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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011857
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/44 20060101AFI20240118BHJP
   C11D 17/04 20060101ALI20240118BHJP
   C11D 1/04 20060101ALI20240118BHJP
   C11D 1/90 20060101ALI20240118BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20240118BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
A61K8/44
C11D17/04
C11D1/04
C11D1/90
C11D3/20
A61K8/02
A61Q19/10
A61K8/36
A61K8/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114143
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】502439647
【氏名又は名称】株式会社ダリヤ
(72)【発明者】
【氏名】梅田 明宏
【テーマコード(参考)】
4C083
4H003
【Fターム(参考)】
4C083AA112
4C083AB032
4C083AC111
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC241
4C083AC242
4C083AC532
4C083AC711
4C083AC712
4C083AD532
4C083CC23
4C083DD08
4C083EE01
4C083EE03
4C083EE07
4H003AB03
4H003AD04
4H003BA12
4H003BA21
4H003DA02
4H003DB01
4H003DC02
4H003EA21
4H003EB04
4H003EB05
4H003EB06
4H003ED02
4H003ED28
4H003ED29
4H003FA04
4H003FA16
4H003FA17
4H003FA26
4H003FA28
4H003FA30
(57)【要約】
【課題】洗浄力が良好で、低温時の泡質および低温時の安定性が良好なノンエアゾールフォーマー容器から泡状に吐出させて使用される洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】ノンエアゾールフォーマー容器から泡状に吐出させて使用される洗浄剤組成物であって、(A)ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩およびパルミチン酸塩をいずれも含む高級脂肪酸塩、(B)脱塩処理されたラウリン酸アミドプロピルベタイン、(C)多価アルコールを含有し、前記(A)成分の含有量が0.4~8質量%であり、前記(B)成分の含有量が1.5~16質量%であり、前記(C)成分の含有量が3~50質量%であることを特徴とする洗浄剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノンエアゾールフォーマー容器から泡状に吐出させて使用される洗浄剤組成物であって、
(A)ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩およびパルミチン酸塩をいずれも含む高級脂肪酸塩、
(B)脱塩処理されたラウリン酸アミドプロピルベタイン、
(C)多価アルコール
を含有し、前記(A)成分の含有量が0.4~8質量%であり、前記(B)成分の含有量が1.5~16質量%であり、前記(C)成分の含有量が3~50質量%であることを特徴とする洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄剤組成物に関する。さらに詳しくは、洗浄力が良好で、低温時の泡質および低温時の安定性が良好なノンエアゾールフォーマー容器から泡状に吐出させて使用される洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗浄剤組成物の洗浄成分としては、洗浄力と泡質を両立させる為に高級脂肪酸塩が広く用いられている。また、高級脂肪酸塩を含有した洗浄剤組成物は、一般的に手や泡立てネット等により泡立てて使用される。しかし、近年では、泡立てがより簡易である点から、ノンエアゾールフォーマー容器に充填された洗浄剤組成物がより好まれて用いられるようになっている。
