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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118615
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】設備教育システム、設備教育方法
(51)【国際特許分類】
   G09B 9/00 20060101AFI20240826BHJP
   G09B 19/00 20060101ALI20240826BHJP
   G09B 5/12 20060101ALI20240826BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20240826BHJP
   G06Q 50/20 20120101ALI20240826BHJP
【FI】
G09B9/00 Z
G09B19/00 H
G09B5/12
G06F3/01 510
G06Q50/20 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024994
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(72)【発明者】
【氏名】古田 彰紀
【テーマコード(参考)】
2C028
5E555
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
2C028AA10
2C028BB04
2C028BC01
5E555AA64
5E555AA71
5E555BA02
5E555BB02
5E555BB08
5E555BC04
5E555BC08
5E555BE17
5E555CA42
5E555CA44
5E555CA45
5E555CB21
5E555CB65
5E555CB66
5E555CB72
5E555CB82
5E555CC01
5E555CC05
5E555DA08
5E555DB57
5E555DC07
5E555DC19
5E555DC84
5E555DC90
5E555EA03
5E555EA06
5E555FA00
5L049CC34
5L050CC34
(57)【要約】
【課題】担当者に応じた設備の教育をすることができる。
【解決手段】設備の操作と整備のうち少なくともいずれか一方を含む学習項目について学習するための教育コンテンツを記憶するコンテンツ記憶部と、前記学習項目に基づいて学習をする複数のユーザについて、それぞれの学習状況を記憶する学習状況記憶部と、複数の頭部装着表示部であり、前記学習をする複数のユーザの頭部に1つずつ装着可能な頭部装着表示部と、頭部装着表示部を装着した各ユーザの学習状況を前記学習状況記憶部から取得し、学習項目に対応する前記設備の教育コンテンツを前記コンテンツ記憶部から抽出し、抽出された教育コンテンツを対応するユーザの頭部装着表示部に対し、当該ユーザの学習状況に応じて異なる表示態様で表示させる出力制御部と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備の操作と整備のうち少なくともいずれか一方を含む学習項目について学習するための教育コンテンツを記憶するコンテンツ記憶部と、
前記学習項目に基づいて学習をする複数のユーザについて、それぞれの学習状況を記憶する学習状況記憶部と、
複数の頭部装着表示部であり、前記学習をする複数のユーザの頭部に1つずつ装着可能な頭部装着表示部と、
頭部装着表示部を装着した各ユーザの学習状況を前記学習状況記憶部から取得し、学習項目に対応する前記設備の教育コンテンツを前記コンテンツ記憶部から抽出し、抽出された教育コンテンツを対応するユーザの頭部装着表示部に対し、当該ユーザの学習状況に応じて異なる表示態様で表示させる出力制御部と、
を有する設備教育システム。
【請求項2】
前記設備は、レーダ設備である請求項1記載の設備教育システム。
【請求項3】
前記ユーザの能力と、学習項目の進捗との少なくともいずれか一方に基づく学習状況に応じて学習ランクを決定する学習ランク決定部
を有する請求項1又は請求項2に記載の設備教育システム。
【請求項4】
前記教育コンテンツを視聴するユーザの視線と操作入力との少なくともいずれか一方を含む前記ユーザの行動を検出する行動検出部と、
前記検出されたユーザの行動を表す行動データを前記ユーザの識別情報とともに記憶する行動データ記憶部と
を有する請求項3に記載の設備教育システム。
【請求項5】
前記学習ランク決定部は、
前記行動データ記憶部に記憶された行動データに基づいて学習ランクを決定し、
前記出力制御部は、
前記複数のユーザのそれぞれの学習ランクに応じた、前記教育コンテンツに含まれる教育内容の詳細度に基づいて前記教育コンテンツの表示態様を変えて出力させる
