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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118565
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】作業機械における油圧制御システム
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/08 20060101AFI20240826BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
F15B11/08 A
E02F9/22 J
E02F9/22 K
E02F9/22 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024912
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】505236469
【氏名又は名称】キャタピラー エス エー アール エル
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100128392
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】中嶌 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】酒向 志乃
【テーマコード(参考)】
2D003
3H089
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB01
2D003AB02
2D003AB03
2D003BA08
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB02
3H089AA60
3H089AA73
3H089AA80
3H089BB27
3H089CC01
3H089CC08
3H089CC11
3H089DA03
3H089DA13
3H089DB46
3H089DB49
3H089EE36
3H089GG02
3H089JJ02
(57)【要約】
【課題】旋回駐車ブレーキを備えた油圧ショベルにおいて、旋回中だけでなく作業用アクチュエータの作動中にも旋回駐車ブレーキを制動解除状態にするにあたり、部品点数の低減および回路の単純化を図る。
【解決手段】走行直進弁20にパイロット圧を出力する兼用電磁比例弁23を、ブレーキ切換弁26にパイロット圧を出力するパイロット圧出力電磁弁として共用するとともに、ブレーキ切換弁26を切換えるために必要なパイロット圧(第二設定圧)を、走行直進弁20を切換えるために必要なパイロット圧(第一設定圧)よりも低圧に設定した。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の走行装置を備えた下部走行体と、該下部走行体に旋回自在に支持される上部旋回体と、該上部旋回体に装着される作業部とを備えた作業機械に、前記左右の走行装置を駆動せしめる左右の走行モータ、上部旋回体を旋回せしめる旋回モータ、作業部を駆動せしめる作業用油圧アクチュエータを含む複数の油圧アクチュエータと、これら油圧アクチュエータの油圧供給源となる第一、第二油圧ポンプと、左右の走行モータ、旋回モータ、作業用油圧アクチュエータをそれぞれ駆動せしめるべく操作される左右の走行用操作具、旋回用操作具、作業用操作具と、第一、第二油圧ポンプと各油圧アクチュエータ用供給油路との接続を切換えるパイロット作動式の走行直進弁と、上部旋回体の旋回を制動する旋回駐車ブレーキと、該旋回駐車ブレーキに圧油を供給して制動状態から制動解除状態に切換えるパイロット作動式のブレーキ切換弁とを備えた油圧制御システムを設けるにあたり、
前記走行直進弁は、第一設定圧以上のパイロット圧が供給されることで、第一、第二油圧ポンプのうち何れか一方の油圧ポンプの吐出油を左走行モータに供給し他方の油圧ポンプの吐出油を右走行モータに供給する中立位置から、何れか一方の油圧ポンプの吐出油を左右の走行モータに供給し他方の油圧ポンプの吐出油を旋回モータ、作業用油圧アクチュエータに供給する作動位置に切換わる構成とし、
前記ブレーキ切換弁は、前記第一設定圧よりも低圧の第二設定圧のパイロット圧が供給されることで、旋回駐車ブレーキを制動状態にする中立位置から、旋回駐車ブレーキを制動解除状態にする作動位置に切換わる構成にする一方、
走行直進弁およびブレーキ切換弁は共通の兼用電磁弁からパイロット圧が供給される構成にするとともに、該兼用電磁弁を制御する制御装置を設け、
該制御装置は、兼用電磁弁を、左右の走行用操作具、旋回用操作具、作業用操作具の何れも操作されない場合、および左右の走行用操作具が操作され、且つ、旋回用操作具および作業用操作具の何れの操作具も操作されない場合にはパイロット圧を出力せず、左右の走行用操作具が操作され、且つ、旋回用操作具および作業用操作具の少なくとも一つの操作具が操作された場合には、第一設定圧以上のパイロット圧を出力し、左右の走行用操作具が操作されず、且つ、旋回用操作具および作業用操作具の少なくとも一つの操作具が操作された場合には、第二設定圧以上且つ第一設定圧未満のパイロット圧を出力するように制御することを特徴とする作業機械における油圧制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の作業機械における油圧制御システムの技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の作業機械のなかには、下部走行体に上部旋回体を旋回自在に支持せしめ、該上部旋回体に作業部を装着するとともに、下部走行体を走行せしめる左右の走行モータ、上部旋回体を旋回せしめる旋回モータ、作業部を駆動せしめる複数の作業用油圧アクチュエータ等の各種油圧アクチュエータを備えたものがある。このような作業機械には、通常、例えば斜面での駐車時等に上部旋回体が旋回してしまうことを防止するため、上部旋回体の旋回に制動を与える旋回駐車ブレーキが設けられる。このような旋回駐車ブレーキとしては、圧油が供給されることで、旋回を制動する制動状態から旋回を許容する制動解除状態になるメカニカルブレーキが汎用的に用いられている。
しかるに、このような旋回駐車ブレーキを備えた作業機械において、旋回停止中に上部旋回体に装着されている作業部を駆動させたときに上部旋回体が旋回駐車ブレーキにより旋回制動状態のままであると、上部旋回体を旋回させようとする力が働いた場合に旋回駐車ブレーキや旋回減速機に過大な負荷がかかってしまい、これら装置の損傷を招来する惧れがある。
