(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118519
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システム、及び拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システムの運用方法
(51)【国際特許分類】
B63C 11/00 20060101AFI20240826BHJP
B63C 11/48 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
B63C11/00 C
B63C11/48 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024836
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】501204525
【氏名又は名称】国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠野 雅彦
(57)【要約】
【課題】水中航走体と水上中継機とが情報伝送線で連結されるシステムにおいて、水中航走体を用いて点検対象物の点検を行う際に、情報伝送線が引っ掛かるトラブルを避けることのできる拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システムを提供する。
【解決手段】第1水中航走体100と、第2水中航走体102と、水上中継機200を備え、撮像手段で撮像した画像情報を水中光通信により第2水中航走体102から第1水中航走体100へ送信し、第1水中航走体100と水上中継機200とを連結した情報伝送線24によって第1水中航走体100で受信した画像情報を水上中継機200で伝送し、第1水中航走体100によって第2水中航走体102を追尾させるとともに、水上中継機200と情報伝送線24と第1水中航走体100を介して第2水中航走体102に指示を伝える構成とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中の点検対象物を点検するための拡張可能な水中航走体を有する水中航走体-水上中継機連結システムであって、
航走体位置推定手段を有した第1水中航走体と、
前記点検対象物を撮像するための撮像手段を有した第2水中航走体と、
前記撮像手段で撮像した画像情報を水中光通信により前記第1水中航走体に送信する前記第2水中航走体に設けた光送信手段と、
前記第1水中航走体に設けた前記画像情報を受信する光受信手段と、
中継機推進手段と中継機位置計測手段を有し水面近傍を移動可能な水上中継機と、
前記第1水中航走体と前記水上中継機とを連結し前記第1水中航走体で受信した前記画像情報の伝送を行う情報伝送線と、
前記第2水中航走体と前記第1水中航走体と前記水上中継機とを制御する制御手段とを備え、
前記制御手段が、前記第1水中航走体を前記第2水中航走体と所定の距離範囲内及び所定の相対方位範囲内を保ちながら追尾させるとともに、前記水上中継機と前記情報伝送線と前記第1水中航走体を介して前記第2水中航走体に指示を伝えることで前記点検対象物を撮像する制御を行うことを特徴とする拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システム。
【請求項2】
請求項1に記載の拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システムであって、
前記点検対象物は、周囲に線状構造部を有した洋上風力発電設備を含む海洋構造物であり、前記情報伝送線が前記線状構造部と交差しないように、前記所定の距離範囲内及び前記所定の相対方位範囲内を保って前記第1水中航走体の追尾する位置を制御することを特徴とする拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システム。
【請求項3】
請求項1に記載の拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システムであって、
前記水上中継機と前記第1水中航走体に目標緯度及び目標経度を設定する位置設定手段を有した母船を備え、
前記母船と前記水上中継機とが無線通信を利用して前記目標緯度及び前記目標経度及び前記画像情報を含む情報の伝送を行うことを特徴とする拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システム。
【請求項4】
請求項3に記載の拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システムであって、
前記第1水中航走体は、前記第2水中航走体を握持する握持手段を有し、
前記制御手段は、前記位置設定手段で設定された前記目標緯度及び前記目標経度と前記中継機位置計測手段で計測された水上位置とに基づいて前記水上中継機の位置を制御するとともに、前記第1水中航走体の位置を前記航走体位置推定手段で推定された水中位置に基づいて制御し、前記第1水中航走体と前記水上中継機とを前記目標緯度及び前記目標経度まで鉛直位置関係を保持しながら並走させる制御を行うことを特徴とする拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システム。
【請求項5】
請求項4に記載の拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システムであって、
前記制御手段は、前記握持手段によって前記第1水中航走体が前記第2水中航走体を握持する際、前記第1水中航走体に設けられた撮像手段によって前記第2水中航走体を撮像する制御を行うことを特徴とする拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システム。
【請求項6】
請求項5に記載の拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システムであって、
前記第1水中航走体が、前記第2水中航走体を握持する際、前記制御手段が、前記第2水中航走体に設けた前記光送信手段と、前記第1水中航走体に設けた前記光受信手段とにより、前記撮像手段による前記第2水中航走体の撮影映像を水中光通信する制御を行うことを特徴とする拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システム。
【請求項7】
請求項4に記載の拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システムであって、
前記第1水中航走体と前記水上中継機が、設定された前記目標緯度及び前記目標経度に存在する前記点検対象物の近傍に到達したときに、前記制御手段が、前記第1水中航走体の前記握持手段を解除して前記第2水中航走体を開放し、前記第2水中航走体を前記点検対象物に接近させて点検する制御を行うことを特徴とする拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システム。
【請求項8】
請求項1に記載の拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システムであって、
前記第1水中航走体が、前記第2水中航走体の位置を検出するための撮像手段を含む位置検出手段を有し、前記制御手段が、検出された前記第2水中航走体の前記位置を追尾するように前記第1水中航走体及び前記水上中継機の位置を修正する制御を行うことを特徴とする拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システム。
【請求項9】
請求項8に記載の拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システムであって、
前記第1水中航走体が、前記第2水中航走体を照射する第1の照明手段を前記光受信手段と同じ側に有したことを特徴とする拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システム。
【請求項10】
請求項9に記載の拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システムであって、
前記水中光通信の波長と、前記第1水中航走体の前記第1の照明手段の波長とを異ならせたことを特徴とする拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システム。
【請求項11】
請求項9に記載の拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システムであって、
前記第1水中航走体の前記撮像手段に短波長カットフィルタを含む光学フィルタを設け、前記光学フィルタによって前記水中光通信の波長の光を減衰させて、前記第1水中航走体の前記撮像手段による撮影への前記水中光通信の光の影響を低減させることを特徴とする拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システム。
【請求項12】
請求項1に記載の拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システムであって、
前記第2水中航走体が、前記点検対象物を照射する第2の照明手段を前記光送信手段と反対側に有したことを特徴とする請求項1に記載の拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システム。
【請求項13】
請求項1に記載の拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システムであって、
前記制御手段が、WP(Way Point)航行モード、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)航行モード、遠隔操作航行モードのいずれかにより、前記第2水中航走体、前記第1水中航走体、及び前記水上中継機の航行を制御可能であることを特徴とする拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システム。
【請求項14】
請求項13に記載の拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システムであって、
前記遠隔操作航行モードにおいて、オペレータによって少なくとも前記第2水中航走体の遠隔操作が可能であることを特徴とする拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システム。
【請求項15】
請求項1に記載の拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システムであって、
前記中継機位置計測手段は、衛星測位システム(GNSS)受信機と姿勢方位基準装置(AHRS)を有したことを特徴とする拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システム。
【請求項16】
請求項1に記載の拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システムであって、
前記航走体位置推定手段は、慣性航法装置(INS)とドップラー対地速度計(DVL)、又は姿勢方位基準装置(AHRS)とドップラー対地速度計(DVL)を有したことを特徴とする拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システム。
【請求項17】
請求項1に記載の拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システムであって、
前記水上中継機が水上カメラと水中カメラを有し、前記水上カメラで水上の周辺の水域を撮像するとともに、前記水中カメラで前記情報伝送線を撮像し、前記制御手段が、前記周辺の水域の水域撮像情報との伝送線撮像情報を伝送する制御を行うことを特徴とする拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システム。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項に記載の拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システムの運用方法であって、
前記第2水中航走体を保有した前記第1水中航走体を水中に投入する航走体投入ステップと、
前記水上中継機を水面に投入する中継機投入ステップと、
前記水上中継機と前記第1水中航走体とを鉛直位置関係に臨ませる鉛直位置確保ステップと、
前記水上中継機の水上位置を情報伝送線を介して前記第1水中航走体に伝送し、前記第1水中航走体の水中位置の初期位置として入力する初期位置入力ステップと、
前記水上中継機に前記点検対象物の目標緯度及び目標経度を設定する目標位置設定ステップと、
設定された前記目標緯度及び前記目標経度を前記情報伝送線を介して前記第1水中航走体に伝送し入力する目標位置入力ステップと、
前記目標緯度及び前記目標経度に前記水上中継機と前記第1水中航走体が前記鉛直位置関係を保持しながら並走して向かうように制御する航走制御ステップと、
前記目標緯度及び前記目標経度の周辺に到達後に前記第1水中航走体が保有した前記第2水中航走体を開放する航走体開放ステップとを有することを特徴とする拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システムの運用方法。
【請求項19】
請求項18に記載の拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システムの運用方法であって、
前記航走体開放ステップの後、オペレータが前記第2水中航走体が撮像した画像情報を見ながら前記第2水中航走体の位置を操作し、前記点検対象物を点検する点検ステップを有することを特徴とする拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システムの運用方法。
【請求項20】
請求項19に記載の拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システムの運用方法であって、
