(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118579
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】ワークの把持機構
(51)【国際特許分類】
B25J 15/00 20060101AFI20240826BHJP
【FI】
B25J15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024936
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大地
(72)【発明者】
【氏名】角田 旭
(72)【発明者】
【氏名】武居 直行
(72)【発明者】
【氏名】新田 連
(72)【発明者】
【氏名】アウリア キルミ リズギ
(72)【発明者】
【氏名】倉田 涼平
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707DS01
3C707ES03
3C707ET08
3C707EU09
3C707EU13
3C707EV02
3C707HS14
3C707MT03
(57)【要約】
【課題】シンプルな構造でワークを適切に把持することができるワークの把持機構を提供する。
【解決手段】ワークの把持機構は、それぞれ長さ方向の一端部に把持部を有する一対の把持棒と、一対の把持棒を移動可能に収容する溝部を有する収容部材と、溝部に収容された一対の把持棒を長さ方向と平行な方向に移動させる直動式の駆動部と、を備える。一対の把持棒及び収容部材は、駆動部による一対の把持棒の移動動作を把持部の開閉動作に変換する傾斜案内機構を有し、把持部の開閉動作によってワークを把持する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ長さ方向の一端部に把持部を有する一対の把持棒と、
前記一対の把持棒を移動可能に収容する溝部を有する収容部材と、
前記溝部に収容された前記一対の把持棒を前記長さ方向と平行な方向に移動させる直動式の駆動部と、を備え、
前記一対の把持棒及び前記収容部材は、前記駆動部による前記一対の把持棒の移動動作を前記把持部の開閉動作に変換する傾斜案内機構を有し、前記把持部の開閉動作によってワークを把持する
ワークの把持機構。
【請求項2】
前記一対の把持棒は、前記把持部と、前記長さ方向に沿う棒状部と、前記把持部と前記棒状部とを連結するとともに、前記長さ方向に対して傾斜する傾斜部と、を有し、
前記収容部材の前記溝部は、前記一対の把持棒の前記棒状部を収容する収容溝と、前記収容溝から二股状に分岐し、前記一対の把持棒の前記傾斜部が嵌合する傾斜案内溝と、を有し、
前記傾斜案内機構は、前記傾斜部と、前記傾斜案内溝とによって構成されている
請求項1に記載のワークの把持機構。
【請求項3】
前記一対の把持棒の前記把持部は、前記駆動部によって前記一対の把持棒を第1の方向に移動させたときに開き動作し、前記駆動部によって前記一対の把持棒を前記第1の方向と反対方向である第2の方向に移動させたときに閉じ動作する
請求項1に記載のワークの把持機構。
【請求項4】
前記一対の把持棒の前記把持部は、前記把持部の閉じ動作によってワークを把持する内側把持面と、前記把持部の開き動作によってワークを把持する外側把持面と、を有する
請求項1に記載のワークの把持機構。
【請求項5】
前記駆動部は、エアーシリンダによって構成されている
請求項1に記載のワークの把持機構。
【請求項6】
前記把持部と反対側で前記一対の把持棒と前記駆動部とを連結する連結部を備え、
前記連結部は、前記一対の把持棒を支持する支持部材と、前記支持部材と前記駆動部との間に介在し、前記駆動部の駆動力を前記支持部材を介して前記一対の把持棒に伝達する中間部材と、を有する
請求項1に記載のワークの把持機構。
【請求項7】
前記支持部材は、前記一対の把持棒を前記把持部の開閉方向に移動自在に支持する
請求項6に記載のワークの把持機構。
【請求項8】
前記一対の把持棒は、前記収容部材内で前記把持部の開閉を許容するように曲がることが可能な弾性体によって構成されている
請求項1に記載のワークの把持機構。
【請求項9】
前記一対の把持棒は、金属によって構成されている
請求項1に記載のワークの把持機構。
【請求項10】
前記一対の把持棒は、樹脂によって構成されている
請求項1に記載のワークの把持機構。
【請求項11】
前記把持棒の長さ方向と直交する基準平面に対して前記傾斜部及び前記傾斜案内溝の傾斜角度が、65度以上70度以下である
請求項2に記載のワークの把持機構。
