(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118585
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】処理液吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20240826BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240826BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20240826BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20240826BHJP
B05C 9/10 20060101ALI20240826BHJP
B05B 12/00 20180101ALI20240826BHJP
【FI】
B41J2/175 501
B41J2/01 123
B41J2/175 503
B41J2/01 401
B41J2/175 201
B41J2/175 113
B41J2/18
B41J2/01 305
B41J2/01 451
B05C11/10
B05C9/10
B05B12/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024945
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】岡井 俊介
(72)【発明者】
【氏名】高際 豊
【テーマコード(参考)】
2C056
4F035
4F042
【Fターム(参考)】
2C056EB12
2C056EB36
2C056EC17
2C056EC18
2C056FA10
2C056FD20
2C056HA29
2C056HA42
2C056KA01
2C056KB04
2C056KB16
2C056KB26
2C056KC02
4F035AA03
4F035BA05
4F035BA22
4F035BB04
4F035BB05
4F035BC06
4F042AA01
4F042AA02
4F042AB00
4F042BA07
4F042BA10
4F042BA12
4F042CA01
4F042CB02
4F042CB08
4F042CB20
4F042CB25
4F042DA03
4F042DF05
4F042DH09
4F042ED02
(57)【要約】
【課題】処理液をスプレーノズルから吐出開始時点で霧状に吐出しやすくする。
【解決手段】印刷装置は、処理液吐出部40と、制御部とを含む。処理液吐出部40は、処理液を収容するタンク49と、処理液を吐出するスプレーノズル41と、タンク49からスプレーノズル41に処理液を供給するための供給部材42と、処理液をスプレーノズル41に供給するポンプ45と、バルブ44と、一端がバルブ44に接続され、他端がタンク49に接続された循環部材43とを有する。制御部は、スプレーノズル41から処理液を吐出させる際に、ポンプ45とスプレーノズル41との連通を遮断する遮断状態をバルブ44に取らせつつポンプ45の駆動を開始し、処理液が供給部材42から循環部材43へと流通させてから、ポンプ45とスプレーノズル41とが連通する連通状態をバルブ44に取らせる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットプリンタにより印刷媒体に吐出されるインクの下地層、またはインクの上地層を形成するための処理液を収容する収容部と、
前記収容部に収容された処理液を吐出するスプレーノズルと、
前記収容部から前記スプレーノズルに処理液を供給するための供給流路と、
前記供給流路に設けられ、前記収容部に収容された処理液を前記スプレーノズルに供給するポンプと、
前記スプレーノズルと前記ポンプとの間の前記供給流路に設けられたバルブと、
一端が前記バルブと前記ポンプとの間の前記供給流路、又は前記バルブに接続され、他端が前記ポンプと前記収容部との間の前記供給流路、又は前記収容部に接続された循環流路と、
前記ポンプ及び前記バルブを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記スプレーノズルから処理液を吐出させる際に、前記ポンプと前記スプレーノズルとの連通を遮断する遮断状態を前記バルブに取らせつつ前記ポンプの駆動を開始し、処理液が前記供給流路から前記循環流路へと流通させてから、前記ポンプと前記スプレーノズルとが連通する連通状態を前記バルブに取らせることを特徴とする処理液吐出装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記ポンプの駆動を開始してから所定時間経過後に、前記連通状態を前記バルブに取らせることを特徴とする請求項1に記載の処理液吐出装置。
【請求項3】
前記供給流路には、処理液から不純物を濾過するフィルタが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の処理液吐出装置。
【請求項4】
前記循環流路の前記他端が前記収容部に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の処理液吐出装置。
【請求項5】
印刷媒体を支持可能なプラテンと、
前記プラテンに印刷媒体が支持されるようにセットするセット位置と、前記プラテンに支持された印刷媒体に前記スプレーノズルから処理液が吐出される吐出位置との間で前記プラテンを移動させる移動機構とをさらに備えており、
前記制御部は、
前記プラテンが前記セット位置から前記吐出位置に到達するまでに前記ポンプを駆動させ、前記プラテンが前記吐出位置に到達したら前記連通状態を前記バルブに取らせることを特徴とする請求項1に記載の処理液吐出装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記プラテンが前記セット位置から前記吐出位置に向けた移動を開始してから前記ポンプを駆動させることを特徴とする請求項5に記載の処理液吐出装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記スプレーノズルからの処理液の吐出を終了させる際に、前記連通状態から前記遮断状態を前記バルブに取らせてから前記ポンプの駆動を停止することを特徴とする請求項1に記載の処理液吐出装置。
【請求項8】
印刷媒体を支持可能なプラテンと、
