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特開2024-118514測定装置、制御装置、測定方法、プログラム、及び露光装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118514
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】測定装置、制御装置、測定方法、プログラム、及び露光装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240826BHJP
【FI】
G03F7/20 521
G03F7/20 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024829
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】曽原 直也
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197AA05
2H197CD12
2H197CD13
2H197DB10
2H197DC16
2H197DC20
2H197EA03
2H197HA02
2H197HA03
2H197HA05
(57)【要約】
【課題】露光装置の投影光学系の歪曲収差を高い精度で測定することが可能な測定装置、制御装置、測定方法、プログラム、及び露光装置を提供すること。
【解決手段】本測定装置は、収差検出装置と、制御装置とを具備する。収差検出装置は、光学センサと、入射する光を分割して光学センサに出射するビームスプリッタとを有し、移動可能に構成される。制御装置は、移動制御部と、測定部とを有する。移動制御部は、マスクステージに保持された歪曲収差を測定するための校正用パターンが形成された校正用マスクに照射され、投影光学系からワークステージに向かって照射される露光光が入射する位置にビームスプリッタが配置されるように、投影光学系とワークステージとの間に収差検出装置を移動させる。測定部は、ビームスプリッタにより分割されて光学センサに入射する露光光の検出結果に基づいて、投影光学系の歪曲収差を測定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクステージに保持された露光用マスクに照射された露光光をワークステージに保持されたワークに照射する投影光学系の歪曲収差を測定する測定装置であって、
光学センサと、入射する光を分割して前記光学センサに出射するビームスプリッタとを有し、移動可能に構成された収差検出装置と、
前記マスクステージに保持された前記歪曲収差を測定するための校正用パターンが形成された校正用マスクに照射され、前記投影光学系から前記ワークステージに向かって照射される前記露光光が入射する位置に前記ビームスプリッタが配置されるように、前記投影光学系と前記ワークステージとの間に前記収差検出装置を移動させる移動制御部と、
前記ビームスプリッタにより分割されて前記光学センサに入射する前記露光光の検出結果に基づいて、前記投影光学系の歪曲収差を測定する測定部と
を有する制御装置と
を具備する測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測定装置であって、
前記測定部は、前記ワークステージに保持された前記校正用パターンが形成された校正用ワークに照射され、前記ビームスプリッタにより分割されて前記光学センサに入射する前記測定光の検出結果と、前記露光光の検出結果とを比較することで、前記投影光学系の歪曲収差を測定する
測定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の測定装置であって、
前記制御装置は、前記校正用パターンに対応する校正情報を記憶する記憶部を有し、
前記測定部は、前記校正情報と、前記露光光の検出結果とを比較することで、前記投影光学系の歪曲収差を測定する
測定装置。
【請求項4】
請求項1に記載の測定装置であって、
前記測定部は、前記校正用マスクに照射された後に前記投影光学系から前記ワークステージに保持された前記校正用パターンが形成された校正用ワークに照射され、前記ビームスプリッタにより分割されて前記光学センサに入射する前記露光光の検出結果に基づいて、前記投影光学系の歪曲収差を測定する
測定装置。
【請求項5】
請求項1に記載の測定装置であって、
前記制御装置は、前記マスクステージに前記校正用マスクを配置する配置制御部を含む
測定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の測定装置であって、
前記配置制御部は、前記ワークステージに、前記校正用パターンが形成された校正用ワークを配置する
測定装置。
【請求項7】
請求項1に記載の測定装置であって、
前記移動制御部は、前記校正用マスクに照射された前記露光光が前記投影光学系により結像されることで形成される前記校正用パターンの周縁の位置に、前記ビームスプリッタが配置されるように前記収差検出装置を移動させる
前記測定装置。
【請求項8】
請求項7に記載の測定装置であって、
前記移動制御部は、前記校正用パターンの周縁の少なくとも3箇所以上の位置に、前記収差検出装置を移動させる
前記測定装置。
【請求項9】
請求項1に記載の測定装置であって、
前記光学センサは、画像を撮影可能な撮像部であり、
前記移動制御部は、前記露光用マスクのアライメントマークであるマスクマークに照射された前記露光光の光路、及び前記ワークのアライメントマークであるワークマークに照射された非露光光の光路の各々に前記ビームスプリッタが配置されるように、前記投影光学系と前記ワークステージとの間に前記収差検出装置を移動させ、
前記制御装置は、前記ビームスプリッタにより分割されて前記撮像部に入射する前記露光光により得られる前記マスクマークの画像、及び前記ビームスプリッタにより分割されて前記撮像部に入射する前記非露光光により得られる前記ワークマークの画像に基づいて、前記マスクマークの位置及び前記ワークマークの位置の各々を検出する位置検出部を含む
測定装置。
【請求項10】
請求項9に記載の測定装置であって、
前記投影光学系の歪曲収差を測定するために前記移動制御部により移動される前記収差検出装置の位置と、前記マスクマークの位置及び前記ワークマークの位置の各々を検出するために前記移動制御部により移動される前記収差検出装置の位置とは、互いに等しい
測定装置。
【請求項11】
マスクステージに保持された露光用マスクに照射された露光光をワークステージに保持されたワークに照射する投影光学系の歪曲収差を測定する制御装置であって、
光学センサと入射する光を分割して前記光学センサに出射するビームスプリッタとを有し移動可能に構成された収差検出装置を、前記投影光学系と前記ワークステージとの間に移動させる移動制御部と、
前記光学センサの検出結果に基づいて、前記投影光学系の歪曲収差を測定する測定部と
を具備し、
前記移動制御部は、前記マスクステージに保持された前記歪曲収差を測定するための校正用パターンが形成された校正用マスクに照射され、前記投影光学系から前記ワークステージに向かって照射される前記露光光が入射する位置に前記ビームスプリッタが配置されるように、前記収差検出装置を移動させ、
前記測定部は、前記ビームスプリッタにより分割されて前記光学センサに入射する前記露光光の検出結果に基づいて、前記投影光学系の歪曲収差を測定する
制御装置。
【請求項12】
コンピュータにより実行され、マスクステージに保持された露光用マスクに照射された露光光をワークステージに保持されたワークに照射する投影光学系の歪曲収差を測定する測定方法であって、
光学センサと入射する光を分割して前記光学センサに出射するビームスプリッタとを有し移動可能に構成された収差検出装置を、前記投影光学系と前記ワークステージとの間に移動させる移動制御ステップと、
前記光学センサの検出結果に基づいて、前記投影光学系の歪曲収差を測定する測定ステップと
を含み、
前記移動制御ステップは、前記マスクステージに保持された前記歪曲収差を測定するための校正用パターンが形成された校正用マスクに照射され、前記投影光学系から前記ワークステージに向かって照射される前記露光光が入射する位置に前記ビームスプリッタが配置されるように、前記収差検出装置を移動させ、
前記測定ステップは、前記ビームスプリッタにより分割されて前記光学センサに入射する前記露光光の検出結果に基づいて、前記投影光学系の歪曲収差を測定する
