(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011855
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】成形型、樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/34 20060101AFI20240118BHJP
B29C 45/02 20060101ALI20240118BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20240118BHJP
B29C 33/10 20060101ALI20240118BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
B29C45/34
B29C45/02
B29C45/26
B29C33/10
H01L21/56 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114140
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】諸橋 信行
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
5F061
【Fターム(参考)】
4F202AA36
4F202AC01
4F202AD19
4F202AG03
4F202AH37
4F202AR02
4F202AR07
4F202CA12
4F202CB01
4F202CK75
4F202CK88
4F206AA36
4F206AC01
4F206AD19
4F206AG03
4F206AH37
4F206AR024
4F206AR074
4F206JA02
4F206JB12
4F206JL02
4F206JM04
4F206JM06
4F206JN13
4F206JN33
4F206JQ81
5F061AA01
5F061BA03
5F061CA21
5F061DA03
5F061DA06
5F061DA13
(57)【要約】
【課題】樹脂成形時に基板に作用する押圧力を低減することによりエアベント溝の潰れを防止して、エアがキャビティ内に残留することなく安定して樹脂成形品を製造することが可能な成形型、樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】成形型Cは、下型キャビティブロック53、及びポット54bが形成されたポットブロック54を含む下型LMと、上型キャビティブロック64、及びポットブロック54の上方に配置され上型キャビティブロック64と独立して昇降可能なカルブロック65を含む上型UMと、下型キャビティブロック53を上型UMに向かって押圧する第一弾性部材55と、上型キャビティブロック64とカルブロック65とを押圧し、弾性変形可能な複数の支持部材63と、カルブロック65を押圧して上型キャビティブロック64の下面よりも下方にカルブロック65を突出させることが可能な第二弾性部材66と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形対象物が載置される下型キャビティブロック、及び樹脂材料が充填されるポットが形成されたポットブロックを含む下型と、
キャビティとエアベント溝とを有する上型キャビティブロック、及び前記ポットブロックの上方に配置され前記上型キャビティブロックと独立して昇降可能なカルブロックを含む上型と、
前記下型キャビティブロックを前記上型に向かって押圧する第一弾性部材と、
前記上型キャビティブロックと前記カルブロックとを押圧し、弾性変形可能な複数の支持部材と、
前記カルブロックを押圧して前記上型キャビティブロックの下面よりも下方に前記カルブロックを突出させることが可能な第二弾性部材と、を備える成形型。
【請求項2】
型締め時に、前記第一弾性部材が複数の前記支持部材よりも前に弾性変形を開始するように、前記第一弾性部材の弾性力が設定されている請求項1に記載の成形型。
【請求項3】
型締め時に、前記第二弾性部材が前記第一弾性部材よりも前に弾性変形を開始するように、前記第二弾性部材の弾性力が設定されている請求項1又は2に記載の成形型。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の成形型と、
前記成形型を型締めする型締め機構と、を備える樹脂成形装置。
【請求項5】
請求項4に記載の樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法であって、
前記成形型に前記成形対象物及び前記樹脂材料を供給する供給工程と、
第一型締め力により前記第二弾性部材が弾性変形して前記カルブロックと前記ポットブロックとを接触させると共に前記上型キャビティブロックの前記下面と前記成形対象物の上面とを接触させて前記ポットに充填された前記樹脂材料を前記キャビティに供給し、第二型締め力により前記エアベント溝を閉鎖する型締め工程と、
前記成形対象物の樹脂成形を行う成形工程と、を含む樹脂成形品の製造方法。
【請求項6】
前記型締め工程において、前記第二弾性部材の弾性力により前記カルブロックと前記ポットブロックとを接触させた後に、前記第二弾性部材が圧縮されて前記上型キャビティブロックの前記下面と前記成形対象物の前記上面とを接触させる請求項5に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項7】
前記型締め工程において、前記第二型締め力により前記支持部材の圧縮量が最大となったときに前記エアベント溝が閉鎖される請求項5又は6に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項8】