前記プラテンに印刷媒体が支持されるようにセットするセット位置と、前記プラテンに支持された印刷媒体に前記スプレーノズルから処理液が吐出される吐出領域を前記セット位置から通過した通過位置との間で前記プラテンを移動させる移動機構とをさらに備えており、
前記制御部は、
前記プラテンが前記セット位置と前記通過位置との間であって前記スプレーノズルからの処理液の吐出を終了させる吐出終了位置に到達したときに、前記連通状態から前記遮断状態を前記バルブに取らせてから前記ポンプの駆動を停止することを特徴とする請求項7に記載の処理液吐出装置。
【請求項9】
前記循環流路の一端が前記バルブに接続されており、
前記バルブは、前記ポンプと前記スプレーノズルとの連通を遮断する前記遮断状態を取るときに前記循環流路と前記供給流路とが連通する連通状態を取り、前記ポンプと前記スプレーノズルとが連通する前記連通状態を取るときに前記循環流路と前記供給流路との連通を遮断する遮断状態を取る、三方バルブであることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の処理液吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクの下地層、またはインクの上地層を形成するための処理液をスプレーノズルから吐出させる処理液吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、印刷媒体としての被捺染媒体に、印刷液を固着させるための前処理剤を塗布する前処理剤塗布部を有する捺染装置について記載されている。この捺染装置の前処理剤塗布部は、前処理剤が貯留されたタンクと流路を介して接続されており、当該タンクから前処理剤が供給される。捺染装置は、被捺染媒体に画像の印刷を行う際、前処理剤塗布部より被捺染媒体に前処理剤を塗布し、その後、前処理剤によって形成された下地層上に印刷液を吐出する。こうして、被捺染媒体に画像が印刷される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、前処理剤塗布部として印刷媒体に処理液を吐出するスプレーノズルを採用し、当該スプレーノズルとタンクとを繋ぐ流路にポンプを設けることを考えた。そして、当該ポンプを駆動することで、タンクに貯留された前処理剤をスプレーノズルに供給し、スプレーノズルから吐出された前処理液で印刷媒体に前処理剤を塗布することを検討した。スプレーノズルから印刷媒体に前処理剤を塗布するタイミングでポンプを駆動した場合、ポンプの駆動開始のタイミングではスプレーノズルへの前処理剤の供給圧力が小さいため、スプレーノズルから霧状に前処理剤が吐出されず、スプレーノズルから液垂れするようにまとまって前処理剤が吐出される。この結果、液垂れのように吐出された前処理剤が印刷媒体に疎らに塗布される問題や、印刷媒体及び印刷媒体を支持するプラテンなどに着弾したときに飛び散りやすくなって装置などが汚れる問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、処理液をスプレーノズルから吐出開始時点で霧状に吐出しやすくすることが可能な処理液吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の処理液吐出装置は、インクジェットプリンタにより印刷媒体に吐出されるインクの下地層、またはインクの上地層を形成するための処理液を収容する収容部と、前記収容部に収容された処理液を吐出するスプレーノズルと、前記収容部から前記スプレーノズルに処理液を供給するための供給流路と、前記供給流路に設けられ、前記収容部に収容された処理液を前記スプレーノズルに供給するポンプと、前記スプレーノズルと前記ポンプとの間の前記供給流路に設けられたバルブと、一端が前記バルブと前記ポンプとの間の前記供給流路、又は前記バルブに接続され、他端が前記ポンプと前記収容部との間の前記供給流路、又は前記収容部に接続された循環流路と、前記ポンプ及び前記バルブを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記スプレーノズルから処理液を吐出させる際に、前記ポンプと前記スプレーノズルとの連通を遮断する遮断状態を前記バルブに取らせつつ前記ポンプの駆動を開始し、処理液が前記供給流路から前記循環流路へと流通させてから、前記ポンプと前記スプレーノズルとが連通する連通状態を前記バルブに取らせる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の処理液吐出装置によると、スプレーノズルから処理液を吐出させる際に、処理液を供給流路から循環流路へと流通させてからバルブを遮断状態から連通状態を取ることで、供給流路内における処理液の供給圧力が、単にポンプの駆動開始のタイミングでスプレーノズルに処理液を供給するときよりも高まった状態で、スプレーノズルに処理液が供給される。このため、スプレーノズルへの処理液の供給の開始とともにスプレーノズルから霧状に処理液が吐出されやすくなる。この結果、所望の印刷媒体に処理液を霧状に吐出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る処理液吐出装置としての印刷装置の概略斜視図である。
【
図2】
図1に示す印刷装置の内部構造を示す平面図である。
【
図4】
図1に示す印刷装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図5】
図1に示す印刷装置に印刷開始指令が入力されたときに実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図6】(a)はプラテンがセット位置から処理液吐出領域に到達したときの状況を示す図であり、(b)はプラテンが処理液吐出領域を通過したときの状況を示す図である。
【
図7】(a)はプラテンが印刷前待機位置に搬送されたときの状況を示す図であり、(b)はプラテンが印刷搬送領域に搬送されたときの状況を示す図である。
【
図8】本発明の変形例に係る処理液吐出部の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の処理液吐出装置を含む印刷装置1を、図面を参照しつつ説明する。以下の説明においては、印刷装置1が使用可能に設置された状態(
図1の状態)を基準として上下方向及び前後方向が定義され、印刷装置1を前方から見て左右方向が定義される。以下の説明では、左右方向を主走査方向、前後方向を副走査方向と称することもある。