測定方法。
【請求項13】
請求項12に記載の測定方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項14】
請求項1に記載の測定装置を含む露光装置であって、さらに、
前記光出射部と、
前記投影光学系と、
前記マスクステージと、
前記ワークステージと
を具備する露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置の投影光学系の歪曲収差の測定に適用可能な測定装置、制御装置、測定方法、プログラム、及び露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子、プリント基板、又は液晶基板等のパターンをフォトリソグラフィにより製造する工程において、露光装置が使用される。露光装置は、パターンを形成したマスクと、そのパターンが転写されるワークとが所定の位置関係となるように位置合わせ(アライメント)される。その後、マスクに照射された露光光が、投影光学系によりワークに照射され、ワークにマスクパターンが転写(露光)される。
【0003】
特許文献1には、露光装置における投影光学系の歪曲収差(ディストーション)を評価する方法について開示されている。特許文献1に記載の露光装置では、その図1に示すように、マスクの上方側に配置されたアライメントスコープによる空中像計測の結果に基づいて、投影光学系のディストーションが評価される。
【0004】
また、特許文献2には、露光装置において、マスクとワークとの位置合わせを行うためのアライメント顕微鏡について開示されている。アライメント顕微鏡によりマスクに形成されたマスクマークと、ワークに形成されたワークマークとが撮影される。撮影されたマスクマーク及びワークマークの各々の画像に基づいて、マスクマーク及びワークマークの各々の位置座標が算出される。両者の位置が予め設定された位置関係になるようにマスクおよびワークの少なくとも一方が移動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-179572号公報
【特許文献2】特開2021-117237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年では、配線パターン等の微細化がますます進み、露光精度のさらなる向上が求められている。従って、投影光学系の歪曲収差を精度よく測定することが可能な技術が求められている。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、露光装置の投影光学系の歪曲収差を高い精度で測定することが可能な測定装置、制御装置、測定方法、プログラム、及び露光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る測定装置は、マスクステージに保持された露光用マスクに照射された露光光をワークステージに保持されたワークに照射する投影光学系の歪曲収差を測定する測定装置であって、収差検出装置と、制御装置とを具備する。
前記収差検出装置は、光学センサと、入射する光を分割して前記光学センサに出射するビームスプリッタとを有し、移動可能に構成される。
前記制御装置は、移動制御部と、測定部とを有する。
前記移動制御部は、前記マスクステージに保持された前記歪曲収差を測定するための校正用パターンが形成された校正用マスクに照射され、前記投影光学系から前記ワークステージに向かって照射される前記露光光が入射する位置に前記ビームスプリッタが配置されるように、前記投影光学系と前記ワークステージとの間に前記収差検出装置を移動させる。
前記測定部は、前記ビームスプリッタにより分割されて前記光学センサに入射する前記露光光の検出結果に基づいて、前記投影光学系の歪曲収差を測定する。
【0009】
この測定装置では、校正用マスクに照射され投影光学系を介して照射される露光光が入射する位置にビームスプリッタが配置されるように、投影光学系とワークステージとの間に収差検出装置が移動される。そして、収差検出装置の光学センサにより検出される、ビームスプリッタにより分割された露光光の検出結果に基づいて、投影光学系の歪曲収差が測定される。これにより、投影光学系の歪曲収差を高い精度で測定することが可能となる。
【0010】
前記測定部は、前記ワークステージに保持された前記校正用パターンが形成された校正用ワークに照射され、前記ビームスプリッタにより分割されて前記光学センサに入射する前記測定光の検出結果と、前記露光光の検出結果とを比較することで、前記投影光学系の歪曲収差を測定してもよい。
【0011】
前記制御装置は、前記校正用パターンに対応する校正情報を記憶する記憶部を有してもよい。この場合、前記測定部は、前記校正情報と、前記露光光の検出結果とを比較することで、前記投影光学系の歪曲収差を測定してもよい。
【0012】
前記測定部は、前記校正用マスクに照射された後に前記投影光学系から前記ワークステージに保持された前記校正用パターンが形成された校正用ワークに照射され、前記ビームスプリッタにより分割されて前記光学センサに入射する前記露光光の検出結果に基づいて、前記投影光学系の歪曲収差を測定してもよい。
【0013】
前記制御装置は、前記マスクステージに前記校正用マスクを配置する配置制御部を含んでもよい。
【0014】
前記配置制御部は、前記ワークステージに、前記校正用パターンが形成された校正用ワークを配置してもよい。
【0015】
前記移動制御部は、前記校正用マスクに照射された前記露光光が前記投影光学系により結像されることで形成される前記校正用パターンの周縁の位置に、前記ビームスプリッタが配置されるように前記収差検出装置を移動させてもよい。
【0016】
前記移動制御部は、前記校正用パターンの周縁の少なくとも3箇所以上の位置に、前記収差検出装置を移動させてもよい。
【0017】
前記光学センサは、画像を撮影可能な撮像部であってもよい。この場合、前記移動制御部は、前記露光用マスクのアライメントマークであるマスクマークに照射された前記露光光の光路、及び前記ワークのアライメントマークであるワークマークに照射された非露光光の光路の各々に前記ビームスプリッタが配置されるように、前記投影光学系と前記ワークステージとの間に前記収差検出装置を移動させてもよい。また、前記制御装置は、前記ビームスプリッタにより分割されて前記撮像部に入射する前記露光光により得られる前記マスクマークの画像、及び前記ビームスプリッタにより分割されて前記撮像部に入射する前記非露光光により得られる前記ワークマークの画像に基づいて、前記マスクマークの位置及び前記ワークマークの位置の各々を検出する位置検出部を含んでもよい。
【0018】
前記投影光学系の歪曲収差を測定するために前記移動制御部により移動される前記収差検出装置の位置と、前記マスクマークの位置及び前記ワークマークの位置の各々を検出するために前記移動制御部により移動される前記収差検出装置の位置とは、互いに等しくてもよい。
【0019】
本発明の一形態に係る制御装置は、前記移動制御部と、前記測定部とを具備する。
【0020】
本発明の一形態に係る測定方法は、コンピュータにより実行され、マスクステージに保持された露光用マスクに照射された露光光をワークステージに保持されたワークに照射する投影光学系の歪曲収差を測定する測定方法であって、移動制御ステップと、測定ステップとを含む。
前記移動制御ステップは、光学センサと入射する光を分割して前記光学センサに出射するビームスプリッタとを有し移動可能に構成された収差検出装置を、前記投影光学系と前記ワークステージとの間に移動させる。
前記測定ステップは、前記光学センサの検出結果に基づいて、前記投影光学系の歪曲収差を測定する。
また、前記移動制御ステップは、前記マスクステージに保持された前記歪曲収差を測定するための校正用パターンが形成された校正用マスクに照射され、前記投影光学系から前記ワークステージに向かって照射される前記露光光が入射する位置に前記ビームスプリッタが配置されるように、前記収差検出装置を移動させる。
また、前記測定ステップは、前記ビームスプリッタにより分割されて前記光学センサに入射する前記露光光の検出結果に基づいて、前記投影光学系の歪曲収差を測定する。
【0021】
本発明の一形態に係るプログラムは、前記測定方法をコンピュータに実行させるプログラムである。
【0022】
