IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置 図1
  • 特開-液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置 図2
  • 特開-液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置 図3
  • 特開-液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置 図4
  • 特開-液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置 図5
  • 特開-液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置 図6
  • 特開-液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置 図7
  • 特開-液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置 図8
  • 特開-液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置 図9
  • 特開-液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置 図10
  • 特開-液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置 図11
  • 特開-液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置 図12
  • 特開-液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118560
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20240826BHJP
   B41J 2/16 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
B41J2/14 501
B41J2/14 603
B41J2/16 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024903
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 学
(72)【発明者】
【氏名】四十物 孝憲
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AG01
2C057AG02
2C057AG09
2C057AG33
2C057AG40
2C057AG44
2C057AG99
2C057AP12
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】ノズル内における液体の粘度の増加を抑制できる液体吐出ヘッドを提供する。
【解決手段】液体吐出ヘッドは、Y方向に配列され、Y方向と交差するZ方向に液体を吐出する複数のノズルと、複数のノズルのそれぞれに接続し、Y方向およびZ方向と交差するX方向に延在する複数のノズル流路と、を有し、複数のノズルのそれぞれは、第1部分と、Z方向において第1部分よりもノズル流路に近い第2部分と、を含み、第1部分の容積は、第2部分の容積よりも小さく、第1部分のイナータンスをM1、第2部分のイナータンスをM2としたとき、M2/M1<0.26を満たす。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出ヘッドであって、
Y方向に配列され、前記Y方向と交差するZ方向に液体を吐出する複数のノズルと、
前記複数のノズルのそれぞれに接続し、前記Y方向および前記Z方向と交差するX方向に延在する複数のノズル流路と、を有し、
前記複数のノズルのそれぞれは、第1部分と、前記Z方向において前記第1部分よりも前記ノズル流路に近い第2部分と、を含み、
前記第1部分の容積は、前記第2部分の容積よりも小さく、
前記第1部分のイナータンスをM1、前記第2部分のイナータンスをM2としたとき、M2/M1<0.26を満たす、
液体吐出ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
M2/M1<0.22を満たす、液体吐出ヘッド。
【請求項3】
請求項2に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
M2/M1<0.16を満たす、液体吐出ヘッド。
【請求項4】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
M2/M1>0.005を満たす、液体吐出ヘッド。
【請求項5】
請求項4に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
M2/M1>0.007を満たす、液体吐出ヘッド。
【請求項6】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記第2部分の前記X方向における長さは、前記第1部分の前記X方向における長さよりも長い、液体吐出ヘッド。
【請求項7】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記第1部分の前記Z方向における深さは、前記第2部分の前記Z方向における深さよりも短い、液体吐出ヘッド。
【請求項8】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
M1>0.10、M2>0.001を満たす、液体吐出ヘッド。
【請求項9】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記複数のノズル流路の一端に共通に接続し、前記ノズル流路へと液体を供給する共通供給流路と、
前記複数のノズル流路の他端に共通に接続し、前記ノズル流路から液体を排出する共通排出流路と、を更に有する、
液体吐出ヘッド。
