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特開2024-118582ロール紙印刷装置、及び、ロール紙印刷装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118582
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】ロール紙印刷装置、及び、ロール紙印刷装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 11/70 20060101AFI20240826BHJP
   B65H 16/06 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
B41J11/70
B65H16/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024941
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼町 大介
【テーマコード(参考)】
2C058
3F052
【Fターム(参考)】
2C058LA02
2C058LA10
2C058LA26
2C058LB09
2C058LB36
2C058LC10
2C058LC15
2C058LC18
3F052AA01
3F052BA02
3F052DA01
(57)【要約】
【課題】ユーザーの手間と時間とが掛かるおそれがあった。
【解決手段】ロール紙印刷装置は、ロール紙から紙を引き出して搬送するローラーと、第1刃と、第2刃と、第1刃を移動させるモーターと、第1刃を検出可能なセンサーと、を有するカッターと、ローラー及びカッターを制御する制御部と、を備え、制御部は、モーターを第1回転方向へ回転し、第1時間経過後、センサーが第1刃の検出無しとし、さらに第2時間経過後もセンサーが第1刃の検出無しとした場合、モーターを第1回転方向とは反対の第2回転方向へ回転して、第1計数をカウントし、第1計数が第1定数より大きい場合にはエラーとし、第1計数が第1定数以下の場合には、モーターを第1回転方向へ回転する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール紙から紙を引き出して搬送するローラーと、
第1刃と、第2刃と、前記第1刃を移動させるモーターと、前記第1刃を検出可能なセンサーと、を有するカッターと、
前記ローラー及び前記カッターを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記モーターを第1回転方向へ回転し、第1時間経過後、前記センサーが前記第1刃の検出無しとし、さらに第2時間経過後も前記センサーが前記第1刃の検出無しとした場合、前記モーターを前記第1回転方向とは反対の第2回転方向へ回転して、第1計数をカウントし、
前記第1計数が第1定数より大きい場合にはエラーとし、前記第1計数が前記第1定数以下の場合には、前記モーターを前記第1回転方向へ回転する、ロール紙印刷装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第1刃が移動した回数である第2計数をカウントし、
前記モーターを前記第2回転方向へ回転したとき、前記第2計数が第2定数より大きい場合には前記エラーとし、
前記第2計数が前記第2定数以下の場合であって、前記第1計数が前記第1定数以下の場合には、前記ローラーにより前記紙を搬送してから、前記モーターを前記第1回転方向へ回転する、請求項1に記載のロール紙印刷装置。
【請求項3】
前記第1刃は、第1位置から第2位置へ移動する際に前記紙をカット可能であり、前記センサーは前記第1位置にある前記第1刃を検出可能である、請求項1に記載のロール紙印刷装置。
【請求項4】
ロール紙から紙を引き出して搬送するローラーと、
第1刃と、第2刃と、前記第1刃を移動させるモーターと、前記第1刃を検出可能なセンサーと、を有するカッターと、を備えるロール紙印刷装置の制御方法であって、
前記モーターを第1回転方向へ回転し、第1時間経過後、前記センサーが前記第1刃の検出無しとし、さらに第2時間経過後も前記センサーが前記第1刃の検出無しとした場合、前記モーターを前記第1回転方向とは反対の第2回転方向へ回転して、第1計数をカウントし、