を有する請求項4に記載の設備教育システム。
【請求項6】
前記設備のうち同じ学習対象の設備に対して学習する複数のユーザの前記学習対象の設備に対するそれぞれの位置を検出する位置検出部を有し、
前記出力制御部は、
前記検出された位置に応じた視点から前記学習対象の設備を見た場合の教育コンテンツを、前記ユーザの位置に応じて前記頭部装着表示部に表示させる
を有する請求項5に記載の設備教育システム。
【請求項7】
前記頭部装着表示部は、異なる拠点において学習するユーザにそれぞれ装着され、
前記コンテンツ記憶部に記憶された教育コンテンツは、前記頭部装着表示部に対して通信ネットワークを介して送信されることで前記頭部装着表示部に表示される
請求項6に記載の設備教育システム。
【請求項8】
コンテンツ記憶部が、設備の操作と整備のうち少なくともいずれか一方を含む学習項目について学習するための教育コンテンツを記憶し、
学習状況記憶部が、前記学習項目に基づいて学習をする複数のユーザについて、それぞれの学習状況を記憶し、
出力制御部が、複数の頭部装着表示部であって前記学習をする複数のユーザの頭部に1つずつ装着可能な頭部装着表示部を装着した各ユーザの学習状況を前記学習状況記憶部から取得し、学習項目に対応する前記設備の教育コンテンツを前記コンテンツ記憶部から抽出し、抽出された教育コンテンツを対応するユーザの頭部装着表示部に対し、当該ユーザの学習状況に応じて異なる表示態様で表示させる
設備教育方法。
【請求項9】
前記設備は、レーダ設備である請求項8記載の設備教育方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備教育システム、設備教育方法に関する。
【背景技術】
【0002】
気象レーダ、船舶用レーダ等の大型のレーダや通信設備のような設備は、24時間稼働する運用がなされることが多い。そのため、設備を整備する時間は限られている。また、このような整備をするための整備担当者に対して整備に関する教育も行われている。
設備を整備する担当者が円滑に整備を行うことができるように、整備に関する支援を遠隔から行うシステムがある(例えば特許文献1)。このシステムでは、整備する担当者がウェアラブルデバイスを装着し、遠隔にいる支援者から発話された内容から生成されるテキストデータがウェアラブルデバイスの表示部に表示される。整備する担当者は、このテキストデータを確認しつつ、設備を整備することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-145707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、設備を整備する場合、1人が単独で行う場合だけでなく、複数の担当者が協働して整備する場合がある。このような協働して行われる整備について教育コンテンツを各担当者に視聴してもらうことで学習してもらうことができるが、担当者毎に知識や経験が異なるため、担当者によっては、既に習得している内容であったり、理解が難しい場合がある。
なお、先行技術文献1は、1名の担当者の作業を支援することができるが、複数の担当者に対する教育を行うものではない。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、担当者に応じた設備の教育をすることができる設備教育システム、設備教育方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、設備の操作と整備のうち少なくともいずれか一方を含む学習項目について学習するための教育コンテンツを記憶するコンテンツ記憶部と、前記学習項目に基づいて学習をする複数のユーザについて、それぞれの学習状況を記憶する学習状況記憶部と、複数の頭部装着表示部であり、前記学習をする複数のユーザの頭部に1つずつ装着可能な頭部装着表示部と、頭部装着表示部を装着した各ユーザの学習状況を前記学習状況記憶部から取得し、学習項目に対応する前記設備の教育コンテンツを前記コンテンツ記憶部から抽出し、抽出された教育コンテンツを対応するユーザの頭部装着表示部に対し、当該ユーザの学習状況に応じて異なる表示態様で表示させる出力制御部と、を有する設備教育システムである。
【0007】
また、本発明の一態様は、コンテンツ記憶部が、設備の操作と整備のうち少なくともいずれか一方を含む学習項目について学習するための教育コンテンツを記憶し、学習状況記憶部が、前記学習項目に基づいて学習をする複数のユーザについて、それぞれの学習状況を記憶し、出力制御部が、複数の頭部装着表示部であって前記学習をする複数のユーザの頭部に1つずつ装着可能な頭部装着表示部を装着した各ユーザの学習状況を前記学習状況記憶部から取得し、学習項目に対応する前記設備の教育コンテンツを前記コンテンツ記憶部から抽出し、抽出された教育コンテンツを対応するユーザの頭部装着表示部に対し、当該ユーザの学習状況に応じて異なる表示態様で表示させる設備教育方法である。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、この発明によれば、担当者に応じた設備の教育をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明の一実施形態によるレーダ設備教育システム1の構成を示す概略ブロック図である。
