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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118564
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】腐葉土の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C05F 17/00 20200101AFI20240826BHJP
   C05F 11/00 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
C05F17/00
C05F11/00
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024911
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】517132980
【氏名又は名称】環境緑地株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118393
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 康裕
(72)【発明者】
【氏名】野村 武夫
(72)【発明者】
【氏名】野村 歩
【テーマコード(参考)】
4H061
【Fターム(参考)】
4H061AA02
4H061EE64
4H061GG13
4H061GG19
4H061GG43
4H061GG49
4H061GG52
4H061HH41
(57)【要約】
【課題】 本発明は、嫌気性分解による悪臭の発生を抑え、自然界の腐葉土と同等なものを自然界に比べ短期間で製造することができる腐葉土の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】腐葉土原料を堆積する堆積工程S1と、堆積物を発酵させる発酵工程S2と、発酵した堆積物を攪拌する攪拌工程S3と、からなる腐葉土の製造方法において、堆積工程S1は、樹根を敷き均して樹根層1を形成する樹根層工程S101と、樹根層1の上に刈り草を敷き均して刈草層2を形成する刈草層工程S102と、刈草層2の上に粉砕した枝葉を敷き均して枝葉層3を形成する枝葉層工程S103と、を含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腐葉土原料を堆積する堆積工程と、堆積物を発酵させる発酵工程と、発酵した堆積物を攪拌する攪拌工程と、からなる腐葉土の製造方法において、
前記堆積工程は、
樹根を敷き均して樹根層を形成する樹根層工程と、
前記樹根層の上に刈り草を敷き均して刈草層を形成する刈草層工程と、
前記刈草層の上に粉砕した枝葉を敷き均して枝葉層を形成する枝葉層工程と、
を含み、
前記攪拌工程は、前記樹根層の上の前記刈草層と前記枝葉層を攪拌することを特徴とする腐葉土の製造方法。
【請求項2】
前記堆積工程における前記刈草層工程と前記枝葉層工程を繰り返して積層することを特徴とする請求項1に記載の腐葉土の製造法。
【請求項3】
前記枝葉層工程における破砕した前記枝葉は、前記枝葉層を形成する前に、堆積して発酵を行う枝葉発酵工程を経たものであることを特徴とする請求項1に記載の腐葉土の製造法。
【請求項4】
前記枝葉層工程における前記枝葉は、生木を用いたものであることを特徴とする請求項1に記載の腐葉土の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腐葉土の製造方法であって、樹根層工程と、刈草層工程と、枝葉層工程とを含む、腐葉土の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
山林では、地表に朽木や落葉、落枝が堆積し、この堆積物が微生物等の土壌生物によって徐々に分解されている。そして、このような堆積物が分解し、腐熟する工程が長い年月積み重なって堆積されたものを腐葉土と呼んだりしている。この腐葉土は植物の栽培に適しており、農作物に利用されたりするが、自然界における利用可能な腐葉土は、50~100年というような非常に長い年月を経てできている。
【0003】
