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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118581
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】非水系インクジェットインク組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/322 20140101AFI20240826BHJP
   C09D 11/36 20140101ALI20240826BHJP
【FI】
C09D11/322
C09D11/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024940
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】松本 晃
(72)【発明者】
【氏名】瀧口 宏志
(72)【発明者】
【氏名】窪田 健一郎
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AD10
4J039BC13
4J039BC20
4J039BE01
4J039BE22
4J039CA07
4J039EA36
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】光沢性を向上させる非水系インクジェットインク組成物を提供すること。
【解決手段】非水系インクジェットインク組成物は、光輝性顔料と、カーボネート系化合物と、グリコールエーテル系化合物と、を含有し、カーボネート系化合物の含有量が、総質量に対して5質量%以上20質量%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光輝性顔料と、カーボネート系化合物と、グリコールエーテル系化合物と、を含有し、
前記カーボネート系化合物の含有量が、総質量に対して5質量%以上20質量%以下である非水系インクジェットインク組成物。
【請求項2】
前記グリコールエーテル系化合物として、下記式(1)で表されるグリコールジエーテル、および下記式(2)で表されるグリコールモノエーテルの少なくともいずれかを含む、請求項1に記載の非水系インクジェットインク組成物。
1O-(R2O)m-R3 ・・・(1)
(但し、R1およびR3は、各々独立して炭素数1から4のアルキル基であり、R2は、炭素数2から3のアルキレン基であり、mは1から4の整数である。)
HO-(R4O)n-R5 ・・・(2)
(但し、R4は、炭素数2から3のアルキレン基であり、R5は、炭素数1から4のアルキル基であり、nは1から4の整数である。)
【請求項3】
前記カーボネート系化合物は、環状構造を有する、請求項1に記載の非水系インクジェットインク組成物。
【請求項4】
前記カーボネート系化合物は、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ビニレン、炭酸ブチレン、炭酸フルオロエチレンのうちの1種以上を含む、請求項3に記載の非水系インクジェットインク組成物。
【請求項5】
さらにアクリル樹脂を含有し、
前記アクリル樹脂の含有量が、総質量に対して3質量%以下である、請求項1に記載の非水系インクジェットインク組成物。
【請求項6】
さらにシリコーン系界面活性剤を含有し、
前記シリコーン系界面活性剤の含有量が、総質量に対して1質量%以下である、請求項1に記載の非水系インクジェットインク組成物。
【請求項7】
前記光輝性顔料は、アルキルリン酸化合物による表面処理が施されている、請求項1に記載の非水系インクジェットインク組成物。
【請求項8】
印刷面にセルロース系樹脂層を有する記録媒体に適用される、請求項1に記載の非水系インクジェットインク組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系インクジェットインク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光輝性顔料を含有する非水系インクジェットインク組成物が知られていた。例えば、特許文献1には、光輝性顔料としての平板状粒子と、特定のグリコールエーテル系化合物と、を含む非水系インクジェットインク組成物が開示されている。このようなインクでは、平板状粒子の略平坦な面が記録媒体の印刷面に沿って配列することにより塗膜の光沢性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-150984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の非水系インクジェットインク組成物では、記録媒体の種類によっては光沢性を向上させることが難しいという課題があった。詳しくは、上記非水系インクジェットインク組成物では、記録媒体に対する溶解性が不足することがあり、記録媒体に定着し難くなるおそれがあった。そのため、インクのドットが粗く形成され易く、インクの塗膜の光沢性が向上し難くなる場合があった。すなわち、記録媒体の種類によらず光沢性を向上させる非水系インクジェットインク組成物が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