前記点検ステップにおける前記オペレータの前記操作に従った前記第2水中航走体の移動に伴い、前記第1水中航走体が前記第2水中航走体を追尾しながら、前記情報伝送線を介して前記第2水中航走体から水中光通信で送信されてくる前記画像情報を送信する追尾ステップを有することを特徴とする拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システムの運用方法。
【請求項21】
請求項20に記載の拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システムの運用方法であって、
前記第1水中航走体の移動に伴い前記情報伝送線の余裕がなくなった場合に、前記第1水中航走体に追従して前記水上中継機を移動する中継機追従ステップを有することを特徴とする拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システムの運用方法。
【請求項22】
請求項3を引用する請求項18に記載の拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システムの運用方法であって、
母船と前記水上中継機との距離が遠く、無線通信が通らない場合、前記水上中継機を前記母船との通信が可能な位置に移動する中継機移動ステップを有することを特徴とする拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システムの運用方法。
【請求項23】
請求項3を引用する請求項18に記載の拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システムの運用方法であって、
揚収時にオペレータの操作により、前記第2水中航走体を前記第1水中航走体の近傍まで移動させ、前記第1水中航走体に前記第2水中航走体を保有させる航走体保有ステップと、
前記水上中継機と前記第1水中航走体を前記母船の近傍まで移動させ、前記水上中継機を前記母船に揚収し、前記情報伝送線を手繰って前記第1水中航走体及び保有した前記第2水中航走体を前記母船に収容する揚収ステップを有することを特徴とする拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システムの運用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡張可能な水中航走体と水上中継機とを連結した水中航走体-水上中継機連結システム及びその運用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自然エネルギーの供給源として、洋上風力発電等による沿岸利用が注目を集めている。それに伴って、水中の設備点検の必要性も高まりつつある。そこで、水中を航走する水中航走体および水中航走体と連結しているケーブルの位置を高い精度で制御する技術が必要とされている。
【0003】
水上中継機と水中航走体とをケーブルで接続し、水中航走体で得られた画像情報を含む取得情報の伝送を行う情報伝送線と、水上中継機と水中航走体に目標緯度及び目標経度を設定する位置設定手段と、を備えた水中航走体-水上中継機連結システムが開示されている。設定された目標緯度及び目標経度と中継機位置計測手段で計測された水上位置に基づいて中継機推進手段を駆動し、水上中継機の位置を制御するとともに、設定された目標緯度及び目標経度と航走体位置推定手段で推定された水中位置に基づいて水中航走体の位置を制御することで、水中航走体と水上中継機が目標緯度及び目標経度まで水面と水中における鉛直位置関係を保持しながら並走する。(特許文献1)
【0004】
一方、可視光を用いて、水中移動体と海底等に設置された観測装置との間で可視光を授受することによって情報のやりとりを行う光通信システムが開示されている。(特許文献2)
【0005】
また、複数種の波長の可視光を用いることによって、水質の状況に応じて可視光の波長を変えることで通信を確実にすると共に、バッテリによる駆動時間を延ばすことができる水中可視光通信システムが開示されている。(特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-145659号公報
【特許文献2】国際公開第2021/152679号パンフレット
【特許文献3】特開2009-278455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の水中航走体-水上中継機連結システムでは、浮体式洋上風力発電設備等、係留索や複雑な構造を有する海中構造物を点検する際に、水上中継機と水中航走体とを繋ぐケーブルが係留索や構造物に引っ掛かる等のトラブルが生ずるおそれがあった。そこで、このようなトラブルを避けることができる水中航走体-水上中継機連結システム及びその運用方法が必要とされている。
【0008】
本願発明は、水中航走体と水上中継機とが情報伝送線で連結されるシステムにおいて、水中航走体を用いて点検対象物の点検を行う際に、情報伝送線が引っ掛かるトラブルを避けることのできる拡張可能な水中航走体-水上中継機連結システム及びその運用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に対応した拡張可能な水上中継機と水中航走体との連結システムは、水中の点検対象物を点検するための拡張可能な水中航走体を有する水中航走体-水上中継機連結システムであって、航走体位置推定手段を有した第1水中航走体と、前記点検対象物を撮像するための撮像手段を有した第2水中航走体と、前記撮像手段で撮像した画像情報を水中光通信により前記第1水中航走体に送信する前記第2水中航走体に設けた光送信手段と、前記第1水中航走体に設けた前記画像情報を受信する光受信手段と、中継機推進手段と中継機位置計測手段を有し水面近傍を移動可能な水上中継機と、前記第1水中航走体と前記水上中継機とを連結し前記第1水中航走体で受信した前記画像情報の伝送を行う情報伝送線と、前記第2水中航走体と前記第1水中航走体と前記水上中継機とを制御する制御手段とを備え、前記制御手段が、前記第1水中航走体を前記第2水中航走体と所定の距離範囲内及び所定の相対方位範囲内を保ちながら追尾させるとともに、前記水上中継機と前記情報伝送線と前記第1水中航走体を介して前記第2水中航走体に指示を伝えることで前記点検対象物を撮像する制御を行うことを特徴とする。
【0010】
ここで、前記点検対象物は、周囲に線状構造部を有した洋上風力発電設備を含む海洋構造物であり、前記情報伝送線が前記線状構造部と交差しないように、前記所定の距離範囲内及び前記所定の相対方位範囲内を保って前記第1水中航走体の追尾する位置を制御することが好適である。
【0011】
また、前記水上中継機と前記第1水中航走体に目標緯度及び目標経度を設定する位置設定手段を有した母船を備え、前記母船と前記水上中継機とが無線通信を利用して前記目標緯度及び前記目標経度及び前記画像情報を含む情報の伝送を行うことが好適である。
【0012】
また、前記第1水中航走体は、前記第2水中航走体を握持する握持手段を有し、前記制御手段は、前記位置設定手段で設定された前記目標緯度及び前記目標経度と前記中継機位置計測手段で計測された水上位置とに基づいて前記水上中継機の位置を制御するとともに、前記第1水中航走体の位置を前記航走体位置推定手段で推定された水中位置に基づいて制御し、前記第1水中航走体と前記水上中継機とを前記目標緯度及び前記目標経度まで鉛直位置関係を保持しながら並走させる制御を行うことが好適である。
【0013】
また、前記制御手段は、前記握持手段によって前記第1水中航走体が前記第2水中航走体を握持する際、前記第1水中航走体に設けられた撮像手段によって前記第2水中航走体を撮像する制御を行うことが好適である。
【0014】
また、前記第1水中航走体が、前記第2水中航走体を握持する際、前記制御手段が、前記第2水中航走体に設けた前記光送信手段と、前記第1水中航走体に設けた前記光受信手段とにより、前記撮像手段による前記第2水中航走体の撮影映像を水中光通信する制御を行うことが好適である。
【0015】
また、前記第1水中航走体と前記水上中継機が、設定された前記目標緯度及び前記目標経度に存在する前記点検対象物の近傍に到達したときに、前記制御手段が、前記第1水中航走体の前記握持手段を解除して前記第2水中航走体を開放し、前記第2水中航走体を前記点検対象物に接近させて点検する制御を行うことが好適である。
【0016】
また、前記第1水中航走体が、前記第2水中航走体の位置を検出するための撮像手段を含む位置検出手段を有し、前記制御手段が、検出された前記第2水中航走体の前記位置を追尾するように前記第1水中航走体及び前記水上中継機の位置を修正する制御を行うことが好適である。
【0017】
また、前記第1水中航走体が、前記第2水中航走体を照射する第1の照明手段を前記光受信手段と同じ側に有したことが好適である。
【0018】
また、前記水中光通信の波長と、前記第1水中航走体の前記第1の照明手段の波長とを異ならせたことが好適である。
【0019】
また、前記第1水中航走体の前記撮像手段に短波長カットフィルタを含む光学フィルタを設け、前記光学フィルタによって前記水中光通信の波長の光を減衰させて、前記第1水中航走体の前記撮像手段による撮影への前記水中光通信の光の影響を低減させることが好適である。
【0020】
また、前記第2水中航走体が、前記点検対象物を照射する第2の照明手段を前記光送信手段と反対側に有したことが好適である。
【0021】
また、前記制御手段が、WP(Way Point)航行モード、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)航行モード、遠隔操作航行モードのいずれかにより、前記第2水中航走体、前記第1水中航走体、及び前記水上中継機の航行を制御可能であることが好適である。
【0022】
また、前記遠隔操作航行モードにおいて、オペレータによって少なくとも前記第2水中航走体の遠隔操作が可能であることが好適である。
【0023】
また、前記中継機位置計測手段は、衛星測位システム(GNSS)受信機と姿勢方位基準装置(AHRS)を有したことが好適である。
【0024】
また、前記航走体位置推定手段は、慣性航法装置(INS)とドップラー対地速度計(DVL)、又は姿勢方位基準装置(AHRS)とドップラー対地速度計(DVL)を有したことが好適である。
【0025】
また、前記水上中継機が水上カメラと水中カメラを有し、前記水上カメラで水上の周辺の水域を撮像するとともに、前記水中カメラで前記情報伝送線を撮像し、前記制御手段が、前記周辺の水域の水域撮像情報との伝送線撮像情報を伝送する制御を行うことが好適である。
【0026】
また、上記水中航走体-水上中継機連結システムの運用方法であって、前記第2水中航走体を保有した前記第1水中航走体を水中に投入する航走体投入ステップと、前記水上中継機を水面に投入する中継機投入ステップと、前記水上中継機と前記第1水中航走体とを鉛直位置関係に臨ませる鉛直位置確保ステップと、前記水上中継機の水上位置を情報伝送線を介して前記第1水中航走体に伝送し、前記第1水中航走体の水中位置の初期位置として入力する初期位置入力ステップと、前記水上中継機に前記点検対象物の目標緯度及び目標経度を設定する目標位置設定ステップと、設定された前記目標緯度及び前記目標経度を前記情報伝送線を介して前記第1水中航走体に伝送し入力する目標位置入力ステップと、前記目標緯度及び前記目標経度に前記水上中継機と前記第1水中航走体が前記鉛直位置関係を保持しながら並走して向かうように制御する航走制御ステップと、前記目標緯度及び前記目標経度の周辺に到達後に前記第1水中航走体が保有した前記第2水中航走体を開放する航走体開放ステップとを有することを特徴とする。
【0027】
ここで、前記航走体開放ステップの後、オペレータが前記第2水中航走体が撮像した画像情報を見ながら前記第2水中航走体の位置を操作し、前記点検対象物を点検する点検ステップを有することが好適である。
【0028】
また、前記点検ステップにおける前記オペレータの前記操作に従った前記第2水中航走体の移動に伴い、前記第1水中航走体が前記第2水中航走体を追尾しながら、前記情報伝送線を介して前記第2水中航走体から水中光通信で送信されてくる前記画像情報を送信する追尾ステップを有することが好適である。
【0029】
また、前記第1水中航走体の移動に伴い前記情報伝送線の余裕がなくなった場合に、前記第1水中航走体に追従して前記水上中継機を移動する中継機追従ステップを有することが好適である。
【0030】
また、母船と前記水上中継機との距離が遠く、無線通信が通らない場合、前記水上中継機を前記母船との通信が可能な位置に移動する中継機移動ステップを有することが好適である。
【0031】
また、揚収時にオペレータの操作により、前記第2水中航走体を前記第1水中航走体の近傍まで移動させ、前記第1水中航走体に前記第2水中航走体を保有させる航走体保有ステップと、前記水上中継機と前記第1水中航走体を前記母船の近傍まで移動させ、前記水上中継機を前記母船に揚収し、前記情報伝送線を手繰って前記第1水中航走体及び保有した前記第2水中航走体を前記母船に収容する揚収ステップを有することが好適である。
【発明の効果】
【0032】
請求項1に対応した拡張可能な水上中継機と水中航走体との連結システムによれば、水中の点検対象物を点検するための拡張可能な水中航走体を有する水中航走体-水上中継機連結システムであって、航走体位置推定手段を有した第1水中航走体と、前記点検対象物を撮像するための撮像手段を有した第2水中航走体と、前記撮像手段で撮像した画像情報を水中光通信により前記第1水中航走体に送信する前記第2水中航走体に設けた光送信手段と、前記第1水中航走体に設けた前記画像情報を受信する光受信手段と、中継機推進手段と中継機位置計測手段を有し水面近傍を移動可能な水上中継機と、前記第1水中航走体と前記水上中継機とを連結し前記第1水中航走体で受信した前記画像情報の伝送を行う情報伝送線と、前記第2水中航走体と前記第1水中航走体と前記水上中継機とを制御する制御手段とを備え、前記制御手段が、前記第1水中航走体を前記第2水中航走体と所定の距離範囲内及び所定の相対方位範囲内を保ちながら追尾させるとともに、前記水上中継機と前記情報伝送線と前記第1水中航走体を介して前記第2水中航走体に指示を伝えることで前記点検対象物を撮像する制御を行うことによって、前記第2水中航走体が情報伝送線を有していないため前記点検対象物に引っ掛かる等の障害を発生させることなく、前記点検対象物に対して点検や作業をすることができる。また、前記水上中継機を介して前記第2水中航走体で取得された撮像画像等の大容量の画像情報を母船等に高速かつ安定に伝送することができる。