自然界における腐葉土は、非常に長い年月を必要とすることから、例えば、特許文献1や非特許文献1、非特許文献2にあるような人工的に作った腐葉土も知られている。特許文献や非特許文献にあるような人工的な腐葉土は、落葉を集めて堆積し、半年から1年程度発酵させて製造している。そして、特許文献1では例えば段落[0028]に記載されているように、発酵を促進させるための発酵助剤(発酵菌と米ぬか)を混ぜ、非特許文献2でも米ぬかを混ぜるなどしている。また、鶏糞等の動物の排泄物を混ぜる場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-341859号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】光伸製瓦有限会社「腐葉土販売」 検索日:令和5年2月5日〈http://www.koshin-kawara.com/fuyoudo〉
【非特許文献2】マイナビ農業TOP>生産技術>初心者でも簡単! 手抜き腐葉土の作り方[畑は小さな大自然vol.76] 検索日:令和5年2月5日〈https://agri.mynavi.jp/2020_04_16_116169/〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自然界における腐葉土は、利用可能となるためには非常に長い年月を要するという問題がある。また、落葉等の落下物が堆積するだけで作られることから、発酵工程において酸素の供給は少ないことから、所謂嫌気性分解となりやすい。したがって、発酵工程において嫌気性分解により発生する硫化水素やメタンによる悪臭が生じる。
【0007】
この嫌気性分解による悪臭の問題は、落葉を堆積して製造する人工的な腐葉土においても発酵工程で生じてしまうことから、周辺環境に配慮する必要があり、周囲に住宅等のある場所では大規模な製造を行うことは難しい。また、嫌気性分解による悪臭を抑えようとすると、頻繁な攪拌作業が必要となってしまう。
【0008】
また、人工的な腐葉土には、特許文献1や非特許文献2にあるように、米ぬか等を含んでいるものもあり、自然界の腐葉土のような純粋な有機質材のみで作られていないものもある。また、動物の排泄物を混ぜるものもあるが、動物の排泄物には病原菌が含まれていることがあるため、発酵が不十分な場合には病原菌が残存してしまうおそれもある。
【0009】
本発明は、嫌気性分解による悪臭の発生を抑えることにより、周辺環境へあまり配慮することなく大規模な腐葉土の製造を可能とする腐葉土の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、自然界の腐葉土と同等なものを自然界に比べ短期間で製造することができる腐葉土の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の腐葉土の製造方法は、腐葉土原料を堆積する堆積工程と、堆積物を発酵させる発酵工程と、発酵した堆積物を攪拌する攪拌工程と、からなる腐葉土の製造方法におい前記堆積工程は、樹根を敷き均して樹根層を形成する樹根層工程と、樹根層の上に刈り草を敷き均して刈草層を形成する刈草層工程と、刈草層の上に粉砕した枝葉を敷き均して枝葉層を形成する枝葉層工程と、を含み、攪拌工程は、樹根層の上の刈草層と枝葉層を攪拌することを特徴とする。
【0011】
これにより、樹根層で十分な土壌微生物が生存し、また、樹根による隙間が発生することで分解に必要な酸素を十分に確保することができる、所謂好気性分解が行われることになり、悪臭の発生を抑えることができる。また、刈草層と枝葉層の攪拌(切り返し)を行うだけなので、土壌微生物の繁殖場所である樹根層を守ることができ、好気性分解の継続により悪臭の発生を抑えることができる。さらに、刈草層の上に枝葉層が形成されることで、土壌微生物による発酵が促進される。したがって、周辺に生活圏があるような場所でも大規模な腐葉土の製造を行うことができる。また、特許文献や非特許文献では使用しない樹根や刈草、枝を有効に活用することができる。
【0012】
また、本発明の腐葉土の製造法は、堆積工程における刈草層工程と枝葉層工程を繰り返して積層することを特徴とする。これにより、土壌微生物による発酵が均一化されより促進されることになる。
【0013】
また、本発明の腐葉土の製造法は、枝葉層工程における破砕した枝葉は、枝葉層を形成する前に、堆積して発酵を行う枝葉発酵工程を経たものであることを特徴とする。これにより、さらに発酵が促進される。
【0014】
また、本発明の腐葉土の製造法は、枝葉層工程における枝葉は、生木を用いたものであることを特徴とする。生木であるため葉緑素が豊富なことから、これにより、酸素の混入が容易で発酵がより促進される