前記第1計数が第1定数より大きい場合にはエラーとし、前記第1計数が前記第1定数以下の場合には、前記モーターを前記第1回転方向へ回転する、ロール紙印刷装置の制御方法。
【請求項5】
前記第1刃が移動した回数である第2計数をカウントし、
前記モーターを前記第2回転方向へ回転したとき、前記第2計数が第2定数以下の場合には前記エラーとし、
前記第2計数が前記第2定数より大きい場合であって、前記第1計数が前記第1定数以下の場合には、前記ローラーにより前記紙を搬送してから、前記モーターを前記第1回転方向へ回転する、請求項4に記載のロール紙印刷装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール紙印刷装置、及び、ロール紙印刷装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、紙ジャムなどによりカット不良状態となった場合、ホスト装置からリセットコマンドを受信してリセット(再起動)するプリンタ装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-107993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のプリンタ装置では、カット不良状態となった場合、ホスト装置の処理が必要であり、また手動で復帰させるため、ユーザーの手間と時間とが掛かるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ロール紙印刷装置は、ロール紙から紙を引き出して搬送するローラーと、第1刃と、第2刃と、前記第1刃を移動させるモーターと、前記第1刃を検出可能なセンサーと、を有するカッターと、前記ローラー及び前記カッターを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記モーターを第1回転方向へ回転し、第1時間経過後、前記センサーが前記第1刃の検出無しとし、さらに第2時間経過後も前記センサーが前記第1刃の検出無しとした場合、前記モーターを前記第1回転方向とは反対の第2回転方向へ回転して、第1計数をカウントし、前記第1計数が第1定数より大きい場合にはエラーとし、前記第1計数が前記第1定数以下の場合には、前記モーターを前記第1回転方向へ回転する。
【0006】
ロール紙から紙を引き出して搬送するローラーと、第1刃と、第2刃と、前記第1刃を移動させるモーターと、前記第1刃を検出可能なセンサーと、を有するカッターと、を備えるロール紙印刷装置の制御方法であって、前記モーターを第1回転方向へ回転し、第1時間経過後、前記センサーが前記第1刃の検出無しとし、さらに第2時間経過後も前記センサーが前記第1刃の検出無しとした場合、前記モーターを前記第1回転方向とは反対の第2回転方向へ回転して、第1計数をカウントし、前記第1計数が第1定数より大きい場合にはエラーとし、前記第1計数が前記第1定数以下の場合には、前記モーターを前記第1回転方向へ回転する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】ロール紙印刷装置の構成を示すブロック図。
図2】ロール紙印刷装置の構成を示す断面図。
図3】カッターを示す模式図。
図4】カッターが紙をカットするときの模式図。
図5】カットされた紙を示す模式図。
図6】ロール紙印刷装置の制御方法の一例を示すフローチャート。
図7】ロール紙印刷装置の制御方法の他の例示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.実施形態
1-1.ロール紙印刷装置の構成
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図2図5における方向を、X軸、Y軸及びZ軸が互いに直交する三次元座標系を用いて説明する。説明の便宜上、Z軸の正方向を上方向、上方、又は単に上と称し負方向を下方向、下方、又は単に下と称し、X軸の正方向を右方向、右方、又は単に右と称し負方向を左方向、左方、又は単に左と称し、Y軸の正方向を前方向、前方、又は単に前と称し負方向を後方向、後方、又は単に後と称して説明する。
【0009】
実施形態に係るロール紙印刷装置1は、例えば、POS(Point Of Sale)システムに使用され、レシートなどを発行する。なお、以下では、ロール紙印刷装置1を単に印刷装置1と称する。