図2】教官用端末50の機能を説明する概略機能ブロック図である。
図3】表示端末70の機能を説明する概略機能ブロック図である。
図4】レーダ設備教育システム1を利用してレーダ設備に関する教育を行う場合を示す概念図である。
図5】教官用端末50と表示端末70との間におけるデータの流れを説明する概念図である。
図6】レーダ設備教育システム1の動作を説明する流れ図である。
図7】レーダ設備教育システム1の動作を説明するフローチャートである。
図8】ユーザUに装着された表示端末70から見える様子の一例を示す図である。
図9】ユーザUに装着された表示端末70から見える様子の一例を示す図である。
図10】ユーザUに装着された表示端末70から見える様子の一例を示す図である。
図11】表示端末70に表示されたレーダ設備の三次元画像について拡大・縮小・回転等をさせる場合について説明する図である。
図12】レーダ設備の三次元画像と付加情報とが表示端末70に表示された場合の画面の一例を示す図である。
図13】レーダ設備の三次元画像と付加情報とが表示端末70に表示された場合の画面の一例を示す図である。
図14】レーダ設備がCGによって表現された三次元画像がVR表示モードによって表示端末70に表示された場合の画面の一例を示す図である。
図15】レーダ設備がCGによって表現された三次元画像がVR表示モードによって表示端末70に表示された場合の画面の一例を示す図である。
図16】レーダ設備がCGによって表現された三次元画像がVR表示モードによって表示端末70に表示された場合の画面の一例を示す図である。
図17】行動データ記憶部523に記憶されるデータの一例を示す図である。
図18】学習ランク記憶部524に記憶される学習ランクデータの一例を示す図である。
図19】第2実施形態におけるレーダ設備教育システム1の利用状況の概念を示す概念図である。
図20】表示端末70aに表示される表示画面Gaの一例を示す図である。
図21】表示端末70bに表示される表示画面Gbの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態による設備教育システム1について図面を参照して説明する。図1は、この発明の一実施形態による設備教育システムを用いたレーダ設備教育システム1の構成を示す概略ブロック図である。
【0011】
《第1実施形態》
《レーダ設備教育システム1の構成》
レーダ設備教育システム1は、模擬空中線制御器10と、模擬送信機20と、模擬受信機30と、生徒用端末40と、教官用端末50と、大型表示器60と、表示端末70と、認証サーバ80と、ネットワーク機器90とを含んで構成される。
【0012】
レーダ設備は、例えば、気象レーダのレーダ設備、船舶用レーダのレーダ設備等である。このようなレーダ設備は、大型の空中線(アンテナ)に対して、送信機や受信機が電気的に接続される。また、レーダ設備には、電波を送受信する方向に向かうように空中線(アンテナ)を回転させる空中線制御器が備えられる。アンテナは、タワーの上部に設置されたレドーム内に設置される。アンテナの高さは3メートル程度のものもある。レドームは一般に空中線を取り囲むように設置されている。空中線や空中線を回転させるユニット等を整備する場合には、レドームの中に入る必要があるが、レーダ設備は24時間稼働していることが多い。そのため、レドームの中に入る機会は少なく、また、送信機や受信機の稼働が妨げられないようにする必要があるため、整備や整備のための教育をする機会は限られる。このようなレーダ設備は、一般に大型である。
送信機や受信機は、アンテナの近傍に設置される場合もあるが、アンテナが設置された拠点とは異なる遠隔地の拠点に設置される場合もある。
【0013】
模擬空中線制御器10は、空中線を制御する空中線制御器を模擬した模擬装置である。模擬空中線制御器10は、空中線制御器の筐体と同様の筐体によって構成される。模擬空中線制御器10は、有線LANを介してネットワーク機器90に通信可能に接続される。
模擬空中線制御器10は、実際の空中線制御器の外観を模擬することができていればよく、空中線制御器の内部に収容される各電装ユニットは搭載されていても搭載されていなくてもよい。空中線制御器は、例えば、電波を送受信する方向に向かうように空中線(アンテナ)を回転させる機能を有する設備である。
