(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118594
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】蓄電デバイスおよびこれを備えた蓄電モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 50/566 20210101AFI20240826BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20240826BHJP
H01M 50/176 20210101ALI20240826BHJP
H01M 50/562 20210101ALI20240826BHJP
H01M 50/567 20210101ALI20240826BHJP
H01M 50/505 20210101ALI20240826BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20240826BHJP
H01M 50/557 20210101ALI20240826BHJP
H01G 11/06 20130101ALI20240826BHJP
H01G 11/74 20130101ALI20240826BHJP
【FI】
H01M50/566
H01M50/103
H01M50/176
H01M50/562
H01M50/567
H01M50/505
H01M50/209
H01M50/557
H01G11/06
H01G11/74
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024956
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】宮村 幸延
(72)【発明者】
【氏名】脇元 亮一
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5E078AA10
5E078AB02
5E078AB06
5E078HA05
5E078KA04
5E078KA05
5H011AA04
5H011BB03
5H011EE04
5H040AA03
5H040AA07
5H040AA19
5H040AS07
5H040AT02
5H040AT06
5H040DD03
5H043AA19
5H043BA16
5H043BA17
5H043CA05
5H043CA21
5H043DA11
5H043DA13
5H043DA16
5H043DA20
5H043FA04
5H043KA08D
5H043KA09D
5H043LA11D
5H043LA14D
5H043LA34D
(57)【要約】
【課題】導通信頼性が向上した端子を備える蓄電デバイスを提供する。
【解決手段】ここで開示される蓄電デバイスは、第1導電部材41と第2導電部材42と金属接合部45とを備える第1電極端子を備える。金属接合部45は、第1金属が70質量%以上を占める第1領域451と、第2金属が70質量%以上を占める第2領域452と、を含む。第1領域451は、境界面Bよりも第1導電部材41側に位置する領域A1と、境界面Bよりも第2導電部材42側に突出する第1突出領域P1と、を含み、第2領域452は、境界面Bよりも第2導電部材42側に位置する領域A2と、境界面Bよりも第1導電部材41側に突出する第2突出領域P2と、を含む。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極および第2電極を有する電極体と、
前記電極体を収容し、かつ貫通孔が設けられた第1面を有する電池ケースと、
前記電池ケースの前記貫通孔を貫通し、前記第1電極と電気的に接続された第1電極端子と、
を備える、蓄電デバイスであって、
前記第1電極端子は、
第1金属が質量基準で最も大きい割合を占める第1導電部材と、
第2金属が質量基準で最も大きい割合を占め、かつ前記貫通孔内に配置される軸部を有する、第2導電部材と、
前記第1導電部材と前記第2導電部材とが接合された金属接合部と、
を備え、
前記金属接合部は、
前記第1面に対して垂直で、かつ前記軸部の軸心を通過し、前記軸部の径方向に延びる断面において、
前記第1金属が70質量%以上を占める第1領域と、
前記第2金属が70質量%以上を占める第2領域と、を含み、
ここで、前記金属接合部の周囲で前記第1導電部材と前記第2導電部材とが当接する境界部分を通過する面を境界面としたときに、
前記第1領域は、前記境界面よりも前記第1導電部材側に位置する領域と、前記境界面よりも前記第2導電部材側に突出する第1突出領域と、を含み、
前記第2領域は、前記境界面よりも前記第2導電部材側に位置する領域と、前記境界面よりも前記第1導電部材側に突出する第2突出領域と、を含む、
蓄電デバイス。
【請求項2】
前記断面において、前記第2領域の総面積に対する、前記第2突出領域の面積の比が、0.03以上0.5以下である、
請求項1に記載の蓄電デバイス。
【請求項3】
前記第1導電部材が、アルミニウム又はアルミニウム合金製であり、
前記第2導電部材が、銅又は銅合金製である、
請求項1または2に記載の蓄電デバイス。
【請求項4】
前記第2金属は、前記第1金属よりも硬度が高く、
前記第1電極端子は、前記第1導電部材と前記第2導電部材とが機械的に締結された締結部をさらに備え、
前記断面において、前記第2突出領域が、前記第1突出領域よりも前記締結部の近くに配置されている、
請求項1または2に記載の蓄電デバイス。
【請求項5】
前記金属接合部は、前記第1領域と前記第2領域との境界に、前記第1金属の含有量が30質量%以上70質量%未満であり、かつ、前記第2金属の含有量が30質量%以上70質量%未満である第3領域をさらに含む、
請求項1または2に記載の蓄電デバイス。
【請求項6】
複数個の、請求項1または2に記載の蓄電デバイスと、
複数個の前記蓄電デバイスを相互に電気的に接続するバスバーと、
を備えた蓄電モジュール。
【請求項7】
前記第1導電部材は略矩形状で、前記第1導電部材の長辺方向の一方側に、前記バスバーが接続されるバスバー接続領域が設けられており、
前記第2金属は、前記第1金属よりも硬度が高く、
前記第1面に対して垂直、かつ前記第1面の前記長辺方向に沿って延びる断面において、前記第2突出領域が、前記第1突出領域よりも前記バスバー接続領域の近くに配置されている、
請求項6に記載の蓄電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイスおよびこれを備えた蓄電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、銅材と、アルミニウム材と、アルミニウム材の一部が溶融し銅材の内部に流入してなる溶融混合部と、を含み、溶融混合部が、所定の幅寸法および深さ寸法を満たす、異種金属接合体(レーザ接合体)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らの検討によれば、上記技術を、例えば車両駆動用電源等に用いられる蓄電デバイスの電極端子に適用しようとすると、依然として改善の余地があった。すなわち、車両駆動用電源等の用途において、蓄電デバイスの使用時には、外部から振動や衝撃等の力が加わることが想定される。しかしながら、特許文献1の技術では、溶融部と未溶融部との境界部分の強度が弱いため、外部から力が加わった際に金属溶融部が破壊され、端子の導通接続が不安定になったり、接続不良となったりする虞があった。したがって、導通信頼性を向上することが望まれていた。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、導通信頼性が向上した端子(異種金属接合体)を備える蓄電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により、第1電極および第2電極を有する電極体と、上記電極体を収容し、かつ貫通孔が設けられた第1面を有する電池ケースと、上記電池ケースの上記貫通孔を貫通し、上記第1電極と電気的に接続された第1電極端子と、を備える、蓄電デバイスが提供される。上記第1電極端子は、第1金属が質量基準で最も大きい割合を占める第1導電部材と、第2金属が質量基準で最も大きい割合を占め、かつ上記貫通孔内に配置される軸部を有する、第2導電部材と、上記第1導電部材と上記第2導電部材とが接合された金属接合部と、を備える。上記金属接合部は、上記第1面に対して垂直で、かつ上記軸部の軸心を通過し、上記軸部の径方向に延びる断面において、上記第1金属が70質量%以上を占める第1領域と、上記第2金属が70質量%以上を占める第2領域と、を含み、ここで、上記金属接合部の周囲で上記第1導電部材と上記第2導電部材とが当接する境界部分を通過する面を境界面としたときに、上記第1領域は、上記境界面よりも上記第1導電部材側に位置する領域と、上記境界面よりも上記第2導電部材側に突出する第1突出領域と、を含み、上記第2領域は、上記境界面よりも上記第2導電部材側に位置する領域と、上記境界面よりも上記第1導電部材側に突出する第2突出領域と、を含む。