前記第一弾性部材の弾性変形量が最大になったときに、前記成形対象物の前記上面と前記ポットブロックの上面とが面一になる請求項5から7のいずれか一項に記載の樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形型、樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップが固定された基板等は、一般的に樹脂封止することにより電子部品として用いられる。従来、基板等を樹脂封止するための樹脂成形装置として、MAP(molded array packaging)等の半導体パッケージを製造するトランスファ成形用の金型を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示された成形型においては、トランスファ成形金型を用いて高流動性の樹脂材料の樹脂成形を行う際、エアベントブロックを用いてエアベント溝を閉鎖する。これにより、キャビティにエアが残留して樹脂材料が未充填になることを防止すると共に、樹脂材料が金型の外部に流出することを防止することが記載されている。また、基板の厚さのバラつき対策として、下型キャビティブロックに弾性部材を用いると共に上型キャビティブロックにフローティングピンを用いて、キャビティブロックをフローティング構造にすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂成形品を安定して製造するためには、樹脂成形時に基板に作用する押圧力が小さい方が好ましい。しかし、特許文献1に開示された成形型においては、バリ対策のためキャビティに樹脂材料を流動させる前に弾性部材の弾性力とフローティングピンの押圧力とを最大にして、下型キャビティブロックと上型キャビティブロックのフローティングを押え込む必要がある。その結果、樹脂成形に大きなプレスが必要となり、また、樹脂成形時には基板に必要以上の過大な押圧力が作用するため、エアベント溝が潰れてエアの排出が十分に行われずにキャビティ内に残留してボイドが発生したり、キャビティ全体に樹脂材料が充填されない場合がある。
【0006】
そこで、樹脂成形時に基板に作用する押圧力を低減することにより安定して樹脂成形品を製造することが可能な成形型、樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る成形型の特徴構成は、成形対象物が載置される下型キャビティブロック、及び前記樹脂材料が充填されるポットが形成されたポットブロックを含む下型と、キャビティとエアベント溝とを有する上型キャビティブロック、及び前記ポットブロックの上方に配置され前記上型キャビティブロックと独立して昇降可能なカルブロックを含む上型と、前記下型キャビティブロックを前記上型に向かって押圧する第一弾性部材と、前記上型キャビティブロックと前記カルブロックとを押圧し、弾性変形可能な複数の支持部材と、前記カルブロックを押圧して前記上型キャビティブロックの下面よりも下方に前記カルブロックを突出させることが可能な第二弾性部材と、を備える点にある。
【0008】
本発明に係る樹脂成形装置の特徴構成は、上記に記載の成形型と、前記成形型を型締めする型締め機構と、を備える点にある。
【0009】
本発明に係る樹脂成形品の製造方法の特徴は、上記に記載の樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法であって、前記成形型に前記成形対象物及び前記樹脂材料を供給する供給工程と、第一型締め力により前記第二弾性部材が弾性変形して前記カルブロックと前記ポットブロックとを接触させると共に前記上型キャビティブロックの前記下面と前記成形対象物の上面とを接触させて前記ポットに充填された前記樹脂材料を前記キャビティに供給し、第二型締め力により前記エアベント溝を閉鎖する型締め工程と、前記成形対象物の樹脂成形を行う成形工程と、を含む点にある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、樹脂成形時に基板に作用する押圧力を低減することにより安定して樹脂成形品を製造することが可能な成形型、樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る樹脂成形装置を表す模式図である。
【
図2】樹脂成形装置の型締め機構を表す模式図である。
【
図3】型締め工程を含む成形工程を表す模式図である。
【
図4】成形工程における成形時間とトランスファ機構の位置、型締め力、及び溶融樹脂の供給圧力との関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る成形型、樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法の実施形態について、図面に基づいて説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0013】
〔装置全体の構成〕
半導体チップ(以下、単に「チップ」と称する場合がある)が固定された基板等の成形対象物は樹脂封止することにより電子部品として用いられる。この電子部品は、例えば、携帯通信端末用の高周波モジュール基板、電力制御用モジュール基板、機器制御用基板等として用いられる。成形対象物を樹脂封止する技術の一つとして、BGA(Ball Grid Array)基板等を樹脂封止して半導体パッケージを製造するトランスファ方式がある。このトランスファ方式は、チップが固定された基板等を成形型のキャビティに収容し、成形型のポットに粉粒体状樹脂を固めた樹脂タブレットを供給して加熱,溶融した後、該成形型を型締めした状態で樹脂タブレットが溶融した溶融樹脂をキャビティに供給して硬化させ、型開きして樹脂成形品を製造する方式である。
【0014】
なお、粉粒体状樹脂は、粉粒体状の樹脂だけでなく、粉粒体状の樹脂を押し固めた固形樹脂で形成される樹脂タブレットを含んでおり、いずれも加熱により溶融して液状の溶融樹脂となる。この粉粒体状樹脂は、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でも良い。熱硬化性樹脂は、加熱すると粘度が低下し、更に加熱すると重合して硬化し、硬化樹脂となる。本実施形態における粉粒体状樹脂は、取扱いの容易性から固形樹脂で形成される樹脂タブレットが好ましく、さらに、チップと基板との間に溶融樹脂を確実に充填するために、微粒子化したフィラーを含む高流動性の熱硬化性樹脂であることが好ましい。
【0015】
図1には、本実施形態に係る樹脂成形装置100の概略構成を示している。樹脂成形装置100は、成形型Cを用いて樹脂成形前基板Sa(成形対象物の一例)を樹脂で成形する装置である。本実施形態において樹脂成形前基板Saは矩形状であり、半導体チップが予め固定されている。
【0016】
樹脂成形装置100は、中央制御装置としてのCPU1、制御プログラム等の制御情報を記憶する記憶部8、成形型Cを有する成形機構2、後述の各部を駆動する駆動機構、及び使用者から動作指令や異常処理関連情報の入力を受け付け、且つ樹脂成形装置100の各種出力情報の表示を行うタッチパネル9を備えている。CPU1は、記憶部8に記憶されたプログラムなどの実行により、樹脂成形装置100の各部の動作を制御する制御部10を構成している。
【0017】
