ等の各種センサ、アクチュエータ等の圧電デバイスに用いることができる
【0066】
以下、本発明を実施例、比較例により具体的に説明する。但し、本発明はその要旨を逸脱しない限り以下の実施例に限定されるものではない。尚、実施例、比較例で用いた配合剤を以下に示す。
エピハロヒドリン系重合体1:株式会社大阪ソーダ「エピクロマーH」(エピクロロヒドリン単独重合体)
エピハロヒドリン系重合体2:株式会社大阪ソーダ「エピクロマーC」(エピクロロヒドリンーエチレンオキサイド共重合体)
エピハロヒドリン系重合体3:株式会社大阪ソーダ「エピオン301」(エピクロロヒドリン-エチレンオキサイド-アリルグリシジルエーテル共重合体)
エピハロヒドリン系重合体4:株式会社大阪ソーダ「エピクロマーCG」(エピクロロヒドリン-エチレンオキサイド-アリルグリシジルエーテル共重合体)
シリコーンゴム:ダウ東レ株式会社「XIAMETERTM RBB-6650-50」
合成ハイドロタルサイト:協和化学工業株式会社「DHT―4A-2」
滑剤:花王株式会社「スプレンダーR300V」
架橋助剤1:大内振興化学工業株式会社「ノクセラーBZ」
架橋助剤2:大内振興化学工業株式会社「ノクセラーD」
架橋剤1:川口化学工業株式会社「アクターTSH」
架橋剤2:日油株式会社「パーブチルP」
【0067】
比誘電率
圧電デバイス用ポリマー材料の誘電率は、ケミカルインピーダンスアナライザーIM3590(日置電機株式会社)に誘電体測定用電極Keysight1651B(キーサイトテクノロジー)を接続し、電圧1V、周波数1kHz、又は200kHzの条件で、平行板コンデンサ法にて求めた。なお、前記条件で測定した誘電率を真空の誘電率で除することで、比誘電率を求めた。
【0068】
ヤング率測定方法
圧電デバイス用ポリマー材料のヤング率は、精密万能試験機(株式会社島津製作所:オートグラフAGS-5kNX)を使用し、引張速度50mm/min、ひずみ1~5%時の弾性率(ヤング率)を採用した。
【0069】
実施例1~3
150mm×150mm×2mmの金型に70gに秤量したポリマーを挟み、130℃に温調した圧縮成型機にて3分加熱圧縮した。圧縮後、冷却した圧縮成型機にて5分間圧縮することで室温まで冷却し、シート状の評価サンプルを得た。なお、以下の圧電デバイス用ポリマー材料を使用し、周波数1kHzでの比誘電率を測定した。結果を表1に示す。
実施例1:エピハロヒドリン系重合体1
実施例2:エピハロヒドリン系重合体2
実施例3:エピハロヒドリン系重合体3
【0070】
実施例4、5、比較例1
表2に示す配合(単位は質量部)で各材料をニーダーおよびオープンロールで混練し、厚さ2~2.5mmの未架橋ゴムシートを作製した。具体的には、表2に示すA練り配合剤を120℃に加熱したニーダーで4~5分間混練し、A練り材料とした。このA練り材料にB練り配合剤を添加し、室温にて混練用ロールで混練し、未架橋ゴムシートを得た。また、得られた実施例4~6、比較例1の未架橋ゴムシートを、160℃で15分プレス架橋し、2mm厚の架橋物を得た。得られた架橋物を圧電デバイス用ポリマー材料として用い、比誘電率およびヤング率を測定した。周波数1kHzでの比誘電率およびヤング率の結果を表3に、周波数200kHzでの比誘電率の結果を表4に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
【0075】
実施例1~3に記載の通り、薬剤を添加していない場合でも、高い誘電率を示すポリマー材料であることが分かる。実施例4、5、比較例1に記載の通り、架橋後の物性についても他種ゴムに対して同等のゴム弾性を示しながら、高い誘電率を示している。さらに、実施例5は周波数に対する誘電率の変化が小さい点で好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明のポリエーテル重合体を用いた誘電エラストマー材料は、センサ、アクチュエータ等の圧電デバイス材料として非常に有用である。