非水系インクジェットインク組成物は、光輝性顔料と、カーボネート系化合物と、グリコールエーテル系化合物と、を含有し、前記カーボネート系化合物の含有量が、総質量に対して5質量%以上20質量%以下である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施例に係るインクの組成および評価結果を示す表。
図2】実施例および比較例に係るインクの組成および評価結果を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本実施形態の非水系インクジェットインク組成物として、サイネージなどのデジタル印刷物に適用されるソフトソルベントインクを例示する。ソフトソルベントインクは、芳香族化合物などの有機溶剤を含むハードソルベントインクに比べて、臭気が低減されたソルベントインクである。なお、本発明の非水系インクジェットインク組成物は、当該実施形態によって限定されるものではない。
【0008】
1.非水系インクジェットインク組成物
本実施形態に係る非水系インクジェットインク組成物は、光輝性顔料、カーボネート系化合物、およびグリコールエーテル系化合物を含有する。非水系インクジェットインク組成物は、水以外の溶媒を主溶媒として含み、意図的に添加される水を含まない。非水系インクジェットインク組成物は、不純物として混入した水を含むことがある。以下の説明では、非水系インクジェットインク組成物を単にインクということもある。
【0009】
1.1.成分
1.1.1.光輝性顔料
光輝性顔料は、インクが記録媒体上に形成する塗膜に光沢を付与する。塗膜の光沢は、記録媒体上に形成されるインクのドットの状態、光輝性顔料の種類および形状、および塗膜における光輝性顔料の配列状態にも影響される。すなわち、塗膜の光沢性を向上させるには、塗膜において光輝性顔料を密かつ平滑に配列させることが肝要である。また、塗膜の光沢は、インク中の光輝性顔料以外の成分によって影響を受けることがある。
【0010】
光輝性顔料としては、例えば、パール顔料および金属顔料が挙げられる。光輝性顔料として、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0011】
パール顔料としては、例えば、二酸化チタン被覆雲母、魚鱗箔、酸塩化ビスマスなどの真珠光沢や干渉光沢を有する顔料が挙げられる。
【0012】
金属顔料としては金属粒子が挙げられる。金属粒子の材料としては、例えば、アルミニウム、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、銅などの粒子、これらの単体またはこれらの合金、およびこれらの混合物が挙げられる。金属粒子は表面に不動態皮膜を有していてもよい。本実施形態では、比重の小ささや光沢性などの理由から、光輝性顔料としてアルミニウムの金属粒子を用いる。
【0013】
インクにおける金属粒子の含有量は、インクの総質量に対して、例えば、0,1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0,2質量%以上10.0質量%以下であることがより好ましく、0,3質量%以上5.0質量%以下であることがさらにより好ましく、0.5質量%以上2,2質量%以下であることが特に好ましい。
【0014】
金属粒子の形状は、インクジェットヘッドから吐出可能であれば特に限定されず、略球状、紡錘形状、針状、鱗片状、一定の平面を有する平板状、および不定形などであってもよい。本実施形態では、金属粒子として平板状粒子を採用する。
【0015】
平板状粒子とは、略平坦な面Aを有し、面Aと交差する方向における平板状粒子の厚さBが略均一である粒子をいう。平板状粒子では、面Aを平面視した場合の長手方向の距離が、厚さBより長い。また、平板状粒子は、面Aを平面視したときの面積が、面Aに沿う方向から側面視したときの面積より広い形状である。
【0016】
平板状粒子において、面Aを平面視したときの面積をS1とし、面Aに沿う方向のうち面積が最大となる方向から側面視したときの面積をS0とする。このとき、面積の比S1/S0は、2以上が好ましく、10以上がより好ましく、30以上がさらに好ましい。比S1/S0の上限は、特に限定されないが、1000であることが好ましく、100であることがより好ましく、80であることがさらにより好ましい。これによれば、インクジェットヘッドからの吐出安定性を確保した上で、塗膜の光沢性をより向上させることができる。
【0017】