【0033】
ここで、前記点検対象物は、周囲に線状構造部を有した洋上風力発電設備を含む海洋構造物であり、前記情報伝送線が前記線状構造部と交差しないように、前記所定の距離範囲内及び前記所定の相対方位範囲内を保って前記第1水中航走体の追尾する位置を制御することによって、前記第2水中航走体が前記線状構造部に引っ掛かることなく、さらに前記第1水中航走体と前記水上中継機とを繋ぐ前記情報伝送線が前記線状構造部に引っ掛かることなく、前記点検対象物に対する点検や作業を行うことができる。
【0034】
また、前記水上中継機と前記第1水中航走体に目標緯度及び目標経度を設定する位置設定手段を有した母船を備え、前記母船と前記水上中継機とが無線通信を利用して前記目標緯度及び前記目標経度及び前記画像情報を含む情報の伝送を行うことによって、前記母船からの指示に従って、前記水上中継機と前記第1水中航走体を適切な相対的な位置関係に維持しつつ、前記水上中継機と前記第1水中航走体を目標となる場所へ適切に移動させることができる。
【0035】
また、前記第1水中航走体は、前記第2水中航走体を握持する握持手段を有し、前記制御手段は、前記位置設定手段で設定された前記目標緯度及び前記目標経度と前記中継機位置計測手段で計測された水上位置とに基づいて前記水上中継機の位置を制御するとともに、前記第1水中航走体の位置を前記航走体位置推定手段で推定された水中位置に基づいて制御し、前記第1水中航走体と前記水上中継機とを前記目標緯度及び前記目標経度まで鉛直位置関係を保持しながら並走させる制御を行うことによって、目標とする前記点検対象物の位置の周辺まで前記第2水中航走体を確実に運搬することができる。
【0036】
また、前記制御手段は、前記握持手段によって前記第1水中航走体が前記第2水中航走体を握持する際、前記第1水中航走体に設けられた撮像手段によって前記第2水中航走体を撮像する制御を行うことによって、前記第1水中航走体によって撮像された映像に基づいて前記第1水中航走体の前記握持手段によって前記第2水中航走体を確実に握持することができる。
【0037】
また、前記第1水中航走体が、前記第2水中航走体を握持する際、前記制御手段が、前記第2水中航走体に設けた前記光送信手段と、前記第1水中航走体に設けた前記光受信手段とにより、前記撮像手段による前記第2水中航走体の撮影映像を水中光通信する制御を行うことによって、前記第1水中航走体と前記第2航走体との間で水中光通信を行って互いの状況を確認しつつ、前記第1水中航走体の前記握持手段によって前記第2水中航走体を確実に握持することができる。
【0038】
また、前記第1水中航走体と前記水上中継機が、設定された前記目標緯度及び前記目標経度に存在する前記点検対象物の近傍に到達したときに、前記制御手段が、前記第1水中航走体の前記握持手段を解除して前記第2水中航走体を開放し、前記第2水中航走体を前記点検対象物に接近させて点検する制御を行うことによって、前記点検対象物の近傍までは前記第1水中航走体によって前記第2水中航走体を確実に運び、その後、前記第2水中航走体を開放することで前記点検対象物に引っ掛かることなく前記点検対象物に対する点検や作業を行うことができる。
【0039】
また、前記第1水中航走体が、前記第2水中航走体の位置を検出するための撮像手段を含む位置検出手段を有し、前記制御手段が、検出された前記第2水中航走体の前記位置を追尾するように前記第1水中航走体及び前記水上中継機の位置を修正する制御を行うことによって、前記点検対象物に対する点検や作業を行う際に前記情報伝送線に過大な張力をかけることなく、前記第1水中航走体及び前記水上中継機によって前記第2水中航走体を確実に追尾させることができる。
【0040】
また、前記第1水中航走体が、前記第2水中航走体を照射する第1の照明手段を前記光受信手段と同じ側に有したことによって、前記第1の照明手段によって前記第2水中航走体を照らしながら撮像しつつ、前記光受信手段によって前記第2水中航走体からの光通信信号を確実に受信することができる。
【0041】
また、前記水中光通信の波長と、前記第1水中航走体の前記第1の照明手段の波長とを異ならせたことによって、前記第1の照明手段による照明の光の影響を抑制して、前記第1水中航走体と前記第2水中航走体との間の水中光通信をよく確実に確立することができる。
【0042】
また、前記第1水中航走体の前記撮像手段に短波長カットフィルタを含む光学フィルタを設け、前記光学フィルタによって前記水中光通信の波長の光を減衰させて、前記第1水中航走体の前記撮像手段による撮影への前記水中光通信の光の影響を低減させることによって、前記撮像手段によって画像をより鮮明に撮像することができる。
【0043】
また、前記第2水中航走体が、前記点検対象物を照射する第2の照明手段を前記光送信手段と反対側に有したことによって、前記第2の照明手段によって前記点検対象物を照らしながら撮像を行うと共に、前記光送信手段によって前記第1水中航走体との間の水中光通信を確実に確立することができる。
【0044】
また、前記制御手段が、WP(Way Point)航行モード、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)航行モード、遠隔操作航行モードのいずれかにより、前記第2水中航走体、前記第1水中航走体、及び前記水上中継機の航行を制御可能であることによって、これらのいずれかのモードによって前記第2水中航走体、前記第1水中航走体、及び前記水上中継機を確実に航走制御することができる。
【0045】
また、前記遠隔操作航行モードにおいて、オペレータによって少なくとも前記第2水中航走体の遠隔操作が可能であることによって、前記第2水中航走体の航行を確実に行うことができる。
【0046】
また、前記中継機位置計測手段は、衛星測位システム(GNSS)受信機と姿勢方位基準装置(AHRS)を有したによって、前記水上中継機の位置を正確に把握することができ、前記水上中継機の航行の制御をより高い精度で行うことができる。
【0047】
また、前記航走体位置推定手段は、慣性航法装置(INS)とドップラー対地速度計(DVL)、又は姿勢方位基準装置(AHRS)とドップラー対地速度計(DVL)を有したことによって、前記第1水中航走体及び前記第2水中航走体の位置を正確に把握することができ、前記第1水中航走体及び前記第2水中航走体の航行の制御をより高い精度で行うことができる。
【0048】
また、前記水上中継機が水上カメラと水中カメラを有し、前記水上カメラで水上の周辺の水域を撮像するとともに、前記水中カメラで前記情報伝送線を撮像し、前記制御手段が、前記周辺の水域の水域撮像情報との伝送線撮像情報を伝送する制御を行うことによって、前記水上中継機によって撮像された映像に基づいて前記水上中継機の航行を制御することができる。
【0049】
また、上記水中航走体-水上中継機連結システムの運用方法であって、前記第2水中航走体を保有した前記第1水中航走体を水中に投入する航走体投入ステップと、前記水上中継機を水面に投入する中継機投入ステップと、前記水上中継機と前記第1水中航走体とを鉛直位置関係に臨ませる鉛直位置確保ステップと、前記水上中継機の水上位置を情報伝送線を介して前記第1水中航走体に伝送し、前記第1水中航走体の水中位置の初期位置として入力する初期位置入力ステップと、前記水上中継機に前記点検対象物の目標緯度及び目標経度を設定する目標位置設定ステップと、設定された前記目標緯度及び前記目標経度を前記情報伝送線を介して前記第1水中航走体に伝送し入力する目標位置入力ステップと、前記目標緯度及び前記目標経度に前記水上中継機と前記第1水中航走体が前記鉛直位置関係を保持しながら並走して向かうように制御する航走制御ステップと、前記目標緯度及び前記目標経度の周辺に到達後に前記第1水中航走体が保有した前記第2水中航走体を開放する航走体開放ステップとを有することによって、前記第2水中航走体が情報伝送線を有していないため前記点検対象物に引っ掛かる等の障害を発生させることなく、前記点検対象物に対して点検や作業をすることができる。また、前記水上中継機を介して前記第2水中航走体で取得された撮像画像等の大容量の画像情報を母船等に高速かつ安定に伝送することができる。
【0050】
ここで、前記航走体開放ステップの後、オペレータが前記第2水中航走体が撮像した画像情報を見ながら前記第2水中航走体の位置を操作し、前記点検対象物を点検する点検ステップを有することによって、前記点検対象物の状態を確認しつつ前記第2水中航走体を移動制御して前記点検対象物を点検することができる。
【0051】
また、前記点検ステップにおける前記オペレータの前記操作に従った前記第2水中航走体の移動に伴い、前記第1水中航走体が前記第2水中航走体を追尾しながら、前記情報伝送線を介して前記第2水中航走体から水中光通信で送信されてくる前記画像情報を送信する追尾ステップを有することによって、前記第1水中航走体と前記第2水中航走体における前記画像情報の送受信をより確実に行うことができる。
【0052】
また、前記第1水中航走体の移動に伴い前記情報伝送線の余裕がなくなった場合に、前記第1水中航走体に追従して前記水上中継機を移動する中継機追従ステップを有することによって、情報伝送線に過大な張力をかけることなく前記第1水中航走体と前記水上中継機との相対的な位置を維持しつつ、前記第2水中航走体による前記点検対象物に対する点検や作業を実行することができる。
【0053】
また、母船と前記水上中継機との距離が遠く、無線通信が通らない場合、前記水上中継機を前記母船との通信が可能な位置に移動する中継機移動ステップを有することによって、前記母船と前記水上中継機との無線通信をより確実に確立することができる。
【0054】
また、揚収時にオペレータの操作により、前記第2水中航走体を前記第1水中航走体の近傍まで移動させ、前記第1水中航走体に前記第2水中航走体を保有させる航走体保有ステップと、前記水上中継機と前記第1水中航走体を前記母船の近傍まで移動させ、前記水上中継機を前記母船に揚収し、前記情報伝送線を手繰って前記第1水中航走体及び保有した前記第2水中航走体を前記母船に収容する揚収ステップを有することによって、前記第2水中航走体を前記第1水中航走体によって保有した後、前記水上中継機、前記第1水中航走体及び前記第2水中航走体を前記母船に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】本発明の実施の形態における水上中継機と水中航走体との連結システムの構成概念図である。
【
図2】本発明の実施の形態における第1水中航走体の構成を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態における第2水中航走体の構成を示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態における水上中継機の構成を示す図である。
【
図5】本発明の実施の形態における母船の構成を示す図である。
【
図6】本発明の実施の形態における水中航走体及び水上中継機の投入及び航走時の処理を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の実施の形態における水中航走体及び水上中継機の揚収時の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0056】
<水上中継機と水中航走体との連結システム>
本発明の実施の形態における水上中継機と水中航走体との連結システムは、
図1に示すように、第1水中航走体100(100-1,100-2)、第2水中航走体102、水上中継機200(200-1,200-2)及び母船300を含んで構成される。第1水中航走体100及び第2水中航走体102は、水面と水底との間の水中において使用される。また、水上中継機200は、水面において使用される。
【0057】
なお、
図1では、水上中継機200-1、第1水中航走体100-1及び第2水中航走体102の組と、水上中継機200-2及び第1水中航走体100-1の組を同時に運用する構成を示している。
【0058】
第1水中航走体100と水上中継機200とはケーブル400によって連結される。なお、連結システムの連結とは、単にケーブル400等で第1水中航走体100と水上中継機200とを連結することのみならず、第1水中航走体100と水上中継機200とが連係して航走すること、連携して作業を行うこと等も含むものである。また、ケーブル400には、情報を伝送する機能以外に、電力の伝送や曳引の機能等を持たせることもできる。
【0059】
第1水中航走体100と第2水中航走体102は、水中において光通信によって情報伝達可能に接続される。すなわち、第1水中航走体100と第2水中航走体102の間では水中光通信が行われる。
【0060】
第1水中航走体100及び第2水中航走体102は、水中を自律航走して又は母船300からのオペレータの操作によって、点検対象物500を検査、調査、修理等するために使用される。点検対象物500は、特に限定されるものではないが、周囲に線状構造部を有した洋上風力発電設備を含む海洋構造物とすることができる。ただし、これに限定されるものではなく、水底の資源や水底ケーブル等を点検対象物500としてもよい。
【0061】
なお、第1水中航走体100の利用範囲は、海中に限定されず、河川、湖、池、沼等や人工のプール等で利用してもよい。水上中継機200は、第1水中航走体100に追従して水上を航走して、第1水中航走体100と母船300との間の通信を中継するために使用される。母船300は、第1水中航走体100から調査に関する情報を受信すると共に、第1水中航走体100、第2水中航走体102及び水上中継機200に対して航走のための情報を提供する。
【0062】
なお、本実施の形態では、母船300としたが、特に船舶に限定されるものではなく、陸上に配置された基地局であってもよいし、水中に配置した水中母艦であってもよいし、空中を飛行する飛行体としてもよい。特に、水中に配置した水中母艦の場合、例えば、水面近傍に水中母艦を配置し空中に臨ませたアンテナにより電波を利用して水上中継機200と通信をすることや、完全に水中に配置し光通信を利用して水上中継機200と直接通信することも可能である。
