(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118548
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】リード線装着部品およびリード線装着部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 7/00 20060101AFI20240826BHJP
H05K 5/06 20060101ALI20240826BHJP
H01R 9/16 20060101ALI20240826BHJP
H02G 3/22 20060101ALI20240826BHJP
H02G 15/013 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
H05K7/00 M
H05K5/06 A
H01R9/16 101
H02G3/22
H02G15/013
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024889
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000128175
【氏名又は名称】株式会社エフ・シー・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】藤原 浩実
(72)【発明者】
【氏名】深田 純一
(72)【発明者】
【氏名】石村 潤
(72)【発明者】
【氏名】坂下 和己
【テーマコード(参考)】
4E352
4E360
5E086
5G363
5G375
【Fターム(参考)】
4E352AA05
4E352BB02
4E352BB06
4E352BB10
4E352BB15
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5E086PP01
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5E086QQ05
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5G375BB48
5G375CB10
5G375EA17
(57)【要約】
【課題】シール性に優れたリード線装着部品を提供すること。
【解決手段】リード線装着部品10は、導体22および導体22の外周面を被覆する絶縁体26を備えたリード線20と、リード線20が挿通される貫通孔40を有し、かつ、リード線20を保持するリード線保持部材30と、導体22のうち貫通孔40に挿通された部分の横断面の全体に充填され、かつ、液体が通過不能な第1充填剤50と、第1充填剤50が充填された導体22とリード線保持部材30との間かつ周方向の全体に亘って充填され、かつ、液体が通過不能な第2充填剤60と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体および前記導体の外周面を被覆する絶縁体を備えたリード線と、
前記リード線が挿通される貫通孔を有し、かつ、前記リード線を保持するリード線保持部材と、
前記導体のうち前記貫通孔に挿通された部分の横断面の全体に充填され、かつ、液体が通過不能な第1充填剤と、
前記第1充填剤が充填された前記導体と前記リード線保持部材との間かつ周方向の全体に亘って充填され、かつ、液体が通過不能な第2充填剤と、を備えている、リード線装着部品。
【請求項2】
前記第1充填剤は、前記導体のうち前記貫通孔に挿通された部分であって前記絶縁体によって被覆されていない部分の横断面の全体に充填されている、請求項1に記載のリード線装着部品。
【請求項3】
前記第2充填剤の弾性率は、前記第1充填剤の弾性率よりも高い、請求項1または2に記載のリード線装着部品。
【請求項4】
前記リード線保持部材の弾性率は、前記第2充填剤の弾性率より低くかつ前記第1充填剤の弾性率よりも高い、請求項3に記載のリード線装着部品。
【請求項5】
前記リード線保持部材の弾性率は、前記第2充填剤の弾性率より高い、請求項3に記載のリード線装着部品。
【請求項6】
前記絶縁体は、前記導体のうち前記第1充填剤が充填された部分の外周面を被覆する充填被覆部を備え、
前記第2充填剤は、前記充填被覆部と前記リード線保持部材との間かつ周方向の全体に亘ってさらに充填されている、請求項1または2に記載のリード線装着部品。
【請求項7】
前記第2充填剤は、前記リード線のうち前記貫通孔に挿通された部分の前記絶縁体と前記リード線保持部材との間かつ周方向の全体に亘ってさらに充填されている、請求項1または2に記載のリード線装着部品。
【請求項8】
請求項1または2に記載のリード線装着部品と、