図1に示すように、印刷装置1は、制御部10、記憶部11、ヘッド20、ローラー30、カッター40を含んで構成される。
【0010】
制御部10は、印刷装置1の各部を統括的に制御するCPU(Central Processing Unit)、入出力を管理するUART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)、論理回路であるFPGA(Field Programmable Gate Array)やPLD(Programmable Logic Device)などを含んで構成されている。CPUはプロセッサーともいう。
【0011】
記憶部11は、書き換え可能な不揮発性メモリーであるフラッシュROM(Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)、揮発性メモリーであるRAM(Random Access Memory)などを含んで構成されている。
制御部10のCPUは、記憶部11の不揮発性メモリーに記憶されたファームウェアなどのプログラム及び設定情報を読み出し、記憶部11のRAMを作業領域として用いて実行する。
【0012】
図2に示すように、カバー2は、ケース3のヒンジ2aを中心に回転可能である。ユーザーは、カバー2を開いて、ロール紙R1をケース3に収納することができる。ロール紙R1は、カバー2の第1ロール紙ガイド4、ケース3の第2ロール紙ガイド5により回転可能に支持される。
カバー2には、ローラー30、カッター40を構成する第1刃41が搭載される。一方、ケース3には、ヘッド20、カッター40を構成する第2刃42が搭載される。カバー2とケース3との境界には矩形の排出口6が形成される。
【0013】
ローラー30及びヘッド20、カッター40の第1刃41及び第2刃42は、それぞれ対向する位置にある。カッター40は、ローラー30及びヘッド20に対して、搬送方向FFの下流に位置する。
カッター40の第1刃41は、第2刃42に向かう方向である第1方向F、及び、第1方向Fとは反対方向である第2方向Rへ移動可能である。カッター40は、第1刃41及び第2刃42の間にある紙P1をカットする。紙片P2は、カッター40によりカットされた紙P1を示す。
【0014】
ローラー30は、ゴムなどの可撓性のある樹脂などの材料で円柱形状に形成される。ローラー30は、紙P1を介してヘッド20に対向する位置にあり、プラテン(platen)ともいう。
ローラー30は、摩擦により搬送する方式である、フリクションフィード(friction feed)方式により紙P1を搬送する。ローラー30は時計回りに回転し、ロール紙R1から紙P1を引き出し、搬送方向FFへ搬送する。搬送方向FFは前方へ向かう方向である。
このとき、ロール紙R1も時計回りに回転する。なお、ローラー30は反時計回りに回転することもでき、搬送方向FFとは反対方向へ紙P1を搬送することも可能である。
【0015】
ヘッド20は、例えばラインサーマルヘッドである。ヘッド20は、ローラー30に向かって押圧する押圧機構(図示省略)を有する。紙P1は、押圧機構により所定の圧力で、ローラー30及びヘッド20により挟まれる。
紙P1は、搬送面がローラー30に接触して搬送されながら、発色剤が塗布された印刷面がヘッド20に接触し、ヘッド20の発熱により発色されて印刷が行われる。なお、ロール紙R1は、外側が印刷面となるように、長尺状の紙P1が巻かれる。
ヘッド20により印刷された紙P1は、ローラー30により所定距離、搬送方向FFへ搬送され、排出口6から排出される。
【0016】
図3に示すように、カッター40は、第1刃41及び第2刃42に加え、センサー43、モーター44、ギア群45も有する。これらは、第1刃41と共に、カバー2に搭載される。
カッター40の第1刃41及び第2刃42は板形状をしている。第1刃41の刃先はV字形状をしており、左右の端から中央へ向かって、それぞれ下方へ傾斜している。第2刃42は、左右方向に直線形状の刃先を有する。
【0017】
第1刃41は、このV字形状の中央に、刃先が構成されていない部分である切欠き41aを有する。切欠き41aは、下方に楕円形に切り欠いた形状をしている。