そこで、旋回駐車ブレーキを制動状態から制動解除状態に切換えるべく該旋回駐車ブレーキに圧油供給するバルブとして、パイロット作動式の切換弁(連通弁45)を用いるとともに、該切換弁を切換えるためのパイロット圧を、走行操作のみが行われる走行単独操作以外の操作、つまり旋回操作や作業部操作、あるいは走行操作と作業部操作との走行複合操作が行われたときに出力されるように構成し、これにより、走行単独操作以外の操作のときには旋回駐車ブレーキを制動解除状態にするようにした技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
一方、前述した油圧ショベル等の作業機械のように、左右の走行モータ、旋回モータ、作業用油圧アクチュエータ等の複数の油圧アクチュエータを備えた作業機械のなかには、これら複数の油圧アクチュエータの油圧供給源として第一、第二油圧ポンプを設けるとともに、これら第一、第二油圧ポンプに接続される供給油路を切換えるパイロット作動式の走行直進弁を設けたものがある(例えば、特許文献2参照)。該走行直進弁は、走行操作のみが行われる走行単独操作時には、第一、第二何れか一方の油圧ポンプの吐出油を左右何れか一方の走行モータに、他方の油圧ポンプの吐出油を他方の走行モータに供給し、また、走行操作と他の油圧アクチュエータ操作とが同時に行われる走行複合操作時には、一方の油圧ポンプの吐出油を左右両方の走行モータに、他方の油圧ポンプの吐出油を他の油圧アクチュエータに供給するように供給ラインを切換えるように構成されており、これにより、走行複合操作時に左右の走行モータに同量の圧油を供給して走行直進性を確保できるようになっている。このようなパイロット作動式の走行直進弁を設ける場合には、走行操作や他の油圧アクチュエータ操作に基づいて走行直進弁にパイロット圧を出力するバルブが必要となり、特許文献2のものでは、コントローラにより制御される電磁比例式の走直制御弁が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63-151731号公報
【特許文献2】特開2007-120512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したような旋回駐車ブレーキを備えた作業機械において、前記特許文献1のように、走行単独操作以外の操作のときに、旋回駐車ブレーキに圧油供給する切換弁にパイロット圧を出力し、該パイロット圧により切換弁を切換えて旋回駐車ブレーキを制動解除状態にするように構成することで、旋回操作だけでなく作業部を操作した場合にも旋回駐車ブレーキを制動解除状態にすることができる。しかるに、特許文献1のものは、走行単独操作以外の操作のときに切換弁にパイロット圧を出力するにあたり、走行モータ用、および複数の作業油圧アクチュエータ用の制御弁(走行モータ操作用切換弁、ブームシリンダ操作用切換弁、アームシリンダ操作用切換弁、バケットシリンダ操作用切換弁)に、これら制御弁と連動する補助切換弁をそれぞれ設け、これら補助切換弁を通過するパイロット圧を、チェック弁やシャトル弁を介して切換弁に導く構成になっているとともに、走行単独操作時にパイロット圧を油タンクに流すためのロジック弁が設けられている。このため、補助切換弁を備えた特殊な構造の制御弁が必要なうえ、部品点数が多く、回路も複雑になるという問題があり、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、左右の走行装置を備えた下部走行体と、該下部走行体に旋回自在に支持される上部旋回体と、該上部旋回体に装着される作業部とを備えた作業機械に、前記左右の走行装置を駆動せしめる左右の走行モータ、上部旋回体を旋回せしめる旋回モータ、作業部を駆動せしめる作業用油圧アクチュエータを含む複数の油圧アクチュエータと、これら油圧アクチュエータの油圧供給源となる第一、第二油圧ポンプと、左右の走行モータ、旋回モータ、作業用油圧アクチュエータをそれぞれ駆動せしめるべく操作される左右の走行用操作具、旋回用操作具、作業用操作具と、第一、第二油圧ポンプと各油圧アクチュエータ用供給油路との接続を切換えるパイロット作動式の走行直進弁と、上部旋回体の旋回を制動する旋回駐車ブレーキと、該旋回駐車ブレーキに圧油を供給して制動状態から制動解除状態に切換えるパイロット作動式のブレーキ切換弁とを備えた油圧制御システムを設けるにあたり、前記走行直進弁は、第一設定圧以上のパイロット圧が供給されることで、第一、第二油圧ポンプのうち何れか一方の油圧ポンプの吐出油を左走行モータに供給し他方の油圧ポンプの吐出油を右走行モータに供給する中立位置から、何れか一方の油圧ポンプの吐出油を左右の走行モータに供給し他方の油圧ポンプの吐出油を旋回モータ、作業用油圧アクチュエータに供給する作動位置に切換わる構成とし、前記ブレーキ切換弁は、前記第一設定圧よりも低圧の第二設定圧のパイロット圧が供給されることで、旋回駐車ブレーキを制動状態にする中立位置から、旋回駐車ブレーキを制動解除状態にする作動位置に切換わる構成にする一方、走行直進弁およびブレーキ切換弁は共通の兼用電磁弁からパイロット圧が供給される構成にするとともに、該兼用電磁弁を制御する制御装置を設け、該制御装置は、兼用電磁弁を、左右の走行用操作具、旋回用操作具、作業用操作具の何れも操作されない場合、および左右の走行用操作具が操作され、且つ、旋回用操作具および作業用操作具の何れの操作具も操作されない場合にはパイロット圧を出力せず、左右の走行用操作具が操作され、且つ、旋回用操作具および作業用操作具の少なくとも一つの操作具が操作された場合には、第一設定圧以上のパイロット圧を出力し、左右の走行用操作具が操作されず、且つ、旋回用操作具および作業用操作具の少なくとも一つの操作具が操作された場合には、第二設定圧以上且つ第一設定圧未満のパイロット圧を出力するように制御することを特徴とする作業機械における油圧制御システムである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、旋回用操作具だけでなく作業用操作具が操作された場合にも旋回駐車ブレーキを制動解除状態にすることができるとともに、該旋回駐車ブレーキを制動解除状態にするべくブレーキ切換弁にパイロット圧を出力する兼用電磁弁は、走行直進弁にパイロット圧を出力する兼用電磁弁と共通のものであるから、ブレーキ切換弁を切換えるために別途専用のバルブや複雑な回路を必要とせず、部品点数の低減、回路の単純化に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】油圧ショベルの側面図である。
図2】油圧制御システムの油圧回路図である。
図3】コントローラの入出力を示すブロック図である。