液体を収容する液体収容室と、前記液体収容室に連通しかつ前記リード線装着部品が取り付けられる取り付け孔と、を有する液体収容ケースと、を備え、
前記第1充填剤および前記第2充填剤は、前記液体収容室内に配置されている、リード線付き液体収容ケース。
【請求項9】
請求項1または2に記載のリード線装着部品と、
液体を収容する液体収容室と、前記液体収容室に連通しかつ前記リード線装着部品が取り付けられる取り付け孔と、を有する液体収容ケースと、を備え、
前記第1充填剤および前記第2充填剤は、前記液体収容ケースの外側に配置されている、リード線付き液体収容ケース。
【請求項10】
導体および前記導体の外周面を被覆する絶縁体を備えたリード線と、前記リード線が挿通される貫通孔を有し、かつ、前記リード線を保持するリード線保持部材と、を備えたリード線装着部品の製造方法であって、
前記リード線において、前記導体が露出する露出部分を形成する形成工程と、
第1粘度を有しかつ液体が通過不能な第1充填剤を前記露出部分の横断面の全体に亘って充填する第1充填工程と、
前記露出部分を前記貫通孔内に配置する配置工程と、
第2粘度を有しかつ液体が通過不能な第2充填剤を前記第1充填剤が充填された前記露出部分と前記リード線保持部材との間かつ周方向の全体に亘って充填する第2充填工程と、を含み、
前記第1粘度は、前記第2粘度よりも低い、製造方法。
【請求項11】
前記配置工程は、前記第1充填工程の後に実施される、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記配置工程は、前記第1充填工程の前に実施される、請求項10に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リード線装着部品およびリード線装着部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等の変速機のケースの内部に配置された電子部品等と、ケースの外部に配置された電子部品等とを接続するためにリード線が用いられている。リード線は、例えば、リード線を保持する保持部材を介してケースに形成された貫通孔に挿通され、一端がケースの内部に配置され、他端がケースの外部に配置されている。ケース内には、例えば、オイル等の液体が充填されており、オイル内にリード線が位置する。
【0003】
例えば、特許文献1には、リード線で液体容器内外を接続する構造において、リード線を保持する保持部材が液体容器の取り付け孔に装着された技術が開示されている。リード線を介して液体容器内の液体が液体容器の外部に流出しないように、リード線の絶縁被膜(絶縁体)を削除した部分の芯線(導体)に充填剤が充填されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで特許文献1の技術では、リード線の芯線の内部に充填剤を充填する必要があるため、比較的粘度の低い充填剤を選定する必要がある。しかしながら、低粘度の充填剤を用いた場合には、充填剤がリード線と保持部材との隙間から外部に漏れ出してしまい、リード線と保持部材との間に隙間が生じてしまう虞がある。リード線と保持部材との間に隙間が存在してしまうと、液体容器の内部に収容された液体が該隙間から外部に漏れ出す虞がある。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、シール性に優れたリード線装着部品およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るリード線装着部品は、導体および前記導体の外周面を被覆する絶縁体を備えたリード線と、前記リード線が挿通される貫通孔を有し、かつ、前記リード線を保持するリード線保持部材と、前記導体のうち前記貫通孔に挿通された部分の横断面の全体に充填され、かつ、液体が通過不能な第1充填剤と、前記第1充填剤が充填された前記導体と前記リード線保持部材との間かつ周方向の全体に亘って充填され、かつ、液体が通過不能な第2充填剤と、を備えている。
【0008】
本発明に係るリード線装着部品によると、導体のうち貫通孔に挿通された部分の横断面の全体には、液体が通過不能な第1充填剤が充填されている。このため、リード線の一部が液体内に配置されており、リード線の一端から導体内を液体が流れたとしても第1充填剤によって液体の流れが阻止される。即ち、リード線の一端から他端に液体が流れることが抑制される。また、第1充填剤が充填された導体とリード線保持部材との間かつ周方向の全体に亘って液体が通過不能な第2充填剤が充填されている。このため、リード線およびリード線保持部材の一部が液体内に配置されていたとしても第2充填剤によってリード線とリード線保持部材との間から液体が流れることが阻止される。
【0009】