平板状粒子の厚さBは、例えば、5nm以上90nm以下であることが好ましく、10nm以上50nm以下であることがより好ましく、15nm以上30nm以下であることがさらにより好ましい。これによれば、インクジェットヘッドからの吐出安定性を向上させることができる。
【0018】
比S1/S0および厚さBは、例えば、任意の50個の平板状粒子について、各々測定し、平均値として求められる。面積S1,S0および厚さBの測定には、走査型電子顕微鏡や原子間力顕微鏡などか適用可能である。
【0019】
平板状粒子の平均粒子径は、0.20μm以上1.00μm以下であることが好ましく、0.25μm以上0.90μm以下であることがより好ましく、0.30μm以上0.80μm以下であることがさらにより好ましい。これによれば、インクの保存安定性および吐出安定性を向上させることができる。
【0020】
ここでいう平均粒子径とは、動的光散乱法により測定される体積基準粒度分布(50%)である。体積基準粒度分布は、公知の粒度分布計によって測定され、平板状粒子の形状を球状に換算して算出される。
【0021】
平板状粒子は、例えば、蒸着などの公知の成膜方法にて作製した金属薄膜を、液中で物理的に粉砕することによって製造される。
【0022】
金属粒子には、アルキルリン酸化合物による表面処理が施され、処理膜が形成されていることが好ましい。これによれば、インクにおいて、金属粒子の凝集や偏在が抑えられて、金属粒子の分散安定性やインクジェットヘッドからの吐出安定性を向上させることができる。
【0023】
アルキルリン酸化合物としては、下記式(α)で表される化合物および下記式(β)で表される化合物が挙げられる。なお、以下の説明では、式(α)で表される化合物を単に式(α)の化合物ともいい、式(β)で表される化合物を単に式(β)の化合物ともいう。アルキルリン酸化合物として、式(α)の化合物および式(β)の化合物のうち、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
(R6-O)xP(O)(OH)3-x ・・・(α)
(R7)P(O)(OH)2 ・・・(β)
(但し、R6,R7は各々独立して炭素数が13以上の炭化水素基であり、xは1または2である。)
【0024】
式(α)の化合物では、リン酸が有する3個の水酸基の1個または2個がR6でエステル化されている。式(β)の化合物は、ホスホン酸のリン原子に結合した水素原子がR7で置換されている。
【0025】
詳しくは、式(α)の化合物の(R6-O)の構造は、R6の炭素原子のいずれかに酸素原子が直接結合している。該酸素原子は、リン原子とも直接結合している。式(β)の化合物では、R7の炭素原子のいずれかがリン原子に直接結合している。式(α)の化合物および式(β)の化合物のリン原子には水酸基が直接結合している。
【0026】
上述した構造により、式(α)の化合物および式(β)の化合物にて金属粒子に表面処理を施すと、リン原子に結合した水酸基が金属粒子の金属と反応する。そのため、処理膜が形成された金属粒子では、表面の比較的に近しい位置に、R6やR7の比較的に長鎖の炭化水素基が存在する形態となる。これによって、金属粒子の分散安定性および吐出安定性が向上する。
【0027】
6,R7は各々独立して、炭素二重結合または炭素三重結合を有していてもよく、フェニル基、脂環骨格または分岐構造を有していてもよい。具体的には、R6,R7は、直鎖型の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。これによれば、フェニル基や脂環骨格を有する場合に比べて分子構造がバルキーでないため、金属粒子の表面に密に結合することが可能となる。そのため、金属粒子の分散安定性および吐出安定性をさらに向上させることができる。
【0028】
6,R7は各々独立して、水素原子に代わる置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、カルボキシ基、水酸基、アミノ基、オキシアルキレン含有基などが挙げられる。
【0029】
6,R7が置換基を有する場合には、置換基の数は、置換基を有しない場合の炭化水素基に含まれる水素数に対して、50%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。R6,R7が有する置換基の数は、5個以下が好ましく、3個以下がより好ましく、2個以下がさらにより好ましく、1個が特に好ましい。R6,R7の置換基は、分散安定性向上の観点から、リン原子に対して最も離れた位置の炭素原子に結合されていることが好ましい。
【0030】
オキシアルキレン含有基はアルキレンオキシド構造を有する。置換基は、複数のアルキレンオキシド構造を繰り返し単位の構造として有してもよい。上記構造における繰り返し単位の数は、1以上10以下であることが好ましく、2以上4以下であることがより好ましい。アルキレンオキシド構造におけるアルキレン基の炭素数は、1以上4以下であることが好ましい。