【請求項12】
前記把持部の最大開き幅は、ワークの幅よりも小さい
請求項1に記載のワークの把持機構。
【請求項13】
前記溝部に前記一対の把持棒が収容された前記収容部材が挿入される筒状部材と、
前記筒状部材の内部を真空引きするための真空機器と、
をさらに備え、
前記真空機器によって前記筒状部材の内部を真空引きすることにより、前記筒状部材の端部にワークを真空吸着可能に構成されている
請求項1に記載のワークの把持機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの把持機構に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークの把持機構として、例えば、ロボットハンドが知られている。ロボットハンドは、互いの指先部が接離するよう動作する複数の指機構を備え、指先部の相互間隔が縮小することによってワークを把持する機構である。特許文献1には「複数の指機構の少なくとも1つが、基台に支持される基端部を中心にして回転駆動される原動節と、基端部が基台に揺動可能に連結された従動節と、基端部が原動節の先端部に揺動可能に連結されて中央部が従動節の先端部に揺動可能に連結された中間節と、を備えるチェビシェフリンク機構によって構成され、該中間節の先端部に指先部が設けられることを特徴とするロボットハンド」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたロボットハンドは、指先部を有する複数の指機構を、原動節、従動節及び中間節を備えるチェビシェフリンク機構によって構成しているため、構造が複雑であるという欠点があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、シンプルな構造でワークを適切に把持することができるワークの把持機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るワークの把持機構は、それぞれ長さ方向の一端部に把持部を有する一対の把持棒と、一対の把持棒を移動可能に収容する溝部を有する収容部材と、溝部に収容された一対の把持棒を長さ方向と平行な方向に移動させる直動式の駆動部と、を備える。一対の把持棒及び収容部材は、駆動部による一対の把持棒の移動動作を把持部の開閉動作に変換する傾斜案内機構を有し、把持部の開閉動作によってワークを把持する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シンプルな構造でワークを適切に把持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るワークの把持機構の構成を示す正面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るワークの把持機構の構成を示す分解斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るワークの把持機構において、把持部を閉じた状態を示す正面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係るワークの把持機構の動作を説明するための図(その1)である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係るワークの把持機構の動作を説明するための図(その2)である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係るワークの把持機構の動作を説明するための図(その3)である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係るワークの把持機構の動作を説明するための図(その4)である。
【
図8】傾斜部及び傾斜案内溝の傾斜角度を説明するための図である。
【
図9】保持力と傾斜角度の関係について実験した結果を示す図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係るワークの把持機構の構成を示す分解斜視図である。
【
図11】本発明の第2実施形態に係るワークの把持機構の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能又は構成を有する要素については、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るワークの把持機構の構成を示す正面図である。
図2は、本発明の第1実施形態に係るワークの把持機構の構成を示す分解斜視図である。