【0063】
<第1水中航走体の構成>
第1水中航走体100は、
図2の構成概念図に示すように、艇体10、制御手段12、記憶手段14、通信手段16、光通信手段17、航走手段18、航走体位置推定手段20、航走体撮像手段22及び握持手段23を含んで構成される。第1水中航走体100は、例えば、自律型無人潜水機(AUV)であるが、これに限定されるものではない。
【0064】
艇体10は、艇室等の空間を構成する密閉可能な構造体である。艇体10は、金属や強化プラスチック等により構成され、第1水中航走体100の構成要素を機械的に支持する役割も果たす。艇体10は、第1水中航走体100が中性浮力を有するように構成されることが好適である。
【0065】
制御手段12は、第1水中航走体100における各種機能を制御するための手段である。制御手段12は、コンピュータにおけるCPU等とすることができる。制御手段12は、予め定められた制御プログラムを実行することによって第1水中航走体100に搭載された各手段を統合的に制御する。
【0066】
記憶手段14は、第1水中航走体100において利用される情報や第1水中航走体100の制御プログラムを記憶させておくための手段である。記憶手段14は、例えば、半導体メモリ、ハードディスク等とすることができる。
【0067】
記憶手段14には、第1水中航走体100の位置の制御において第1水中航走体100の目標の位置を示す情報が記憶される。目標位置は、例えば、目標緯度及び目標経度を含む初期位置及びウェイポイント(潜航点)として記憶される。すなわち、第1水中航走体100の艇体10が水中を航走する際の初期位置及び航走の経路を示すウェイポイント(潜航点)が設定及び記憶される。初期位置及びウェイポイントは、艇体10が航走する目標となる水中の経路を離散的な座標点で順に表した情報である。また、初期位置及びウェイポイントは、目標緯度及び目標経度に加えて、水面からの深度の組み合わせとして表してもよい。
【0068】
また、記憶手段14は、後述する航走体位置推定手段20において推定された第1水中航走体100の自己位置の推定値を記憶する。また、記憶手段14は、後述する航走体撮像手段22において取得された画像情報を記憶する。
【0069】
通信手段16は、第1水中航走体100と水上中継機200との間で情報を通信するための手段である。通信手段16は、情報伝送線24を介して水上中継機200から情報を受信し、情報伝送線24を介して第1水中航走体100で取得された情報を水上中継機200へ送信する。また、通信手段16は、第2水中航走体102と水上中継機200との間で情報を通信する際の中継手段としても機能する。
【0070】
情報伝送線24は、ケーブル400の一部とすることができる。通信手段16は、例えば、通信プロトコルとしてイーサネット(Ethernet)を採用すればよい。この場合、情報伝送線24は、イーサネット(Ethernet)ケーブルとされる。
【0071】
ここで、第1水中航走体100と水上中継機200との間を有線通信とすることで、水中を音響信号で伝達する方法に比べて高速で大容量の通信を行うことができる。これによって、第1水中航走体100は、水上中継機200及び母船300と高速に通信すること、大容量の画像情報等を伝送することができる。
【0072】
なお、情報伝送線24の長さは、第1水中航走体100及び水上中継機200の航走予定水域の最大水深に対して余裕を持たせておくことが好適である。例えば、第1水中航走体100が航走する予定の最大水深が15mである場合、情報伝送線24のケーブル長を20mとしておけばよい。これによって、第1水中航走体100と水上中継機200の位置関係を適切に保ちつつ並走することが可能になる。ただし、水上中継機200に情報伝送線24の繰り出し・巻き上げ装置を搭載し、第1水中航走体100と水上中継機200との距離に応じて情報伝送線24を繰り出し又は巻き上げするような構成としてもよい。
【0073】
光通信手段17は、第1水中航走体100と第2水中航走体102との間で情報を通信するための手段である。光通信手段17は、少なくとも光受信手段を含んで構成される。光通信手段17は、特に限定されるものではなく、例えば可視光レーザを用いた通信を適用することができる。具体的には、特許文献2及び3に記載されたような技術を適用することができる。
【0074】
航走手段18は、艇体10を推進させるための駆動力を発生させ、艇体10を上下左右方向に旋回(回頭)させるための手段である。例えば、艇体10の前後左右上下にそれぞれ個別の航走手段18を設けておき、左右にそれぞれ個別の航走手段18を設けておき、垂直舵に依らず、左右の航走手段18の推力のバランスを調整することにより艇体10を左右方向に旋回(回頭)させる。なお、駆動力発生のための機構として主推進器駆動モータ、プロペラ、回転軸等を含んで構成される。主推進器駆動モータは、艇体10に対して駆動力を与えるためのモータである。主推進器駆動モータは、電池からの電力によって、制御手段12からの駆動制御信号に応じた回転数及びトルクで航走手段18の回転軸を回転駆動させる。これにより、駆動軸に接続されたプロペラが回転されて艇体10に推進力が与えられる。また、航走手段18は、例えば、艇体10を上下左右方向に旋回(回頭)させるための舵を含む。垂直舵を艇体10に対して右又は左に傾けることによって、艇体10を左又は右に回頭させることができる。垂直舵は、垂直舵駆動モータによって回転させることができる。垂直舵駆動モータは、制御手段12からの垂直舵制御信号に応じた角度になるように垂直舵を回転駆動させる。水平舵を艇体10に対して上又は下に傾けることによって、艇体10を頭下げ(ピッチダウン)又は頭上げ(ピッチアップ)させることができる。水平舵は、水平舵駆動モータによって駆動することができる。水平舵駆動モータは、制御手段12からの水平舵制御信号に応じた角度になるように水平舵を回転駆動させる構成としてもよい。
【0075】
航走体位置推定手段20は、水中における艇体10の現在の位置(水中位置)を自己位置として推定するため構成要素を含んで構成される。航走体位置推定手段20は、例えば、プログラム可能なマイクロコンピュータによって実現することができる。航走体位置推定手段20で推定された第1水中航走体100の自己位置は制御手段12に入力される。制御手段12は、入力された第1水中航走体100の自己位置を記憶手段14に記憶させると共に、第1水中航走体100の位置の制御に利用する。
【0076】
航走体位置推定手段20は、慣性航法装置(INS)を含む構成とすることができる。慣性航法装置は、第1水中航走体100の速度を測定する速度計を含んで構成される。速度計は、例えば、ドップラー対地速度計(DVL)によって構成することができる。慣性航法では、速度計で検出された第1水中航走体100の速度を積分することで第1水中航走体100の起点からの移動距離を求めることで第1水中航走体100の自己位置を推定する。
【0077】
また、航走体位置推定手段20は、姿勢方位基準装置(AHRS)を含む構成とすることができる。姿勢方位基準装置は、ジャイロ等を利用した慣性航法装置の一種であり、ドップラー対地速度計(DVL)等の速度計と組み合わされることによって第1水中航走体100の水中における回転及び直線運動を演算して出力する。航走体位置推定手段20は、姿勢方位基準装置で演算された第1水中航走体100の回転及び直線運動を積分することで第1水中航走体100の起点からの移動距離を求めることで第1水中航走体100の自己位置を推定する。
【0078】
また、航走体位置推定手段20は、第1水中航走体100の水中での深度を計測するための深度計を含んでもよい。深度計によって計測された第1水中航走体100の深度は制御手段12へ入力される。制御手段12は、入力された第1水中航走体100の深度を記憶手段14に記憶させると共に、第1水中航走体100の深度の制御に利用する。
【0079】
航走体位置推定手段20で推定された自己位置に基づいて艇体10の航走制御が行われる。制御手段12は、記憶手段14に予め設定されたウェイポイントを順に読み出し、当該ウェイポイントと航走体位置推定手段20で推定された艇体10の自己位置との差が小さくなるように航走手段18を制御する。
【0080】
航走手段18の制御は、艇体運動モデルに基づいて行ってもよい。艇体運動モデルは、AUVダイナミクスとも呼ばれ、水中における艇体10の運動性能を表す運動方程式からなる。具体的には、航走手段18の応答特性や艇体10の移動特性等に基づいて制御を行うようにしてもよい。
【0081】
また、航走体位置推定手段20で推定された艇体10の自己位置を修正する水中航走体修正情報に応じて航走手段18は制御される。制御手段12は、母船300から送信される水中航走体修正情報に応じて航走の目標位置を修正することによって艇体10を目標位置に近づけるように航走手段18を制御する。すなわち、航走手段18は水中航走体修正情報に応じて制御されることになり、艇体10の初期位置やウェイポイントの設定に基づく位置誤差や航走体位置推定手段20における自己位置の推定における位置誤差を補償することができる。
【0082】
なお、第1水中航走体100の航行は、上記のようなウェイポイントを用いたウェイポイント(WP:Way Point)航行モードに限定されるものではない。例えば、自己位置推定と第1水中航走体100の周辺の環境地図の作成とを組み合わせたSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)航行モードを適用してもよい。また、母船300に乗船したオペレータによる操作に基づく遠隔操作航行モードを適用してもよい。
【0083】
照明手段19は、第1水中航走体100の水中において艇体10の外部を照射する手段である。照明手段19は、航走体撮像手段22による撮像する際の照明として使用することができる。例えば、第2水中航走体102を撮像して追尾する際に、照明手段19によって光を照射することで第2水中航走体102を明確に撮像することができる。照明手段19から照射される光の波長は、光通信手段17による水中光通信で用いられ光の波長とは異なる波長とすることが好適である。これによって、照明手段19による照明と、光通信手段17による水中光通信との相互の干渉を抑制することができる。
【0084】
照明手段19は、第1水中航走体100の艇体10において光通信手段17と同じ側に配置することが好適である。すなわち、第1水中航走体100によって第2水中航走体102の映像を撮影しながら第2水中航走体102を追尾する場合、照明手段19によって第2水中航走体102に照明を当てながら撮像して、その映像に基づいて追尾を行うと共に、第2水中航走体102との光通信を確実に確立することができる。
【0085】
航走体撮像手段22は、艇体10の外部を撮像するための構成要素を含んで構成される。航走体撮像手段22は、例えば、静止画像を撮像するためのカメラ、動画を撮像するためのビデオ等とすることができる。航走体撮像手段22で得られた画像や動画に関する画像情報(撮像データ)は記憶手段14に記憶される。また、航走体撮像手段22で得られた画像や動画に関する画像情報(撮像データ)は、通信手段16を用いて情報伝送線24を介して水上中継機200へ送信される。
【0086】
なお、航走体撮像手段22を複数設けて、ステレオ視に基づいて艇体10と目標物との相対的な位置を取得できるようにしてもよい。当該相対的位置情報は、後述する航走体位置推定手段20における第1水中航走体100の自己位置の推定において誤差の修正に利用することができる。
【0087】
また、本実施の形態として第1水中航走体100に航走体撮像手段22を設けた構成としたが、水中における状況を第1水中航走体100において取得できる手段であればよい。例えば、音波や超音波を用いたソナーによって構造物や水底の形状等を取得するようにしてもよい。この場合、得られた情報は、記憶手段14に記憶されると共に、通信手段16を用いて情報伝送線24を介して水上中継機200へ送信される。
【0088】
航走体撮像手段22には、さらに光学フィルタ22aを設けてもよい。光学フィルタ22aは、光通信手段17による光通信に用いられる光の波長を減衰させるフィルタとすることが好適である。一般的には、照明手段19によって照射される光の波長より光通信手段17で用いられる光の波長は短いので、光学フィルタ22aは光通信手段17で用いられる光の波長より短波長側を減衰させる短波長カットフィルタとすることが好適である。光学フィルタ22aを設けることによって、航走体撮像手段22による撮像への水中光通信の光の影響を低減させることができる。
【0089】
握持手段23は、第1水中航走体100によって第2水中航走体102を保有するための手段である。第1水中航走体100は、握持手段23によって第2水中航走体102を保有したまま、第2水中航走体102による点検や作業を行う目標位置付近まで航行した後、握持手段23を解除することで第2水中航走体102を開放する。また、点検や作業を終えた場合、第1水中航走体100は、第2水中航走体102を回収して握持手段23により保有した状態で航行する。
【0090】
<第2水中航走体の構成>
第2水中航走体102は、
図3の構成概念図に示すように、艇体10、制御手段12、記憶手段14、光通信手段17、航走手段18、航走体位置推定手段20及び航走体撮像手段22を含んで構成される。第2水中航走体102は、例えば、自律型無人潜水機(AUV)であるが、これに限定されるものではない。第2水中航走体102の構成は、通信手段16及び握持手段23を備えないことを除いて第1水中航走体100と同様である。
【0091】
艇体10は、艇室等の空間を構成する密閉可能な構造体である。艇体10は、金属や強化プラスチック等により構成され、第2水中航走体102の構成要素を機械的に支持する役割も果たす。艇体10は、第2水中航走体102が中性浮力を有するように構成されることが好適である。
【0092】
制御手段12は、第2水中航走体102における各種機能を制御するための手段である。制御手段12は、コンピュータにおけるCPU等とすることができる。制御手段12は、予め定められた制御プログラムを実行することによって第2水中航走体102に搭載された各手段を統合的に制御する。
【0093】
記憶手段14は、第2水中航走体102において利用される情報や第2水中航走体102の制御プログラムを記憶させておくための手段である。記憶手段14は、例えば、半導体メモリ、ハードディスク等とすることができる。