図4】兼用電磁比例弁の制御手順を示すフローチャート図である。
図5】(A)は走行中に旋回用、作業用操作具が操作された場合、(B)は走行停止中に旋回用、作業用操作具が操作された場合の、兼用電磁比例減圧弁からの出力パイロット圧の経時的変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の作業機械の一例である油圧ショベル1を示す図であって、該油圧ショベル1は、左右のクローラ式走行装置を備えた下部走行体2、該下部走行体2に旋回自在に支持される上部旋回体3、該上部旋回体3に装着されるフロント作業部(本発明の作業部に相当する)4等から構成されており、さらに該フロント作業部4は、基端部が上部旋回体3に上下揺動自在に支持されるブーム5、該ブーム5の先端部に揺動自在に支持されるスティック6、該スティック6の先端部に揺動自在に取り付けられるバケット7等を具備して構成されている。
【0009】
図2に、前記油圧ショベル1に設けられる油圧制御システムの油圧回路図を示すが、図2において、8、9は油圧ショベル1に設けられる各種油圧アクチュエータの油圧供給源となる可変容量型の第一、第二油圧ポンプ、10は定容量型のパイロットポンプ、11は油タンク、12、13は前記下部走行体2の左右の走行装置をそれぞれ駆動せしめる左右の走行モータ、14は上部旋回体3を旋回せしめる旋回モータ、15、16、17はブーム5、スティック6、バケット7をそれぞれ揺動せしめるブームシリンダ、スティックシリンダ、バケットシリンダである。尚、前記ブームシリンダ15、スティックシリンダ16、バケットシリンダ17は本発明の作業用油圧アクチュエータに相当し、以下の説明において、これらブームシリンダ15、スティックシリンダ16、バケットシリンダ17を作業用油圧アクチュエータと称する場合もある。
【0010】
前記第一油圧ポンプ8は、後述する中立位置Nの走行直進弁20を介して第一ポンプラインAに接続されると共に、左走行用供給油路18を介して左走行用方向切換弁21に接続されている。一方、第二油圧ポンプ9は、第二ポンプラインBに接続されると共に、中立位置Nの走行直進弁20および右走行用供給油路19を介して右走行用方向切換弁22に接続されている。
【0011】
前記走行直進弁20は、パイロット作動式の二位置切換弁であって、パイロットポート20aに入力されるパイロット圧Pが予め設定される第一設定圧P1未満(P<P1のとき(パイロット圧が入力されていない場合を含む)には中立位置Nに位置しているが、第一設定圧P1以上のパイロット圧P(P≧P1)が入力されることで作動位置Xに切換わるように構成されている。そして、走行直進弁20が中立位置Nに位置している状態では、第一油圧ポンプ8の吐出油は第一ポンプラインAおよび左走行用方向切換弁21に供給され、第二油圧ポンプ9の吐出油は第二ポンプラインBおよび右走行用方向切換弁22に供給される一方、走行直進弁20が作動位置Xに位置している状態では、第一油圧ポンプ8の吐出油は左右両方の走行用方向切換弁21、22に供給され、第二油圧ポンプ9の吐出油は第一、第二の両方のポンプラインA、Bに供給されるようになっている。そして、走行直進弁20は、後述するように、左右の走行用操作具(図示せず)が操作され、同時に旋回用、ブーム用、スティック用、バケット用操作具(何れも図示せず)のうち少なくとも何れか一つの操作具が操作される走行複合操作時には作動位置Xに位置し、走行複合操作時以外の場合には中立位置Nに位置するように制御されるようになっている。これにより、左右の走行用操作具のみが操作される走行単独操作時には、中立位置Nに位置している走行直進弁20によって、第一、第二油圧ポンプ8、9の吐出油がそれぞれ左右の走行用方向切換弁21、22を介して左右の走行モータ12、13に供給されることになって、両走行モータ12、13への供給流量を同等にすることができる一方、走行複合操作時には、第一油圧ポンプ8の吐出油を左右の走行モータ12、13のみで分配して両走行モータ12、13への供給流量を同等にすることができるとともに、第二油圧ポンプ9の吐出油を旋回モータ14、ブームシリンダ15、スティックシリンダ16、バケットシリンダ17に供給することができるようになっている。以下の説明において、ブーム用、スティック用、バケット用の操作具を、作業用操作具と称する場合もある。
【0012】
さらに、23は前記走行直進弁20のパイロットポート20aにパイロット油路24を介して接続される兼用電磁比例弁(本発明の兼用電磁弁に相当する)であって、該兼用電磁比例弁23は、後述するコントローラ25からの制御信号に基づいて走行直進弁20のパイロットポート20aにパイロット圧を出力する。さらに、前記パイロット油路24からは、後述するブレーキ切換弁26のパイロットポート26aに至る分岐パイロット油路24aが分岐形成されていて、兼用電磁比例弁23から出力されたパイロット圧はブレーキ切換弁26のパイロットポート26aにも供給されるようになっている。
【0013】
また、前記左右の走行用方向切換弁21、22は、左右の走行モータ12、13に対する給排流量制御を行うと共に給排方向を切換えるスプール弁であって、前進側、後進側パイロットポート21a、21b、22a、22bを備えるとともに、これら前進側、後進側パイロットポート21a、21b、22a、22bには、コントローラ25からの制御信号に基づいてパイロット圧を出力する左走行用前進側、左走行用後進側、右走行用前進側、右走行用後進側電磁比例弁57a、57b、58a、58b(図3に図示)がそれぞれ接続されている。そして、左右の走行用方向切換弁21、22は、前進側、後進側の両パイロットポート21a、21b、22a、22bにパイロット圧が入力されていない状態では、左右の走行モータ12、13に対する給排制御を行わない中立位置Nに位置しているが、前進側または後進側パイロットポート21a、21b、22a、22bにパイロット圧が入力されることでスプールが移動して、左右の走行モータ12、13に対する給排制御を行う作動位置XまたはYに切換わるように構成されている。この場合に、作動位置XまたはYの左右の走行用方向切換弁21、22に形成される供給用弁路21c、22cは、スプールの移動位置に応じて開口面積が増減するとともに、左右の走行モータ12、13への供給流量は、供給用弁路21c、22cの開口面積によって増減制御されるようになっている。
【0014】