【0011】
図1及び
図2に示すように、ワークの把持機構(以下、「ワーク把持機構」ともいう。)10は、一対の把持棒12と、収容部材14と、駆動部16と、連結部18と、を備えている。ワーク把持機構10は、例えば、ロボットアームなどに取り付けて使用される。
以降の説明では、ワーク把持機構10の各部の形状や位置関係などを明確にするために、互いに直交する3つの方向をX方向、Y方向及びZ方向と定義する。
【0012】
一対の把持棒12は、Y方向から見て左右対称に配置されている。一対の把持棒12は、金属によって構成してもよいし、樹脂によって構成してもよい。
【0013】
一対の把持棒12は、互いに同じ構造を有している。具体的には、把持棒12は、把持部20と、棒状部21と、傾斜部22と、基端部23と、を一体に有している。把持部20は、把持棒12の長さ方向の一端部に配置されている。把持棒12の長さ方向は、Z方向と平行な方向である。また、把持部20は、棒状部21や傾斜部22に比べてX方向の寸法(肉厚)が大きく設定されている。
【0014】
把持部20は、内側把持面20aと、外側把持面20bと、を有している。内側把持面20aと外側把持面20bは、X方向で互いに反対向きに配置されている。具体的には、内側把持面20aは内向きに配置され、外側把持面20bは外向きに配置されている。内側把持面20aは、後述する把持部20の閉じ動作によってワークを把持するための面であり、外側把持面20bは、後述する把持部20の開き動作によってワークを把持するための面である。
【0015】
棒状部21は、Z方向に沿って棒状に形成されている。棒状部21をXY平面と平行に断面した場合の断面形状は長方形である。
【0016】
傾斜部22は、把持部20と棒状部21とを連結する部分である。傾斜部22は、把持棒12の長さ方向(Z方向)に対して所定の角度で傾斜している。
【0017】
基端部23は、把持棒12の長さ方向において、把持部20と反対側の端部に配置されている。基端部23は、棒状部21と直角をなすように、X方向と平行に配置されている。
【0018】
収容部材14は、収容本体部25と、フランジ部26(
図2参照)と、を一体に有するレール状の部材である。収容本体部25には、溝部27が形成されている。溝部27は、一対の把持棒12を移動可能に収容する部分である。ただし、把持棒12の把持部20は、溝部27に収容されずに、収容部材14(収容本体部25)の一端部からZ1方向に突出する状態で配置される。
【0019】
図2に示すように、フランジ部26は板状に形成されている。また、フランジ部26は、Z方向から見て四角形に形成されている。フランジ部26の中央部には逃げ孔26aが形成されている。逃げ孔26aは、一対の把持棒12との干渉(接触)を避けるための孔である。一対の把持棒12の棒状部21は、この逃げ孔26aに挿通されている。フランジ部26の四隅には取付孔26bが形成されている。取付孔26bは、連結スタッド44にフランジ部26を取り付けるための孔である。
【0020】
なお、本実施形態においては、フランジ部26を収容部材14と一体に構成しているが、フランジ部26を収容部材14と別体に構成してもよい。
【0021】
収容本体部25の溝部27は、収容溝28と、傾斜案内溝29と、を有している。収容本体部25は、X方向で対向する一対の側壁部25aを有し、収容溝28は、一対の側壁部25aの間に形成されている。また、収容本体部25は、Y方向から見て三角形をなす凸部25bを有し、傾斜案内溝29は、凸部25bの斜面に沿って二股状に分かれている。収容溝28は、一対の把持棒12の棒状部21を収容する溝である。傾斜案内溝29は、収容溝28から二股状に分岐している。そして、一方の傾斜案内溝29に一方の把持棒12の傾斜部22が嵌合し、他方の傾斜案内溝29に他方の把持棒12の傾斜部22が嵌合している。これにより、傾斜部22は、傾斜案内溝29に案内されて斜めに移動する。
【0022】
傾斜案内機構30は、一対の把持棒12が有する傾斜部22と、収容部材14が有する傾斜案内溝29とによって構成されている。傾斜案内機構30は、駆動部16による一対の把持棒12の移動動作を把持部20の開閉動作に変換する機構である。
【0023】
駆動部16は、上述のように溝部27に収容された一対の把持棒12をZ方向に移動させる直動式の駆動部である。駆動部16は、エアーシリンダによって構成されている。さらに詳述すると、駆動部16は、中空のシリンダ本体35と、ピストン36と、ピストンロッド37と、バネ38と、を有する単動式のエアーシリンダによって構成されている。シリンダ本体35には、給気及び排気のためのポート35aが形成されている。ピストン36は、シリンダ本体35の内部に移動自在に収納されている。ピストンロッド37は、ピストン36に連結され、ピストン36と一体に移動する。バネ38は、ピストン36を一方向(