この実施形態においては、模擬空中線制御器10に、実際の空中線制御器に備えられる電装ユニットと同じ電装ユニットは搭載されておらず、空中線制御器の動作を模擬することが可能な模擬電装ユニットが搭載される。この模擬電装ユニットは、教官用端末50または表示端末70からの制御信号を受信すると、制御信号に応じて動作を行った場合に対応する疑似信号を発生させる機能を有する。
【0014】
模擬送信機20は、空中線から電波を放射させる制御をする送信機を模擬した模擬装置である。模擬送信機20は、送信機の筐体と同様の筐体によって構成される。模擬送信機20は、有線LANを介してネットワーク機器90に通信可能に接続される。
模擬送信機20は、実際の送信機の外観を模擬することができていればよく、実際の送信機の内部に収容される各電装ユニットは搭載されていても搭載されていなくてもよい。この実施形態においては、実際の送信機に搭載された電装ユニットと同じ電装ユニットは搭載されておらず、模擬送信機20の動作を模擬することが可能な模擬電装ユニットが搭載される。この模擬電装ユニットは、教官用端末50または表示端末70からの制御信号を受信すると、制御信号に応じて動作を行った場合に対応する疑似信号を発生させる機能を有する。
【0015】
模擬受信機30は、電波を受信する制御や受信した電波に応じた受信信号に関する信号処理をする受信機を模擬した模擬装置である。模擬受信機30は、受信機の筐体と同様の筐体によって構成される。模擬受信機30は、有線LANを介してネットワーク機器90に通信可能に接続される。
模擬受信機30は、実際の受信機の外観を模擬することができていればよく、実際の受信機の内部に収容される各電装ユニットは搭載されていても搭載されていなくてもよい。この実施形態においては、実際の受信機に搭載された電装ユニットと同じ電装ユニットは搭載されておらず、模擬受信機30の動作を模擬することが可能な模擬電装ユニットが搭載される。この模擬電装ユニットは、教官用端末50または表示端末70からの制御信号を受信すると、制御信号に応じて動作を行った場合に対応する疑似信号を発生させる機能を有する。
【0016】
模擬空中線制御器10、模擬送信機20、模擬受信機30は、実際のレーダ設備の近傍に設置されていてもよいが、レーダ設備から離れた遠隔地に設置されていてもよい。これにより、ユーザはレーダ設備に出向くことなく、これらの模擬装置が設置された拠点において整備等に関する教育を受けることができる。また、模擬空中線制御器10、模擬送信機20、模擬受信機30は、1つの拠点に纏めて設置されていてもよいし、お互いに異なる拠点に設置されていてもよい。また、模擬空中線制御器10、模擬送信機20、模擬受信機30は、それぞれ複数台設けられてもよい。また、例えば模擬受信機30が複数台設けられる場合には、その複数の模擬受信機30が異なる拠点にそれぞれ設置されるようにしてもよい。
【0017】
生徒用端末40は、レーダ設備教育システム1を利用した、レーダ設備の整備や操作に関する教育を受けるユーザによって利用される端末装置である。生徒用端末40は、1台であってもよいし複数台であってもよい。
生徒用端末40は、ネットワーク機器90に対して有線LANを介して通信可能に接続される。
【0018】
教官用端末50は、レーダ設備教育システム1を利用した、レーダ設備の整備や操作に関する教育をユーザに対して行う教官によって利用される端末装置である。教官用端末50は、1台であってもよいし複数台であってもよい。
教官用端末50は、ネットワーク機器90に対して有線LANを介して通信可能に接続される。
教官用端末50は、例えば1台のコンピュータであってもよく、サーバ装置であってもよい。また、教官用端末50の機能を複数のサーバ装置から構成されるクラウドサーバによって実現されるようにしてもよい。
【0019】
大型表示器60は、教育内容を表示する表示装置である。大型表示器60は、例えば、複数のユーザが視認可能な画面サイズであり、教育をする拠点に設置される。教育をする拠点が異なる複数の地域にそれぞれ存在する場合、大型表示器60は、各拠点にそれぞれ設置されてもよい。
大型表示器60は、教官用端末50に対して通信ケーブル等を介して通信可能に接続され、教官用端末50から出力されるビデオ信号を受信し、表示画面に表示する。
【0020】
表示端末70は、学習をするユーザの頭部に装着可能な端末装置である。表示端末70は、例えば、ヘッドマウントディスプレイである。教育を受けるユーザが複数いる場合、表示端末70は、複数台準備され、複数のユーザに対してそれぞれ1台ずつ渡される。
教育をする拠点が異なる複数の地域にそれぞれ存在する場合、表示端末70は、各拠点のユーザにそれぞれ渡され、各ユーザが装着可能である。すなわち、複数の表示端末70は、お互いに離れた遠隔地において利用される場合もある。
