(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118610
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
F24F 11/86 20180101AFI20240826BHJP
F24F 11/64 20180101ALI20240826BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20240826BHJP
F25B 13/00 20060101ALI20240826BHJP
F24F 110/10 20180101ALN20240826BHJP
F24F 110/12 20180101ALN20240826BHJP
F24F 140/20 20180101ALN20240826BHJP
F24F 140/00 20180101ALN20240826BHJP
【FI】
F24F11/86
F24F11/64
F25B1/00 304S
F25B13/00 S
F25B13/00 104
F25B13/00 371
F24F110:10
F24F110:12
F24F140:20
F24F140:00
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024988
(22)【出願日】2023-02-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】日本キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 智紀
(72)【発明者】
【氏名】三浦 賢
(72)【発明者】
【氏名】浅利 峻
【テーマコード(参考)】
3L092
3L260
【Fターム(参考)】
3L092AA11
3L092BA13
3L092BA23
3L092FA26
3L092GA02
3L092GA05
3L092HA12
3L092KA13
3L092KA14
3L092LA05
3L260AB03
3L260BA41
3L260CA12
3L260CA32
3L260EA07
3L260EA27
3L260FA01
3L260FB07
(57)【要約】
【課題】冷暖同時運転時の液管圧力の低下を適切に抑制することが可能な空気調和装置を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る空気調和装置は、室外ユニット、複数の室内ユニット、複数の切替ユニット、制御ユニットを備える。切替ユニットは、室外ユニットと複数の前記室内ユニットの各々との間で冷房および暖房の二系統の流路のいずれかに冷媒の流れを切り替える。制御ユニットは、室外熱交換器が蒸発器として機能し、複数の室内ユニットにおいて冷房運転中のものと暖房運転中のものとが存在する場合、室外温度および暖房運転中の室内ユニットの室内温度検出部が検出した室内温度に応じて、冷房運転中の室内ユニットの室内膨張弁の開度を調整する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を吸い込み、圧縮して吐出する圧縮機と、室外の空気と前記冷媒との間で熱交換を行う蒸発器もしくは凝縮器として機能する室外熱交換器と、前記室外の空気を吸い込み、前記室外熱交換器で熱交換された空気を前記室外に吹き出す室外送風機と、前記室外熱交換器を流れる前記冷媒の流量を開度に応じて調整する室外膨張弁と、前記室外の空気の温度である室外温度を検出する室外温度検出部と、を有する室外ユニットと、
室内の空気と前記冷媒との間で熱交換を行う凝縮器もしくは蒸発器として機能する室内熱交換器と、前記室内の空気を吸い込み、前記室内熱交換器で熱交換された空気を前記室内に吹き出す室内送風機と、前記室内熱交換器を流れる前記冷媒の流量を開度に応じて調整する室内膨張弁と、前記室内の空気の温度である室内温度を検出する室内温度検出部と、を有する複数の室内ユニットと、
前記室外ユニットと複数の前記室内ユニットの各々との間で冷房および暖房の二系統の流路のいずれかに前記冷媒の流れを切り替える複数の切替ユニットと、
前記室外ユニット、複数の前記室内ユニット、および複数の前記切替ユニットの動作を制御し、複数の前記室内ユニットの各々を冷房および暖房のいずれかの運転に切り替える制御ユニットと、を備えた空気調和装置であって、
前記制御ユニットは、前記室外熱交換器が蒸発器として機能し、複数の前記室内ユニットにおいて冷房運転中のものと暖房運転中のものとが存在する場合、前記室外温度および暖房運転中の前記室内ユニットの前記室内温度検出部が検出した前記室内温度に応じて、冷房運転中の前記室内ユニットの前記室内膨張弁の開度を調整する
空気調和装置。
【請求項2】
前記制御ユニットは、冷房運転中の前記室内ユニットの前記室内膨張弁の開度を前記冷媒の過熱度の目標値により調整し、前記室外温度および暖房運転中の前記室内ユニットの前記室内温度検出部が検出した前記室内温度に応じて前記目標値を補正する
請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項3】
前記制御ユニットは、補正前の前記目標値に補正値を加えて前記目標値を補正し、暖房運転中の前記室内ユニットの前記室内温度検出部が検出した前記室内温度と前記室外温度の温度差が所定の閾値以下である場合、前記目標値を維持し、前記温度差が前記閾値を超えた場合、前記温度差が大きくなるほど大きな前記補正値で前記目標値を補正する
請求項2に記載の空気調和装置。
【請求項4】
前記制御ユニットは、暖房運転中の前記室内ユニットの前記室内温度検出部が検出した前記室内温度と前記室外温度の温度差が大きいほど開度が小さくなるように、冷房運転中の前記室内ユニットの前記室内膨張弁の開度を調整する
請求項1に記載の空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の冷凍サイクル(ヒートポンプサイクル)を利用した空気調和装置では、圧縮機、四方弁、室外熱交換器を有する室外ユニットと、膨張弁などの流量制御装置と、室内熱交換器を有する室内ユニットとが冷媒配管により接続され、冷媒を循環させる冷媒回路が構成されている。空気調和装置は、室内熱交換器で冷媒が蒸発する際に空気から吸熱することで冷房を行い、冷媒が凝縮する際に空気に放熱することで暖房を行う。
【0003】
