(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118559
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッドユニットおよび液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20240826BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
B41J2/14 607
B41J2/14 501
B41J2/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024902
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 学
(72)【発明者】
【氏名】四十物 孝憲
(72)【発明者】
【氏名】谷内 章紀
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 真士
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 英一郎
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056FA04
2C056HA05
2C056KB16
2C056KB35
2C057AF21
2C057AG01
2C057AG03
2C057AG12
2C057AG29
2C057AG34
2C057AG44
2C057AR18
2C057BA04
(57)【要約】
【課題】通常の液滴を吐出するノズルと微小な液滴を吐出するノズルとのいずれにおいても2段階ノズルを適用し、液体の吐出性能を向上させること。
【解決手段】液体吐出ヘッドユニットは、X方向に液体が流れる複数の第1ノズル流路と、Y方向に配列され第1ノズル流路におけるX方向に流れる液体をZ方向に吐出する複数の第1ノズルと、X方向に液体が流れる複数の第2ノズル流路と、Y方向に配列され第2ノズル流路におけるX方向に流れる液体をZ方向に吐出する複数の第2ノズルと、を有し、第1ノズルは、第1部分と、第2部分と、を含み、第2ノズルは、第3部分と、第4部分と、を含み、第1部分の容積は、第2部分の容積よりも小さく、第3部分の容積は、第4部分の容積よりも小さく、第1部分の容積は、第3部分の容積よりも小さく、第2部分のX方向における長さは、第4部分のX方向における長さよりも長い。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出ヘッドユニットであって、
X方向に延在し、前記X方向に液体が流れる複数の第1ノズル流路と、
前記X方向と交差するY方向に配列され、前記複数の第1ノズル流路それぞれに接続し、前記第1ノズル流路における前記X方向に流れる液体を前記X方向および前記Y方向と交差するZ方向に吐出する複数の第1ノズルと、
前記X方向に延在し、前記X方向に液体が流れる複数の第2ノズル流路と、
前記Y方向に配列され、前記複数の第2ノズル流路それぞれに接続し、前記第2ノズル流路における前記X方向に流れる液体を前記Z方向に吐出する複数の第2ノズルと、
を有し、
前記第1ノズルは、第1部分と、前記Z方向において前記第1部分よりも前記第1ノズル流路に近い第2部分と、を含み、
前記第2ノズルは、第3部分と、前記Z方向において前記第3部分よりも前記第2ノズル流路に近い第4部分と、を含み、
前記第1部分の容積は、前記第2部分の容積よりも小さく、
前記第3部分の容積は、前記第4部分の容積よりも小さく、
前記第1部分の容積は、前記第3部分の容積よりも小さく、
前記第2部分の前記X方向における長さは、前記第4部分の前記X方向における長さよりも長い、
液体吐出ヘッドユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドユニットであって、
前記第2部分の前記X方向における長さは、前記第1部分の前記X方向における長さよりも長い、液体吐出ヘッドユニット。
【請求項3】
請求項2に記載の液体吐出ヘッドユニットであって、
前記第2部分の前記X方向における長さは、前記第1部分の前記X方向における長さの3倍よりも長い、液体吐出ヘッドユニット。
【請求項4】
請求項3に記載の液体吐出ヘッドユニットであって、
前記第2部分の前記X方向における長さは、前記第1部分の前記X方向における長さの5倍よりも長い、液体吐出ヘッドユニット。
【請求項5】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドユニットであって、
前記第4部分の前記X方向における長さは、前記第3部分の前記X方向における長さよりも長い、液体吐出ヘッドユニット。
【請求項6】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドユニットであって、
前記第1部分と前記第2部分との前記X方向における長さの差分は、前記第3部分と前記第4部分との前記X方向における長さの差分よりも大きい、液体吐出ヘッドユニット。
【請求項7】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドユニットであって、
前記第2部分の前記Y方向における幅は、前記第4部分の前記Y方向における幅と等しい、液体吐出ヘッドユニット。
【請求項8】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドユニットであって、
前記第1部分の前記Z方向における深さは、前記第2部分の前記Z方向における深さよりも短く、
前記第3部分の前記Z方向における深さは、前記第4部分の前記Z方向における深さよりも短い、液体吐出ヘッドユニット。
【請求項9】
請求項8に記載の液体吐出ヘッドユニットであって、
前記第1部分の前記Z方向における深さは、前記第3部分の前記Z方向における深さよりも短い、液体吐出ヘッドユニット。
【請求項10】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドユニットであって、
前記複数の第1ノズル流路のそれぞれの一端に共通に接続し、前記複数の第1ノズル流路のそれぞれへと液体を供給する共通供給流路と、
前記複数の第1ノズル流路のそれぞれの一端に共通に接続し、前記複数の第1ノズル流路のそれぞれから液体を排出する共通排出流路と、
を更に有する、液体吐出ヘッドユニット。
【請求項11】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドユニットであって、
前記複数の第1ノズルと前記複数の第1ノズル流路とが設けられた第1液体吐出ヘッドと、
前記複数の第2ノズルと前記複数の第2ノズル流路とが設けられた第2液体吐出ヘッドと、
を有する、液体吐出ヘッドユニット。
【請求項12】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドユニットであって、
前記複数の第1ノズルと、前記複数の第1ノズル流路と、前記複数の第2ノズルと、前記複数の第2ノズル流路と、が設けられた第3液体吐出ヘッドを有する、液体吐出ヘッドユニット。
【請求項13】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドユニットであって、
前記第2部分および前記第4部分のうちの少なくとも一方の前記Z方向に見た四隅は、直角である、液体吐出ヘッドユニット。
【請求項14】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドユニットであって、
前記第2部分および前記第4部分のうちの少なくとも一方の前記Z方向に見た四隅は、面取りまたは角R加工されている、液体吐出ヘッドユニット。
【請求項15】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドユニットであって、
前記第2部分および前記第4部分のうちの少なくとも一方の前記X方向における両端は、前記Z方向に見て弧状である、液体吐出ヘッドユニット。
【請求項16】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドユニットであって、
前記第2部分は、前記第1部分側の端部において面取りまたは角R加工されており、
前記第4部分は、前記第3部分側の端部において面取りまたは角R加工されている、
液体吐出ヘッドユニット。
【請求項17】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドユニットであって、