【0031】
6,R7の炭素数は、14以上30以下であることが好ましく、15以上28以下であることがより好ましく、16以上25以下であることがさらにより好ましく、17以上25以下であることが特に好ましい。これによれば、金属粒子の分散安定性および吐出安定性、および塗膜の光沢性をさらに向上させることができる。
【0032】
アルキルリン酸化合物による金属粒子への表面処理は、例えば、金属粒子の製造工程にて実施される。具体的には、金属薄膜を物理的に粉砕した後に、アルキルリン酸化合物を含む液中に浸漬することによって表面処理が施される。また、上記表面処理は、金属薄膜の粉砕と並行して実施されてもよい。金属粒子の表面処理に複数種のアルキルリン酸化合物を用いる場合には、各々単一のアルキルリン酸化合物にて個別に表面処理を施してもよく、同一の工程で一度に表面処理を施してもよい。
【0033】
インク中に含まれるアルキルリン酸化合物の含有量は、金属粒子1.0質量部に対して、1.0質量部以上50.0質量部以下であることが好ましく、2.0質量部以上30.0質量部以下であることがより好ましく、5.0質量部以上20.0質量部以下であることがさらにより好ましい。これによれば、金属粒子の分散安定性および吐出安定性、および塗膜の光沢性をさらに向上させることができる。なお、インク中に含まれるアルキルリン酸化合物とは、金属粒子において処理膜を形成している分と、処理膜を形成せずにインク中に含まれる分と、の合計値である。
【0034】
1.1.2.カーボネート系化合物
カーボネート系化合物は、カーボネート基(-O-(C=O)-O-)を有する非プロトン性の化合物である。カーボネート系化合物は、25℃にて液体のものと固体のものとがある。固体のカーボネート系化合物は、グリコールエーテル系化合物などのインク中の溶媒に溶解されて用いられる。カーボネート系化合物を含むことにより、記録媒体の印刷面の樹脂に対する適度な溶解性がインクに付与される。記録媒体の印刷面の樹脂とは、例えば、セルロース系樹脂や塩化ビニル系樹脂などである。
【0035】
上記溶解性は、印刷面の樹脂を適度に溶解すると共に、過度に膨潤させない特徴を持つ。そのため、インクは、記録媒体の印刷面にて樹脂を溶解して着実に定着し、比較的に揃ったドットを形成する。これによって、平板状粒子が密に配列して塗膜の光沢性が向上する。
【0036】
カーボネート系化合物としては、環状構造を有するものと、環状構造を有しないものとがある。環状構造を有するカーボネート系化合物は、セルロース系樹脂へのなじみが良好で溶解性に優れる。そのため、環状構造を有するカーボネート系化合物をインクに用いると、印刷面にセルロース系樹脂の層を有する記録媒体において、インクのドットが密に形成されて平板状粒子が密に配列し易くなり、塗膜の光沢性がさらに向上する。
【0037】
環状構造を有するカーボネート系化合物としては、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ビニレン、1,2-炭酸ブチレン、シス-2,3-炭酸ブチレン、トランス-2,3-炭酸ブチレン、炭酸フルオロエチレン、炭酸ビニルエチレン、炭酸トリメチレン、および炭酸(トリフルオロメチル)エチレンなど挙げられる。インクは、環状構造を有するカーボネート系化合物として、これらのうちの1種以上を含むことが好ましい。これによれば、印刷面に塩化ビニル系樹脂の層を有する記録媒体においても、塗膜の光沢性が向上する。
【0038】
環状構造を有しないカーボネート系化合物としては、例えば、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジプロピル、および炭酸ジブチルなどが挙げられる。環状構造を有しないカーボネート系化合物として、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0039】
インクにおけるカーボネート系化合物の含有量は、インクの総質量に対して、5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、8質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。これによれば上記溶解性の発現が促進される。
【0040】
1.1.3.グリコールエーテル系化合物
グリコールエーテル系化合物は、グリコール類の片末端または両末端のOH基がアルキル基にて置換された化合物を指す。グリコールエーテル系化合物はインクの主溶媒の1つである。
【0041】