【0094】
記憶手段14には、第2水中航走体102の位置の制御において第2水中航走体102の目標の位置を示す情報が記憶される。目標位置は、例えば、目標緯度及び目標経度を含む初期位置及びウェイポイント(潜航点)として記憶される。すなわち、第2水中航走体102の艇体10が水中を航走する際の初期位置及び航走の経路を示すウェイポイント(潜航点)が設定及び記憶される。初期位置及びウェイポイントは、艇体10が航走する目標となる水中の経路を離散的な座標点で順に表した情報である。また、初期位置及びウェイポイントは、目標緯度及び目標経度に加えて、水面からの深度の組み合わせとして表してもよい。
【0095】
また、記憶手段14は、後述する航走体位置推定手段20において推定された第2水中航走体102の自己位置の推定値を記憶する。また、記憶手段14は、後述する航走体撮像手段22において取得された画像情報を記憶する。
【0096】
光通信手段17は、第1水中航走体100と第2水中航走体102との間で情報を通信するための手段である。光通信手段17は、少なくとも光送信手段を含んで構成される。光通信手段17は、特に限定されるものではなく、例えば可視光レーザを用いた通信を適用することができる。具体的には、特許文献2及び3に記載されたような技術を適用することができる。
【0097】
航走手段18は、艇体10を推進させるための駆動力を発生させ、艇体10を上下左右方向に旋回(回頭)させるための手段である。航走手段18は、第1水中航走体100における航走手段18と同様であるので説明を省略する。
【0098】
航走体位置推定手段20は、水中における艇体10の現在の位置(水中位置)を自己位置として推定するため構成要素を含んで構成される。航走体位置推定手段20は、例えば、プログラム可能なマイクロコンピュータによって実現することができる。航走体位置推定手段20で推定された第2水中航走体102の自己位置は制御手段12に入力される。制御手段12は、入力された第2水中航走体102の自己位置を記憶手段14に記憶させると共に、第2水中航走体102の位置の制御に利用する。
【0099】
航走体位置推定手段20は、慣性航法装置(INS)を含む構成とすることができる。慣性航法装置は、第2水中航走体102の速度を測定する速度計を含んで構成される。速度計は、例えば、ドップラー対地速度計(DVL)によって構成することができる。慣性航法では、速度計で検出された第2水中航走体102の速度を積分することで第2水中航走体102の起点からの移動距離を求めることで第2水中航走体102の自己位置を推定する。
【0100】
また、航走体位置推定手段20は、姿勢方位基準装置(AHRS)を含む構成とすることができる。姿勢方位基準装置は、ジャイロ等を利用した慣性航法装置の一種であり、ドップラー対地速度計(DVL)等の速度計と組み合わされることによって第2水中航走体102の水中における回転及び直線運動を演算して出力する。航走体位置推定手段20は、姿勢方位基準装置で演算された第2水中航走体102の回転及び直線運動を積分することで第2水中航走体102の起点からの移動距離を求めることで第2水中航走体102の自己位置を推定する。
【0101】
また、航走体位置推定手段20は、第2水中航走体102の水中での深度を計測するための深度計を含んでもよい。深度計によって計測された第2水中航走体102の深度は制御手段12へ入力される。制御手段12は、入力された第2水中航走体102の深度を記憶手段14に記憶させると共に、第2水中航走体102の深度の制御に利用する。
【0102】
航走体位置推定手段20で推定された自己位置に基づいて艇体10の航走制御が行われる。制御手段12は、記憶手段14に予め設定されたウェイポイントを順に読み出し、当該ウェイポイントと航走体位置推定手段20で推定された艇体10の自己位置との差が小さくなるように航走手段18を制御する。
【0103】
航走手段18の制御は、艇体運動モデルに基づいて行ってもよい。艇体運動モデルは、AUVダイナミクスとも呼ばれ、水中における艇体10の運動性能を表す運動方程式からなる。具体的には、航走手段18の応答特性や艇体10の移動特性等に基づいて制御を行うようにしてもよい。
【0104】
また、航走体位置推定手段20で推定された艇体10の自己位置を修正する水中航走体修正情報に応じて航走手段18は制御される。制御手段12は、第1水中航走体100を介して母船300から送信される水中航走体修正情報に応じて航走の目標位置を修正することによって艇体10を目標位置に近づけるように航走手段18を制御する。すなわち、航走手段18は水中航走体修正情報に応じて制御されることになり、艇体10の初期位置やウェイポイントの設定に基づく位置誤差や航走体位置推定手段20における自己位置の推定における位置誤差を補償することができる。
【0105】
なお、第2水中航走体102の航行は、上記のようなウェイポイントを用いたウェイポイント(WP:Way Point)航行モードに限定されるものではない。例えば、自己位置推定と第2水中航走体102の周辺の環境地図の作成とを組み合わせたSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)航行モードを適用してもよい。また、母船300に乗船したオペレータによる操作に基づく遠隔操作航行モードを適用してもよい。
【0106】
照明手段19は、第2水中航走体102の水中において艇体10の外部を照射する手段である。照明手段19は、航走体撮像手段22による撮像する際の照明として使用することができる。照明手段19から照射される光の波長は、光通信手段17による水中光通信で用いられ光の波長とは異なる波長とすることが好適である。これによって、照明手段19による照明と、光通信手段17による水中光通信との相互の干渉を抑制することができる。
【0107】
照明手段19は、第2水中航走体102の艇体10において光通信手段17と反対側に配置することが好適である。すなわち、第1水中航走体100によって第2水中航走体102の映像を撮影しながら第2水中航走体102を追尾する場合、光通信手段17によって追尾を行っている第1水中航走体100と水中光通信を確立しながら、水中光通信とは反対側において照明手段19によって照明を当てながら水中を撮像することができる。これにより、照明手段19による照明と、光通信手段17による水中光通信との相互の干渉をより抑制することができる。
【0108】
航走体撮像手段22は、艇体10の外部を撮像するための構成要素を含んで構成される。航走体撮像手段22は、例えば、静止画像を撮像するためのカメラ、動画を撮像するためのビデオ等とすることができる。航走体撮像手段22で得られた画像や動画に関する画像情報(撮像データ)は記憶手段14に記憶される。また、航走体撮像手段22で得られた画像や動画に関する画像情報(撮像データ)は、光通信手段17を用いて第1水中航走体100へ送信される。
【0109】
なお、航走体撮像手段22を複数設けて、ステレオ視に基づいて艇体10と目標物との相対的な位置を取得できるようにしてもよい。当該相対的位置情報は、後述する航走体位置推定手段20における第2水中航走体102の自己位置の推定において誤差の修正に利用することができる。
【0110】
航走体撮像手段22には、さらに光学フィルタ22aを設けてもよい。光学フィルタ22aは、光通信手段17による光通信に用いられる光の波長を減衰させるフィルタとすることが好適である。一般的には、照明手段19によって照射される光の波長より光通信手段17で用いられる光の波長は短いので、光学フィルタ22aは光通信手段17で用いられる光の波長より短波長側を減衰させる短波長カットフィルタとすることが好適である。光学フィルタ22aを設けることによって、航走体撮像手段22による撮像への水中光通信の光の影響を低減させることができる。なお、第2水中航走体102の艇体10において光通信手段17と照明手段19が反対側に配置され、光通信手段17と照明手段19の相互干渉が小さい場合には光学フィルタ22aは設けなくてもよい。
【0111】
また、本実施の形態として第2水中航走体102に航走体撮像手段22を設けた構成としたが、水中における状況を第2水中航走体102において取得できる手段であればよい。例えば、音波や超音波を用いたソナーによって構造物や水底の形状等を取得するようにしてもよい。この場合、得られた情報は、記憶手段14に記憶されると共に、光通信手段17を用いて第1水中航走体100へ送信される。
【0112】
<水上中継機の構成>
本発明の実施の形態における水上中継機200は、
図4の構成概念図に示すように、機体30、制御手段32、記憶手段34、通信手段36、中継機推進手段38、中継機位置計測手段40及び中継機撮像手段42を含んで構成される。水上中継機200は、例えば、自律型無人洋上中継機(ASV)であるが、これに限定されるものではない。
【0113】
機体30は、艇室等の空間を構成する密閉可能な構造体である。機体30は、金属や強化プラスチック等により構成され、水上中継機200の構成要素を機械的に支持する役割も果たす。
【0114】
制御手段32は、水上中継機200における各種機能を制御するための手段である。制御手段32は、コンピュータにおけるCPU等とすることができる。制御手段32は、予め定められた制御プログラムを実行することによって水上中継機200に搭載された各手段を統合的に制御する。
【0115】
記憶手段34は、水上中継機200において利用される情報や水上中継機200の制御プログラムを記憶させておくための手段である。記憶手段34は、例えば、半導体メモリ、ハードディスク等とすることができる。
【0116】
記憶手段34には、水上中継機200の位置の制御において水上中継機200の目標の位置を示す情報が記憶される。目標位置は、例えば、目標緯度及び目標経度を含む初期位置及びウェイポイント(航走点)として記憶される。すなわち、水上中継機200の機体30が水上を航走する際の初期位置及び航走の経路を示すウェイポイントが設定及び記憶される。初期位置及びウェイポイントは、機体30が航走する目標となる水上の経路を離散的な座標点で順に表した情報である。
【0117】
また、記憶手段34は、後述する中継機位置計測手段40において計測された水上中継機200の自己位置の情報を記憶する。また、記憶手段34は、後述する中継機撮像手段42において取得された画像情報を記憶する。
【0118】
通信手段36は、水上中継機200と第1水中航走体100との間で情報を通信し、水上中継機200と母船300との間で情報を通信するための手段である。通信手段36は、情報伝送線24を介して第1水中航走体100から情報を受信し、情報伝送線24を介して情報を第1水中航走体100へ送信する。また、通信手段36は、無線通信器26を介して母船300から情報を受信し、無線通信器26を介して情報を母船300へ送信する。無線通信器26を用いた通信は、例えば、2.4GHzの周波数帯を用いたWi-Fiシステムとすることができる。ただし、これに限定されるものではなく、例えば、UHF通信、VHF通信、光通信、衛星通信等の無線通信としてもよい。
【0119】
なお、母船300と水上中継機200との間を無線通信とすることで、有線通信を適用した場合に比べて第1水中航走体100及び水上中継機200の移動可能範囲を拡げることができる。
【0120】
また、通信手段36は、複数の水上中継機200の間で通信を中継できるマルチホップ通信(メッシュWi-Fi通信)が可能であることが好適である。例えば、水上中継機200-1と母船300との距離が遠くて通信が成立しない場合、水上中継機200-1と母船300との間に位置する別の水上中継機200-2によって水上中継機200-1と母船300との通信を中継させてもよい。中継を担当する水上中継機200-2を中継に適した位置に移動させることによって、水上中継機200-1と母船300との通信をより確実に設立させることができる。
【0121】
中継機推進手段38は、機体30を推進させるための駆動力を発生させ、機体30を左右方向に旋回(回頭)させるための手段である。例えば、機体30の前後左右上下にそれぞれ個別の中継機推進手段38を設けておき、左右にそれぞれ個別の中継機推進手段38を設けておき、垂直舵に依らず、左右の中継機推進手段38の推力のバランスを調整することにより機体30を左右方向に旋回(回頭)させる。なお、駆動力発生のための機構として主推進器駆動モータ、プロペラ、回転軸等を含んで構成される。主推進器駆動モータは、機体30に対して駆動力を与えるためのモータである。主推進器駆動モータは、電池からの電力によって、制御手段32からの駆動制御信号に応じた回転数及びトルクで中継機推進手段38の回転軸を回転駆動させる。これにより、駆動軸に接続されたプロペラが回転されて機体30に推進力が与えられる。また、中継機推進手段38は、例えば、機体30を左右方向に旋回(回頭)させるための舵を含む。垂直舵を機体30に対して右又は左に傾けることによって、機体30を左又は右に回頭させることができる。垂直舵は、垂直舵駆動モータによって回転させることができる。垂直舵駆動モータは、制御手段32からの垂直舵制御信号に応じた角度になるように垂直舵を回転駆動させる。
【0122】
中継機位置計測手段40は、水上における機体30の現在位置を自己位置として計測するため構成要素を含んで構成される。中継機位置計測手段40は、例えば、プログラム可能なマイクロコンピュータによって実現することができる。中継機位置計測手段40で計測された水上中継機200の自己位置は制御手段32に入力される。制御手段32は、入力された水上中継機200の自己位置を記憶手段14に記憶させると共に、水上中継機200の位置の制御に利用する。
【0123】
中継機位置計測手段40は、衛星測位システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)の受信機40aを含む構成とすることができる。中継機位置計測手段40は、受信機40aによって受信されたGNSS信号に基づいて水上中継機200の現在の自己位置(水上位置)を計測する。計測された水上中継機200の自己位置は制御手段32に入力され、水上中継機200の位置の制御に利用される。また、中継機位置計測手段40は、姿勢方位基準装置(AHRS)を含む構成とすることができる。姿勢方位基準装置を用いて中継機位置計測手段40で計測される水上中継機200の自己位置の補正することができる。
【0124】