前記第2部分は、前記Z方向において前記第1ノズル流路と反対側に向かってテーパ加工されており、
前記第4部分は、前記Z方向において前記第2ノズル流路と反対側に向かってテーパ加工されている、
液体吐出ヘッドユニット。
【請求項18】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドユニットであって、
前記第2部分の前記Y方向における中心は、前記第1ノズル流路の前記Y方向における中心とずれており、
前記第4部分の前記Y方向における中心は、前記第2ノズル流路の前記Y方向における中心とずれている、
液体吐出ヘッドユニット。
【請求項19】
請求項1から請求項18までのいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドユニットと、前記液体吐出ヘッドユニットからの液体の吐出動作を制御する制御部と、を有する、液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体吐出ヘッドユニットおよび液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出ヘッドとして、例えば特許文献1に記載されているように、液体がノズル流路を循環し、ノズル流路に直交する方向に液体が吐出される構成を有する液体吐出ヘッドが知られている。かかる液体吐出ヘッドにおいて、サテライト滴を抑制するため、および液体をノズルに効率良く供給するために、液滴を吐出する第1部分と、ノズル流路および第1部分に接続し第1部分よりも大きい容積を有する第2部分と、から構成される2段階ノズルが用いられることがある。また、液体吐出ヘッドとして、通常ノズルに加えて、微小な液滴を吐出するための微小ノズルを備える液体吐出ヘッドが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常ノズルと微小ノズルとのいずれにも2段階ノズルを適用すると、通常ノズルでは上述したように液体の吐出性能が向上する一方で、微小ノズルでは液体の吐出量が少ない、すなわち第1部分の容積が比較的小さいために、液体が滞留しやすくなり、微小ノズル中の液体の粘度が増加するおそれがある。液体の粘度が増加すると、液体が適切に吐出されない頻度が増加し得る。通常ノズルと微小ノズルのいずれにも2段階ノズルを適用し、通常ノズルと微小ノズルのいずれにおいても液体の吐出性能を向上させることのできる技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
本開示の一形態によれば、液体吐出ヘッドユニットが提供される。この液体吐出ヘッドユニットは、X方向に延在し、前記X方向に液体が流れる複数の第1ノズル流路と、前記X方向と交差するY方向に配列され、前記複数の第1ノズル流路それぞれに接続し、前記第1ノズル流路における前記X方向に流れる液体を前記X方向および前記Y方向と交差するZ方向に吐出する複数の第1ノズルと、前記X方向に延在し、前記X方向に液体が流れる複数の第2ノズル流路と、前記Y方向に配列され、前記複数の第2ノズル流路それぞれに接続し、前記第2ノズル流路における前記X方向に流れる液体を前記Z方向に吐出する複数の第2ノズルと、を有し、前記第1ノズルは、第1部分と、前記Z方向において前記第1部分よりも前記第1ノズル流路に近い第2部分と、を含み、前記第2ノズルは、第3部分と、前記Z方向において前記第3部分よりも前記第2ノズル流路に近い第4部分と、を含み、前記第1部分の容積は、前記第2部分の容積よりも小さく、前記第3部分の容積は、前記第4部分の容積よりも小さく、前記第1部分の容積は、前記第3部分の容積よりも小さく、前記第2部分の前記X方向における長さは、前記第4部分の前記X方向における長さよりも長い。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の一実施形態としての液体吐出装置の概略構成を示す説明図である。
【
図2】
図1に示す液体吐出ヘッドの詳細構成を示す分解斜視図である。
【
図3】液体吐出ヘッドの詳細構成を示す断面図である。
【
図4】液体吐出ヘッドを-Z方向から見た平面図である。
【
図5】本実施形態における第1ノズルの説明図である。
【
図6】本実施形態における第1ノズルの説明図である。
【
図7】本実施形態における第1ノズルの説明図である。
【
図8】本実施形態における第2ノズルの説明図である。
【
図9】本実施形態における第2ノズルの説明図である。
【
図10】本実施形態における第2ノズルの説明図である。
【
図11】他の実施形態における第1ノズルの説明図である。
【
図12】他の実施形態における第1ノズルの説明図である。
【
図13】他の実施形態における第1ノズルの説明図である。
【
図14】他の実施形態における第1ノズルの説明図である。
【
図15】他の実施形態における第1ノズルの説明図である。
【
図16】他の実施形態における第1ノズルの説明図である。
【
図17】他の実施形態における第1ノズルの説明図である。
【
図18】他の実施形態における第1ノズルの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.実施形態:
A1.液体吐出装置100の構成:
図1は、本開示の一実施形態としての液体吐出装置100の概略構成を示す説明図である。本実施形態において、液体吐出装置100は、液体の一例としてのインクを印刷用紙PPに吐出して画像を形成するインクジェット式プリンターである。なお、液体吐出装置100は、印刷用紙PPに代えて、樹脂フィルム、布帛等の任意の種類の媒体を、インクの吐出対象としてもよい。
図1には、相互に直交する3つの軸であるX軸、Y軸およびZ軸が表されている。他の図面に記載のX軸、Y軸およびZ軸は、いずれも
図1のX軸、Y軸およびZ軸に対応する。
【0009】
液体吐出装置100は、液体吐出ヘッドユニット10と、液体容器20と、循環機構30と、搬送機構40と、移動機構55と、制御部90とを備える。
【0010】
液体吐出ヘッドユニット10は、複数の液体吐出ヘッド1により構成されている。液体吐出ヘッド1は、多数のノズル(後述のノズルN)を有し、-Z方向にインクを吐出して印刷用紙PP上に画像を形成する。液体吐出ヘッド1の詳細構成は、後述する。吐出するインクとしては、例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、およびイエローの合計4色のインクを吐出してもよい。なお、上記4色に限らずライトシアン、ライトマゼンタ、ホワイトなど、任意の色のインクを吐出してもよい。液体吐出ヘッド1は、移動機構55が有する後述のキャリッジ53に搭載され、キャリッジ53の移動と共に主走査方向に往復移動する。本実施形態において、主走査方向は、+X方向および-X方向(以下、「X方向」とも呼ぶ)である。
【0011】
液体容器20は、液体吐出ヘッド1から吐出するインクを収容する。インクとしては、例えば、色材としての顔料が溶媒中に分散されたインクのほか、染料を含有するインクや、顔料と染料との双方を色材として含有するインクを用いることができる。インクには、一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種の液体状組成物が含まれてよい。液体容器20は、例えば、液体吐出装置100に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、または、インクを補充可能なインクタンク等である。
【0012】
循環機構30は、制御部90による制御のもとで、液体容器20に貯留された液体を、液体吐出ヘッド1に供給する装置である。循環機構30は、例えばポンプにより構成される。また、循環機構30は、液体吐出ヘッド1内に貯留されたインクを回収し、回収したインクを、液体吐出ヘッド1に還流させる。
【0013】
搬送機構40は、印刷用紙PPを副走査方向に搬送する。副走査方向は、主走査方向(X方向)と直交する方向であり、本実施形態では、+Y方向および-Y方向(以下、「Y方向」とも呼ぶ)である。搬送機構40は、3つの搬送ローラー42が装着された搬送ロッド44と、搬送ロッド44を回転駆動する搬送用モーター46とを備える。搬送用モーター46が搬送ロッド44を回転駆動することにより、複数の搬送ローラー42が回転して印刷用紙PPが副走査方向(+Y方向)に搬送される。なお、搬送ローラー42の数は3つに限らず任意の数であってもよい。また、搬送機構40を複数備える構成としてもよい。
【0014】