【0010】
図1に示す印刷装置1は、印刷媒体にインクを吐出して印刷を行うインクジェットプリンタを含む。印刷装置1は、白、黒、イエロー、シアン、およびマゼンタの5色のインクを用いて、印刷媒体にカラー画像を印刷できる。印刷媒体は、インクを吐出して画像を形成することが可能であれば特に限定するものではなく、例えば、布帛、紙等である。本実施形態においては、印刷媒体として、例えば、ポリエステル繊維を含むTシャツをいう。印刷装置1で印刷媒体(Tシャツ)に印刷を実行する際は、インクが吐出される下地層を形成する処理液が印刷媒体に塗布される。処理液は、下地層上に吐出されたインクと反応することでインクの成分を凝集させ、滲みの発生を防ぐ。処理液の揮発成分には、ギ酸などの有機酸が含まれている。
【0011】
以下では、5色のインクのうち白色のインクを「白インク」という。5色のインクのうち黒、シアン、イエロー、およびマゼンタの4色のインクを総称する場合、またはいずれかを特定しない場合「カラーインク」という。白インクとカラーインクとを総称する場合、またはいずれかを特定しない場合、単に「インク」という。白インクは画像の白色を表す部分として、またはカラーインクの下地として印刷に用いられる。カラーインクは、白インクによる下地の上に吐出され、カラー画像の印刷に用いられる。
【0012】
図1及び
図2を参照し、印刷装置1の外観構成を説明する。印刷装置1は、
図1に示すように、筐体8、プラテン12、搬送機構14、操作部15、表示画面16、及び、処理液吐出部40及び制御部80を含む。プラテン12、搬送機構14、処理液吐出部40及び制御部80が、本発明の「処理液吐出装置」に該当する。また、印刷装置1の処理液吐出部40を除く部分により、インクジェットプリンタ部分が構成されている。筐体8は、略直方体形状を有し、前面の左右及び上下方向の略中央に矩形状のプラテン開口13が形成されている。筐体8内には、5色のインクが収容された5つのカートリッジ(不図示)が収納されている。プラテン12は、
図2に示すように、略矩形平面形状を有する板状部材からなる。プラテン12の上面は、印刷媒体を支持する支持面12aである。支持面12aは、四角形状を有している。
【0013】
操作部15は、プラテン開口13から前方に突出したプラテン支持部37(後述する)の左右両端部にそれぞれ設けられている。操作部15は、ユーザによる操作に応じた情報を後述の制御部80に出力する。ユーザは操作部15を操作することで、印刷装置1による印刷を開始するための印刷開始指令(印刷データ含む)等を制御部80に入力できる。表示画面16は、筐体8の前面のうち、プラテン開口13よりも右側上部に設けられている。表示画面16は各種情報を表示する。
【0014】
搬送機構14(本発明の「移動機構」)は、印刷媒体が配置されるプラテン12を、プラテン開口13を通して筐体8の内部と外部との間において搬送する。プラテン12が処理液吐出領域P4に配置された際に、処理液吐出部40から処理液が吐出され、印刷媒体に処理液が塗布される。そして、プラテン12が
図2に示す筐体8内部の印刷搬送領域P3(
図2中二点鎖線で示す位置)に配置された際に、後述するヘッド30からインクが吐出されて印刷が行われる。
図2に示すように、搬送機構14は、プラテン支持部37、左右一対のレール38、伝達部材39、及び副走査モータ26(
図4参照)を有する。
【0015】
プラテン支持部37は、
図1及び
図2に示すように、プラテン12を下方から支持する。左右一対のレール38は、
図2に示すように、前後方向に延び、プラテン支持部37を前後方向に移動可能に支持する。伝達部材39は、プラテン支持部37と、副走査モータ26とに連結し、副走査モータ26の駆動に応じて、プラテン支持部37を前後方向、すなわち、副走査方向に移動させる。
【0016】
作業者は、プラテン12が筐体8の前面よりも前側に配置された状態、即ち筐体8の外部で、プラテン12の支持面12aに印刷媒体を配置する。
図2に示すプラテン12の位置は、プラテン12に印刷媒体を支持させるセット位置P1である。処理液吐出領域P4は、プラテン12の搬送経路の途中に存在し、処理液吐出部40のスプレーノズル41(後述する)から処理液が吐出される領域であり、スプレーノズル41の下方(すなわち、処理液の吐出方向)に存在する。なお、処理液吐出領域P4の左右方向の幅は、プラテン12の左右方向の幅以上である。また、プラテン12は、印刷媒体に印刷する前に、セット位置P1から印刷前待機位置P2(
図2中二点鎖線で示す位置)に移動する。印刷前待機位置P2は、処理液吐出領域P4及び印刷搬送領域P3よりも後方であってプラテン12の搬送経路の後端部にある。印刷搬送領域P3は、プラテン12の搬送経路において、後述のヘッド30の主走査方向(左右方向)の移動経路と上下方向に重なる領域である。ヘッド30の主走査方向の移動経路は、最も後方のヘッド30(白ヘッド31)の後端と最も前方のヘッド30(カラーヘッド34)の前端との間の経路である。
【0017】
印刷装置1の内部構造を説明する。
図2に示すように、印刷装置1は、筐体8の内部に枠体2、ヘッド31~34、及び、移動機構77を含む。枠体2は前後方向、左右方向、または上下方向に延びる複数のシャフトによって格子状に構成される。移動機構77は、枠体2に固定されたガイドシャフト20及びキャリッジ6を含む。ガイドシャフト20は、
図2に示すように、前シャフト21、後シャフト22、左シャフト23、及び右シャフト24で構成される。
【0018】
前シャフト21は、
図2に示すように、枠体2の前端部に配置され、枠体2の左端部から右端部まで左右方向に延びる。後シャフト22は、枠体2の前後方向の略中央に配置され、枠体2の左端部から右端部まで左右方向に延びる。左シャフト23は、枠体2の左端部に配置され、前シャフト21の左端から後シャフト22の左端までの前後方向に延びる。右シャフト24は、枠体2の右端部に配置され、前シャフト21の右端から後シャフト22の右端まで前後方向に延びる。前シャフト21及び後シャフト22はキャリッジ6を支持する。搬送機構14は枠体2に固定される。
【0019】
図2に示すように、キャリッジ6は主走査方向に移動可能に前シャフト21と後シャフト22とに支持される。キャリッジ6は板状であり、前後左右方向に延びる。キャリッジ6は前シャフト21から後シャフト22まで延びる。
【0020】
キャリッジ6には、
図2に示すように、白ヘッド31、32、及び、カラーヘッド33、34が設けられる。これら白ヘッド31,32及びカラーヘッド33,34により、本発明の「ヘッド」が構成されている。