一方、前記第一油圧ポンプ8に接続される第一ポンプラインAからは、ブーム用メイン側供給油路27、スティック用サブ側供給油路28、バケット用供給油路29が互いにパラレルとなる状態で分岐形成されており、また、第二油圧ポンプ9に接続される第二ポンプラインBからは、ブーム用サブ側供給油路30、旋回用供給油路31、スティック用メイン側供給油路32が互いにパラレルとなる状態で分岐形成されている。前記ブーム用メイン側供給油路27およびブーム用サブ側供給油路30は、後述するブーム用方向切換弁34に第一、第二油圧ポンプ8、9をそれぞれ接続する油路であり、旋回用供給油路31は、旋回用方向切換弁33に第二油圧ポンプ9を接続する油路であり、また、スティック用メイン側供給油路32およびスティック用サブ側供給油路28は、スティック用方向切換弁35に第二、第一油圧ポンプ9、8をそれぞれ接続する油路であり、また、バケット用供給油路29は、バケット用方向切換弁36に第一油圧ポンプ8を接続する油路である。
【0015】
前記スティック用サブ側供給油路28には、第一油圧ポンプ8からスティック用方向切換弁35への供給流量を制御するスティック用流量制御弁38が配設されており、また、ブーム用サブ側供給油路30には、第二油圧ポンプ9からブーム用方向切換弁34への供給流量を制御するブーム用流量制御弁39が配設されている。これらスティック用流量制御弁38、ブーム用流量制御弁39は、コントローラ25から出力される制御信号に基づいて作動するスティック流量制御用電磁比例弁63、ブーム流量制御用電磁比例弁64(何れも図3に図示)によりパイロット操作されて流量制御を行うポペット弁であって、逆流防止機能を有している。
【0016】
而して、前記ブーム用方向切換弁34には、ブーム用メイン側供給油路27を経由する第一油圧ポンプ8からの圧油と、ブーム用サブ側供給油路30を経由する第二油圧ポンプ9からの圧油とを供給できるようになっていると共に、第二油圧ポンプ9からの圧油は、ブーム用サブ側供給油路30に配設のブーム用流量制御弁39によって流量制御された状態(遮断状態を含む)でブーム用方向切換弁34に供給されるようになっている。また、スティック用方向切換弁35には、スティック用メイン側供給油路32を経由する第二油圧ポンプ9からの圧油と、スティック用サブ側供給油路28を経由する第一油圧ポンプ8からの圧油とを供給できるようになっていると共に、第一油圧ポンプ8からの圧油は、スティック用サブ側供給油路28に配設のスティック用流量制御弁38によって流量制御された状態(遮断状態を含む)でスティック用方向切換弁35に供給されるようになっている。
【0017】
次に、前記旋回用、ブーム用、スティック用、バケット用の方向切換弁33~36について説明する。
旋回用方向切換弁33は、旋回モータ14に対する給排流量制御を行うと共に給排方向を切換えるスプール弁であって、左旋回側、右旋回側パイロットポート33a、33bを備えるとともに、これら左旋回側、右旋回側パイロットポート33a、33bには、コントローラ25からの制御信号に基づいてパイロット圧を出力する旋回用左旋回側、旋回用右旋回側電磁比例弁59a、59b(図3に図示)がそれぞれ接続されている。そして、旋回用方向切換弁33は、左旋回側、右旋回側の両パイロットポート33a、33bにパイロット圧が入力されていない状態では、旋回モータ14に対する給排制御を行わない中立位置Nに位置しているが、右旋回側または左旋回側パイロットポート33a、33bにパイロット圧が入力されることでスプールが移動して、旋回モータ14に対する給排制御を行う作動位置XまたはYに切換わるように構成されている。この場合に、作動位置XまたはYの旋回用方向切換弁33に形成される供給用弁路33cは、スプールの移動位置に応じて開口面積が増減するとともに、旋回モータ14への供給流量は、供給用弁路33cの開口面積によって増減制御されるようになっている。
ここで、前記旋回用方向切換弁33と旋回モータ14とは、一対の給排ライン40a、40bを介して接続されているが、これら給排ライン40a、40bにはそれぞれオーバーロードリリーフ弁41a、41bと負圧防止用のチェック弁42a、42bとが接続されていて、旋回停止時における衝撃や揺れ戻しを緩和できるようになっている。
【0018】
また、ブーム用方向切換弁34は、ブーシリンダ15に対する給排流量制御を行うと共に給排方向を切換えるスプール弁であって、伸長側、縮小側パイロットポート34a、34bを備えるとともに、これら伸長側、縮小側パイロットポート34a、34bには、コントローラ25からの制御信号に基づいてパイロット圧を出力するブーム用伸長側、ブーム用縮小側電磁比例弁60a、60b(図3に図示)が接続されている。そして、ブーム用方向切換弁34は、伸長側、縮小側の両パイロットポート34a、34bにパイロット圧が入力されていない状態では、ブームシリンダ15に対する給排制御を行わない中立位置Nに位置しているが、伸長側または縮小側パイロットポート34a、34bにパイロット圧が入力されることでスプールが移動して、ブームシリンダ15に対する給排制御を行う作動位置XまたはYに切換わるように構成されている。この場合に、作動位置XまたはYのブーム用方向切換弁34に形成される供給用弁路34cは、スプールの移動位置に応じて開口面積が増減するとともに、ブームシリンダ15への供給流量は、前述したブーム用流量制御弁39が閉じている場合には、ブーム用方向切換弁34の供給用弁路34cの開口面積によって増減制御される一方、ブーム用流量制御弁39が開いている場合には、該ブーム用流量制御弁39の開口面積およびブーム用方向切換弁34の供給用弁路34cの開口面積によって増減制御されるようになっている。
【0019】
また、スティック用方向切換弁35は、スティックシリンダ16に対する給排流量制御を行うと共に給排方向を切換えるスプール弁であって、伸長側、縮小側パイロットポート35a、35bを備えるとともに、これら伸長側、縮小側パイロットポート35a、35bには、コントローラ25からの制御信号に基づいてパイロット圧を出力するスティック用伸長側、スティック用縮小側電磁比例弁61a、61b(図3に図示)が接続されている。そして、スティック用方向切換弁35は、伸長側、縮小側の両パイロットポート35a、35bにパイロット圧が入力されていない状態では、スティックシリンダ16に対する給排制御を行わない中立位置Nに位置しているが、伸長側または縮小側パイロットポート35a、35bにパイロット圧が入力されることでスプールが移動して、スティックシリンダ16に対する給排制御を行う作動位置XまたはYに切換わるように構成されている。この場合に、作動位置XまたはYのスティック用方向切換弁35に形成される供給用弁路35cは、スプールの移動位置に応じて開口面積が増減するとともに、スティックシリンダ16への供給流量は、前述したスティック用流量制御弁38が閉じている場合には、スティック用方向切換弁35の供給用弁路35cの開口面積によって増減制御される一方、スティック用流量制御弁38が開いている場合には、該スティック用流量制御弁38の開口面積およびスティック用方向切換弁35の供給用弁路35cの開口面積によって増減制御されるようになっている。