移動機構55は、上述のキャリッジ53に加えて、搬送ベルト54と、移動用モーター56と、プーリー57とを備える。キャリッジ53は、インクを吐出可能な状態で液体吐出ヘッド1を搭載する。キャリッジ53は、搬送ベルト54に取り付けられている。搬送ベルト54は、移動用モーター56とプーリー57との間に架け渡されている。移動用モーター56が回転駆動することにより、搬送ベルト54は、主走査方向に往復移動する。これにより、搬送ベルト54に取り付けられているキャリッジ53も、主走査方向に往復移動する。
【0015】
制御部90は、インクの吐出動作を制御する。例えば、制御部90は、キャリッジ53の主走査方向に沿った往復動作や、印刷用紙PPの副走査方向に沿った搬送動作を制御する。また、例えば、液体吐出ヘッドユニット10に駆動信号を出力して圧電素子(後述の圧電素子PZ1,PZ2)を駆動させることにより、印刷用紙PPへのインク吐出を制御する。制御部90は、例えば、CPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の処理回路と半導体メモリー等の記憶回路とにより構成されてもよい。
【0016】
A2.液体吐出ヘッド1の詳細構成:
図2は、
図1に示す液体吐出ヘッド1の詳細構成を示す分解斜視図である。
図3は、液体吐出ヘッド1の詳細構成を示す断面図である。
図3は、
図2に示すIII-III断面線における断面を示す。
図4は、液体吐出ヘッド1を-Z方向から見た平面図である。詳細については後述するが、本実施形態における液体吐出ヘッドユニット10は、複数の液体吐出ヘッド1を含む。具体的には、液体吐出ヘッドユニット10は、第1ノズルN1を有する第1液体吐出ヘッド11と、第1ノズルN1よりも容積の大きい第2ノズルN2を有する第2液体吐出ヘッド12と、を含む。第1ノズルN1および第2ノズルN2の詳細については、後述する。第1液体吐出ヘッド11と第2液体吐出ヘッド12との構成において、ノズルNを除いた他の構成については同じなので、以下では第1液体吐出ヘッド11と第2液体吐出ヘッド12とを区別せずに、液体吐出ヘッド1としてまとめて説明する。なお、同色のインクを吐出する第1液体吐出ヘッド11と第2液体吐出ヘッド12は、互いに隣接して配置されても、互いに離れて配置されてもよい。
【0017】
図2に示すように、液体吐出ヘッド1は、ノズル基板60と、連通板2と、圧力室基板3と、振動板4と、貯留室形成基板5と、配線基板8と、コンプライアンスシート61,62と、を備えている。
【0018】
図2に示すように、ノズル基板60は、Y方向に沿って長尺な板状部材である。ノズル基板60は、液体吐出ヘッド1において最も-Z方向に位置する。ノズル基板60は、例えば、シリコンの単結晶基板を加工することで製造される。ノズル基板60には、M個のノズルNが形成されている。なお、Mは、1以上の任意の整数である。ノズルNは、ノズル基板60において厚さ方向(Z方向)設けられた貫通孔として形成されている。ノズルNは、液体吐出ヘッド1からのインクの吐出口に相当する。本実施形態において、M個のノズルNは、Y方向に延在するノズル列Lnを形成するように直線状に配列されている。
図3に示すように、本実施形態におけるノズルNは、2段階ノズルである。なお、「2段階ノズル」とは、Z方向に、容積の異なる2つの部分が接続されることにより構成されるノズルを意味する。
【0019】
図2に示すように、連通板2には、インクの流路が形成されている。具体的には、連通板2には、Y方向に延在する一つの共通供給流路RA1と、Y方向に延在する一つの共通排出流路RA2とが形成されている。
図3に示すように、連通板2には、さらに、M個のノズルNのそれぞれに対応するM個のノズル流路RNと、M個の供給流路RR1と、M個の排出流路RR2と、M個の連通流路RK1と、M個の連通流路RK2と、M個の連通流路RX1と、M個の連通流路RX2とが形成されている。
【0020】
図3に示すように、連通流路RX1は、共通供給流路RA1と接続されている。連通流路RX1は、X方向に沿って共通供給流路RA1から-X方向に向かって延在するように設けられている。連通流路RX1には、連通流路RK1が接続されている。連通流路RK1は、Z方向に沿って連通流路RX1から-Z方向に向かって延在するように設けられている。連通流路RK1は、後述する圧力室CB1の一端に接続されている。圧力室CB1の他端には、供給流路RR1が接続されている。供給流路RR1は、圧力室CB1からZ方向に沿って+Z方向に向かって延在するように設けられている。供給流路RR1は、ノズル流路RNの一端に接続されている。ノズル流路RNは、X方向に延在しており、中央付近に一つのノズルNが設けられている。ノズル流路RNをX方向に流れるインクの一部が、ノズルNから吐出される。
【0021】
ノズル流路RNの他端には、排出流路RR2が接続されている。排出流路RR2は、Z方向に沿ってノズル流路RNから-Z方向に向かって延在するように設けられている。排出流路RR2は、後述する圧力室CB2の一端に接続されている。圧力室CB2の他端には、連通流路RK2が接続されている。連通流路RK2は、圧力室CB2からZ方向に沿って+Z方向に向かって延在するように設けられている。連通流路RK2には、連通流路RX2の一端が接続されている。連通流路RX2は、X方向に沿って連通流路RK2から-X方向に延在するように設けられている。連通流路RX2の他端は、共通排出流路RA2に接続されている。
【0022】
図2及び
図3に示すように、連通板2の+Z方向側の面には、共通供給流路RA1、連通流路RX1、ならびに連通流路RK1を閉塞するように、コンプライアンスシート61が配置されている。コンプライアンスシート61は、共通供給流路RA1、連通流路RX1、および連通流路RK1内のインクの圧力変動を吸収する。また、連通板2の+Z方向側の面には、共通排出流路RA2、連通流路RX2、および連通流路RK2を閉塞するように、コンプライアンスシート62が配置されている。共通排出流路RA2、連通流路RX2、ならびに連通流路RK2内のインクの圧力変動を吸収する。コンプライアンスシート61,62は、弾性変形可能な可撓性を有するシート状の部材である。
【0023】
図2および
図3に示すように、連通板2の-Z方向側の面上には、貯留室形成基板5が配置されている。貯留室形成基板5は、Y方向に長尺な部材である。貯留室形成基板5は、例えば、樹脂材料の射出成形により形成される。貯留室形成基板5の内部には、インクの流路が形成されている。具体的には、貯留室形成基板5には、一つの共通供給流路RB1と、一つの共通排出流路RB2とが形成されている。共通供給流路RB1は、共通供給流路RA1と連通し、共通排出流路RB2は、共通排出流路RA2と連通する。
【0024】
貯留室形成基板5には、共通供給流路RB1と連通する導入口51と、共通排出流路RB2と連通する排出口52とが設けられている。共通供給流路RB1には、液体容器20からのインクが導入口51を介して供給される。また、共通排出流路RB2に貯留されたインクは、排出口52を介して回収される。
【0025】
本実施形態において、循環機構30によって液体容器20から導入口51に供給されたインクは、共通供給流路RB1を経由して、共通供給流路RA1に流入する。共通供給流路RA1に流入したインクの一部は、連通流路RX1および連通流路RK1に分流されて、各圧力室CB1に流入する。圧力室CB1に流入したインクの一部は、供給流路RR1と、ノズル流路RNと、排出流路RR2とをこの順に経由して、圧力室CB2に流入する。圧力室CB2に流入したインクの一部は、連通流路RK2と、連通流路RX2とをこの順に経由した後に、共通排出流路RA2で合流され、共通排出流路RB2を経由して、排出口52から排出される。以下の説明において、共通供給流路RA1から共通排出流路RA2までのインクの流路を、循環流路RJとも呼ぶ。具体的には、循環流路RJには、共通供給流路RA1と、連通流路RX1と、連通流路RK1と、圧力室CB1と、供給流路RR1と、ノズル流路RNと、排出流路RR2と、圧力室CB2と、連通流路RK2と、連通流路RX2と、共通排出流路RA2とが含まれる。M個の循環流路RJは、Y方向に配列されている。
図4に示すように、共通供給流路RA1と、共通排出流路RA2とは、M個のノズルNのそれぞれに対応するM個の循環流路RJによって接続されている。すなわち、共通供給流路RA1により、M個のノズル流路RNのそれぞれにインクが供給され、共通排出流路RA2により、M個のノズル流路RNのそれぞれからインクが排出される。ここで、ノズル流路RNの一端に共通供給流路RA1が間接的に接続し、ノズル流路RNの他端に共通排出流路RA2が間接的に接続しているともいえる。なお、共通供給流路RA1と共通排出流路RA2とがそれぞれノズル流路RNに直接接続する構成としてもよい。