例えば、空気調和装置が複数の室内ユニットを備えている場合、各々の室内ユニットに備えられたリモコンでの設定温度と該室内ユニット周辺の温度に応じて冷暖房のいずれが適切かを判断し、室内ユニットごとに冷房もしくは暖房を行うことができる冷暖同時運転(冷暖混在運転)が可能な空気調和装置が存在する。
【0004】
また、冷暖同時運転では、複数の室内ユニット間での熱回収運転となるため、冷房と暖房の空調負荷率がほぼ同等である場合、室外ユニットの熱交換量を低減することで空気調和装置の快適性と省エネ性が向上する。また、冷房運転と暖房運転のそれぞれの容量に応じて室外熱交換器への冷媒流量を調整することで室外ユニットの熱交換量を制御し、快適性と省エネ性が向上した運転ができる。
【0005】
しかしながら、室外温度が低い状態での冷暖同時運転時に室外ユニットが暖房主体で運転される場合、室外熱交換器は低外気の蒸発器、冷房運転中の室内ユニットの室内熱交換器は常温の蒸発器となる。このため、蒸発温度が室外温度に近い温度となり、室内ユニットでは蒸発温度と室内温度の差が大きくなり、過熱度が大きくなる。一般的に、過熱度が小さいほど空気調和装置の省エネ性が向上するため、目標過熱度は小さめに設定されている。その一方で、目標過熱度が小さいと、例えば膨張弁の開度が大きくなり過ぎる場合がある。そのため、低圧側の減圧不足により、蒸発温度よりも室外温度(外気温度)が低くなり、室外熱交換器や低圧受液器などに冷媒が溜まり込むことで液管を流れる冷媒の液圧(液管圧力)が低下する場合がある。室外ユニットが冷房主体で運転され、室外熱交換器が凝縮器となる場合も、同様の液圧低下が発生する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2522361号公報
【特許文献2】国際公開第2016/009488号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、これを踏まえてなされたものであり、その目的は、冷暖同時運転時の液管圧力の低下を適切に抑制することが可能な空気調和装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態に係る空気調和装置は、室外ユニットと、複数の室内ユニットと、複数の切替ユニットと、制御ユニットとを備える。
前記室外ユニットは、圧縮機と、室外熱交換器と、室外送風機と、室外膨張弁と、室外温度検出部とを有する。前記圧縮機は、冷媒を吸い込み、圧縮して吐出する。前記室外熱交換器は、室外の空気と前記冷媒との間で熱交換を行う蒸発器もしくは凝縮器として機能する。前記室外送風機は、前記室外の空気を吸い込み、前記室外熱交換器で熱交換された空気を前記室外に吹き出す。前記室外膨張弁は、前記室外熱交換器を流れる前記冷媒の流量を開度に応じて調整する。前記室外温度検出部は、前記室外の空気の温度である室外温度を検出する。
前記室内ユニットは、室内熱交換器と、室内送風機と、室内膨張弁と、室内温度検出部とを有する。前記室内熱交換器は、室内の空気と前記冷媒との間で熱交換を行う凝縮器もしくは蒸発器として機能する。前記室内送風機は、前記室内の空気を吸い込み、前記室内熱交換器で熱交換された空気を前記室内に吹き出す。前記室内膨張弁は、前記室内熱交換器を流れる前記冷媒の流量を開度に応じて調整する。前記室内温度検出部は、前記室内の空気の温度である室内温度を検出する。
前記切替ユニットは、前記室外ユニットと複数の前記室内ユニットの各々との間で冷房および暖房の二系統の流路のいずれかに前記冷媒の流れを切り替える。
前記制御ユニットは、前記室外ユニット、複数の前記室内ユニット、および複数の前記切替ユニットの動作を制御し、複数の前記室内ユニットの各々を冷房および暖房のいずれかの運転に切り替える。前記制御ユニットは、前記室外熱交換器が蒸発器として機能し、複数の前記室内ユニットにおいて冷房運転中のものと暖房運転中のものとが存在する場合、前記室外温度および暖房運転中の前記室内ユニットの前記室内温度検出部が検出した前記室内温度に応じて、前記冷房運転中の前記室内ユニットの前記室内膨張弁の開度を調整する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る空気調和装置を概略的に示す回路図である。
【
図2】実施形態に係る空気調和装置における開度調整処理時の制御フロー図である。
【
図3】実施形態に係る空気調和装置における室内外温度差(室内温度と室外温度の差)と目標過熱度の補正値との関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る空気調和装置1を概略的に示す回路図である。
図1に示すように、空気調和装置1は、冷媒が流れる流路によって接続された一つの室外ユニット2と複数の室内ユニット4を備える。
図1には、一つの室外ユニット2に対して三つの室内ユニット4(4a,4b,4c)が接続された構成例が示されているが、室内ユニット4の数はこれに限定されない。流路は、複数の配管が接続されて構成されている。これらの配管は、室外ユニット2側の流路を構成する配管(以下、室外側配管という)201と、室内ユニット4の流路を構成する配管(以下、室内側配管という)401とを含む。
【0011】
また、空気調和装置1は、室外ユニット2と複数の室内ユニット4の各々との間で冷房および暖房の二系統の流路のいずれかに冷媒の流れを切り替える複数の切替ユニット6を備えている。複数の切替ユニット6の各々は、複数の室内ユニット4の各々に対して一つずつ備えられている。
図1に示す例では、三つの室内ユニット4の各々に対して一つずつ、三つの切替ユニット6(6a,6b,6c)が備えられた構成例が示されている。切替ユニット6の数は、室内ユニット4の数と一致していればよい。これにより、複数の室内ユニット4の各々に対応して所定の切替ユニット6が紐付けられる。
【0012】
これらの切替ユニット6を備えることで、空気調和装置1は、冷暖同時運転(冷暖混在運転)が可能とされている。冷暖同時運転は、複数の室内ユニット4の各々が冷房運転もしくは暖房運転のいずれかを任意に選択して動作することが可能な空気調和装置1の運転態様である。冷暖同時運転時、空気調和装置1は、室外ユニット2が冷房運転する冷房運転主体、もしくは室外ユニット2が暖房運転する暖房運転主体のいずれかの運転態様となる。
【0013】
以下の説明においては、冷暖同時運転について特に断わらない限り、空気調和装置1が暖房運転主体の運転態様であり、室外ユニット2が暖房運転され、冷房運転中の室内ユニット4と暖房運転中の室内ユニット4とが存在(混在)しているものとする。室内ユニット4が冷房運転中とは、該室内ユニット4がその時点で実際に冷房運転を行っている状態(以下、冷房運転サーモオン状態という)であることをいう。室内ユニット4が暖房運転中とは、該室内ユニット4がその時点で実際に暖房運転を行っている状態(以下、暖房運転サーモオン状態という)であることをいう。