【0020】
また、バケット用方向切換弁36は、バケットシリンダ17に対する給排流量制御を行うと共に給排方向を切換えるスプール弁であって、伸長側、縮小側パイロットポート36a、36bを備えるとともに、これら伸長側、縮小側パイロットポート36a、36bには、コントローラ25からの制御信号に基づいてパイロット圧を出力するバケット用伸長側、バケット用縮小側電磁比例弁62a、62b(図3に図示)がそれぞれ接続されている。そして、バケット用方向切換弁36は、伸長側、縮小側の両パイロットポート36a、36bにパイロット圧が入力されていない状態では、バケットシリンダ17に対する給排制御を行わない中立位置Nに位置しているが、伸長側または縮小側パイロットポート36a、36bにパイロット圧が入力されることでスプールが移動して、バケットシリンダ17に対する給排制御を行う作動位置XまたはYに切換わるように構成されている。この場合に、作動位置XまたはYのバケット用方向切換弁36に形成される供給用弁路36cは、スプールの移動位置に応じて開口面積が増減するとともに、バケットシリンダ17への供給流量は、供給用弁路36cの開口面積によって増減制御されるようになっている。
【0021】
一方、前記旋回モータ14には、斜面等の駐車時にフロント作業部4の重量等により上部旋回体3が旋回してしまうことを防止するための旋回駐車ブレーキ46が設けられている。該旋回駐車ブレーキ46は、油圧作動式のメカニカルブレーキであって、解除用油室46aに圧油が供給されていない状態では、スプリング46bの付勢力により旋回モータ14の出力軸14aに制動を付与する制動状態になっているが、解除用油室46aに圧油が供給されることで制動を解除する制動解除状態になるように構成されている。
【0022】
さらに、47はパイロットポンプ10から前記旋回駐車ブレーキ46の解除用油室46aに至るブレーキ用供給油路であって、該ブレーキ用供給油路47にはブレーキ切換弁26が配設されている。該ブレーキ切換弁26は、パイロット作動式の二位置切換弁であって、パイロットポート26aにパイロット圧が入力されていない場合には、解除用油室46aの油を油タンク11に流す中立位置Nに位置しているが、予め設定される第二設定圧P2以上のパイロット圧P(P≧P2)が入力されることで、パイロットポンプ10から供給される圧油を解除用油室46aに供給する作動位置Xに切換わる。そして、ブレーキ切換弁26が中立位置Nに位置している場合には、解除用油室46aに圧油供給されないため旋回駐車ブレーキ46は制動状態になっているが、ブレーキ切換弁26が作動位置Xに切換わって解除用油室46aに圧油供給されることで、旋回駐車ブレーキ46は制動解除状態になるように構成されている。
【0023】
ここで、前記ブレーキ切換弁26のパイロットポート26aには、前述したように兼用電磁比例弁23から出力されたパイロット圧が入力されるようになっているとともに、ブレーキ切換弁26を中立位置Nが作動位置Xに切換えるために必要な第二設定圧P2は、前記走行直進弁20を中立位置Nから作動位置Xに切換えるために必要な第一設定圧P1よりも低圧(P2<P1)に設定されている。しかして、兼用電磁比例弁23からパイロット圧Pが出力されていない場合には、ブレーキ切換弁26および走行直進弁20は共に中立位置Nに位置し、パイロット圧Pが第二設定圧P2以上且つ第一設定圧P1未満(P2≦P<P1)の場合には、ブレーキ切換弁26は作動位置Xに切換わるが走行直進弁20は中立位置Nに位置し、パイロット圧Pが第一設定圧P1以上(P≧P1)の場合には、ブレーキ切換弁26、走行直進弁20は共に作動位置Xに切換わるように構成されている。
尚、図2中、48は第一、第二油圧ポンプ8、9の最高吐出圧を設定するメインリリーフ弁、49はパイロットポンプ10の最高吐出圧を設定するパイロットリリーフ弁である。
【0024】
一方、前記コントローラ25(本発明の制御装置に相当する)は、図3のブロック図に示す如く、入力側に、左走行用操作具の操作方向および操作量を検出する左走行用操作検出手段51、右走行用操作具の操作方向および操作量を検出する右走行用操作検出手段52、旋回用操作具の操作方向および操作量を検出する旋回用操作検出手段53、ブーム用操作具の操作方向および操作量を検出するブーム用操作検出手段54、スティック用操作具の操作方向および操作量を検出するスティック用操作検出手段55、バケット用操作具の操作方向および操作量を検出するバケット用操作検出手段56、図示しないが第一、第二油圧ポンプ8、9の吐出圧を検出する圧力センサ等が接続され、出力側に、前記左右の走行用、旋回用、ブーム用、スティック用、バケット用方向切換弁21、22、33~36のパイロットポート21a、21b、22a、22b、33a~36a、33b~36bにパイロット圧をそれぞれ出力する左走行用前進側、後進側電磁比例弁57a、57b、右走行用前進側、後進側電磁比例弁58a、58b、旋回用左旋回側、右旋回側電磁比例弁59a、59b、ブーム用伸長側、縮小側電磁比例弁60a、60b、スティック用伸長側、縮小側電磁比例弁61a、61b、バケット用伸長側、縮小側電磁比例弁62a、62b、前記スティック用サブ側供給油路28に配設のスティック用流量制御弁38にパイロット圧を出力するスティック流量制御用電磁比例弁63、ブーム用サブ側供給油路30に配設のブーム用流量制御弁39にパイロット圧を出力するブーム流量制御用電磁比例弁64、前記走行直進弁20およびブレーキ切換弁26のパイロットポート20a、26aにパイロット圧を出力する兼用電磁比例弁23、図示しないが第一、第二油圧ポンプ8、9の容量可変手段等が接続されている。
そしてコントローラ25は、各操作検出手段51~56や圧力センサから入力される操作検出信号に基づいて、各油圧アクチュエータ(左右の走行モータ12、13、旋回モータ14、ブームシリンダ15、スティックシリンダ16、バケットシリンダ17)に対する油給排流量制御や、第一、第二油圧ポンプ8、9の吐出流量制御、走行直進弁20の切換え制御、旋回駐車ブレーキ46による旋回モータ14の制動制御等の各種制御を行うが、これら制御のうち走行直進弁20の切換え制御および旋回駐車ブレーキ46の制動制御について、以下に説明する。
【0025】
前記走行直進弁20は、前述したように、兼用電磁比例弁23から出力されるパイロット圧に応じて中立位置Nから作動位置Xに切換わり、また、旋回駐車ブレーキ46への圧油供給、停止を行うブレーキ切換弁26も、兼用電磁比例弁23から出力されるパイロット圧に応じて中立位置Nから作動位置Xに切換わる。つまり、コントローラ25は、兼用電磁比例弁23の出力パイロット圧を制御することで、走行直進弁20の切換え制御および旋回駐車ブレーキ46の制動制御を行う構成になっているため、以下、コントローラ25の行う兼用電磁比例弁23の制御について、図4のフローチャート図に基づいて説明する。