【0026】
図2および
図3に示すように、貯留室形成基板5には、開口50が設けられている。開口50の内側には、圧力室基板3と、振動板4と、配線基板8とが設けられている。圧力室基板3は、Y方向に長尺な板状部材である。圧力室基板3は、連通板2の-Z方向側の面上に設けられている。圧力室基板3は、X-Y平面に略平行となるように配置されている。圧力室基板3は、例えば、エッチング技術を利用してシリコンの単結晶基板を加工することで製造される。圧力室基板3には、インクの流路が形成されている。具体的には、圧力室基板3には、M個のノズルNのそれぞれに対応するM個の圧力室CB1およびM個の圧力室CB2が形成されている。
【0027】
圧力室CB1は、連通流路RK1と供給流路RR1とを連通するように、X方向に延在して設けられている。圧力室CB2は、連通流路RK2と排出流路RR2とを連通するように、X方向に延在して設けられている。
【0028】
振動板4は、Y方向に長尺な板状部材である。
図2および
図3に示すように、振動板4は、圧力室基板3の-Z方向側の面上に設けられている。振動板4は、弾性的に振動可能な部材であり、圧力室CB1,CB2内のインクに圧力を付与する。振動板4は、X-Y平面に略平行となるように配置されている。振動板4の-Z方向側の面上には、M個の圧力室CB1のそれぞれに対応するM個の圧電素子PZ1と、M個の圧力室CB2のそれぞれに対応するM個の圧電素子PZ2と、が設けられている。圧電素子PZ1,PZ2は、制御部90から伝達された駆動信号の電気エネルギーを運動エネルギーに変換する、エネルギー変換素子である。本実施形態において、圧電素子PZ1,PZ2は、駆動信号の電位変化に応じて変形する受動素子である。
【0029】
配線基板8は、振動板4の-Z方向側に実装されている。配線基板8は、制御部90と、液体吐出ヘッド1とを電気的に接続するための部品である。配線基板8としては、例えば、FPCまたはFFC等の可撓性の配線基板が用いられる。配線基板8には、駆動回路81が実装されている。駆動回路81は、制御信号に基づいて、圧電素子PZ1,PZ2に駆動信号を供給するか否かを切り替える。
【0030】
圧電素子PZ1,PZ2は、駆動信号の電位変化に応じて変形する。振動板4は、圧電素子PZ1,PZ2の変形に連動して振動する。振動板4の振動によって、圧力室CB1,CB2内の圧力は変動する。圧力室CB1,CB2内の圧力が変動することによって、圧力室CB1,CB2の内部に充填されたインクは、供給流路RR1、排出流路RR2、ならびにノズル流路RNを経由して、ノズルNから吐出される。具体的には、駆動信号により圧電素子PZ1が駆動される場合、圧力室CB1内部に充填されているインクの一部は、供給流路RR1とノズル流路RNとを経由して、ノズルNから吐出される。駆動信号により圧電素子PZ2が駆動される場合、圧力室CB2内部に充填されているインクの一部は、排出流路RR2とノズル流路RNとを経由して、ノズルNから吐出される。
【0031】
本実施形態の液体吐出装置100は、共通供給流路RA1から循環流路RJを経由して共通排出流路RA2へとインクを循環させる。そのため、圧力室CB1,CB2内部のインクがノズルNから吐出されない期間が存在する場合であっても、圧力室CB1,CB2内部及びノズル流路RN等において、インクが滞留することを低減または防止できる。したがって、本実施形態の液体吐出装置100は、圧力室CB1,CB2及びノズル流路RN内部のインクが増粘することを低減または防止し、ノズルNからインクが吐出できなくなる吐出異常の発生を抑制できる。
【0032】
本実施形態の液体吐出装置100は、圧力室CB1内部に充填されているインクと、圧力室CB2内部に充填されているインクとを、ノズルNから吐出する。したがって、本実施形態の液体吐出装置100は、例えば、1個の圧力室CB1,CB2内部に充填されているインクのみをノズルNから吐出する構成と比較して、ノズルNからのインクの吐出量を増大させることができる。
【0033】
A3.第1ノズルN1および第2ノズルN2の詳細構成:
上述したように、本実施形態における液体吐出ヘッド1は、第1ノズルN1を有する第1液体吐出ヘッド11と、第1ノズルN1よりも容積の大きい第2ノズルN2を有する第2液体吐出ヘッド12と、を含む。第1ノズルN1および第2ノズルN2は、いずれも2段階ノズルである。
図5~
図7は、本実施形態における第1ノズルN1の説明図である。
図5は、Z方向に見た第1ノズルN1を示す。
図6は、
図5のVI-VI断面線における断面を示す。
図7は、
図5のVII-VII断面線における断面を示す。なお、
図5~
図7では、第1液体吐出ヘッド11のノズル流路RN(以下、第1ノズル流路RN1と呼ぶ)におけるノズル基板60および第1ノズルN1の構成のみを示し、その他の構成については省略している。
【0034】
図5~
図7に示すように、第1ノズルN1は、第1部分P1と、Z方向において第1部分P1よりも第1ノズル流路RN1に近い第2部分P2と、を有する。第1部分P1および第2部分P2は、ノズル基板60をエッチング等の技術により加工することで形成される。第1部分P1は、第2部分P2のX方向およびY方向における中央付近に+Z方向から接続している。第1部分P1は、第2部分P2から供給されるインクを外部に向けて吐出する。
図5に示すように、第1部分P1は、X方向における長さL1と、Y方向における幅W1とが略等しく、Z方向に見て円状の外観形状を有する。
【0035】
図5~
図7に示すように、第2部分P2における長さL2と幅W2と深さD2とのそれぞれは、第1部分P1における長さL1と幅W1と深さD1とのそれぞれよりも大きい。第2部分P2の幅W2は、第1ノズル流路RN1の幅W10よりも小さい。第2部分P2の容積は、第1部分P1の容積よりも大きい。
図5に示すように、第2部分P2は、Z方向に見てX方向の両端が弧状に加工された長方形状の外観形状を有する。第2部分P2には、第1ノズル流路RN1をX方向に流れるインクの少なくとも一部が流れ込む。第2部分P2に流れ込んだインクの少なくとも一部は、第1部分P1に供給される。
【0036】
図8~
図10は、本実施形態における第2ノズルN2の説明図である。
図8は、Z方向に見た第2ノズルN2を示す。
図9は、図のIX-IX断面線における断面を示す。
図10は、
図8のX-X断面線における断面を示す。なお、
図8~
図10では、第2液体吐出ヘッド12のノズル流路RN(以下、第2ノズル流路RN2と呼ぶ)におけるノズル基板60および第2ノズルN2の構成のみを示し、その他の構成については省略している。
【0037】
図8~
図10に示すように、第2ノズルN2は、第3部分P3と、Z方向において第3部分P3よりも第2ノズル流路RN2に近い第4部分P4と、を有する。第3部分P3および第4部分P4は、ノズル基板60をエッチング等の技術により加工することで形成される。第3部分P3は、第4部分P4のX方向およびY方向における中央付近に+Z方向から接続している。第3部分P3は、第4部分P4から供給されるインクを外部に向けて吐出する。
図8に示すように、第3部分P3は、X方向における長さL3と、Y方向における幅W3とが略等しく、Z方向に見て円状の外観形状を有する。
【0038】
図8~
図10に示すように、第4部分P4における長さL4と幅W4と深さD4とのそれぞれは、第3部分P3における長さL3と幅W3と深さD3とのそれぞれよりも大きい。第4部分P4の幅W4は、第2ノズル流路RN2の幅W20よりも小さい。第4部分P4の容積は、第3部分P3の容積よりも大きい。
図8に示すように、第4部分P4は、Z方向に見て円状の外観形状を有する。第3部分P3および第4部分P4は、Z方向に見て同心円状の外観形状を有するとも言える。第4部分P4には、第2ノズル流路RN2をX方向に流れるインクの少なくとも一部が流れ込む。第4部分P4に流れ込んだインクの少なくとも一部は、第3部分P3に供給される。
【0039】
本実施形態において、第1部分P1の容積は、第3部分P3の容積よりも小さい。すなわち、第1ノズルN1から吐出されるインクの液滴は、第2ノズルN2から吐出されるインクの液滴よりも小さい。このため、求められるインクの液滴の大きさに応じて、第1ノズルN1を備える第1液体吐出ヘッド11と、第2ノズルN2を備える第2液体吐出ヘッド12とが使い分けられる。
【0040】