【0007】
上記金属接合部では、第1領域が第1突出領域を含み、第2領域が第2突出領域を含むことで、第1領域と第2領域との境界が断面視で凹凸形状をなしている。これにより、第1導電部材と第2導電部材とが機械的嵌合となるため、境界部分の接合強度を向上できる。また、境界部分を湾曲させることで、境界の距離を長くすることができるため、たとえ金属接合部に亀裂が生じても、亀裂の進展を遅らせることができる。その結果、ここに開示される技術によれば、使用時に外部から振動や衝撃等の力が加わっても、第1導電部材と第2導電部材とが密接した状態を維持しやすくなり、第1導電部材と第2導電部材との導通接続を安定して保つことができる。したがって、金属接合部の導通信頼性が向上した端子を備えた蓄電デバイスを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る蓄電モジュールを模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、蓄電デバイスを模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2のIII-III線に沿う模式的な縦断面図である。
【
図4】
図4は、封口板アッセンブリを模式的に示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4の負極端子の近傍を模式的に示す平面図である。
【
図7】
図7は、
図6の負極端子のみを示す模式的な縦断面図である。
【
図8】
図8は、
図7の金属接合部の近傍を模式的に示す拡大図である。
【
図9】
図9(A)は、レーザー溶接の方法を説明する説明図であり、
図9(B)は、
図9(A)のIXB-IXB線に沿う金属接合部の近傍の模式的な縦断面図である。
【
図10】
図10(A)は、比較例に係るレーザー溶接の軌跡と金属接合部の断面SEM観察画像であり、
図10(B)は、実施例に係るレーザー溶接の軌跡と金属接合部の断面SEM観察画像である。
【
図11】
図11(A)は、例1に係るレーザー溶接の軌跡を模式的に示す平面図であり、
図11(B)は、例2に係るレーザー溶接の軌跡を模式的に示す平面図である。
【
図13】
図13(A)、(B)は、第1変形例に係る
図9(A)、(B)相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、ここで開示される技術のいくつかの好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けない蓄電デバイスおよび蓄電モジュールの一般的な構成や製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0010】
なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、本明細書において、範囲を示す「X~Y」の表記は、X以上Y以下の意と共に、「Xより大きい」および「Yより小さい」の意を包含するものとする。
【0011】
図1は、一実施形態に係る蓄電モジュール500を模式的に示す斜視図である。蓄電モジュール500は、配列方向Xに沿って配置された複数の蓄電デバイス100と、複数の蓄電デバイス100を相互に電気的に接続する複数のバスバー200と、を備えている。蓄電モジュール500は、ここではさらに拘束機構300を備えている。なお、以下の説明において、図面中の符号L、R、F、Rr、U、Dは、左、右、前、後、上、下を表し、図面中の符号X、Y、Zは、蓄電デバイス100の厚み方向、厚み方向と直交する長辺方向、厚み方向および長辺方向と直交する上下方向を、それぞれ表すものとする。厚み方向Xは、蓄電デバイス100の配列方向でもある。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、蓄電モジュール500の設置形態を何ら限定するものではない。
【0012】
拘束機構300は、複数の蓄電デバイス100に対して、配列方向Xから規定の拘束圧を印加するように構成されている。拘束機構300は、ここでは、一対のエンドプレート310と、一対のサイドプレート320と、複数のビス330とで、構成されている。一対のエンドプレート310は、配列方向Xにおいて複数の蓄電デバイス100の両端に配置されている。一対のエンドプレート310は、複数の蓄電デバイス100を配列方向Xに挟み込んでいる。一対のエンドプレート310は、金属製であることが好ましい。
【0013】
一対のサイドプレート320は、一対のエンドプレート310を架橋している。一対のサイドプレート320は、金属製であることが好ましい。一対のサイドプレート320は、例えば、拘束荷重が概ね10~15kN程度となるように、複数のビス330によってエンドプレート310に固定されている。これにより、複数の蓄電デバイス100に配列方向Xから拘束荷重が付与され、蓄電モジュール500が一体的に保持されている。ただし、拘束機構の構成はこれに限定されるものではない。拘束機構300は、例えばサイドプレート320にかえて複数の拘束バンドやバインドバー等を備えていてもよい。
【0014】
バスバー200は、導電部材であり、複数の蓄電デバイス100を相互に電気的に接続している。バスバー200は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。バスバー200は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなることが好ましい。
図1において、バスバー200は、配列方向Xにおいて隣り合う蓄電デバイス100の後述する正極端子30(
図2参照、詳しくは正極第1導電部材31)と負極端子40(
図2参照、詳しくは負極第1導電部材41)との間に、架け渡されている。バスバー200は、例えばレーザー溶接等の溶接によって、正極端子30および負極端子40にそれぞれ取り付けられている。
【0015】
蓄電デバイス100は、電力を蓄えることができ繰り返し充放電が可能な装置である。なお、本明細書において「蓄電デバイス」とは、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等のいわゆる二次電池と、リチウムイオンキャパシタや電気二重層キャパシタ等のキャパシタと、を包含する概念である。
【0016】
図1において、複数の蓄電デバイス100は、一対のエンドプレート310の間に配列方向X(言い換えれば蓄電デバイス100の厚み方向X)に沿って並んでいる。なお、蓄電モジュール500を構成する複数の蓄電デバイス100の形状、サイズ、個数、配置等は、ここに開示される態様に限定されることなく、適宜変更することができる。また、配列方向Xにおいて隣り合う蓄電デバイス100の間には、スペーサ等の他の部材が介在していてもよい。複数の蓄電デバイス100は、ここでは直列に接続されている。ただし、複数の蓄電デバイス100の接続方法は、直列には制限されず、例えば、並列や多直列多並列等であってもよい。
【0017】
図2は、蓄電デバイス100の斜視図である。
図3は、
図2のIII-III線に沿う模式的な縦断面図である。
図3に示すように、蓄電デバイス100は、電池ケース10と、電極体20と、正極端子30と、負極端子40と、正極集電部材50と、負極集電部材60と、を備えている。図示は省略するが、蓄電デバイス100は、ここではさらに非水電解液(図示せず)を備えている。非水電解液は従来と同様でよく、特に制限はない。蓄電デバイス100は、ここではリチウムイオン二次電池である。蓄電デバイス100は、ここに開示される正極端子30および/または負極端子40を備えることによって特徴付けられ、それ以外の構成は従来同様であってよい。
【0018】
電池ケース10は、電極体20および非水電解液を収容する筐体である。
