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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118577
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】給湯装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 15/196 20220101AFI20240826BHJP
   F24H 15/10 20220101ALI20240826BHJP
   F24H 15/269 20220101ALI20240826BHJP
   F24H 15/335 20220101ALI20240826BHJP
   F24H 15/421 20220101ALI20240826BHJP
【FI】
F24H15/196 301G
F24H15/10
F24H15/269
F24H15/335
F24H15/421
F24H15/196 301U
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024934
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 芳弘
【テーマコード(参考)】
3L024
【Fターム(参考)】
3L024CC01
3L024DD27
3L024GG28
3L024GG32
3L024HH31
(57)【要約】
【課題】浴槽のお湯張り機能を具備しない給湯装置の追焚運転の始動性を改善する。
【解決手段】給湯回路110は、熱源120からの熱によって加熱された温水を供給する。追焚循環回路150は、浴槽水を循環させるための循環ポンプ155を含んで構成されて、熱源120による熱を用いて浴槽10の浴槽水を循環加熱する。給湯回路110は、浴槽10に近接して配設された給湯栓30Bを給湯先に含む一方で、追焚循環回路150とは接続されないように構成される。給湯回路110からの基準を超える温水の供給が有ったものと判定されると、循環ポンプ155が作動される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温水を供給する給湯回路と、
浴槽の浴槽水を循環加熱するための追焚循環回路と、
前記給湯回路及び前記追焚循環回路を制御する制御回路とを備え、
前記給湯回路は、前記浴槽に近接して配設された給湯栓を給湯先に含む一方で、前記追焚循環回路とは接続されないように構成され、
前記追焚循環回路は、
前記浴槽水を前記追焚循環回路に循環させるための循環ポンプを含み、
前記制御回路は、前記給湯回路からの基準を超える温水の供給が有ったものと判定すると前記循環ポンプを作動する、給湯装置。
【請求項2】
前記追焚循環回路は、前記追焚循環回路での湯水循環を検出する循環検出器をさらに含み、
前記制御回路は、前記循環ポンプの作動後に前記循環検出器によって前記追焚循環回路の湯水循環が検出されると、前記循環ポンプを停止する、請求項1記載の給湯装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記循環ポンプを作動してから予め定められた第1の時間が経過すると、前記循環ポンプを停止する、請求項1または2に記載の給湯装置。
【請求項4】
前記追焚循環回路は、前記追焚循環回路での湯水循環を検出する循環検出器をさらに含み、
前記制御回路は、前記循環ポンプを予め定められた第1の時間作動しても前記循環検出器によって前記湯水循環が検出されないときには前記循環ポンプを停止し、予め定められた第2の時間の経過後に前記循環ポンプを再起動する、請求項1記載の給湯装置。
【請求項5】
前記給湯装置は、前記給湯回路に流量センサが配設されていない給湯装置であり、
前記給湯回路は、燃料をバーナで燃焼させることによって湯水を加熱して前記温水を生成するように構成され、
前記制御回路は、前記バーナの燃焼時間、及び、燃焼回数の少なくともいずれかに基づいて、前記給湯回路からの前記基準を超える温水の供給が有ったものと判定する、請求項1記載の給湯装置。
【請求項6】
前記追焚循環回路は、前記追焚循環回路での湯水循環を検出する循環検出器をさらに含み、
前記制御回路は、前記循環ポンプの作動時に前記循環検出器によって前記湯水循環が検出されないときに第1の値に設定される一方で、前記湯水循環が検出されると第2の値に設定されるフラグを記憶するとともに、予め定められた条件が成立したときに前記循環ポンプを作動させる強制循環運転を実行する様に構成され、