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実地形態に係る腐葉土の製造方法を示す図である。
図2】本発明の一実地形態に係る堆積層の断面である。
図3】本発明の一実地形態に係る樹根層を形成する樹根の撮像である。
図4】本発明の一実施形態に係る枝葉層を形成する枝葉の撮像である。
図5】(A)は本発明の一実施形態に係る第2分別工程で分別された腐葉土の撮像であり、(B)はその第3分別工程S7で分別された腐葉土の撮像である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態及び図面を参照にして本発明を実施するための形態を説明するが、以下に示す実施形態は、本発明をここに記載したものに限定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。なお、この明細書における説明のために用いられた各図面においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて表示しており、必ずしも実際の寸法に比例して表示されているものではない。
【0017】
[実施形態]
本実施形態の腐葉土の製造方法は、自然の材料を用いて、堆積工程と発酵工程と攪拌工程とが行われ、それぞれの工程を工夫することにより、好気性分解により製造中でもほぼ無臭な状況で、自然界の形成される腐葉土と同等な腐葉土を、自然界での形成に比べ短期間で製造することができる。
【0018】
まず、自然界での腐葉土の形成概念を簡単に説明すると、自然界では、樹根の上の地表面に落ち葉や枯れ枝が堆積し、更に地表面に生えた雑草が枯れ、その枯れ草が堆積する。堆積した堆積物内では、土壌微生物が徐々に活性化し発酵が進む。このような工程が毎年繰り返される。この時、堆積物内への酸素補給は、基本的にはミミズ等の小動物によるものだけなので、堆積物の発酵は、嫌気性分解によるものとなり、臭いが生じる。また、枯れ枝の分解が始めるのには通常3~5年を要し、根の分解が始まるのには10~50年を要し、その量は少量のみとなる。そのため、自然界で形成される腐葉土は、50~100年の長期間を要したものとなっている。
【0019】
本実施形態の腐葉土の製造方法は、このように長期間を要する自然界で形成される腐葉土と同等な腐葉土を10年程度の短期間で製造することができ、更には、その製造途中において悪臭を発生させることなく製造することができる。
図1は、本実施形態の腐葉土の製造方法を示す製造工程図である。図2は、本実施形態における堆積層の断面である。
堆積工程S1は、腐葉土の原料を堆積する工程であり、より詳しくは、樹根層工程S101と刈草層工程S102と枝葉層工程S103からなる。
【0020】
樹根層工程101は、樹根を敷き均した樹根層1を形成する工程である。この樹根は木の根のことであり、例えば自然の山から得られる樹木の根や、土砂崩れのような災害で流出した樹木の根等を活用することができる。そして、この樹根は、主として土壌微生物の繁殖場所として、酸素の混入場所として機能する。なお、図3は樹根層1として使用した、樹根層1形成前の樹根の撮像である。
【0021】
このような樹根層1は、雨ざらしで、天日干し可能な水捌けの良好な屋外の場所に、樹根を1m程度の厚さで敷き均して形成する。この時、樹根は主根や側根、ひげ根に分ける必要はなく、また、根を細かく粉砕する必要もない。図2の矢印で示す根のように、樹根層1に収まる大きさであればそのまま用い、収まらないような大きさの根(特に主根)であれば、収まる程度の大きさに切断して用いればよい。このような大きな根のままを用いることで、樹根層1に根と根の間の隙間が形成され、この隙間が土壌微生物の繁殖場所や酸素の混入場所として有効に機能することになる。
【0022】
なお、樹根層工程S1では、樹根を敷き均して樹根層1を形成するが、ここで言う敷き均しとは、表面が厳密に平らであることを意味していないことは当然である。表面はある程度凸凹となるが、全体的に均してあれば構わない。また、後で述べる刈草層工程等でも原料を敷き均すことを説明しているが、これらの意味も同様である。
【0023】
刈草層工程102は、刈り草を敷き均した刈草層2を形成する工程である。この刈り草は、雑草のことであり、例えば公園や河川敷等で生じた刈り草等、自然界のものを乾燥させずに利用する。とくにこのような刈り草は、一般廃棄物として処分する必要がある等、処分に困るものであることから、有効に活用できる。この刈り草は、樹根層1表面の隙間を埋め、樹根層1内の土壌微生物の移動を促進するものとして機能する。また、乾燥させていない生草を用いることで、残存する豊富な葉緑体を活用し酸素混入を促進することができ、発酵工程での好気性分解をより促進できる。そして、このような刈草層2は、樹根層1の上に0.5m程度の厚さで敷き均して形成する。