【請求項10】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記第2部分は、前記Z方向に見て円状である、液体吐出ヘッド。
【請求項11】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記第2部分は、前記第1部分側の端部において面取りまたは角R加工されている、
液体吐出ヘッド。
【請求項12】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記第2部分は、前記Z方向において前記ノズル流路と反対側に向かってテーパ加工されている、
液体吐出ヘッド。
【請求項13】
請求項1から請求項12までのいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドからの液体の吐出動作を制御する制御部と、を有する、液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出ヘッドとして、例えば特許文献1に記載されているように、液体がノズル流路を循環し、ノズル流路に直行する方向に液体が吐出される構成を有する液体吐出ヘッドが知られている。かかる液体吐出ヘッドにおいて、サテライト滴を抑制するため、および液体をノズルに効率良く供給するために、液滴を吐出する第1部分と、ノズル流路および第1部分に接続し第1部分よりも大きい容積を有する第2部分と、から構成される2段階ノズルが用いられることがある。また、液体吐出ヘッドとして、通常ノズルに加えて、微小な液滴を吐出するための微小ノズルを備える液体吐出ヘッドが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-119042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
微小ノズルに2段階ノズルを適用すると、微小ノズルにおける第1部分の容積が比較的小さいために液体が滞留しやすくなり、微小ノズル中の液体の粘度が増加するおそれがある。液体の粘度が増加すると、液体が適切に吐出されない頻度が増加し得る。2段階ノズルを適用したノズルにおいて、液体の粘度が増加することを抑制できる技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
本開示の一形態によれば、液体吐出ヘッドが提供される。この液体吐出ヘッドは、Y方向に配列され、前記Y方向と交差するZ方向に液体を吐出する複数のノズルと、前記複数のノズルのそれぞれに接続し、前記Y方向および前記Z方向と交差するX方向に延在する複数のノズル流路と、を有し、前記複数のノズルのそれぞれは、第1部分と、前記Z方向において前記第1部分よりも前記ノズル流路に近い第2部分と、を含み、前記第1部分の容積は、前記第2部分の容積よりも小さく、前記第1部分のイナータンスをM1、前記第2部分のイナータンスをM2としたとき、M2/M1<0.26を満たす。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一実施形態としての液体吐出装置の概略構成を示す説明図である。
図2図1に示す液体吐出ヘッドの詳細構成を示す分解斜視図である。
図3】液体吐出ヘッドの詳細構成を示す断面図である。
図4】液体吐出ヘッドを-Z方向から見た平面図である。
図5】本実施形態におけるノズルの説明図である。
図6】本実施形態におけるノズルの説明図である。
図7】本実施形態におけるノズルの説明図である。
図8】メニスカスの状態の一例を模式的に示す説明図である。
図9】他の実施形態におけるノズルの説明図である。
図10】他の実施形態におけるノズルの説明図である。
図11】他の実施形態におけるノズルの説明図である。
図12】他の実施形態におけるノズルの説明図である。
図13】他の実施形態におけるノズルの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
A1.液体吐出装置100の構成:
図1は、本開示の一実施形態としての液体吐出装置100の概略構成を示す説明図である。本実施形態において、液体吐出装置100は、液体の一例としてのインクを印刷用紙PPに吐出して画像を形成するインクジェット式プリンターである。なお、液体吐出装置100は、印刷用紙PPに代えて、樹脂フィルム、布帛等の任意の種類の媒体を、インクの吐出対象としてもよい。図1には、相互に直交する3つの軸であるX軸、Y軸およびZ軸が表されている。他の図面に記載のX軸、Y軸およびZ軸は、いずれも図1のX軸、Y軸およびZ軸に対応する。
【0009】
液体吐出装置100は、液体吐出ヘッドユニット10と、液体容器20と、循環機構30と、搬送機構40と、移動機構55と、制御部90とを備える。
【0010】
液体吐出ヘッドユニット10は、少なくとも1つの液体吐出ヘッド1により構成されている。液体吐出ヘッド1は、多数のノズル(後述のノズルN)を有し、-Z方向にインクを吐出して印刷用紙PP上に画像を形成する。液体吐出ヘッド1の詳細構成は、後述する。吐出するインクとしては、例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの合計4色のインクを吐出してもよい。なお、上記4色に限らずライトシアン、ライトマゼンタ、ホワイトなど、任意の色のインクを吐出してもよい。液体吐出ヘッド1は、移動機構55が有する後述のキャリッジ53に搭載され、キャリッジ53の移動と共に主走査方向に往復移動する。本実施形態において、主走査方向は、+X方向および-X方向(以下、「X方向」とも呼ぶ)である。
【0011】
液体容器20は、液体吐出ヘッド1から吐出するインクを収容する。インクとしては、例えば、色材としての顔料が溶媒中に分散されたインクのほか、染料を含有するインクや、顔料と染料との双方を色材として含有するインクを用いることができる。インクには、一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種の液体状組成物が含まれてよい。液体容器20は、例えば、液体吐出装置100に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、または、インクを補充可能なインクタンク等である。
【0012】