本発明の一形態に係る露光装置は、前記測定方法を含む露光装置であって、さらに、前記光出射部と、前記投影光学系と、前記マスクステージと、前記ワークステージとを具備する。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、露光装置の投影光学系の歪曲収差を高い精度で測定することが可能となる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る露光装置の基本的な構成例を示す模式図である。
図2】歪曲収差の測定の基本的な動作例を示すフローチャートである。
図3】歪曲収差の測定の具体的な動作例を示すフローチャートである。
図4図3に示す歪曲収差測定シーケンスを説明するための模式図である(歪曲収差情報の検出)。
図5図3に示す歪曲収差測定シーケンスを説明するための模式図である(校正情報の検出)。
図6】歪曲収差の測定の他の動作例を示すフローチャートである。
図7】歪曲収差の測定の他の動作例を示すフローチャートである。
図8】収差検出装置の検出位置の設定例を示す模式図である。
図9】収差検出装置の検出位置の設定例を示す模式図である。
図10】収差検出装置の検出位置の設定例を示す模式図である。
図11】歪曲収差の例を示す模式図である。
図12】歪曲収差の例を示す模式図である。
図13】歪曲収差の例を示す模式図である。
図14】歪曲収差の例を示す模式図である。
図15】歪曲収差の例を示す模式図である。
図16】収差検出装置を用いたアライメントマークの検出動作例を説明するための模式図である(マスクマークの検出)。
図17】収差検出装置を用いたアライメントマークの検出動作例を説明するための模式図である(ワークマークの検出)。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0026】
[露光装置の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る露光装置の基本的な構成例を示す模式図である。
露光装置1は、光出射部2と、マスクステージMSと、ワークステージWSと、投影光学系3と、収差検出装置4と、モニタ5と、制御装置6とを有する。
【0027】
以下、図1に示すように、光出射部2の光軸方向(露光光ELの出射方向)をZ方向とし、Z軸の正側を上方側、負側を下方側とする。またZ方向に直交し、図中の左右に延在する方向をX方向とし、X軸の正側を右側、負側を左側とする。また、Z方向及びX方向の各々に直交し、紙面に対して垂直となる奥行方向をY方向とし、Y軸の正側を奥側、負側を手前側とする。もちろん、本技術の適用について、露光装置1(収差検出装置4)が配置される向き等が限定される訳ではない。
【0028】
光出射部2は、下方側に向けて露光光ELを出射する。例えば、光出射部2として、ショートアーク型の水銀ランプが用いられる。水銀ランプからは、例えば、波長365nm(i線)、405nm(h線)、436nm(g線)等を含む紫外光が出射される。もちろんこのような構成に限定されず、紫外光とは異なる波長帯域の光を出射するランプが用いられてもよい。その他、LED(Light Emitting Diode)やLD(Laser Diode)等の固体光源が用いられてもよい。
【0029】
マスクステージMSは、光出射部2の下方側に配置される。マスクステージMSは、露光用マスク(以下、単にマスクと記載する)Mを保持する。本実施形態では、光出射部2の光軸方向(Z方向)に直交するように、マスクMが配置される。マスクMには、所定のマスクパターンMPが形成されている。またマスクMには、アライメントマーク(マスクマーク)MAMが形成されている。マスクマークMAMは、マスク・アライメントマークとも呼ばれる。
【0030】
投影光学系3は、マスクMに照射された露光光ELを、ワークステージWSに配置されたワークWに出射する。これにより、ワークWにマスクMに形成されているマスクパターンMPの像が投影される。投影光学系3は、投影レンズを有する結像光学系として構成される。投影光学系3の詳しい構成は限定されず、任意の構成が採用されてよい。
【0031】
ワークステージWSは、ワークWを保持する。本実施形態では、光出射部2の光軸方向(Z方向)に直交するように、ワークWが配置される。ワークステージWSは、左右方向(X方向)及び奥行方向(Y方向)の各々において、直線的な移動(直動)が可能なように構成されている。またワークステージWSは、上下方向(Z方向)を回転軸方向とする回転が可能なように構成されている。さらに本実施形態では、ワークステージWSは、光出射部2の光軸方向(Z方向)に対してチルトする(傾斜する)ことが可能なように構成されている。
【0032】
ワークステージWSが駆動することで、ワークWのマスクMに対する相対位置を変動させることが可能である。なお、マスクステージMSが、左右方向(X方向)及び奥行方向(Y方向)の各々における直動、及び上下方向(Z方向)を回転軸方向とする回転が可能なように構成されてもよい。またマスクステージMSが、光出射部2の光軸方向(Z方向)に対してチルトする(傾斜する)ことが可能なように構成されてもよい。もちろん、マスクステージMS及びワークステージWSの両方が移動/回転/傾斜可能に構成されてもよい。
【0033】
ワークWには、アライメントマーク(ワークマーク)WAMが形成されている。ワークマークWAMは、ワーク・アライメントマークとも呼ばれる。
【0034】
図1に示すように、ワークステージWSのワークWが載置される載置面7には、反射ミラー8が埋め込まれる。反射ミラー8は、マスクMが配置されており、一方でワークWが配置されていない状態で露光光ELを照射した場合に、マスクマークMAMを含むマスクパターンMP全体の像が映る位置に配置される。すなわち、反射ミラー8は、ワークWが配置される領域のほぼ全体にわたるように配置される。
【0035】
マスクMとワークWとの位置合わせが完了すると、露光工程が開始され、光出射部2から露光光ELが出射される。光出射部2から出射された露光光ELは、マスクパターンMPが形成されたマスクMと、投影光学系3とを介して、レジストを塗布したワークW上に照射される。これにより、マスクパターンMPがワークW上に投影されて露光される。
【0036】
マスクMとワークWとの位置合わせには、アライメント顕微鏡が用いられる。アライメント顕微鏡を投影光学系3とワークステージWSとの間の領域(空間)にて適宜移動させて、マスクマークMAMの拡大画像、及びワークマークWAMの拡大画像を撮影する。当該アライメント顕微鏡と、本発明に係る収差検出装置4とを兼用させることも可能であり、その点については、後述する。
【0037】
図1に例示するような露光装置1において、光出射部2からマスクステージMSに保持されたマスクMに照射された露光光ELを、ワークステージWSに保持されたワークWに照射する投影光学系3の歪曲収差を測定することは重要である。
【0038】
本開示では、歪曲収差の測定は、現状の投影光学系3の歪曲収差(ディストーション)を検出し、検出された歪曲収差がどの程度であるかを評価するまでの処理を含むものとする。また本開示では、歪曲収差の評価を行うための、現状の投影光学系3の歪曲収差を示す情報を、歪曲収差情報と記載する(図2参照)。
【0039】
収差検出装置4は、露光装置1の投影光学系3の歪曲収差を検出する際に用いられる。すなわち、収差検出装置4は、投影光学系3の歪曲収差を検出し、その検出結果を歪曲収差情報として出力することが可能である。
【0040】
収差検出装置4は、おおよその形状が、一方向に延在する柱形状からなり、内部に、ビームスプリッタ10と、対物レンズ12と、光学センサ13とを有する。
【0041】
収差検出装置4は、柱形状の延在方向が左右方向(X方向)となるように配置され、移動可能に構成される。具体的には、ビームスプリッタ10が投影光学系3とワークステージWS(ワークW)との間に配置される歪曲収差の検出位置から、図1に示す退避位置までの間で移動可能に構成される。
【0042】
収差検出装置4が、左右方向(X方向)、奥行方向(Y方向)、上下方向(Z方向)の各方向において自由に移動可能な構成が好ましい。一方で、このような構成に限定されず、収差検出装置4が検出位置と退避位置との間で移動可能であるのならば、移動可能な方向が制限されていてもよい。例えば、収差検出装置4が、左右方向(X方向)のみに移動可能なように構成されてもよい。
【0043】