グリコールエーテル系化合物としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル(ジエチルジグリコール)、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル(メチルエチルジグリコール)、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルなどのアルキレングリコールジエーテル、およびエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチエレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルなどのアルキレングリコールモノエーテルが挙げられる。インクは、これらのグリコールエーテル系化合物のうちの1種以上を含む。
【0042】
特にインクは、上記グリコールエーテル系化合物のうち、下記式(1)で表されるグリコールジエーテル、および下記式(2)で表されるグリコールモノエーテルの少なくともいずれかを含むことが好ましい。
1O-(R2O)m-R3 ・・・(1)
(但し、R1およびR3は、各々独立して炭素数1から4のアルキル基であり、R2は、炭素数2から3のアルキレン基であり、mは1から4の整数である。)
HO-(R4O)n-R5 ・・・(2)
(但し、R4は、炭素数2から3のアルキレン基であり、R5は、炭素数1から4のアルキル基であり、nは1から4の整数である。)
【0043】
上記グリコールエーテル系化合物は、記録媒体に付着されたインクの乾燥性を調節する。そのため、記録媒体上でインクが塗膜となる過程で、平板状粒子の面Aが印刷面に沿って配列し易くなる。また、上記グリコールエーテル系化合物は塩化ビニル系樹脂などに対する溶解性が比較的に低く、印刷面の樹脂がインクによって膨潤され難くなる。そのため、膨潤によって印刷面に凹凸が発生することが抑えられる。これらにより、平板状粒子などの金属粒子が比較的に平滑に配列して、塗膜の光沢性がさらに向上する。
【0044】
インクにおけるグリコールエーテル系化合物の含有量は、インクの総質量に対して、65質量%以上90質量%以下であることが好ましく、70質量%以上85質量%以下であることがより好ましい。これによれば、平板状粒子などの金属粒子の平滑な配列が促進される。
【0045】
1.1.4.定着樹脂
インクは、定着樹脂としてさらにアクリル樹脂を含有することが好ましい。アクリル樹脂は塗膜の耐擦性を向上させる。アクリル樹脂として市販品を適用してもよい。アクリル樹脂の市販品としては、例えば、ローム・アンド・ハース社のパラロイド(登録商標) B99N、B60(以上商品名)などが挙げられる。
【0046】
アクリル樹脂の含有量は、インクの総質量に対して、0.10質量%以上3.00質量%以下であることが好ましく、0.20質量%以上1.50質量%以下であることがより好ましく、0.25質量%以上0.75質量%以下であることがさらにより好ましい。これによれば、塗膜において、耐擦性を確保した上で光沢性への影響が抑えられる。
【0047】
インクは、アクリル樹脂以外の定着剤として、セルロースアセテートブチレートなどの繊維系樹脂、スチレンアクリル樹脂、ロジン変性樹脂、フェノール樹脂、テルペン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂などの塩化ビニル系樹脂、ビニルトルエン-α-メチルスチレン共重合体樹脂などを含有してもよい。
【0048】
1.1.5.界面活性剤
インクは、界面活性剤としてさらにシリコーン系界面活性剤を含有することが好ましい。シリコーン系界面活性剤は塗膜の耐擦性を向上させる。シリコーン系界面活性剤としては、ポリシロキサン系化合物、ポリエーテル変性オルガノシロキサンなどが挙げられる。
【0049】
シリコーン系界面活性剤として市販品を適用してもよい。シリコーン系界面活性剤の市販品としては、例えば、ビックケミー・ジャパン社のBYK(登録商標)-306、BYK-307、BYK-333、BYK-341、BYK-345、BYK-346、BYK-347、BYK-348、BYK-349(以上商品名)、信越化学社のKF-96-2cs、KF-351A、KF-352A、KF-353、KF-354L、KF-355A、KF-615A、KF-945、KF-640、KF-642、KF-643、KF-6020、X-22-4515、KF-6011、KF-6012、KF-6015、KF-6017(以上商品名)などが挙げられる。これらのシリコーン系界面活性剤のうちの1種以上を用いてもよい。
【0050】
シリコーン系界面活性剤の含有量は、インクの総質量に対して、は0.02質量%以上1.00質量%以下であることが好ましく、0.03質量%以上0.50質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以上0.20質量%以下であることがさらにより好ましい。これによれば、インクを記録媒体に付着させる際に、印刷面に対するインクの濡れ性が好適に調節される。
【0051】
インクは、シリコーン系界面活性剤以外の界面活性剤を含有してもよい。シリコーン系界面活性剤以外の界面活性剤としては、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。