循環機構30は、制御部90による制御のもとで、液体容器20に貯留された液体を、液体吐出ヘッド1に供給する装置である。循環機構30は、例えばポンプにより構成される。また、循環機構30は、液体吐出ヘッド1内に貯留されたインクを回収し、回収したインクを、液体吐出ヘッド1に還流させる。
【0013】
搬送機構40は、印刷用紙PPを副走査方向に搬送する。副走査方向は、主走査方向(X方向)と直交する方向であり、本実施形態では、+Y方向および-Y方向(以下、「Y方向」とも呼ぶ)である。搬送機構40は、3つの搬送ローラー42が装着された搬送ロッド44と、搬送ロッド44を回転駆動する搬送用モーター46とを備える。搬送用モーター46が搬送ロッド44を回転駆動することにより、複数の搬送ローラー42が回転して印刷用紙PPが副走査方向(+Y方向)に搬送される。なお、搬送ローラー42の数は3つに限らず任意の数であってもよい。また、搬送機構40を複数備える構成としてもよい。
【0014】
移動機構55は、上述のキャリッジ53に加えて、搬送ベルト54と、移動用モーター56と、プーリー57とを備える。キャリッジ53は、インクを吐出可能な状態で液体吐出ヘッド1を搭載する。キャリッジ53は、搬送ベルト54に取り付けられている。搬送ベルト54は、移動用モーター56とプーリー57との間に架け渡されている。移動用モーター56が回転駆動することにより、搬送ベルト54は、主走査方向に往復移動する。これにより、搬送ベルト54に取り付けられているキャリッジ53も、主走査方向に往復移動する。
【0015】
制御部90は、インクの吐出動作を制御する。例えば、制御部90は、キャリッジ53の主走査方向に沿った往復動作や、印刷用紙PPの副走査方向に沿った搬送動作を制御する。また、例えば、液体吐出ヘッドユニット10に駆動信号を出力して圧電素子(後述の圧電素子PZ1,PZ2)を駆動させることにより、印刷用紙PPへのインク吐出を制御する。制御部90は、例えば、CPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の処理回路と半導体メモリー等の記憶回路とにより構成されてもよい。
【0016】
A2.液体吐出ヘッド1の詳細構成:
図2は、図1に示す液体吐出ヘッド1の詳細構成を示す分解斜視図である。図3は、液体吐出ヘッド1の詳細構成を示す断面図である。図3では、図2に示すIII-III断面線における断面を示す。図4は、液体吐出ヘッド1を-Z方向から見た平面図である。
【0017】
図2に示すように、液体吐出ヘッド1は、ノズル基板60と、連通板2と、圧力室基板3と、振動板4と、貯留室形成基板5と、配線基板8と、コンプライアンスシート61,62と、を備えている。
【0018】
図2に示すように、ノズル基板60は、Y方向に沿って長尺な板状部材である。ノズル基板60は、液体吐出ヘッド1において最も-Z方向に位置する。ノズル基板60は、例えば、シリコンの単結晶基板を加工することで製造される。ノズル基板60には、M個のノズルNが形成されている。なお、Mは、1以上の任意の整数である。ノズルNは、ノズル基板60において厚さ方向(Z方向)設けられた貫通孔として形成されている。ノズルNは、液体吐出ヘッド1からのインクの吐出口に相当する。本実施形態において、M個のノズルNは、Y方向に延在するノズル列Lnを形成するように直線状に配列されている。図3に示すように、本実施形態におけるノズルNは、2段階ノズルである。なお、「2段階ノズル」とは、Z方向に、容積の異なる2つの部分が接続されることにより構成されるノズルを意味する。ノズルNの詳細な構成については、後述する。
【0019】
図2に示すように、連通板2には、インクの流路が形成されている。具体的には、連通板2には、Y方向に延在する一つの共通供給流路RA1と、Y方向に延在する一つの共通排出流路RA2とが形成されている。図3に示すように、連通板2には、さらに、M個のノズルNのそれぞれに対応するM個のノズル流路RNと、M個の供給流路RR1と、M個の排出流路RR2と、M個の連通流路RK1と、M個の連通流路RK2と、M個の連通流路RX1と、M個の連通流路RX2とが形成されている。
【0020】
図3に示すように、連通流路RX1は、共通供給流路RA1と接続されている。連通流路RX1は、X方向に沿って共通供給流路RA1から-X方向に向かって延在するように設けられている。連通流路RX1には、連通流路RK1が接続されている。連通流路RK1は、Z方向に沿って連通流路RX1から-Z方向に向かって延在するように設けられている。連通流路RK1は、後述する圧力室CB1の一端に接続されている。圧力室CB1の他端には、供給流路RR1が接続されている。供給流路RR1は、圧力室CB1からZ方向に沿って+Z方向に向かって延在するように設けられている。供給流路RR1は、ノズル流路RNの一端に接続されている。ノズル流路RNは、X方向に延在しており、中央付近に一つのノズルNが設けられている。ノズル流路RNをX方向に流れるインクの一部が、ノズルNから吐出される。
【0021】
ノズル流路RNの他端には、排出流路RR2が接続されている。排出流路RR2は、Z方向に沿ってノズル流路RNから-Z方向に向かって延在するように設けられている。排出流路RR2は、後述する圧力室CB2の一端に接続されている。圧力室CB2の他端には、連通流路RK2が接続されている。連通流路RK2は、圧力室CB2からZ方向に沿って+Z方向に向かって延在するように設けられている。連通流路RK2には、連通流路RX2の一端が接続されている。連通流路RX2は、X方向に沿って連通流路RK2から-X方向に延在するように設けられている。連通流路RX2の他端は、共通排出流路RA2に接続されている。
【0022】
図2及び図3に示すように、連通板2の+Z方向側の面には、共通供給流路RA1、連通流路RX1、ならびに連通流路RK1を閉塞するように、コンプライアンスシート61が配置されている。コンプライアンスシート61は、共通供給流路RA1、連通流路RX1、および連通流路RK1内のインクの圧力変動を吸収する。また、連通板2の+Z方向側の面には、共通排出流路RA2、連通流路RX2、および連通流路RK2を閉塞するように、コンプライアンスシート62が配置されている。共通排出流路RA2、連通流路RX2、ならびに連通流路RK2内のインクの圧力変動を吸収する。コンプライアンスシート61,62は、弾性変形可能な可撓性を有するシート状の部材である。