【0014】
冷房運転中および暖房運転中の二つの状態以外の状態には、室内ユニット4が停止(運転終了)している状態、冷房運転のサーモオフ状態(以下、冷房運転サーモオフ状態という)、および暖房運転のサーモオフ状態(以下、暖房運転サーモオフ状態という)が含まれる。サーモオフ状態は、例えば室内が冷房の設定温度に達して冷房運転が一時停止されている状態、もしくは室内が暖房の設定温度に達して暖房運転が一時停止されている状態である。
【0015】
加えて、空気調和装置1は、室外ユニット2、複数の室内ユニット4、および複数の切替ユニット6の動作を制御し、複数の室内ユニット4の各々を冷房および暖房のいずれかの運転に切り替える制御ユニット8を備える。
【0016】
室外ユニット2は、主たる要素として、圧縮機202、室外熱交換器203、室外送風機204、室外膨張弁205、室外温度検出部206などを有する。
【0017】
圧縮機202は、吸込管201aから冷媒を吸い込んで圧縮し、圧縮した冷媒を吐出管201bに吐出する。吸込管201aおよび吐出管201bは、室外側配管201の一部をそれぞれ構成する。例えば、圧縮機202は、密閉容器、回転軸、圧縮機構、電動機構などを備えて構成され、吐出管201bへ高温・高圧の気相冷媒を吐出する。
【0018】
室外熱交換器203は、室外の空気と冷媒との間で熱交換を行う。上述したとおり、本実施形態においては、空気調和装置1が暖房運転主体で冷暖同時運転される場合を想定している。このため、室外熱交換器203は、蒸発器として機能し、暖房運転サーモオン状態の室内ユニット4の室内熱交換器402(
図1に示す例では室内ユニット4a)で熱交換された液相冷媒や気液二相冷媒などを空気との熱交換により蒸発させ、低温・低圧の気相冷媒や気液二相冷媒に変化させる。ただし、空気調和装置1が冷房運転主体で冷暖同時運転される場合、室外熱交換器203は凝縮器として機能する。この場合、室外熱交換器203は、圧縮機202から吐出された高温・高圧の気相冷媒を空気との熱交換により凝縮し、高圧の液相冷媒に変化させる。
【0019】
室外送風機204は、室外の空気(以下、外気という)を吸い込み、室外熱交換器203で熱交換された空気を室外に吹き出す。室外送風機204によって吸い込まれた外気は、室外熱交換器203に吹き付けられる。これにより、かかる外気と室外熱交換器203を流れる冷媒との間で熱交換がなされる。室外送風機204は、室外熱交換器203の近傍に配置される。
【0020】
室外膨張弁205は、室外熱交換器203を流れる冷媒の流量を開度に応じて調整する。室外膨張弁205は、例えば最小開度と最大開度との間で弁の開度を制御することで冷媒の絞り量が調整される弁構造を有し、供給される駆動パルスの数に応じて開度が連続的に変化するPMV(Pulse Motor Valve)として構成されている。室外膨張弁205は、制御ユニット8に開度調整され、現在の開度(実開度)の値を有線もしくは無線を介して制御ユニット8に付与する。
【0021】
図1に示す例において、室外膨張弁205は、液相冷媒や気液二相冷媒が流れる流路(以下、液管という)90に配置されている。液管90は、例えば複数の配管が継手(一例としてパックドバルブ)PV0で連結されて構成され、一端が室外膨張弁205に接続され、他端が後述する各室内ユニット4の室内膨張弁404に接続されている。液管90は、室外側配管201および室内側配管401の一部を構成する。上述したとおり、本実施形態においては、空気調和装置1が暖房運転主体で冷暖同時運転、つまり室外ユニット2が暖房運転されている。このため、液管90には、暖房運転中(暖房運転サーモオン状態)の室内ユニット4(
図1に示す例では室内ユニット4a)から戻された液相冷媒や気液二相冷媒などが流れる。
【0022】
なお、空気調和装置1が冷房運転主体で冷暖同時運転、つまり室外ユニット2が冷房運転される場合、液管90には室外熱交換器203で熱交換された液相冷媒や気液二相冷媒などが流れる。この場合、室外熱交換器203には、圧縮機202から吐出された高温・高圧の気相冷媒が後述する第2の四方弁208で導かれて流入する。その際、第2の四方弁208は、
図1に破線で示すようにポートが接続される。
【0023】
室外温度検出部206は、室外の空気の温度である室外温度、つまり外気温度を検出する。ここでの室外は、空調対象空間である室内に対する室外であり、例えば室外熱交換器203や室外送風機204が設置された屋外空間などである。室外温度検出部206は、例えば感温素子が室外熱交換器203の近傍に配置されて室外温度を検出する温度センサ(サーミスタ)などである。室外温度検出部206は、検出した室外温度の値を有線もしくは無線を介して制御ユニット8に付与する。
【0024】
上述したように本実施形態において、空気調和装置1は暖房運転主体で冷暖同時運転されており、複数の室内ユニット4において冷房運転中のものと暖房運転中のものとが存在(混在)している。
図1に示す例では、三つの室内ユニット4a,4b,4cのうち、室内ユニット4aは暖房運転中、つまり暖房運転サーモオン状態、室内ユニット4bは暖房運転サーモオフ状態、室内ユニット4cは冷房運転中、つまり冷房運転サーモオン状態である。
【0025】
これら複数の室内ユニット4の各々は、主たる要素として、室内熱交換器402、室内送風機403、室内膨張弁404、室内温度検出部405などを有する。
【0026】
室内熱交換器402は、室内の空気と冷媒との間で熱交換を行う。本実施形態においては、複数の室内ユニット4には冷房運転中のものと暖房運転中のものとが存在(混在)しており、冷房運転中の室内ユニット4の室内熱交換器402は蒸発器として機能し、暖房運転中の室内ユニット4の室内熱交換器402は凝縮器として機能する。
図1に示す例では、暖房運転サーモオン状態の室内ユニット4aの室内熱交換器402aおよび暖房運転サーモオフ状態の室内ユニット4bの室内熱交換器402bは凝縮器として機能する。一方、冷房運転サーモオン状態の室内ユニット4cの室内熱交換器402cは蒸発器として機能する。
【0027】
室内送風機403(403a,403b,403c)は、室内の空気(以下、内気という)を吸い込み、室内熱交換器402で熱交換された空気を室内に吹き出す。室内送風機403によって吸い込まれた外気は、室内熱交換器402に吹き付けられる。これにより、かかる内気と室内熱交換器402を流れる冷媒との間で熱交換がなされる。室内送風機403は、室内熱交換器402の近傍に配置される。