以下で説明する樹脂成形装置100の動作は、特段の説明の無い限り、制御部10の動作指令に基づいて行われる。以下の説明において、制御部10の動作指令については原則的に説明を省略し、必要に応じて制御部10の動作指令について説明する。
【0018】
樹脂成形装置100は、複数の樹脂成形前基板Saを収容するインマガジン7などを有する供給モジュールM1、成形型Cを有する成形モジュールM2、及び樹脂成形前基板Saが樹脂で成形された後の樹脂成形済基板Sb(樹脂成形品の一例)を収納するアウトマガジン72を有する収容モジュールM3の各モジュールを、この順に一体の装置として連結して構成される。供給モジュールM1、成形モジュールM2、及び収容モジュールM3には、これら各モジュールのそれぞれに亘り直線状に配設されたガイドGが設けられている。ガイドGは、後述するローダ40及びアンローダ44を走行させるレール状の部材である。ガイドGは、各モジュールのそれぞれにおける背面側に配設されている。
【0019】
各モジュールは互いに着脱可能で、増減可能に構成されている。本実施形態の樹脂成形装置100は、二つの成形モジュールM2を有する。樹脂成形装置100は、成形モジュールM2を一つだけ有する場合も、三つ以上有する場合もある。
【0020】
〔駆動機構〕
駆動機構には、ローダ40、基板供給ユニット42、アンローダ44、型締め機構35、及び後述するトランスファ機構39(
図2参照)が含まれる。
【0021】
ローダ40は、樹脂成形前基板Saを成形型Cに搬入する搬送機構である。基板供給ユニット42は、インマガジン7から樹脂成形前基板Saを押し出して整列機構70に渡す搬送機構である。アンローダ44は、樹脂成形済基板Sbを成形型Cから搬出する搬送機構である。トランスファ機構は、成形型Cにおいて、ポットからキャビティに樹脂タブレットT(樹脂材料の一例)が溶融した樹脂を供給する機構である。型締め機構35は、成形型Cを型締めする機構である。トランスファ機構39は、型締め機構35とは独立して駆動される。
【0022】
ローダ40、基板供給ユニット42、及びアンローダ44はそれぞれ、アクチュエータ40b、アクチュエータ42b、及びアクチュエータ44bを有する。アクチュエータ40b、アクチュエータ42b及びアクチュエータ44bは、それぞれの設置場所や各部を駆動させる距離などに応じたエアシリンダである。
【0023】
〔基板供給ユニット〕
基板供給ユニット42は、複数の樹脂成形前基板Saを鉛直方向に間隔を空けて収容する収容容器であるインマガジン7から樹脂成形前基板Saを一枚ずつ押し出して整列機構70へ搬送する機構である。基板供給ユニット42は、アクチュエータ42bを有する。本実施形態では、基板供給ユニット42は、アクチュエータ42bにより樹脂成形前基板Saをインマガジン7から押し出して、インマガジン7に隣接して配置されている整列機構70に移動させる。整列機構70は、回転円盤70aを有し、樹脂成形前基板Saが載置されると、回転円盤70aを回転させて、ローダ40による樹脂成形前基板Saのピックアップに適した状態になるように、樹脂成形前基板Saを整列させる。基板供給ユニット42、インマガジン7、及び整列機構70は、供給モジュールM1に設けられている。基板供給ユニット42、インマガジン7、及び整列機構70は、供給モジュールM1において、ガイドGよりも正面側に配置されている。
【0024】
〔ローダ〕
ローダ40は、樹脂成形前基板Saを成形型Cに搬入する搬送機構である。ローダ40は、ガイドGに沿い、供給モジュールM1から成形モジュールM2に亘って移動可能である。ローダ40は、樹脂成形前基板Saと樹脂タブレットTをピックアップするローダピックアップ部40aを有する。
【0025】
ローダピックアップ部40aは、下方に向けて延出する一対の爪(不図示)を複数対備えている。ローダピックアップ部40aは、不図示のアクチュエータにより当該一対の爪を駆動して整列機構70から樹脂成形前基板Saを拾い上げ、成形型Cの下型LM上まで搬送して下型LMに載せる(搬入する)。以下では、ローダピックアップ部40aによる拾い上げ動作を単にピックアップと記載する。
【0026】
またローダピックアップ部40aは、他の不図示のアクチュエータにより樹脂材料保持用の爪を駆動して、樹脂供給装置79から樹脂タブレットTをピックアップする。樹脂タブレットTのピックアップも樹脂成形前基板Saのピックアップと同様に行う。ただし、本実施形態では、一つの爪につき、一つの樹脂タブレットTをピックアップする。
【0027】
ローダピックアップ部40aは、アクチュエータ40bにより、
図1における背面側から正面側に向けて進退可能である。ローダ40は、ローダピックアップ部40aを進退させて、整列機構70から樹脂成形前基板Saをピックアップし、供給モジュールM1から成形モジュールM2に亘って移動し、樹脂成形前基板Saを成形型Cに搬入する。また、ローダ40は、ローダピックアップ部40aを進退させて、樹脂供給装置79から樹脂タブレットTをピックアップし、供給モジュールM1から成形モジュールM2に亘り移動し、樹脂タブレットTを成形型Cに搬入する。
【0028】
〔アンローダ〕
アンローダ44は、樹脂成形済基板Sbを成形型Cから搬出する搬送機構である。アンローダ44は、ガイドGに沿い、成形モジュールM2から収容モジュールM3に亘って移動可能である。アンローダ44は、樹脂成形済基板Sbなどをピックアップするアンローダピックアップ部44aを有する。アンローダピックアップ部44aは、アクチュエータ44bにより、
図1における背面側から正面側に向けて進退可能である。アンローダ44は、アンローダピックアップ部44aを進退させて、成形型Cの下型LMから樹脂成形済基板Sbをピックアップし、成形モジュールM2から収容モジュールM3に亘って移動し、樹脂成形済基板Sbを収容モジュールM3のゲートブレイク機構71に搬入する。アンローダ44は、ゲートブレイク機構71で不要樹脂部分が除去された後の樹脂成形済基板Sbをアウトマガジン72に搬送して収容する。
【0029】
なお、アンローダピックアップ部44aはローダピックアップ部40aと同様に下方に向けて延出する一対の爪(不図示)を複数対備えている。アンローダピックアップ部44aのピックアップは、ローダピックアップ部40aのピックアップと同様に行われる。
【0030】
次に、成形モジュールM2について詳述する。
【0031】