【0023】
図2および図3に示すように、連通板2の-Z方向側の面上には、貯留室形成基板5が配置されている。貯留室形成基板5は、Y方向に長尺な部材である。貯留室形成基板5は、例えば、樹脂材料の射出成形により形成される。貯留室形成基板5の内部には、インクの流路が形成されている。具体的には、貯留室形成基板5には、一つの共通供給流路RB1と、一つの共通排出流路RB2とが形成されている。共通供給流路RB1は、共通供給流路RA1と連通し、共通排出流路RB2は、共通排出流路RA2と連通する。
【0024】
貯留室形成基板5には、共通供給流路RB1と連通する導入口51と、共通排出流路RB2と連通する排出口52とが設けられている。共通供給流路RB1には、液体容器20からのインクが導入口51を介して供給される。また、共通排出流路RB2に貯留されたインクは、排出口52を介して回収される。
【0025】
本実施形態において、循環機構30によって液体容器20から導入口51に供給されたインクは、共通供給流路RB1を経由して、共通供給流路RA1に流入する。共通供給流路RA1に流入したインクの一部は、連通流路RX1および連通流路RK1に分流されて、各圧力室CB1に流入する。圧力室CB1に流入したインクの一部は、供給流路RR1と、ノズル流路RNと、排出流路RR2とをこの順に経由して、圧力室CB2に流入する。圧力室CB2に流入したインクの一部は、連通流路RK2と、連通流路RX2とをこの順に経由した後に、共通排出流路RA2で合流され、共通排出流路RB2を経由して、排出口52から排出される。以下の説明において、共通供給流路RA1から共通排出流路RA2までのインクの流路を、循環流路RJとも呼ぶ。具体的には、循環流路RJには、共通供給流路RA1と、連通流路RX1と、連通流路RK1と、圧力室CB1と、供給流路RR1と、ノズル流路RNと、排出流路RR2と、圧力室CB2と、連通流路RK2と、連通流路RX2と、共通排出流路RA2とが含まれる。M個の循環流路RJは、Y方向に配列されている。図4に示すように、共通供給流路RA1と、共通排出流路RA2とは、M個のノズルNのそれぞれに対応するM個の循環流路RJによって接続されている。すなわち、共通供給流路RA1により、M個のノズル流路RNのそれぞれにインクが供給され、共通排出流路RA2により、M個のノズル流路RNのそれぞれからインクが排出される。ここで、ノズル流路RNの一端に共通供給流路RA1が間接的に接続し、ノズル流路RNの他端に共通排出流路RA2が間接的に接続しているともいえる。なお、共通供給流路RA1と共通排出流路RA2とがノズル流路RNに直接接続する構成としてもよい。
【0026】
図2および図3に示すように、貯留室形成基板5には、開口50が設けられている。開口50の内側には、圧力室基板3と、振動板4と、配線基板8とが設けられている。圧力室基板3は、Y方向に長尺な板状部材である。圧力室基板3は、連通板2の-Z方向側の面上に設けられている。圧力室基板3は、X-Y平面に略平行となるように配置されている。圧力室基板3は、例えば、エッチング技術を利用してシリコンの単結晶基板を加工することで製造される。圧力室基板3には、インクの流路が形成されている。具体的には、圧力室基板3には、M個のノズルNのそれぞれに対応するM個の圧力室CB1およびM個の圧力室CB2が形成されている。
【0027】
圧力室CB1は、連通流路RK1と供給流路RR1とを連通するように、X方向に延在して設けられている。圧力室CB2は、連通流路RK2と排出流路RR2とを連通するように、X方向に延在して設けられている。
【0028】
振動板4は、Y方向に長尺な板状部材である。図2および図3に示すように、振動板4は、圧力室基板3の-Z方向側の面上に設けられている。振動板4は、弾性的に振動可能な部材であり、圧力室CB1,CN2内のインクに圧力を付与する。振動板4は、X-Y平面に略平行となるように配置されている。振動板4の-Z方向側の面上には、M個の圧力室CB1のそれぞれに対応するM個の圧電素子PZ1と、M個の圧力室CB2のそれぞれに対応するM個の圧電素子PZ2と、が設けられている。圧電素子PZ1,PZ2は、制御部90から伝達された駆動信号の電気エネルギーを運動エネルギーに変換する、エネルギー変換素子である。本実施形態において、圧電素子PZ1,PZ2は、駆動信号の電位変化に応じて変形する受動素子である。
【0029】
配線基板8は、振動板4の-Z方向側に実装されている。配線基板8は、制御部90と、液体吐出ヘッド1とを電気的に接続するための部品である。配線基板8としては、例えば、FPCまたはFFC等の可撓性の配線基板が用いられる。配線基板8には、駆動回路81が実装されている。駆動回路81は、制御信号に基づいて、圧電素子PZ1,PZ2に駆動信号を供給するか否かを切り替える。
【0030】
圧電素子PZ1,PZ2は、駆動信号の電位変化に応じて変形する。振動板4は、圧電素子PZ1,PZ2の変形に連動して振動する。振動板4の振動によって、圧力室CB1,CB2内の圧力は変動する。圧力室CB1,CB2内の圧力が変動することによって、圧力室CB1,CB2の内部に充填されたインクは、供給流路RR1、排出流路RR2、ならびにノズル流路RNを経由して、ノズルNから吐出される。具体的には、駆動信号により圧電素子PZ1が駆動される場合、圧力室CB1内部に充填されているインクの一部は、供給流路RR1とノズル流路RNとを経由して、ノズルNから吐出される。駆動信号により圧電素子PZ2が駆動される場合、圧力室CB2内部に充填されているインクの一部は、排出流路RR2とノズル流路RNとを経由して、ノズルNから吐出される。
【0031】
本実施形態の液体吐出装置100は、共通供給流路RA1から循環流路RJを経由して共通排出流路RA2へとインクを循環させる。そのため、圧力室CB1,CB2内部のインクがノズルNから吐出されない期間が存在する場合であっても、圧力室CB1,CB2内部及びノズル流路RN等において、インクが滞留することを低減または防止できる。したがって、本実施形態の液体吐出装置100は、圧力室CB1,CB2及びノズル流路RN内部のインクが増粘することを低減または防止し、ノズルNからインクが吐出できなくなる吐出異常の発生を抑制できる。
【0032】