中継機撮像手段42は、機体30の外部を撮像するための構成要素を含んで構成される。中継機撮像手段42は、例えば、静止画像を撮像するためのカメラ、動画を撮像するためのビデオ等とすることができる。中継機撮像手段42は、水上を撮影するための水上カメラと水中を撮像するための水中カメラを備えることが好適である。水上カメラでは、水上における水上中継機200の周囲の水域を撮像することができる。水中カメラでは、水中における水上中継機200の周囲の水域を撮像することができる。水中カメラでは、例えば、水上中継機200と第1水中航走体100とを繋ぐ情報伝送線24を撮像することができる。中継機撮像手段42で得られた画像や動画に関する画像情報(撮像データ)は記憶手段34に記憶される。また、中継機撮像手段42で得られた画像や動画に関する画像情報(撮像データ)は、通信手段36を用いて無線通信器26を介して母船300へリアルタイムで送信される。
【0125】
中継機位置計測手段40で計測された自己位置に基づいて機体30の航走制御が行われる。制御手段32は、記憶手段34に予め設定されたウェイポイントを順に読み出し、当該ウェイポイントと中継機位置計測手段40で計測された機体30の自己位置との差が小さくなるように中継機推進手段38を制御する。
【0126】
中継機推進手段38の制御は、艇体運動モデルに基づいて行ってもよい。艇体運動モデルは、ASVダイナミクスとも呼ばれ、水上における機体30の運動性能を表す運動方程式からなる。具体的には、中継機推進手段38の応答特性や機体30の移動特性等に基づいて制御を行うようにしてもよい。
【0127】
なお、水上中継機200の航行は、上記のようなウェイポイントを用いたウェイポイント(WP:Way Point)航行モードに限定されるものではない。例えば、自己位置推定と水上中継機200の周辺の環境地図の作成とを組み合わせたSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)航行モードを適用してもよい。また、母船300に乗船したオペレータによる操作に基づく遠隔操作航行モードを適用してもよい。
【0128】
なお、水上中継機200は、第1水中航走体100の移動に連れて並走するようにしてもよい。水上中継機200と第1水中航走体100とが情報伝送線24によって有線接続されている場合、第1水中航走体100が移動すると情報伝送線24によって水上中継機200が引っ張られることによっても水上中継機200を第1水中航走体100に連動させることができる。
【0129】
<母船の構成>
本発明の実施の形態における母船300は、第1水中航走体100、第2水中航走体102及び水上中継機200の基地となる船舶である。母船300は、
図5の構成概念図に示すように、艇体50、測位手段52、位置設定手段54、画像表示手段56、操作手段58、連結手段60及び通信手段62を含んで構成される。
【0130】
艇体50は、母船300の空間を構成する構造体である。艇体50は、金属や強化プラスチック等により構成され、母船300の構成要素を機械的に支持する役割も果たす。また、艇体50には母船300を移動させるための航走手段を設けてもよい。なお、母船300の代わりに陸上に配置された基地局とする場合、艇体50を設ける必要はない。また、母船300の代わりに空中を飛行する飛行体とする場合、艇体50の代わりに飛行体の機体としてもよい。
【0131】
測位手段52は、母船300の現在位置を取得するための装置を含んで構成される。測位手段52は、例えば、衛星測位システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)等の測位手段とすることができる。ただし、これに限定されるものではなく、陸上に配置されている基準点からの距離及び方位に応じて母船300の位置を測位できる構成としてもよい。
【0132】
位置設定手段54は、測位手段52による測位の情報を第1水中航走体100、第2水中航走体102及び水上中継機200に設定するための手段である。位置設定手段54は、測位手段52によって得られた母船300の測位の情報を第1水中航走体100及び第2水中航走体102の航走体位置推定手段20に初期位置の情報として設定する。すなわち、母船300に第1水中航走体100及び第2水中航走体102が搭載されている状態において、測位手段52による測位位置の情報を航走体位置推定手段20に第1水中航走体100及び第2水中航走体102の初期位置として設定する。また、位置設定手段54は、第1水中航走体100及び第2水中航走体102の航走体位置推定手段20にウェイポイントを設定するためにも使用される。また、位置設定手段54は、水上中継機200の中継機位置計測手段40にウェイポイントを設定するためにも使用される。
【0133】
画像表示手段56、操作手段58及び連結手段60は、母船300における監視手段を構成する。監視手段は、第1水中航走体100の位置、第2水中航走体102の位置、水上中継機200の位置及び第1水中航走体100と水上中継機200の相対的な位置及び第1水中航走体100と第2水中航走体102の相対的な位置を監視すると共にこれらの位置を修正するために用いられる。
【0134】
画像表示手段56は、第1水中航走体100及び第2水中航走体102の航走体撮像手段22において撮像された映像を表示する装置を含む。すなわち、画像表示手段56は、第1水中航走体100及び第2水中航走体102から取得された画像情報に基づいて、第1水中航走体100及び第2水中航走体102の航走体撮像手段22において撮像された水中の画像を表示する。母船300の搭乗者は、画像表示手段56に表示された画像を観ることによって、第1水中航走体100及び第2水中航走体102が撮像した画像を確認することができる。
【0135】
また、画像表示手段56は、水上中継機200の中継機撮像手段42において撮像された映像を表示する装置を含む。画像表示手段56は、例えば、ディスプレイを含むことができる。すなわち、画像表示手段56は、水上中継機200から取得された画像情報に基づいて、水上中継機200の中継機撮像手段42において撮像された水中又は/及び水上の画像を表示する。母船300の搭乗者は、画像表示手段56に表示された画像を観ることによって、水上中継機200が撮像した画像を確認することができる。
【0136】
なお、画像表示手段56は、第1水中航走体100、第2水中航走体102及び水上中継機200に対してそれぞれ別々に設けてもよいし、切替スイッチ等によって第1水中航走体100、第2水中航走体102及び水上中継機200を切り替えられる構成としてもよい。
【0137】
操作手段58は、第1水中航走体100及び第2水中航走体102の位置を修正する操作を行う手段を含む。操作手段58は、例えば、第1水中航走体100及び第2水中航走体102の位置を修正するためのジョイスティックやマウス等のポインティングデバイスを含んで構成することができる。母船300に搭乗している管理者が操作手段58を操作することによって、連結手段60において第1水中航走体100及び第2水中航走体102を移動させるための水中航走体修正情報が生成される。
【0138】
また、操作手段58は、水上中継機200の位置を修正する操作を行う手段を含む。操作手段58は、例えば、水上中継機200の位置を修正するためのジョイスティックやマウス等のポインティングデバイスを含んで構成することができる。母船300に搭乗している管理者が操作手段58を操作することによって、連結手段60において水上中継機200を移動させるための水上中継機修正情報が生成される。
【0139】
また、操作手段58は、第1水中航走体100、第2水中航走体102及び水上中継機200によって撮像される映像の調整を行う手段を含む。例えば、母船300に搭乗している管理者が操作手段58を操作することによって、第1水中航走体100及び第2水中航走体102の航走体撮像手段22並びに水上中継機200の中継機撮像手段42に対して撮像点検対象物との距離、角度、画角及び照明等の撮像条件を設定することができる。
【0140】
なお、操作手段58は、第1水中航走体100、第2水中航走体102及び水上中継機200に対して別々に設けてもよいし、切替スイッチ等によって第1水中航走体100、第2水中航走体102及び水上中継機200を切り替えられる構成としてもよい。
【0141】
連結手段60は、画像表示手段56に表示されている画像と操作手段58によって操作される第1水中航走体100に対する水中航走体修正情報、第2水中航走体102に対する水中航走体修正情報及び水上中継機200に対する水上中継機修正情報とを連結させるための手段である。連結手段60は、例えば、プログラム可能なマイクロコンピュータによって実現することができる。マイクロコンピュータは、画像表示手段56及び操作手段58を制御するための制御装置と共通としてもよい。
【0142】
連結手段60は、操作手段58の操作量に応じて第1水中航走体100の航走体位置推定手段20で推定された自己位置情報を修正するための水中航走体修正情報を生成する。連結手段60は、操作手段58の操作量が大きい程、第1水中航走体100の自己位置情報の修正量が大きくなるような水中航走体修正情報を生成する。また、連結手段60は、操作手段58の操作量に応じて第2水中航走体102の航走体位置推定手段20で推定された自己位置情報を修正するための水中航走体修正情報を生成する。連結手段60は、操作手段58の操作量が大きい程、第2水中航走体102の自己位置情報の修正量が大きくなるような水中航走体修正情報を生成する。また、連結手段60は、操作手段58の操作量に応じて水上中継機200の中継機位置計測手段40で計測された自己位置情報を修正するための水上中継機修正情報を生成する。連結手段60は、操作手段58の操作量が大きい程、水上中継機200の自己位置情報の修正量が大きくなるような水上中継機修正情報を生成する。
【0143】
例えば、操作手段58がジョイスティックやマウス等のポインティングデバイスである場合、その操作量と方向に基づいて当該方向に向けて当該操作量に対応する距離だけ第1水中航走体100を移動させるように水中航走体修正情報を生成する。また、例えば、操作手段58がジョイスティックやマウス等のポインティングデバイスである場合、その操作量と方向に基づいて当該方向に向けて当該操作量に対応する距離だけ第2水中航走体102を移動させるように水中航走体修正情報を生成する。また、例えば、操作手段58がジョイスティックやマウス等のポインティングデバイスである場合、その操作量と方向に基づいて当該方向に向けて当該操作量に対応する距離だけ水上中継機200を移動させるように水上中継機修正情報を生成する。また、例えば、操作手段58が画像表示手段56と一体化されたタッチパネルである場合、画像表示手段56に表示された目標位置を画面内で移動(スワイプ)させた操作量と方向に基づいて第1水中航走体100を当該方向と反対の方向(目標位置を撮像画像内で移動させた方向に第1水中航走体100が移動する方向)に向けて当該操作量に対応する距離だけ第1水中航走体100を移動させるように水中航走体修正情報を生成する。操作量に対する第1水中航走体100の移動距離の修正量の関係は予め設定しておけばよい。また、例えば、操作手段58が画像表示手段56と一体化されたタッチパネルである場合、画像表示手段56に表示された目標位置を画面内で移動(スワイプ)させた操作量と方向に基づいて第2水中航走体102を当該方向と反対の方向(目標位置を撮像画像内で移動させた方向に第2水中航走体102が移動する方向)に向けて当該操作量に対応する距離だけ第2水中航走体102を移動させるように水中航走体修正情報を生成する。操作量に対する第2水中航走体102の移動距離の修正量の関係は予め設定しておけばよい。また、例えば、操作手段58が画像表示手段56と一体化されたタッチパネルである場合、画像表示手段56に表示された目標位置を画面内で移動(スワイプ)させた操作量と方向に基づいて水上中継機200を当該方向と反対の方向(目標位置を撮像画像内で移動させた方向に水上中継機200が移動する方向)に向けて当該操作量に対応する距離だけ水上中継機200を移動させるように水上中継機修正情報を生成する。操作量に対する水上中継機200の移動距離の修正量の関係は予め設定しておけばよい。
【0144】
これによって、画面内に表示されている目標位置に対して第1水中航走体100、第2水中航走体102及び水上中継機200に移動させ、正しい位置に臨ませることができる。また、画面内に表示されている目標位置に対して第1水中航走体100、第2水中航走体102及び水上中継機200をリアルタイムに移動させることができる。
【0145】
通信手段62は、水上中継機200から母船300へ送信されてくる情報を受信したり、母船300から水上中継機200へ情報を送信したりするための装置を含んで構成される。本実施の形態では、水上中継機200を介して第1水中航走体100及び第2水中航走体102と母船300との間の通信が行われるので、母船300は水上中継機200の通信を行う無線通信手段として利用される。水上中継機200の通信が無線で行われる場合、通信手段62は、電波等の通信方法を用いた無線通信のための装置を含む。具体的には、例えば、WiFi通信、UHF通信、衛星通信等の無線通信装置を含めばよい。
【0146】
なお、本実施の形態では、管理者による操作手段58の操作に基づいて連結手段60にて水中航走体修正情報及び水上中継機修正情報を生成する態様としたが、管理者の操作に依らず連結手段60(又は操作手段58)において自動的に水中航走体修正情報及び水上中継機修正情報を生成するようにしてもよい。
【0147】