【0052】
1.1.6.その他の成分
インクは、上記以外のその他の成分として、光輝性顔料の分散性を向上させる分散剤、塗膜を着色する着色材、および環状ラクトンなどを含有してもよい。
【0053】
環状ラクトンは、エステル結合を含む環状構造を有する。環状ラクトンは、インク中の定着樹脂などの成分の溶解性を向上させると共に、記録媒体の印刷面の樹脂に対する溶解性をインクに付与する。
【0054】
環状ラクトンとしては、例えば、5員環構造のγ-ラクトン、6員環構造のδ-ラクトン、および7員環構造のε-ラクトンが挙げられる。環状ラクトンとして、具体的には、特に限定されないが、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-ヘキサラクトン、γ-ヘプタラクトン、γ-オクタラクトン、γ-ノナラクトン、γ-デカラクトン、γ-ウンデカラクトン、δ-バレロラクトン、δ-ヘキサラクトン、δ-ヘプタラクトン、δ-オクタラクトン、δ-ノナラクトン、δ-デカラクトン、δ-ウンデカラクトン、およびε-カプロラクタムが挙げられる。環状ラクトン類として、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0055】
これらの中でも、5員環構造のγ-ラクトンおよび6員環構造のδ-ラクトンが好ましく、γ-バレロラクトン、およびδ-バレロラクトンがより好ましく、γ-ブチロラクトンがさらにより好ましい。このような環状ラクトン類を含有することにより、インクのドットが印刷面を溶解して定着し易くなり、塗膜の耐擦性が向上する。
【0056】
環状ラクトンの含有量は、インクの総質量に対して、2質量%以上20質量%以下であることが好ましく、5質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。これによれば、インクにおける定着樹脂などの溶解性、および塗膜の耐擦性が向上する。
【0057】
2.記録方法
本実施形態の記録方法では、インクジェットヘッドを備える大判プリンターなどの公知のインクジェット記録装置を用いる。記録方法は、インク付着工程とインク乾燥工程とを含む。
【0058】
2.1.インク付着工程
インク付着工程では、インクジェットヘッドの複数のノズルからインクの液滴を吐出させて、記録媒体の印刷面にインクを付着させる。記録装置において、記録媒体の搬送とインクの吐出とを所定のタイミングで行うことにより、記録媒体の印刷面に所望の画像などが形成される。
【0059】
インクジェットヘッドは駆動手段であるアクチュエーターを備える。アクチュエーターとしては、圧電体の変形を利用する圧電素子、静電吸着による振動板の変位を利用する電気機械変換素子、および加熱によって生じる気泡を利用する電気熱変換素子などが挙げられる。本実施形態では、圧電素子を備えたインクジェットヘッドを有する記録装置を用いる。
【0060】
なお、記録方法では、光輝性顔料を含むインクと、光輝性顔料を含まない非水系の各色インクなどとを組み合わせたインクセットを用いてもよい。各色インクには、公知の顔料や油溶性染料などが適用可能である。インクをインクセットとして用いることにより、各色に光沢が付与された画像や、金属的な光沢表現を含む画像などが容易に形成可能となる。
【0061】
記録媒体には、例えば、吸収性記録媒体または低吸収性記録媒体を用いる。吸収性記録媒体としては、例えば、水の浸透性が高い電子写真用紙などの普通紙、親水性のインクの受容層を備えるインクジェット専用紙などが挙げられる。
【0062】
低吸収性記録媒体とは、Bristow法において水の接触開始から30msec1/2までの水の吸収量が、10mL/m2以下である記録媒体を指す。低吸収性記録媒体は、少なくとも印刷面が上記特性を備えていればよい。すなわち、低吸収性記録媒体には、水を全く吸収しない非吸収性記録媒体も含まれる。
【0063】
低吸収性記録媒体としては、例えば、水吸収量が小さい材料を含むシート、フィルム、繊維製品などが挙げられる。低吸収性記録媒体としては、基材の印刷面の表面にインクの受容層を備えるものや、上記受容層を備えず、印刷面に基材が露出しているものなどが挙げられる。
【0064】
上記基材としては、例えば、紙、繊維、皮革、樹脂、ガラス、セラミックス、および金属などの材料が挙げられる。
【0065】
印刷物をサイネージ用途に供する場合には、基材として柔軟性を有する樹脂シートや樹脂フィルムが好適である。上記基材の材料としては、例えば、オレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル樹脂、および塩化ビニル系樹脂などが挙げられる。これらの基材にインクの受容層として、例えば、セルロースアセテートブチレートなどのセルロース系樹脂、アクリル樹脂、スチレン-アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、およびウレタン系樹脂などの層が形成されていてもよい。