本実施形態の液体吐出装置100は、圧力室CB1内部に充填されているインクと、圧力室CB2内部に充填されているインクとを、ノズルNから吐出する。したがって、本実施形態の液体吐出装置100は、例えば、1個の圧力室CB1,CB2内部に充填されているインクのみをノズルNから吐出する構成と比較して、ノズルNからのインクの吐出量を増大させることができる。
【0033】
A3.ノズルNの詳細構成:
図5図7は、本実施形態におけるノズルNの説明図である。図5は、Z方向に見たノズルNを示す。図6は、図5のVI-VI断面線における断面を示す。図7は、図5のVII-VII断面線における断面を示す。なお、図5図7では、ノズル流路RNにおけるノズル基板60およびノズルNの構成のみを示し、その他の構成については省略している。
【0034】
図5図7に示すように、ノズルNは、第1部分P1と、Z方向において第1部分P1よりもノズル流路RNに近い第2部分P2と、を有する。すなわち、ノズルNは2段階ノズルとして構成されている。第1部分P1および第2部分P2は、ノズル基板60をエッチング等の技術により加工することで形成される。第1部分P1は、第2部分P2のX方向およびY方向における中央付近に+Z方向から接続している。第1部分P1は、第2部分P2から供給されるインクを外部に向けて吐出する。図5に示すように、第1部分P1は、X方向における長さL1と、Y方向における幅W1とが略等しく、Z方向に見て円状の外観形状を有する。
【0035】
図5図7に示すように、第2部分P2における長さL2と幅W2と深さD2とのそれぞれは、第1部分P1における長さL1と幅W1と深さD1とのそれぞれよりも大きい。第2部分P2の幅W2は、ノズル流路RNの幅W10よりも小さい。第2部分P2の容積は、第1部分P1の容積よりも大きい。図5に示すように、第2部分P2は、X方向における長さL2と、Y方向における幅W2とが略等しく、円状の外観形状を有する。したがって、第1部分P1と第2部分P2とは、同心円状であるとも言える。第2部分P2には、ノズル流路RNをX方向に流れるインクの少なくとも一部が流れ込む。第2部分P2に流れ込んだインクの少なくとも一部は、第1部分P1に供給される。
【0036】
本実施形態において、第1部分P1のイナータンスM1と、第2部分P2のイナータンスM2との比(以下、「イナータンス比」と呼ぶ)は、M2/M1<0.26の関係を満たす。ここで、液体が流れる流路におけるイナータンスMは、流路の断面積をS、流路長をl、液体の密度をρとして、下記式(1)により求めることができる。
M=ρl/S …(1)
【0037】
第1部分P1および第2部分P2は、Z方向にインクが流れる流路とみなせるので、第1部分P1のイナータンスM1は、第1部分P1のXY平面における断面の断面積をS1、流路長すなわちZ方向の長さをd1、インクの密度をρとして、M1=ρd1/S1と表せる。同様に、第2部分P2のイナータンスM2は、第2部分P2のXY平面における断面の断面積をS2、流路帳すなわちZ方向の長さをd2、インクの密度をρとして、M2=ρd2/S2と表せる。本実施形態において、イナータンスM1は0.10より大きく、イナータンスM2は0.001より大きいことが好ましい。
【0038】
本発明者らは、上述のようにイナータンス比をM2/M1<0.26の関係を満たすように設定することで、ノズルN内におけるインクの増粘を抑制できることを見出した。従来、2段階ノズルにおけるイナータンス比は比較的大きく(例えばM2/M1>0.30)設定することが好ましいとされていた。これは、イナータンスM2とイナータンスM1との差を小さくし、第2部分P2と第1部分P1との間のイナータンス変化を低減することで、吐出される液滴を安定させることができるためである。ここで、微小な液滴を吐出するノズルに2段階ノズルを適用した場合においては、液滴の吐出量が通常のノズルと比較して少ないため、ノズルとノズル流路との間での液体の置換頻度も少ない。また、吐出される液滴が小さいことから、メニスカスの揺動量が少なく、メニスカスの揺動によるノズル内のインクの撹拌(インク循環)も困難となる。このため、ノズルと大気との境界面において大気と触れることで増粘した液体がノズル内に滞留し、液体の吐出が適切に行われないおそれがある。
【0039】
ここで、本発明者らは、イナータンス比をM2/M1<0.26の関係を満たすように小さく設定することで、ノズル内におけるインクをより循環させることができ、インクの増粘を抑制できることを見出した。図8は、メニスカスの状態の一例を模式的に示す説明図である。図8の左側には、イナータンス比が比較的小さい場合(例えばM2/M1<0.26)、すなわち第2部分P2と第1部分P1との間のイナータンス変化が大きい場合のメニスカスMn1を示す。図8の右側には、イナータンス比が比較的大きい場合(例えばM2/M1>0.30)、すなわち第4部分P200と第3部分P100との間のイナータンス変化が小さい場合のメニスカスMn2を示す。なお、第4部分P200および第3部分P100はノズルを構成し、第4部分P200の容積は第3部分P100の容積よりも大きい。図8の太い矢印は、インクの吐出方向を示す。図8の左側に示すように、イナータンスの変化が大きい場合、第2部分P2内のメニスカスMn1の界面が、-Z方向に向かって細く伸びている。これは、イナータンスが比較的小さい(すなわち、インクが動きやすい)第2部分P2から、イナータンスが比較的大きい(すなわち、インクが動きにくい)第1部分P1へと移動する際のイナータンスの変化が大きいことによるものと推察される。このようなメニスカスMn1が形成されることで、比較的大きいメニスカス揺動が発生する。このため、インクの吐出時に、メニスカスMn1付近の矢印が示すような渦流が発生する。かかる渦流により、ノズルN内のインクが大きく撹拌される。これに対して、図8の右側に示すように、イナータンスの変化が小さい場合、第2部分P300内のメニスカスMn2の界面は、メニスカスMn1と比較して平坦である。このため、インクの吐出時に、メニスカスMn2近傍で発生する渦流は、メニスカスMn1と比較して小さい。発生する渦流が小さいため、インクの撹拌は行われ難い。このようなことから、イナータンス比をM2/M1<0.26と設定することで、ノズルN内におけるインクの増粘を抑制し、適切にインクを吐出できると考えられる。
【0040】