第1刃41の左右の端からは、それぞれ矩形の突起が上方へ延びる。第1刃41の突起は、第1刃41の刃先が第2刃42の刃先と交差する前に、第2刃42に重畳して、移動する第1刃41の刃先をガイドすることができる。
【0018】
第1刃41は、ギア群45を介して、モーター44に駆動可能に接続される。モーター44は、第1回転方向への回転である正転、及び、第1回転方向とは反対方向の第2回転方向への回転である逆転が可能である。モーター44は、例えば、直流モーターである。モーター44は、いわゆるブリッジ回路(不図示)により、正転、逆転、停止が可能である。
ギア群45は、例えば、クランク機構(不図示)を有しており、モーター44の回転運動を第1刃41の往復運動へ変換することができる。モーター44の回転により、第1刃41は、上方である第1方向F、及び、下方である第2方向Rへ往復移動することができる。
なお、移動可能な第1刃41は可動刃とも称され、移動しない第2刃42は固定刃とも称される。
【0019】
図3に示すように、紙P1をカット前の第1刃41は、最も第2刃42から離れた下方の位置であり、第1位置である待機位置Aにある。一方、後述の図4に示すように、カット終了直後の第1刃41は、最も上方の位置であり、第2位置であるカット位置Bにある。
第1刃41は、待機位置Aからカット位置Bへ移動する際、紙P1をカットする。この後、第1刃41は、カット位置Bから待機位置Aへ戻る。第1刃41は、待機位置A及びカット位置Bの間を往復移動することができる。
【0020】
センサー43は、第1刃41の待機位置Aにおいて、第1刃41の有無を検出することができる。センサー43は、例えば、メカ式のスイッチ(不図示)を有している。
センサー43は、スイッチが押されたとき、待機位置Aに第1刃41があるとして検出することができる。一方、センサー43は、スイッチが押されていないとき、待機位置Aに第1刃41がないとして検出することができる。
【0021】
すなわち、センサー43は、第1刃41が待機位置Aにあるとき、第1刃41に当接して検出することができる。一方、センサー43は、第1刃41が待機位置Aから移動して当接しなくなると、第1刃41を検出しなくなる。
なお、センサー43は、スイッチに替えてフォトセンサーを有し、第1刃41の有無を検出するようにしてもよい。
【0022】
図4に示すように、カッター40の第1刃41は、モーター44により、第2刃42に向かう第1方向Fへ移動し、カット位置Bに至る。
このとき、第1刃41の左右の刃先は、両端からそれぞれ第2刃42の刃先と交差していく。第1刃41及び第2刃42の間にある紙P1がカットされていき、カット部Paが形成されていく。紙P1及び紙片P2は、カット部Paにおいて、切り離される。
【0023】
一方、第1刃41の切欠き41aは、第2刃42の刃先とは交差しないので、紙P1と紙片P2との間に切残りPbを形成する。紙P1及び紙片P2は、切残りPbで部分的に繋がっている。
カッター40が、切残りPbを形成するように、紙P1を部分的にカットすることを、いわゆるパーシャルカットという。
【0024】
距離Lは、カット位置Bにある第1刃41と、センサー43との間の距離である。また、距離Lは、第1刃41の待機位置Aからカット位置Bに至るまでの距離でもある。第1刃41は、距離Lの長さに亘って、上下に移動することができる。
紙P1をカット後、第1刃41は、モーター44により、第2刃42から離れる第2方向Rへ移動し、待機位置Aへ戻る。
【0025】
制御部10は、センサー43により第1刃41を検出すると、第1刃41が待機位置Aにあると判断することができる。
また、制御部10は、センサー43が第1刃41を検出した状態から検出しない状態へ移行すると、第1刃41が待機位置Aから第1方向Fへ移動したと判断することができる。
さらに、制御部10は、センサー43が第1刃41を検出しない状態から検出する状態へ移行すると、第1刃41が第1方向Fへ移動した後、逆方向の第2方向Rへ移動していき、待機位置Aへ戻ったと判断することができる。
【0026】
図5に、カッター40によりカットされた紙P1を示す。カット後の紙P1の搬送方向FFの下流には、紙片P2が形成される。紙P1と紙片P2との間には、カットされたカット部Paと、カットされない部分である切残りPbとが形成される。