収差検出装置4の内部において、ビームスプリッタ10、対物レンズ12、及び光学センサ13は、光学センサ13の撮影光軸Oを基準として配置される。本実施形態では、光学センサ13として、2次元の画像を撮影可能な撮像デバイス(撮像部)が用いられる。例えばCCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)センサ等のイメージセンサを備えるデジタルカメラを用いることが可能である。これに限定されず、非テレセントリックレンズやテレセントリックレンズ等の結像レンズと上記イメージセンサを組み合わせたデジタルカメラが用いられてもよい。これに限定されず、光学センサ13として、1次元の情報(画像)を取得可能なラインセンサ等が用いられてもよい。
【0044】
ビームスプリッタ10として、入射する光を分割して光学センサ13に出射することが可能な任意の構成が採用されてよい。例えば、プレート型ビームスプリッタ、ペリクル型ビームスプリッタ、キューブ型ビームスプリッタ等の、様々な構成のビームスプリッタが用いられてよい。例えば、キューブ型ビームスプリッタを用いる場合には、撮影光軸O上に1以上の収差補正レンズが配置されてもよい。
【0045】
また収差検出装置4のビームスプリッタ10の下方側の位置には、照明部14が配置される。照明部14は、下方側に向かって非露光光NELを出射する。例えば、照明部14としてリング照明が用いられ、非露光光NELとして可視光が出射される。もちろん、このような構成に限定されるわけではなく、同軸照明法を行う構成が採用されてもよい。
【0046】
制御装置6は、露光装置1が有する各ブロックの動作を制御する。制御装置6は、例えばCPU、GPU、DSP等のプロセッサ、ROM、RAM等のメモリ、HDD等の記憶デバイス等、コンピュータに必要なハードウェアを有する。本実施形態では、不揮発性メモリ等の記憶デバイス等により記憶部15が構成される。記憶部15を実現するために、コンピュータ読み取り可能な非一過性の任意の記憶媒体が用いられてよい。
【0047】
制御装置6のプロセッサが記憶部15やメモリに記憶されている本技術に係るプログラムをRAMにロードして実行することにより、本技術に係る歪曲収差の測定方法や位置合わせ方法(アライメント方法)を含む露光方法が実行される。
【0048】
例えばPC(Personal Computer)等の任意のコンピュータにより、制御装置6を実現することが可能である。もちろんFPGA(Field Programmable Gate Array)等のPLD(Programmable Logic Device)や、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアが用いられてもよい。
【0049】
本実施形態では、制御装置6のプロセッサが本技術に係るプログラムを実行することで、機能ブロックとして、移動制御部16、歪曲収差測定部17、位置検出部18が実現される。
【0050】
移動制御部16は、収差検出装置4の移動を制御する。移動制御部16により、収差検出装置4を左右方向(X方向)、奥行方向(Y方向)、上下方向(Z方向)の各方向において移動させるための移動機構(図示は省略)に、制御信号が出力される。当該制御信号に基づいて、収差検出装置4が移動される。なお、移動機構の具体的な構成については限定されず、任意の構成が採用されてよい。
【0051】
歪曲収差測定部17は、収差検出装置4の光学センサ13の検出結果(画像)に基づいて、投影光学系3の歪曲収差を測定(評価)する。
【0052】
位置検出部18は、アライメント顕微鏡により撮影されたマスクマークMAMの画像及びワークマークWAMの画像に基づいて、マスクマークMAMの位置及びワークマークWAMの位置の各々を検出する。
【0053】
また位置検出部18は、検出されたマスクマークMAMの位置、及びワークマークWAMの位置に基づいて、ワークステージWSを制御して、マスクM及びワークWが所望の位置関係となるように、位置合わせを行う。具体的には、マスクマークMAM及びワークマークWAMが互いに同じ位置となるように(所定の位置関係となるように)、ワークステージWSが制御される。これによりマスクM及びワークWの位置合わせが可能となる。
【0054】
その他制御装置6には、露光に関する様々な制御を実行する機能ブロックが構築されるが、図示は省略している。また、位置検出部18を含む各機能ブロックを実現するために、IC(集積回路)等の専用のハードウェアが適宜用いられてもよい。
【0055】
[歪曲収差の測定]
図2は、歪曲収差の測定の基本的な動作例を示すフローチャートである。
投影光学系3の歪曲収差を示す歪曲収差情報が取得される(ステップ101)。
本実施形態では、マスクステージMSに校正用マスクCMが配置される。例えば、制御装置6により、ロボットアーム等(図示は省略)が駆動され、マスクステージMSに校正用マスクCMが配置される。この場合、制御装置6に機能ブロックとして、マスクステージMSへの校正用マスクCMの配置動作を制御する配置制御部(図示は省略)が構成される。もちろん、オペレータにより、校正用マスクCMが配置されてもよい。
【0056】
校正用マスクCMは、歪曲収差を測定するための校正用パターンCPが形成されたマスクである。本実施形態では、校正用パターンCPとして、格子パターンが用いられる。もちいろ、格子パターンに限定されず、星形、三角形、四角形等の所定の形状が並んで配置されたパターンや、ドットパターン等、歪曲収差が検出可能な任意のパターンが採用されてよい。
【0057】
校正用パターンCP及び校正用マスクCMを、歪曲収差を測定するために基準となる基準パターン及び基準マスクと呼ぶことも可能である。
【0058】
光出射部2から露光光ELが出射される。校正用マスクCMに照射され、投影光学系3からワークステージWSに向かって出射される露光光ELは、校正用パターンCPの像を形成する光となり、投影光学系3の歪曲収差の情報を含む。当該露光光ELを、収差検出装置4により検出することで、歪曲収差を示す歪曲収差情報を取得することが可能である。
【0059】
また、校正用パターンCPに対応する校正情報が取得される(ステップ102)。校正情報は、理想的な校正用パターンCPを示す情報であり、投影光学系3の歪曲収差の影響を受けていない校正用パターンの情報ともいえる。歪曲収差情報と、校正情報とが比較されることで、投影光学系3の歪曲収差が測定(評価)される(ステップ103)。
【0060】
図3は、歪曲収差の測定の具体的な動作例を示すフローチャートである。
図4及び図5は、図3に示すフローを説明するための模式図である。
【0061】
図3に示す例では、歪曲収差測定シーケンスAが実行され、投影光学系3の歪曲収差が評価される(ステップ201)。そして、歪曲収差の評価結果が、許容範囲であるか否かが判定される(ステップ202)。歪曲収差の評価結果が許容範囲ではない場合(ステップ202のNo)、投影光学系3の調整が行われる(ステップ203)。そして、ステップ201の歪曲収差測定シーケンスAが再び実行される。
【0062】
なお、評価結果が許容範囲であるか否かを判定するための基準、及び判定方法は限定されず、任意に設定されてよい。また、投影光学系3の調整としては、例えば投影光学系3に含まれる投影レンズ等の光学素子の位置の調整、加工、交換等により行われる。
【0063】
歪曲収差測定シーケンスAでは、マスクステージMSに校正用マスクCMが配置される(ステップ201)。ワークステージWSには、ワークWは配置されない。従って、ワークステージWSの載置面7に設けられた反射ミラー8が上方側に向けて露出している。
【0064】
次に、収差検出装置4により、投影光学系3により結像された校正用パターンCPの画像が取得される(ステップ205)。図4に示すように、移動制御部16により、収差検出装置4が、歪曲収差の検出位置に移動される。すなわち、マスクステージMSに保持された校正用マスクCMに照射され、投影光学系3からワークステージWSに向かって照射される露光光ELが入射する位置にビームスプリッタ10が配置されるように、投影光学系3とワークステージWSとの間に収差検出装置4が移動される。
【0065】
光出射部2から露光光ELが出射されると、校正用マスクCMに照射された露光光ELは、投影光学系3を介してワークステージWSに設けられた反射ミラー8に向かって進み、反射ミラー8により上方側に反射されて進む。
【0066】