図2に示すように、成形モジュールM2は、平面視矩形状の下部固定盤31の四隅にタイバー32が立設されており、タイバー32の上端付近には平面視矩形状の上部固定盤33が設けられている。下部固定盤31と上部固定盤33の間には平面視矩形状の可動プラテン34が設けられている。可動プラテン34は、四隅にタイバー32が貫通する孔が設けられており、タイバー32に沿って上下に移動可能である。下部固定盤31の上には、可動プラテン34を上下に移動させる装置である型締め機構35が設けられている。この型締め機構35は、駆動源としてサーボモータ等で構成される電動モータMaと、成形型Cの型締め力(以下、「クランプ力」と称する)を計測するためのひずみゲージやロードセル等で構成される荷重センサWaとを含んでいる。型締め機構35は、可動プラテン34を上方に移動させることにより成形型Cの型締めを行い、可動プラテン34を下方に移動させることにより成形型Cの型開きを行うことができる。
【0032】
成形型Cは下型LMと上型UMとを含んで構成される。下型LM及び上型UMは、互いに対向して配置される金型等で構成されている。
【0033】
下型LMは、可動プラテン34の上に載置された下型プレート38の上に載置されている。下型LMは、ベースブロック51と、ベースブロック51上に載置されたサイドブロック52及び下型キャビティブロック53と、ポットブロック54とを備えている。サイドブロック52はベースブロック51に取付けられている。ベースブロック51と下型キャビティブロック53との間には第一弾性部材55が配置されており、第一弾性部材55はベースブロック51に対して下型キャビティブロック53を上型UMがある上方に向かって押圧している。第一弾性部材55の例としては、複数の皿ばねを積層したものが挙げられる。下型キャビティブロック53は、第一弾性部材55が弾性変形することにより、ベースブロック51及びサイドブロック52に対して上下方向に相対移動可能に構成されている。すなわち、下型LMは、下型キャビティブロック53が上下方向に移動可能なフローティング構造を有している。なお、第一弾性部材55は、型締め時に、後述するフローティングピン63よりも前に弾性変形を開始するように弾性力が設定されている。
【0034】
成形型Cが型締めされる前の状態では、下型LMにおいて、下型キャビティブロック53の上面とサイドブロック52の上面58とは面一になっている。樹脂成形前基板Saは、半導体チップSc等が固定されている面を上にして下型キャビティブロック53の上面に載置されている。また、下型キャビティブロック53には、樹脂成形前基板Sa及び樹脂タブレットTを加熱する下型ヒータ36が内蔵されている。本実施形態において、下型LMは、二つの下型キャビティブロック53,53を有しており、該二つの下型キャビティブロック53,53に挟まれる位置にポットブロック54が配置されている。ポットブロック54には、円筒状の凹部であるポット54bが形成されており、ポット54bの内部に樹脂タブレットT(加熱により溶融する樹脂)が充填されている。ポットブロック54の下方には、サーボモータ等の電動モータMbにより駆動されるプランジャ54aが上下移動可能に内挿されている。プランジャ54aの支持部には弾性部材(不図示)が設けられており、プランジャ54aは弾性部材の弾性力により僅かに変位して過剰な押圧力を逃がすと共に、保圧時には樹脂タブレットTの溶融時の樹脂量のばらつきに順応することができるようになっている。また、下型LMは、プランジャ54aが溶融樹脂Ta(樹脂材料の一例)を押し出す力を計測するためのひずみゲージやロードセル等で構成される荷重センサWbを有している。
【0035】
上型UMは下型LMと対向して配置されている。上型UMは、上部固定盤33の下面に固定されたホルダベース61、ホルダベース61の下面に固定されたピンホルダ62、ピンホルダ62に対して複数のフローティングピン63(支持部材の一例)を介して支持された上型キャビティブロック64及びカルブロック65を有している。複数のフローティングピン63は、ピンホルダ62に形成された複数の貫通孔にそれぞれ挿入されており、上端、下端は、ホルダベース61、上型キャビティブロック64、カルブロック65に固定されていない。カルブロック65の上方に配置されたフローティングピン63の長さは上型キャビティブロック64の上方に配置されたフローティングピン63の長さと同じである。後述のように、カルブロック65は、さらに、その下面69が上型キャビティブロック64の下面68よりも下方に突出するように第二弾性部材66を介してホルダベース61に支持されているため、カルブロック65の上に配置されたフローティングピン63のピンホルダ62に保持された他端は、ホルダベース61から離間している。成形型Cが型締めされる前の状態では、上型キャビティブロック64及びカルブロック65はピンホルダ62から離間している。
【0036】
上型キャビティブロック64の下面68には、溶融樹脂Taが供給される凹部であるキャビティMCが形成されており、上型キャビティブロック64には、キャビティMCを加熱する上型ヒータ37が内蔵されている。上型キャビティブロック64は、下型キャビティブロック53及びサイドブロック52と対向している。
【0037】
本実施形態において、上型UMは二つの上型キャビティブロック64,64を有しており、該二つの上型キャビティブロック64,64に挟まれる位置に、カルブロック65が配置されている。カルブロック65は、ポットブロック54のポット54bからキャビティMCに向けて溶融樹脂Taを流動させるランナ65aを有している。すなわち、カルブロック65は、ポットブロック54の上方に配置されている。上型キャビティブロック64とカルブロック65とは別部材で構成されており、カルブロック65は、上型キャビティブロック64とは独立して昇降可能(上下方向に移動可能)に構成されている。カルブロック65には、溶融樹脂Taがランナ65aからキャビティMCへ流入する入り口であるゲート65bが設けられている。カルブロック65は、一端がホルダベース61に固定された第二弾性部材66を介してホルダベース61に支持されている。カルブロック65は、成形型Cが型締めされる前の状態では、第二弾性部材66によってカルブロック65の下面69が上型キャビティブロック64の下面68よりも下方に突出するように構成されている。第二弾性部材66の例としては、複数の皿ばねを積層したものが挙げられる。なお、第二弾性部材66は、型締め時に第一弾性部材55よりも前に弾性変形を開始するように弾性力が設定されている。
【0038】