【0021】
白ヘッド31、32、カラーヘッド33、34はそれぞれ同じ構造を有し、本実施形態では直方体状を有する。以下では、白ヘッド31、32、カラーヘッド33、34を総称する場合、またはいずれかを特定しない場合、「ヘッド30」という。白ヘッド31、32は、
図2に示すように、キャリッジ6の後部に位置する。白ヘッド31はキャリッジ6の右後部に位置する。白ヘッド32は白ヘッド31よりも左側に位置し、白ヘッド31に対して前側にずれる。白ヘッド32の後部は左右方向において白ヘッド31の前部と重なる。
【0022】
カラーヘッド33、34は、
図2に示すように、白ヘッド31、32に対して前側に位置する。カラーヘッド33、34は、それぞれ、左右方向において白ヘッド31、32と同じ位置に位置する。つまり、白ヘッド31,32とカラーヘッド33,34は、副走査方向に沿って並んで配置される。カラーヘッド34はカラーヘッド33よりも左側に位置し、カラーヘッド33に対して前側にずれる。カラーヘッド34の後部は左右方向においてカラーヘッド33の前部と重なる。
【0023】
これらヘッド30の下面には複数のノズル(不図示)が形成されている。白ヘッド31,32の複数のノズルは、白インクを下方に吐出する。各カラーヘッド33,34の複数のノズルは、前後方向に延びるノズル列が左右方向に4列並ぶように配置されている。各カラーヘッド33,34の4列のノズル列にはそれぞれ異なる色のカラーインクが対応する。つまり、各カラーヘッド33,34の複数のノズルはそれぞれのノズル列に対応する色のカラーインクを下方に吐出する。
【0024】
移動機構77は、駆動ベルト98及び主走査モータ99を有する。キャリッジ6の後端部には、駆動ベルト98が連結する。駆動ベルト98は後シャフト22上に設けられ、左右方向に延びる。駆動ベルト98の左端部は主走査モータ99に連結する。主走査モータ99が駆動することで、駆動ベルト98は、キャリッジ6を前シャフト21及び後シャフト22に沿って左右方向に移動させる。つまり、移動機構77は、ヘッド30が搭載されたキャリッジ6を主走査方向に移動させる。
図2は、キャリッジ6が移動範囲Rの右端に位置する状態を示す。
【0025】
図2では、ヘッド30の移動範囲Rを、キャリッジ6が主走査方向に移動できる最大の範囲で示す。ヘッド30は、移動機構77により、主に、メンテナンス位置B1、吐出領域B2、及び、ヘッド待機位置B3の何れかに配置される。メンテナンス位置B1は、ヘッド30の移動範囲Rの左端部にあり、ヘッド30が図示しないワイパやキャップなどのメンテナンスユニットによりメンテナンスされる位置である。印刷装置1は、非印刷時にヘッド30をメンテナンス位置B1に移動し、メンテナンスユニットによるメンテナンスを行う。吐出領域B2は、主走査方向において、メンテナンス位置B1とヘッド待機位置B3との間、且つヘッド30の移動経路において、プラテン12の搬送経路(印刷搬送領域P3)と上下方向に重なる領域である。また、吐出領域B2は、ヘッド30がキャリッジ6によって通過する際に、印刷データに従ってヘッド30がインクを吐出し、プラテン12上の印刷媒体に印刷が行われる。ヘッド待機位置B3は、ヘッド30の移動範囲Rの右端にあり、作業者がヘッド30に対する清掃等の操作を行う場合に配置される位置である。印刷装置1は、例えば、ユーザの操作によって操作部15から入力された指示に基づき、ヘッド30をヘッド待機位置B3に移動させ、待機させる。
【0026】
印刷装置1は、印刷搬送領域P3において副走査モータ26の駆動によってプラテン12を副走査方向に移動させ、吐出領域B2において主走査モータ99の駆動によってキャリッジ6を主走査方向に移動させることで、印刷媒体がヘッド30に対して副走査方向及び主走査方向に相対的に移動する。
【0027】
ヘッド30を主走査方向へ移動させ、ヘッド30が印刷媒体と対向しているときに印刷媒体にインクを吐出させる動作を「吐出走査」という。印刷装置1は、吐出走査と、副走査方向へのプラテン12の移動を繰り返すことで、印刷媒体への印刷を行う。例えば、印刷装置1は吐出走査において白ヘッド31、32から白インクを吐出して印刷媒体にカラーインクの下地を形成する。印刷装置1は吐出走査において印刷媒体に形成された下地の上に、カラーヘッド33、34からカラーインクを吐出してカラー画像を印刷する。
【0028】
処理液吐出部40は、
図2に示すように、左右方向に並んで配置された7つのスプレーノズル41を有する。また、処理液吐出部40は、
図3に示すように、処理液を収容するタンク49(本発明の「収容部」)と、スプレーノズル41毎に設けられた、供給部材42、循環部材43、バルブ44、ポンプ45及びフィルタ46とを有している。つまり、処理液吐出部40は、スプレーノズル41と同じ数だけ、供給部材42、循環部材43、バルブ44、ポンプ45及びフィルタ46を有している。なお、
図3には、1つのスプレーノズル41に対して設けられた供給部材42、循環部材43、バルブ44、ポンプ45及びフィルタ46が示されている。
【0029】
各スプレーノズル41に対する、供給部材42、循環部材43、バルブ44及びポンプ45の構成は同じであるため、1つのスプレーノズル41に対応する構成を説明する。スプレーノズル41は、供給部材42に接続されており、下面に吐出口を有する。また、スプレーノズル41は、所定圧力以上で処理液が供給されることで、吐出口から下方に向かって処理液を霧状に吐出することが可能に構成されている。7つのスプレーノズル41から吐出された処理液の大部分は処理液吐出領域P4内に吐出される。
【0030】
供給部材42は、配管部材であり、一端がスプレーノズル41に接続され、他端がタンク49に接続されており、タンク49内の処理液をスプレーノズル41へ供給する。供給部材42の内部流路は、本発明の「供給流路」に該当する。
【0031】
ポンプ45は、供給部材42の途中部位に設けられ、制御部80により駆動されることでタンク49内の処理液をスプレーノズル41側へ供給する。フィルタ46は、処理液から不純物を濾過するものであり、ポンプ45とタンク49との間の供給部材42に設けられている。フィルタ46が供給部材42に設けられていることで、タンク49からポンプ45へと供給部材42内を流れる処理液から不純物を濾過することができる。
【0032】