図2に示すように、電池ケース10は、ここでは扁平かつ有底の直方体形状(角形)の外形を有する。電池ケース10の材質は、従来から使用されているものと同じでよく、特に制限はない。電池ケース10は、金属製であることが好ましく、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等からなることがより好ましく、アルミニウム又はアルミニウム合金からなることが特に好ましい。
図3に示すように、電池ケース10は、開口12hを有する外装体12と、開口12hを塞ぐ封口板(蓋体)14と、を備えている。電池ケース10は、外装体12と封口板14とを備えることが好ましい。
【0019】
外装体12は、
図2に示すように、開口12h(
図3参照)と対向する略矩形状の底壁12aと、底壁12aの長辺から延び相互に対向する一対の長側壁12bと、底壁12aの短辺から延び相互に対向する一対の短側壁12cと、を備えている。長側壁12bの面積は、短側壁12cの面積よりも大きい。なお、本明細書において「略矩形状」とは、完全な矩形状(長方形状)に加えて、例えば、矩形状の長辺と短辺とを接続する角部がR状になっている形状や、角部に切り欠きを有する形状等をも包含する用語である。
【0020】
封口板14は、
図2のXY平面に沿って広がる板状部材である。封口板14は、「第1面」の一例である。
図3に示すように、封口板14は、開口12hを塞ぐように外装体12に取り付けられている。封口板14は、外装体12の底壁12aと対向している。封口板14は、ここでは略矩形状である。封口板14は、略矩形状であることが好ましい。電池ケース10は、外装体12の開口12hの周縁に封口板14が接合(好ましくは溶接接合)されることによって、一体化されている。電池ケース10は、気密に封止(密閉)されている。
【0021】
図3に示すように、封口板14には、注液孔15と、排出弁17と、2つの端子引出孔18、19と、が設けられている。注液孔15は、外装体12に封口板14を組み付けた後、非水電解液を注液するためのものである。注液孔15は、封止部材16により封止されている。排出弁17は、電池ケース10内の圧力が所定値以上になったときに破断して、電池ケース10内のガスを外部に排出するように構成されている。
【0022】
図3に示すように、端子引出孔18、19は、封口板14を上下方向Zに貫通している。端子引出孔18、19は、封口板14(第1面)に設けられた「貫通孔」の一例である。平面視において、端子引出孔18、19は、平面視において環状(例えば円環状)に形成されている。端子引出孔18は、後述する正極端子30のかしめ加工前の(封口板14に取り付けられる前の)軸柱部32sを挿通可能な大きさの内径を有する。端子引出孔19は、後述する負極端子40のかしめ加工前の(封口板14に取り付けられる前の)軸柱部42sを挿通可能な大きさの内径を有する。
【0023】
電極体20は、
図3に示すように、電池ケース10(詳しくは外装体12)の内部に収容されている。図示は省略するが、電極体20は、正極と負極とを有する。正極は、正極集電体と、正極集電体上に固着され、正極活物質を含む正極合剤層と、を有する。負極は、負極集電体と、負極集電体上に固着され、負極活物質を含む負極合剤層と、を有する。正極および負極のうちの一方は、「第1電極」の一例であり、他方は「第2電極」の一例である。本実施形態では、第1電極が負極であり、第2電極が正極である。第1電極は、負極であることが好ましく、第2電極は、正極であることが好ましい。
【0024】
電極体20の構成は従来と同様でよく、特に制限はない。電極体20は、ここでは、帯状の正極と帯状の負極とがセパレータを介して絶縁された状態で積層され、捲回軸を中心として捲回されて構成されてなる扁平な捲回電極体である。ただし、他の実施形態において、電極体20は、複数枚の方形状の正極と、複数枚の方形状の負極とが、絶縁された状態で積み重ねられてなる積層型電極体であってもよい。1つの電池ケース10の内部に配置される電極体20の数は特に制限されず、1つであってもよいし複数であってもよい。
【0025】
図3に示すように、電極体20の捲回軸方向(
図3の長辺方向Y)の一方の端部(
図3の左端部)には、正極集電部23が設けられている。正極集電部23は、ここでは正極集電体の露出した部分であり、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。正極集電部23には、正極集電部材50の後述する第2部分52が取り付けられている。電極体20の捲回軸方向の他方の端部(
図3の右端部)には、負極集電部25が設けられている。負極集電部25は、ここでは負極集電体の露出した部分であり、例えば銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。負極集電部25には、負極集電部材60の後述する第2部分62が取り付けられている。
【0026】
正極集電部材50は、電極体20の正極(第2電極)と正極端子30とを電気的に接続する導通経路を構成している。正極集電部材50は、正極集電部23と同じ金属種、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっていることが好ましい。
図3に示すように、正極集電部材50は、略L字状の第1部分51と、第1部分51と電気的に接続され、外装体12の短側壁12cに沿って延びる第2部分52と、を含んでいる。第1部分51は、かしめ加工によって、内部絶縁部材70を介して絶縁された状態で封口板14の内側の面に取り付けられている。第1部分51は、正極端子30と電気的に接続されている。第2部分52は、正極集電部23に取り付けられている。
【0027】
負極集電部材60は、電極体20の負極(第1電極)と負極端子40とを電気的に接続する導通経路を構成している。負極集電部材60は、負極集電部25と同じ金属種、例えば銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっていることが好ましい。
図3に示すように、負極集電部材60は、略L字状の第1部分61と、第1部分61と電気的に接続され、外装体12の短側壁12cに沿って延びる第2部分62と、を含んでいる。第1部分61は、かしめ加工によって、内部絶縁部材70を介して絶縁された状態で封口板14の内側の面に取り付けられている。第1部分61は、負極端子40と電気的に接続されている。第2部分62は、負極集電部25に取り付けられている。
【0028】
図4は、封口板アッセンブリ、すなわち封口板14に、正極端子30と、負極端子40と、正極集電部材50の第1部分51と、負極集電部材60の第1部分61と、が取り付けられた合体物を模式的に示す斜視図である。正極端子30および負極端子40は、封口板14に取り付けられていることが好ましい。
【0029】
正極端子30は、封口板14の長辺方向Yの一方側の端部(
図2~
図4の左端部)に配置されている。
図3に示すように、正極端子30は、正極集電部材50を介して、電極体20の正極(第2電極)と電気的に接続されている。正極端子30は、2種類の導電部材、すなわち、正極第1導電部材31と、正極第2導電部材32と、を備えている。正極第1導電部材31と正極第2導電部材32とは、一体化され、相互に電気的に接続されている。正極第1導電部材31は、電池ケース10の外部に配置されている。正極第1導電部材31は、ここでは板状である。正極第1導電部材31は、外部絶縁部材90によって封口板14の外側の面(
図3の上面)と絶縁されている。蓄電モジュール500(
図1参照)を作製する際、正極第1導電部材31には、バスバー200が付設される。
【0030】
正極第2導電部材32は、端子引出孔18を貫通して電池ケース10の内部から外部へと延びている。正極第2導電部材32は、端子引出孔18内に配置される軸柱部32sを含んでいる。正極第2導電部材32は、内部絶縁部材70およびガスケット80によって封口板14と絶縁されている。ガスケット80は、封口板14と正極第2導電部材32とを絶縁すると共に、端子引出孔18を閉鎖する機能を有する。正極第2導電部材32は、ここでは、かしめ加工により、封口板14とは絶縁された状態で、封口板14の端子引出孔18を囲む周縁部分に、かしめ固定されている。正極第2導電部材32の外装体12の側の端部(
図3の下端部)には、かしめ部30cが形成されている。正極第2導電部材32は、かしめ加工により、封口板14に固定されると共に、第1部分51と電気的に接続されている。