例えば、第2水中航走体102から送信されてきた撮像画像を画像処理して、目標物(例えば、検査や修理の対象となる構造体)の特徴(形状、色等)から画像内において目標物が表示されている目標位置を特定し、当該目標位置が撮像画像の中心に位置するように第2水中航走体102を移動させるための水中航走体修正情報を生成するようにしてもよい。すなわち、画像内において画像の中心位置から現在の目標位置のずれの方向及び大きさに基づいて当該方向に向けて当該ずれ量に対応する距離だけ第2水中航走体102を移動させるように水中航走体修正情報を生成してもよい。同様に、例えば、第1水中航走体100から送信されてきた撮像画像を画像処理して、目標物(例えば、追従する第2水中航走体102)の特徴(形状、色等)から画像内において目標物が表示されている目標位置を特定し、当該目標位置が撮像画像の中心に位置するように第1水中航走体100を移動させるための水中航走体修正情報を生成するようにしてもよい。すなわち、画像内において画像の中心位置から現在の目標位置のずれの方向及び大きさに基づいて当該方向に向けて当該ずれ量に対応する距離だけ第1水中航走体100を移動させるように水中航走体修正情報を生成してもよい。また、水上中継機200から送信されてきた撮像画像を画像処理して、目標物(例えば、追従する第1水中航走体100)の特徴(形状、色等)から画像内において目標物が表示されている目標位置を特定し、当該目標位置が撮像画像の中心に位置するように水上中継機200を移動させるための水上中継機修正情報を生成するようにしてもよい。すなわち、画像内において画像の中心位置から現在の目標位置のずれの方向及び大きさに基づいて当該方向に向けて当該ずれ量に対応する距離だけ水上中継機200を移動させるように水上中継機修正情報を生成してもよい。
【0148】
このとき、撮像画像内における目標物の大きさに基づいて第1水中航走体100、第2水中航走体102及び水上中継機200と目標物との距離を求め、当該距離に応じて水中航走体修正情報や水上中継機修正情報を修正する量を調整するようにしてもよい。
【0149】
なお、連結手段60(又は操作手段58)において自動的に水中航走体修正情報や水上中継機修正情報を生成する場合、画像表示手段56に撮像画像を表示させることによって管理者に状況を把握させる必要がないので、画像表示手段56に実態としての画像を表示しないようにしてもよい。
【0150】
[水中航走体及び水上中継機の投入及び運用時の処理]
以下、
図6のフローチャートを参照して、第1水中航走体100、第2水中航走体102及び水上中継機200の投入及び運用時の処理について説明する。本実施の形態では、水上の母船300から第1水中航走体100、第2水中航走体102及び水上中継機200を投入し、水中にある点検対象物を検査する処理について説明する。
【0151】
なお、以下では、点検対象物を周囲に線状構造部を有した洋上風力発電設備を点検する例について説明するが、点検対象物はこれに限定されるものではない。また、行う作業も点検に限定されるものでなく、水上及び水中における他の作業等を行うようにしてもよい。
【0152】
ステップS10では、母船300から第1水中航走体100及び第2水中航走体102を水中に投入する作業が行われる。当該ステップは、航走体投入ステップに相当する。投入時において、第1水中航走体100の握持手段23によって第2水中航走体102を保有した状態で投入を行う。
【0153】
なお、当該ステップにおいて、第1水中航走体100及び第2水中航走体102における深度(高度)及び速度の計測値が妥当な値であるか否かの判定を行ってもよい。第1水中航走体100の航走体位置推定手段20及び第2水中航走体102の航走体位置推定手段20の水中位置の推定値において深度(高度)及び速度の推定値が妥当な値であるか否かが確認される。妥当な値でなければ、第1水中航走体100又は第2水中航走体102の航走体位置推定手段20の設定及び調整を行うことが好適である。
【0154】
ステップS12では、母船300から水上中継機200を投入する作業が行われる。当該ステップは、中継機投入ステップに相当する。水上中継機200を水上に投入して水平位置(緯度及び経度)を所定の位置に保持する。また、当該ステップにおいて、中継機撮像手段42による水中の撮像を行い、撮像処理及び撮像画像の送受信処理が適切に実行できるかを確認してもよい。
【0155】
ステップS14では、第1水中航走体100と水上中継機200を互いに鉛直な位置に臨ませる処理が行われる。当該ステップは、鉛直位置確保ステップに相当する。まず、第1水中航走体100を水中に降下させる。そして、第1水中航走体100と水上中継機200の鉛直位置関係を確認する処理が行われる。母船300において、水上中継機200を介して第1水中航走体100から送信されてくる自己位置における水平位置(緯度及び経度)と水上中継機200から送信されてくる自己位置における水平位置(緯度及び経度)から第1水中航走体100と水上中継機200とが互いに鉛直な位置関係にあるか否かが判定される。ここで、鉛直な位置関係とは、水中にある第1水中航走体100と水上にある水上中継機200とが互いに鉛直な位置にあることを意味する。ただし、第1水中航走体100と水上中継機200とが完全に鉛直な位置関係にある必要はなく、情報伝送線24の余裕等に応じて第1水中航走体100及び水上中継機200の航走や処理の障害とならない程度に略鉛直な位置関係にあればよい。第1水中航走体100と水上中継機200が鉛直な位置関係になければ、母船300の操作手段58を用いて、第1水中航走体100及び水上中継機200に対して互いに鉛直な位置関係となるように操作を行う。
【0156】
ステップS16では、水上中継機200の位置情報を第1水中航走体100の初期位置の位置情報として設定する処理が行われる。当該ステップは、初期位置入力ステップに相当する。第1水中航走体100と水上中継機200とが略鉛直な位置に保持された状態において、母船300は水上中継機200の自己位置(緯度及び経度)を取得し、水上中継機200の自己位置(緯度及び経度)を第1水中航走体100へ送信する。第1水中航走体100は、水上中継機200の自己位置(緯度及び経度)を初期位置(緯度及び経度)として設定する。
【0157】
以上のように、母船300から第1水中航走体100、第2水中航走体102及び水上中継機200を投入する処理が実現される。なお、本実施の形態では、母船300から第1水中航走体100及び水上中継機200を投入する処理を行う態様について説明したが、母船300に代えて陸上や他の浮体上から第1水中航走体100、第2水中航走体102及び水上中継機200を投入する態様としてもよい。
【0158】
ステップS18では、母船300から水上中継機200へ目標位置の情報が送信される。当該ステップは、目標位置設定ステップに相当する。オペレータの操作等によって、母船300の位置設定手段54によって水上中継機200の目標位置となる初期位置及びウェイポイントの情報が設定され、母船300の通信手段62及び水上中継機200の通信手段36を介して水上中継機200に対して目標位置の設定が行われる。目標位置の情報は、記憶手段34に記憶される。具体的には、水上中継機200に搭載された無線通信器26を用いた無線通信によって水上中継機200に目標位置の設定が行われる。水上中継機200の目標位置は、初期位置及びウェイポイントを示す目標緯度及び目標経度の情報を含む。
【0159】
ステップS20では、第1水中航走体100への目標位置の入力が行われる。当該ステップは、目標位置入力ステップに相当する。水上中継機200を介して母船300から第1水中航走体100へ目標位置の情報が送信される。オペレータの操作等によって、母船300の位置設定手段54によって第1水中航走体100の目標位置となる初期位置及びウェイポイントの情報が設定され、母船300の通信手段62、水上中継機200の通信手段36を介して水上中継機200に当該目標位置が送信される。さらに、水上中継機200の通信手段36及び第1水中航走体100の通信手段16を介して水上中継機200から第1水中航走体100へ当該目標位置が入力される。具体的には、水上中継機200と第1水中航走体100とを接続する情報伝送線24を用いた有線通信によって第1水中航走体100に目標位置が入力される。目標位置の情報は、記憶手段14に記憶される。第1水中航走体100の目標位置は、初期位置及びウェイポイントを示す目標緯度、目標経度及び目標深度の情報を含む。
【0160】
ステップS22では、第1水中航走体100及び水上中継機200の航行の制御が行われる。当該ステップは、航走制御ステップに相当する。
【0161】
水上中継機200の制御手段32は、記憶手段34に記憶されている初期位置及びウェイポイントを所定の周期毎に順に読み出して現在の目標位置とし、水上中継機200を移動させる処理を行う。
【0162】
まず、水上中継機200において位置の計測が行われる。水上中継機200では、衛星測位システム(GNSS)等を含む中継機位置計測手段40によって機体30の現在の位置が計測される。そして、水上中継機200が現在の目標位置の到達範囲にあるか否かを判定する処理が行われる。制御手段32は、中継機位置計測手段40から機体30の現在の位置を取得し、現在の位置が現在の目標位置から所定の到達範囲内にあるか否かを判定する。到達範囲は、現在の目標位置からある程度広がった範囲に設定することができ、例えば、現在の目標位置から所定の半径の円内に設定される。現在の位置が現在の目標位置から所定の到達範囲内にあれば後述する第1水中航走体100及び水上中継機200を目標位置に維持する処理を実行する。
【0163】
現在の位置が現在の目標位置から所定の到達範囲内になければ、水上中継機200の航走方向の方位が計測される。水上中継機200では、姿勢方位基準装置(AHRS)等を含む中継機位置計測手段40によって機体30の現在の航走方向の方位が計測される。その後、水上中継機200を現在の目標位置に向けて航走させる処理が行われる。水上中継機200の制御手段32は、計測された現在の位置と計測された現在の方位に基づいて、水上中継機200を現在の目標位置へ移動させるように目標進行方向及び目標速度を決定する。そして、制御手段32は、水上中継機200が目標進行方向に対して目標速度で移動するように中継機推進手段38を制御することによって現在の目標位置に向けて水上中継機200を航走させる。
【0164】
第1水中航走体100の制御手段12は、記憶手段14に記憶されている初期位置及びウェイポイントを所定の周期毎に順に読み出して現在の目標位置とし、第1水中航走体100を移動させる処理を行う。
【0165】
まず、第1水中航走体100において位置の計測が行われる。第1水中航走体100では、航走体位置推定手段20によって初期位置からの移動に基づいて艇体10の現在の位置が推定される。そして、第1水中航走体100が現在の目標位置の到達範囲にあるか否かを判定する処理が行われる。制御手段12は、航走体位置推定手段20から艇体10の現在の位置の推定値を取得し、現在の位置の推定値が現在の目標位置から所定の到達範囲内にあるか否かを判定する。到達範囲は、現在の目標位置からある程度広がった範囲に設定することができ、例えば、現在の目標位置から所定の半径の球内に設定される。現在の位置が現在の目標位置から所定の到達範囲内にあれば後述する第1水中航走体100及び水上中継機200を目標位置に維持する処理を実行する。
【0166】
現在の位置が現在の目標位置から所定の到達範囲内になければ、第1水中航走体100の航走方向の方位が計測される。第1水中航走体100では、姿勢方位基準装置(AHRS)等を含む航走体位置推定手段20によって艇体10の現在の航走方向の方位が計測される。続いて、第1水中航走体100を現在の目標位置に向けて航走させる処理が行われる。第1水中航走体100の制御手段12は、推定された現在の位置と計測された現在の方位に基づいて、第1水中航走体100を現在の目標位置へ移動させるように目標進行方向及び目標速度を決定する。そして、制御手段12は、第1水中航走体100が目標進行方向に対して目標速度で移動するように航走手段18を制御することによって現在の目標位置に向けて第1水中航走体100を航走させる。
【0167】
なお、第1水中航走体100の目標速度は、水上中継機200の目標速度と一致させるようにしてもよい。これにより、第1水中航走体100と水上中継機200とが同じ速度で航走することになり、航走時においても第1水中航走体100と水上中継機200とを略鉛直な位置関係に維持することができる。ただし、第1水中航走体100と水上中継機200と間の距離が離れたとしても、情報伝送線24によってより速く航走している方がより遅く航走している方を引っ張ることになり、第1水中航走体100と水上中継機200との略鉛直な位置関係は大きくずれることはない。
【0168】
第1水中航走体100及び水上中継機200を目標位置に維持する処理は以下のように行われる。第1水中航走体100及び水上中継機200が共に目標位置に到達して位置を保持しているか否かが判定される。水上中継機200が目標位置の到達範囲内にあることが確認され、第1水中航走体100が目標位置の到達範囲内にあることが確認されたうえで、水上中継機200及び第1水中航走体100が共に目標位置を維持しているか否かが判定される。第1水中航走体100及び水上中継機200が共に目標位置を維持している場合には航走処理を終了する。水上中継機200が目標位置を維持していない場合には、水上中継機200が目標位置を維持するように制御を行う。第1水中航走体100が目標位置を維持していない場合には第1水中航走体100が目標位置を維持するように制御を行う。
【0169】
なお、第1水中航走体100及び水上中継機200が目標位置に到達した後、第1水中航走体100を操作することによって移動させる際、水上中継機200は第1水中航走体100の水平位置(緯度及び経度)に追従する第1水中航走体100の追尾モードに設定する。例えば、情報伝送線の余裕がなくなった場合に、第1水中航走体100の航走体位置推定手段20にて推定された自己位置(緯度及び経度)が水上中継機200へ送信され、当該推定された自己位置(緯度及び経度)を目標位置として中継機位置計測手段40で計測された自己位置が当該目標位置に近づくように水上中継機200を航走させればよい。
【0170】
ただし、第1水中航走体100の航走に伴って水上中継機200が過度に敏感に動き回ることを防ぐために、第1水中航走体100の水平位置(緯度及び経度)と水上中継機200の水平位置(緯度及び経度)の間の距離に許容範囲を設定してもよい。例えば、第1水中航走体100の水平位置(緯度及び経度)と水上中継機200の水平位置(緯度及び経度)の間の距離が5m以内であれば水上中継機200が第1水中航走体100を追尾しないように設定すればよい。
【0171】
ステップS24では、第2水中航走体102を開放する処理が行われる。当該ステップは、航走体開放ステップに相当する。ステップS22において、第1水中航走体100及び水上中継機200が目標緯度及び目標経度に到達し、第1水中航走体100が目標深度に到達すると、第1水中航走体100から第2水中航走体102が開放される。オペレータの操作等によって、母船300から水上中継機200及び情報伝送線24を介して第1水中航走体100に対して握持手段23を解除して第2水中航走体102を開放するように指示が送信される。第1水中航走体100は、当該指示を受信すると、握持手段23を解除して第2水中航走体102を水中にて開放する。