バルブ44は、スプレーノズル41とポンプ45との間の供給部材42に設けられている。本実施形態におけるバルブ44は、制御部80の制御により作動する三方バルブであり、循環部材43の一端も接続されている。これにより、バルブ44は、ポンプ45とスプレーノズル41との連通を遮断する遮断状態を取らせつつ循環部材43と供給部材42とが連通する連通状態を取らせる第1状態と、ポンプ45とスプレーノズル41とが連通する連通状態を取らせつつ循環部材43と供給部材42との連通を遮断する遮断状態を取らせる第2状態とを選択的に取らせることができる。
【0033】
循環部材43も、供給部材42と同様な配管部材であり、一端がバルブ44に接続され、他端がタンク49に接続されている。これにより、循環部材43は、バルブ44が第1状態を取るときに、供給部材42からの処理液をタンク49へと循環させることができる。循環部材43の内部流路は、本発明の「循環流路」に該当する。
【0034】
このような構成において、制御部80がポンプ45を駆動し、バルブ44に第1状態を取らせることで、タンク49からの処理液を供給部材42から循環部材43へと流通させてタンク49へと循環させることができる。また、制御部80がポンプ45を駆動し、バルブ44に第2状態を取らせることで、タンク49からの処理液をスプレーノズル41へと供給することができる。スプレーノズル41へと供給された処理液は、スプレーノズル41から霧状に吐出される。これにより、印刷媒体に処理液を塗布することができる。
【0035】
図4を参照し、印刷装置1の電気的構成を説明する。制御部80にはCPU81、ROM82、RAM83、およびフラッシュメモリ84が設けられる。CPU81は印刷装置1の制御を司り、ROM82、RAM83、およびフラッシュメモリ84と電気的に接続する。ROM82は、CPU81が印刷装置1の動作を制御するための制御プログラム、各種プログラムの実行時にCPU81が必要な情報等を記憶する。ROM82は、例えば主走査モータ99の回転角度に基づいてキャリッジ6(ヘッド30)の各位置を記憶し、副走査モータ26の回転角度に基づいてプラテン12の各位置を記憶する。RAM83は、制御プログラムで用いられる各種データ等を一時的に記憶する。フラッシュメモリ84は、不揮発性であり、印刷を行うための印刷データ等を記憶する。
【0036】
制御部80には、
図4に示すように、主走査モータ99、副走査モータ26、4つのヘッド駆動部301~304、操作部15、7つのバルブ44、及び、7つのポンプ45が電気的に接続される。主走査モータ99、副走査モータ26、ヘッド駆動部301~304、7つのバルブ44及び7つのポンプ45は、制御部80による制御によって駆動する。なお、バルブ44及びポンプ45はそれぞれ7つ設けられているが、
図4には便宜上1つのバルブ44及びポンプ45を示している。
【0037】
主走査モータ99と副走査モータ26には、それぞれエンコーダ991、261が設けられる。エンコーダ991は、主走査モータ99の回転角度を検出し、検出結果を制御部80に出力する。エンコーダ261は、副走査モータ26の回転角度を検出し、検出結果を制御部80に出力する。
【0038】
4つのヘッド駆動部301~304は、白ヘッド31、32及びカラーヘッド33、34に順に対応し、これらヘッド31~34に含まれている。各ヘッド駆動部301~304は、ヘッド30の複数のノズルにそれぞれ連通する複数の個別流路内のインクにエネルギーを選択的に付与可能な複数の駆動素子(圧電素子または発熱素子)によって構成される。これらヘッド駆動部301~304は、それぞれ、駆動することで白ヘッド31、32、カラーヘッド33、34内のインクにエネルギーを付与し、対応するノズル313、323、333、343から選択的にインクを吐出させる。
【0039】
<印刷時の制御>
図5を参照し、印刷媒体に画像を印刷する際の制御部80による制御について説明する。ユーザによって操作部15が操作され、印刷開始指令が印刷装置1に入力されると、制御部80がROM82から制御プログラムを読み出して動作することで、
図5のフローを実行する。以下、
図5のフローについて説明する。
【0040】
制御部80は、まず、印刷開始指令が入力されたか否かを判定する(S1)。ユーザは、操作部15を操作し印刷開始指示を入力する前に、処理液が塗布されていない印刷媒体(Tシャツ)をプラテン12の支持面12aに配置する。なお、プラテン12は、非印刷時においてはセット位置P1に配置されている。印刷装置1は、非印刷時においては、通常、ヘッド30がメンテナンス位置B1に配置され、図示しないメンテナンスユニットのキャップによりヘッド30の複数のノズルが覆われるキャッピングが行われている。また、すべてのポンプ45は駆動が停止されており、すべてのバルブ44は第1状態を取る。
【0041】
印刷開始指示が入力されていない場合(S1:NO)、印刷開始指示が入力されるまでS1が繰り返される。一方、印刷開始指示が入力された場合(S1:YES)、制御部80は、
図6(a)に示すように、副走査モータ26を制御し、プラテン12をセット位置P1から処理液吐出領域P4に向けた搬送を開始する。
【0042】
次に、制御部80は、プラテン12の搬送を開始してから第1所定時間が経過したか否かを判定する(S3)。第1所定時間が経過していない場合(S3:NO)、S3を繰り返す。一方、第1所定時間が経過した場合(S3:YES)、制御部80は、すべてのポンプ45の駆動を開始する(S4)。本実施形態においては、プラテン12がセット位置P1から処理液吐出領域P4に到達するまでに要する時間が例えば、数秒程度である。このため、プラテン12の移動を開始してから1秒後(第1所定時間経過後)にはポンプ45の駆動を開始する。このとき、バルブ44は、第1状態を取るため、ポンプ45の駆動により、タンク49の処理液が各スプレーノズル41に対応する供給部材42から循環部材43を流通してタンク49へ循環する。これにより、各ポンプ45により供給部材42を流通する処理液の供給圧力を高めることができる。
【0043】
次に、制御部80は、プラテン12の搬送を開始してから第2所定時間が経過したか否かを判定する(S5)。第2所定時間が経過していない場合(S5:NO)、S5を繰り返す。一方、第2所定時間が経過した場合(S5:YES)、制御部80は、バルブ44が第1状態から第2状態へと切り替えられるように、すべてのバルブ44を制御する(S6)。これにより、循環部材43と供給部材42との連通がそれぞれ遮断され、ポンプ45とスプレーノズル41とがそれぞれ連通し、供給部材42から所定圧力以上で各スプレーノズル41に処理液が供給される。このため、バルブ44の切り替えタイミングとほぼ同時に、各スプレーノズル41から霧状に処理液が吐出される。また、第2所定時間は、第1所定時間よりも大きく、プラテン12がセット位置P1から搬送されてから処理液吐出領域P4に到達するまでの搬送時間に等しい。このため、プラテン12が