【0031】
負極端子40は、封口板14の長辺方向Yの他方側の端部(
図2~
図4の右端部)に配置されている。
図3に示すように、負極端子40は、負極集電部材60を介して、電極体20の負極(第1電極)と電気的に接続されている。本実施形態において、負極端子40は「負極(第1電極)と電気的に接続された第1電極端子」の一例である。第1電極端子は、負極端子40であることが好ましい。以下、第1電極端子が負極端子40である場合について詳しく構成を説明する。ただし、他の実施形態において、第1電極端子は正極端子30であってもよい。その場合、以下の記載において、「負極」の個所を適宜「正極」と読み替えることができる。
【0032】
図5は、
図4の負極端子40の近傍を模式的に示す平面図である。
図6は、
図4および
図5のVI-VI線に沿う模式的な縦断面図である。
図7は、
図6の負極端子40のみを示す模式的な縦断面図である。
図6に示すように、負極端子40は、2種類の導電部材、すなわち、負極第1導電部材41と、負極第2導電部材42と、を備えている。負極第1導電部材41は、「第1導電部材」の一例である。負極第2導電部材42は、「第2導電部材」の一例である。負極第1導電部材41と負極第2導電部材42とは、後述する締結部43および金属接合部45によって一体化され、相互に電気的に接続されている。ただし、締結部43は必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。
【0033】
負極第1導電部材41は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属で構成されている。負極第1導電部材41は、アルミニウム又はアルミニウム合金を含むことが好ましい。負極第1導電部材41は、少なくとも金属接合部45の近傍が、アルミニウム又はアルミニウム合金からなることが好ましい。負極第1導電部材41は、アルミニウム又はアルミニウム合金製であることが好ましい。本実施形態において、負極第1導電部材41は、第1金属を主体として構成されている。言い換えれば、第1金属が質量基準で最も大きい割合を占めている。第1金属は、負極第1導電部材41の全体(ただし、金属接合部45の形成された部分は除く)の50質量%以上を占めることが好ましく、70質量%以上を占めることがより好ましく、90質量%以上を占めることが特に好ましい。第1金属は、アルミニウムであることが好ましい。第1金属は、バスバー200と同じ金属種であることが好ましい。
【0034】
負極第1導電部材41は、電池ケース10の外部に配置されている。負極第1導電部材41は、ここでは板状である。
図6に示すように、負極第1導電部材41は、外部絶縁部材90によって封口板14の外側の面(
図6の上面)と絶縁されている。負極第1導電部材41と封口板14との間には、外部絶縁部材90が配置されることが好ましい。外部絶縁部材90は、樹脂部材であることが好ましい。
【0035】
図5に示すように、負極第1導電部材41は、ここでは略矩形状である。負極第1導電部材41は、長辺方向Yに2つに区分けされた部分であって、負極第2導電部材42と電気的に接続された接続部41aと、接続部41aの長辺方向Yの一方側(
図5の左方)に配置された延伸部41bと、を有する。延伸部41bは、蓄電モジュール500(
図1参照)を作製する際、バスバー200が付設される部位である。延伸部41bは、「バスバー接続領域」の一例である。延伸部41bを有することで、バスバー200との接地面積を十分に確保することができ、蓄電モジュール500の導通信頼性を向上することができる。なお、
図5、
図7では、バスバー200および、バスバー200と負極第1導電部材41との溶接部Wを、仮想線(二点鎖線)で示している。
【0036】
図7に示すように、負極第1導電部材41は、ここでは平板状であり、下面41dと、上面41uと、を有する。下面41dは、負極第2導電部材42と接している。
図6からわかるように、下面41dは、電池ケース10(具体的には封口板14)と対向する側の面である。上面41uは、電池ケース10および負極第2導電部材42から離れた面である。
図7に示すように、負極第1導電部材41は、上面41uから凹んで、延伸部41bよりも厚みが薄く形成された薄肉部41tと、上下方向Zに貫通した貫通孔41hと、下面41dから凹んだ凹部41rと、を有する。
【0037】
薄肉部41tは、
図5に示すように、平面視において貫通孔41hを囲むように環状(例えば円環状)に形成されている。薄肉部41tには、金属接合部45が設けられている。貫通孔41hは、平面視において薄肉部41tの中心部に形成されている。貫通孔41hは、溶接の際に発生したガスや熱による歪の逃げ道として機能しうる。貫通孔41hは、平面視において円形に形成されている。貫通孔41hは、締結部43および金属接合部45よりも内周側に設けられている。貫通孔41hからは、負極第2導電部材42(具体的には、後述するフランジ部42f)が露出している。
【0038】
凹部41rは、
図7に示すように、金属接合部45よりも外周側に設けられている。図示は省略するが、凹部41rは、平面視において環状(例えば円環状)に形成されている。凹部41rは、ここでは負極第1導電部材41の下面41dに向かって(言い換えれば、負極第2導電部材42に近づくほど)縮径するテーパ形状に形成されている。凹部41rには、締結部43が設けられている。凹部41rには、後述する負極第2導電部材42のくびれ部42nが挿入されている。
【0039】
負極第2導電部材42は、例えば銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属で構成されている。負極第2導電部材42は、銅又は銅合金を含むことが好ましい。負極第2導電部材42は、少なくとも金属接合部45の近傍が、銅又は銅合金からなることが好ましい。負極第2導電部材42は、銅又は銅合金製であることが好ましい。本実施形態において、負極第2導電部材42は、第2金属を主体として構成されている。言い換えれば、第2金属が質量基準で最も大きい割合を占めている。第2金属は、負極第2導電部材42の全体(ただし、金属接合部45の形成された部分は除く)の50質量%以上を占めることが好ましく、70質量%以上を占めることがより好ましく、90質量%以上を占めることが特に好ましい。第2金属は、銅であることが特に好ましい。第2金属は、第1金属よりも硬度(例えばビッカース硬さ(HV))が高い金属であることが好ましい。第2金属は、負極集電部25および/または負極集電部材60と同じ金属種であることが好ましい。負極第2導電部材42は、銅又は銅合金を主体として、一部または全部の表面に、Ni等の金属が被覆された金属被覆部を備えていてもよい。これにより、電解質に対する耐性を高めて、耐食性を向上することができる。
【0040】
図6に示すように、負極第2導電部材42は、端子引出孔19を貫通して電池ケース10の内部から外部へと延びている。負極第2導電部材42は、内部絶縁部材70およびガスケット80によって封口板14と絶縁されている。ガスケット80は、封口板14と負極第2導電部材42とを絶縁すると共に、端子引出孔19を閉鎖する機能を有する。負極第2導電部材42は、ここでは、かしめ加工により、封口板14とは絶縁された状態で、封口板14の端子引出孔19を囲む周縁部分に、かしめ固定されている。負極第2導電部材42の外装体12の側の端部(
図6の下端部)には、かしめ部40cが形成されている。負極第2導電部材42は、かしめ加工により、封口板14に固定されると共に、第1部分61と電気的に接続されている。
【0041】
負極第2導電部材42は、ここでは略円柱状である。負極第2導電部材42は、柱状であることが好ましい。
図7に示すように、負極第2導電部材42は、軸心Cを有する。負極第2導電部材42は、負極第1導電部材41と電気的に接続されるフランジ部42fと、フランジ部42fの下端部に連結する軸柱部42sと、を有する。負極第2導電部材42は、上部にフランジ部42fを有し、フランジ部42fの下方に軸柱部42sを含むことが好ましい。
【0042】
フランジ部42fは、
図6に示すように、封口板14の端子引出孔19から電池ケース10の外部に突出した部位である。フランジ部42fは、軸柱部42sよりも外形が大きい。図示は省略するが、フランジ部42fの外形は、ここでは略円柱形状である。フランジ部42fは、封口板14の端子引出孔19よりも外形が大きい。