上型キャビティブロック64の下面68且つゲート65bから離間した箇所には、キャビティMCから上型UMの外部にエアを排出するエアベント溝64aが形成されている。エアベント溝64aは、エアベントブロック67によって開閉されるように構成されている。エアベントブロック67は、一端がピンホルダ62に取付けられ、且つ前進時にエアベント溝64aの途中に位置するように上型キャビティブロック64に形成された貫通孔に挿入されている。エアベントブロック67の下端は、成形型Cが型締めされる前の状態では、上型キャビティブロック64の下面68よりも上方になるように設定されている。すなわち、成形型Cを型締めした状態で、エアベントブロック67がエアベント溝64aの底面と面一かそれよりも上方に配置されているときは、不図示のポンプを作動させることにより、キャビティMC内部のエアは上型UMの外部に排出可能になり、エアベントブロック67が前進(下方に移動)してエアベント溝64aを閉鎖したときには、キャビティMCのエア(及び溶融樹脂Ta)は上型UMの外部に排出不能になる。本実施形態に係るエアベントブロック67は、一端がピンホルダ62に取付けられているので、型締め機構35による型締めによりフローティングピン63が圧縮されると、上型キャビティブロック64に対してエアベントブロック67を相対的に前進(下方に移動)させることができる。このため、エアベントブロック67を進退させるための特別な駆動機構は不要となり、成形型Cの構成を簡便にすることができる共に、成形型Cを安価に構成することができる。
【0039】
〔樹脂成形品の製造方法〕
次に、
図1~
図4を用いて樹脂成形品の製造方法について説明する。樹脂成形品(樹脂成形済基板Sb)の製造方法は、樹脂成形前基板Sa及び樹脂タブレットTを成形型Cに供給する供給工程と、成形型Cを型締めする型締め工程と、ゲート65bから供給された溶融樹脂TaをキャビティMCに充填することにより、樹脂成形前基板Saの樹脂成形を行う成形工程とを含んでいる。この成形工程は、樹脂成形前基板Saの成形モジュールM2への搬入から樹脂成形済基板Sbの成形モジュールM2からの搬出までの間において、成形モジュールM2が樹脂成形前基板Saを樹脂成形する工程であり、当該成形工程には型締め工程が含まれている。成形工程における成形型C及び型締め機構35の作動は、制御部10により制御される。
【0040】
まず、供給工程について説明する。
図1に示されるように、樹脂タブレットTの収容空間を断熱した状態で、ローダ40を予め加熱しておく。また、ヒータ36,37に通電して、予め成形型Cを加熱しておく(
図2も参照)。そして、インマガジン7から取り出した複数の樹脂成形前基板Saを整列機構70に載置する。整列機構70は、回転円盤70aを有し、樹脂成形前基板Saが載置されると、回転円盤70aを回転させて、ローダ40による樹脂成形前基板Saのピックアップに適した状態になるように樹脂成形前基板Saを整列させる。ローダピックアップ部40aは、アクチュエータ40bにより整列機構70から樹脂成形前基板Saを拾い上げてローダ40に載置すると共に、樹脂供給装置79から樹脂タブレットTを拾い上げてローダ40の樹脂タブレットTの収容空間に収容する。そして、ローダ40は、樹脂成形前基板Saを成形モジュールM2まで搬送し、半導体チップScが固定された側を上方に向けた樹脂成形前基板Saを下型LMの基板セット部に載置すると共に、樹脂タブレットTをポットブロック54のポット54b内に収容する(
図2参照)。樹脂タブレットTをポットブロック54のポット54b内に収容することにより、下型LMに内蔵された下型ヒータ36が樹脂タブレットTを加熱して、溶融樹脂Taとなる。なお、後述する型締め機構35による可動プラテン34の上昇前に、上型UMの上型キャビティブロック64の下面68に不図示の離型フィルムを吸着させた状態としておく。
【0041】
次に型締め工程を含む成形工程について説明する。まず、
図2に示される状態から型締め機構35により可動プラテン34を上方に移動させて下型LMを上型UMの方向に相対的に移動させ、
図3(A)に示されるように、ポットブロック54とカルブロック65とを接触させる。この時点では、下型LMに載置された樹脂成形前基板Saの上面56と上型キャビティブロック64の下面68とは接触していない。
【0042】
図4に、横軸に樹脂成形品の製造に係る成形時間、縦軸にトランスファ機構の位置をとったグラフ(A)、横軸に同成形時間、縦軸に型締め力をとったグラフ(B)、及び横軸に同成形時間、縦軸に溶融樹脂TaのキャビティMCへの供給圧力をとったグラフ(C)をそれぞれ示す。すなわち、
図4のグラフ(A),(B),(C)の横軸の項目は共通で、縦軸の項目が異なっている。トランスファ機構の位置は、
図3(A)の状態をゼロ(基準位置)にしている。
図3(A)に示される状態は、
図4のグラフ(A),(B),(C)においては、時間(a)で示されている。すなわち、時間(a)のとき、グラフ(A)よりトランスファ機構は基準位置から上方に動いておらず、グラフ(B)より第二弾性部材66の弾性力による型締め力が未だ発生しておらず、グラフ(C)より未だ溶融樹脂Taの供給は始まっていないので供給圧力がゼロであることが分かる。以後、
図3(A)のときの型締めの状態を第一型締め状態と称する。なお、
図4に示される時間(a)から時間(e)のそれぞれの時間(タイミング)については、制御部により予め設定されている。
【0043】
時間(a)の経過後、第一型締め状態から更に型締め機構により可動プラテンを上方に移動させて下型LMを上型UMの方向に相対的に移動させると、第二弾性部材66が弾性変形を開始し、
図4のグラフ(B)に示されるように型締め力(以下、「第一型締め力」という)が発生する。そして、
図3(B)に示されるように、ポットブロック54とカルブロック65とが密着したまま第二弾性部材66が弾性変形し、樹脂成形前基板Saの上面56が上型キャビティブロック64の下面68と接触する。このとき、第一弾性部材55とフローティングピン63は、樹脂成形前基板Sa及び上型キャビティブロック64に対して弾性力を全く作用させていないか、ごく僅かに作用させているだけである。このため、第一弾性部材55とフローティングピン63による樹脂成形前基板Saに作用する押圧力は極めて小さい。したがって、下型キャビティブロック53の上面とサイドブロック52の上面58とは面一の状態が維持されている。以後、
図3(B)のときの型締めの状態を第二型締め状態と称する。なお、
図3(B)では、下型LMと上型UMの位置関係を上記のようにして溶融樹脂Taが供給されている状態を表している。
【0044】
第二型締め状態において、不図示のポンプにより、エアベント溝64aからキャビティMC内のエアを上型UMの外部に排出すると共に、電動モータMbによりプランジャ54aを上方に移動させて、溶融樹脂Taを、ポット54bからカルブロック65のランナ65aを介してゲート65bに流通させる。これにより、溶融樹脂TaのキャビティMCへの供給が開始される。この供給開始時は、