また、本発明に係るリード線装着部品の製造方法は、導体および前記導体の外周面を被覆する絶縁体を備えたリード線と、前記リード線が挿通される貫通孔を有し、かつ、前記リード線を保持するリード線保持部材と、を備えたリード線装着部品の製造方法であって、前記リード線において、前記導体が露出する露出部分を形成する形成工程と、第1粘度を有しかつ液体が通過不能な第1充填剤を前記露出部分の横断面の全体に亘って充填する第1充填工程と、前記露出部分を前記貫通孔内に配置する配置工程と、第2粘度を有しかつ液体が通過不能な第2充填剤を前記第1充填剤が充填された前記露出部分と前記リード線保持部材との間かつ周方向の全体に亘って充填する第2充填工程と、を含み、前記第1粘度は、前記第2粘度よりも低い。
【0010】
本発明に係るリード線装着部品の製造方法によると、第1充填工程において、露出部分の横断面の全体に亘って液体が通過不能な第1充填剤を充填する。ここで、第1充填剤の第1粘度は第2充填剤の第2粘度より低い。このため、露出部分の横断面の全体に亘ってより確実に第1充填剤を充填することができる。これにより、リード線の一部が液体内に配置されており、リード線の一端から導体内を液体が流れたとしても第1充填剤によって液体の流れが阻止される。即ち、リード線の一端から他端に液体が流れることが抑制される。また、第2充填工程において、第1充填剤が充填された露出部分とリード線保持部材との間かつ周方向の全体に亘って液体が通過不能な第2充填剤を充填する。ここで、第2充填剤の第2粘度は第1充填剤の第1粘度より高い。このため、リード線とリード線保持部材との隙間から第2充填剤が外部に漏れず、リード線とリード線保持部材との隙間を第2充填剤によってより確実に埋めることができる。これにより、リード線およびリード線保持部材の一部が液体内に配置されていたとしても第2充填剤によってリード線とリード線保持部材との間から液体が流れることが阻止される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シール性に優れたリード線装着部品およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るリード線付き液体収容ケースの一部を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係るリード線装着部品の製造方法を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、変形例に係るリード線装着部品の製造方法を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、第1の変形例に係るリード線付き液体収容ケースの一部を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、第2の変形例に係るリード線付き液体収容ケースの一部を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、第3の変形例に係るリード線付き液体収容ケースの一部を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7は、第4の変形例に係るリード線付き液体収容ケースの一部を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るリード線装着部品の実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0014】
図1に示すように、リード線付き液体収容ケース100は、リード線装着部品10と、液体収容ケース110と、を備えている。リード線付き液体収容ケース100は、例えば、自動車等の変速機のケースやモータのケース等として用いられる。
【0015】
図1に示すように、液体収容ケース110は、液体を収容する液体収容室120と、液体収容室120に連通する取り付け孔130と、を有する。液体収容室120は、液体として例えばミッションオイルを収容する。液体収容室120は、リード線装着部品10の一部を収容する。液体収容室120は、リード線装着部品10の一端に連結された電子部品等(図示せず)を収容する。取り付け孔130は、液体収容ケース110の側壁110Wを貫通する。取り付け孔130には、リード線装着部品10が取り付けられる。
【0016】
図1に示すように、リード線装着部品10は、リード線20と、リード線20を保持するリード線保持部材30と、第1充填剤50と、第2充填剤60とを備えている。
【0017】