図7に示すように、フランジ部42fの軸心は、負極第2導電部材42の軸心Cと一致している。フランジ部42fは、下面42dと、下面42dから上方に延びる側面(外周面)42oと、側面42oの一部がくびれたくびれ部42nと、上面42uと、を有する。上面42uは、負極第1導電部材41の凹部41rと接している。上面42uには、金属接合部45が設けられている。
【0043】
くびれ部42nは、
図7に示すように、フランジ部42fの側面42oの一部に、連続的或いは間欠的に設けられている。図示は省略するが、くびれ部42nは、平面視において環状(例えば円環状)に形成されている。くびれ部42nが環状に形成されていると、高強度な締結部43を形成することができる。くびれ部42nは、フランジ部42fの軸心Cに対して軸対称に形成されている。くびれ部42nは、上面41uに向かって(言い換えれば、軸柱部42sから離れるほど)拡径する逆テーパ形状に形成されている。くびれ部42nには、締結部43が設けられている。くびれ部42nは、負極第1導電部材41の凹部41rに挿入されている。くびれ部42nは、ここでは負極第1導電部材41の凹部41rに嵌入され、凹部41rと嵌合している。
【0044】
軸柱部42sは、
図7に示すように、フランジ部42fの下端部から下方に延びている。軸柱部42sは、「軸部」の一例である。図示は省略するが、軸柱部42sは、ここでは円筒形状である。軸柱部42sの軸心は、フランジ部42fの軸心Cと一致している。かしめ加工前において、軸柱部42sの下端部、すなわちフランジ部42fが位置する側と反対側の端部は、中空状である。
図6に示すように、軸柱部42sは、封口板14の端子引出孔19内に配置されている。軸柱部42sの下端部は、かしめ加工によって押し広げられ、かしめ部40cを構成している。軸柱部42sは、かしめ加工によって負極集電部材60の第1部分61と電気的に接続されている。
【0045】
締結部43は、負極第1導電部材41と負極第2導電部材42との機械的な固定部である。ここでは、凹部41rとフランジ部42f(詳しくはくびれ部42n)との機械的な固定部である。金属接合部45に加えて締結部43を備えることで、負極端子40の導通信頼性をさらに向上することができる。締結部43の形成方法は、力学的エネルギーによる機械的接合であれば特に限定されず、例えば、圧入、かしめ、焼きばめ、リベット、折り込み、ボルト接合等であってよい。
【0046】
図6に示すように、本実施形態において、締結部43は、負極第1導電部材41の下面41dに設けられている。締結部43は、ここでは負極第1導電部材41の凹部41rと負極第2導電部材42のくびれ部42nとが嵌合された嵌合部である。具体的には、締結部43は、負極第2導電部材42のくびれ部42nが圧入によって負極第1導電部材41の凹部41rに嵌合された圧入嵌合部である。締結部43は、負極第1導電部材41の凹部41rの内壁が負極第2導電部材42のくびれ部42nで固定(例えば押圧固定)されることによって構成されている。これにより、例えば負極第1導電部材41と負極第2導電部材42とが異種金属で構成されていても、これらを好適に固定することができる。
【0047】
締結部43は、ここでは金属接合部45よりもフランジ部42fの外周側に設けられている。図示は省略するが、締結部43は、平面視において環状(例えば円環状)に形成されている。締結部43は、ここでは連続的に形成されている。これにより、締結部43の強度を高めて、負極端子40の導通信頼性をさらに向上することができる。
【0048】
金属接合部45は、負極第1導電部材41と負極第2導電部材42との冶金的な接合部である。ここでは、薄肉部41tとフランジ部42fとの接合部である。金属接合部45は、負極第1導電部材41と負極第2導電部材42とがエネルギー線の照射によって溶かされ、溶融し凝固してなる溶融凝固部を含んでいる。溶融凝固部は、例えば、光エネルギー、電子エネルギー、熱エネルギー等を用いて形成できる。なかでも溶接が好ましい。溶接によれば、高強度の金属接合部45を比較的簡便に且つ安定して実現することができる。溶接の方法は特に限定されないが、例えば、レーザー溶接、電子ビーム溶接、超音波溶接、抵抗溶接、TIG(Tungsten Inert Gas)溶接等が挙げられる。金属接合部45は、レーザー溶接によって形成されたレーザー溶接部であることが好ましい。なお、レーザー溶接の好適な条件は、後述する製造方法にて示す。
【0049】
図6に示すように、本実施形態において、金属接合部45は、負極第1導電部材41の上面41uに設けられている。金属接合部45は、貫通孔41hから離れた位置に設けられている。金属接合部45は、貫通孔41hの外周側に設けられている。金属接合部45は、締結部43から離れた位置に設けられている。これにより、締結部43等に与える熱の影響を低減できる。金属接合部45は、例えば締結部43に比べて、相対的に剛性が高い接合部でありうる。
【0050】
金属接合部45は、ここでは平面視において締結部43よりも内周側(フランジ部42fの中心側)に設けられている。言い換えれば、負極第2導電部材42の中心42cに近い側に設けられている。金属接合部45は、締結部43に比べて相対的に強度が低い(脆い)接合部でありうる。このような金属接合部45を締結部43の内周側に配設することで、金属接合部45を安定して維持し、長期にわたって負極端子40の導通信頼性を高めることができる。
【0051】
金属接合部45は、ここでは薄肉部41tに設けられている。これにより、接合時のエネルギーが少なくて済み、溶接性を向上することができる。金属接合部45は、連続的或いは間欠的に形成されている。金属接合部45は、フランジ部42fの軸心Cに対して、軸対称に形成されている。これにより、金属接合部45の強度を高めて、負極端子40の導通信頼性をさらに向上することができる。
【0052】
図5に示すように、金属接合部45は、平面視において環状(例えば円環状)に形成されている。これにより、金属接合部45の強度(例えば引張強度)を高めて、負極端子40の導通信頼性をさらに向上することができる。金属接合部45は、ここではフランジ部42fの中心42cを全周にわたって囲むように設けられている。
図7に示すように、金属接合部45は、フランジ部42fの軸心Cを中心として、貫通孔41hの外縁を囲むように設けられている。貫通孔41hの周縁に金属接合部45を設けることで、溶接時の熱による歪や変形を逃がすことができ、締結部43等への影響を低減することができる。なお、
図7の断面図では、延伸部41bに近い側(
図7の左側)を金属接合部45A、延伸部41bから離れた側(
図7の右側)を金属接合部45B、と区別している。
【0053】
図8は、
図7の延伸部41bに近い側(
図7の左側)の金属接合部45Aの近傍を模式的に示す拡大図である。
図8に示すように、封口板14(第1面)に対して垂直で、かつ軸柱部42sの軸心Cを通過し、軸柱部42sの径方向に延びる断面において、金属接合部45は、第1領域451と、第2領域452と、を含んでいる。
図8に破線で示すように、負極端子40は、金属接合部45の周囲で負極第1導電部材41と負極第2導電部材42とが当接する境界部分を通過する境界面Bを有している。境界面Bは、封口板14(詳しくは、封口板14の外側の面、あるいは封口板14の内側の面)と平行な方向に延びている。
図8において、境界面Bは、金属接合部45を通過している。境界面Bは、金属接合部45を、負極第1導電部材41側(
図8の上方)と負極第2導電部材42側(
図8の下方)とに、大別している。
【0054】
なお、本実施形態において、上記断面は、負極第2導電部材42の軸心Cを通過し、封口板14(第1面)の長辺方向Yに沿って延びる第1断面(
図4、
図5のVI-VI線断面)である。ただし、例えば金属接合部45が環状以外の形状で、この第1断面に金属接合部45が形成されていない場合、上記断面は、負極第2導電部材42の軸心Cを通過し、負極第2導電部材42の径方向に延びる断面のうち、上記第1断面とのなす角が最も小さい第2断面であってもよい。
【0055】
第1領域451は、第1金属(ここではAl)が70質量%以上を占める領域である。第1領域451は、負極第1導電部材41に負極第2導電部材42を構成する金属(主には第2金属)が溶融した領域でありうる。第1領域451は、第1金属以外の金属の溶け込みを30質量%未満に抑えることで、脆性の金属間化合物が生成されることを抑制でき、強度(例えば引張強度)を高めることができる。第1領域451は、その大半が境界面Bよりも負極第1導電部材41側(