【0028】
室内膨張弁404は、室内熱交換器402を流れる冷媒の流量を開度に応じて調整する。室内膨張弁404は、例えば最小開度と最大開度との間で弁の開度を制御することで冷媒の絞り量が調整される弁構造を有し、供給される駆動パルスの数に応じて開度が連続的に変化するPMV(Pulse Motor Valve)として構成されている。室内膨張弁404は、制御ユニット8に開度調整され、現在の開度(実開度)の値を有線もしくは無線を介して制御ユニット8に付与する。
【0029】
室内膨張弁404は、液管90に配置されている。
図1に示す例において、室内膨張弁404aは、液管90から分岐する第1の分岐管90aに配置されている。室内膨張弁404bは、液管90から分岐する第2の分岐管90bに配置されている。室内膨張弁404cは、液管90から分岐する第3の分岐管90cに配置されている。第3の分岐管90cは、液管の他端部に相当する。
【0030】
室内ユニット4が冷房サーモオン状態および暖房サーモオン状態である場合、室内膨張弁404は開く。一方、室内ユニット4が冷房サーモオフ状態および暖房サーモオフ状態である場合、室内膨張弁404は閉じる。また、室内ユニット4が停止している場合、室内膨張弁404は閉じる。
図1に示す例では、暖房運転サーモオン状態の室内ユニット4aの室内膨張弁404aおよび冷房運転サーモオン状態の室内ユニット4cの室内膨張弁404cは開いている。一方、暖房運転サーモオフ状態の室内ユニット4bの室内膨張弁404bは閉じている。
【0031】
室内温度検出部405は、室内ユニット4によって空調される空調対象の室内の空気の温度である室内温度、つまり内気温度を検出する。室内温度検出部405は、例えば感温素子が室内ユニット4の筐体などに配置されて室内温度を検出する温度センサ(サーミスタ)などである。室内温度検出部405は、検出した室内温度の値を有線もしくは無線を介して制御ユニット8に付与する。
図1に示す例では、三つの室内ユニット4a,4b,4cの各々に対してそれぞれ一つずつ室内温度検出部405a,405b,405cが備えられている。
【0032】
複数の切替ユニット6の各々は、室外ユニット2と複数の室内ユニット4の各々との間で冷房および暖房の二系統の流路のいずれかに冷媒の流れを切り替える。各々の切替ユニット6は、複数の室内ユニット4の各々に対応して一つずつ備えられている。
図1に示す例では、三つの室内ユニット4a,4b,4cに対応して一つずつ、三つの切替ユニット6a,6b,6cが設けられている。なお、以下の説明では、これら三つの切替ユニット6a,6b,6cの共通事項である場合、切替ユニット6と記し、各々の切替ユニット6a,6b,6cの構成要素については対応する添え字を付す。
【0033】
このように冷媒の流れを切り替えるべく、各々の切替ユニット6は、二つの切替弁61,62を有している。
二つの切替弁のうちの一方(以下、第1の切替弁61という)は、室内熱交換器402への冷媒の流入と遮断とを切り替える。第1の切替弁61は、対応する室内ユニット4が暖房運転サーモオン状態および暖房運転サーモオフ状態である場合に開く。一方、第1の切替弁61は、対応する室内ユニット4が冷房運転サーモオン状態および冷房運転サーモオフ状態である場合に閉じる。
【0034】
これに対し、二つの切替弁のうちの他方(以下、第2の切替弁62という)は、室内熱交換器402からの冷媒の流出と遮断とを切り替える。第2の切替弁62は、対応する室内ユニット4が冷房運転サーモオン状態および冷房運転サーモオフ状態である場合に開く。一方、第2の切替弁62は、対応する室内ユニット4が暖房運転サーモオン状態および暖房運転サーモオフ状態である場合に閉じる。
【0035】
なお、第1の切替弁61および第2の切替弁62は、対応する室内ユニット4が停止している場合、例えば少なくとも一方が閉じる。
【0036】
図1に示す例では、暖房運転サーモオン状態の室内ユニット4aに対応する切替ユニット6aの第1の切替弁61aおよび暖房運転サーモオフ状態の室内ユニット4bに対応する切替ユニット6bの第1の切替弁61bは開いている。一方、これら室内ユニット4a,4bに対応する切替ユニット6a,6bの第2の切替弁62a,62bは閉じている。
これに対し、冷房運転サーモオン状態の室内ユニット4cに対応する切替ユニット6cの第2の切替弁62cは開いている。一方、かかる室内ユニット4cに対応する切替ユニット6cの第1の切替弁61cは閉じている。
【0037】
第1の切替弁61および第2の切替弁62は、例えば弁の開度を制御することで冷媒の流れを遮断可能な弁構造を有し、供給される駆動パルスの数に応じて開度が連続的に変化するPMV(Pulse Motor Valve)として構成されている。第1の切替弁61および第2の切替弁62は、後述する制御ユニット8に動作制御、例えば開度調整され、開度の値を有線もしくは無線を介して制御ユニット8に付与する。
【0038】
図1に示す例において、第1の切替弁61は、圧縮機202から吐出された高温・高圧の気相冷媒が流れる流路(以下、第1のガス管という)91に配置されている。第1のガス管91は、例えば複数の配管が継手(一例としてパックドバルブ)PV1で連結されて構成され、一端が四方弁(第1の四方弁)207を介して吐出管201bに接続され、他端が各室内ユニット4の室内熱交換器402に接続されている。第1のガス管91は、室外側配管201および室内側配管401の一部を構成する。
図1に示す例において、第1の四方弁207は、四つのポートのうちの一つが閉塞されており、実質的に三方弁として機能する。
【0039】
なお、室外ユニット2が冷房運転する冷房運転主体の冷暖同時運転時、圧縮機202から吐出された高温・高圧の気相冷媒は、四方弁(第2の四方弁)208で導かれて室外熱交換器203に流入し、圧縮機202から吐出された高温・高圧の気相冷媒の一部が第1の四方弁207で導かれて第1のガス管91を流れる。
【0040】
第1の切替弁61aは、第1のガス管91から分岐する第1の分岐管91aに配置されている。第1の切替弁61bは、第1のガス管91から分岐する第2の分岐管91bに配置されている。第1の切替弁61cは、第1のガス管91から分岐する第3の分岐管91cに配置されている。第3の分岐管91cは、第1のガス管91の他端部に相当する。
【0041】