図6(a)に示すように処理液吐出領域P4(本発明の「吐出位置」)に到達したタイミングで、各スプレーノズル41から処理液が吐出される。このため、処理液吐出領域P4を通過するプラテン12に支持された印刷媒体に霧状に吐出された処理液が塗布される。このため、印刷媒体にはほぼ均一に処理液が塗布された下地層が形成される。
【0044】
次に、制御部80は、プラテン12の搬送を開始してから第3所定時間が経過したか否かを判定する(S7)。第3所定時間が経過していない場合(S7:NO)、S7を繰り返す。一方、第3所定時間が経過した場合(S7:YES)、制御部80は、バルブ44が第2状態から第1状態へと切り替えられるように、すべてのバルブ44を制御する(S8)。これにより、ポンプ45とスプレーノズル41との連通がそれぞれ遮断され、循環部材43と供給部材42とがそれぞれ連通し、処理液が供給部材42から循環部材43を流通しタンク49へと循環する。このため、バルブ44の切り替えタイミングとほぼ同時に、各スプレーノズル41への処理液の供給が遮断され、各スプレーノズル41からの処理液の吐出が止まる。第3所定時間は、第2所定時間よりも大きく、プラテン12がセット位置P1から搬送されてから処理液吐出領域P4に通過するまでの搬送時間に等しい。このため、プラテン12が
図6(b)に示すように処理液吐出領域P4を通過(すなわち、本発明の「吐出終了位置」に到達)したタイミングで、各スプレーノズル41からの処理液の吐出を停止することができる。なお、プラテン12の搬送経路において、処理液吐出領域P4よりも後方位置は、本発明の「通過位置」に該当する。本実施形態においては、プラテン12の支持面12a全体に処理液が吐出されるように制御することで、印刷媒体の表面全体に処理液を塗布するように制御しているが、第2及び第3所定時間を適宜変更することで、印刷媒体の前後方向における一部分にだけ処理液を塗布してもよい。また、印刷媒体の一部にだけ処理液を塗布する場合、印刷媒体にインクを吐出して形成する画像範囲に対応する領域だけに処理液を塗布してもよい。
【0045】
また、第2所定時間は、供給部材42を流通する処理液の供給圧力が所定圧力(スプレーノズル41から処理液を霧状に吐出可能な圧力)以上となる時間に設定してもよい。こうすることで、S5からS6に進むときには、供給圧力が所定圧力以上となるため、各スプレーノズル41から霧状に処理液が吐出される。また、供給部材42を流通する処理液の供給圧力を検出する圧力検出部を設け、制御部80が、上述のS5に代えて、圧力検出部が検出した供給圧力が所定圧力以上であるか否かを判定してもよい。供給圧力が所定圧力未満の場合(S5:NO)、S5を繰り返す。一方、供給圧力が所定圧力以上である場合(S5:YES)、制御部80は、S6に進む。これにおいても、各スプレーノズル41から霧状に処理液が吐出される。
【0046】
次に、制御部80は、すべてのポンプ45の駆動を停止する(S9)。本実施形態においては、S8の直後にS9を実行するが、S9がS8よりは先に行われなければ、S8とS9が同時であってもよい。S9がS8よりも先に実行されると、ポンプ45の駆動停止とともにスプレーノズル41への処理液の供給圧力が低下し、スプレーノズル41から液垂れするようにまとまって多くの処理液が吐出されるが、S9よりも先にS8が実行されることで、スプレーノズル41からの処理液の液垂れを抑制できる。また、S8のバルブ44の切り替えタイミングからポンプ45の駆動を停止するまでの時間が短いほど、ポンプ45の無駄な駆動時間を減らすことが可能となるため、ポンプ45の寿命を延ばすことが可能となる。また、7つのスプレーノズル41のうち、選択的にスプレーノズル41から処理液を吐出させる際は、当該スプレーノズル41に対応するポンプ45及びバルブ44を上述のように制御することで、選択したスプレーノズル41から霧状に処理液を吐出させることができる。このようにスプレーノズル41を選択して処理液を吐出することで、印刷媒体の左右方向における処理液の塗布範囲を適宜調整することが可能となる。
【0047】
本実施形態においては、S4、S6、S8の処理が、プラテン搬送を開始してから第1~第3所定時間が経過したタイミングで実行されているが、プラテン12が搬送された搬送位置に応じてこれらS4、S6、S8の処理が実行されてもよい。なお、S9はS8の直後又は同時に実行されればよい。つまり、制御部80は、エンコーダ261からの検出結果に基づいてプラテン12の先端がセット位置P1と処理液吐出領域P4との間にあるときに、S4を実行してもよい。また、制御部80は、エンコーダ261からの検出結果に基づいてプラテン12の先端が処理液吐出領域P4に到達したときに、S6を実行してもよい。また、制御部80は、エンコーダ261からの検出結果に基づいてプラテン12の後端が処理液吐出領域P4を通過したときに、S8,S9を実行してもよい。これらにおいても、上述と同様の効果を得ることができる。
【0048】
本実施形態におけるプラテン12の搬送は、プラテン12がセット位置P1から印刷前待機位置P2に到達するまで定速で実行されるが、区間毎に搬送速度を変化させてもよい。例えば、プラテン12が処理液吐出領域P4を通過するときの搬送速度が、セット位置P1からプラテン12の搬送が開始されてから処理液吐出領域P4にプラテン12が到達するまでの搬送速度、及び、プラテン12が処理液吐出領域P4を通過してから印刷前待機位置P2に到達するまでの搬送速度よりも遅くてもよいし、又は速くてもよい。また、制御部80は、プラテン12が処理液吐出領域P4に到達したときにプラテン12の搬送を停止してもよい。そして、S6のバルブ44の切り替えのタイミングでプラテン12の搬送を再開してもよい。また、制御部80は、プラテン12が処理液吐出領域P4を通過したときにもプラテン12の搬送を停止してもよい。そして、S8のバルブ44の切り替えのタイミングでプラテン12の搬送を再開してもよい。
【0049】
次に、制御部80は、
図7(a)に示すように、エンコーダ261からの検出結果に基づいてプラテン12が印刷前待機位置P2に到達すると副走査モータ26を制御し、プラテン搬送を停止させる(S10)。
【0050】
次に、制御部80は、印刷媒体に画像を印刷する印刷処理を実行する(S11)。制御部80は、エンコーダ261からの検出結果に基づいて副走査モータ26を制御し、