【0003】
ノンエアゾールフォーマー容器に充填された洗浄剤組成物としては、例えば、特許文献1では泡質および吐出性に優れるノンエアゾールフォーマー容器に高級脂肪酸塩を含有した洗浄料が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-090488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で提案されている高級脂肪酸塩を含有した洗浄料では、洗浄料をノンエアゾールフォーマー容器に充填し、低温条件下にて保管した場合、粘度上昇による泡質の低下や、洗浄料中に高級脂肪酸塩の析出が生じやすく、より一層の技術向上が求められていた。
【0006】
したがって本発明は、洗浄力が良好で、低温時の泡質および低温時の安定性が良好なノンエアゾールフォーマー容器から泡状に吐出させて使用される洗浄剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討した結果、ノンエアゾールフォーマー容器から泡状に吐出させて使用される洗浄剤組成物であって、(A)ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩およびパルミチン酸塩をいずれも含む高級脂肪酸塩、(B)脱塩処理されたラウリン酸アミドプロピルベタイン、(C)多価アルコールを含有し、前記(A)成分の含有量が0.4~8質量%であり、前記(B)成分の含有量が1.5~16質量%であり、前記(C)成分の含有量が3~50質量%であることを特徴とする洗浄剤組成物が上記の課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、洗浄力が良好で、低温時の泡質および低温時の安定性が良好なノンエアゾールフォーマー容器から泡状に吐出させて使用される洗浄剤組成物を提供する。
【0009】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明において含有量を示す単位は、特に明記しない限りすべて質量%である。
【0011】
本発明において低温時とは、-5℃のことを指す。
【0012】
本発明は洗浄力および低温時の泡質の観点から、(A)ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩およびパルミチン酸塩をいずれも含む高級脂肪酸塩を含有する。
【0013】
本発明で用いられる前記(A)成分の高級脂肪酸塩を構成する塩としては、特に限定されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、低級アルカノールアミン塩等が挙げられる。前記(A)成分の高級脂肪酸塩を構成する塩は低温時の安定性の観点から、ナトリウム塩、カリウム塩が好ましく、カリウム塩がより好ましい。
【0014】
本発明で用いられる前記(A)成分の含有量は、0.4~8%、好ましくは1~7%、より好ましくは2~6%がよい。前記(A)成分の含有量が0.4%未満の場合、洗浄力および低温時の泡質が悪くなる。前記(A)成分の含有量が8%を超える場合、低温時の安定性が悪くなる。
【0015】
本発明は洗浄力の観点から、(B)脱塩処理されたラウリン酸アミドプロピルベタインを含有する。
【0016】
本発明において脱塩処理されたラウリン酸アミドプロピルベタインとは、イオン交換樹脂法、逆浸透法、膜濾過法、電気透析法等により、ラウリン酸アミドプロピルベタインの製造工程における塩化ナトリウム等の塩濃度の含有量を1%以下に抑制したものである。脱塩処理されたラウリン酸アミドプロピルベタインを含有することにより、本発明の洗浄剤組成物中の塩濃度を低減することができる。
【0017】
本発明に用いられる脱塩処理されたラウリン酸アミドプロピルベタインは、脱塩処理をしていないラウリン酸アミドプロピルベタインに比べて、低温時における洗浄剤組成物の粘度上昇を抑制することができる。
【0018】
本発明は脱塩処理されたラウリン酸アミドプロピルベタインを用いることで、低温時における洗浄剤組成物の粘度上昇を抑制することができ、低温時における洗浄剤組成物の吐出性が容易になり、吐出時の泡質を良好に保つことができる。
【0019】
本発明で用いられる前記(B)成分の具体的な例としては、ソフタゾリン LPB-R(川研ファインケミカル株式会社製)等が挙げられる。
【0020】
本発明で用いられる前記(B)成分の含有量は、1.5~16%、好ましくは2~14%、より好ましくは4~12%がよい。前記(B)成分の含有量が1.5%未満の場合、洗浄力が悪くなる。前記(B)成分の含有量が16%を超える場合、洗浄剤組成物の粘度が高くなり低温時の泡質が悪くなる。