図8の上方)に位置すると共に、一部が負極第2導電部材42側(
図8の下方)に突出している。第1領域451は、境界面Bよりも負極第1導電部材41側(
図8の上方)に位置する領域A1と、境界面Bよりも負極第2導電部材42側(
図8の下方)に突出する第1突出領域P1と、を含んでいる。
【0056】
第2領域452は、第2金属(ここではCu)が70質量%以上を占める領域である。第2領域452は、負極第2導電部材42に負極第1導電部材41を構成する金属(主には第1金属)が溶融した領域でありうる。第2領域452は、第2金属以外の金属の溶け込みを30質量%未満に抑えることで、脆性の金属間化合物が生成されることを抑制でき、強度(例えば引張強度)を高めることができる。第2領域452は、第1領域451とは逆に、その大半が境界面Bよりも負極第2導電部材42側(
図8の下方)に位置すると共に、一部が負極第1導電部材41側(
図8の上方)に突出している。第2領域452は、境界面Bよりも負極第2導電部材42側(
図8の下方)に位置する領域A2と、境界面Bよりも負極第1導電部材41側(
図8の上方)に突出する第2突出領域P2と、を含んでいる。
【0057】
このように、本実施形態では、第1領域451が第1突出領域P1を含み、第2領域452が第2突出領域P2を含み、第1領域451と第2領域452との境界が、凹凸形状をなしている。通常、第1領域451と第2領域452との境界部分は滑りやすく、強度が弱くなりがちであるが、境界部分をこのように凹凸形状とし、負極第1導電部材41と負極第2導電部材42とを機械的嵌合することで、境界部分が滑りにくくなって接合強度(例えば引張強度)を向上できる。また、境界部分を湾曲させることで、境界部分の距離を長くすることができるため、金属接合部45に亀裂(クラック)が生じても、亀裂の進展を遅らせることができる。その結果、ここに開示される技術によれば、使用時に外部から振動や衝撃等の力が加わっても、負極第1導電部材41と負極第2導電部材42とが密接した状態を維持しやすくなり、負極第1導電部材41と負極第2導電部材42との導通接続を安定して保つことができる。
【0058】
なお、詳しくは後述するが、
図8のように、第1領域451が第1突出領域P1を含み、第2領域452が第2突出領域P2を含む金属接合部45は、例えば溶接時に、円周状溶接(ウォブリング)を行うことによって実現することができる。
【0059】
特に限定されるものではないが、
図8に示すように、封口板14(第1面)に対して垂直であって、かつ軸柱部42sの軸心Cを通過し、軸柱部42sの径方向に延びる断面において、第1領域451の総面積に対する第1突出領域P1の面積の比C1は、0.01~0.4(1~40%)であることが好ましく、0.03~0.2(3~20%)であることがより好ましい。第2領域452の総面積に対する第2突出領域P2の面積の比C2は、0.03~0.5(3~50%)であることが好ましく、0.05~0.3(5~30%)であることがより好ましい。上記比の範囲とすることで、負極第1導電部材41と負極第2導電部材42とをより強固に機械的嵌合することができる。また、亀裂の進展を効果的に遅らせることができる。したがって、ここに開示される技術の効果をより高いレベルで発揮できる。第2突出領域P2の面積の比C2は、第1突出領域P1の面積の比C1よりも大きいことが好ましい。なお、上記面積の比C1、C2は、後述する溶接の条件(例えば、レーザーの出力、ウォブリングの周波数や幅等)を調整することによって実現することができる。
【0060】
図8に示すように、封口板14(第1面)に対して垂直で、かつ軸柱部42sの軸心Cを通過し、軸柱部42sの径方向に延びる断面(ここでは、
図4、
図5のVI-VI線断面)において、境界面Bのうち、金属接合部45を通過する部分を、線分LBとする。このとき、線分LBの半分(50%)以上が、第2領域452を横断していることが好ましい。線分LBが、硬度の高い第2金属(ここではCu)を多く含んだ第2領域452を半分以上の確率で横断することにより、金属接合部45の強度(例えば引張強度)や耐久性を向上できる。
【0061】
負極端子40が締結部43を有する場合、
図7の断面に含まれる2つの金属接合部45(金属接合部45Aおよび金属接合部45B)のうちの少なくとも一方(好ましくは両方)では、
図8に示すように、封口板14(第1面)に対して垂直で、かつ軸柱部42sの軸心Cを通過し、軸柱部42sの径方向に延びる断面(ここでは
図4、
図5のVI-VI線断面)において、第2突出領域P2が、第1突出領域P1よりも締結部43の近くに配置されていることが好ましい。本発明者らの検討によれば、締結部43に振動や衝撃等が加わると、金属接合部45は締結部43側から破壊が始まる。そのため、相対的に硬度の高い第2金属(ここではCu)を多く含んだ第2突出領域P2を、相対的に硬度の低い第1金属(ここではAl)を多く含んだ第1突出領域P1よりも締結部43側に配置することで、金属接合部45の強度(例えば引張強度)や耐久性を向上できる。なお、第1突出領域P1と第2突出領域P2との位置関係は、後述する溶接の条件(具体的には、ウォブリングの回転の向き)によって調整できる。
【0062】
負極端子40が延伸部41bを有し、延伸部41bにバスバー200が接続されている場合、金属接合部45Aおよび金属接合部45Bのうちの少なくとも一方(好ましくは両方)では、
図8に示すように、封口板14(第1面)に対して垂直、かつ封口板14(第1面)の長辺方向Yに沿って延びる断面において、第2突出領域P2が、第1突出領域P1よりも延伸部41b(バスバー接続領域)の近くに配置されていることが好ましい。なかでも、延伸部41bに近い側(
図7の左側)の金属接合部45Aで、第2突出領域P2が、第1突出領域P1よりも延伸部41bの近くに配置されていることが好ましい。
【0063】
延伸部41bには、バスバー200を介して振動や衝撃等の力が加わりやすい。延伸部41bに力が加わると、金属接合部45は延伸部41b側から破壊が始まる。そのため、相対的に硬度の高い第2金属(ここではCu)を多く含んだ第2突出領域P2を、相対的に硬度の低い第1金属(ここではAl)を多く含んだ第1突出領域P1よりも延伸部41b側に配置することで、金属接合部45の強度(例えば引張強度)や耐久性を向上できる。なお、第1突出領域P1と第2突出領域P2との位置関係は、後述する溶接の条件(具体的には、ウォブリングの回転の向き)によって調整できる。
【0064】
本実施形態の金属接合部45は、
図8に示すように、第1領域451と第2領域452との境界に、さらに第3領域453を含んでいる。第3領域453は、第1金属の含有量が30質量%以上70質量%未満であり、かつ、第2金属の含有量が30質量%以上70質量%未満である領域である。ただし、第3領域453は必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。
【0065】
特に限定されるものではないが、上記したような負極端子40は、例えば、上記したような負極第1導電部材41と負極第2導電部材42とを用意し、締結工程と溶接接合工程とを含む製造方法によって製造することができる。なお、締結工程と溶接接合工程との順序は特に限定されないが、締結部43の形成時に金属接合部45が損傷することを抑制する観点からは、締結工程の後に溶接接合工程を行うことが好ましい。ただし、溶接接合工程の後に締結工程を行ってもよく、両工程を略同時に行ってもよい。また、ここに開示される製造方法は、任意の段階でさらに他の工程を含んでもよい。
【0066】
締結工程では、負極第1導電部材41と負極第2導電部材42のフランジ部42fとを機械的に固定して、締結部43を形成する。締結部43は、例えば、負極第1導電部材41の凹部41rに負極第2導電部材42のくびれ部42nを挿入し、負極第2導電部材42のくびれ部42nの外形に沿って負極第1導電部材41の凹部41rを変形させることで、凹部41rの内壁を負極第2導電部材42で固定することにより形成しうる。これにより、締結部43の強度を向上することができる。いくつかの好適な実施形態において、締結部43は、負極第1導電部材41の凹部41rと負極第2導電部材42のくびれ部42nとを嵌合することで形成される。例えば、負極第1導電部材41の凹部41rに負極第2導電部材42のくびれ部42nを水平圧入することで形成しうる。これにより、締結工程の作業性を向上することができる。