図1に示す例において、第2の切替弁62は、冷房運転中(冷房サーモオン状態)の室内ユニット4の室内熱交換器402から流出する冷媒、例えば該室内熱交換器402で蒸発された気相冷媒や気液二相冷媒が流れる流路(以下、第2のガス管という)92に配置されている。第2のガス管92は、例えば複数の配管が継手(一例としてパックドバルブ)PV2で連結されて構成され、一端が各室内ユニット4の室内熱交換器402に接続され、他端がアキュムレータ(第1のアキュムレータ)209に接続されている。第2のガス管92は、室内熱交換器402と切替ユニット6(第1の切替弁61および第2の切替弁62)との間で第1のガス管91と合流する。第2のガス管92は、室外側配管201および室内側配管401の一部を構成する。
【0042】
アキュムレータ209は、冷房運転中の室内ユニット4の室内熱交換器402から流出された冷媒を気液分離させ、圧縮機202に気相冷媒のみを供給する。アキュムレータ209で気液分離された冷媒は、気液分離器(第2のアキュムレータ)210に導かれる。気液分離器210は、圧縮機202が液相冷媒を圧縮しないように、冷媒をさらに気液分離する。
【0043】
第2の切替弁62aは、第2のガス管92から分岐する第1の分岐管92aに配置されている。第2の切替弁62bは、第2のガス管92から分岐する第2の分岐管92bに配置されている。第2の切替弁62cは、第2のガス管92から分岐する第3の分岐管92cに配置されている。第3の分岐管92cは、第2のガス管92の一端部に相当する。
【0044】
このような構成をなす空気調和装置1においては、
図1に白抜き矢印で示すように冷媒が流れる。圧縮機202から吐出管201bに吐出された気相冷媒は、第1の四方弁207で第1のガス管91に導かれる。第1のガス管91を流れる冷媒は、暖房運転中(暖房運転サーモオン状態)の室内ユニット4aに対応する切替ユニット6aの第1の切替弁61aを通って室内熱交換器402aに流入する。室内熱交換器402aに流入して液相や気液二相に変化した冷媒は、室内膨張弁404aを通って液管90を流れる。
【0045】
液管90を流れる冷媒は、室外膨張弁205を通って室外熱交換器203に流入する。室外熱交換器203に流入して気相や気液二相に変化した冷媒は、第2の四方弁208でアキュムレータ209に導かれる。また、液管90を流れる冷媒の一部は、冷房運転中(冷房運転サーモオン状態)の室内ユニット4cの室内膨張弁404cを通って室内熱交換器402cに流入する。室内熱交換器402cに流入して気相や気液二相に変化した冷媒は、室内ユニット4cに対応する切替ユニット6cの第2の切替弁62cを通って第2のガス管92を流れる。第2のガス管92を流れる冷媒は、第1の四方弁207でアキュムレータ209に導かれる。
【0046】
アキュムレータ209に導かれた冷媒は、気液分離器210を経由して気液分離される。そして、気液分離された気相冷媒が圧縮機202に戻される。
【0047】
制御ユニット8は、室外ユニット2、複数の室内ユニット4、複数の切替ユニット6の動作を制御する。そして、制御ユニット8は、冷媒の流れを切り替え、複数の室内ユニット4の各々を冷房および暖房のいずれかの運転に切り替える。
【0048】
制御ユニット8は、CPU、メモリ、記憶装置(不揮発メモリ)、入出力回路、タイマなどを含み、所定の演算処理を実行する。例えば、制御ユニット8は、各種データを入出力回路により読み込み、記憶装置からメモリに読み出したプログラムを用いてCPUで演算処理し、処理結果に基づいて圧縮機202、室外送風機204、室外膨張弁205、室外温度検出部206、室内送風機403、室内膨張弁404、第1の切替弁61、および第2の切替弁62などの動作制御を行う。
【0049】
制御ユニット8は、このような動作制御を行う動作制御部81を有する。動作制御部81は、上述した各々の構成要素(動作制御対象)の動作、例えば起動(運転開始)と停止などを制御するための所定の演算処理をCPUに実行させるプログラム(動作制御プログラム)として構成されている。動作制御部81は、例えば制御ユニット8の記憶装置(不揮発メモリ)に記憶されて実行時にメモリに読み出される。動作制御部81は、動作制御対象との間で制御信号やデータ信号を有線もしくは無線を介して送受信する。すなわち、動作制御部81と動作制御対象とは、有線もしくは無線により電気的に接続されている。
【0050】
上述したとおり、本実施形態においては、空気調和装置1が暖房運転主体で冷暖同時運転されている。すなわち、室外ユニット2の室外熱交換器203は蒸発器として機能し、複数の室内ユニット4においては冷房運転中のものと暖房運転中のものとが存在する。このような本実施形態に係る冷暖同時運転時、制御ユニット8は、冷房運転中(冷房運転サーモオン状態)の室内ユニット4の室内膨張弁404の開度を調整する。かかる調整(以下、開度調整処理という)を行うため、制御ユニット8は、開度調整部82を有する。開度調整部82は、例えば冷房中の室内ユニット4の室内膨張弁404の開度を調整するための所定の演算処理をCPUに実行させるプログラム(開度調整プログラム)として構成されている。開度調整部82は、例えば制御ユニット8の記憶装置(不揮発メモリ)に記憶されて実行時にメモリに読み出される。
【0051】
図1に示す例では、開度調整部82は冷房運転中(冷房運転サーモオン状態)の室内ユニット4cの室内膨張弁404cの開度を調整する。その一方で、開度調整部82は、暖房運転中(暖房運転サーモオン状態)の室内ユニット4aの室内膨張弁404aおよび暖房運転サーモオフ状態の室内ユニット4bの室内膨張弁404bの開度を調整せず、そのままの開度に維持する。
【0052】
開度調整処理において、開度調整部82は、室外温度および室内温度に応じて、冷房運転中の室内ユニット4の室内膨張弁404の開度を調整する。例えば、開度調整部82は、室内温度と室外温度との差(以下、室内外温度差という)に応じて、冷房運転中(冷房運転サーモオン状態)の室内ユニット4の室内膨張弁404の開度を調整する。その際、開度調整部82は、冷媒の目標過熱度を補正する。目標過熱度は、冷媒の過熱度を制御する際の目標値である。過熱度は、圧縮機202に吸い込まれる冷媒の温度(TS)と、蒸発器である室外熱交換器203に流入する冷媒の温度(TE)との差(TS-TE)で算出される。
【0053】
以下、空気調和装置1における開度調整処理について、制御ユニット8の制御フローに従って説明する。
図2には、開度調査処理における制御ユニット8の制御フローを示す。制御ユニット8は、開度調整処理を行う際、例えば動作制御部81である動作制御プログラムおよび開度調整部82である開度調整プログラムを記憶装置(不揮発メモリ)からメモリに読み出し、CPUで実行する。