上述のように、切残りPbは、第1刃41の切欠き41aにより形成される。切残りPbにより、紙P1及び紙片P2は部分的に繋がっている。紙片P2は、部分的に長尺状の紙P1に繋がっているので、印刷装置1から落下せず、仮にユーザーが取り出さなくても、散乱することがない。
【0027】
1-2.ロール紙印刷装置の制御方法の一例
制御部10がカッター40により紙P1をカットしようとする前であって、モーター44を回転させる前の初期状態において、第1刃41は待機位置Aにあり、センサー43は第1刃41を検出するものとする。
なお、以下では、第1刃41が第1方向Fへ移動することを進行とも称し、第2方向Rへ移動することを退行とも称する。
【0028】
図6に示すように、制御部10は、処理を開始し、カッター40により紙P1をカットしようとして、モーター44を正転させる(S100)。カッター40が正常であれば、モーター44の正転により、第1刃41が待機位置Aから進行し、センサー43が第1刃41を検出する状態から検出しない状態へと移行する。
制御部10は、第1時間T1が経過するまで待つ(S101)。第1時間T1は、モーター44の正転開始後、第1刃41が待機位置Aから離れていくのに十分な時間である。
【0029】
制御部10は、第1時間T1が経過後、センサー43により第1刃41の検出無しではないと判断した場合(S102:NO)、すなわち、センサー43により第1刃41の検出有りであると判断した場合、モーター44を停止し(S110)、カッター40のエラーとして処理する(S111)。
この場合、制御部10は、モーター44を正転させたにも拘わらず、まだ第1刃41が待機位置Aにあり、進行していないと判断することができる。
【0030】
第1刃41が進行できなくなる原因としては、カッター40内に紙P1や紙片P2が詰まったり、異物が混入するなどがある。
制御部10が、カッター40のエラーとして処理する場合には、不図示の液晶装置やブザーなどの報知装置により、カッター40にエラーが発生した旨の情報を報知するなどを実行する。また、制御部10は、不図示の通信回路を含む通信部により、カッター40にエラーが発生した旨の情報を、通信先の外部装置へ送信してもよい。なお、以下では、制御部10は、カッター40のエラーとなった場合には、同様に処理するものとする。
【0031】
カッター40のエラーを処理した後、制御部10は、一連の処理を終了する。この結果、制御部10は、紙P1への印刷やカットなどを途中で中止することとなる。
このとき、制御部10は、カッター40にエラーが発生した旨の情報を、記憶部11の不揮発性メモリーに記憶してもよい。印刷装置1の電源が再投入された後であっても、制御部10は記憶部11からこれらの情報を読み出して処理をすることができる。
【0032】
なお、ユーザーは、報知装置などによりカッター40にエラーが発生したことを知ると、カバー2を開いて、カッター40内に詰まった紙P1などを除去することができる。カバー2が開くと、対向する位置にあった第1刃41及び第2刃42が離れるので、ユーザーは、詰まった紙P1などを除去し易い。
【0033】
一方、制御部10は、第1時間T1が経過後、センサー43により第1刃41の検出無しであると判断した場合(S102:YES)、第2時間T2が経過するまで待つ(S103)。第2時間T2は、第1刃41がカット位置Bへ進行してから待機位置Aへ退行するまでの十分な時間である。
この場合、制御部10は、正常に、第1刃41が進行して、待機位置Aから離れたと判断することができる。
【0034】
制御部10は、第2時間T2が経過後、センサー43により第1刃41の検出有りであると判断した場合(S104:YES)、モーター44を停止し(S105)、一連の処理を終了する。
この場合、制御部10は、正常に、第1刃41が進行してカット位置Bに至り、紙P1をカットした後、退行して、待機位置Aへ戻ったと判断することができる。すなわち、制御部10は、カッター40により正常に紙P1をカットすることができたと判断することができる。
【0035】
一方、制御部10は、第2時間T2が経過後、センサー43により第1刃41の検出有りではないと判断した場合(S104:NO)、すなわち、センサー43により第1刃41の検出無しであると判断した場合、モーター44を停止し(S120)、所定時間に亘ってモーター44を逆転してから(S121)、モーター44を停止する(S122)。
【0036】