【0026】
前記兼用電磁比例弁23を制御する場合、コントローラ25は、まず、左右(左右両方)の走行用操作具が操作されているか否かを判断する(ステップS1)。
前記ステップS1の判断で「YES」、つまり左右の走行用操作具が操作されている場合には、続けて、旋回用、ブーム用、スティック用、バケット用操作具のうち少なくとも何れかの操作具が操作されているか否かを判断する(ステップS2)。
そして、前記ステップS2の判断で「YES」、つまり旋回用、ブーム用、スティック用、バケット用操作具のうち少なくとも何れかの操作具が操作された場合、コントローラ25は、兼用電磁比例弁23に対し、第一設定圧P1以上のパイロット圧P(P≧P1)を出力するように制御信号を出力する(ステップS3)。これにより、前述したように、走行直進弁20、ブレーキ切換弁26は共に作動位置Xに切換わる。
しかして、左右両方の走行用操作具が操作され(ステップS1の判断で「YES」)、且つ、旋回用、ブーム用、スティック用、バケット用操作具のうち少なくとも何れかの操作具が操作された(ステップS2の判断で「YES」)場合、つまり走行複合操作時には、走行直進弁20、ブレーキ切換弁26は共に作動位置Xに切換わるように制御される。そして、走行直進弁20が作動位置Xに切換わることで、第一油圧ポンプ8の吐出油を左右の走行モータ12、13のみで分配して両走行モータ12、13への供給流量を同等にできる一方、第二油圧ポンプ9の吐出油を旋回モータ14、ブームシリンダ15、スティックシリンダ16、バケットシリンダ17のうち操作具操作された何れかの油圧アクチュエータに供給できることになって、これら油圧アクチュエータへの供給流量を確保できる。また、ブレーキ切換弁26が作動位置Xに切換わることで、旋回駐車ブレーキ46の解除用油室46aに圧油供給されて旋回駐車ブレーキ46は旋回モータ14の制動を解除する制動解除状態になる。これにより、旋回駐車ブレーキ46は、旋回用操作具が操作された場合だけでなく、ブーム用、スティック用、バケット用操作具のうち何れかの操作具が操作された場合にも制動解除される。このように、旋回中だけでなく、旋回停止中であってもブームシリンダ15、スティックシリンダ16、バケットシリンダ17の作動中には旋回駐車ブレーキ46を制動解除することで、旋回駐車ブレーキ46を制動状態にしたままでブームシリンダ15、スティックシリンダ16、バケットシリンダ17を作動させた場合に旋回駐車ブレーキ46に過大な負荷がかかってしまう惧れを回避できる。
【0027】
一方、前記ステップS2の判断で「NO」、つまり旋回用、ブーム用、スティック用、バケット用操作具の何れの操作具も操作されていない場合には、コントローラ25は、兼用電磁比例弁23に対し、パイロット圧出力の制御信号を出力しない(ステップS4)。これにより、前述したように、走行直進弁20、ブレーキ切換弁26は共に中立位置Nに維持される。
しかして、左右の走行用操作具が操作され(ステップS1の判断で「YES」)、且つ、旋回用、ブーム用、スティック用、バケット用操作具の何れの操作具も操作されていない(ステップS2の判断で「NO」)場合、つまり走行単独操作時には、走行直進弁20、ブレーキ切換弁26は共に中立位置Nに位置するように制御される。そして、走行直進弁20が中立位置Nに位置することで、第一油圧ポンプ8の吐出油は左走行モータ12に、第二油圧ポンプ9の吐出油は右走行モータ13にそれぞれ供給されることになって、両走行モータ12、13への供給流量を同等にできる。また、ブレーキ切換弁26が中立位置Nに位置していることで、旋回駐車ブレーキ46の解除用油室46aには圧油供給されず旋回駐車ブレーキ46は旋回モータ14に制動を付与する制動状態になっている。これにより、走行単独操作時における上部旋回体3の旋回を確実に防止できる。
【0028】
また、前記ステップS1の判断で「NO」、つまり左右の走行用操作具が操作されていない場合(左右片方の走行用操作具が操作されている場合を含む)には、続けて、旋回用、ブーム用、スティック用、バケット用操作具のうち少なくとも何れかの操作具が操作されているか否かが判断される(ステップS5)。
そして、前記ステップS5の判断で「YES」、つまり旋回用、ブーム用、スティック用、バケット用操作具のうち少なくとも何れかの操作具が操作されている場合、コントローラ25は、兼用電磁比例弁23に対し、第二設定圧P2以上且つ第一設定圧P1未満のパイロット圧P(P2≦P<P1)を出力するように制御信号を出力する(ステップS6)。これにより、前述したように、走行直進弁20は中立位置Nに位置し、ブレーキ切換弁26は作動位置Xに切換わる。
しかして、左右の走行用操作具が操作されず(ステップS1の判断で「NO」)、且つ、旋回用、ブーム用、スティック用、バケット用操作具のうち少なくとも何れかの操作具が操作された(ステップS5の判断で「YES」)場合には、走行直進弁20は中立位置Nに位置し、ブレーキ切換弁26は作動位置Xに切換わるように制御される。そして、走行直進弁20が中立位置Nに位置することで、第一、第二油圧ポンプ8、9の吐出油はそれぞれ第一、第二ポンプラインA、Bを経由して操作具操作された油圧アクチュエータ(旋回モータ14、ブームシリンダ15、スティックシリンダ16、バケットシリンダ17)に供給されるようになっている。また、ブレーキ切換弁26が作動位置Xに切換わることで、旋回駐車ブレーキ46の解除用油室46aに圧油供給されて旋回駐車ブレーキ46は旋回モータ14の制動を解除する制動解除状態になる。これにより、前述したステップS3の場合と同様に、旋回中だけでなく、旋回停止中であってもブームシリンダ15、スティックシリンダ16、バケットシリンダ17の作動中には旋回駐車ブレーキ46が制動解除されることになって、旋回駐車ブレーキ46を制動状態にしたままでブームシリンダ15、スティックシリンダ16、バケットシリンダ17を作動させた場合に制動状態旋回駐車ブレーキ46に過大な負荷がかかってしまう惧れを回避できる。
【0029】
一方、前記ステップS5の判断で「NO」、つまり旋回用、ブーム用、スティック用、バケット用操作具の何れの操作具も操作されていない場合には、コントローラ25は、前記ステップS4の処理に移行する。該ステップS4では、前述したように、コントローラ25から兼用電磁比例弁23に対してパイロット圧出力の制御信号は出力されず、これにより、走行直進弁20、ブレーキ切換弁26は共に中立位置Nに維持される。