図1に示すように、リード線20は、導体22と、導体22の外周面を被覆する絶縁体26とを備えている。導体22は、導電性を有する金属(例えば銅やアルミニウム)の芯線から構成されている。絶縁体26は、例えば、ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂、架橋ポリエチレン、天然ゴム、合成ゴム等から構成されている。リード線20は、絶縁体26の一部が取り除かれて導体22が露出する露出部分24を有する。露出部分24は、後述する貫通孔40に挿通された部分である第1露出部分24Aと、リード線保持部材30の外側に位置する第2露出部分24Bと、を含む。
【0018】
図1に示すように、リード線保持部材30は、挿入部32と、係合部34と、抜け止め部36と、貫通孔40と、を有する。リード線保持部材30は、弾性変形可能な材料から形成されている。リード線保持部材30は、例えば、天然ゴム、合成ゴム等から形成されている。リード線保持部材30は、液体収容ケース110の取り付け孔130に装着される。挿入部32は、取り付け孔130に挿入される部分である。挿入部32は、液体収容ケース110の外部に位置する。係合部34は、取り付け孔130に係合する部分である。抜け止め部36は、取り付け孔130に装着されたリード線保持部材30が液体収容ケース110から脱落することを抑制する部材である。抜け止め部36は、液体収容ケース110の内部(より詳細には液体収容室120の内部)に位置する。係合部34の外径は、挿入部32の外径および抜け止め部36の外径よりも小さい。挿入部32の外径は、抜け止め部36の外径よりも小さい。なお、挿入部32の外径は、抜け止め部36の外径よりも大きくてもよいし、同じであってもよい。
【0019】
図1に示すように、貫通孔40は、リード線保持部材30を貫通する。貫通孔40には、リード線20が挿通される。貫通孔40は、リード線20の外径と略同一の外径を有する第1貫通孔41と、第1貫通孔41に連通しかつリード線20の外径よりも大きい内径を有する第2貫通孔42と、を含む。第1貫通孔41は、挿入部32の一部と係合部34と抜け止め部36に亘って形成されている。第2貫通孔42は、挿入部32の他の一部に形成されている。第1貫通孔41には、リード線20のうち絶縁体26によって被覆された導体22が配置される。第2貫通孔42には、絶縁体26の一部が取り除かれた導体22が配置される。本実施形態では、第2貫通孔42は、液体収容ケース110の外部に位置する。
【0020】
第1充填剤50は、液体が通過不能に構成されている。第1充填剤50は、例えば、常温環境下(例えば20℃~30℃)において硬化する物質(接着剤)である。第1充填剤50としては、例えば、嫌気性接着剤、瞬間接着剤等が挙げられる。第1充填剤50としては、例えば、アクリル樹脂系の接着剤が挙げられる。リード線20の導体22の構成により異なるが、硬化前の第1充填剤50の第1粘度は、例えば、600mPa・s以下(例えば100mPa・s~150mPa・s)である。第1粘度および後述する第2粘度は、例えば、当該分野で標準的な振動式粘度計(例えばJIS Z 8803:2011 液体の粘度測定方法に準拠した振動式粘度計)を用いて測定することができる。
【0021】
図1に示すように、第1充填剤50は、導体22のうち貫通孔40に挿通された部分の横断面の全体に充填されている。第1充填剤50は、導体22のうち貫通孔40に挿通された部分であって絶縁体26によって被覆されていない部分の横断面の全体に充填されている。本実施形態では、第1充填剤50は、導体22のうち貫通孔40に挿通された部分であって絶縁体26の一部が取り除かれた部分(即ち第1露出部分24A)の横断面の全体に充填されている。第1充填剤50は、第2貫通孔42に位置する導体22に充填されている。第1充填剤50は、導体22の隙間(芯線同士の隙間)を埋める。第1充填剤50は、液体収容ケース110の外側に配置されている。第1充填剤50が導体22の横断面の全体に充填されていることにより、導体22内を流れる液体は第1充填剤50にその移動を阻止されて、導体22を介して外部に液体が流れることが抑制される。
【0022】
第2充填剤60は、液体が通過不能に構成されている。第2充填剤60は、例えば、高温環境下(例えば80℃~200℃)において硬化する物質(接着剤)である。第2充填剤60としては、例えば、熱硬化型の接着剤や常温硬化型の接着剤等が挙げられる。第2充填剤60としては、例えば、エポキシ樹脂系の接着剤やウレタン樹脂系の接着剤が挙げられる。硬化前の第2充填剤60の第2粘度は、例えば、10000mPa・s以上(例えば10000mPa・s~30000mPa・s)である。なお、第2充填剤60は、硬化前の第2粘度が第1充填剤50の硬化前の第1粘度よりも高い限り、特に限定されない。
【0023】