この場合、制御部10は、第1刃41が進行した後、待機位置Aへ戻ることができなくなったと判断することができる。この場合、上述のように、カッター40内の詰まった紙P1や紙片P2や、混入した異物などに、第1刃41が突っ込んでしまい、進行できなくなる場合がある。
このため、制御部10は、モーター44を逆転させて第1刃41を退行させようとし、詰まった紙P1などに突っ込んだ第1刃41を抜去させようとする。
【0037】
次に、制御部10は、第1計数n1に1を加算するようにカウントし(S123)、第1定数X1より大きいかを比較する(S124)。なお、初期状態では、第1計数n1=0、である。
制御部10は、第1計数n1が第1定数X1より大きいと判断した場合(S124:YES)、カッター40のエラーとして処理し(S125)、一連の処理を終了する。
一方、制御部10は、第1計数n1が第1定数X1より大きくないと判断した場合(S124:NO)、すなわち第1計数n1が第1定数X1以下であると判断した場合、再び、モーター44を正転させる処理(S100)へ戻る。
【0038】
上述のように、カッター40内の詰まった紙P1や紙片P2や、混入した異物に、第1刃41が突っ込んで進行できなくなった場合であっても、再度、第1刃41を進行させると、正常にカットできる場合がある。
この場合、制御部10は、引き続き、紙P1への印刷やカットなどをすることができる。制御部10は、エラーとして処理する場合のように、紙P1への印刷やカットなどを途中で中止しなくて済む。このように、制御部10は、ユーザーの手間と時間とを掛けず、カッター40を正常にカットできる状態に戻すことができる。
このように、制御部10は、エラーとして処理を終了させず、再びモーター44を正転させて、第1刃41を進行させることを試みる。以下では、この処理を回復処理とも称する。第1計数n1は、制御部10が回復処理を実行した回数となる。
【0039】
但し、カッター40内の詰まった紙P1などの状況によっては、第1刃41を進行させる回復処理を何回も繰り返すことは、第1刃41、第2刃42、モーター44、ギア群45などのカッター40の構成要素に、負担を負わせることにもなる。
そこで、制御部10は、回復処理を実行する回数を限定し、第1定数X1以下とする。なお、第1定数X1は例えば5であり、制御部10は、回復処理を5回まで実行する。制御部10は、回復処理が5回を超えた場合には、エラーとして処理する。
【0040】
なお、上述の第1時間T1、第2時間T2、第1計数n1、第1定数X1は、記憶部11の不揮発性メモリーに記憶される。印刷装置1の電源が再投入された後であっても、制御部10は記憶部11からこれらの情報を読み出して処理をすることができる。
また、制御部10は、回復処理により、カッター40が正常にカットできるようになった場合であっても、報知装置により、カッター40にエラーが発生した旨の情報や回復した旨の情報を報知するようにしてもよい。
【0041】
1-3.ロール紙印刷装置の制御方法の他の例
図7は、図6に対して、第2計数n2のカウント(S200)、第2計数n2と第2定数X2との比較判断(S201)、紙搬送(S202)等の処理が追加されたフローチャートを示す。これら以外の他の処理については、図6を参照して説明した上述の通りであるので説明を省略し、以下では、図7に追加した処理を中心に説明する。
【0042】
上述のように、制御部10は、モーター44を正転(S100)した後、センサー43により第1刃41の検出有りであると判断した場合(S104:YES)、正常に、第1刃41が進行して紙P1をカットした後、退行して、待機位置Aへ戻ったと判断することができる。
【0043】
このように、カッター40が正常に紙P1をカットできた場合、制御部10は、第2計数n2に1を加算するようにカウントする(S200)。
第2計数n2は、カッター40が紙P1を正常にカットした累積回数であり、第1刃41が移動した回数でもある。第2計数n2は、カッター40のいわゆる稼働回数でもある。
【0044】
上述のように、制御部10は、センサー43により第1刃41の検出有りではないと判断した場合(S104:NO)、モーター44を停止し(S120)、所定時間に亘ってモーター44を逆転(S121)してからモーター44を停止し(S122)、第1計数n1をカウントする(S123)。
【0045】