【0054】
開度調整処理にあたって、空気調和装置1は、運転を開始する(S101)。具体的には、動作制御部81が圧縮機202を起動し、室外膨張弁205などを開いて室外側配管201および室内側配管401により構成される流路に冷媒を循環させる。ここでは、空気調和装置1は、室外ユニット2が暖房運転する暖房運転主体の運転態様となり、室外熱交換器203は蒸発器として機能する。
【0055】
このように空気調和装置1が運転を開始すると、開度調整部82は、空気調和装置1の運転条件を判定する。運転条件は、空気調和装置1が冷暖同時運転されているか否かの判定条件である。ここでは、開度調整部82は、空気調和装置1が冷暖同時運転されているか、つまり複数の室内ユニット4において冷房運転中のものと暖房運転中のものとが存在(混在)しているかを判定する(S102)。
【0056】
室内ユニット4は、例えばユーザ等がリモコンなどから冷房運転もしくは暖房運転のいずれかを設定して運転開始される。その際、室内ユニット4が冷房運転サーモオン状態および冷房運転サーモオフ状態であれば、制御ユニット8は、該室内ユニット4に対応する切替ユニット6の第1の切替弁61を閉じ、第2の切替弁62を開く。これに対し、室内ユニット4が暖房運転サーモオン状態および暖房運転サーモオフ状態であれば、制御ユニット8は、該室内ユニット4に対応する切替ユニット6の第1の切替弁61を開き、第2の切替弁62を閉じる。したがって、すべての第1の切替弁61が閉じ、かつすべての第2の切替弁62が開いている場合、あるいはその逆である場合を除き、開度調整部82は空気調和装置1が冷暖同時運転されている、つまり運転条件が成立すると判定する。一方、すべての第1の切替弁61が閉じ、かつすべての第2の切替弁62が開いている場合、あるいはその逆である場合、開度調整部82は空気調和装置1が冷暖同時運転されていない、つまり運転条件が成立しないと判定する。
【0057】
図1に示す例では、第1の切替弁61a,61bが開き、第1の切替弁61aが閉じており、かつ第2の切替弁62a,62bが閉じ、第2の切替弁62cが開いている。したがって図示例の場合、開度調整部82は、空気調和装置1が冷暖同時運転されている、つまり運転条件が成立すると判定する。
【0058】
空気調和装置1が冷暖同時運転されていると判定した場合(S102においてYes)、開度調整部82は、温度条件を判定する。ここでは、開度調整部82は、室内温度(TA)と室外温度(TO)との差(室内外温度差)が所定の閾値(以下、基準閾値という)(X)を超えているかを判定する(S103)。室内温度(TA)は、暖房運転中(暖房運転サーモオン状態)の室内ユニット4によって空調される空調対象の室内の空気の温度、つまり暖房運転中の室内ユニット4の室内温度検出部405が検出した温度である。室外温度(TO)は、室外ユニット2の室外温度検出部206が検出した温度である。すなわち、室内外温度差は、暖房運転中(暖房運転サーモオン状態)の室内ユニット4によって空調される空調対象の室内温度と室外温度との差である。
【0059】
なお、暖房運転中(暖房運転サーモオン状態)の室内ユニット4が複数存在する場合、例えばこれら各々の室内ユニット4の室内温度検出部405が検出した温度のうち、高い方の温度を温度条件における室内温度とすればよい。
【0060】
冷暖同時運転時において室内外温度差が大きい状態は、液管90を流れる冷媒の圧力(液管圧力)が低下している状態に相当する。すなわち、温度条件は液管圧力が低下しているか否かの判定条件を兼ねており、成立する場合には液管圧力が低下していると判定することが可能である。
【0061】
基準閾値(X)は、冷媒の目標過熱度の補正を要する室内外温度差の下限値であり、例えば0℃から10℃程度に設定される。また、基準閾値は、液管圧力が低下しているか否かの判定閾値も兼ねる。基準閾値の設定値は、例えば制御ユニット8の記憶装置(不揮発メモリ)に記憶される。記憶された基準閾値は、S103において温度条件の判定時に読み出され、パラメータとして使用される。温度条件の判定にあたって、開度調整部82は、室外温度を室外温度検出部206から、室内温度を暖房運転中(暖房運転サーモオン状態)の室内ユニット4の室内温度検出部405からそれぞれ取得する。
図1に示す例では、開度調整部82は、室内ユニット4aの室内温度検出部405aから室内温度を取得する。
【0062】
室内外温度差が基準閾値を超えている(TA-TO>X)と判定した場合(S103においてYes)、開度調整部82は、冷媒の目標過熱度を補正する(S104)。ここでは、開度調整部82は、目標過熱度の値に所定の補正値を加える。補正値は、基準閾値を超えて室内外温度差が大きくなるほど大きな値となるように設定されている。
図3は、室内外温度差と目標過熱度の補正値との関係の一例を示す図である。
図3に示す例では、室内外温度差が基準閾値以下である場合、補正値は0であり、室内外温度差が基準閾値を超えた場合、L3で示される軌跡のように、室内外温度差に比例して補正値が大きくなる。なお、
図3に示す関係は一例に過ぎず、基準閾値を超えた室内外温度差と目標過熱度の補正値との関係は、例えば二次関数の軌跡で示される関係であってもよいし、補正値が段階的に大きくなるような関係であってもよい。補正された目標過熱度の値は、例えば制御ユニット8のメモリに保持される。
【0063】
目標過熱度を補正すると、開度調整部82は、目標過熱度となるように冷媒の過熱度を制御する(S105)。すなわち、冷媒の過熱度が目標過熱度で制御される。S105における目標過熱度は、S104において補正された場合は補正後の値である。
【0064】
S104において目標過熱度を補正した場合、開度調整部82は、冷媒の過熱度が補正後の目標過熱度となるように、冷房運転中の室内ユニット4の室内膨張弁404の開度を調整する。換言すれば、開度調整部82は、補正後の目標過熱度に応じて冷房運転中の室内ユニット4の室内膨張弁404の開度を小さくする。上述したように、目標過熱度の補正値は、室内外温度差が基準閾値を超えて大きくなるほど大きくなる。したがって、冷房運転中の室内ユニット4の室内膨張弁404の開度は、目標過熱度が大きくなるほど小さくなる(絞られる)。すなわち、開度調整部82は、室内外温度差が大きいほど開度が小さくなるように、冷房運転中の室内ユニット4の室内膨張弁404の開度を調整する。
【0065】