図4のグラフ(A),(B),(C)においては、時間(b)で示されている。すなわち、時間(b)のとき、グラフ(A)よりプランジャ54aを含むトランスファ機構が上方への移動を開始し、グラフ(B)より時間(a)経過後の第一型締め力が維持されており、グラフ(C)より溶融樹脂Taの供給は始まっており供給圧力が発生しているが、その圧力は微小であることが分かる。これにより、樹脂成形前基板Saに作用する押圧力が小さかったとしても、溶融樹脂Taが成形型Cの外部に漏れ出すおそれはない。
【0045】
図4のグラフ(A),(B),(C)における時間(b)の経過後、第二状態を維持したままプランジャを含むトランスファ機構が上昇し(
図4のグラフ(A)参照)、ポット54b内の溶融樹脂TaがキャビティMC内に充填されていく。このとき、
図4のグラフ(B)に示されるように第一型締め力は維持されており、
図4のグラフ(C)に示されるように溶融樹脂Taの供給圧力は微小な状態を維持している。そして、溶融樹脂TaのキャビティMC内への充填完了の直前で成形型Cの外部への樹脂漏れが発生していない時間(c)において、型締め機構により可動プラテンを更に上方に移動させて型締め力を増加させる(
図4のグラフ(B)参照)。これにより、第一弾性部材55が弾性変形して、
図3(C)に示されるように、下型LMのサイドブロック52と上型UMの上型キャビティブロック64とが接触して、樹脂成形前基板Saの上面56がサイドブロック52の上面58及びポットブロック54の上面57と面一になる。第一弾性部材55の弾性変形による圧縮量(弾性変形量)が最大になった後、フローティングピン63が弾性変形し、その圧縮量が最大になったときにピンホルダ62と上型キャビティブロック64とが接触する。これにより、
図3(C)に示されるように、エアベントブロック67がエアベント溝64aを閉鎖される。これにより、キャビティMC内のエアが外部へ排出不能となるが、キャビティMC内には溶融樹脂Taがほぼ充填されておりエアはほとんど残っていないので、溶融樹脂Taの硬化後にボイドが発生するおそれはない。以後、このときの型締めの状態を第三型締め状態と称し、型締め力を第二型締め力と称する。なお、
図3(B)から
図3(C)にかけてのフローティングピン63の弾性変形による圧縮は誇張して描かれている。実際のフローティングピン63の圧縮量は僅かである。
【0046】
図4のグラフ(A),(B),(C)における時間(c)の経過後、プランジャを含むトランスファ機構が上昇して、キャビティMC内に溶融樹脂Taが供給され、時間(d)において、プランジャ54aが上死点に達する。時間(d)の経過後、プランジャ54aは動かないが、
図4のグラフ(A)に示されるように、トランスファ機構は上昇を続ける。これは、プランジャ54aの支持部に設けられた不図示の弾性部材が弾性変形するからである。これにより、ポット54b内に残存する溶融樹脂TaがキャビティMC内に充填されていき、エアベント溝64aが閉鎖されているので溶融樹脂Taの供給圧力は急激に上昇する(
図4のグラフ(C)参照)。そして、溶融樹脂Taの供給圧力が所定値に到達すると、トランスファ機構は停止する(
図4のグラフ(A),(C)の時間(e)参照)。これにより、溶融樹脂Taの供給が終了する。なお、
図4のグラフ(B)に示されるように、時間(c)以降は第三型締め状態と第二型締め力とが維持されている。
【0047】
図4のグラフ(A),(B),(C)に示されるように、時間(e)の経過後、トランスファ機構の位置、型締め力、溶融樹脂の供給圧力はその状態を維持し、溶融樹脂Taを硬化させる。そして所定時間経過後に、制御部10は、型締め機構のクランプ力を低下させることにより可動プラテンを下方に移動させて成形型Cの型開きを行う。そして、樹脂成形済基板SbをキャビティMCから離型させて樹脂成形を終了する。その後、樹脂成形済基板Sbをアンローダ44のアンローダピックアップ部44aによりピックアップし、アンローダ44により樹脂成形済基板Sbを成形モジュールM2から収容モジュールM3に亘って移動させる。そして、樹脂成形済基板Sbをゲートブレイク機構71で不要樹脂部分を除去した後、アウトマガジン72に収容する(
図1参照)。
【0048】
本実施形態では、第二弾性部材66を弾性変形させることにより、樹脂成形前基板Saの上面56と上型キャビティブロック64の下面68とが接触し、第一弾性部材55とフローティングピン63は、樹脂成形前基板Sa及び上型キャビティブロック64に対して弾性力を全く作用させていないか、ごく僅かに作用させているだけの状態で樹脂供給を開始し、樹脂供給を行うことができる。従来の装置では、下型の第一弾性部材55を弾性変形させることにより樹脂成形前基板Saの上面56と上型キャビティブロック64の下面68とを接触させて樹脂供給を行うことが必要であり、樹脂注入時には第一弾性部材55を弾性変形させるだけの大きな型締め力(押圧力)が樹脂成形前基板にかかっていた。本実施形態では、第二弾性部材66は第一弾性部材55よりも前に弾性変形を開始するように設定されている、すなわち、第二弾性部材66の弾性係数は第一弾性部材55の弾性係数よりも小さく設定されているため、樹脂成形時に基板に作用する押圧力を低減することができる。
【0049】
さらに、本実施形態では、溶融樹脂TaのキャビティMC内への充填完了の直前で第一弾性部材55とフローティングピン63とを弾性変形させ、まず、樹脂成形前基板Saの上面56とサイドブロック52の上面58及びポットブロック54の上面57とを面一とし、その後すぐに、フローティングピン63を完全に弾性変形させ、エアベントブロック67によりエアベント溝64aを閉鎖させている。従来の装置では、溶融樹脂TaのキャビティMC内への充填完了の直前までエアベント溝が閉鎖されてしまわないように、フローティングピン63が弾性変形を開始する弾性力を、第一弾性部材55が弾性変形する弾性力よりもかなり大きく設定しておくことが必要であった。本実施形態では、従来より小さな型締め力(本実施形態では、第一型締め力)でキャビティMC内のほとんどに樹脂を充填させることができるため、エアベント溝64aが閉鎖しないようにフローティングピン63が弾性変形を開始する弾性力を従来のように大きく設定する必要はなく、最終的な型締め力(本実施形態では、第二型締め力)も従来より小さく設定することができる。その結果、樹脂成形時に基板に作用する押圧力を低減することができる。
【0050】
〔別実施形態〕
以下、上述した実施形態の別実施形態について説明する。なお、上述した実施形態と同様の部材については、理解を容易にするため、同一の用語、符号を用いて説明する。
【0051】
<1>上述した実施形態においては、樹脂タブレットTの紛粒体状樹脂はフィラーを含む高流動性の熱硬化性樹脂であってが、高流動性でなくてもよい。また、フィラーを含有する必要もない。