図4に示すように、本実施形態では、ビームスプリッタ10が、上下方向(Z方向)に延在する露光光ELの光路に対して、交差角度が45度となるように配置される。具体的には、左上から右下に向かう斜め45度の方向に平行となるように、ビームスプリッタ10が配置される。
【0067】
光出射部2から露光光ELが出射されると、校正用マスクCMに照射された露光光ELは、投影光学系3を介して上方側からビームスプリッタ10に入射する。ビームスプリッタ10を透過し下方側に進む露光光ELは、反射ミラー8により上方側に反射される。
【0068】
上方側に反射された露光光ELは、再度ビームスプリッタ10に入射する。ビームスプリッタ10により反射された露光光ELは、左右方向(X方向)に沿って左側に向かって進む。露光光ELは、対物レンズ12を介して、光学センサ13に入射する。これにより、光学センサ13により、校正用パターンCPの画像が撮影される。もちろん、収差検出装置4の位置に対応した校正用パターンCPの一部の領域の画像が撮影される。
【0069】
次に、歪曲収差測定部17により、校正用マスクCMに基づいた歪曲収差情報が取得される(ステップ206)。本実施形態では、収差検出装置4により撮影された校正用パターンCPの一部の画像に基づいて、投影光学系3を介してワークステージWS上に結像される校正用パターンCPの像位置が、歪曲収差情報として検出される。校正用パターンCPの像位置は、校正用パターンCPの形状に対応する情報である。
【0070】
本実施形態では、校正用パターンCPの像位置は、収差検出装置4の位置情報、及び画像を構成する画素の位置情報に基づいて、座標情報として取得される。もちろん、その他の算出方法が採用されてもよい。
【0071】
校正用パターンCPの像位置を検出するために、例えば、画像サイズの換算、文字認識、形状認識、物体のモデル画像を用いたマッチング処理、エッジ検出、射影変換等の任意の画像認識技術が用いられてよい。また、例えばDNN(Deep Neural Network:深層ニューラルネットワーク)、RNN(Recurrent Neural Network:回帰型ニューラルネットワーク)、CNN(Convolutional Neural Network:畳み込みニューラルネットワーク)等を用いた任意の機械学習アルゴリズムが用いられてもよい。
【0072】
歪曲収差測定部17により取得された校正用パターンCPの画像、及び校正用パターンCPの像位置(形状)は、記憶部15に記憶される。
【0073】
図5に示すように、光出射部2による露光光ELの出射が停止される。そして、ワークステージWSに校正用ワークCWが配置される(ステップ207)。例えば、制御装置6により、ロボットアーム等(図示は省略)が駆動され、ワークステージWSに校正用ワークCWが配置される。この場合、制御装置6に機能ブロックとして、ワークステージWSへの校正用ワークCWの配置動作を制御する配置制御部(図示は省略)が構成される。もちろん、オペレータにより、校正用ワークCWが配置されてもよい。
【0074】
校正用ワークCWは、校正用パターンCPが形成されたワークである。本実施形態では、校正用ワークCWとして、校正用パターンCPが形成された基板が用いられる。校正用ワークCW(校正用基板)を、歪曲収差を測定するために基準となる基準ワーク(基準基板)と呼ぶことも可能である。
【0075】
以下、校正用マスクCMに形成された校正用パターンCP、投影光学系3を介して結像される校正用パターンCP、及び校正用ワークCWに形成される校正用パターンCPを区別して説明する際には、符号を区別して記載する。具体的には、図4及び図5に示すように、校正用マスクCMに形成された校正用パターンCP1、投影光学系3を介して結像される校正用パターンCP2、及び校正用ワークCWに形成される校正用パターンCP3と記載する。
【0076】
次に、収差検出装置4により、校正用ワークCWに形成された校正用パターンCP3の画像が取得される(ステップ208)。
【0077】
収差検出装置4は移動されず、歪曲収差の検出位置に配置されたままの状態である。そして、収差検出装置4の照明部14により、校正用ワークCWに形成された校正用パターンCP3に向かって、非露光光NELが測定光として照射される。校正用パターンCP3に照射された非露光光NELは反射され、校正用ワークCWの上方側に配置されたビームスプリッタ10に入射する。
【0078】
ビームスプリッタ10に入射する非露光光NELは反射され、左右方向(X方向)に沿って左側に向かって進む。非露光光NELは、対物レンズ12を介して、光学センサ13に入射する。これにより、光学センサ13により、校正用パターンCP3の画像が撮影される。もちろん、収差検出装置4の位置に対応した校正用パターンCP3の一部の領域の画像が撮影される。
【0079】
次に、歪曲収差測定部17により、校正用ワークCWに基づいた校正情報が取得される(ステップ209)。本実施形態では、収差検出装置4により撮影された校正用パターンCP3の一部の画像に基づいて、校正用ワークCWに形成された校正用パターンCP3の位置が、校正情報として検出される。校正用パターンCP3の位置は、校正用パターンCP3の形状に対応する情報である。
【0080】
本実施形態では、校正用パターンCP3の位置は、収差検出装置4の位置情報、及び画像を構成する画素の位置情報に基づいて、座標情報として取得される。その他の算出方法が採用されてもよく、機械学習アルゴリズム等、任意の技術が採用されてよい。
【0081】
歪曲収差測定部17により、歪曲収差情報として取得された校正用パターンCP2の像位置(形状)と、校正情報として取得された校正用パターンCP3の位置(形状)とが比較されて、投影光学系3の歪曲収差が評価される(ステップ210)。
【0082】
このように歪曲収差測定シーケンスAでは、歪曲収差測定部17により、ワークステージWSに保持された校正用パターンCP3が形成された校正用ワークWSに照射され、ビームスプリッタ10により分割されて光学センサ13に入射する非露光光NELの検出結果(校正用パターンCP3の画像)と、露光光ELの検出結果(校正用パターンCP2の画像)とを比較することで、投影光学系3の歪曲収差が測定される。
【0083】
なお、図1に示す移動制御部16は、マスクステージに保持された歪曲収差を測定するための校正用パターンが形成された校正用マスクに照射され、投影光学系からワークステージに向かって照射される露光光が入射する位置にビームスプリッタが配置されるように、投影光学系とワークステージとの間に前記収差検出装置を移動させる移動制御部の一実施形態に相当する。
【0084】
また図1に示す歪曲収差測定部17は、ビームスプリッタにより分割されて光学センサに入射する露光光の検出結果に基づいて、投影光学系の歪曲収差を測定する測定部の一実施形態に相当する。
【0085】
また図3に示す歪曲収差測定シーケンスAでは、ステップ206の校正用マスクCMに基づいた歪曲収差情報の取得ステップが、図2に示すステップ101の歪曲収差情報の取得ステップの一実施形態に相当する。またステップ209の校正用ワークCWに基づいた校正情報の取得ステップが、図2に示すステップ102の校正情報の取得ステップの一実施形態に相当する。またステップ210の歪曲収差の評価ステップが、図2に示すステップ103の歪曲収差の測定ステップの一実施形態に相当する。
【0086】
図6は、歪曲収差の測定の他の動作例を示すフローチャートである。
図6に示す例では、歪曲収差測定シーケンスBが実行される(ステップ301)。歪曲収差測定シーケンスBにより測定された評価結果に基づいて、許容範囲であるか否かの判定ステップ(ステップ302)及び投影光学系3の調整ステップ(ステップ303)が実行される。
【0087】
歪曲収差測定シーケンスBにおいて、ステップ304~306は、歪曲収差測定シーケンスAのステップ204~206と同様である。すなわち、校正用マスクCMに基づいた歪曲収差情報の取得は、歪曲収差測定シーケンスAと同様の処理により実行される。
【0088】
歪曲収差測定シーケンスBでは、歪曲収差測定部17により、記憶部15に記憶された校正情報が読み出されて取得される(ステップ307)。従って、歪曲収差測定シーケンスBを実行するためには、記憶部15に、校正用パターンCPに対応する校正情報が記憶されている必要がある。
【0089】
記憶部15に記憶される校正情報は、理想的な校正用パターンCPを示す情報である。典型的には、収差検出装置4が配置される検出位置に対応して、光学センサ13の画角に入ると想定される領域の理想的な校正用パターンCPの位置(形状)を示す座標情報が読み出される。