図1に示すように、第2充填剤60は、第1充填剤50が充填された導体22とリード線保持部材30との間かつ周方向の全体に亘って充填されている。第2充填剤60は、第2貫通孔42に位置する第1充填剤50が充填された導体22の外側に充填されている。第2充填剤60は、第1充填剤50が充填された導体22とリード線保持部材30との隙間を埋める。第2充填剤60の厚みは、絶縁体26の厚みより大きい。第2充填剤60は、液体収容ケース110の外側に配置されている。第2充填剤60が上述の所定の位置に充填されていることにより、第1充填剤50が充填された導体22とリード線保持部材30との間を通過して液体がリード線保持部材30から外部に流れることが抑制される。このように、リード線装着部品10は、第1充填剤50および第2充填剤60を所定の位置に備えているため、シール性に優れている。
【0024】
第2充填剤60の弾性率は、第1充填剤50の弾性率よりも高い。リード線保持部材30の弾性率は、第2充填剤60の弾性率より低くかつ第1充填剤50の弾性率よりも高い。なお、リード線保持部材30の弾性率は、第2充填剤60の弾性率より高くてもよい。ここで、第1充填剤50および第2充填剤60の弾性率は、硬化後の値である。弾性率は、例えば、JIS K7181:2011(圧縮特性)やJIS K7161-1:2014(引張特性)に準じて測定することができる。
【0025】
次に、リード線装着部品10の製造方法について説明する。
図2は、リード線装着部品10の製造方法を示すフローチャートである。
図2に示すように、リード線装着部品10の製造方法は、形成工程(ステップS10)と、第1充填工程(ステップS20)と、配置工程(ステップS30)と、第2充填工程(ステップS40)と、を含む。
【0026】
形成工程(ステップS10)では、リード線20において、導体22が露出する露出部分24を形成する。形成工程(ステップS10)では、例えば、リード線20において、絶縁体26の一部を取り除いて導体22が露出する露出部分24を形成する。なお、形成工程(ステップS10)では、例えば、リード線20において、初めから絶縁体26によって被覆されていない導体22を準備することで導体22が露出する露出部分24を形成してもよい。
【0027】
第1充填工程(ステップS20)では、第1粘度を有しかつ液体が通過不能な第1充填剤50をリード線20の露出部分24の横断面の全体に亘って充填(塗布)する。ステップS20では、露出部分24に第1充填剤50を充填した後に第1充填剤50を硬化させる。
【0028】
配置工程(ステップS30)では、第1充填剤50が充填されたリード線20の露出部分24をリード線保持部材30の貫通孔40内に配置する。ここでは、第1充填剤50が充填されたリード線20の第1露出部分24Aを第2貫通孔42に配置する。
【0029】
第2充填工程(ステップS40)では、第2粘度を有しかつ液体が通過不能な第2充填剤60を第1充填剤50が充填された露出部分24とリード線保持部材30との間かつ周方向の全体に亘って充填(塗布)する。第2粘度は、第1粘度よりも高い。ステップS40では、上記の所定の位置に第2充填剤60を充填した後に第2充填剤60を硬化させる。これにより、リード線装着部品10が製造される。
【0030】
なお、上述の製造方法では、リード線20の露出部分24に第1充填剤50を充填した後にリード線20をリード線保持部材30の貫通孔40に配置しているが、これに限定されない。
図3は、リード線装着部品10の他の製造方法を示すフローチャートである。
図3に示すように、リード線装着部品10の他の製造方法は、形成工程(ステップS10)と、配置工程(ステップS120)と、第1充填工程(ステップS130)と、第2充填工程(ステップS40)と、を含む。なお、形成工程(ステップS10)および第2充填工程(ステップS40)は、上述の製造方法と同じであるため、説明を省略する。
【0031】
配置工程(ステップS120)では、リード線20の露出部分24をリード線保持部材30の貫通孔40内に配置する。ここでは、リード線20の第1露出部分24Aを第2貫通孔42に配置する。ステップS120では、露出部分24に第1充填剤50はまだ充填されていない。
【0032】
第1充填工程(ステップS130)では、第1粘度を有しかつ液体が通過不能な第1充填剤50を貫通孔40内に配置されたリード線20の露出部分24の横断面の全体に亘って充填する。ステップS130では、露出部分24に第1充填剤50を充填した後に第1充填剤50を硬化させる。
【0033】
以上のように、本実施形態のリード線装着部品10によると、導体22のうち貫通孔40に挿通された部分の横断面の全体には、液体が通過不能な第1充填剤50が充填されている。このため、リード線20の一部が液体内に配置されており、リード線20の一端から導体22内を液体が流れたとしても第1充填剤50によって液体の流れが阻止される。即ち、リード線20の一端から他端に液体が流れることが抑制される。また、第1充填剤50が充填された導体22とリード線保持部材30との間かつ周方向の全体に亘って液体が通過不能な第2充填剤60が充填されている。このため、リード線20およびリード線保持部材30の一部が液体内に配置されていたとしても第2充填剤60によってリード線20とリード線保持部材30との間から液体が流れることが阻止される。