【0024】
枝葉層工程103は、粉砕した枝葉を敷き均した枝葉層3を形成する工程である。枝葉は、生木の枝や葉であり、例えば自然の山から得られる樹木の枝葉や、街路樹の剪定で生じた枝葉等を活用することができる。とくに街路樹の剪定で生じた枝葉も、一般廃棄物として処分する必要がある等、その処分に困るものであることから、有効に活用できる。また、特許文献1においては、枝は発酵を遅らせることから、わざわざ枝を除去しているが、本実施形態においては、枝を除去するのではなく、積極的に活用する。なお、図4は枝葉層3として使用した枝葉層3形成前の粉砕された生木の枝や葉の撮像である。
【0025】
枝葉層3を形成する枝葉としては、落ち葉のような枯れ葉を用いても構わないが、本実施形態のように生木の枝葉を用いることで、残存する豊富な葉緑体の活用で酸素混入を促進することができ、発酵工程で好気性分解を促進することができる。
【0026】
また、本実施形態の枝葉層3は、枝葉層3を形成する前に、堆積して発酵を行う枝葉発酵工程を経たものとなっている。枝葉発酵工程は、例えば、枝葉は分解速度促進のため30mm~50mmの大きさに破砕されて堆積して、この堆積物を一時発酵する工程である。この枝葉発酵工程を行うことで、枝葉の分解を効率よく行うことできるため、特許文献1において除去されていたような枝であっても、より有効に活用することができる。この枝葉発酵工程は、6か月程度を行う。そして、枝葉発酵工程を得た枝葉を、刈草層2の上に0.5m程度の厚さで敷き均すことで、枝葉層3を形成する。
【0027】
そして、本実施形態の堆積工程においては、図2に示すように樹根層1の上に形成した刈草層2を刈草層2-1として、刈草層2-1の上に形成した枝葉層3を枝葉層3-1とし、更に刈草層工程102と枝葉層工程103を繰り返すことで、刈草層2と枝葉層3を3層に積層している。このように刈草層2と枝葉層3をサンドイッチしながら繰り返し積層することで、土壌微生物による発酵がより一層促進されることになる。
【0028】
なお、刈草層2と枝葉層3を繰り返しは、本実施形態のように3層に限定するものではない。また、本発明の発明者は、このように樹根層1をベースに、その上に刈草層2と枝葉層3を繰り返して積層する本実施形態の腐葉土の製造方法をサンドイッチ工法と呼んでいる。
【0029】
このような堆積工程S1を経て、次に発酵工程S2となる。この発酵工程S2では、堆積工程S1で形成された堆積層の発酵が行われる。堆積工程S1での構成により、堆積層の全体で微生物の活動により腐葉土原料の分解が促進され、腐葉土が形成される。また、堆積層は屋外にあることから、ミミズや小動物の発生により酸素や雨水の通り道ができ、腐葉土原料の分解がより促進される。また、樹根層1を形成していることから、酸素が十分に存在し、好気性微生物が繁殖することができ、好気性分解を継続して行うことができ、発酵の過程で悪臭の発生が抑えられる。
【0030】
そして、本実施形態の腐葉土の製造方法においては、この発酵工程S2を1年程度として、次に撹拌工程S3となる。この攪拌工程S3では、堆積層を攪拌する工程であるが、撹拌する堆積層は、刈草層2と枝葉層3の3層からなる部分を撹拌する。つまり、樹根層1はそのままにしておき、その上の堆積層だけを撹拌する。これは樹根層1には土壌微生物の良好な繁殖場所や酸素の混入場所として有効に機能しているため、この環境を活かすためである。なお、この撹拌工程とは、発酵の途中でかき混ぜて、底の方にあった部分を空気に触れさせる工程のことであり、所謂切り返しと呼ばれたりもする。
【0031】
また、図1に示すように発酵工程S2と撹拌工程S3とは、繰り返し行うことになる。この時、撹拌工程S3においては、上述したように樹根層1の上の刈草層2と枝葉層3のみを撹拌する。また、当然ながら、一度樹根層1と刈草層2とを撹拌してしまうと、それ以降においては、刈草層2と枝葉層3が混在した状態で発酵工程S2が行われることになり、その混在したものを更に撹拌工程S3で撹拌することになる。
【0032】
このような発酵工程S2と撹拌工程S3の繰り返しは、本実施形態においては、年に1回を10年程度の期間をかけて行うことを想定している。なお、撹拌工程S3は、樹根層1の上の刈草層2と枝葉層3のみを撹拌するものではあるが、樹根層1と刈草層2の境界は厳密に定まるものではないので、撹拌工程S3で多少樹根層1が含まれていたりすることは問題ではない。また、上記のように10年程度の期間を想定していることから、最下部の樹根層1においても期間の後半においては発酵が進んでくるので、樹根層1の発酵が進んだ段階においては、樹根層1も含めて撹拌を行っても当然ながら構わない。