前記制御回路は、前記給湯回路からの前記基準を超える温水の供給が有ったものと判定されたときに、前記フラグが前記第1の値であれば前記循環ポンプを作動させる一方で、前記フラグが前記第2の値であれば前記循環ポンプを作動しない、請求項1記載の給湯装置。
【請求項7】
前記強制循環運転は、前記給湯装置の凍結予防運転によって起動される、請求項6記載の給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は給湯装置に関し、より特定的には、追焚運転を行う給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
浴槽水の追焚運転のために、循環ポンプの作動によって、熱源と湯水との熱交換を行うための熱交換器を通流するような浴槽水の循環経路(以下、「追焚循環経路」とも称する)を形成することか可能な給湯装置の構成が知られている。
【0003】
一例として、特開平3-260549号公報(特許文献1)には、リモコンのスイッチ操作によって追焚運転が指示された場合に、循環ポンプを作動させても一定時間に亘って水流が検知されないときに、追焚循環経路が含まれる給湯経路を用いて、浴槽への自動給湯運転を実行することによってエアー抜きを実行する、風呂装置の制御が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3-260549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
給湯装置の一態様として、浴槽のお湯張り機能を具備しない、すなわち、浴槽への給湯経路(以下、「注湯経路」とも称する)を有さない一方で、追焚機能を備える機種が存在する。当該機種では、浴槽へのお湯張りは、浴槽近傍に配設された給湯栓への給湯によって行われることになるが、この際には、追焚循環経路に湯水は流れない。
【0006】
したがって、上記機種の給湯装置では、特許文献1に記載されたように、浴槽への自動給湯運転の起動による追焚循環経路のエアー抜きを行うことができない。
【0007】
また、特許文献1の風呂装置では、ユーザ操作による追焚運転の起動後に、エアー抜きの要否判断に一定時間を要した後、自動給湯運転によるエアー抜きが開始されることになるので、実際に追焚が開始されるまでのタイムラグが大きくなり、ユーザ利便性及び商品性の低下が懸念される。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、浴槽のお湯張り機能を具備しない給湯装置の追焚運転の始動性を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある局面によれば、給湯装置は、温水を供給する給湯回路と、追焚循環回路と、制御回路とを備える。追焚循環回路は、浴槽の浴槽水を循環加熱する。制御回路は、給湯回路及び追焚循環回路を制御する。給湯回路は、浴槽に近接して配設された給湯栓を給湯先に含む一方で、追焚循環回路とは接続されないように構成される。追焚循環回路は、浴槽水を追焚循環回路に循環させるための循環ポンプを含む。制御回路は、給湯回路からの基準を超える温水の供給が有ったものと判定すると前記循環ポンプを作動する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、浴槽のお湯張り機能を具備しない給湯装置の追焚運転の始動性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態に係る給湯装置の概略ブロック図である。
図2】本実施の形態に係る給湯装置の代表例として示されるセミ貯湯式の給湯装置の構成例を説明する概略図である。
図3図2に示された給湯装置におけるバーナ燃焼制御を説明する概念図である。
図4図3に示された判定温度を説明する概念図である。
図5図2に示された給湯装置における追焚予備運転制御の第1の例を説明するフローチャートである。
図6】追焚予備運転制御の第2の例を説明するフローチャートである。
図7】追焚予備運転制御の第3の例を説明するフローチャートである。
図8】強制循環運転の制御処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお以下では、図中の同一又は相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
【0013】
図1は、本実施の形態に係る給湯装置100の概略ブロック図である。
【0014】
図1に示される様に、給湯装置100は、給湯回路110と、追焚循環回路150とを備える。給湯回路110は、熱源120からの熱を利用して、入水を加熱することで、温水を供給する。
【0015】