【0067】
溶接接合工程では、負極第1導電部材41の薄肉部41tと負極第2導電部材42のフランジ部42fとを溶接によって接合して、金属接合部45を形成する。締結工程の後に溶接接合工程を行うことで、形状の安定した金属接合部45を精度よく形成することができる。金属接合部45は、例えば、負極第1導電部材41の薄肉部41tと負極第2導電部材42のフランジ部42fとを積層し、負極第1導電部材41(薄肉部41t)の側からエネルギー線を照射し、当該エネルギーが薄肉部41tを貫通してフランジ部42fの少なくとも上面42uまで至るように溶接することで形成しうる。溶接は、上述したような方法、例えばレーザー溶接によって行うことが好ましい。
【0068】
特に限定されるものではないが、好適な一態様では、シングルモードファイバーレーザーを用い、円周状溶接(ウォブリング)を行う。
図9(A)は、
図5のような環状の金属接合部45を形成する場合のレーザー溶接の方法を説明する説明図である。
図9(A)には、平面視で、溶接を行う薄肉部41tの部分のみを表している。特に限定されるものではないが、環状の金属接合部45を形成する場合、
図9(A)に示すように、(1)の溶接開始点から溶接を開始し、レーザーの全体の進行方向を時計回りとし、ウォブリングの回転の向きを反時計回りとして、貫通孔41hの外縁を囲むように(2)の溶接終点まで環状の軌跡を描くようにレーザー光を照射するとよい。
【0069】
なお、溶接の条件(例えば、レーザーの出力、溶接速度、ウォブリングの条件(周波数や幅)等)は、例えば負極第1導電部材41および負極第2導電部材42の材質や、負極第1導電部材41の厚み等に応じて適宜調節することができる設計事項である。一例では、レーザーの出力を、概ね500~1500Wとすることが好ましく、1300W以下とすることがより好ましく、600~1000Wとすることがさらに好ましい。また、溶接速度は、概ね10~1000mm/sとすることが好ましく、50~100mm/sとすることがより好ましい。また、ウォブリングの周波数は、概ね1000Hz以下、例えば100~600Hzとすることが好ましい。また、ウォブリングの幅は、0.1~10mmとすることが好ましく、例えば0.2~1mmとすることがより好ましい。このような条件により、相対的に溶融しにくい負極第2導電部材42(Cu)を、安定して溶融させることができる。また、溶融深さが深くなりすぎることを防止して、負極第2導電部材42を構成するCuの溶け込みを抑えることができる。
【0070】
図9(B)は、
図9(A)のIXB-IXB線に沿う金属接合部45A、45Bの近傍の模式的な縦断面図である。
図9(A)のように、ウォブリングの回転の向きが同じまま貫通孔41hの外縁を囲むようにレーザー光を1周照射すると、封口板14(第1面)に対して垂直で、かつ軸柱部42sの軸心Cを通過し、軸柱部42sの径方向に延びる断面(
図9(A)のIXB-IXB線断面)において、延伸部41bに近い側の金属接合部45Aでは、第2突出領域P2が第1突出領域P1よりも延伸部41b側に配置される。一方、延伸部41bから離れた側の金属接合部45Bでは、第1突出領域P1が第2突出領域P2よりも延伸部41b側に配置される。
【0071】
なお、金属接合部45は、ここでは締結部43よりも内周側に形成される。これにより、接合箇所がずれにくくなり、溶接接合工程の作業性を向上することができる。また、金属接合部45を形成する際に溶接個所がぐらつきにくくなり、溶接性を向上することができる。さらに、ここでは薄肉部41tを溶接しているので、エネルギーが少なくて済み、溶接性を向上することができる。
【0072】
蓄電デバイス100および蓄電モジュール500は各種用途に利用可能であるが、使用時に振動や衝撃等の外力が加わりうる用途、典型的には、各種の車両、例えば、乗用車、トラック等に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。乗用車の種類は特に限定されないが、プラグインハイブリッド自動車(PHEV;Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(BEV;Battery Electric Vehicle)等が挙げられる。
【0073】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に限定することを意図したものではない。
【0074】
≪試験例I-金属接合部の形成≫
まず、板状の第1導電部材(材質:アルミニウム(A1050))と、円柱状の第2導電部材(材質:銅(C1100))と、を用意した。次に、実施例と比較例の各例につき、第1導電部材と第2導電部材とを重ね合わせ、第1導電部材の側からシングルモードファイバーレーザーを当てて、表1に示す条件で溶接を行った。これにより、金属接合部を形成した。
【0075】
【0076】
まず、実施例と比較例の各例につき、金属接合部の形成された部分を、第2導電部材の金属接合部の中心に沿った断面で切断し、それぞれ包埋研磨して観察用試料を作製した。次に、作製した観察用試料をエッチング液(14%に希釈したアンモニア水と0.35%に希釈した過酸化水素水を1:1の割合で混合攪拌した腐食液)でエッチング処理し、金属接合部を変色させて、その境界を識別可能に現出させた。次に、日立電子顕微鏡システムSU1000で、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いて観察用試料を撮影し、断面画像を得た。なお、測定条件は、以下の通りとした。SEM観察画像を
図10(A)、
図10(B)に示す。また、図示は省略するが、得られたSEM観察画像をエネルギー分散型X線分光法(EDX:energy dispersive X-ray spectroscopy)で解析して、金属元素(Al,Cu)の分布を解析した。
≪測定条件≫
・加速電圧 :15kV
・スポット強度 :90
・フォーカス距離:10mm
【0077】
図10(A)は、比較例に係るレーザー溶接の軌跡と、金属接合部の断面SEM観察画像であり、
図10(B)は、実施例に係るレーザー溶接の軌跡と、金属接合部の断面SEM観察画像である。
図10(A)に示すように、直線状溶接を行った比較例の金属接合部は、溶接した側の面から遠ざかる(言い換えれば、溶融深度が深くなる)ほど細くなるように形成されていた。これに対して、
図10(B)に示すように、円周状溶接(ウォブリング)を行った実施例の金属接合部は、
図8に模式的に示したように、Al(第1金属)が70質量%以上を占め、かつ第1突出領域を有する第1領域と、Cu(第2金属)が70質量%以上を占め、かつ第2突出領域を有する第2領域と、を含み、第1領域と第2領域との境界部分が凹凸形状に湾曲していた。したがって、ここに開示される金属接合部は、例えば円周状溶接(ウォブリング)によって好適に形成できることが確認された。
【0078】
≪試験例II-突出領域の位置関係≫
本試験例では、試験例Iの実施例において、ウォブリングの回転の向きを変える(時計回り、反時計回り)ことにより、金属接合部の第1突出領域P1と第2突出領域P2との位置関係を変化させた負極端子をそれぞれ複数作製した。
図11(A)は、例1に係るレーザー溶接の軌跡を模式的に示す負極端子の平面図であり、
図11(B)は、例2に係るレーザー溶接の軌跡を模式的に示す負極端子の平面図である。
【0079】
すなわち、例1では、
図11(A)に示すように、レーザー溶接において、(1)の溶接開始点から溶接を開始し、レーザーの全体の進行方向を
図11(A)の下から上(時計回り)とし、ウォブリングの回転の向きを時計回りとして、(2)の溶接終点までライン状の軌跡を描くようにレーザー光を照射した。一方、例2では、
図11(B)に示すように、レーザー溶接において、(1)の溶接開始点から溶接を開始し、レーザーの全体の進行方向を
図11(B)の下から上(時計回り)とし、ウォブリングの回転の向きを反時計回り(例1の逆回転)として、(2)の溶接終点までライン状の軌跡を描くようにレーザー光を照射した。なお、例1、例2につき、レーザーの出力は、800Wに変更した。
【0080】
このように作成した金属接合部をSEM観察したところ、
図12に示すように、例1では、第1突出領域P1が、第2突出領域P2よりもバスバー接続領域側(
図12の左側)に、位置していた。一方、例2では、第2突出領域P2が、第1突出領域P1よりもバスバー接続領域側に位置していた。例2は、第1突出領域P1と第2突出領域P2との位置関係が、上記した実施形態の