また、本実施形態における第2部分P2のX方向における長さL2は、第4部分P4のX方向における長さL4よりも長い。長さL4は、例えば長さL2の3倍より長い。本発明者らは、長さL2と長さL4とをこのように設定することで、第1ノズルN1におけるインクの吐出性能を向上できることを見出した。第2ノズルN2よりも小さい液滴を吐出可能な第1ノズルN1において、第1部分P1と第2部分P2から構成される2段階ノズルを適用すると、第1ノズルN1におけるインクの吐出量が比較的少ないため、第1ノズルN1と第1ノズル流路RN1との間におけるインクの置換が行われにくくなる。また、吐出する液滴が小さいので、メニスカスの揺動量が少なくメニスカスの揺動による第1ノズルN1内のインクの撹拌(インク循環)も困難となる。このため、第1部分P1と大気との境界面において大気と接触し粘度が増加したインクが、第1ノズルN1内に滞留しやすくなる。インクの粘度が増加すると、インクを適切に吐出できないおそれがある。特に、微小な液滴のインクを吐出する場合には、インクの粘度が過剰に増加しないことが望ましい。ここで、本発明者らは、本実施形態のように第2部分P2のX方向における長さL2を比較的長くすることで、第1ノズルN1内でのインクの循環効率を向上できることを見出した。これは、第2部分P2のX方向における長さL2を比較的長くすることで、第1ノズル流路RN1と第2部分P2との境界面において、インクの流れ方向であるX方向のインクの接触部分が比較的大きくなり、第1ノズル流路RN1を流れるインクと第2部分P2内のインクとの置換頻度が比較的高くなるためであると考えられる。
【0041】
これに対して、第1ノズルN1よりも大きい液滴を吐出可能な第2ノズルN2においても第4部分P4の長さL4も比較的長い構成とすると、第4部分P4内のインクと第2ノズル流路RN2を流れるインクとの置換頻度が過剰に高まり、インクを適切に吐出できないおそれがある。このようなことから、本実施形態において、第2部分P2のX方向における長さL2は、第4部分P4のX方向における長さL4よりも長く設定されている。
【0042】
以上説明した第1実施形態の液体吐出装置100によれば、第1部分P1の容積は、第2部分P2の容積よりも小さく、第3部分P3の容積は、第4部分P4の容積よりも小さく、第1部分P1の容積は、第3部分P3の容積よりも小さく、第2部分P2のX方向における長さL2は、第4部分P4のX方向における長さL4よりも長いので、第2ノズルN2よりも小さい液滴を吐出可能な第1ノズルN1内の液体が増粘することを抑制できる。これにより、第1ノズルN1だけでなく、第2ノズルN2も2段階ノズルとして構成でき、液体の吐出性能を向上させることができる。
【0043】
B.実施例:
様々な寸法の第1ノズルN1および第2ノズルN2を用いて、吐出試験を行った。吐出試験は、第1ノズルN1を有する第1液体吐出ヘッド11と、第2ノズルN2を有する第2液体吐出ヘッド12と、を有するインクジェット式プリンターを用いて、インクを吐出させることで行った。その結果を下記表1および表2に示す。なお、表1および表2における長さL1,L2,L3,L4と、幅W1,W2,W3,W4と、深さD1,D2,D3,D4との単位は、いずれもマイクロメートルである。また、表1および表2では、長さL1に対する長さL2の比を「L2/L1」として示し、長さL3に対する長さL4の比を「L4/L3」として示している。実施例では、第2部分P2の長さL2が第4部分P4の長さL4より長く設定した第1ノズルN1および第2ノズルN2について試験を行った。比較例では、第2部分P2の長さL2が第4部分P4の長さL4以下の第1ノズルN1および第2ノズルN2について試験を行った。また、実施例および比較例のいずれにおいても、第1部分P1の容積は第3部分P3の容積よりも小さく、第1部分P1の容積は第2部分P2の容積よりも小さく、第3部分P3の容積は第4部分P4の容積よりも小さい。すなわち、第1ノズルN1は、第2ノズルN2よりも微小な液滴を吐出可能な2段階ノズルである。また、第1部分P1および第2部分P2と、第3部分P3および第4部分P4とは、それぞれ1枚のノズル基板60をエッチング加工して形成されるため、深さD1および深さD2の和と、深さD3および深さD4の和とは、それぞれノズル基板60の厚さと一致する。本吐出試験においては、65μmの厚さを有するノズル基板60を用いた。
【0044】
【0045】
【0046】
表1および表2の右端に示されている「評価」は、吐出試験における吐出性能の評価を示す。具体的には、「良」は、第1ノズルN1内および第2ノズルN2内のいずれにおいてもインクの増粘が観察されず、第1ノズルN1および第2ノズルN2のいずれにおいても、インクが適切に吐出されたことを意味する。「否」は、第1ノズルN1および第2ノズルN2のうち少なくとも一方において、インクが適切に吐出されなかったことを意味する。
【0047】
実施例1~実施例10では、第2ノズルN2の寸法を統一し、第1ノズルN1のみの寸法を変えて試験を行った。実施例1と実施例2においては、第2部分P2の長さL2は841μmで共通しているが、深さD2がそれぞれ49μmと40μmとである点において異なっている。実施例3~実施例6のそれぞれと、実施例7~実施例10のそれぞれとは、第2部分P2の長さL2が対応しており、深さD2が異なっている。具体的には、実施例3と実施例7の長さL2は、50μmであり、実施例4と実施例8の長さL2は、70μmであり、実施例5と実施例9の長さL2は、90μmであり、実施例6と実施例10の長さL2は、120μmである。また、実施例3~実施例6の深さD2は、49μmであり、実施例7~実施例10の深さD2は、40μmである。実施例1~実施例10に示すように、第2部分P2の長さL2が第4部分P4の長さL4より長い場合、評価はいずれも「良」であった。これは、第一に、第1ノズルN1よりも大きい液滴を吐出可能な構成である第2ノズルN2においては、2段階ノズルを適用することでインクの吐出性能が向上し、良好なインク吐出が行われたこと、第二に、第2ノズルN2よりも微妙な液滴を吐出可能な構成である第1ノズルN1においては、流れ方向(第1実施形態で説明したX方向)に沿った長さL2を比較的長くし、第1ノズルN1内におけるインクの循環効率が向上することで、第1ノズルN1内のインクの増粘を抑制でき、2段階ノズルを適用しながら適切なインクの吐出を実現できたことによると考えられる。
【0048】
実施例11および実施例12では、第1ノズルN1の寸法を実施例1と同様に設定し、第2ノズルN2の寸法のみを実施例1から変更して試験を行った。実施例11および実施例12においても、実施例1~実施例10と同様に、評価は「良」であった。第1ノズルN1においては、実施例1~実施例10で上述した理由と同様の理由から、良好なインク吐出が行われた。第2ノズルN2においては、第4部分P4の深さD4を実施例1から変更しても、インクの吐出が適切に行われた。実施例1および実施例2の結果と、実施例3~実施例6および実施例7~実施例10の結果と、からも明らかなように、第1ノズル流路RN1および第2ノズル流路RN2におけるインクの流れ方向(X方向)と直交する方向(Z方向)に沿った深さD2,D4は、長さL2,L4と比較して、インクの循環に対する影響が小さいと推察される。
【0049】
比較例1~比較例6では、第2部分P2の長さと第4部分P4の長さを等しく設定して試験を行った。この結果、評価はいずれも「否」であった。第2ノズルN2においてはインクが適切に吐出されたが、第1ノズルN1においては、インクが適切に吐出されなかった。これは、微小な液滴を吐出可能な第1ノズルN1における長さL2が比較的短いため、第1ノズル流路RN1と第2部分P2におけるインクの循環効率が比較的低く、第1ノズルN1内におけるインクの粘度が上昇したためであると考えられる。また、比較例1~比較例6における深さD2を参照すると、深さD2に関わらずインクが適切に吐出されない。このことからも、実施例で上述したように、深さD2のインクの循環に対する影響は、長さL2と比較して小さいと考えられる。
【0050】
比較例7および比較例8では、第2ノズルN2の寸法は比較例1~比較例6と同様に設定し、第1ノズルN1の長さL2を第2ノズルN2の長さL4よりも小さく設定して試験を行った。この結果、評価はいずれも「否」であった。第2ノズルN2においてはインクが適切に吐出されたが、第1ノズルN1においてはインクが適切に吐出されなかった。これは、比較例1~6で述べたように、長さL2が比較的短いために、第2部分P2におけるインクの循環効率が比較的低く、第1ノズルN1内におけるインクの粘度が上昇したためであると考えられる。
【0051】