熱源120は、代表的には、ガス又は石油等の燃料燃焼熱を発生するバーナによって構成することができる。あるいは、熱源120は、燃料電池等による発電時の排熱、又は、ヒートポンプによる熱を発生するものであってもよい。
【0016】
給湯回路110の給湯先は、複数の給湯栓30を含み、給湯栓30の1つは、浴槽に近接して配設された給湯栓30Bである。給湯回路110には浴槽10への直接の給湯経路である注湯経路が設けられておらず、給湯装置100は、いわゆる「ふろ湯張り機能」を有していない機種である。浴槽10の湯張りは、給湯栓30Bを用いて、給湯回路110から供給された温水によって実行することができる。
【0017】
一方で、給湯装置100は追焚機能を有しており、浴槽10内の浴槽水を循環加熱するための追焚循環回路150を備えている。追焚循環回路150は、循環ポンプ155を内蔵しており、循環ポンプ155の作動に応じて、浴槽10に配設されたアダプタ20から吸込んだ浴槽水を、熱源120による熱を利用して加熱した後に、アダプタ20から浴槽10へ吐出する、図中に点線で示された追焚循環経路を、追焚循環回路150内に形成するように構成される。なお、図1の例では、給湯回路110及び追焚循環回路150の両方が共通の熱源120からの熱を利用する構成が示されるが、給湯回路110及び追焚循環回路150のそれぞれに個別の熱源が配置されてもよい。
【0018】
給湯装置100では、給湯回路110が追焚循環回路150と接続されないように構成されているので、浴槽10のお湯張りが給湯栓30Bから行われる際に、循環ポンプ155を含む追焚循環経路には通水されない。この結果、浴槽10のお湯張り後に、循環ポンプ155及び追焚循環経路に水が存在していない状態で追焚運転が起動されると、循環ポンプ155が吸水して正常な追焚循環経路が形成されて実際に追焚運転が開始されるまでに、循環ポンプ155のスペックによっては、長時間(例えば、数分程度)を要する可能性がある。この結果、追焚運転の始動性が低下することが懸念される。
【0019】
これに対して、ふろ湯張り機能を有する給湯装置では、一般的に、浴槽への注湯経路は、循環ポンプが停止された状態下での追焚循環経路の配管を含んで形成される。したがって、浴槽への湯張りによって、同時に追焚循環経路を構成する循環ポンプ及び配管等も通水される。このため、湯張り完了後に、循環ポンプ155及び追焚循環経路に水が存在していない状態から追焚運転が起動されることで、実際に追焚運転が開始されるまでに長時間を要する事象が発生する可能性は低い。
【0020】
また、給湯装置100では、注湯経路が存在しないため、浴槽10への給湯を直接的に検知することが困難である。すなわち、給湯栓30Bを用いた浴槽10へのお湯張りについては、給湯回路110の動作状態値に基づいて、給湯回路110からの基準を超える温水の供給が有ったものと判定することにより、間接的に検知することが必要となる。
【0021】
通常、浴槽10への湯はり運転では、通常の給湯栓30からの給湯と比較すると、給湯回路110からの給湯時間及び給湯量が長くなる。したがって、瞬間加熱式の給湯装置では、給湯回路110に流量センサ101が配置されるので、流量センサ101及び/又は給湯温度を測定する温度センサ102の検出値を動作状態値として、給湯回路110からの基準を超える温水の供給が有ったものと判定することで、浴槽10へのお湯張りを間接的に検知することができる。
【0022】
あるいは、給湯の際には熱源120による加熱が行われるので、熱源120の動作に係る情報(例えば、発生熱量、動作時間、動作回数等)を動作状態値として、給湯回路110からの基準を超える温水の供給が有ったものと判定することが可能である。
【0023】
特に、このあとで本実施の形態に係る給湯装置の例として説明するセミ貯湯式(あるいは、単に、貯湯式)の給湯装置では、貯湯タンクからの給湯に応じて、給湯量分が貯湯タンク内に自動的に入水される構成となるため流量センサ101が配置されないが、このような機種であっても、熱源120の動作状態値を用いて、給湯回路110からの基準を超える温水の供給が有ったものと判定することができる。
【0024】
図2は、本実施の形態に係る給湯装置の代表例として示されるセミ貯湯式の給湯装置の構成例を説明する概略図である。
【0025】
図2を参照して、給湯装置100は、図1で説明したように、給湯回路110、熱源120、及び、追焚循環回路150と、コントローラ200とを備える。給湯回路110は、入水端103に設けられるフィルタ111及び逆止弁112と、入水配管113と、貯湯タンク114と、熱交換器115と、出湯配管116を含む。
【0026】
入水配管113は、入水端103及び貯湯タンク114(底部)の間を接続する。出湯配管116は、貯湯タンク114(上部)と、図1に示された給湯栓30,30Bに接続される給湯端104との間を接続する。