図7(b)に示すようにプラテン12を印刷前待機位置P2から印刷搬送領域P3に移動させる。
【0051】
そして、制御部80は、エンコーダ991からの検出結果に基づいて主走査モータ99を制御し、キャリッジ6をメンテナンス位置B1から吐出領域B2へと移動させて、ヘッド30をプラテン12に配置された印刷媒体と対向させる。
【0052】
制御部80は、プラテン12の少なくとも一部が印刷搬送領域P3に位置する状態で、且つキャリッジ6が吐出領域B2に位置する状態で、ヘッド駆動部301~304と主走査モータ99と副走査モータ26を制御し、吐出走査と、前方へのプラテン12の移動を交互に繰り返すことで、印刷媒体への印刷を行う。つまり、印刷媒体への印刷時においては、プラテン12が印刷前待機位置P2から印刷搬送領域P3へと前方に搬送されてくるため、まず、処理液が塗布されることで形成された印刷媒体の下地層上に白ヘッド31、32のノズルから白インクが吐出され、下地(主にカラーインク用)が形成される。そして、白ヘッド31、32を通過し印刷媒体に形成された下地上にカラーヘッド33、34のノズルからインクが吐出され、画像が形成される。なお、画像の白色を表す部分については、白インクで形成された下地部分とする。このため、当該下地部分の上にはカラーインクが吐出されない。
【0053】
次に、印刷データに基づく印刷媒体への印刷が終了(印刷処理の終了)すると、制御部80が、エンコーダ261からの検出結果に基づいて副走査モータ26を制御し、プラテン12をセット位置P1で停止させる。ユーザはセット位置P1に配置されたプラテン12から画像の形成された印刷媒体を取り外す。また、このとき、制御部80は、エンコーダ991からの検出結果に基づいて主走査モータ99を制御し、キャリッジ6を吐出領域B2から左方に移動させ、メンテナンス位置B1で停止させる。こうして、
図5のフローが終了する。
【0054】
以上に述べたように、本実施形態の印刷装置1によると、スプレーノズル41から処理液を吐出させる際に、処理液を供給部材(供給流路)42から循環部材(循環流路)43へと流通させてからバルブ44を遮断状態から連通状態を取ることで、供給部材42内における処理液の供給圧力が、単にポンプ45の駆動開始のタイミングでスプレーノズル41に処理液を供給するときよりも高まった状態で、スプレーノズル41に処理液が供給される。このため、スプレーノズル41への処理液の供給の開始とともにスプレーノズル41から霧状に処理液が吐出されやすくなり、印刷媒体に処理液を均一に塗布することが可能になる。この結果、処理液が印刷媒体に疎らに塗布されにくくなり、印刷媒体及びプラテン12などに処理液が着弾したときに飛び散りにくくなって装置が汚れにくくなる。
【0055】
制御部80は、S4でポンプ45の駆動を開始してから第2所定時間経過後に、S6でバルブ44を第2状態に切り替える。これにより、遮断状態から連通状態をバルブ44に取らせる制御が簡単になる。
【0056】
供給部材42にフィルタ46が設けられている。これにより、処理液から不純物を濾過することが可能となる。このため、不純物がスプレーノズル41に詰まるなどの不具合が生じるのを抑制することが可能となる。
【0057】
一端がバルブ44に接続された循環部材43の他端がタンク49に接続されている。これにより、循環部材43を介して供給部材42に入り込んだ気泡をタンク49に排出することが可能となり、供給部材42及び循環部材43から気泡を排出しやすくなる。仮に気泡がスプレーノズル41に供給されると、スプレーノズル41からの処理液の吐出が乱れて不安定となる。しかしながら、供給部材42及び循環部材43から気泡を排出することが可能であるため、スプレーノズル41に気泡が供給されにくくなり、スプレーノズル41に気泡が供給されることで生じる不安定な処理液の吐出を抑制し、スプレーノズル41から安定した処理液の吐出を実現できる。
【0058】
制御部80は、プラテン12がセット位置P1から処理液吐出領域P4に到達するまでにS4の処理を実行する。そして、制御部80は、プラテン12が処理液吐出領域P4に到達したらS6の処理を実行する。これにより、プラテン12が処理液吐出領域P4に到達してからスプレーノズル41から処理液が吐出されるまでの時間が、プラテン12が処理液吐出領域P4に到達してからポンプ45を駆動するときよりも、短くすることができる。
【0059】
また、制御部80は、S2の処理を実行してからS4の処理を実行する。これにより、プラテン12がセット位置P1から処理液吐出領域P4への移動を開始する前からの不必要なポンプ45の駆動を抑制することが可能となる。このため、スプレーノズル41から処理液の吐出が開始されるまでの期間において、ポンプ45の無駄な駆動時間を減らすことができる。
【0060】
また、制御部80は、スプレーノズル41からの処理液の吐出を終了させる際に、S8の処理を実行してからS9の処理を実行する。これにより、スプレーノズル41からの処理液の吐出を終了したときに、スプレーノズル41から液垂れするのを抑制することが可能となる。
【0061】
また、制御部80は、プラテン12が処理液吐出領域P4を通過したタイミングで、S8の処理を実行する。これにより、プラテン12が処理液の吐出を終了する位置に到達したときにスプレーノズル41からの液垂れを効果的に抑制することができ、スプレーノズル41からの無駄な処理液の吐出を無くすことができる。
【0062】
また、本実施形態におけるバルブ44が三方バルブである。これにより、バルブ44の第1状態と第2状態との状態切り替えの応答性が向上し、スプレーノズル41への処理液の供給圧力がより安定する。仮に、三方バルブに代えて2つのバルブを用いて、供給部材42と循環部材43との流路切り替えを行う場合、これらバルブ間の切り替えタイミングにズレが生じやすくなる。さらには部品点数の増加及び当該増加に伴う部品設置スペースの増加による大型化などが生じる。しかしながら、本実施形態においては三方バルブを採用していることで、省スペース化及び部品点数の減少を実現できる。
【0063】
変形例として、処理液吐出部40のバルブ44を三方バルブに代えて2つのバルブ244,245をそれぞれ用いてもよい。この変形例における処理液吐出部240は、
図8に示すように、バルブ44に代えて2つのバルブ244,245を有し、循環部材43の一端が供給部材42に接続される。バルブ244は、スプレーノズル41とポンプ45との間の供給部材42に設けられ、バルブ245が循環部材43の途中部位に設けられる。