しかして、左右の走行用操作具が操作されず(ステップS1の判断で「NO」)、且つ、旋回用、ブーム用、スティック用、バケット用操作具の何れの操作具も操作されていない(ステップS5の判断で「NO」)場合には、走行直進弁20、ブレーキ切換弁26は共に中立位置Nに位置するように制御される。そして、ブレーキ切換弁26が中立位置Nに位置していることで、旋回駐車ブレーキ46は制動状態になっていて、斜面での駐車時等において上部旋回体3が旋回してしまうことを確実に防止することができる。
【0030】
ここで、図5(A)に、走行中(左右の走行用操作具が操作されている場合)に、旋回用、作業用操作具(ブーム用、スティック用、バケット用操作具)の何れも操作されていない状態から、旋回用、作業用操作具の何れかが操作された場合の、兼用電磁比例弁23からの出力パイロット圧の経時的変化を示す。該図5(A)に示されるように、走行中に、旋回用、作業用操作具の何れも操作されていない場合には、兼用電磁比例弁23からパイロット圧は出力されないが、旋回用、作業用操作具の何れかが操作されることで、第一設定圧P1以上のパイロット圧P(P≧P1)が出力されて、走行直進弁20、ブレーキ切換弁26は共に作動位置Xに切換わる(前述したステップS3の制御)。この場合に、コントローラ25は、兼用電磁比例弁23の出力パイロット圧Pを、走行直進弁20が中立位置Nから作動位置Xに切換わり始めるときのパイロット圧(クラッキング圧P1C)から徐々に上昇させて(モジュレーションしても良い)、完全に作動位置Xに切換わる第一設定圧P1に達するように制御するようになっている。
また、図5(B)に、走行停止中(左右の走行用操作具が操作されていない場合)に、旋回用、作業用操作具(ブーム用、スティック用、バケット用操作具)の何れも操作されていない状態から、旋回用、作業用操作具の何れかが操作された場合の、兼用電磁比例弁23からの出力パイロット圧の経時的変化を示す。該図5(B)に示されるように、走行停止中に、旋回用、作業用操作具の何れも操作されていない場合には、兼用電磁比例弁23からパイロット圧は出力されないが、旋回用、作業用操作具の何れかが操作されることで、第二設定圧P2以上且つ第一設定圧P1未満のパイロット圧P(P2≦P<P1)が出力されて、ブレーキ切換弁26が作動位置Xに切換わる(前述したステップS6の制御)。この場合に、兼用電磁比例弁23は、ブレーキ切換弁26が中立位置Nから作動位置Xに切換わり始めるときのパイロット圧(クラッキング圧P2C)よりも高圧でブレーキ切換弁26が完全に作動位置Xに切換わるための第二設定圧P2を、旋回用、作業用の操作具操作開始と同時的に出力するように制御され、これにより旋回用、作業用の操作具操作開始と同時的に旋回駐車ブレーキ26の制動解除を行えるようになっている。
【0031】
叙述の如く構成された本形態において、油圧ショベル1は、左右の走行装置を備えた下部走行体2と、該下部走行体2に旋回自在に支持される上部旋回体3と、該上部旋回体3に装着されるフロント作業部4とを備えるとともに、油圧ショベル1の油圧制御システムには、前記下部走行体2の左右の走行装置を駆動せしめる左右の走行モータ12、13、上部旋回体3を旋回せしめる旋回モータ14、フロント作業部4を駆動せしめる作業用油圧アクチュエータ15~17(ブームシリンダ15、スティックシリンダ16、バケットシリンダ17)を含む複数の油圧アクチュエータと、これら油圧アクチュエータの油圧供給源となる第一、第二油圧ポンプ8、9と、左右の走行モータ12、13、旋回モータ14、作業用油圧アクチュエータ15~17をそれぞれ駆動せしめるべく操作される左右の走行用操作具、旋回用操作具、作業用操作具(ブーム用操作具、スティック用操作具、バケット用操作具)と、第一、第二油圧ポンプ8、9と各油圧アクチュエータ用供給油路(左走行用供給油路18、右走行用供給油路19、第一ポンプラインA(該第一ポンプラインAに接続されるブーム用メイン側供給油路27、スティック用サブ側供給油路28、バケット用供給油路29)、第二ポンプラインB(該第二ポンプラインBに接続されるブーム用サブ側供給油路30、旋回用供給油路31、スティック用メイン側供給油路32))との接続を切換えるパイロット作動式の走行直進弁20と、上部旋回体3の旋回を制動する旋回駐車ブレーキ46と、該旋回駐車ブレーキ46に圧油を供給して制動状態から制動解除状態に切換えるパイロット作動式のブレーキ切換弁26とが設けられている。そして、前記走行直進弁20は、第一設定圧P1以上のパイロット圧が供給されることで、第一、第二油圧ポンプ8、9のうち何れか一方の油圧ポンプ(本実施の形態では第一油圧ポンプ8)の吐出油を左走行モータ12に供給し、他方の油圧ポンプ(本実施の形態では第二油圧ポンプ9)の吐出油を右走行モータ13に供給する中立位置Nから、何れか一方の油圧ポンプ8の吐出油を左右の走行モータ12、13に供給し、他方の油圧ポンプ9の吐出油を旋回モータ14、作業用油圧アクチュエータ15~17に供給する作動位置Xに切換わるように構成されており、また、前記ブレーキ切換弁26は、前記第一設定圧P1よりも低圧の第二設定圧P2(P2<P1)のパイロット圧が供給されることで、旋回駐車ブレーキ46を制動状態にする中立位置Nから、旋回駐車ブレーキ46を制動解除状態にする作動位置Xに切換わるように構成されている。このものにおいて、走行直進弁20およびブレーキ切換弁26は共通の兼用電磁比例弁23からパイロット圧が供給されるとともに、該兼用電磁比例弁23を制御するコントローラ25が設けられている。そして、該コントローラ25は、兼用電磁比例弁23を、左右の走行用操作具、旋回用操作具、作業用操作具の何れも操作されない場合、および左右の走行用操作具が操作され、且つ、旋回用操作具および作業用操作具の何れの操作具も操作されない場合にはパイロット圧を出力せず、左右の走行用操作具が操作され、且つ、旋回用操作具および作業用操作具の少なくとも一つの操作具が操作された場合には、第一設定圧P1以上のパイロット圧を出力し、左右の走行用操作具が操作されず、且つ、旋回用操作具および作業用操作具の少なくとも一つの操作具が操作された場合には、第二設定圧P2以上且つ第一設定圧P1未満のパイロット圧を出力するように制御することになる。
【0032】
しかして、左右の走行用操作具、旋回用操作具、作業用操作具の何れも操作されない場合には、兼用電磁比例弁23からパイロット圧が出力されないことになって、走行直進弁20およびブレーキ切換弁26は共に中立位置Nに位置することになる。そして、ブレーキ切換弁26が中立位置Nに位置していることで旋回駐車ブレーキ46は制動状態に維持される。