【0090】
ステップ308では、歪曲収差情報として取得された校正用パターンCP2の像位置(形状)と、記憶部15から読み出された校正情報とが比較されて、投影光学系3の歪曲収差が評価される。
【0091】
このように歪曲収差測定シーケンスBでは、記憶部15により、校正用パターンCPに対応する校正情報が記憶される。そして、歪曲収差測定部17により、記憶部15の校正情報と、露光光ELの検出結果(校正用パターンCP2の画像)とを比較することで、投影光学系3の歪曲収差が測定される。
【0092】
図7は、歪曲収差の測定の他の動作例を示すフローチャートである。
図7に示す例では、歪曲収差測定シーケンスCが実行される(ステップ401)。歪曲収差測定シーケンスCにより測定された評価結果に基づいて、許容範囲であるか否かの判定ステップ(ステップ402)及び投影光学系3の調整ステップ(ステップ403)が実行される。
【0093】
歪曲収差測定シーケンスCでは、校正用パターンCP3が形成された校正用ワークCWとして、ガラス等の透明材料からなる基板が用いられる。透明基板の表面に非透明色にて校正用パターンCP3が形成される。
【0094】
まず、マスクステージMSに校正用マスクCMが配置される(ステップ404)。またワークステージWSに校正用ワークCWが配置される(ステップ405)。
【0095】
移動制御部16により、収差検出装置4が、投影光学系3と校正用ワークCWとの間に移動される。そして、光出射部2から露光光ELが照射される。
【0096】
校正用マスクCMに照射された露光光ELは、投影光学系3を介して、ワークステージWSに保持された校正用ワークWSに照射される。校正用ワークWSは、透明材料からなるので、投影光学系3により結像される校正用パターンCP2の像光は、校正用ワークCWの校正用パターンCP3を照明しつつ、校正用ワークCWを透過して、ワークステージWSに設けられた反射ミラー8により反射される。
【0097】
校正用パターンCP3を照明する露光光EL(校正用パターンCP3により反射された露光光EL)、及び反射ミラー8により反射された露光光ELは、ビームスプリッタ10により反射され、左右方向(X方向)に沿って左側に向かって進む。そして露光光ELは、対物レンズ12を介して、光学センサ13に入射する。
【0098】
これにより、光学センサ13により、投影光学系3により結像された校正用パターンCP2画像、及び校正用ワークCWの校正用パターンCP3の画像が同時に、1枚の画像として撮影される(ステップ406)。もちろん、収差検出装置4の位置に対応した校正用パターンCP2及びCP3の一部の領域の画像が撮影される。
【0099】
歪曲収差測定部17により、両方の校正用パターンCP2及びCP3が同時に撮影された画像に基づいて、校正用マスクCMに基づいた歪曲収差情報と、校正用ワークCWに基づいた校正情報とが、同時に取得される(ステップ407)。
【0100】
すなわち、収差検出装置4により撮影された1枚の画像に基づいて、校正用パターンCP2の像位置、及び校正用パターンCP3の位置が、同時に検出される。任意の画像認識技術や機械学習アルゴリズム等を用いることで、両方の情報を同時に検出することが可能である。
【0101】
ステップ408では、同時に取得された歪曲収差情報及び校正情報が比較されて、投影光学系3の歪曲収差が評価される。
【0102】
このように歪曲収差測定シーケンスCでは、歪曲収差測定部17により、校正用マスクCMに照射された後に投影光学系3からワークステージWSに保持された校正用パターンCP3が形成された校正用ワークCWに照射され、ビームスプリッタ10により分割されて光学センサ13に入射する露光光ELの検出結果(校正用パターンCP2及びCP3を両方含む画像)に基づいて、投影光学系3の歪曲収差が測定される。
【0103】
なお、歪曲収差測定シーケンスCが実行される際には、測定光として非露光光NELを出射する照明部14は省略可能である。
【0104】
[収差検出装置の検出位置]
校正用パターンCPに対する収差検出装置4を移動させる検出位置の設定について説明する。図8図10は、検出位置の設定例を示す模式図である。図11図15は、歪曲収差の例を示す模式図である。
【0105】
典型的には、歪曲収差の影響が大きい校正用パターンCPの周縁の位置に、検出位置DPが設定されることが望ましい。すなわち、移動制御部16により、校正用マスクCMに照射された露光光ELが投影光学系3により結像されることで形成される校正用パターンCP2の周縁の位置に、ビームスプリッタ10が配置されるように収差検出装置4が移動されることが望ましい。
【0106】
また校正用パターンCP2の周縁の少なくとも3箇所以上の位置に、検出位置DPを設定し、収差検出装置4を移動させることが望ましい。
【0107】
図8に示す例では、校正用パターンCP2(格子パターン)の4隅のうちの3箇所に検出位置DP1~DP3が設定される。なお、図8では、検出位置DPの理解を容易とするために、校正用パターンCP2として、理想的な形状が図示されている。この点は、図9及び図10も同様である。検出位置DPの設定は、投影光学系3により露光される校正用パターンCP2に対して設定されてもよいし、使用される校正用パターンCPの理想的な形状に対して設定されてもよい。
【0108】
例えば、校正用パターンCPとして格子パターンが用いられる場合、格子パターンの周縁に検出位置DPを設定する。そして、歪曲収差を測定する際には、投影光学系3により結像された校正用パターンCP2に対して、先に設定された検出位置DPに対応する位置に、収差検出装置4が移動される。
【0109】
図8に示すように、校正用パターンCP2の周縁の3箇所に検出位置DP1~DP3を設定することで、歪曲収差の等方変倍の成分及び独立変倍の成分を測定して評価することが可能となる。
【0110】
なお、歪曲収差の等方変倍は、図11に示すように、校正用パターンCP2の全体でサイズが大きくなる変倍のことをいう。また歪曲収差の独立変倍は、図12に示すように、校正用パターンCP2が1方向に沿って伸ばされる変倍のことをいう。図12に示す例では、左右方向(X方向)に沿って校正用パターンCP2が延ばされているが、奥行方向(Y方向)に沿って伸ばされる変倍も、独立変倍に含まれる。
【0111】
図9に示す例では、校正用パターンCP2(格子パターン)の4隅となる4箇所に検出位置DP1~DP4が設定される。校正用パターンCP2の周縁の4箇所に検出位置DP1~DP4を設定することで、歪曲収差の等方変倍の成分、独立変倍の成分、及び歪曲収差の台形変倍の成分を測定して評価することが可能となる。なお、歪曲収差の台形変倍は、図13に示すように、等方変倍及び独立変倍では表すことができない線形変倍の事をいう。
【0112】
図10に示す例では、格子パターンの4隅となる4箇所、及び4辺のうちの1辺の中間の位置となる1箇所の、合計5箇所に検出位置DP1~DP5が設定される。校正用パターンCP2の周縁の5箇所に検出位置DP1~DP5を設定することで、歪曲収差の等方変倍の成分、独立変倍の成分、歪曲収差の台形変倍の成分に加えて、さらに、高次の樽型歪曲の成分及び糸巻き型歪曲の成分を測定して評価することが可能となる。
【0113】
なお樽型歪曲は、図14に示すように、4隅の位置に対して4辺の中央の位置が外側に向かって膨らむように(凸状となるように)変形する収差をいう。糸巻き型歪曲は、図15に示すように、4隅の位置に対して4辺の中央の位置が中心に向かって窪むように(凹状となるように)変形する収差をいう。
【0114】
もちろん、収差検出装置4を配置する検出位置DPの数や位置が、図8図10に示す例に限定される訳ではなく、適宜設定されてよい。
【0115】
設定された複数の検出位置DPに対して1個ずつ収差検出装置4が配置され、各検出位置DPにて校正用パターンCP2(CP3)の画像が撮影されてもよい。あるいは、これに限定されず、設定された検出位置DPよりも少ない数(例えば1個)の収差検出装置4が移動されて、各検出位置DPにおける校正用パターンCP2(CP3)の画像が、順次撮影されてもよい。
【0116】
図1図4及び図5に示す例において、収差検出装置4及び制御装置6の記憶部15、移動制御部16、及び歪曲収差測定部17は、本発明に係る、マスクステージに保持された露光用マスクに照射された露光光をワークステージに保持されたワークに照射する投影光学系の歪曲収差を測定する測定装置の一実施形態として機能する構成要素となる。すなわち、露光装置1は、本発明に係る測定を搭載した露光装置とも言える。