比較例9および比較例10では、第2部分P2の長さL2と第4部分P4の長さL4は等しいが、比較例1~比較例8よりも長く設定した。具体的には、比較例9では長さL2および長さL4を50μmと設定し、比較例10では長さL2および長さL4を120μmと設定した。この結果、評価はいずれも「否」であった。第1ノズルN1においては、L2が比較的長くなったことにより、インクの循環効率が向上することで、インクの吐出が適切に行われた。これに対し、第2ノズルN2では、長さL4を比較的長くしたにも関わらず、インクの吐出が適切に行われなかった。これは、次の理由によると推察される。第1ノズルN1よりも大きい液滴を吐出可能な第2ノズルN2においては、第1ノズルN1よりもインクの置換頻度が高い。かかる第2ノズルN2における長さL4を長くすることで、第2ノズルN2と第2ノズル流路RN2との間でのインクの置換頻度が過剰に高くなり得る。このため、インクの吐出が適切に行われなくなったと考えられる。
【0052】
以上説明した吐出試験の結果から明らかなように、比較的小さい液滴を吐出する第1ノズルN1における第2部分P2の長さL2を、比較的大きい液滴を吐出する第2ノズルN2における第4部分P4の長さL4よりも長く設定することで、第1ノズルN1と第2ノズルN2のいずれにおいても、2段階ノズルを適用し、液体の吐出性能を向上させることができる。
【0053】
C.他の実施形態:
(C1)上記実施形態に示すように、第1部分P1と第2部分P2とのX方向における長さの差分は、第3部分P3と第4部分P4とのX方向における長さの差分よりも大きい構成としてもよい。
【0054】
(C2)上記実施形態において、第2部分P2のY方向における幅W2は、第4部分P4のY方向における幅W4と等しくてもよい。かかる構成によれば、第2部分P2のY方向における幅W2と第4部分P4のY方向における幅W4とが異なる構成と比較して、液体吐出ヘッド1内におけるノズルNの密度をより高めることができる。
【0055】
(C3)上記実施形態および上記実施例1~実施例12に示すように、第1部分P1のZ方向における深さD1は、第3部分P3のZ方向における深さD3よりも短くてもよい。かかる構成によれば、第2ノズルN2よりも微小な液滴を吐出可能な第1ノズルN1において、液体の圧力損失を抑制でき、液体の吐出性能を向上できる。また、第1部分P1におけるイナータンスを小さくできるので、第1部分P1内の液体が動きやすくなり、液体を吐出しやすくできる。なお、本開示はこれに制限されず、第1部分P1のZ方向における深さD1は、第3部分P3のZ方向における深さD3よりも長くてもよい。
【0056】
(C4)上記実施形態において、共通供給流路RA1により複数のノズル流路RNのそれぞれに液体が供給され、共通供給流路RA1により複数のノズル流路RNのそれぞれから液体が排出されていたが、本開示はこれに限定されない。複数のノズル流路RNのそれぞれに液体を供給する複数の供給流路と、複数のノズル流路RNのそれぞれから液体を排出する複数の排出流路と、を備える構成としてもよい。換言すると、複数のノズル流路RNのそれぞれに接続する、個別の供給流路および排出流路を備える構成としてもよい。
【0057】
(C5)上記実施形態において、液体吐出ヘッドユニット10は、第1ノズルN1および第1ノズル流路RN1を有する第1液体吐出ヘッド11と、第2ノズルN2および第2ノズル流路RN2を有する第2液体吐出ヘッド12と、を含んでいたが、本開示はこれに限定されない。液体吐出ヘッドユニット10は、複数の第1ノズルN1および複数の第1ノズル流路RN1と、複数の第2ノズルN2および複数の第2ノズル流路RN2と、をいずれも有する第3液体吐出ヘッドを1つ以上備える構成であってもよい。また、液体吐出ヘッドユニット10は、第1液体吐出ヘッド11と、第2液体吐出ヘッド12と、第3液体吐出ヘッドと、を備える構成であってもよい。
【0058】
(C6)上記実施形態において、第2部分P2は、Z方向に見てX方向の両端が弧状に加工された長方形状の外観形状を有しており、第4部分P4は、Z方向に見てX方向の両端が弧状の外観形状を有していたが、本開示はこれに制限されない。第2部分P2と第4部分P4とのうちの少なくとも一方が、Z方向に見てX方向の両端が弧状の外観形状を有していてもよい。
【0059】
(C7)上記実施形態において、第2部分P2は、Z方向に見てX方向の両端が弧状に加工された長方形状の外観形状を有しており、第4部分P4は、Z方向に見てX方向の両端が弧状の外観形状を有していたが、本開示はこれに制限されない。
図11は、他の実施形態における第1ノズルN21の説明図である。なお、
図11は、Z方向に見た第1ノズルN21の概略構成を示している。
図11に示すように、第1ノズルN21における第2部分P21は、Z方向に見て四隅が直角であってもよい。なお、本開示における「直角」は、90度だけに限らず、85度~95度の角度を含む広い概念を意味する。また、第2部分P2だけでなく、第4部分P4のZ方向に見た四隅が直角であってもよい。また、第2部分P2と第4部分P4とのうちでいずれか一方のZ方向に見た四隅が、直角であってもよい。このように四隅を直角とすることで、直角ではない構成と比較して、第2部分P2および第4部分P4の容積をより大きく構成できる。
【0060】
(C8)上記実施形態において、第2部分P2は、Z方向に見てX方向の両端が弧状に加工された長方形状の外観形状を有しており、第4部分P4は、Z方向に見てX方向の両端が弧状の外観形状を有していたが、本開示はこれに制限されない。
図12は、他の実施形態における第1ノズルN22の説明図である。なお、
図12は、Z方向に見た第1ノズルN22の概略構成を示している。
図12に示すように、第1ノズルN22における第2部分P22は、Z方向に見て四隅が角R加工されていてもよい。また、図示は省略するが、第1ノズルN1における第2部分P2は、Z方向に見た四隅が面取りされていてもよい。また、第2部分P2だけでなく、第4部分P4のZ方向に見た四隅が、角Rに加工または面取りされていてもよい。また、第2部分P2と第4部分P4のいずれか一方のZ方向に見た四隅が、角R加工または面取りされていてもよい。このように角R加工または面取りすることで、ノズル流路RNから第2部分P2および第4部分P4に液体が供給される際の圧力損失を抑制できる。
【0061】
(C9)上記実施形態において、第2部分P2は、第1部分P1側の端部において面取りまたは角R加工されていてもよい。また、第4部分P4は、第3部分P3側の端部において面取りまたは角R加工されていてもよい。
図13および
図14は、他の実施形態における第1ノズルN23の説明図である。
図13は、第1ノズルN23のXZ平面と平行な断面を示す。
図14は、
図13のXIV-XIV断面線における断面を示す。
図13および
図14に示すように、第2部分P23の第1部分P1側の端部が面取りされることで、面取りされていない構成と比較して、第2部分P23から第1部分P1へ+Z方向に流れ込む液体の圧力損失を抑制できる。なお、面取りに限らず、角R加工であってもよい。また、図示は省略するが、第2部分P23だけでなく、第4部分P4における第3部分P3側の端部も面取りまたは角R加工されていてもよい。また、第2部分P23または第4部分P4のいずれか一方のみが面取りまたは角R加工されていてもよい。なお、かかる形態における第2部分P23の長さL2は、第1ノズル流路RN13側の端部におけるX方向の長さを意味する。同様に、第4部分P4の長さL4は、第2ノズル流路RN2側の端部におけるX方向の長さを意味する。
【0062】
(C10)上記実施形態において、第2部分P2は、Z方向において第1ノズル流路RN1と反対側に向かってテーパ加工されていてもよい。また、第4部分P4は、Z方向において第2ノズル流路RN2と反対側に向かってテーパ加工されていてもよい。
図15および
図16は、他の実施形態における第1ノズルN24の説明図である。
図15は、第1ノズルN24のXZ平面と平行な断面を示す。
図16は、
図15のXVI-XVI断面線における断面を示す。
図15および
図16に示すように、第2部分P24がZ方向において第1ノズル流路RN1と反対側に向かってテーパ加工されることで、テーパ加工されていない構成と比較して、第1ノズル流路RN1から第2部分P24に+Z方向に流れ込む液体の圧力損失を抑制できる。また、図示は省略するが、第2部分P24だけでなく、第4部分P4もZ方向において第2ノズル流路RN2と反対側に向かってテーパ加工されていてもよい。また、第2部分P24または第4部分P4のいずれか一方のみがテーパ加工されていてもよい。なお、かかる形態における第2部分P24の長さL2は、第1ノズル流路RN1側の端部におけるX方向の長さを意味する。同様に、第4部分P4の長さL4は、第2ノズル流路RN2側の端部におけるX方向の長さを意味する。
【0063】