【0021】
本発明は低温時の安定性の観点から、(C)多価アルコールを含有する。
【0022】
本発明で用いられる前記(C)成分としては、特に限定されないが、例えば、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビット等が挙げられ、これらから選ばれる少なくとも一種以上を含有することができる。中でも、低温時の泡質および低温時の安定性の観点から、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコールが好ましく、グリセリンがより好ましい。
【0023】
本発明で用いられる前記(C)成分の含有量は、3~50%、好ましくは5~40%、より好ましくは10~30%がよい。前記(C)成分の含有量が3%未満の場合、低温時の安定性が悪くなる。前記(C)成分の含有量が50%を超える場合、洗浄剤組成物の粘度が高くなり低温時の泡質が悪くなる。
【0024】
本発明の洗浄剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、前記成分の他に通常化粧品に用いられる成分として、前記(A)および前記(B)成分以外の界面活性剤、油性成分、高分子化合物、pH調整剤、金属封鎖剤、紫外線吸収剤、香料、酸化防止剤、防腐剤、アルコール類、保湿剤、清涼剤、増粘剤、ビタミン類、植物抽出物、タンパク質加水分解物、着色剤等を含有することが可能であり、これらは1種以上含有してもよい。
【0025】
本発明における洗浄剤組成物の-5℃条件下における粘度は、低温時の泡質の観点から、好ましくは1~200mPa・s、より好ましくは1~150mPa・s、さらに好ましくは1~80mPa・sがよい。粘度が200mPa・sを超える場合、低温時の泡質が悪くなる恐れがある。
【0026】
本発明における洗浄剤組成物の-5℃条件下における粘度は、常法にて調製して得られた洗浄剤組成物を140g容量のサンプル瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に120g充填し、-5℃で7日間静置し調温した後に、B型粘度計(モデル:デジタル粘度計TVB-10M、東機産業株式会社製)により、2号ローターにて1分間、回転速度60rpmの条件下で測定したものである。
【0027】
本発明における洗浄剤組成物の20℃条件下における粘度は、泡質の観点から、好ましくは1~200mPa・s、より好ましくは1~150mPa・s、さらに好ましくは1~80mPa・sがよい。粘度が200mPa・sを超える場合、泡質が悪くなる恐れがある。
【0028】
本発明における洗浄剤組成物の20℃条件下における粘度は、常法にて調製して得られた洗浄剤組成物を140g容量のサンプル瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に120g充填し、20℃で7日間静置し調温した後に、B型粘度計(モデル:デジタル粘度計TVB-10M、東機産業株式会社製)により、2号ローターにて1分間、回転速度60rpmの条件下で測定したものである。
【0029】
本発明における洗浄剤組成物の20℃条件下におけるpHは、特に限定されないが、8~10であることが好ましい。
【0030】
本発明における洗浄剤組成物の20℃条件下におけるpHは、常法にて調製して得られた洗浄剤組成物を140g容量のサンプル瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に120g充填し、20℃で1日間静置し調温した後に、ガラス電極式水素イオン濃度指示計(F-71、株式会社堀場製作所製)にて測定したものである。
【0031】
本発明に用いられる洗浄剤組成物は、ノンエアゾールフォーマー容器に充填し、泡状に吐出して使用される。すなわち、ノンエアゾールフォーマー容器に充填して、ノンエアゾールフォーマー型洗浄剤製品とすることができる。また、本発明の洗浄剤組成物は、パウチ容器、ポリ容器などの詰め替え用容器に充填した製品とし、前記詰め替え用容器からノンエアゾールフォーマー容器に移し替えて使用する形態とすることもできる。
【0032】
本発明の洗浄剤組成物を泡状に吐出するノンエアゾールフォーマー容器としては、洗浄剤組成物と空気を混合して泡状にする種類のノンエアゾールフォーマー容器が挙げられ、さらに具体的には、ノズル部分を押すことにより泡を吐出できるポンプフォーマー型や、ボトルをスクイズすることにより泡を吐出できるスクイズフォーマー型が挙げられる。一定量の泡を吐出できるといった観点から、ポンプフォーマー型が好ましい。
【0033】