【0027】
熱源120は、石油を燃料とするバーナ120Xによって構成される。バーナ120Xは、石油(オイル)を供給するための電磁ポンプ122及びストレーナ123と、点火トランス124と、燃焼用空気を供給するファン125と、点火のための電極棒126と、燃料を噴出するノズル127とを含む。ノズル127から噴出された燃料が燃焼室128で燃焼され、燃焼排気は、排気口129から外部へ排出される。バーナ120Xでの燃料(石油)の燃焼熱によって加熱された高温水によって、熱交換器115を介して貯湯タンク114の湯水が加熱されることで温水が生成される。
【0028】
図1に示された給湯栓30,30Bが開栓されると、水道水圧による入水端からの入水に応じて、貯湯タンク114内の湯水が給湯栓30,30Bへ送出されることで、温水を供給する給湯が実行される。また、貯湯タンク114には、貯湯タンク114内の湯水の温度を検出するための温度センサ201~203が配置される。一方で、給湯回路110に流量センサは配置されていない。さらに、給湯装置100の雰囲気温度(大気温度)を検出する温度センサ205がさらに配置されてもよい。また、給湯装置100の内部には、凍結予防ヒータ105が各所に配置される。各凍結予防ヒータ105は、作動時に通電によって発熱するよう構成される。
【0029】
追焚循環回路150は、配管151~153と、熱交換器115に配設されたコイル配管154と、循環ポンプ155と、水流スイッチ156と、配管151に設置された温度センサ157とを含む。
【0030】
配管151は、浴槽10に設けられたアダプタ20の吸入口と循環ポンプ155の間を接続する。配管152は、循環ポンプ155とコイル配管154の第一端との間を接続する。配管153は、コイル配管154の第二端とアダプタ20の吐出口との間を接続する。
【0031】
浴槽10内の水面がアダプタ20の吸入口よりも高いとき、循環ポンプ155を作動することで、アダプタ20(吸入口)から、配管151、循環ポンプ155、配管152、コイル配管154、及び、配管153を経由して、アダプタ20(吐出口)への、図1中に点線で示した追焚循環経路に相当する、浴槽水の循環経路が形成される。
【0032】
追焚循環経路の形成時に、熱源120を作動、即ち、バーナ120Xでの燃料燃焼熱を発生させることで、熱交換器115に配設されたコイル配管154を通過する浴槽水を加熱することができる。これにより、追焚機能が実現される。
【0033】
コントローラ200は、AC100V電源を供給されて、給湯装置100の動作を制御する。なお、コントローラ200には、図示しない電源基板が搭載されており、AC100Vから図示しないマイクロコンピュータを始めとする各種機器の電源電圧についても生成することができる。
【0034】
コントローラ200には、リモコン210に入力されたユーザ指示、及び、上述した各種センサによる検出値が入力される。当該マイクロコンピュータが、予め格納されたプログラムに従う制御処理を実行することによって、ユーザ指示に従って給湯装置100が動作するように、給湯回路110及び追焚循環回路150が制御される。
【0035】
リモコン210に入力されるユーザ指示は、例えば、給湯運転モードのオンオフ、追焚運転のオンオフ、及び、給湯温度のレベル設定を含む。図2中の給湯回路110、熱源120(バーナ120X)及び循環ポンプ155の動作が、コントローラ200によって制御されることで、ユーザ指示に従った給湯装置100の運転が実現される。
【0036】
図3及び図4を用いて、バーナ120Xの燃焼制御を説明する。
【0037】
図3に示される様に、バーナ120Xの燃焼のオンオフによって、貯湯タンク114内の湯水の検出温度であるタンク水温Ttnkが制御される。タンク水温Ttnkは、温度センサ201~203の検出値から求めることができるが、例えば、最も下面側の温度センサ201の検出温度に従って算出される。
【0038】
バーナ120Xは、燃焼オフ状態において、タンク水温Ttnkが判定温度T1よりも低下すると、燃焼を開始して燃焼オン状態に遷移するように制御される。一方で、バーナ120Xは、燃焼オン状態において、タンク水温Ttnkが判定温度T2よりも上昇すると、燃焼を停止して燃焼オフ状態に遷移するように制御される。なお、判定温度T2は判定温度T1よりも高く設定される。
【0039】
図4に示されるように、判定温度T1,T2は、ユーザ指示に含まれる給湯温度レベルに従って異なる値に設定される。図4の例では、給湯温度レベルは、LV1(最も低温側)~LVn(最も高温側)の予め定められたn段階(n:2以上の整数)に設定可能である。