(C11)上記実施形態において、第2部分P2のY方向における中心は、第1ノズル流路RN1のY方向における中心とずれていてもよい。また、第4部分P4のY方向における中心は、第2ノズル流路RN2のY方向における中心とずれていてもよい。
図17および
図18は、他の実施形態における第1ノズルN25の説明図である。
図17は、Z方向に見た第1ノズルN25の概略構成を示す。
図18は、
図17のXVIII-XVIII断面線における断面を示す。
図17および
図18に示すように、本形態において第2部分P25のY方向における中心C2は、第1ノズル流路RN1のY方向における中心C1よりも、+Y方向側にずれている。なお、第1部分P1の中心は、第1ノズル流路RN1の中心C1と略一致している。第1ノズル流路RN1において、液体の流速が最も速くなる場所は、Y方向における中心からずれている場合がある。かかる場合に、本形態のように第2部分P25のY方向における中心C2と、第1ノズル流路RN1のY方向における中心C1と、をずらすことで、第1ノズル流路RN1において流速の速い部分と第2部分P25との位置を合わせることができる。これにより、第1ノズル流路RN1と第2部分P25とのY方向における中心が略一致している構成と比較して、流速の速い部分が第1ノズル流路RN1のY方向における中心からずれている場合に、第1ノズル流路RN1と第2部分P25との液体の置換頻度を高めることができ、第1ノズルN25内で液体の粘度が増加することを抑制できる。同様に、図示は省略するが、第4部分P4のY方向における中心は、第2ノズル流路RN2のY方向における中心とずれていてもよい。
【0064】
(C12)上記実施形態において、第1部分P1と第2部分P2とのY方向の幅W1,W2は、等しくてもよい。また、第3部分P3と第4部分P4とのY方向の幅W1,W2は、等しくてもよい。また、第1部分P1と、第2部分P2と、第3部分P3と、第4部分P4とのY方向の幅W1,W2,W3,W4は、等しくてもよい。
【0065】
(C13)上記実施形態において、第1部分P1および第3部分P3は、Z方向に見て円状の外観形状を有していたが、本開示はこれに限定されない。第1部分P1および第3部分P3は、Z方向に見て任意の形状を有していてもよい。
【0066】
D.他の形態:
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0067】
(1)本形態の一形態によれば、液体吐出ヘッドユニットが提供される。この液体吐出ヘッドユニットは、X方向に延在し、前記X方向に液体が流れる複数の第1ノズル流路と、前記X方向と交差するY方向に配列され、前記複数の第1ノズル流路それぞれに接続し、前記第1ノズル流路における前記X方向に流れる液体を前記X方向および前記Y方向と交差するZ方向に吐出する複数の第1ノズルと、前記X方向に延在し、前記X方向に液体が流れる複数の第2ノズル流路と、前記Y方向に配列され、前記複数の第2ノズル流路それぞれに接続し、前記第2ノズル流路における前記X方向に流れる液体を前記Z方向に吐出する複数の第2ノズルと、を有し、前記第1ノズルは、第1部分と、前記Z方向において前記第1部分よりも前記第1ノズル流路に近い第2部分と、を含み、前記第2ノズルは、第3部分と、前記Z方向において前記第3部分よりも前記第2ノズル流路に近い第4部分と、を含み、前記第1部分の容積は、前記第2部分の容積よりも小さく、前記第3部分の容積は、前記第4部分の容積よりも小さく、前記第1部分の容積は、前記第3部分の容積よりも小さく、前記第2部分の前記X方向における長さは、前記第4部分の前記X方向における長さよりも長い。
この形態の液体吐出ヘッドユニットによれば、第1部分の容積は、第2部分の容積よりも小さく、第3部分の容積は、第4部分の容積よりも小さく、第1部分の容積は、第3部分の容積よりも小さく、第2部分のX方向における長さは、第4部分のX方向における長さよりも長いので、第2ノズルよりも小さい液滴を吐出可能な第1ノズル内の液体が増粘することを抑制できる。これにより、第2ノズルより大きい液滴を吐出可能な第1ノズルだけでなく、第2ノズルも2段階ノズルとして構成し、液体の吐出性能を向上できる。
【0068】
(2)上記形態の液体吐出ヘッドユニットにおいて、前記第2部分の前記X方向における長さは、前記第1部分の前記X方向における長さよりも長くてもよい。
【0069】
(3)上記形態の液体吐出ヘッドユニットにおいて、前記第2部分の前記X方向における長さは、前記第1部分の前記X方向における長さの3倍よりも長くてもよい。
この形態の液体吐出ヘッドユニットによれば、第2部分のX方向における長さは、第1部分のX方向における長さの3倍より長いので、第2部分のX方向における長さが第1部分のX方向における長さの3倍以下の構成と比較して、第1ノズル内におけるインクの循環効率を向上でき、インクの粘度が増加することを抑制できる。
【0070】
(4)上記形態の液体吐出ヘッドユニットにおいて、前記第2部分の前記X方向における長さは、前記第1部分の前記X方向における長さの5倍よりも長くてもよい。
この形態の液体吐出ヘッドユニットによれば、第2部分のX方向における長さは、第1部分のX方向における長さの5倍より長いので、第2部分のX方向における長さが第1部分のX方向における長さの5倍以下の構成と比較して、第1ノズル内におけるインクの循環効率をより向上でき、インクの粘度が増加することをより抑制できる。
【0071】
(5)上記形態の液体吐出ヘッドユニットにおいて、前記第4部分の前記X方向における長さは、前記第3部分の前記X方向における長さよりも長くてもよい。
【0072】
(6)上記形態の液体吐出ヘッドユニットにおいて、前記第1部分と前記第2部分との前記X方向における長さの差分は、前記第3部分と前記第4部分との前記X方向における長さの差分よりも大きくてもよい。
【0073】
(7)上記形態の液体吐出ヘッドユニットにおいて、前記第2部分の前記Y方向における幅は、前記第4部分の前記Y方向における幅と等しくてもよい。
この形態の液体吐出ヘッドユニットによれば、第2部分のY方向における幅は、第4部分のY方向における幅と等しいので、第2部分のY方向における幅と第4部分のY方向における幅とが異なる構成と比較して、液体吐出ヘッド1内におけるノズルの密度をより高めることができる。
【0074】
(8)上記形態の液体吐出ヘッドユニットにおいて、前記第1部分の前記Z方向における深さは、前記第2部分の前記Z方向における深さよりも短く、前記第3部分の前記Z方向における深さは、前記第4部分の前記Z方向における深さよりも短くてもよい。
この形態の液体吐出ヘッドユニットによれば、第1部分のZ方向における深さは、第2部分のZ方向における深さよりも短く、第3部分のZ方向における深さは、第4部分のZ方向における深さよりも短いので、第1部分の深さが第2部分の深さよりも長く、第3部分の深さが第4部分の深さよりも長い構成と比較して、第1部分および第3部分内の液体の圧力損失を抑制でき、液体の吐出性能を向上できる。また、第1部分および第3部分におけるイナータンスを小さくできるので、第1部分および第3部分内の液体が動きやすくなり、液体を吐出しやすくできる。
【0075】
(9)上記形態の液体吐出ヘッドユニットにおいて、前記第1部分の前記Z方向における深さは、前記第3部分の前記Z方向における深さよりも短くてもよい。
この形態の液体吐出ヘッドユニットによれば、第2ノズルよりも微小な液滴を吐出可能な第1ノズルにおいて、液体の圧力損失を抑制でき、液体の吐出性能を向上できる。また、第1部分におけるイナータンスを小さくできるので、第1部分内の液体が動きやすくなり、液体を吐出しやすくできる。
【0076】
(10)上記形態の液体吐出ヘッドユニットにおいて、前記複数の第1ノズル流路のそれぞれの一端に共通に接続し、前記複数の第1ノズル流路のそれぞれへと液体を供給する共通供給流路と、前記複数の第1ノズル流路のそれぞれの一端に共通に接続し、前記複数の第1ノズル流路のそれぞれから液体を排出する共通排出流路と、を更に有してもよい。
この形態の液体吐出ヘッドユニットによれば、共通供給流路および共通排出流路を更に有するので、共通供給流路および共通排出流路を備えない構成と比較して、共通供給流路および共通排出流路内で液体が循環でき、液体が滞留することを抑制できる。
【0077】
(11)上記形態の液体吐出ヘッドユニットにおいて、前記複数の第1ノズルと前記複数の第1ノズル流路とが設けられた第1液体吐出ヘッドと、前記複数の第2ノズルと前記複数の第2ノズル流路とが設けられた第2液体吐出ヘッドと、を有してもよい。つまり、微小ノズルと通常ノズルとが別々の液体吐出ヘッドに設けられていてもよい。