本発明の洗浄剤組成物を泡状に吐出するノンエアゾールフォーマー容器としては、特に限定されないが、泡質の観点から、好ましくは吐出孔内部に100メッシュ~300メッシュの2枚以上の多孔質膜を有するものであり、より好ましくは200メッシュと255メッシュの2枚の多孔質膜を有するものである。
【0034】
本発明に用いられるノンエアゾールフォーマー容器の具体的な例としては、F2タイプ255/200(株式会社大和製罐製)等が挙げられる。
【0035】
本発明の洗浄剤組成物は、ポンプフォーマー容器に収容された毛髪や皮膚の洗浄剤として洗顔料、ボディソープ、ハンドソープ、シャンプーなどの形態で好適に提供される。
【実施例0036】
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。なお、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0037】
本明細書に示す評価試験において、洗浄剤組成物に含まれる成分およびその含有量を種々変更しながら実施した。各成分の含有量を示す単位はすべて質量%であり、これを常法にて調製した。
【0038】
本発明に示す評価試験において、「洗浄力」、「低温時の泡質」および「低温時の安定性」について評価した。
【0039】
<洗浄力>
専門評価パネラー10名が、内腕にモデル皮脂としてラノリンを0.1g塗布し、さらに洗浄剤組成物を1.0g塗布した後にぬるま湯で洗い流した。その際の洗浄力を以下評価基準に従って平均評価点を求め、以下判定基準に従って洗浄力を評価した。
-評価基準-
5:洗浄力が非常に良いと感じた。
4:洗浄力が良いと感じた。
3:洗浄力がやや良いと感じた。
2:洗浄力がやや悪いと感じた。
1:洗浄力が悪いと感じた。
-判定基準-
◎:平均評価点が4.0以上
〇:平均評価点が3.2~3.9
△:平均評価点が2.5~3.1
×:平均評価点が2.4以下
【0040】
<低温時の泡質>
ノンエアゾールフォーマー容器に各洗浄剤組成物を充填し、-5℃に設定した室内で7日間保存した。専門評価パネラー10名が、上記室内にて洗浄剤組成物1.0gをノンエアゾールフォーマー容器から吐出させた。吐出した泡を以下評価基準に従って平均評価点を求め、以下判定基準に従って低温時の泡質を評価した。なお、ノンエアゾールフォーマー容器はポンプタイプを使用し、ポンプはF2タイプ255/200(株式会社大和製罐製)を用いた。
【0041】
-評価基準-
5:泡質が非常に良いと感じた。
4:泡質が良いと感じた。
3:泡質がやや良いと感じた。
2:泡質がやや悪いと感じた。
1:泡質が悪いと感じた。
-判定基準-
◎:平均評価点が4.0点以上5.0点以下
○:平均評価点が3.0点以上4.0点未満
△:平均評価点が2.0点以上3.0点未満
×:平均評価点が2.0点未満
【0042】
<低温時の安定性>
専門評価パネラー1名がサンプル瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に120g充填し、―5℃条件下で静置した後、各洗浄剤組成物の外観を目視で確認し、以下判定基準に従って低温時の安定性を評価した。
-判定基準-
◎:30日以上透明液状を維持。
○:20日以上30日未満まで透明液状を維持。
△:10日以上20日未満まで透明液状を維持。
×:10日未満で白濁や析出物が見られた。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
表1~表3に示す実施例1~実施例21より、「洗浄力」、「低温時の泡質」および「低温時の安定性」に関してそれぞれ良好な結果が得られた。
【0047】
以下に当該洗浄剤組成物の処方例を挙げる。実施例22に示す洗浄剤組成物より、「洗浄力」、「低温時の泡質」および「低温時の安定性」に関してそれぞれ良好な結果が得られた。
【0048】
<実施例22>
(洗浄剤組成物)
成分 含有量(%)
(A)ラウリン酸カリウム 2.00
(A)ミリスチン酸カリウム 1.00
(A)パルミチン酸カリウム 1.00
(B)ラウリン酸アミドプロピルベタイン 8.10
(C)グリセリン 17.80
(C)1,3-ブチレングリコール 2.10
フェノキシエタノール 0.30
グリセリンモノ2-エチルヘキシルエーテル 0.20
エデト酸二ナトリウム 0.10
アロエベラ葉エキス 0.01
オウゴン根エキス 0.01
カミツレ花エキス 0.01
グリチルリチン酸ジカリウム 0.02
香料 0.70
水 66.65
合計 100.00
・粘度(-5℃):17.1mPa・s
・pH(20℃):8.6
【産業上の利用可能性】
【0049】
本願発明によれば、洗浄剤組成物に関して、洗浄力が良好で、低温時の泡質および低温時の安定性が良好なノンエアゾールフォーマー容器から泡状に吐出させて使用される洗浄剤組成物を提供する。