制御部10は、第2計数n2と第2定数X2との比較判断をする(S201)。制御部10は、第2計数n2が第2定数X2より大きいと判断した場合(S201:YES)、カッター40のエラーとして処理し(S125)、一連の処理を終了する。
一方、制御部10は、第2計数n2が第2定数X2より大きくないと判断した場合(S201:NO)、すなわち第2計数n2が第2定数X2以下であると判断した場合、上述のように、第1計数n1と第1定数X1とを比較判断する(S124)。
【0046】
第2定数X2は、カッター40が正常に紙P1をカット可能な累積回数であり、いわゆる寿命回数である。カッター40の稼働回数である第2計数n2が、寿命回数である第2定数X2を越えていた場合、制御部10が回復処理を実行すると、カッター40を劣化させてしまう可能性が高い。
そこで、制御部10は、カッター40の第2計数n2が第2定数X2を越えていた場合には、回復処理を実行せず、エラーとして処理する。制御部10は、カッター40の第2計数n2が第2定数X2以下である場合に、回復処理を実行するようにする。
【0047】
なお、第2定数X2は寿命回数より所定回数少ない値としてもよい。制御部10は、カッター40の第2計数n2が寿命回数に近付いたとき、回復処理を実行しないようにすることができる。
例えば、第1刃41は、寿命回数を越えて、又は、寿命回数に近付いて、摩耗などしている状態のときに劣化し易い。
このように、制御部10は、カッター40が寿命回数を越えたとき、又は、寿命回数に近付いたときには、回復処理を実行しないようにする。
【0048】
なお、制御部10が、第2計数n2と第2定数X2との比較判断(S201)を逆にしてもよい。すなわち、制御部10は、第2計数n2が第2定数X2より大きくないと判断した場合に、すなわち第2計数n2が第2定数X2以下であると判断した場合に、カッター40のエラーとして処理し(S125)、一連の処理を終了する。
一方、制御部10は、第2計数n2が第2定数X2より大きいと判断した場合に、第1計数n1と第1定数X1とを比較判断するようにする(S124)。この場合、第2定数X2は、寿命回数よりも所定回数少ない値とする。
金属のクリップなどの硬い異物がカッター40へ混入する可能性がある環境で印刷装置1が使用される場合がある。この場合、第2計数n2が少ない段階で、回復処理が実行されると、まだ摩耗に至っていない第1刃41が劣化してしまう可能性が高い。そこで、制御部10は、第2計数n2が少ない段階では、回復処理を実行しないようにする。第1刃41が寿命回数を越えて、又は、寿命回数に近付いたときに、制御部10は、回復処理を実行するようにする。このような環境で、第1刃41は、寿命回数を越えて、又は、寿命回数に近付くまで、使用できる可能性が高くなる。
【0049】
そして、制御部10は、第1計数n1が第1定数X1より大きいと判断した場合には(S124:YES)、カッター40のエラーとして処理し(S125)、一連の処理を終了する。
一方、制御部10は、第1計数n1が第1定数X1より大きくないと判断した場合(S124:NO)、すなわち第1計数n1が第1定数X1以下であると判断した場合、ローラー30により紙搬送(S202)させた後、再び、モーター44を正転させる処理(S100)へ戻り、回復処理を実行する。
【0050】
第1刃41が進行できなかった場合、カッター40内の紙P1や紙片P2などが複数重なっていることが原因となることがある。ローラー30により、これらの重なっている部分を搬送すると、第1刃41が進行できるようになることがある。この場合、制御部10は、ローラー30を微小距離、搬送することが好ましい。
そのため、制御部10は、ローラー30により紙P1などを搬送させてから、カッター40の回復動作を、第1定数X1以下の範囲で試みる。このように、制御部10は、ユーザーの手間と時間とを掛けず、カッター40を正常にカットできる状態に戻すことができる。
なお、上述の第2計数n2、第2定数X2は、記憶部11の不揮発性メモリーに記憶される。印刷装置1の電源が再投入された後であっても、制御部10は記憶部11からこれらの情報を読み出して処理をすることができる。
【0051】
以上説明した実施形態によれば、印刷装置1は、紙P1を搬送するローラー30と、第1刃41、第2刃42、第1刃41を移動させるモーター44、第1刃41を検出可能なセンサー43を有するカッター40と、ローラー30及びカッター40を制御する制御部10と、を備える。