以上説明した液体吐出ヘッド1によれば、第1部分P1の容積は、第2部分P2の容積よりも小さく、第1部分P1のイナータンスをM1、第2部分P2のイナータンスをM2としたとき、M2/M1<0.26を満たすので、液体の吐出時に比較的大きいメニスカスMn1の揺動が発生し、第2部分内の液体を大きく撹拌できる。これにより、ノズル内で液体が増粘することを抑制できる。
【0041】
B.実施例:
様々な寸法のノズルを用いて、吐出試験を行った。吐出試験は、インクジェット式プリンターを用いて、インクを吐出させることで行った。その結果を下記表1および表2に示す。実施例では、イナータンス比M2/M1を0.26未満に設定したノズルNを用いて試験を行った。比較例では、イナータンス比M2/M1を0.26以上に設定したノズルNを用いて試験を行った。イナータンスM1,M2を算出する際の液体の密度ρは、1とした。なお、表1および表2における長さL1,L2と、幅W1,W2と、深さD1,D2との単位は、いずれもマイクロメートルである。また、実施例および比較例のいずれにおいても、第1部分P1の容積は、第2部分P2の容積よりも小さい。また、第1部分P1および第2部分P2は、それぞれ1枚のノズル基板60をエッチング加工することにより形成されるため、深さD1および深さD2の和は、ノズル基板60の厚さと一致する。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
表1および表2の右端に示されている「評価」は、吐出試験における吐出性能の評価を示す。具体的には「A」は、ノズルN内におけるインクが十分に撹拌されることでインクの増粘が抑制され、インクが適切に吐出されたことを意味する。「B」は、インクは適切に吐出されたが、ノズルN内におけるインクの撹拌が不十分なおそれがあり、比較的長時間の使用によりインクが増粘するおそれがあることを意味する。「C」は、ノズルN内におけるインクの撹拌が不十分であるために、インクが増粘し、インクが適切に吐出されなかったことを意味する。
【0045】
実施例1~実施例5では、第2部分P2の寸法を統一し、第1部分P1の寸法のみを変えて試験を行った。実施例6~実施例13では、第1部分P1の寸法を実施例1と同様に設定し、第2部分P2の寸法のみを変えて試験を行った。実施例14~実施例17のそれぞれは、実施例10~実施例13のそれぞれと対応する。具体的には、実施例14~実施例17のそれぞれでは、実施例10~実施例13のそれぞれにおける第1部分P1の寸法のみを変えて試験を行った。表1に示すように実施例1~実施例17のいずれにおいても、評価は「A」であった。これは、イナータンス比が0.26よりも小さく設定されているので、ノズルN内においてインクが十分に撹拌され、インクの増粘が抑制されたことによると考えられる。ここで、実施例17におけるイナータンス比は、比較的小さい0.007であり、イナータンスM1とイナータンスM2の変化量が比較的大きい。このため、インクの撹拌は十分に行われ、ノズルN内の粘度増加は抑制できるが、メニスカスが吐出方向に過剰に伸び、インクの吐出が不安定になるおそれがある。また、実施例9におけるイナータンス比は、比較的小さい0.005である。実施例9についても、実施例17と同様の理由により、インクの吐出が不安定になるおそれがある。
【0046】
表2に示すように、比較例1における評価は「B」であった。これは、イナータンス比を0.26に設定することで、インクは適切に吐出されたが、ノズルN内におけるインクの撹拌が不十分なおそれがあり、比較的長時間の使用によりインクが増粘するおそれがあるためである。比較例2~比較例8における評価は、いずれも「C」であった。これは、イナータンス比が比較的大きいことにより、ノズルN内における撹拌が不十分であったためである。
【0047】
以上説明した吐出試験の結果から明らかなように、ノズルNにおける第1部分P1のイナータンスM1と、第2部分P2のイナータンスM2との比を、M2/M1<0.26の関係を満たすように設定することで、ノズルN内におけるインクを大きく撹拌することができ、インクの増粘を抑制できる。
【0048】
C.他の実施形態:
(C1)上記実施形態および上記実施例1~実施例17で示したように、第2部分P2のX方向における長さL2は、第1部分P1のX方向における長さL1よりも長くてもよい。かかる構成によれば、長さL2が長さL1よりも短い構成と比較して、第2部分P2とノズル流路RNとの液体流れ方向(X方向)における接触箇所を大きくできるので、第2部分P2とノズル流路RNとの間でのインクの供給および排出効率を向上できる。これにより、ノズルN内におけるインクの増粘を抑制できる。
【0049】
(C2)上記実施形態および上記実施例1~実施例17に示すように、第1部分P1のZ方向における深さD1は、第2部分P2のZ方向における深さD2よりも短くてもよい。かかる構成によれば、深さD1が深さD2よりも長い構成と比較して、第1部分P1内の液体の圧力損失を抑制でき、液体の吐出性能を向上できる。また、第1部分P1におけるイナータンスM1を小さくできるので、第1部分P1内の液体が動きやすくなり、液体が吐出されやすくできる。
【0050】
(C3)上記実施形態において、イナータンスM1は0.10より大きく、イナータンス
M2は0.001よりも大きかったが、本開示はこれに限定されない。第1部分P1の容積が第2部分の容積よりも小さいという条件を満たす限りにおいて、イナータンスM1は0.10以下であってよく、イナータンスM2は0.001以下であってもよい。
【0051】
(C4)上記実施形態において、第1部分P1と第2部分P2とのY方向の幅W1,W2は、互いに等しくてもよい。
【0052】
(C5)上記実施形態において、共通供給流路RA1により複数のノズル流路RNのそれぞれに液体が供給され、共通供給流路RA1により複数のノズル流路RNのそれぞれから液体が排出されていたが、本開示はこれに限定されない。複数のノズル流路RNのそれぞれに液体を供給する複数の供給流路と、複数のノズル流路RNのそれぞれから液体を排出する複数の排出流路と、を備える構成としてもよい。換言すると、複数のノズル流路RNのそれぞれに直接または間接的に接続する、個別の供給流路および排出流路を備える構成としてもよい。
【0053】