【0066】
塩化ビニル系樹脂の具体例としては、例えば、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-エチレン共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-ビニルエーテル共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル-マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル-(メタ)アクリル酸共重合体、塩化ビニル-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、および塩化ビニル-ウレタン共重合体が挙げられる。
【0067】
上述した通り、インクは様々な樹脂に対する適度な溶解性を有する。そのため、インクは、塩化ビニル系樹脂の他に、印刷面に受容層としてセルロース系樹脂層を有する記録媒体に適用されることが好ましい。これによれば、このような記録媒体において光沢性を向上させることができる。
【0068】
記録媒体において、形状、色、および物性などは特に限定されず、印刷物の用途に応じて適宜選択が可能である。また、記録媒体は、印刷面の反対側の面すなわち裏面に、糊などの接着層を有するものであってもよい。
【0069】
サイネージ用の記録媒体として市販品を適用してもよい。上記市販品としては、例えば、ローランドDG社の光沢塩化ビSV-G-1270G、遮光ターポリンSVB-B-1270、マット塩ビPVC-WM-1270TR、3M社のグラフィックフィルム IJ180-10、IJ40-10R、8451,RG5333R、AF1000、リンテック社の塩ビ P-206RW、P-212ZW、E-2200ZC、PETシリーズ E-1000ZC、G-1100EC、Mactac社の塩ビJT-5829Rなどが挙げられる。
【0070】
インク付着工程では、記録装置のプレヒーターやプラテンヒーターを用いて、記録媒体に加温しながらインクを付着させてもよい。
【0071】
2.2.インク乾燥工程
インク乾燥工程では、記録媒体に付着されたインクを乾燥させてインクの溶媒成分を揮散させる。これにより、インクの塗膜が印刷面に形成され、印刷物が製造される。インクの乾燥には、記録装置に備わるアフターヒーターや、温風ヒーターなどの別装置が適用される。
【0072】
インク乾燥工程の後に、印刷物をロール状に巻き取ってもよく、続けて二次加工を施してもよい。二次加工は、印刷物の用途に応じて適宜選択される。二次加工としては、例えば、裁断加工、ラミネート加工、製本加工、およびハトメ加工などが挙げられる。
【0073】
本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。記録媒体によらず、インクが形成する塗膜の光沢性を向上させることができる。
【0074】
3.実施例および比較例
以下、実施例および比較例を示して、図1および図2を参照しながら上記実施形態の効果をより具体的に説明する。以下の説明では、実施例1から実施例23のインクを総称して、単に実施例のインクということもあり、比較例1から比較例3のインクを総称して、単に比較例のインクということもある。なお、本発明は以下の実施例によって何ら限定されない。
【0075】
図1および図2の組成の欄では、数値の単位は質量%であり、数値の記載がなく、-表記の欄は含有しないことを意味する。なお、アルミニウム顔料は、分散体として配合したが、図1および図2では固形分濃度にて表示している。上記分散体の溶媒分はグリコールエーテル系化合物に加算されている。図1および図2に示した原材料の詳細は、以下の通りである。
【0076】
光輝性顔料
・アルミニウム顔料:アルミニウムの平板状粒子。詳細は後述する。
アクリル樹脂
・B60:パラロイド(登録商標) B60(商品名)、ローム・アンド・ハース社。
シリコーン系界面活性剤
・BYK(登録商標)-333:(商品名)、ビックケミー・ジャパン社。
式(2)のグリコールモノエーテル
・BTG-H:(商品名)、日本乳化剤社。
【0077】
3.1.アルミニウム顔料分散体の調製
表面粗さRaが0.02μm以下である、表面が比較的に平滑なフィルムを用意した。上記フィルムは、材質がポリエチレンテレフタレートであり、厚さが20μmである。
【0078】
次に、セルロースアセテートブチレート樹脂のアセトン溶液を作製して、上記フィルムの片面にバーコート法によって均一となるように塗布した。次いで、上記フィルムを60℃にて10分間加熱してアセトンを揮散させ、離型剤層を片面に備えるフィルムを得た。その後、真空デバイス社のVE-1010型真空蒸着装置を用いて、フィルムの離型剤層の表面に平均膜厚16nmのアルミニウム膜を形成した。
【0079】