また、左右の走行用操作具が操作され、且つ、旋回用操作具および作業用操作具の何れの操作具も操作されない場合、つまり走行単独操作時も兼用電磁比例弁23からパイロット圧が出力されないことになって、走行直進弁20およびブレーキ切換弁26は共に中立位置Nに位置することになる。そして、走行直進弁20が中立位置Nに位置していることで、第一油圧ポンプ8の吐出油は左走行モータ12に、第二油圧ポンプ9の吐出油は右走行モータ13にそれぞれ供給されることになって、両走行モータ12、13への供給流量を同等にできる。また、ブレーキ切換弁26が中立位置Nに位置していることで旋回駐車ブレーキ46は制動状態に維持される。
一方、左右の走行用操作具が操作され、且つ、旋回用操作具および作業用操作具の少なくとも一つの操作具が操作された場合、つまり走行複合操作時には、兼用電磁比例弁23から第一設定圧P1以上のパイロット圧が出力されることになって、走行直進弁20およびブレーキ切換弁26は共に作動位置Xに切換わることになる。そして、走行直進弁20が作動位置Xに切換わることで、一方の油圧ポンプ8の吐出油を左右の走行モータ12、13のみで分配して両走行モータ12、13への供給流量を同等にできるとともに、他方の油圧ポンプ9の吐出油を操作具操作された旋回モータ14、作業用油圧アクチュエータ15~17に供給できることになって、これら油圧アクチュエータ14、15~17への供給流量を確保できる。また、ブレーキ切換弁26が作動位置Xに切換わることで旋回駐車ブレーキ46は制動解除状態になり、これにより、旋回中だけでなく、旋回停止中であっても作業用油圧アクチュエータ15~17の作動中には旋回駐車ブレーキ46を制動解除できることになる。
さらに、左右の走行用操作具が操作されず、且つ、旋回用操作具および作業用操作具の少なくとも一つの操作具が操作された場合には、兼用電磁比例弁23から第二設定圧P2以上且つ第一設定圧P1未満のパイロット圧が出力されることになって、走行直進弁20は中立位置Nに位置し、ブレーキ切換弁26は作動位置Xに切換わることになる。そして、走行直進弁20が中立位置Nに位置することで、第一、第二油圧ポンプ8、9の吐出油はそれぞれ第一、第二ポンプラインA、Bを介して操作具操作された旋回モータ14、作業用油圧アクチュエータ15~17に供給されることになる。また、ブレーキ切換弁26が作動位置Xに切換わることで旋回駐車ブレーキ46は制動解除状態になり、これにより、旋回中だけでなく、旋回停止中であっても作業用油圧アクチュエータ15~17の作動中には旋回駐車ブレーキ46を制動解除できることになる。
【0033】
このように、本実施の形態にあっては、走行直進弁20を中立位置Nから作動位置Xに切換えるためのパイロット圧出力用電磁弁である兼用電磁比例弁23を、ブレーキ切換弁26を中立位置Nから作動位置Xに切換えるためのパイロット圧出力用電磁弁としても用いており、これにより、ブレーキ切換弁26専用のパイロット圧出力用電磁弁を必要とせず、部品の兼用化が図れることになるが、この場合に、ブレーキ切換弁26の切換えに必要なパイロット圧である第二設定圧P2は、走行直進弁20の切換えに必要なパイロット圧である第一設定圧P1よりも低圧(P2<P1)に設定されているため、左右の走行用、旋回用、作業用(ブーム用、スティック用、バケット用)操作具の操作に応じて、兼用電磁比例弁23からの出力パイロット圧を第二設定圧P2以上且つ第一設定圧P1未満となるように制御することで、走行直進弁20を中立位置Nに維持したままでブレーキ切換弁26のみを作動位置Xに切換えることができる一方、兼用電磁比例弁23からの出力パイロット圧を第一設定圧P1以上となるように制御することで、走行直進弁20およびブレーキ切換弁26を作動位置Xに切換えることができる。
尚、左右の走行用操作具が操作され、且つ、旋回用操作具および作業用操作具の少なくとも一つの操作具が操作された場合、つまり走行複合操作時には、走行直進弁20を作動位置Xに切換える必要があるとともに、旋回駐車ブレーキ46を制動解除状態にするためにブレーキ切換弁26を作動位置Xに切換える必要があるが、兼用電磁比例弁23からの出力パイロット圧を第一設定圧P1以上となるように制御することで、走行直進弁20およびブレーキ切換弁26を同時に作動位置Xに切換えできることになる。
しかして、兼用電磁比例弁23からの出力パイロット圧の制御のみで、別途専用の部品や複雑な回路を設けることなく、旋回中だけでなく、旋回停止中であっても作業用油圧アクチュエータ15~17の作動中には旋回駐車ブレーキ46を制動解除状態にできることになって、部品点数の削減、回路の単純化に貢献できる。
【0034】
さらにこのものにおいて、ブレーキ切換弁26と兼用電磁比例弁23を共用する走行直進弁20は、第一、第二油圧ポンプ8、9と各油圧アクチュエータ用供給油路(左走行用供給油路18、右走行用供給油路19、ブーム用メイン側供給油路27、スティック用サブ側供給油路28、バケット用供給油路29、ブーム用サブ側供給油路30、旋回用供給油路31、スティック用メイン側供給油路32)との接続を切換えるためのものであって、油圧アクチュエータに対する給排流量制御を行う方向切換弁や流量制御弁ではないから、これら方向切換弁や流量制御弁にパイロット圧を出力する電磁比例弁とブレーキ切換弁にパイロット圧を出力する電磁比例弁とを共用する場合のように、ブレーキ切換弁を切換えるために出力されたパイロット圧が油圧アクチュエータへの給排流量制御に影響してしまう惧れを回避できる。
【0035】
尚、本発明は前記実施の形態に限定されないことは勿論であって、前記実施の形態では、ブームシリンダ、スティックシリンダへの供給流量制御を、メイン側供給油路に配設されるブーム用方向切換弁、スティック用方向切換弁と、サブ側供給油路に配設されるブーム用流量制御弁、スティック用流量制御弁とを用いて行う構成になっているが、このような構成の回路に限定されることなく、例えば流量制御弁を設けず、ブーム用方向切換弁、スティック用方向切換弁のみで流量制御を行う回路であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、油圧ショベル等の作業機械の油圧制御システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 油圧ショベル
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 フロント作業部
8 第一油圧ポンプ
9 第二油圧ポンプ
12 左走行モータ
13 右走行モータ
14 旋回モータ
15 ブームシリンダ
16 スティックシリンダ
17 バケットシリンダ
20 走行直進弁
23 兼用電磁比例弁
25 コントローラ
26 ブレーキ切換弁
46 旋回駐車ブレーキ
P1 第一設定圧
P2 第二設定圧
図1
図2
図3
図4
図5