図1の下方向)に付勢している。
【0024】
上記構成からなるエアーシリンダにおいて、シリンダ本体35のポート35aを介してシリンダ本体35内に圧縮空気を供給(給気)すると、
図3に示すように、バネ38の付勢力に抗してピストン36が
図3の上方向に移動する。また、シリンダ本体35のポート35aを介してシリンダ本体35内の圧縮空気を排出(排気)すると、
図1に示すように、バネ38の付勢力によってピストン36が
図1の下方向に移動する。なお、駆動部16を構成するエアーシリンダは、単動式に限らず、複動式でもよい。また、ポート35aとバネ38の位置関係は、ピストン36を間に挟んで上下逆であってもよい。
【0025】
連結部18は、把持部20と反対側で一対の把持棒12と駆動部16とを連結する部分である。連結部18は、支持部材40と、中間部材42と、4つの連結スタッド44(
図2参照)と、を有している。支持部材40は、一対の把持棒12を把持部20の開閉方向に移動自在に支持する。把持部20の開閉方向は、X方向と平行な方向である。支持部材40は、例えば図示はしないが、中間部材42に固定されるガイドレールと、このガイドレールに案内されて移動する2つのテーブルとを備えるリニアガイドによって構成される。その場合、ガイドレールは、X方向と平行な向きに配置される。また、一方のテーブルには、一方の把持棒12の基端部23が取り付けられ、他方のテーブルには、他方の把持棒12の基端部23が取り付けられる。
【0026】
中間部材42は、支持部材40と駆動部16との間に配置されている。具体的には、中間部材42には、駆動部16を構成するエアーシリンダのピストンロッド37が連結されており、その連結部分と反対側で、中間部材42に支持部材40が取り付けられている。中間部材42は、駆動部16の駆動力を支持部材40を介して一対の把持棒12に伝達する。
【0027】
4つの連結スタッド44は、フランジ部26とシリンダ本体35とを連結するための部材である。各々の連結スタッド44は、例えばボルトを用いて、フランジ部26とシリンダ本体35に固定される。
【0028】
続いて、本発明の第1実施形態に係るワーク把持機構10の動作について説明する。
まず、シリンダ本体35のポート35aを介してシリンダ本体35内に圧縮空気を供給すると、ピストン36とピストンロッド37は、圧縮空気による押圧力によってz2方向に移動する。また、連結部18と一対の把持棒12は、ピストン36と同じ方向に同じ量だけ移動する。このとき、各々の把持棒12は、駆動部16の駆動力によってz2方向に移動しながら、傾斜案内溝29に案内されてX方向にも移動する。これにより、一対の把持部20は、X方向で互いに接近する方向に移動する。その結果、一対の把持部20は、
図3に示すように閉じた状態になる。以上が、把持部20の閉じ動作に関する説明である。
【0029】
これに対し、シリンダ本体35のポート35aを介してシリンダ本体35内の圧縮空気を排出すると、ピストン36とピストンロッド37は、バネ38の付勢力によってz1方向に移動する。また、連結部18と一対の把持棒12は、ピストン36と同じ方向に同じ量だけ移動する。このとき、各々の把持棒12は、駆動部16の駆動力によってz1方向に移動しながら、傾斜案内溝29に案内されてX方向にも移動する。これにより、一対の把持部20は、X方向で互いに離間する方向に移動する。その結果、一対の把持部20は、
図1に示すように開いた状態になる。以上が、把持部20の開き動作に関する説明である。
【0030】
このようにワーク把持機構10においては、駆動部16によって一対の把持棒12をz1方向に移動させたときに把持部20が開き動作し、駆動部16によって一対の把持棒12をz2方向に移動させたときに把持部20が閉じ動作する。つまり、駆動部16による一対の把持棒12の移動動作が、傾斜部22と傾斜案内溝29との嵌合により、把持部20の開閉動作に変換される。なお、本実施形態において、支持部材40は、一対の把持棒12を把持部20の開閉方向に移動自在に支持しているが、本発明はこれに限らず、例えば、一対の把持棒12は、収容部材14内で把持部20の開閉を許容するように曲がることが可能な弾性体によって構成されていてもよい。この構成において、各々の把持棒12の棒状部21は、収納部材14の溝部27内で曲がることが可能な程度の弾性(可撓性)を有する。また、この構成において、一対の把持棒12は、