【0172】
ステップS26では、点検対象物の点検が行われる。当該ステップは、点検ステップに相当する。ステップS22において第1水中航走体100から開放された第2水中航走体102を点検対象物に接近させ、第2水中航走体102の航走体撮像手段22を用いて点検対象物の映像を撮像する。このとき、第2水中航走体102の照明手段19を用いて点検対象物を明るく照らした状態で撮像することができる。また、オペレータは、母船300の操作手段58を用いて、第2水中航走体102に対して点検対象物との距離、角度、画角及び照明等の撮像条件を設定することができる。
【0173】
撮像された映像の情報は、第2水中航走体102の光通信手段17と第1水中航走体100の光通信手段17を用いて、第2水中航走体102から第1水中航走体100へ送信される。また、映像の情報は、情報伝送線24を介して第1水中航走体100から水上中継機200へ転送され、さらに無線通信器26を介して水上中継機200から母船300へ転送される。このようにして、第2水中航走体102において撮像された映像が第2水中航走体102から母船300へリアルタイムで送信される。
【0174】
また、オペレータは、母船300の操作手段58を用いて、第2水中航走体102の航走を制御することができる。オペレータは、第2水中航走体102で撮像された映像を母船300の画像表示手段56によって確認しながら、操作手段58を操作することによって、第2水中航走体102の位置を修正することができる。すなわち、母船300から第2水中航走体102に対して水中航走体修正情報を送信することによって第2水中航走体102の水平位置(緯度及び経度)及び深度(高度)を所望の位置に修正する。
【0175】
なお、第2水中航走体102の航走制御は、第2水中航走体102に対して航走の目標位置となるウェイポイントを設定することによって行ってもよい。すなわち、母船300の位置設定手段54によって第2水中航走体102の目標位置となるウェイポイントの情報が設定され、水上中継機200及び第1水中航走体100を介して第2水中航走体102に当該情報を設定する。第2水中航走体102は、設定されたウェイポイントを所定の周期毎に順次読み出して顕在の目標位置とし、第2水中航走体102を移動させる処理を行う。
【0176】
ここで、第2水中航走体102は、第1水中航走体100に対してケーブルレスであるので、海底から係留索によって繋がれ、電力線が付設された洋上風力発電設備のような周囲に線状構造部を有する点検対象物であっても情報伝送線24等が絡まったり、引っ掛かったりすることなく点検や作業を行うことができる。
【0177】
ステップS28では、第1水中航走体100及び水上中継機200による追尾制御が行われる。当該ステップは、追尾ステップに相当する。ステップS26において第2水中航走体102による点検対象物の撮像が行われると共に、第1水中航走体100の航走体撮像手段22によって第2水中航走体102の映像を撮像する。このとき、第1水中航走体100の照明手段19を用いて第2水中航走体102を明るく照らした状態で撮像することができる。また、オペレータは、母船300の操作手段58を用いて、第1水中航走体100に対して第2水中航走体102との距離、角度、画角及び照明等の撮像条件を設定することができる。
【0178】
撮像された映像の情報は、情報伝送線24を介して第1水中航走体100から水上中継機200へ送信される。さらに、無線通信器26を介して水上中継機200から母船300へ転送される。このようにして、第1水中航走体100において撮像された映像が第1水中航走体100から母船300へリアルタイムで送信される。オペレータは、母船300の操作手段58を用いて、第1水中航走体100が第2水中航走体102を追尾するように制御することができる。オペレータは、第1水中航走体100で撮像された映像を母船300の画像表示手段56によって確認しながら、操作手段58を操作することによって、第1水中航走体100の位置を修正することができる。すなわち、母船300から第1水中航走体100に対して水中航走体修正情報を送信することによって第1水中航走体100が第2水中航走体102に対して所定の距離範囲内及び所定の相対方位範囲内を保ちながら追尾するように水平位置(緯度及び経度)及び深度(高度)を所望の位置に修正する。
【0179】
ここで、第1水中航走体100と水上中継機200とを繋ぐ情報伝送線24が水中の点検対象物と干渉しないように第1水中航走体100を移動させる。また、第1水中航走体100からみた第2水中航走体102が点検対象物の物陰に隠れてしまわないように、第1水中航走体100を位置させることが好適である。
【0180】
以上のように、第1水中航走体100は、情報伝送線24によって水上中継機200と高速の通信を確立しつつ、洋上風力発電設備のような点検対象物から離れて安全な位置で第2水中航走体102との光通信を行いながら第2水中航走体102を追尾することができる。
【0181】
さらに、必要に応じて、水上中継機200によって第1水中航走体100を追尾する制御が行われる。当該ステップは、中継機追従ステップに相当する。当該制御は、第1水中航走体100と水上中継機200とを繋ぐ情報伝送線24に余裕がなくなったとき、第1水中航走体100と水上中継機200が略鉛直な位置を保持できていないとき、略鉛直な位置を保持できているか否かが不明なとき等に実行される。
【0182】
母船300から水上中継機200へ撮像制御信号を送信することで、水上中継機200の中継機撮像手段42によって水上中継機200の近傍領域の水中が撮像される。撮像された映像は、水上中継機200から母船300へ送信され、当該画像が母船300の画像表示手段56に表示される。続いて、第1水中航走体100を確認可能か否かが判定される。母船300上のオペレータは、画像表示手段56に表示された画像において第1水中航走体100が確認できるか否かを判定する。画像において第1水中航走体100が確認できなかった場合、水上中継機200を介して母船300から第1水中航走体100へ上昇制御信号を送信し、第1水中航走体100を上昇させる処理が行われる。第1水中航走体100は、上昇制御信号を受信すると、水上中継機200によって撮像された映像に第1水中航走体100が確認できるまで第1水中航走体100を上昇させる。このとき、第1水中航走体100と共に第2水中航走体102を上昇させるようにしてもよい。
【0183】
画像において第1水中航走体100が確認できた場合、第1水中航走体100と水上中継機200とが適切な鉛直位置の関係にあるか否かが判定される。母船300上のオペレータは、画像表示手段56に表示された画像において第1水中航走体100と水上中継機200が略鉛直な位置関係にあるか否かを判定する。画像において第1水中航走体100と水上中継機200が略鉛直な位置関係になければ、水上中継機200を移動させて、第1水中航走体100と水上中継機200を略鉛直な位置関係に修正する処理が行われる。母船300において画像表示手段56に表示された画像を確認しながらオペレータが操作手段58を操作することによって水上中継機200へ移動制御信号が送信され、水上中継機200が第1水中航走体100に対して略鉛直な位置関係となるように水上中継機200を航走させる。その後、第1水中航走体100を目標深度に降下させる処理が行われる。このとき、第1水中航走体100と共に第2水中航走体102を移動及び下降させるようにしてもよい。
【0184】
また、必要に応じて、水上中継機200と母船300との通信を維持する制御が行われる。当該ステップは、中継機移動ステップに相当する。当該制御は、水上中継機200と母船300との無線通信が確立されなくなったときに実行される。
【0185】
水上中継機200と母船300との無線通信の状況が悪化又は不能となると、ステップS16において入力された初期位置の情報に基づいて母船300へ近づくように水上中継機200を移動させる制御が行われる。
【0186】
また、他の水上中継機200を介して、マルチホップ通信(メッシュWi-Fi通信)によって水上中継機200と母船300との通信が確立されるようにしてもよい。例えば、水上中継機200-1と母船300との距離が遠くて無線通信の状況が悪化又は不能となった場合、水上中継機200-1と母船300との間に位置する別の水上中継機200-2に対して母船300から移動の制御を行うことによって、水上中継機200-1と母船300との間に水上中継機200-2を移動させる。これによって、水上中継機200-2を中継して、水上中継機200-1と母船300との通信をより確実に設立させることができる。
【0187】
ステップS30では、点検が終了したか否かの判定が行われる。当該ステップは、点検終了ステップに相当する。点検が終了していない場合、ステップS26に処理を戻し、第2水中航走体102による点検対象物の点検を継続する。点検を終了する場合、後述する揚収処理に移行させる。
【0188】
以上のように、水上中継機と水中航走体との連結システムにおいて第1水中航走体100、第2水中航走体102及び水上中継機200の投入、航走、点検の処理が実現される。
【0189】
[水中航走体及び水上中継機の揚収時の処理]
以下、
図7のフローチャートを参照して、第1水中航走体100、第2水中航走体102及び水上中継機200の揚収時の処理について説明する。本実施の形態では、水中にある第1水中航走体100及び第2水中航走体102並びに水上にある水上中継機200を水上の母船300に揚収する処理について説明する。
【0190】
ステップS40では、第1水中航走体100によって第2水中航走体102を保有する処理が行われる。当該ステップは、航走体保有ステップに相当する。第2水中航走体102による点検対象物の点検が終了すると、オペレータは、母船300の操作手段58を用いて操作することによって、第2水中航走体102を第1水中航走体100の近傍まで移動させる。このとき、第1水中航走体100の航走体撮像手段22及び第2水中航走体102の航走体撮像手段22によって第1水中航走体100及び第2水中航走体102を互いに撮像し合い、撮像された映像が水上中継機200を介して母船300へ送信される。母船300では、当該画像が画像表示手段56に表示される。オペレータは、当該画像を確認しながら、第2水中航走体102が第1水中航走体100に近づくように第2水中航走体102を航走制御する。そして、第1水中航走体100の握持手段23によって第2水中航走体102を握持することで、第1水中航走体100に第2水中航走体102を保有させる。保有の形態は、握持すること以外にもドッキングすることや収容すること等、様々な形態をとり得る。第1水中航走体100に第2水中航走体102を保有させるには、第1水中航走体100よりも第2水中航走体102が小型であることが好適であり、複雑な形状の点検対象物や線状構造部を有する点検対象物を点検する上でも小型であることが好適である。
【0191】
ステップS42では、第1水中航走体100及び水上中継機200の記憶された初期位置を呼び出す処理が行われる。当該ステップは、初期位置呼出ステップに相当する。母船300と水上中継機200との間に無線通信によって、母船300から水上中継機200に対して初期位置へ戻るように指示が行われる。これに伴って、情報伝送線24を介して、水上中継機200から第1水中航走体100へと初期位置へ戻る指示が転送される。初期位置は、ステップS16において第1水中航走体100及び水上中継機200に入力され記憶された情報を用いるが、母船300の現在位置に基づいて第1水中航走体100及び水上中継機200に新たに設定するようにしてもよい。母船300が初期から移動している場合は、新たに設定された現在位置も解釈上は、初期位置に含めるものとする。
【0192】
ステップS44では、第1水中航走体100及び水上中継機200を初期位置へ航行させる制御が行われる。当該ステップは、航走制御ステップに相当する。当該ステップは、第1水中航走体100及び水上中継機200の目標位置をステップS42において設定された初期位置に変更して上記ステップS22と同様に行うことができる。航走制御によって、第1水中航走体100、第1水中航走体100に保有された第2水中航走体102及び水上中継機200は母船300の近傍まで移動する。
【0193】
ステップS46では、第1水中航走体100、第2水中航走体102及び水上中継機200の揚収が行われる。当該ステップは、揚収ステップに相当する。まず、水上中継機200が母船300上に引き上げられる。さらに、水上中継機200と第1水中航走体100とを繋ぐ情報伝送線24を手繰ることによって、第1水中航走体100及び第1水中航走体100に保有された第2水中航走体102を母船300上に引き上げる。
【0194】
以上のように、第1水中航走体100及び第2水中航走体102並びに水上にある水上中継機200を水上の母船300に揚収することができる。
【産業上の利用可能性】
【0195】
本発明は、水中航走体における高精度の航走制御や目標物の監視等に適用することができる。すなわち、水中航走体と水上中継機との位置関係を保持しつつ水中航走体による水中の目標物の検査、監視、修繕等において作業効率を高めることができる。例えば、水底の環境調査(海草、海藻、珊瑚等)、水産資源調査(底生魚、貝類等)、水産設備検査(生け簀、魚礁等)、港湾設備の水中部分の検査(岸壁、防波堤等)、洋上風力発電設備の水中部分の検査、石油ガス設備の水底パイプライン検査、船底検査、ダム湖の水中部分の検査等に利用することができる。
【符号の説明】
【0196】
10 艇体、12 制御手段、14 記憶手段、16 通信手段、17 光通信手段、18 航走手段、19 照明手段、20 航走体位置推定手段、22 航走体撮像手段、22a 光学フィルタ、23 握持手段、24 情報伝送線、26 無線通信器、30 機体、32 制御手段、34 記憶手段、36 通信手段、38 中継機推進手段、40 中継機位置計測手段、40a 受信機、42 中継機撮像手段、50 艇体、52 測位手段、54 位置設定手段、56 画像表示手段、58 操作手段、60 連結手段、62 通信手段、100 第1水中航走体、102 第2水中航走体、200 水上中継機、300 母船、400 ケーブル、500 点検対象物。