【0034】
本実施形態のリード線装着部品10では、第1充填剤50は、導体22のうち貫通孔40に挿通された部分であって絶縁体26によって被覆されていない部分の横断面の全体に充填されている。上記態様によれば、リード線20の一端から他端に液体が流れることがより確実に抑制される。
【0035】
本実施形態のリード線装着部品10では、第2充填剤60の弾性率は、第1充填剤50の弾性率よりも高い。上記態様によれば、導体22の動きに対して第2充填剤60が追従して動き易くなるため、シール性に優れる。
【0036】
本実施形態のリード線装着部品10では、リード線保持部材30の弾性率は、第2充填剤60の弾性率より低くかつ第1充填剤50の弾性率よりも高い。上記態様によれば、例えば、リード線装着部品10のリード線保持部材30を液体収容ケース110の取り付け孔130に挿入して取り付けるときに、第2充填剤60の弾性率が最も高い(即ち第2充填剤60が最も変形しやすい)ため、挿入し易く取り付け性に優れる。
【0037】
本実施形態のリード線装着部品10では、リード線保持部材30の弾性率は、第2充填剤60の弾性率より高くてもよい。上記態様によれば、導体22の中心から径方向の外側に向かうほど弾性率が高くなるため、リード線保持部材30に伝達された振動は徐々に減衰し、導体22に伝わりにくくなる。
【0038】
本実施形態のリード線付き液体収容ケース100は、リード線装着部品10と、液体を収容する液体収容室120と、液体収容室120に連通しかつリード線装着部品10が取り付けられる取り付け孔130と、を有する液体収容ケース110と、を備え、第1充填剤50および第2充填剤60は、液体収容ケース110の外側に配置されている。上記態様によれば、第1充填剤50および第2充填剤60を液体収容ケース110の外側に配置することで、抜け止め部36のサイズを小さくすることができるため、リード線装着部品10のコストの低減を実現することができる。また、リード線装着部品10取付部分(例えば係合部34)と充填部分(第1充填剤50および第2充填剤60)との位置を離すことができるため、取付部分にかかる圧縮応力は充填部分には伝わり難くなり充填部分では確実なシール性を保つことができる。
【0039】
本実施形態のリード線装着部品10の製造方法によると、第1充填工程(ステップS20)において、露出部分24の横断面の全体に亘って液体が通過不能な第1充填剤50を充填する。ここで、第1充填剤50の第1粘度は第2充填剤60の第2粘度より低い。このため、露出部分24の横断面の全体に亘ってより確実に第1充填剤50を充填することができる。これにより、リード線20の一部が液体内に配置されており、リード線20の一端から導体22内を液体が流れたとしても第1充填剤50によって液体の流れが阻止される。即ち、リード線20の一端から他端に液体が流れることが抑制される。また、第2充填工程(ステップS40)において、第1充填剤50が充填された露出部分24とリード線保持部材30との間かつ周方向の全体に亘って液体が通過不能な第2充填剤60を充填する。ここで、第2充填剤60の第2粘度は第1充填剤50の第1粘度より高い。このため、リード線20とリード線保持部材30との隙間から第2充填剤60が外部に漏れず、リード線20とリード線保持部材30との隙間を第2充填剤60によってより確実に埋めることができる。これにより、リード線20およびリード線保持部材30の一部が液体内に配置されていたとしても第2充填剤60によってリード線20とリード線保持部材30との間から液体が流れることが阻止される。
【0040】
本実施形態のリード線装着部品10の製造方法では、配置工程(ステップS30)は、第1充填工程(ステップS20)の後に実施される。上記態様によれば、リード線保持部材30の形状に関係なく導体22が露出する露出部分24に第1充填剤50を充填できるため、作業効率が向上する。
【0041】
本実施形態のリード線装着部品10の製造方法では、配置工程(ステップS120)は、第1充填工程(ステップS130)の前に実施されてもよい。上記態様によれば、第1充填剤50が充填された露出部分24を貫通孔40に挿通すると、リード線保持部材30に接触して第1充填剤50が導体22から剥離する虞があるが、露出部分24を貫通孔40に配置した後に第1充填剤50を導体22に充填するため、接触による剥離の発生を抑制することができる。