そして、制御部10は、モーター44を正転である第1回転方向へ回転し、第1時間経過後、センサー43が第1刃41の検出無しとし、さらに第2時間経過後もセンサー43が第1刃41の検出無しとした場合、モーター44を逆転である第1回転方向とは反対の第2回転方向へ回転して、第1計数n1をカウントする。
制御部10は、第1計数n1が第1定数X1より大きい場合にはエラーとし、第1計数n1が第1定数X1以下の場合には、再びモーター44を第1回転方向へ回転する。
【0052】
この結果、カッター40内の詰まった紙P1や紙片P2や、混入した異物に、第1刃41が突っ込んで進行できなくなった場合であっても、制御部10は、再度、モーター44を第1回転方向へ回転して第1刃41を進行させる回復処理を実行し、正常にカットできるようにすることができる。
このように、制御部10は、ユーザーの手間と時間とを掛けず、カッター40を正常にカットできる状態に戻すことができる。そして、制御部10は、引き続き、紙P1への印刷やカットなどをすることができ、途中で中止しなくて済む。
【0053】
以上、これらの実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない限り、変更、置換、削除等されてもよい。
【0054】
上述では、モーター44は、直流モーターの例で説明したが、ステップモーターなど、他の種類のモーターでもよい。上述のモーター44における正転及び逆転を反対にしてもよい。
上述では、第1刃41の刃先はV字形状をしている例で説明した。第1刃41の刃先は第2刃42の刃先と共に、いわゆるハサミ形状となるように構成してもよい。この場合、ギア群45は、軸を中心に第1刃41を回転させるようにする。
【0055】
また、上述では、モーター44を正転した場合に、第1刃41を第1方向Fへ距離Lだけ移動させた。モーター44の正転及び逆転で、ギア群45のクランク機構のストロークを変える構成にしてもよい。例えば、ギア群45は、モーター44を逆転した場合には、第1刃41を第1方向Fへ距離Lを越えて移動させるようにする。具体的には、ギア群45は、第1刃41の切欠き41aが第2刃42の刃先を越えるように移動させるようにする。
【0056】
この場合、モーター44を逆転すると、第1刃41の切欠き41aも、第2刃42の刃先と交差することができるので、紙P1の全幅に亘ってカットすることができる。カッター40が、切残りPbを形成することなく、紙P1を全幅に亘ってカットすることを、いわゆるフルカットという。
カッター40は、モーター44を正転するとパーシャルカットすることができ、モーター44を逆転するとフルカットすることができる。
【0057】
上述のように、印刷装置1のヘッド20はラインサーマルヘッドの例で説明したが、ヘッド20の方式は問わない。例えば、ヘッド20はライン型のインクジェットヘッドでもよい。
紙P1は、感熱紙の例で説明したが、ヘッド20がインクジェットヘッドの場合には、普通紙であってもよい。
【0058】
上述では、カバー2に、ローラー30、カッター40を構成する第1刃41を搭載し、ケース3に、ヘッド20、カッター40を構成する第2刃42が搭載された例で説明したが、カバー2及びケース3にそれぞれが逆に搭載されてもよい。カッター40に含まれるセンサー43及びモーター44も、同様に、カバー2でなくケース3に搭載されてもよい。この場合、ロール紙R1は、外側が搬送面となるように、紙P1が巻かれる。
また、紙P1は、台紙に所定間隔でラベルが貼付されたラベル紙であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…ロール紙印刷装置、10…制御部、11…記憶部、20…ヘッド、30…ローラー、40…カッター、41…第1刃、41a…切欠き、42…第2刃、43…センサー、44…モーター、45…ギア群、F…第1方向、n1…第1計数、n2…第2計数、P1…紙、P2…紙片、R…第2方向、T1…第1時間、T2…第2時間、X1…第1定数、X2…第2定数。
図1
図2
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図4
図5
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図7