次に、上記フィルムをテトラヒドロフラン中に浸漬し、アズワン社のVS-150超音波分散機にて超音波振動を印加した。これにより、アルミニウム膜は、フィルムから剥離されると共に平板状粒子に粉砕された。その後、遠心分離機にてテトラヒドロフランを除去してから、ジエチレングリコールジエチルエーテル(ジエチルジグリコール)を添加して、平板状粒子の含有量が5質量%の懸濁液とした。なお、実施例12のインクに用いる懸濁液は、ジエチレングリコールジエチルエーテル(ジエチルグリコール)をジエチレングリコールメチルエチルエーテル(メチルエチルジグリコール)に換えた他は、上記と同様に作製した。
【0080】
次に、循環型の高出力超音波粉砕機を用いて粉砕処理を施して、平板状粒子の平均粒子径を0.40μmとした。そして、上記超音波分散機にて超音波を印加しながら、55℃にて2時間加熱した。これにより、平板状粒子の凝集を解して一次粒子として分散させた。なお、平板状粒子の平均粒子径は、シスメックス社の粒子径・粒度分布測定装置 FPIA-3000Sを用いて測定した。
【0081】
次に、上述した式(α)の化合物を、アルミニウム顔料100質量部に対して10質量部となるように上記懸濁液に添加した。ここで用いた式(α)の化合物は、R6がトリデシル基であり、xが1および2の混在するものを用いた。そして、上記超音波分散機にて超音波を印加しながら55℃にて5時間加熱した。これにより、アルミニウムの平板状粒子の表面に式(α)の化合物にて表面処理を施して、アルミニウム顔料分散体を得た。
【0082】
3.2.インクの調製
図1および図2の組成にしたがって、各成分を配合、撹拌し、各成分が均一となるように混合した。その後、ポアサイズ1μmのメンブレンフィルターでろ過して実施例および比較例のインクを調製した。なお、アクリル樹脂は事前に一部のγ-ブチロラクトンに溶解してから配合した。
【0083】
3.3.印刷物の製造
セイコーエプソン社のインクジェットプリンター SC-S80650を用いて、実施例および比較例のインク組成物を2種の記録媒体に印刷した。2種の記録媒体として、塩ビ(塩化ビニル系樹脂)シートであるMactac社のJT-5829Rと、インクの受容層がセルロース系樹脂であるリンテック社のE-1000ZCと、を用いた。印刷条件は、記録解像度720dpi(dots per inch)×1440dpiの100%濃度として、ベタ印刷とした。印刷後、25℃-65%RH(相対湿度)にて24時間乾燥させて印刷物とした。
【0084】
3.4.印刷物の評価
3.4.1.光沢性
印刷物の塗膜の光沢性の指標として光沢度を評価した。具体的には、コニカミノルタ社の光沢計 GM-268Aを用いて、印刷物の印刷面の20°反射の光沢度を測定した。測定された光沢度について、下記評価基準にしたがって光沢性を評価した。
・塩ビシートの評価基準
5:光沢度が550以上である。
4:光沢度が500以上550未満である。
3:光沢度が450以上500未満である。
2:光沢度が400以上450未満である。
1:光沢度が400未満である。
・E-1000ZCの評価基準
5:光沢度が600以上である。
4:光沢度が550以上600未満である。
3:光沢度が500以上550未満である。
2:光沢度が450上500未満である。
1:光沢度が450未満である。
【0085】
3.4.2.耐擦性
印刷物における塗膜の耐擦性の評価として、JIS K5701-1(ISO 11628)の耐摩擦性の試験に準じた評価を行った。具体的には、テスター産業社の学振型摩擦堅牢度試験機 AB-301を用いた。印刷面の塗膜に対して、綿布を荷重500gにて接触させながら20回往復で摺動させた。その後、摺動させた印刷面の塗膜の状態、および綿布における摺動領域への塗膜成分の付着を目視にて観察して、以下の評価基準にしたがって評価した。
評価基準
3:塗膜に殆ど傷がなく、綿布への塗膜成分の軽微な付着がある。
2:塗膜に軽微な傷があり、綿布への塗膜成分の軽微な付着がある。
1:塗膜に傷があり、綿布への塗膜成分の付着がある。
【0086】
3.5.評価結果のまとめ
図1および図2に示すように、実施例の塩ビシートの光沢性では、全ての水準で3以上の評価となった。特に、実施例13,14,20,22以外は評価が4となった。また、実施例のE-1000ZCの光沢性では、実施例9,10,11,18以外の水準で3以上の評価となった。特に、実施例15では評価が5となった。以上から、実施例のインクでは、塩化ビニル系樹脂およびセルロース系樹脂に対して光沢性が向上することが示された。また、実施例の耐擦性では、実施例21以外の全ての水準で評価が2以上となり、塗膜の耐擦性が良好であることが示された。
【0087】
これに対して、比較例の塩ビシートの光沢性では、比較例3の評価が1となった。また、比較例のE-1000ZCの光沢性では、比較例1,2の評価が1となった。以上から、比較例のインクでは、樹脂の種類によって光沢性が向上し難いことが分かった。
図1
図2