【0042】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
【0043】
上述した実施形態では、第1充填剤50および第2充填剤60は、液体収容ケース110の外側に配置されていたが、これに限定されない。例えば、
図4に示すように、リード線付き液体収容ケース200において、第1充填剤50および第2充填剤60は、液体収容ケース110の液体収容室120に配置されていてもよい。この場合、第1貫通孔41は、リード線保持部材230の挿入部32と係合部34と抜け止め部36の一部に亘って形成されている。第2貫通孔42は、抜け止め部36の他の一部に形成されている。本実施形態では、第2貫通孔42は、液体収容室120内に位置する。
【0044】
本実施形態のリード線付き液体収容ケース200は、リード線装着部品210と、液体を収容する液体収容室120と、液体収容室120に連通しかつリード線装着部品210が取り付けられる取り付け孔130と、を有する液体収容ケース110と、を備え、第1充填剤50および第2充填剤60は、液体収容室120内に配置されている。上記態様によれば、リード線保持部材230を液体収容ケース110へ挿入する際の挿入荷重が第2充填剤60に加わらないため、リード線保持部材230を挿入する際の破損を抑制することができる。
【0045】
上述した実施形態では、第2充填剤60は、第1充填剤50が充填された導体22とリード線保持部材30との間かつ周方向の全体に亘って充填されていたが、これに限定されない。例えば、
図5に示すように、リード線付き液体収容ケース300において、リード線装着部品310の第2充填剤60は、リード線20のうち貫通孔40に挿通された部分とリード線保持部材30との間かつ周方向の全体に亘ってさらに充填され、リード線20のうち絶縁体26が取り除かれた部分は貫通孔40内に位置してもよい。また、
図6に示すように、リード線付き液体収容ケース400において、リード線装着部品410の第2充填剤60は、リード線20のうち貫通孔40に挿通された部分とリード線保持部材230との間かつ周方向の全体に亘ってさらに充填され、リード線20のうち絶縁体26が取り除かれた部分は貫通孔40内に位置してもよい。
【0046】
本実施形態のリード線装着部品310、410では、第2充填剤60は、リード線20のうち貫通孔40に挿通された部分の絶縁体26とリード線保持部材30、230との間かつ周方向の全体に亘ってさらに充填されている。上記態様によれば、リード線20のうち貫通孔40に挿通された部分の絶縁体26の外側には第2充填剤60が位置する。即ち、リード線20の全体に亘って導体22が外部に露出していないため、導体22を別の絶縁体によって被覆する必要がない。
【0047】
上述した実施形態では、第2充填剤60は、第1充填剤50が充填された導体22の周方向の全体に亘って直接的に充填されていたが、これに限定されない。例えば、
図7に示すように、リード線付き液体収容ケース500において、リード線装着部品510の絶縁体26は、導体22のうち第1充填剤50が充填された部分の外周面を被覆する充填被覆部26Fを備え、第2充填剤60は、充填被覆部26Fとリード線保持部材30との間かつ周方向の全体に亘ってさらに充填されていてもよい。即ち、第2充填剤60は、第1充填剤50が充填された導体22の周方向の全体に亘って充填被覆部26Fを介して間接的に充填されていてもよい。なお、充填被覆部26Fは、例えば、導体22のうち絶縁体26によって被覆されていない部分に第1充填剤50を充填した後に、当該部分を被覆するように取り付けられる。上記態様によれば、リード線20の一端から他端に液体が流れることがより確実に抑制される。
【符号の説明】
【0048】
10 リード線装着部品
20 リード線
22 導体
24 露出部分
26 絶縁体
30 リード線保持部材
40 貫通孔
50 第1充填剤
60 第2充填剤
100 リード線付き液体収容ケース
110 液体収容ケース
120 液体収容室
130 取り付け孔
【手続補正書】
【提出日】2024-05-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体および前記導体の外周面を被覆する絶縁体を備えたリード線と、
前記リード線が挿通される貫通孔を有し、かつ、前記リード線を保持するリード線保持部材と、
前記導体のうち前記貫通孔に挿通された部分の横断面の全体に充填され、かつ、液体が通過不能な第1充填剤と、
前記第1充填剤が充填された前記導体と前記リード線保持部材との間かつ周方向の全体に亘って充填され、かつ、液体が通過不能な第2充填剤と、を備え、
前記第1充填剤は、前記導体のうち前記貫通孔に挿通された部分であって前記絶縁体によって被覆されていない部分の横断面の全体に充填されている、リード線装着部品。
【請求項2】