【0117】
露光装置1と一体的な構成となるように、本発明に係る測定装置が組み込まれてもよい。あるいは、露光装置1とは別に、収差検出装置4、記憶部15、移動制御部16、及び歪曲収差測定部17を具備する測定装置が、独立して構成されてもよい。そして、露光装置1に対して測定装置が、適宜組み込まれてもよい。あるいは、収差検出装置4のみが、露光装置1に対して交換可能に組み込まれてもよい。
【0118】
また、収差検出装置4に、記憶部15、移動制御部16、及び歪曲収差測定部17の機能が組み込まれてもよい。すなわち、収差検出装置4と制御装置6とが一体的に構成されてもよい。
【0119】
以上、本実施形態に係る露光装置1(測定装置)では、校正用マスクCMに照射され投影光学系3を介して照射される露光光ELが入射する位置にビームスプリッタ10が配置されるように、投影光学系3とワークステージWSとの間に収差検出装置4が移動される。そして、収差検出装置4の光学センサ13により検出される、ビームスプリッタ10により分割された露光光ELの検出結果に基づいて、投影光学系3の歪曲収差が測定される。これにより、投影光学系3の歪曲収差を高い精度で測定することが可能となる。
【0120】
露光装置1に組み込まれる投影光学系3は熱や紫外線等により劣化するため、定期的(例えば3~6ヶ月毎)に歪曲収差を測定(評価)し、校正する必要があった。近年では、回路パターンの微細化、重ね合わせ精度の高精度化により、より高頻度で簡便に精度よく測定(評価)することが求められている。
【0121】
例えば、投影光学系3の歪曲収差を測定する方法として、露光装置1を用いて露光及び現像の工程により基板上に作成した校正用パターンCPを、外部計測器を用いて行う方法がある。この測定方法では、露光装置1と外部計測器との間で基板を搬送する手間や外部計測器の空き時間待ちが生じる等の問題がある。
【0122】
本発明に係る露光装置1(測定装置)では、露光及び現像の工程を行うことなく、校正用マスクCMに照射され投影光学系3により結像される校正用パターンCP2を、収差検出装置4により直接的に検出することが可能である。これにより、高頻度で簡便に精度よく歪曲収差を測定(評価)することが可能である。
【0123】
露光及び現像の工程が不要であるので、例えば、通常のワークWに対するマスクパターンMPの露光シーケンスに、図3図6図7等に例示した歪曲収差測定シーケンスA~Cを容易に組み込むことが可能であり、歪曲収差の評価結果に基づいて、投影光学系3の調整を行うことが可能である。この結果、歪曲収差の評価によるダウンタイムを抑制することが可能となる。
【0124】
例えば、図3に示す歪曲収差測定シーケンスAでは、校正用マスクCM及び校正用ワークCWを、露光装置1内の所定の位置(露光シーケンスを妨げない位置)に待機させておく。例えば、所定の回数の露光工程が行われるごとに、制御装置6の配置制御部により、マスクステージMSに校正用マスクCMが配置され、ワークステージWSに校正用ワークCWが配置される。そして、移動制御部16により、収差検出装置4が所定の検出位置DPに配置され、歪曲収差情報及び校正情報が検出される。歪曲収差測定部17により、検出された歪曲収差情報及び校正情報に基づいて、投影光学系3の歪曲収差が評価される。このような処理も可能である。もちろん、任意のタイミングで、歪曲収差の測定(評価)が行われてもよい。
【0125】
図6に示す歪曲収差測定シーケンスBでは、マスクステージMSに校正用マスクCMを配置することで、投影光学系3の歪曲収差を測定(評価)することが可能である。
【0126】
図7に示す歪曲収差測定シーケンスCでは、露光光ELの1度の照射で、投影光学系3の歪曲収差を測定(評価)することが可能である。
【0127】
歪曲収差測定シーケンスA~Cを比較すると、測定精度の向上という観点では、歪曲収差測定シーケンスAが有利である。測定工程の簡素化、時間の短縮化という観点では、歪曲収差測定シーケンスBが有利である。歪曲収差測定シーケンスCは、測定精度の向上、測定工程の簡素化、単純化の両方の観点にて、高い効果を発揮する。
【0128】
歪曲収差を評価する上で、歪曲収差測定シーケンスA~Cが適宜組み合わされて実行されてもよい。例えば、A→B、A→C、B→A、B→C、C→A、C→Bといった順番で2回歪曲収差が評価されてもよい。もちろん、1回目の評価結果が許容範囲ではない場合に、2回目の歪曲収差の評価が行われてもよい。
【0129】
3回以上歪曲収差の評価が行われる場合で、歪曲収差測定シーケンスA~Cのうち任意の組み合わせ及び任意の順番で、歪曲収差が評価されてもよい。例えば、測定精度の向上、測定工程の簡素化、単純化等の観点に基づいて、適宜、歪曲測定シーケンスの組み合わせ及び順番が決定されてよい。
【0130】
[アライメント顕微鏡との兼用]
本発明に係る収差検出装置4を、マスクMとワークWとの位置合わせを行うためのアライメント顕微鏡として用いることが可能である。すなわち、投影光学系3の歪曲収差を測定するための収差検出装置4と、マスクMとワークWとの位置合わせを行うためのアライメント顕微鏡を兼用することが可能である。
【0131】
図16及び図17は、収差検出装置4をアライメント顕微鏡として用いた場合の、アライメントマークの検出動作例を説明するための模式図である。まず図16に示すように、マスクステージMSにマスクMが配置される。ワークステージWSには、ワークWは配置されない。従って、ワークステージWSの載置面7に設けられた反射ミラー8が上方側に向けて露出している。
【0132】
図16に示すように、収差検出装置4が、アライメントマークの撮影位置に移動される。アライメントマークの撮影位置は、投影光学系3とワークステージWS(ワークW)との間に設定されている。アライメントマークの撮影位置は、マスクマークMAMに照射された露光光ELの光路上の位置であり、及びワークマークWAMに照射された非露光光NELの光路上の位置となるように設定される。
【0133】
光出射部2から露光光ELが出射されると、マスクマークMAMに照射された露光光ELは、投影光学系及びビームスプリッタ10を介して、ワークステージWSに向かって進み、反射ミラー8により上方側に反射される。
【0134】
反射された露光光ELは、ビームスプリッタ10により反射され左右方向(X方向)に沿って左側に向かって進み、光学センサ13に入射する。これにより、光学センサ13により、マスクマークMAMの画像が撮影される。
【0135】
制御装置6の位置検出部18は、収差検出装置4の光学センサ13により撮影されたマスクマークMAMの画像に基づいて、マスクマークMAMの位置を検出する。また、位置検出部18は、光学センサ13により撮影されたマスクマークMAMの画像を取り込み、モニタ5に表示させることも可能である。
【0136】
本実施形態では、位置検出部18により、マスクマークMAMの中心位置の座標が、マスクマークMAMの位置として検出される。もちろん、マスクマークMAMの形状や、マスクマークMAMのどの部分の位置をマスクマークMAMの位置として算出するかは限定されず、任意に設定されてよい。またマスクマークMAMの位置を検出するための処理方法としても限定されず、任意の画像認識技術や機械学習アルゴリズム等が用いられてよい。
【0137】
位置検出部18により取得されたマスクマークMAMの画像、及び位置検出部18により検出されたマスクマークMAMの位置(中心位置座標)は、記憶部15に記憶される。
【0138】
図17に示すように、光出射部2による露光光ELの出射が停止される。そして、ワークステージWSにワークWが配置される。
【0139】
収差検出装置4は移動されず、アライメントマークの撮影位置に配置されたままの状態である。そして、収差検出装置の照明部14により、ワークマークWAMに向かって非露光光NELが照射される。ワークマークWAMに照射された非露光光NELは、ワークマークWAMにより反射され、ワークマークWAMの上方側に配置されたビームスプリッタ10に入射する。
【0140】
ビームスプリッタ10に入射する非露光光NELは反射され、左右方向(X方向)に沿って左側に向かって進み、光学センサ13に入射する。これにより、光学センサ13により、ワークマークWAMの画像が撮影される。
【0141】