【0064】
これらバルブ244、245は、制御部80の制御により、第1状態と第2状態とを選択的に取る。バルブ244は、第1状態において、ポンプ45とスプレーノズル41との連通を遮断する遮断状態を取る。バルブ245は、第1状態において、供給部材42から循環部材43への流通を可能とする連通状態を取る。バルブ244は、第2状態において、ポンプ45とスプレーノズル41とが連通する連通状態を取る。バルブ245は、第2状態において、供給部材42から循環部材43への流通を遮断する遮断状態を取る。
【0065】
このような変形例においても、制御部80が、2つのバルブ244,245の状態を、上述の実施形態と同様な状態となるように制御することで、スプレーノズル41から処理液を吐出させる際に、処理液を供給部材42から循環部材43へと一旦流通させてからスプレーノズル41へと供給することができる。つまり、供給部材42内における処理液の供給圧力が高まった状態でスプレーノズル41に処理液が供給される。このため、上述の実施形態と同様に、スプレーノズル41への処理液の供給の開始とともにスプレーノズル41から霧状に処理液が吐出されやすくなる。なお、本変形例においても、上述の実施形態と同様な構成においては、同じ効果を得ることができる。また、ポンプ45による処理液の供給圧力が高い場合、S6において、バルブ244だけを第2状態を取るようにしてもよい。また、本変形例におけるバルブ244,245の作動タイミングは、同時もしくはバルブ244を作動させてからバルブ245を作動させることが望ましい。
【0066】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。
【0067】
上述の実施形態及び各変形例においては、循環部材43の他端がタンク49に接続されているが、ポンプ45とタンク49との間の供給部材42と循環部材43の他端が接続されていてもよい。また、フィルタ46が、供給部材42のポンプ45とタンク49との間の部分以外の部分、又は、循環部材43に設けられていてもよい。また、印刷装置1には、タンク49に処理液を供給する供給装置が設けられていてもよい。
【0068】
また、上述の実施形態及び各変形例における処理液吐出部40は、7つのスプレーノズル41を有していたが、1~6、8以上のスプレーノズル41を有していてもよい。この場合、各スプレーノズル41に対応して、供給部材42、循環部材43、バルブ44(またはバルブ244,245)、ポンプ45が設けられておればよい。また、バルブ44(バルブ244)とスプレーノズル41とを繋ぐ供給部材42が複数のスプレーノズル41に分岐して接続されていてもよい。こうすればバルブ44(バルブ244,245)、ポンプ45の設置数を減らずことが可能となる。
【0069】
また、処理液吐出部40は、下地層を形成する処理液をスプレーノズル41から吐出させるものであったが、印刷媒体の画像をオーバーコーティングする処理液をスプレーノズル41から吐出させるものであってもよい。この場合、S11の印刷処理後、すなわち、プラテン12が印刷搬送領域P3を通過してから処理液吐出領域P4に到達するまでに、S4と同様の処理を実行し、その後、プラテン12が処理液吐出領域P4に到達したときに、S6と同様の処理を実行すればよい。こうして、印刷媒体の画像をオーバーコーティング(インクの上地層を形成)することが可能となる。また、このときのスプレーノズル41からの処理液の吐出も上述の実施形態と同様に、スプレーノズル41への処理液の供給の開始とともにスプレーノズル41から霧状に処理液が吐出されやすくなる。
【0070】
制御部80は、S1(YES)の後、S2が実行される前にS4を実行してもよい。また、フィルタ46は設けられていなくてもよい。また、搬送機構14は、副走査モータ26を有していなくてもよい。この場合、手動でプラテン12を移動させればよい。つまり、搬送機構は、プラテン12を、セット位置P1と処理液吐出領域P4を通過する通過位置との間において、移動させることが可能な構成を有しておればよい。
【0071】
また、上述の実施形態及び各変形例におけるヘッド30は、移動機構77によって主走査方向(左右方向)に沿って移動しながら複数のノズルからインクを吐出する、いわゆるシリアルヘッドを備えた印刷装置に本発明を適用した例について説明したが、これに限られない。例えば、主走査方向に印刷媒体(プラテン12)の全長にわたって延び、吐出領域B2に移動不可能に配置されたラインヘッドを備えた印刷装置に本発明を適用することも可能である。
【0072】
また、上述の実施形態及び各変形例における制御部80は、CPU81の代わりに、マイクロコンピュータ、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等が、プロセッサとして用いられてもよい。この場合、メイン処理は、複数のプロセッサによって分散処理されてもよい。ROM82、フラッシュメモリ84等の非一時的な記憶媒体は、情報を記憶する期間に関わらず、情報を留めておくことが可能な記憶媒体であればよい。非一時的な記憶媒体は、一時的な記憶媒体(例えば、伝送される信号)を含まなくてもよい。制御プログラムは、例えば、図示外のネットワークに接続されたサーバからダウンロードされて(すなわち、伝送信号として送信され)、ROM82またはフラッシュメモリ84に記憶されてもよい。この場合、制御プログラムは、サーバに備えられたHDD等の非一時的な記憶媒体に保存されていればよい。
【0073】
上述の実施形態及び各変形例における印刷装置1は、印刷媒体に画像を形成するためのヘッド30や移動機構77などを有しているが、処理液吐出部40と、プラテン12、搬送機構14、及び、制御部80を有する処理液吐出装置であってもよい。つまり、処理液吐出装置は、特に印刷装置に限定されるものではない。
【0074】
上述の実施形態及び各変形例においては、処理液の揮発成分には有機酸が含まれているがこれに限られない。すなわち、処理液の揮発成分が、有機酸以外の成分であって、ノズル内のインクと反応して、凝集や変色を起こす成分を含んでいてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 印刷装置(インクジェットプリンタ)
12 プラテン
14 搬送機構(移動機構)
40、240 処理液吐出部
41 スプレーノズル
42 供給部材(供給流路)
43 循環部材(循環流路)
44、244、245 バルブ
45 ポンプ
46 フィルタ
49 タンク(収容部)
80 制御部