【0052】
<2>上述した実施形態においては、第一弾性部材55、第二弾性部材66とも皿ばねを積層したものを例示したが、これに限られるものではない。例えば圧縮式コイルばねを用いるなど、任意の弾性部材を用いることができる。
【0053】
<3>上述した実施形態においては、樹脂成形前基板Saは矩形状であったが、これに限られるものではない。例えば円形状の基板など、任意の形状の基板を用いることができる。また、基板のサイズも限定されない。
【0054】
仮に、樹脂成形前基板Saのサイズが大きくなると、上型キャビティブロック64のキャビティMCが大きくなり、樹脂成形前基板Saの上面56と接触する上型キャビティブロック64のキャビティMC以外の面積が相対的に小さくなる。この場合、型締め力による樹脂成形前基板Saの上面56に作用する圧力は、キャビティMCが小さい上型キャビティブロック64を用いた場合と比較して大きくなる。しかし、本実施形態に係る成形型Cを用いた樹脂成形装置100であれば、溶融樹脂Taを供給する際の型締め力を、第二弾性部材66だけが弾性力を発揮する第一型締め力にできるので、樹脂成形前基板Saのサイズが大きい場合でも、樹脂成形前基板Saに過大な押圧力が作用するのを防止することができる。
【0055】
<4>上述した実施形態においては、
図4のグラフ(B)に示される型締め力を第一型締め力から第二型締め力に変更する時間(タイミング)である時間(c)(時間(b)からの経過時間)は、制御部10であらかじめ設定されていたが、これに限られるものではない。例えば、荷重センサWbで計測された溶融樹脂Taの樹脂圧に基づいて型締め力を変更するように制御してもよい。また、
図4のグラフ(A)で示されるトランスファ機構39の位置(プランジャ54aの位置)に基づいて型締め力を変更するように制御してもよい。
【0056】
<5>上述した実施形態においては、カルブロック65は上型UMのみに配置されていたが、これに限られるものではない。カルブロックを上型UMと下型LMとに分けて配置するように構成してもよい。
【0057】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上述の実施形態において説明した成形型C、樹脂成形装置100及び樹脂成形品(樹脂成形済基板Sb)の製造方法の概要について説明する。
【0058】
(1)成形型Cの特徴構成は、成形対象物(樹脂成形前基板Sa)が載置される下型キャビティブロック53、及び樹脂材料(樹脂タブレットT、溶融樹脂Ta)が充填されるポット54bが形成されたポットブロック54を含む下型LMと、キャビティMCとエアベント溝64aとを有する上型キャビティブロック64、及びポットブロック54の上方に配置され上型キャビティブロック64と独立して昇降可能なカルブロック65を含む上型UMと、下型キャビティブロック53を上型UMに向かって押圧する第一弾性部材55と、上型キャビティブロック64とカルブロック65とを押圧し、弾性変形可能な複数の支持部材(フローティングピン63)と、カルブロック65を押圧して上型キャビティブロック64の下面よりも下方にカルブロック65を突出させることが可能な第二弾性部材66と、を備える点にある。
【0059】
本特徴構成に係る成形型Cにおいては、型締め前に、つまり型締めしていない状態で、第二弾性部材66により、上型キャビティブロック64の下面68よりもカルブロック65を下方に突出させるように、カルブロック65を押圧している。これにより、型締め時には上型キャビティブロック64よりも前にカルブロック65が下型LMのポットブロック54に接触する。この後、第二弾性部材66の変形により上型キャビティブロック64と成形対象物(樹脂成形前基板Sa)の上面56が接触することによりキャビティMCに樹脂材料(溶融樹脂Ta)を供給することができるので、型締め時(樹脂成形時)に、成形対象物(樹脂成形前基板Sa)に過大な押圧力が作用するのを防止することができる。
【0060】
(2)上記(1)に記載の成形型Cにおいて、型締め時に、第一弾性部材55が複数の支持部材(フローティングピン63)よりも前に弾性変形を開始するように、第一弾性部材55の弾性力が設定されていてもよい。
【0061】
本構成であれば、第一弾性部材55の弾性力で成形対象物(樹脂成形前基板Sa)を保持するので、型締め時(樹脂成形時)に、成形対象物(樹脂成形前基板Sa)に過大な押圧力が作用するのを防止することができる。
【0062】
(3)上記(1)又は(2)に記載の成形型Cにおいて、型締め時に、第二弾性部材66が第一弾性部材55よりも前に弾性変形を開始するように、第二弾性部材66の弾性力が設定されていてもよい。
【0063】
本構成であれば、第二弾性部材66の弾性力で成形対象物(樹脂成形前基板Sa)を保持するので、型締め時(樹脂成形時)に、成形対象物(樹脂成形前基板Sa)に過大な押圧力が作用するのを防止することができる。
【0064】
(4)樹脂成形装置100の特徴構成は、上記(1)から(3)のいずれか一つに記載の成形型Cと、成形型Cを型締めする型締め機構35と、を備える点にある。
【0065】
本特徴構成に係る樹脂成形装置100であれば、上記(1)から(3)のいずれか一つに記載の成形型Cを用いて樹脂成形品(樹脂成形済基板Sb)を製造することができる。
【0066】
(5)上記(4)に記載の樹脂成形装置100を用いた樹脂成形品(樹脂成形済基板Sb)の製造方法の特徴は、成形型Cに成形対象物(樹脂成形前基板Sa)及び樹脂材料(樹脂タブレットT)を供給する供給工程と、第一型締め力により第二弾性部材66が弾性変形してカルブロック65とポットブロック54とを接触させると共に上型キャビティブロック64の下面68と成形対象物(樹脂成形前基板Sa)の上面56とを接触させてポット54bに充填された樹脂材料(樹脂タブレットT、溶融樹脂Ta)をキャビティMCに供給し、第二型締め力によりエアベント溝64aを閉鎖する型締め工程と、成形対象物(樹脂成形前基板Sa)の樹脂成形を行う成形工程と、を含む点にある。
【0067】
本特徴を有する樹脂成形品(樹脂成形済基板Sb)の製造方法においては、供給工程で成形型Cに成形対象物(樹脂成形前基板Sa)及び樹脂材料(樹脂タブレットT)を供給した後、型締め工程で第二弾性部材66が弾性変形する第一型締め力でカルブロック65とポットブロック54とを接触させると共に上型キャビティブロック64の下面68と成形対象物(樹脂成形前基板Sa)の上面56とを接触させる。そして、この状態でキャビティMCに樹脂材料(溶融樹脂Ta)を供給し、その後第二型締め力によりエアベント溝64aを閉鎖して型締め樹脂成形品(樹脂成形済基板Sb)を製造する(成形工程)。このように第二型締め力でエアベント溝64aを閉鎖するまで第一型締め力で樹脂材料(溶融樹脂Ta)を供給して樹脂成形品(樹脂成形済基板Sb)を製造するので、成形対象物(樹脂成形前基板Sa)に過大な押圧力を作用させることなく樹脂成形品(樹脂成形済基板Sb)を製造することができる。