図8の金属接合部45と同じ例である。例1は、例2の金属接合部を左右対称にミラー反転させた形状をなす金属接合部の例である。
【0081】
次に、各例の負極端子の延伸部(バスバー接続領域)に、バスバーを溶接した。次に、市販の引張試験機を用意し、第2導電部材を引張試験機のクランプで把持した。そして、JIS K 6854-1(はく離接着強さ試験方法 第一部:90°剥離)に基づいて、バスバーを、引張試験機で第1導電部材から引きはがすように垂直方向(90°の方向)に引張り、金属接合部が破断する強度を引張強度(N)として測定した。結果を
図12に示す。なお、引張強度は、数値が大きいほど接合強度が高いことを示している。
【0082】
図12に示すように、第2突出領域P2がバスバー接続領域の近くに配置されている例2は、第1突出領域P1がバスバー接続領域の近くに配置されている例1に比べて、相対的に引張強度が高かった。したがって、第2突出領域P2をバスバー接続領域側に配置することで、金属接合部の強度や耐久性を向上できることがわかった。
【0083】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本発明は、他にも種々の形態にて実施することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【0084】
<第1変形例> 例えば、上記した実施形態では、
図5に示すように、金属接合部45が平面視において環状(例えば円環状)に形成されていた。そして、
図9(A)に示すように、金属接合部45は、環状の軌跡を描くようにレーザーを照射することで形成されていた。しかしこれには限定されない。変形例において、金属接合部45は、平面視において、C字状、半円弧状、二重以上の円形状、渦巻形状、直線状、破線状等の形状に形成されていてもよい。また、金属接合部45は、2回以上に分けてレーザー溶接することによって形成してもよい。
【0085】
図13(A)は、第1変形例に係る
図9(A)相当図である。例えば2つの半円弧状の部分からなる略環状の金属接合部145を形成する場合、
図13(A)に示すように、例えばまず、(1)の溶接開始点から溶接を開始し、レーザーの全体の進行方向を時計回りとし、ウォブリングの回転の向きを時計回りとして、貫通孔41hの外縁に沿って(2)の溶接終点まで半円状の軌跡を描くようにレーザー光を照射するとよい。次に、(3)の溶接開始点から溶接を開始し、レーザーの全体の進行方向を時計回りとし、ウォブリングの回転の向きを反時計回りとして(回転の向きを変えて)、貫通孔41hの外縁に沿って(4)の溶接終点まで半円状の軌跡を描くようにレーザー光を照射するとよい。
【0086】
図13(B)は、第1変形例に係る
図9(B)相当図である。
図13(A)のように、ウォブリングの回転の向きを途中で変えてレーザー光を照射すると、
図13(A)のXIIIB-XIIIB線断面において、2つの金属接合部145(金属接合部145Aおよび金属接合部145B)の両方で、第2突出領域P2が第1突出領域P1よりも延伸部41b側に配置される。これにより、金属接合部145の強度や耐久性を、上記した実施形態よりもさらに向上できる。
【0087】
<第2変形例> 例えば、上記した実施形態では、負極第1導電部材41が、長辺方向Yにおいて接続部41aと延伸部41bとに区画され、延伸部41bが、長辺方向Yの一方側に配置されていた。そして、バスバー200が、接続部41aを避けて、延伸部41bに取り付けられていた。しかしこれには限定されない。変形例において、負極第1導電部材41は、長辺方向Yにおいて接続部41aと延伸部41bとに区画されていなくてもよい。その場合、バスバー200は、例えば負極第1導電部材41の長辺方向Yの中央部に取り付けられていてもよく、負極第1導電部材41の外縁部分に取り付けられていてもよい。
【0088】
図14は、第2変形例に係る
図5相当図である。
図14に示すように、本変形例の負極端子240では、接続部241aが、負極第1導電部材241の長辺方向Yの中央部に配置されている。そして、バスバー210が、薄肉部241tの全体を上方から覆うように、長辺方向Yの中央部に取り付けられている。この場合、バスバー210と負極第1導電部材241との溶接部Wは、金属接合部245の外周部分に設けられている。なお、負極第2導電部材242については、上記した実施形態の負極第2導電部材42と同様であってよい。
【0089】
図15は、
図14のXV-XV線に沿う金属接合部245A、245Bの近傍の模式的な縦断面図である。
図14のXV-XV線に沿う断面において、金属接合部245A、245Bでは、いずれも、第2突出領域P2が、第1突出領域P1よりもバスバー200との溶接部W側に配置されている。これにより、第1変形例の場合と同様に、金属接合部245の強度や耐久性をさらに向上できる。なお、このような金属接合部245は、上記した実施形態と同様に作製できる。
【0090】
以上の通り、ここで開示される技術の具体的な態様として、以下の各項に記載のものが挙げられる。
項1:第1電極および第2電極を有する電極体と、上記電極体を収容し、かつ貫通孔が設けられた第1面を有する電池ケースと、上記電池ケースの上記貫通孔を貫通し、上記第1電極と電気的に接続された第1電極端子と、を備える、蓄電デバイスであって、上記第1電極端子は、第1金属が質量基準で最も大きい割合を占める第1導電部材と、第2金属が質量基準で最も大きい割合を占め、かつ上記貫通孔内に配置される軸部を有する、第2導電部材と、上記第1導電部材と上記第2導電部材とが接合された金属接合部と、
を備え、上記金属接合部は、上記第1面に対して垂直で、かつ上記軸部の軸心を通過し、上記軸部の径方向に延びる断面において、上記第1金属が70質量%以上を占める第1領域と、上記第2金属が70質量%以上を占める第2領域と、を含み、ここで、上記金属接合部の周囲で上記第1導電部材と上記第2導電部材とが当接する境界部分を通過する面を境界面としたときに、上記第1領域は、上記境界面よりも上記第1導電部材側に位置する領域と、上記境界面よりも上記第2導電部材側に突出する第1突出領域と、を含み、上記第2領域は、上記境界面よりも上記第2導電部材側に位置する領域と、上記境界面よりも上記第1導電部材側に突出する第2突出領域と、を含む、蓄電デバイス。
項2:上記断面において、上記第2領域の総面積に対する、上記第2突出領域の面積の比が、0.03以上0.5以下である、項1に記載の蓄電デバイス。
項3:上記第1導電部材が、アルミニウム又はアルミニウム合金製であり、上記第2導電部材が、銅又は銅合金製である、項1または項2に記載の蓄電デバイス。
項4:上記第2金属は、上記第1金属よりも硬度が高く、上記第1電極端子は、上記第1導電部材と上記第2導電部材とが機械的に締結された締結部をさらに備え、上記断面において、上記第2突出領域が、上記第1突出領域よりも上記締結部の近くに配置されている、項1から項3のいずれか1つに記載の蓄電デバイス。
項5:上記金属接合部は、上記第1領域と上記第2領域との境界に、上記第1金属の含有量が30質量%以上70質量%未満であり、かつ、上記第2金属の含有量が30質量%以上70質量%未満である第3領域をさらに含む、項1から項4のいずれか1つに記載の蓄電デバイス。
項6:複数個の、項1から項5のいずれか1つに記載の蓄電デバイスと、複数個の上記蓄電デバイスを相互に電気的に接続するバスバーと、を備えた蓄電モジュール。
項7:上記第1導電部材は略矩形状で、上記第1導電部材の長辺方向の一方側に、上記バスバーが接続されるバスバー接続領域が設けられており、上記第2金属は、上記第1金属よりも硬度が高く、上記第1面に対して垂直、かつ上記第1面の長辺方向に沿って延びる断面において、上記第2突出領域が、上記第1突出領域よりも上記バスバー接続領域の近くに配置されている、項6に記載の蓄電モジュール。
【符号の説明】
【0091】
10 電池ケース
14 封口板(第1面)
20 電極体
40 負極端子(第1電極端子)
41、241 負極第1導電部材(第1導電部材)
41b 延伸部(バスバー接続領域)
42、242 負極第2導電部材(第2導電部材)
42s 軸柱部(軸部)
43 締結部
45、45A、45B、145、245 金属接合部
451 第1領域
P1 第1突出領域
452 第2領域
P2 第2突出領域
453 第3領域
100 蓄電デバイス
200、210 バスバー
500 蓄電モジュール