【0040】
給湯温度レベルが高温側に設定されるほど、判定温度T1,T2は高温に設定される。図4の例では、給湯温度レベルがi(i:1~nの整数)のときの判定温度T1をT1(LVi)と表記すると、T1(LV1)<T1(LV2)<…<T1(LVn)に設定される。同様に、給湯温度レベルがiのときの判定温度T2をT2(LVi)と表記すると、T2(LV1)<T2(LV2)<…<T2(LVn)に設定される。
【0041】
再び図2を参照して、コントローラ200がバーナ120Xの燃焼を制御することにより、貯湯タンク114内の湯水の温度が制御される。上述のとおり、給湯量に対応して貯湯タンク114から温水が送出されるのに対応して、貯湯タンク114には低温の水が導入されるので、浴槽10の湯張りのために給湯栓30Bが開放されている場合には、バーナ120Xの燃焼時間又は燃焼回数(頻度)が増加することが理解される。
【0042】
コントローラ200は、リモコン210へのユーザ指示によって追焚運転が起動されると、循環ポンプ155を作動させる。そして、水流スイッチ156がオンされて、追焚循環回路150(追焚循環経路)での湯水循環が検出されると、バーナ120Xの燃焼をオンすることで、熱交換器115を通過する浴槽水を加熱する。温度センサ157によって検出される浴槽水温度が、追焚運転の終了判定温度よりも上昇すると、循環ポンプ155の停止、及び、バーナ120Xの燃焼オフによって、追焚運転は終了される。
【0043】
図2に示された給湯装置100では、図1でも説明した様に、給湯回路110は追焚循環回路150とは接続されておらず、給湯回路110から給湯栓30Bを用いて浴槽10にお湯張りする際に、循環ポンプ155を含む追焚循環経路には通水されないことが理解される。
【0044】
このため、お湯張り後に追焚運転が起動された際に、追焚循環経路、特に、配管151から循環ポンプ155に水が存在していない状態である可能性があり、このようなケースでは、実際に追焚運転が開始されるまでに長時間を要することが懸念される。したがって、本実施の形態に係る給湯装置100では、以下に説明する追焚予備運転が導入される。
【0045】
図5は、給湯装置100における追焚予備運転制御の第1の例を説明するフローチャートである。図5に示された制御処理は、コントローラ200が予め格納されたプログラムを実行することで実現できる。
【0046】
図5を参照して、コントローラ200は、ステップ(以下、単に「S」と表記する)100により、給湯回路110からの一定基準を超える量の湯水の供給が有ったか否かを判定する。図2の給湯装置100では、給湯回路110に流量センサが設けられていないので、図3及び図4で説明した燃焼制御による熱源120の動作状態値、具体的には、一定時間内での燃焼時間、及び/又は、燃焼回数(オフ→オンの遷移回数)が予め定められた基準値を超えることで、S100をYES判定とすることができる。
【0047】
浴槽10のお湯張りのためには、熱源120による燃料燃焼が比較的長い時間行われることが想定される。したがって、例えば、一定周期で当該周期内での燃焼時間の長さを監視し、燃焼時間長が予め定められた基準値を超える周期が、所定周期数連続すると、S100をYES判定とすることができる。また、浴槽10のお湯張りによって、連続して貯湯タンク114から温水が送出される際には、タンク水温が低下することで、一旦タンク水温上昇して燃焼がオフされた後に、早期に燃焼が再びオンされることが想定される。このため、予め定められた時間間隔内での燃焼回数が所定の基準回数を超えることで、S100をYES判定とすることができる。
【0048】
なお、図2の構成とは異なり、給湯回路110に流量センサが配置された給湯装置では、流量センサの検出値を用いて、例えば、一定以上の流量が予め定められた時間を超えて継続したときに、S100をYES判定とすることができる。
【0049】
コントローラ200は、S100がYES判定とされると、S110に処理を進めて、循環ポンプ155を作動する。これにより、給湯回路110からの一定基準を超える量の湯水の供給が有ったと判定されるときには、追焚運転がユーザによって起動されていなくても、循環ポンプ155が起動される。
【0050】
コントローラ200は、S110による循環ポンプ155の作動後、S120により、水流スイッチ156の出力に基づき、追焚循環回路150(追焚循環経路)での湯水循環が検出されたか否かを判定する。即ち、水流スイッチ156は「循環検出器」の一実施例に対応する。そして、湯水循環が検出されると(S120のYES判定時)、S150に処理を進めて、循環ポンプ155を停止する。これにより、追焚予備運転は終了されて、再び、S100の判定が実行される状態となる。