【0068】
また、これにより、特許文献1に開示された樹脂封止装置の第二次型締工程における型締め力と比較して第二型締め力を大幅に小さくすることができ、型締めを行うプレス機を小型にすることができる。さらに、成形対象物(樹脂成形前基板Sa)の上面56に接触するエアベント溝64aに作用する押圧力も小さくすることができるので、エアベント溝64aが潰れるのを防止することができる。
【0069】
(6)上記(5)に記載の樹脂成形品(樹脂成形済基板Sb)の製造方法は、型締め工程において、第二弾性部材66の弾性力によりカルブロック65とポットブロック54とを接触させた後に、第二弾性部材66が圧縮されて上型キャビティブロック64の下面68と成形対象物(樹脂成形前基板Sa)の上面56とを接触させてもよい。
【0070】
本方法であれば、第二弾性部材66の弾性変形によりカルブロック65とポットブロック54とが接触し、上型キャビティブロック64の下面68と成形対象物(樹脂成形前基板Sa)の上面56とが接触するので、成形対象物(樹脂成形前基板Sa)に過大な押圧力を作用させることなく樹脂成形品(樹脂成形済基板Sb)を製造することができる。
【0071】
(7)上記(5)又は(6)に記載の樹脂成形品(樹脂成形済基板Sb)の製造方法は、型締め工程において、第二型締め力により支持部材(フローティングピン63)の圧縮量が最大となったときにエアベント溝64aが閉鎖されてもよい。
【0072】
通常、エアベント溝64aからキャビティMC内のエアが排出されるので、エアベント溝64aは、キャビティMC内に樹脂材料(溶融樹脂Ta)が充填される直前まで閉鎖されない。したがって、本方法であれば、第二型締め力により支持部材(フローティングピン63)の圧縮量が最大となったときにエアベント溝64aが閉鎖されるので、樹脂材料(溶融樹脂Ta)が充填される直前まで成形対象物(樹脂成形前基板Sa)に第二型締め力による押圧力を作用させずに、樹脂成形品(樹脂成形済基板Sb)を製造することができる。
【0073】
(8)上記(5)から(7)のいずれか一つに記載の樹脂成形品(樹脂成形済基板Sb)の製造方法は、第一弾性部材55の弾性変形量が最大になったときに、成形対象物(樹脂成形前基板Sa)の上面56とポットブロック54の上面57とが面一になってもよい。
【0074】
本方法であれば、第一弾性部材55の弾性力による押圧力が成形対象物(樹脂成形前基板Sa)に作用するタイミングを遅らせることができるので、該押圧力が成形対象物(樹脂成形前基板Sa)に作用する時間を短縮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、成形型、樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0076】
35 :型締め機構
53 :下型キャビティブロック
54 :ポットブロック
54b :ポット
55 :第一弾性部材
63 :フローティングピン(支持部材)
64 :上型キャビティブロック
64a :エアベント溝
65 :カルブロック
66 :第二弾性部材
100 :樹脂成形装置
C :成形型
LM :下型
MC :キャビティ
Sa :樹脂成形前基板(成形対象物)
Sb :樹脂成形済基板(樹脂成形品)
T :樹脂タブレット(樹脂材料)
Ta :溶融樹脂(樹脂材料)
UM :上型
【手続補正書】
【提出日】2022-07-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形対象物が載置される下型キャビティブロック、及び樹脂材料が充填されるポットが形成されたポットブロックを含む下型と、
キャビティとエアベント溝とを有する上型キャビティブロック、及び前記ポットブロックの上方に配置され前記上型キャビティブロックと独立して昇降可能なカルブロックを含む上型と、
前記下型キャビティブロックを前記上型に向かって押圧する第一弾性部材と、
前記上型キャビティブロックと前記カルブロックとを押圧し、弾性変形可能な複数の支持部材と、
前記カルブロックを押圧して前記上型キャビティブロックの下面よりも下方に前記カルブロックを突出させることが可能な第二弾性部材と、を備える成形型。
【請求項2】
型締め時に、前記第一弾性部材が複数の前記支持部材よりも前に弾性変形を開始するように、前記第一弾性部材の弾性力が設定されている請求項1に記載の成形型。
【請求項3】
型締め時に、前記第二弾性部材が前記第一弾性部材よりも前に弾性変形を開始するように、前記第二弾性部材の弾性力が設定されている請求項1又は2に記載の成形型。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の成形型と、
前記成形型を型締めする型締め機構と、を備える樹脂成形装置。
【請求項5】
請求項4に記載の樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法であって、
前記成形型に前記成形対象物及び前記樹脂材料を供給する供給工程と、
第一型締め力により前記第二弾性部材が弾性変形して前記カルブロックと前記ポットブロックとを接触させると共に前記上型キャビティブロックの前記下面と前記成形対象物の上面とを接触させて前記ポットに充填された前記樹脂材料を前記キャビティに供給し、第二型締め力により前記エアベント溝を閉鎖する型締め工程と、
前記成形対象物の樹脂成形を行う成形工程と、を含む樹脂成形品の製造方法。
【請求項6】
前記型締め工程において、前記第二弾性部材の弾性力により前記カルブロックと前記ポットブロックとを接触させた後に、前記第二弾性部材が圧縮されて前記上型キャビティブロックの前記下面と前記成形対象物の前記上面とを接触させる請求項5に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項7】
前記型締め工程において、前記第二型締め力により前記支持部材の圧縮量が最大となったときに前記エアベント溝が閉鎖される請求項5に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項8】
前記第一弾性部材の弾性変形量が最大になったときに、前記成形対象物の前記上面と前記ポットブロックの上面とが面一になる請求項5に記載の樹脂成形品の製造方法。