制御装置6の位置検出部18は、収差検出装置4の光学センサ13により撮影されたワークマークWAMの画像に基づいて、ワークマークWAMの位置を検出する。また位置検出部18は、光学センサ13により撮影されたワークマークWAMの画像を取り込み、モニタ5に表示させることも可能である。
【0142】
ワークマークWAMの形状や、ワークマークWAMのどの部分の位置をワークマークWAMの位置として算出するかは限定されず、任意に設定されてよい。例えば、マスクマークMAMと同じ形状で、ワークマークWAMが構成されてもよい。
【0143】
位置検出部18により取得されたワークマークWAMの画像、及び位置検出部18により検出されたワークマークWAMの位置(中心位置座標)は、記憶部15に記憶される。
【0144】
位置検出部18により、マスクマークMAM及びワークマークWAMの位置関係が所定の位置関係となるように、ワークステージWSが制御される。本実施形態では、マスクマークMAMの位置(中心位置座標)と、ワークマークWAMの位置(中心位置座標)とが一致するように、マスクステージWSが駆動され、マスクMに対するワークWの相対位置が制御される。
【0145】
左右方向(X方向)、奥行方向(Y方向)、及び上下方向(Z方向)を回転軸方向とする回転方向において、マスクMとワークWとの位置合わせを行うために、マスクMに対して3個以上のマスクマークMAMを形成することが望ましい。3個以上のマスクマークMAMに対応して、ワークWに同数のワークマークWAMが形成される。
【0146】
例えば、上下方向(Z方向)から見た場合に、矩形状となるマスクMが用いられるとする。この場合、例えば、マスクMの4隅に、マスクマークMAMが形成される。また上下方向(Z方向)から見た場合に、矩形状となる基板がワークWとして配置される。マスクMの4隅に形成されたマスクマークMAMに対応して、ワークWの4隅にワークマークWAMが形成される。もちろん、このような構成に限定されるわけではない。
【0147】
互いに対応するマスクマークMAM及びワークマークWAMは、上下方向(Z方向)から見た場合にマスクM及びワークWが所望の位置関係となる場合に、所定の位置関係となるように形成される。本実施形態では、マスクM及びワークWが所望の位置関係となる場合に、互いに対応するマスクマークMAM及びワークマークWAMが同じ位置となるものとして説明を行う。もちろんそのような設定に限定されず、所定の位置関係として、任意の位置関係が設定されてよい。
【0148】
例えば、互いに対応するマスクマークMAM及びワークマークWAMの各組に対して1個ずつ収差検出装置4が配置され、アライメントマークMAMの画像及びワークマークWMAの画像が撮影される。これに限定されず、マスクマークMAM及びワークマークWAMの組数よりも少ない数(例えば1個)の収差検出装置4により、マスクマークMAMの画像及びワークマークWAMの画像が順次撮影されてもよい。
【0149】
例えば、互いに対応するマスクマークMAM及びワークマークWAMを撮影する撮影位置にて、歪曲収差を測定するための校正用パターンCP2(CP3)の画像が撮影可能なように、校正用パターンCPを形成する。
【0150】
このような場合には、投影光学系3の歪曲収差を測定するために移動制御部16により移動される収差検出装置4の検出位置DPと、マスクマークMAMの位置及びワークマークWAMの位置の各々を検出するために移動制御部16により移動される収差検出装置4の撮影位置とを、互いに等しい位置に設定することも可能である。
【0151】
従って、移動制御部16による収差検出装置4の移動制御は、歪曲収差の測定時と、マスクMとワークWとの位置合わせ時とで、互いに同じ制御となる。この結果、処理の簡素化、処理負荷の軽減等を図ることが可能となる。
【0152】
<その他の実施形態>
本発明は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態を実現することができる。
【0153】
本発明に係る露光装置を用いて露光を行うことで、所定のパターンが形成された種々の基板を、部品として製造することが可能となる。例えば、部品として、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等を製造することが可能である。
電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性あるいは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0154】
上記では、ビームスプリッタ10、対物レンズ12、及び光学センサ13を備える収差検出装置4が、1つのユニットとして構成される場合を例に挙げた。これに限定されず、通常の露光工程を妨げないことを条件に、ビームスプリッタ10、対物レンズ12、及び光学センサ13のうちのいずれかの構成要素が、露光装置1側に固定されてもよい。例えば、光学センサ13や対物レンズ12が固定され、ビームスプリッタ10を含むユニットが移動可能に構成されてもよい。その他、様々な構成が採用されてよい。
【0155】
各図面を参照して説明した露光装置、測定装置、収差検出装置、ビームスプリッタ、制御装置等の各構成、歪曲収差測定シーケンス等はあくまで一実施形態であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、任意に変形可能である。すなわち本発明を実施するための他の任意の構成、処理フロー、アルゴリズム等が採用されてよい。
【0156】
本開示において、説明の理解を容易とするために、「略」「ほぼ」「おおよそ」等の文言が適宜使用されている。一方で、これら「略」「ほぼ」「おおよそ」等の文言を使用する場合と使用しない場合とで、明確な差異が規定されるわけではない。
すなわち、本開示において、「中心」「中央」「均一」「等しい」「同じ」「直交」「平行」「対称」「延在」「軸方向」「円柱形状」「円筒形状」「リング形状」「円環形状」等の、形状、サイズ、位置関係、状態等を規定する概念は、「実質的に中心」「実質的に中央」「実質的に均一」「実質的に等しい」「実質的に同じ」「実質的に直交」「実質的に平行」「実質的に対称」「実質的に延在」「実質的に軸方向」「実質的に円柱形状」「実質的に円筒形状」「実質的にリング形状」「実質的に円環形状」等を含む概念とする。
例えば「完全に中心」「完全に中央」「完全に均一」「完全に等しい」「完全に同じ」「完全に直交」「完全に平行」「完全に対称」「完全に延在」「完全に軸方向」「完全に円柱形状」「完全に円筒形状」「完全にリング形状」「完全に円環形状」等を基準とした所定の範囲(例えば±10%の範囲)に含まれる状態も含まれる。
従って、「略」「ほぼ」「おおよそ」等の文言が付加されていない場合でも、いわゆる「略」「ほぼ」「おおよそ」等を付加して表現され得る概念が含まれ得る。反対に、「略」「ほぼ」「おおよそ」等を付加して表現された状態について、完全な状態が必ず排除されるというわけではない。
【0157】
本開示において、「Aより大きい」「Aより小さい」といった「より」を使った表現は、Aと同等である場合を含む概念と、Aと同等である場合を含なまい概念の両方を包括的に含む表現である。例えば「Aより大きい」は、Aと同等は含まない場合に限定されず、「A以上」も含む。また「Aより小さい」は、「A未満」に限定されず、「A以下」も含む。
本技術を実施する際には、上記で説明した効果が発揮されるように、「Aより大きい」及び「Aより小さい」に含まれる概念から、具体的な設定等を適宜採用すればよい。
【0158】
以上説明した本技術に係る特徴部分のうち、少なくとも2つの特徴部分を組み合わせることも可能である。すなわち各実施形態で説明した種々の特徴部分は、各実施形態の区別なく、任意に組み合わされてもよい。また上記で記載した種々の効果は、あくまで例示であって限定されるものではなく、また他の効果が発揮されてもよい。
【符号の説明】
【0159】
CM…校正用マスク
CP(CP1~CP3)…校正用パターン
CW…校正用ワーク
DP(DP1~DP5)…検出位置
EL…露光光
M…露光用マスク(マスク)
MAM…マスクマーク
MS…マスクステージ
NEL…非露光光(測定光)
W…ワーク
WAM…ワークマーク
WS…ワークステージ
1…露光装置
2…光出射部
3…投影光学系
4…収差検出装置
10…ビームスプリッタ
13…光学センサ
15…記憶部
16…移動制御部
17…歪曲収差測定部
18…位置合検出部
図1
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