(C6)上記実施形態において、第2部分P2は、第1部分P1側の端部において面取りまたは角R加工されていてもよい。図9および図10は、他の実施形態におけるノズルN2の説明図である。図9は、ノズルN2のXZ平面と平行な断面を示す。図10は、図9のX-X断面線における断面を示す。図9および図10に示すように、第2部分P22における第1部分P1側の端部が面取りされることで、面取りされていない構成と比較して、ノズル流路RNから第2部分P22に+Z方向に流れ込む液体の圧力損失を抑制できる。なお、面取りに限らず、角R加工であってもよい。なお、かかる形態における第2部分P22の長さL2は、ノズル流路RN側の端部におけるX方向の長さを意味する。
【0054】
(C7)上記実施形態において、第2部分P2は、Z方向においてノズル流路RNと反対側に向かってテーパ加工されていてもよい。図11および図12は、他の実施形態におけるノズルN3の説明図である。図11は、ノズルN3のXZ平面と平行な断面を示す。図12は、図11のXII-XII断面線における断面を示す。図11および図12に示すように、第2部分P23がZ方向においてノズル流路RNと反対側に向かってテーパ加工されることで、テーパ加工されていない構成と比較して、ノズル流路RNから第2部分P23に+Z方向に流れ込む液体の圧力損失を抑制できる。なお、かかる形態における第2部分P23の長さL2は、ノズル流路RN側の端部におけるX方向の長さを意味する。
【0055】
(C8)上記実施形態において、第2部分P2は、Z方向に見て長方形状の外観形状を有してもよい。図13は、他の実施形態におけるノズルN4の説明図である。図13は、Z方向に見たノズルN4を示す。図13に示すように、第2部分P24をZ方向に見て長方形状の構成とすることで、第2部分P24の容積を比較的大きくできる。
【0056】
(C9)上記実施形態において、第1部分P1は、Z方向に見て円状の外観形状を有していたが、本開示はこれに限定されない。第1部分P1は、Z方向に見て任意の形状を有していてもよい。
【0057】
D.他の形態:
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0058】
(1)本形態の一形態によれば、液体吐出ヘッドが提供される。この液体吐出ヘッドは、Y方向に配列され、前記Y方向と交差するZ方向に液体を吐出する複数のノズルと、前記複数のノズルのそれぞれに接続し、前記Y方向および前記Z方向と交差するX方向に延在する複数のノズル流路と、を有し、前記複数のノズルのそれぞれは、第1部分と、前記Z方向において前記第1部分よりも前記ノズル流路に近い第2部分と、を含み、前記第1部分の容積は、前記第2部分の容積よりも小さく、前記第1部分のイナータンスをM1、前記第2部分のイナータンスをM2としたとき、M2/M1<0.26を満たす。
この形態の液体吐出ヘッドによれば、M2/M1<0.26を満たすので、液体の吐出時にノズル内で比較的大きいメニスカスの揺動が発生し、ノズル内の液体を大きく撹拌できる。これにより、ノズル内で液体が増粘することを抑制できる。
【0059】
(2)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、M2/M1<0.22を満たしてもよい。
この形態の液体吐出ヘッドによれば、M2/M1<0.22を満たすので、M2/M1が0.22以上の構成と比較して、液体の吐出時に第2部分内の液体をより大きく撹拌でき、ノズル内で液体が増粘することをより抑制できる。
【0060】
(3)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、M2/M1<0.16を満たしてもよい。
この形態の液体吐出ヘッドによれば、M2/M1<0.16を満たすので、M2/M1が0.16以上の構成と比較して、液体の吐出時に第2部分内の液体をより大きく撹拌でき、ノズル内で液体が増粘することをより抑制できる。
【0061】
(4)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、M2/M1>0.005を満たしてもよい。
この形態の液体吐出ヘッドによれば、M2/M1>0.005を満たすので、M2/M1が0.005以下の構成と比較して、液体の吐出時にメニスカスが吐出方向に過剰に伸びることを抑制し、液体の吐出が不安定になることを抑制できる。
【0062】
(5)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、M2/M1>0.007を満たしてもよい。
この形態の液体吐出ヘッドによれば、M2/M1>0.007を満たすので、M2/M1が0.007以下の構成と比較して、液体の吐出時にメニスカスが吐出方向に過剰に伸びることを抑制し、液体の吐出が不安定になることを抑制できる。
【0063】
(6)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記第2部分の前記X方向における長さは、前記第1部分の前記X方向における長さよりも長くてもよい。
この形態の液体吐出ヘッドによれば、第2部分のX方向における長さは、第1部分のX方向における長さよりも長いので、第2部分の長さが第1部分の長さよりも短い構成と比較して、第2部分とノズル流路との液体流れ方向における接触箇所を大きくできるので、第2部分とノズル流路との間でのインクの供給および排出効率を向上できる。これにより、ノズル内におけるインクの増粘を抑制できる。
【0064】
(7)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記第1部分の前記Z方向における深さは、前記第2部分の前記Z方向における深さよりも短くてもよい。
この形態の液体吐出ヘッドによれば、第1部分のZ方向における深さは、第2部分のZ方向における深さよりも短いので、第1部分のZ方向における深さが第2部分のZ方向における深さよりも長い構成と比較して、第1部分内の液体の圧力損失を抑制でき、液体の吐出性能を向上できる。また、第1部分におけるイナータンスを小さくできるので、第1部分内の液体が動きやすくなり、液体が吐出されやすくできる。
【0065】
(8)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、M1>0.10、M2>0.001を満たしてもよい。