【0051】
コントローラ200は、S130では、循環ポンプ155が起動されてからの作動時間が予め定められた時間TT1以上か否かを判定する。作動時間がTT1に達しない間は、S130がNO判定とされて、処理はS110に戻されて循環ポンプ155の作動が継続される。一方で、作動時間がTT1に達すると、S130がYES判定とされて、処理はS150に進められる。これにより、循環ポンプ155は、起動からTT1が経過すると停止される。
【0052】
図5の例では、コントローラ200は、S120のNO判定時にS130を実行しているので、循環ポンプ155の作動後に、湯水循環が検出された時点で循環ポンプ155は停止され、かつ、湯水循環が検出されない場合にも、循環ポンプ155は作動時間がTT1に達すると停止される。あるいは、S120の処理を行わずに、S130の作動時間の監視のみで、循環ポンプ155の停止を制御することも可能である。
【0053】
本実施の形態に係る給湯装置によれば、図5に示された追焚予備運転を行うことで、給湯回路110が浴槽10へのお湯張りが想定される動作を行ったときに、追焚運転の起動有無によらず循環ポンプ155を作動することで、給湯回路110と接続されていない追焚循環回路150(追焚循環経路)に湯水を導入することができる。これにより、浴槽10への湯張り後に追焚運転が起動された際に、追焚循環経路(特に、配管151から循環ポンプ155)に水が存在していない状態となることを回避して、追焚運転の始動性を改善することができる。これにより、ユーザ利便性及び商品性の向上を図ることができる。
【0054】
図6には、追焚予備運転制御の第2の例を説明するフローチャートが示される。図6の制御処理では、図5のS100~S150に加えて、S210~S240の処理がさらに実行される。
【0055】
図6に示されるように、コントローラ200は、S100がYES判定とされると、S210により、循環ポンプ155の作動回数のカウント値CNTを初期化(CNT=0)するとともに、S110によって循環ポンプ155を作動する。
【0056】
さらに、コントローラ200は、S130のYES判定時、即ち、循環ポンプ155の作動時間がTT1に達しても湯水循環が検出されないときには、S220によって、カウント値CNTに1を加算するとともに、S230により、加算後のカウント値CNTを予め定められた上限回数Ntと比較する。
【0057】
このとき、カウント値CNTが上限回数Ntに達していなければ(S230のNO判定時)、S240により、予め定められた時間TT2だけ待機した後に、処理はS110に戻される。一方で、カウント値CNTが上限回数Ntに達すると(S230のYES判定時)、S150に処理が進められて、循環ポンプ155が停止されて、追焚予備運転は終了される。
【0058】
図6に示された第2の制御処理によれば、循環ポンプ155の作動後に水流スイッチ156によって湯水循環が検出されない場合に、一定時間(TT2)待機後に、循環ポンプ155を再び作動させて、追焚循環回路150(追焚循環経路)での湯水循環に再トライすることができる。これにより、浴槽水位に対して、S100のYES判定による循環ポンプ155の起動タイミングが早過ぎた場合にも、追焚循環回路150の湯水循環が可能となる。また、再トライの回数に上限値(Nt)を設けることで、循環ポンプ155の過度な作動を回避することができる。
【0059】
図7には、追焚予備運転制御の第3の例を説明するフローチャートが示される。図7の制御処理では、図5のS100~S150に加えて、S250,S260の処理がさらに実行される。図7に示された第3の例では、追焚循環回路150(追焚循環経路)の過去の湯水循環実績を示すフラグFLGの導入により、追焚予備運転の起動条件が追加される。
【0060】
給湯装置100では、追焚運転とは別に、循環ポンプ155を強制的に作動させる運転モード(以下、「強制循環運転」)が存在することがある。例えば、強制循環運転は、極低温時の凍結予防運転において起動される。凍結予防運転では、図2の構成において、各凍結予防ヒータ105が作動するとともに、循環ポンプ155の作動によって浴槽10に残された浴槽水を追焚循環回路150(追焚循環経路)に循環させることで、追焚循環回路150の凍結予防が図られる。
【0061】
図8は、強制循環運転の制御処理を説明するフローチャートである。
【0062】
図8を参照して、コントローラ200は、S300では、強制循環運転の開始条件が成立したか否かを判定する。例えば、強制循環運転が凍結予防運転によって起動されるときには、温度センサ205(図2)の検出値が予め定められた第1判定温度よりも低下すると、開始条件が成立したと判定される。
【0063】