この形態の液体吐出ヘッドユニットによれば、第1液体吐出ヘッドに第1ノズルが設けられ、第2液体吐出ヘッドに第2ノズルが設けられるので、単一の液体吐出ヘッド内に第1ノズルおよび第2ノズルが設けられる構成と比較して、液体吐出に異常が発生した場合に異常の原因となるノズルを容易に特定でき、メンテナンス性を向上できる。
【0078】
(12)上記形態の液体吐出ヘッドユニットにおいて、前記複数の第1ノズルと、前記複数の第1ノズル流路と、前記複数の第2ノズルと、前記複数の第2ノズル流路とが設けられた第3液体吐出ヘッドを有してもよい。つまり、微小ノズルと通常ノズルとが1つの液体吐出ヘッドに設けられていてもよい。
この形態の液体吐出ヘッドユニットによれば、第3液体吐出ヘッドに第1ノズルおよび第2ノズルが設けられるので、第1ノズルおよび第2ノズルが異なる液体吐出ヘッドに設けられる構成と比較して、液体吐出ヘッドユニットをよりコンパクトに構成できる。
【0079】
(13)上記形態の液体吐出ヘッドユニットにおいて、前記第2部分および前記第4部分のうちの少なくとも一方の前記Z方向に見た四隅は、直角であってもよい。
この形態の液体吐出ヘッドユニットによれば、第2部分および前記第4部分のうちの少なくとも一方の前記Z方向に見た四隅は、直角なので、直角ではない構成と比較して、第2部分および第4部分の容積をより大きく構成できる。
【0080】
(14)上記形態の液体吐出ヘッドユニットにおいて、前記第2部分および前記第4部分のうちの少なくとも一方の前記Z方向に見た四隅は、面取りまたは角R加工されていてもよい。
この形態の液体吐出ヘッドユニットによれば、第2部分および第4部分のうちの少なくとも一方のZ方向に見た四隅は、面取りまたは角R加工されているので、面取りまたは角R加工されていない構成と比較して、ノズル流路から第2部分および第4部分に液体が供給される際の圧力損失を抑制できる。
【0081】
(15)上記形態の液体吐出ヘッドユニットにおいて、前記第2部分および前記第4部分のうちの少なくとも一方の前記X方向における両端は、前記Z方向に見て弧状であってもよい。
この形態の液体吐出ヘッドユニットによれば、第2部分および第4部分のうちの少なくとも一方のX方向における両端は、Z方向に見て弧状なので、弧状でない構成と比較して、ノズル流路から第2部分および第4部分に液体が供給される際の圧力損失を抑制できる。
【0082】
(16)上記形態の液体吐出ヘッドユニットにおいて、前記第2部分は、前記第1部分側の端部において面取りまたは角R加工されており、前記第4部分は、前記第3部分側の端部において面取りまたは角R加工されていてもよい。
この形態の液体吐出ヘッドユニットによれば、第2部分は、第1部分側の端部において面取りまたは角R加工されており、第4部分は、第3部分側の端部において面取りまたは角R加工されているので、面取りまたは角R加工されていない構成と比較して、第2部分から第1部分へ流れ込む液体と、第4っ部分から第3部分へ流れ込む液体の圧力損失を抑制できる。
【0083】
(17)上記形態の液体吐出ヘッドユニットにおいて、前記第2部分は、前記Z方向において前記第1ノズル流路と反対側に向かってテーパ加工されており、前記第4部分は、前記Z方向において前記第2ノズル流路と反対側に向かってテーパ加工されていてもよい。
この形態の液体吐出ヘッドユニットによれば、第2部分は、Z方向において第1ノズル流路と反対側に向かってテーパ加工されており、第4部分は、Z方向において第2ノズル流路と反対側に向かってテーパ加工されているので、テーパ加工されていない構成と比較して、第2部分から第1部分に供給される液体と、第4部分から第3部分に供給される液体と、の圧力損失を抑制できる。
【0084】
(18)上記形態の液体吐出ヘッドユニットにおいて、前記第2部分の前記Y方向における中心は、前記第1ノズル流路の前記Y方向における中心とずれており、前記第4部分の前記Y方向における中心は、前記第2ノズル流路の前記Y方向における中心とずれていてもよい。
この形態の液体吐出ヘッドユニットによれば、第2部分のY方向における中心は、第1ノズル流路のY方向における中心とずれており、第4部分のY方向における中心は、第2ノズル流路のY方向における中心とずれているので、Y方向における第2部分の中心と第1ノズル流路の中心とが一致し、Y方向における第4部分の中心と第2ノズル流路の中心とが一致している構成と比較して、流速の速い部分がノズル流路のY方向における中心からずれている場合に、ノズル流路と、第2部分および第4部分と、の液体の置換頻度を高めることができ、第1ノズルおよび第2ノズル内で液体の粘度が増加することを抑制できる。
【0085】
(19)本開示の他の形態によれば、液体吐出ヘッドが提供される。この液体吐出ヘッドは、上記形態の液体吐出ヘッドユニットと、前記液体吐出ヘッドユニットからの液体の吐出動作を制御する制御部と、を有する。
【0086】
本開示は、インクジェット方式に限らず、インク以外の他の液体を吐出する任意の液体吐出装置及びそれらの液体吐出装置に用いられる液体吐出ヘッドユニットにも適用することができる。例えば、以下のような各種の液体吐出装置およびその液体吐出ヘッドユニットに適用可能である。
(1)ファクシミリ装置等の画像記録装置。
(2)液晶ディスプレイ等の画像表示装置用のカラーフィルターの製造に用いられる色材吐出装置。
(3)有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイや、面発光ディスプレイ(Field Emission Display、FED)等の電極形成に用いられる電極材吐出装置。
(4)バイオチップ製造に用いられる生体有機物を含む液体を吐出する液体吐出装置。
(5)精密ピペットとしての試料吐出装置。
(6)潤滑油の吐出装置。
(7)樹脂液の吐出装置。
(8)時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を吐出する液体吐出装置。
(9)光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂液等の透明樹脂液を基板上に吐出する液体吐出装置。
(10)基板などをエッチングするために酸性又はアルカリ性のエッチング液を吐出する液体吐出装置。
(11)他の任意の微小量の液滴を吐出させる液体消費ヘッドを備える液体吐出装置。
【0087】
「液体」とは、液体吐出装置が消費できるような材料であれば良い。例えば、「液体」は、物質が液相であるときの状態の材料であれば良く、粘性の高い又は低い液状態の材料、及び、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような液状態の材料も「液体」に含まれる。また、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなども「液体」に含まれる。また、液体の代表的な例としては、以下のものが挙げられる。
(1)接着剤の主剤および硬化剤。
(2)塗料のベース塗料および希釈剤や、クリア塗料および希釈剤。
(3)細胞用インクの細胞を含有する主溶媒および希釈溶媒。
(4)金属光沢感を発現するインク(メタリックインク)のメタリックリーフ顔料分散液および希釈溶媒。
(5)車両用燃料のガソリン・軽油およびバイオ燃料。
(6)薬品の薬主成分および保護成分。
(7)発光ダイオード(LED)の蛍光体および封止材。
【符号の説明】
【0088】
1…液体吐出ヘッド、2…連通板、3…圧力室基板、4…振動板、5…貯留室形成基板、8…配線基板、10…液体吐出ヘッドユニット、11…第1液体吐出ヘッド、12…第2液体吐出ヘッド、20…液体容器、30…循環機構、40…搬送機構、42…搬送ローラー、44…搬送ロッド、46…搬送用モーター、50…開口、51…導入口、52…排出口、53…キャリッジ、54…搬送ベルト、55…移動機構、56…移動用モーター、57…プーリー、60…ノズル基板、61,62…コンプライアンスシート、81…駆動回路、90…制御部、100…液体吐出装置、C1,C2…中心、CB1,CB2…圧力室、Ln…ノズル列、N…ノズル、N1,N21,N22,N23,N24,N25…第1ノズル、N2…第2ノズル、PP…印刷用紙、P1…第1部分、P2,P21,P22,P23,P24,P25…第2部分、P3…第3部分、P4…第4部分、PZ1,PZ2…圧電素子、RA1…共通供給流路、RA2…共通排出流路、RB1…共通供給流路、RB2…共通排出流路、RJ…循環流路、RK1…連通流路、RK2…連通流路、RN…ノズル流路、RN1…第1ノズル流路、RN2…第2ノズル流路、RR1…供給流路、RR2…排出流路、RX1…連通流路、RX2…連通流路