図1に示す例では、室内外温度差が大きいほど開度が小さくなるように、開度調整部82は室内ユニット4cの室内膨張弁404cの開度を調整する。その一方で、開度調整部82は、室内ユニット4a,4bの室内膨張弁404a,404bの開度を調整せず、そのままの開度(開度調整処理の実行時点での開度)に維持する。
【0066】
なお、冷房運転中(冷房運転サーモオン状態)の室内ユニット4が複数存在する場合、開度調整部82は、冷房運転中のすべての室内ユニット4の室内膨張弁404の開度を調整する。
【0067】
これに対し、空気調和装置1が冷暖同時運転されていない場合(S102においてNo)および室内外温度差が基準閾値以下(TA-TO≦X)である場合(S103においてNo)、目標過熱度は補正されない。これらの場合、目標過熱度は、例えば圧縮機202の回転数などに応じて設定される所定値であり、S104のように補正される前の値(一例として初期値)である。すなわち、ここでの目標過熱度は、補正後の目標過熱度に対する補正前の目標過熱度に相当する。
【0068】
したがって、空気調和装置1が冷暖同時運転されていない場合(S102においてNo)、あるいは室内外温度差が基準閾値以下である場合(S103においてNo)、開度調整部82は、目標過熱度(補正前の目標過熱度)となるように冷媒の過熱度を制御する。
【0069】
このように冷媒の過熱度を制御すると、制御ユニット8は、空気調和装置1の運転停止条件を判定する(S106)。運転停止条件は、空気調和装置1を運転停止させるか否かの判定条件である。運転停止条件は、例えば制御ユニット8が空気調和装置1の運転停止を示す信号を受信したか否かなどに応じて判定される。運転停止を示す信号は、例えば室外ユニット2の操作パネルや室内ユニット4のリモコンなどからユーザ等が運転停止を選択することで発信される。
【0070】
運転停止条件が成立する場合(S106においてYes)、動作制御部81は、空気調和装置1の運転を停止する(S107)。停止した空気調和装置1がその後に再び冷房運転を開始した場合、別途新たに開度調整処理が実行される。
【0071】
これに対し、運転停止条件が成立しない場合(S106においてNo)、開度調整部82は、空気調和装置1の運転条件として、空気調和装置1が冷暖同時運転されているかを判定する(S102)。そして、制御ユニット8(動作制御部81および開度調整部82)は、運転条件の判定結果に応じて以降の処理(S103~S107)を選択的に実行する。
すなわち、空気調和装置1が運転されている間、一連の開度調整処理が繰り返される。そして、空気調和装置1の運転が停止されると、一連の開度調整処理も終了する。
【0072】
以上のように本実施形態によれば、空気調和装置1が暖房運転主体の運転態様であり、室外ユニット2が暖房運転され、冷房運転中の室内ユニット4と暖房運転中の室内ユニット4とが存在(混在)している場合、冷房運転中の室内ユニット4の室内膨張弁404の開度を適切に調整できる。具体的には、暖房運転中の室内ユニット4によって空調される空調対象(以下、暖房室内という)の室内温度と室外温度との差(室内外温度差)に応じて、冷房運転中の室内ユニット4の室内膨張弁404の開度を適切に調整できる。
【0073】
例えば、暖房室内の室内温度に比べて室外温度が特に低い場合、つまり室内外温度差が比較的大きい場合、過熱度が大きくなり、冷房運転中の室内ユニット4の室内膨張弁404の開度が全開となって液管圧力が低下しやすい。本実施形態においては、室内外温度差が基準閾値を超えて大きくなるほど、冷房運転中の室内ユニット4の室内膨張弁404の開度を小さくできる。これにより、液管圧力の低下を抑制することができる。
【0074】
また、このように冷房運転中の室内ユニット4の室内膨張弁404の開度を小さくする際、本実施形態では冷媒の目標過熱度を補正できる。具体的には、目標過熱度の値に所定の補正値を加えることで、基準閾値を超えて室内外温度差が大きくなるほど補正値を大きくできる。これにより、補正後の目標過熱度の値を補正前よりも大きくできる。これに対し、室内外温度差が基準閾値以下である場合、補正値を0として目標過熱度の値を維持できる。
【0075】
したがって本実施形態によれば、上述したように液管圧力が低下しやすい室内外温度差が大きな条件下では、冷房運転中の室内ユニット4の室内膨張弁404の開度を小さくでき、液管圧力の低下を適切に抑制できる。これに対し、液管圧力の低下が起きにくい室内外温度差が小さな条件下では、目標過熱度が大きくなるような補正をすることなく、該目標過熱度(補正される前の値。一例として初期値)で冷媒の過熱度を制御できる。これにより、省エネ性を高めて空気調和装置1を運転させることが可能となる。
【0076】
このように本実施形態によれば、冷暖同時運転時であっても、液管圧力の低下を適切に抑制しながら、省エネ性の向上を図ることが可能な空気調和装置1を実現できる。
【0077】
以上、本発明の実施形態を説明したが、該実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。かかる新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0078】
1…空気調和装置、2…室外ユニット、4,4a,4b,4c…室内ユニット、6,6a,6b,6c…切替ユニット、8…制御ユニット、61,61a,61b,61c…第1の切替弁、62,62a,62b,62c…第2の切替弁、81…動作制御部、82…開度調整部、90…液管、90a…第1の分岐管、90b…第2の分岐管、90c…第3の分岐管、91…第1のガス管、91a…第1の分岐管、91b…第2の分岐管、91c…第3の分岐管、92…第2のガス管、92a…第1の分岐管、92b…第2の分岐管、92c…第3の分岐管、201…室外側配管、201a…第1の配管(吸込管)、201b…第2の配管(吐出管)、202…圧縮機、203…室外熱交換器、204…室外送風機、205…室外膨張弁、206…室外温度検出部、207…四方弁(第1の四方弁)、208…四方弁(第2の四方弁)、209…アキュムレータ(第1のアキュムレータ)、210…気液分離器(第2のアキュムレータ)、401…室内側配管、402,402a,402b,402c…室内熱交換器、403,403a,403b,403c…室内送風機、404,404a,404b,404c…室内膨張弁、405,405a,405b,405c…室内温度検出部、PV0,PV1,PV2…継手。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を吸い込み、圧縮して吐出する圧縮機と、室外の空気と前記冷媒との間で熱交換を行う蒸発器もしくは凝縮器として機能する室外熱交換器と、前記室外の空気を吸い込み、前記室外熱交換器で熱交換された空気を前記室外に吹き出す室外送風機と、前記室外熱交換器を流れる前記冷媒の流量を開度に応じて調整する室外膨張弁と、前記室外の空気の温度である室外温度を検出する室外温度検出部と、を有する室外ユニットと、