図3のように把持部20が閉じた状態で連結部18に固定され、その状態から把持棒12がz1方向に移動して棒状部21が曲がることで把持部20が開く。このため、リニアガイドからなる支持部材40は不要になる。
【0031】
また、
図1における符号Wmaxは、ピストン36の移動量又は収容溝28の幅Waによって決まる把持部20の最大開き幅を示している。この最大開き幅Wmaxは、ワークの幅W1(
図5参照)よりも小さいことが好ましい。言い換えると、ピストン36の移動量又は収容溝28の幅Waは、把持部20の最大開き幅Wmaxがワークの幅W1(
図5参照)よりも小さくなるように設定されている。
【0032】
ここで、本実施形態においては、把持対象物となるワークの一例として、
図4に示すように、3つの突出部50a,50b,50cを有するワーク50を想定する。このワーク50は、例えばバケットにバラ積みされた状態で置かれる。このワーク50をワーク把持機構10で把持する方法は2つある。第1の方法は、ワーク50の突出部50bを一対の把持部20の内側把持面20aで挟み込んでワーク50を把持する方法である。第2の方法は、ワーク50の突出部50a,50cの内側に一対の把持部20の外側把持面20bを押し当ててワーク50を把持する方法である。以下、詳しく説明する。
【0033】
第1の方法では、まず、
図5に示すように、把持部20の開き幅Wがワーク50の突出部50bの厚み寸法Tよりも大きくなるように、把持部20を所定量だけ開き動作させる。次に、ワーク把持機構10をワーク50に近づけることにより、一対の把持部20の間にワーク50の突出部50bを配置する。次に、把持部20を閉じ動作させる。そうすると、一対の把持部20が完全に閉じる前に、各々の把持部20の内側把持面20aがワーク50の突出部50bに接触し、この接触部分に駆動部16の駆動力が加わる。これにより、
図6に示すように、ワーク50の突出部50bは、一対の把持部20の内側把持面20aによって両側から挟み込まれる。その結果、ワーク50は、一対の把持部20によって把持される。
【0034】
第2の方法では、まず、
図5に示すように、把持部20の開き幅Wがワーク50の突出部50bの厚み寸法Tよりも大きくなるように、把持部20を所定量だけ開き動作させる。次に、ワーク把持機構10をワーク50に近づけることにより、一対の把持部20の間にワーク50の突出部50bを配置する。ここまでは第1の方法と同様である。次に、把持部20を開き動作させる。そうすると、一対の把持部20が完全に開く前に、各々の把持部20の外側把持面20bが、それぞれに対応するワーク50の突出部50a,50cに接触し、この接触部分に駆動部16の駆動力が加わる。これにより、
図7に示すように、ワーク50の突出部50aには一方の把持部20の外側把持面20bが押し当てられ、ワーク50の突出部50cには他方の把持部20の外側把持面20bが押し当てられる。その結果、ワーク50は、一対の把持部20によって把持される。
【0035】
このようにワーク把持機構10は、把持部20を閉じる場合と、把持部20を開く場合の両方で、ワーク50を把持することができる。
【0036】
以上説明したように、本発明の第1実施形態に係るワーク把持機構10において、一対の把持棒12及び収容部材14は、駆動部16による一対の把持棒12の移動動作を把持部20の開閉動作に変換する傾斜案内機構30を有し、把持部20の開閉動作によってワーク50を把持する構成になっている。これにより、非常にシンプルな構造でワークを適切に把持することができる。
【0037】
また、本発明の第1実施形態に係るワーク把持機構10は、一対の把持部20がワーク50を把持するときの動作がコンパクトであるため、許容される動作範囲が限られた状況でもワーク50を適切に把持することができる。この点に関して、例えば特許文献1に記載されたロボットハンドでは、一対の指先部でワークを把持する場合に、一対の指先部をワークの幅より大きく開いてから閉じる必要がある。このため、例えばバケットの隅に置かれたワークを把持する場合に、いずれかの指先部がバケットに干渉し、ワークを把持できない状況に陥るおそれがある。これに対して、第1実施形態に係るワーク把持機構10では、
図5に示すように、一対の把持部20をワーク50の幅W1より大きく開かなくても、一対の把持部20でワーク50を把持することができる(
図6、
図7参照)。このため、バケットの隅に置かれたワークでも、バケットに干渉することなく把持できる。
【0038】