導体および前記導体の外周面を被覆する絶縁体を備えたリード線と、
前記リード線が挿通される貫通孔を有し、かつ、前記リード線を保持するリード線保持部材と、
前記導体のうち前記貫通孔に挿通された部分の横断面の全体に充填され、かつ、液体が通過不能な第1充填剤と、
前記第1充填剤が充填された前記導体と前記リード線保持部材との間かつ周方向の全体に亘って充填され、かつ、液体が通過不能な第2充填剤と、を備え、
前記第2充填剤の弾性率は、前記第1充填剤の弾性率よりも高い、リード線装着部品。
【請求項3】
前記リード線保持部材の弾性率は、前記第2充填剤の弾性率より低くかつ前記第1充填剤の弾性率よりも高い、請求項2に記載のリード線装着部品。
【請求項4】
前記リード線保持部材の弾性率は、前記第2充填剤の弾性率より高い、請求項2に記載のリード線装着部品。
【請求項5】
導体および前記導体の外周面を被覆する絶縁体を備えたリード線と、
前記リード線が挿通される貫通孔を有し、かつ、前記リード線を保持するリード線保持部材と、
前記導体のうち前記貫通孔に挿通された部分の横断面の全体に充填され、かつ、液体が通過不能な第1充填剤と、
前記第1充填剤が充填された前記導体と前記リード線保持部材との間かつ周方向の全体に亘って充填され、かつ、液体が通過不能な第2充填剤と、を備え、
前記絶縁体は、前記導体のうち前記第1充填剤が充填された部分の外周面を被覆する充填被覆部を備え、
前記第2充填剤は、前記充填被覆部と前記リード線保持部材との間かつ周方向の全体に亘ってさらに充填されている、リード線装着部品。
【請求項6】
導体および前記導体の外周面を被覆する絶縁体を備えたリード線と、
前記リード線が挿通される貫通孔を有し、かつ、前記リード線を保持するリード線保持部材と、
前記導体のうち前記貫通孔に挿通された部分の横断面の全体に充填され、かつ、液体が通過不能な第1充填剤と、
前記第1充填剤が充填された前記導体と前記リード線保持部材との間かつ周方向の全体に亘って充填され、かつ、液体が通過不能な第2充填剤と、を備え、
前記第2充填剤は、前記リード線のうち前記貫通孔に挿通された部分の前記絶縁体と前記リード線保持部材との間かつ周方向の全体に亘ってさらに充填されている、リード線装着部品。
【請求項7】
導体および前記導体の外周面を被覆する絶縁体を備えたリード線と、
前記リード線が挿通される貫通孔を有し、かつ、前記リード線を保持するリード線保持部材と、
前記導体のうち前記貫通孔に挿通された部分の横断面の全体に充填され、かつ、液体が通過不能な第1充填剤と、
前記第1充填剤が充填された前記導体と前記リード線保持部材との間かつ周方向の全体に亘って充填され、かつ、液体が通過不能な第2充填剤と、を備えたリード線装着部品と、
液体を収容する液体収容室と、前記液体収容室に連通しかつ前記リード線装着部品が取り付けられる取り付け孔と、を有する液体収容ケースと、を備え、
前記第1充填剤および前記第2充填剤は、前記液体収容室内に配置されている、リード線付き液体収容ケース。
【請求項8】
導体および前記導体の外周面を被覆する絶縁体を備えたリード線と、
前記リード線が挿通される貫通孔を有し、かつ、前記リード線を保持するリード線保持部材と、
前記導体のうち前記貫通孔に挿通された部分の横断面の全体に充填され、かつ、液体が通過不能な第1充填剤と、
前記第1充填剤が充填された前記導体と前記リード線保持部材との間かつ周方向の全体に亘って充填され、かつ、液体が通過不能な第2充填剤と、を備えたリード線装着部品と、
液体を収容する液体収容室と、前記液体収容室に連通しかつ前記リード線装着部品が取り付けられる取り付け孔と、を有する液体収容ケースと、を備え、
前記第1充填剤および前記第2充填剤は、前記液体収容ケースの外側に配置されている、リード線付き液体収容ケース。
【請求項9】
導体および前記導体の外周面を被覆する絶縁体を備えたリード線と、前記リード線が挿通される貫通孔を有し、かつ、前記リード線を保持するリード線保持部材と、を備えたリード線装着部品の製造方法であって、
前記リード線において、前記導体が露出する露出部分を形成する形成工程と、
第1粘度を有しかつ液体が通過不能な第1充填剤を前記露出部分の横断面の全体に亘って充填する第1充填工程と、
前記露出部分を前記貫通孔内に配置する配置工程と、
第2粘度を有しかつ液体が通過不能な第2充填剤を前記第1充填剤が充填された前記露出部分と前記リード線保持部材との間かつ周方向の全体に亘って充填する第2充填工程と、を含み、
前記第1粘度は、前記第2粘度よりも低い、製造方法。
【請求項10】
前記配置工程は、前記第1充填工程の後に実施される、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記配置工程は、前記第1充填工程の前に実施される、請求項9に記載の製造方法。