【0033】
発酵工程S2と撹拌工程S3を10年程度繰り返した後、次の第1分別工程S4に移動する。この第1分別工程S4は、上記工程により形成された腐葉土から、樹根の残り等、大きな残留物を取り除く工程である。とくに、本実施形態においては樹根層1となる樹根を有効に用いていることから、最終的に樹根のような大きな残留物が残ってしまう可能性もあることから重要な工程となる。
【0034】
次に、天日乾燥工程S5では、天日乾燥を行うため、第1分別工程S4で分別された腐葉土を敷き均し、数日間天日に曝して乾燥を行う。本実施形態での乾燥は、乾燥機を用いた強制乾燥ではないため、腐葉土中の微生物が死滅してしまうことを防ぐことができる。
【0035】
次に、第2分別工程S6では、篩にかけて腐葉土の大きさの分別を行い、細粒のものに分別する。第3分別工程S7では、更に細かい篩いに掛けたり、目視によって不純物(例えば、小石)を除去したりして、更に小さな極粒のものに分別する。第2分別工程S6で分別された腐葉土は、主に造園用途や営農用途としての使用を想定したものであり、粒同士の間に酸素混入のための適度な隙間が形成されることからこのような用途に適している。また、第3分別工程S7で分別された腐葉土は、植物栽培用途等の一般用用途としての使用を想定したものである。なお、図5(A)は第2分別工程S6で分別された腐葉土、図5(B)は第3分別工程S7で分別された腐葉土である。
【0036】
そして、第2分別工程S6、第3分別工程S7を経たものは、次の検査工程S8へ移り、所定の検査を終え、問題のなかった腐葉土は、充填工程S9で袋に充填され、出荷工程S10にて出荷される。なお、検査工程S8での検査は、腐葉土の成分やpH値、含水比等の検査である。また、本実施形態による腐葉土のpH値を測ったところ7.0~7.2であり、周辺の土壌の平均的なpH値5.5に比べ非常に高い値であり、また一般的な腐葉土のpH値と比べても高い値となっていた。
【0037】
このように本実施形態の腐葉土の製造方法では、堆積工程S1で、樹根を敷き均して樹根層1を形成する樹根層工程101と、樹根層1の上に刈り草を敷き均して刈草層2を形成する刈草層工程102と、刈草層2の上に粉砕した枝葉を敷き均して枝葉層3を形成する枝葉層工程103と、を含み、攪拌工程S3では、樹根層1の上の刈草層2と前記枝葉層3を攪拌する。このような本実施形態の製造方法においては、発酵工程S2と撹拌工程S3の繰り返しは、年に1回を10年程度の期間をかけて行うことを想定している。この期間は、自然界における腐葉土の形成期間に比べると著しく短期間で形成することができる。
【0038】
また、特許文献や非特許文献にあるような人工的な腐葉土の製造期間に比べると長い期間ではあるが、自然界の腐葉土のような純粋な有機質材のみで作ることができる。また、鶏糞のような動物の排泄物を混ぜていないため、動物の排泄物に含まれる病原菌が残存することもなく、病原菌の残存による感染症を抑えることもできる。
【0039】
また、樹根層1を設けることにより、微生物の繁殖や酸素の混入場所が確保されることから、好気性微生物の繁殖保持により、好気性分解が行われることになる。実際に発酵工程において悪臭の発生がないことから周辺での苦情も生じることはなく製造することが可能であった。
【0040】
また、本実施形態の腐葉土のpH値は7.0程度もあることから、この腐葉土を用いて野菜の生育に適したpH値5.5~7.0の調整を行う土として利用することができる。酸性よりになった土壌の調整としては、アルカリ性である石灰を用いることが多いが、石灰は皮膚の炎症や目の障害のおそれや、土壌微生物を死滅させるおそれもある。しかしながら、本実施形態の腐葉土であれば石灰のようなこともなく、土を用いた土壌のpH調整を行うことができる。
【0041】
なお、本発明者は、本実施形態の腐葉土は、自然由来の材料だけを用い、10年程度の期間を経てじっくり作った土壌菌が豊富な土であることから、植物の育成に非常に適しており、単に腐葉土と呼ぶのではなく、新たに「植生土」と名付けている。そして、本実施形態の腐葉土の製造方法は、持続可能な開発目標(SDGs)の、例えば目標15の「陸の豊かさも守ろう」ということにも資することになる。
【符号の説明】
【0042】
1:樹根層
2:刈草層
3:枝葉層
図1
図2
図3
図4
図5