また、一対の把持棒12を金属によって構成した場合は、把持部20でワーク50を把持するときに把持棒12の変形を抑制し、高い把持力を得ることができる。また、把持棒12の耐久性を高めることができる。
【0039】
また、一対の把持棒12を樹脂によって構成した場合は、収容部材14の傾斜案内溝29に沿って把持棒12の傾斜部22を円滑に移動させることができる。また、ワーク把持機構10の軽量化を図ることができる。
【0040】
ここで本発明者は、一対の把持部20でワーク50を把持したときの保持力と、傾斜部22及び傾斜案内溝29の傾斜角度との関係を実験で確認してみた。保持力(単位はニュートン)については、
図6に示すように一対の把持部20でワーク50の突出部50b(厚さT=1.5mm)を、6気圧程度の圧縮空気の供給により把持した状態で、ワーク50を
図6の下方向に移動させるのに必要な引き込み力として測定した。傾斜角度については、
図8に示すように、把持棒12の長さ方向(Z方向)と直交する基準平面51,52を基準に、基準平面51に対する傾斜部22の傾斜角度θと、基準平面52に対する傾斜案内溝29の傾斜角度θを規定した。傾斜部22の傾斜角度θと傾斜案内溝29の傾斜角度θは、同じである。実験では、傾斜角度θが異なる把持棒12を作製し、傾斜角度θごとに保持力を測定した。傾斜角度θ以外の条件(材料、寸法など)は共通である。
【0041】
図9は、上述した保持力と傾斜角度の関係について実験した結果を示す図である。
図9に示すように、実験では、傾斜角度θを60度から80度まで5度ずつ変えている。その結果、傾斜角度θが60度のときの保持力は1.67N、傾斜角度θが65度のときの保持力は2.01N、傾斜角度θが70度のときの保持力は1.99N、傾斜角度θが75度のときの保持力は1.90N、傾斜角度θが80度のときの保持力は1.77Nであった。この実験結果から分かるように、傾斜部22及び傾斜案内溝29の傾斜角度θは、65度以上70度以下であることが好ましい。
【0042】
<第2実施形態>
図10は、本発明の第2実施形態に係るワークの把持機構の構成を示す分解斜視図である。
図10に示すように、ワーク把持機構10Aは、上記第1実施形態と同様の構成要素(
図1、
図2参照)に加えて、筒状部材60と、真空機器70とを備えている。
【0043】
筒状部材60は、筒部61と、フランジ部62と、を一体に有している。筒部61には角孔63と通気口64が形成されている。角孔63は、筒部61を中心軸方向に貫通する状態で形成されている。筒部61の角孔63には、溝部27に一対の把持棒12が収容された収容部材14が挿入されている。その場合、把持棒12の把持部20は、把持部20が完全に閉じた状態(
図3参照)では筒部61の端部61aから突出しないように筒部61の内部に収容され、把持部20を開いたときのみ筒部61の端部61aから突出するように配置される。
【0044】
通気口64は、筒部61内の角孔63に連通している。連通とは、空間的につながった状態をいう。さらに、筒部61の内部には、図示しないシール部材が取り付けられている。シール部材は、通気口64を通した真空引きにより筒部61内の空気を吸い出す場合に、把持棒12の長さ方向で把持部20側からのみ空気が吸い込まれるようにシールする部材である。フランジ部62は、Z方向から見て四角形に形成されている。フランジ部62の四隅には取付孔62aが形成されている。筒状部材60のフランジ部62は、収容部材14のフランジ部26と重ね合わせた状態で、例えばボルトを用いて連結スタッド44に固定される。
【0045】
真空機器70は、筒状部材60の内部を真空引きするための機器、すなわち真空発生器である。真空機器70は、例えば、真空エジェクタによって構成される。
【0046】
本発明の第2実施形態に係るワーク把持機構10Aにおいては、
図11に示すように、筒部61の端部61aをワーク80に接触させて、真空機器70により筒状部材60の内部を真空引きすると、筒部61内が真空状態になる。このため、ワーク80は、真空と大気圧との差圧によって筒部61の端部61aに吸着される。したがって、突出部のない平らなワーク80を真空吸着によってピックアップすることができる。これにより、突起部のあるワーク50と、突起部のないワーク80の両方を、ワーク把持機構10Aでピックアップすることが可能となる。
【符号の説明】
【0047】
10…ワーク把持機構、12…把持棒、14…収容部材、16…駆動部、18…連結部、20…把持部、20a…内側把持面、20b…外側把持面、21…棒状部、22…傾斜部、27…溝部、28…収容溝、29…傾斜案内溝、30…傾斜案内機構、40…支持部材、50,80…ワーク、51,52…基準平面、60…筒状部材、70…真空機器