室内の空気と前記冷媒との間で熱交換を行う凝縮器もしくは蒸発器として機能する室内熱交換器と、前記室内の空気を吸い込み、前記室内熱交換器で熱交換された空気を前記室内に吹き出す室内送風機と、前記室内熱交換器を流れる前記冷媒の流量を開度に応じて調整する室内膨張弁と、前記室内の空気の温度である室内温度を検出する室内温度検出部と、を有する複数の室内ユニットと、
前記室外ユニットと複数の前記室内ユニットの各々との間で冷房および暖房の二系統の流路のいずれかに前記冷媒の流れを切り替える複数の切替ユニットと、
前記室外ユニット、複数の前記室内ユニット、および複数の前記切替ユニットの動作を制御し、複数の前記室内ユニットの各々を冷房および暖房のいずれかの運転に切り替える制御ユニットと、を備えた空気調和装置であって、
前記制御ユニットは、前記室外熱交換器が蒸発器として機能し、複数の前記室内ユニットにおいて冷房運転中のものと暖房運転中のものとが存在する場合、前記室外温度および暖房運転中の前記室内ユニットの前記室内温度検出部が検出した前記室内温度に応じて、冷房運転中の前記室内ユニットの前記室内膨張弁の開度を調整し、
冷房運転中の前記室内ユニットの前記室内膨張弁の開度を前記冷媒の過熱度の目標値により調整し、前記室外温度および暖房運転中の前記室内ユニットの前記室内温度検出部が検出した前記室内温度に応じて前記目標値を補正し、
補正前の前記目標値に補正値を加えて前記目標値を補正し、暖房運転中の前記室内ユニットの前記室内温度検出部が検出した前記室内温度と前記室外温度の温度差が所定の閾値以下である場合、前記目標値を維持し、前記温度差が前記閾値を超えた場合、前記温度差が大きくなるほど大きな前記補正値で前記目標値を補正する
空気調和装置。
【請求項2】
冷媒を吸い込み、圧縮して吐出する圧縮機と、室外の空気と前記冷媒との間で熱交換を行う蒸発器もしくは凝縮器として機能する室外熱交換器と、前記室外の空気を吸い込み、前記室外熱交換器で熱交換された空気を前記室外に吹き出す室外送風機と、前記室外熱交換器を流れる前記冷媒の流量を開度に応じて調整する室外膨張弁と、前記室外の空気の温度である室外温度を検出する室外温度検出部と、を有する室外ユニットと、
室内の空気と前記冷媒との間で熱交換を行う凝縮器もしくは蒸発器として機能する室内熱交換器と、前記室内の空気を吸い込み、前記室内熱交換器で熱交換された空気を前記室内に吹き出す室内送風機と、前記室内熱交換器を流れる前記冷媒の流量を開度に応じて調整する室内膨張弁と、前記室内の空気の温度である室内温度を検出する室内温度検出部と、を有する複数の室内ユニットと、
前記室外ユニットと複数の前記室内ユニットの各々との間で冷房および暖房の二系統の流路のいずれかに前記冷媒の流れを切り替える複数の切替ユニットと、
前記室外ユニット、複数の前記室内ユニット、および複数の前記切替ユニットの動作を制御し、複数の前記室内ユニットの各々を冷房および暖房のいずれかの運転に切り替える制御ユニットと、を備えた空気調和装置であって、
前記制御ユニットは、前記室外熱交換器が蒸発器として機能し、複数の前記室内ユニットにおいて冷房運転中のものと暖房運転中のものとが存在する場合、前記室外温度および暖房運転中の前記室内ユニットの前記室内温度検出部が検出した前記室内温度に応じて、冷房運転中の前記室内ユニットの前記室内膨張弁の開度を調整し、
暖房運転中の前記室内ユニットの前記室内温度検出部が検出した前記室内温度と前記室外温度の温度差が大きいほど開度が小さくなるように、冷房運転中の前記室内ユニットの前記室内膨張弁の開度を調整する
空気調和装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
一実施形態に係る空気調和装置は、室外ユニットと、複数の室内ユニットと、複数の切替ユニットと、制御ユニットとを備える。
前記室外ユニットは、圧縮機と、室外熱交換器と、室外送風機と、室外膨張弁と、室外温度検出部とを有する。前記圧縮機は、冷媒を吸い込み、圧縮して吐出する。前記室外熱交換器は、室外の空気と前記冷媒との間で熱交換を行う蒸発器もしくは凝縮器として機能する。前記室外送風機は、前記室外の空気を吸い込み、前記室外熱交換器で熱交換された空気を前記室外に吹き出す。前記室外膨張弁は、前記室外熱交換器を流れる前記冷媒の流量を開度に応じて調整する。前記室外温度検出部は、前記室外の空気の温度である室外温度を検出する。
前記室内ユニットは、室内熱交換器と、室内送風機と、室内膨張弁と、室内温度検出部とを有する。前記室内熱交換器は、室内の空気と前記冷媒との間で熱交換を行う凝縮器もしくは蒸発器として機能する。前記室内送風機は、前記室内の空気を吸い込み、前記室内熱交換器で熱交換された空気を前記室内に吹き出す。前記室内膨張弁は、前記室内熱交換器を流れる前記冷媒の流量を開度に応じて調整する。前記室内温度検出部は、前記室内の空気の温度である室内温度を検出する。
前記切替ユニットは、前記室外ユニットと複数の前記室内ユニットの各々との間で冷房および暖房の二系統の流路のいずれかに前記冷媒の流れを切り替える。
前記制御ユニットは、前記室外ユニット、複数の前記室内ユニット、および複数の前記切替ユニットの動作を制御し、複数の前記室内ユニットの各々を冷房および暖房のいずれかの運転に切り替える。前記制御ユニットは、前記室外熱交換器が蒸発器として機能し、複数の前記室内ユニットにおいて冷房運転中のものと暖房運転中のものとが存在する場合、前記室外温度および暖房運転中の前記室内ユニットの前記室内温度検出部が検出した前記室内温度に応じて、前記冷房運転中の前記室内ユニットの前記室内膨張弁の開度を調整する。前記制御ユニットは、冷房運転中の前記室内ユニットの前記室内膨張弁の開度を前記冷媒の過熱度の目標値により調整し、前記室外温度および暖房運転中の前記室内ユニットの前記室内温度検出部が検出した前記室内温度に応じて前記目標値を補正する。前記制御ユニットは、補正前の前記目標値に補正値を加えて前記目標値を補正し、暖房運転中の前記室内ユニットの前記室内温度検出部が検出した前記室内温度と前記室外温度の温度差が所定の閾値以下である場合、前記目標値を維持し、前記温度差が前記閾値を超えた場合、前記温度差が大きくなるほど大きな前記補正値で前記目標値を補正する。