コントローラ200は、開始条件が成立すると(S300のYES判定時)、S310により、循環ポンプ155を作動する。S320では、循環ポンプ155の作動後に、水流スイッチ156によって湯水循環が検出されるか否かが監視され、湯水循環が検出されると、S320がYES判定とされて、S330により、フラグFLGが「0」に設定される。一方で、湯水循環が検出されないときには、S320がNO判定とされて、S340により、フラグFLGが「1」に設定される。なお、循環ポンプ155が長期間(例えば、1週間程度)停止のままとされた場合には、フラグFLGは「1(湯水循環非検出)」に初期化されてもよい。
【0064】
コントローラ200は、S350では、循環ポンプ155の停止条件が成立したか否かを判定する。強制循環運転が凍結予防運転によって起動されるときには、温度センサ205の検出値が予め定められた第2判定温度よりも上昇すると、凍結予防運転の終了と判定して、循環ポンプ155の終了条件が成立したと判定される。
【0065】
また、凍結予防運転中に、循環ポンプ155を作動しても、湯水循環が検出されない(FLG=「1」)状態が一定時間継続する場合には、アダプタ20よりも浴槽水位が低い(浴槽水がない状態も含む)ことが想定されるので、この場合にも、循環ポンプ155の終了条件が成立したと判定される。この場合は、凍結予防運転そのものは継続されてもよく、凍結予防ヒータ105と循環ポンプ155とは切り離して制御される。
【0066】
コントローラ200は、強制循環運転の終了条件が成立すると、S360により循環ポンプ155を停止する。これにより、強制循環運転における湯水循環有無の実績は、フラグFLGの値として記憶される。
【0067】
再び図7を参照して、追焚予備運転制御の第3の例では、コントローラ200は、S100がYES判定とされると、S250により、フラグFLGの値を確認する。そして、FLG=「1」のときに、S110によって循環ポンプ155を作動する。
【0068】
さらに、コントローラ200は、S250のYES判定時(FLG=「1」)には、図5のS110~S150による追焚予備運転を実行する。さらに、S120により湯水循環が検出された場合(S120のYES判定時)には、S260により、フラグFLGが「1」から「0」に変化した後に、S150によって循環ポンプ155が停止されて、追焚予備運転が終了される。
【0069】
図7に示された第3の制御処理によれば、過去の循環ポンプ155の作動機会における湯水循環有無の検出結果(水流スイッチ156)を利用して、追焚予備運転による循環ポンプ155の作動要否を判断することができる。これにより、循環ポンプ155が無用に作動されることを回避して、消費電力の削減、及び、機器の長寿命化を図ることができる。
【0070】
また、図7では、図5に示された第1の例の制御処理に対してフラグFLGを適用するS250,S260を追加する例を説明したが、図6に示された第2の例の制御処理に対してS250,S260を追加する制御処理とすることも可能である。
【0071】
さらに、図2では、給湯装置100として、給湯回路110に流量センサが配置されないセミ貯湯式(貯湯式)の石油給湯器を例示したが、上述の通り、熱源120による熱の発生態様は、石油の燃焼に限定されるものではない。さらに、給湯回路110に流量センサが配置される構成であっても、浴槽10に対する注湯経路を具備しておらず(即ち、ふろ湯張り機能を有しておらず)、かつ、浴槽10のお湯張り時に通水されない追焚循環回路150を具備する構成であれば、同様の追焚予備運転を適用することができる。
【0072】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0073】
10 浴槽、20 アダプタ、30,30B 給湯栓、100 給湯装置、101 流量センサ、102,157,201~203,205 温度センサ、103 入水端、104 給湯端、105 凍結予防ヒータ、110 給湯回路、111 フィルタ、112 逆止弁、113 入水配管、114 貯湯タンク、115 熱交換器、116 出湯配管、120 熱源、120X バーナ、122 電磁ポンプ、123 ストレーナ、124 点火トランス、125 ファン、126 電極棒、127 ノズル、128 燃焼室、129 排気口、150 追焚循環回路、151~153 配管、154 コイル配管、155 循環ポンプ、156 水流スイッチ、200 コントローラ、210 リモコン、CNT カウント値、FLG フラグ、T1,T2 判定温度、TT1,TT2 所定時間、Ttnk タンク水温。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8