この形態の液体吐出ヘッドによれば、M1>0.10、M2>0.001を満たすので、M1が0.1以下でありM2が0.001以下である構成と比較して、第1部分を比較的小さく構成でき、第2部分を比較的大きく構成できる。
【0066】
(9)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記複数のノズル流路の一端に共通に接続し、前記ノズル流路へと液体を供給する共通供給流路と、前記複数のノズル流路の他端に共通に接続し、前記ノズル流路から液体を排出する共通排出流路と、を更に有してもよい。
この形態の液体吐出ヘッドによれば、共通供給流路および共通排出流路を更に有するので、共通供給流路および共通排出流路を備えない構成と比較して、共通供給流路および共通排出流路内で液体が循環でき、液体が滞留することを抑制できる。
【0067】
(10)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記第2部分は、前記Z方向に見て円状であってもよい。
この形態の液体吐出ヘッドによれば、第2部分はZ方向に見て円状なので、円状ではない構成と比較して、ノズル流路から第2部分に流れ込む液体の圧力損失を抑制できる。
【0068】
(11)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記第2部分は、前記第1部分側の端部において面取りまたは角R加工されていてもよい。
この形態の液体吐出ヘッドによれば、第2部分は、第1部分側の端部において面取りまたは角R加工されているので、面取りまたは角R加工されていない構成と比較して、ノズル流路から第2部分に流れ込む液体の圧力損失を抑制できる。
【0069】
(12)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記第2部分は、前記Z方向において前記ノズル流路と反対側に向かってテーパ加工されていてもよい。
この形態の液体吐出ヘッドによれば、第2部分は、前記Z方向において前記ノズル流路と反対側に向かってテーパ加工されているので、テーパ加工されていない構成と比較して、ノズル流路から第2部分に流れ込む液体の圧力損失を抑制できる。
【0070】
(13)本開示の他の形態によれば液体吐出装置が提供される。この液体吐出装置は、上記形態の液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドからの液体の吐出動作を制御する制御部と、を有する。
【0071】
本開示は、インクジェット方式に限らず、インク以外の他の液体を吐出する任意の液体吐出装置及びそれらの液体吐出装置に用いられる液体吐出ヘッドにも適用することができる。例えば、以下のような各種の液体吐出装置およびその液体吐出ヘッドに適用可能である。
(1)ファクシミリ装置等の画像記録装置。
(2)液晶ディスプレイ等の画像表示装置用のカラーフィルターの製造に用いられる色材吐出装置。
(3)有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイや、面発光ディスプレイ(Field Emission Display、FED)等の電極形成に用いられる電極材吐出装置。
(4)バイオチップ製造に用いられる生体有機物を含む液体を吐出する液体吐出装置。
(5)精密ピペットとしての試料吐出装置。
(6)潤滑油の吐出装置。
(7)樹脂液の吐出装置。
(8)時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を吐出する液体吐出装置。
(9)光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂液等の透明樹脂液を基板上に吐出する液体吐出装置。
(10)基板などをエッチングするために酸性又はアルカリ性のエッチング液を吐出する液体吐出装置。
(11)他の任意の微小量の液滴を吐出させる液体消費ヘッドを備える液体吐出装置。
【0072】
「液体」とは、液体吐出装置が消費できるような材料であれば良い。例えば、「液体」は、物質が液相であるときの状態の材料であれば良く、粘性の高い又は低い液状態の材料、及び、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような液状態の材料も「液体」に含まれる。また、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなども「液体」に含まれる。また、液体の代表的な例としては、以下のものが挙げられる。
(1)接着剤の主剤および硬化剤。
(2)塗料のベース塗料および希釈剤や、クリア塗料および希釈剤。
(3)細胞用インクの細胞を含有する主溶媒および希釈溶媒。
(4)金属光沢感を発現するインク(メタリックインク)のメタリックリーフ顔料分散液および希釈溶媒。
(5)車両用燃料のガソリン・軽油およびバイオ燃料。
(6)薬品の薬主成分および保護成分。
(7)発光ダイオード(LED)の蛍光体および封止材。
【符号の説明】
【0073】
1…液体吐出ヘッド、2…連通板、3…圧力室基板、4…振動板、5…貯留室形成基板、8…配線基板、10…液体吐出ヘッドユニット、20…液体容器、30…循環機構、40…搬送機構、42…搬送ローラー、44…搬送ロッド、46…搬送用モーター、50…開口、51…導入口、52…排出口、53…キャリッジ、54…搬送ベルト、55…移動機構、56…移動用モーター、57…プーリー、60…ノズル基板、61,62…コンプライアンスシート、81…駆動回路、90…制御部、100…液体吐出装置、CB1,CB2…圧力室、Ln…ノズル列、M,M1,M2…イナータンス、Mn1,Mn2…メニスカス、N,N2,N3,N4…ノズル、PP…印刷用紙、P1…第1部分、P100…第3部分、P2,P22,P23,P24…第2部分、P200…第4部分、PZ1,PZ2…圧電素子、RA1…共通供給流路、RA2…共通排出流路、RB1…共通供給流路、RB2…共通排出流路、RJ…循環流路、RK1…連通流路、RK2…連通流路、RN…ノズル流路、RR1…供給流路、RR2…排出流路、RX1…連通流路、RX2…連通流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13