表示端末70は、大型表示器60に対して無線LANを介して通信可能に接続されるとともに、ネットワーク機器90に対して無線LANを介して通信可能に接続される。
【0021】
認証サーバ80は、表示端末70からの接続要求に応じてユーザ認証処理を行い、正当なユーザであると判定された場合には、そのユーザが利用する表示端末70について、レーダ設備教育システム1に対する接続を許可する。
【0022】
ネットワーク機器90は、レーダ設備教育システム1に属する各機器を通信可能に接続する。ネットワーク機器90は、有線LANスイッチ部91と、無線LANアクセスポイント部92とを有する。
有線LANスイッチ部91は、模擬空中線制御器10と、模擬送信機20と、模擬受信機30と、生徒用端末40と、教官用端末50と、認証サーバ80とに接続され、これら各機器どうしの接続の可否を切り替えることで、機器間の通信を制御する。また、有線LANスイッチ部91は、無線LANアクセスポイント部92と通信可能に接続される。
無線LANアクセスポイント部92は、各表示端末70に対して無線によって接続される。また、無線LANアクセスポイント部92は、有線LANスイッチ部91と通信可能に接続される。
【0023】
《教官用端末50の構成》
図2は、教官用端末50の機能を説明する概略機能ブロック図である。
【0024】
教官用端末50は、通信部510、記憶部520、学習ランク決定部530、入力部540、出力部550、制御部560を有する。
通信部510は、表示端末70とデータの送受信をする。
記憶部520は、各種データを記憶する。記憶部520は、コンテンツ記憶部521、学習状況記憶部522、行動データ記憶部523を有する。
【0025】
コンテンツ記憶部521は、レーダ設備の操作と整備のうち少なくともいずれか一方を含む学習項目について学習するための教育コンテンツを記憶する。
教育コンテンツは、レーダ設備の操作手順または整備手順を説明する説明内容を手順毎に含む。また、教育コンテンツには、レーダ設備から生じる音を含むコンテンツがあってもよい。教育コンテンツには、レーダ設備に含まれるアンテナから放射される電波に対応するビーム幅を仮想的に表すモデル画像があってもよい。
【0026】
学習状況記憶部522は、学習項目に基づいて学習をする複数のユーザについて、それぞれの学習状況に応じた学習ランクを記憶する。
【0027】
行動データ記憶部523は、表示端末70において検出されたユーザの行動を表す行動データを表示端末70から通信部510によって受信されると、ユーザの識別情報とともに行動データを記憶する。
【0028】
学習ランク記憶部524は、ユーザ毎の学習ランクをユーザ識別情報に対応付けて記憶する。
【0029】
学習ランク決定部530は、ユーザの能力と、学習項目の進捗との少なくともいずれか一方に基づく学習状況に応じて学習ランクを決定する。
学習ランク決定部530は、行動データ記憶部523に記憶された行動データに基づいて学習ランクを決定する。
【0030】
入力部540は、マウスやキーボード等の入力装置から入力される操作内容を取得する機能を有し、入力装置を介して入力される教官からの操作入力を受け付ける。
出力部550は、教官用端末50の外部に接続される表示装置(例えば、大型表示器60)に学習画像等の各種教育コンテンツを表示させる。
【0031】
制御部560は、教官用端末50の各部を制御する。
例えば、制御部560は、表示端末70に対して、学習項目に応じた教育コンテンツを送信する。制御部560は、教育が開始される前に、事前に教育コンテンツを纏めて表示端末70に送信しておいてもよいし、教育が開始される時点で、開始される学習項目についての教育コンテンツを送信するようにしてもよい。
【0032】
学習ランク決定部530、入力部540、出力部550、制御部560は、例えばCPU(中央処理装置)等の処理装置若しくは専用の電子回路で構成されてよい。
【0033】
《表示端末70の構成》
図3は、表示端末70の機能を説明する概略機能ブロック図である。
【0034】
表示端末70は、通信部710、記憶部720、撮像部730、コンテンツ抽出部740、出力部750、検出部760、出力制御部770、入力部780、制御部790を有する。
通信部710は、教官用端末50とデータの送受信をする。
記憶部720は、各種情報を記憶する。
コンテンツ記憶部721は、レーダ設備の操作と整備のうち少なくともいずれか一方を含む学習項目について学習するための教育コンテンツを記憶する。
コンテンツ記憶部721は、教官用端末50のコンテンツ記憶部521に記憶された教育コンテンツが通信部710によってネットワーク機器90を介して受信されると、受信された教育コンテンツを記憶する。
【0035】
撮像部730は、学習する対象のレーダ設備を撮像し、撮像結果に応じた画像データを出力する。
【0036】
コンテンツ抽出部740は、画像データからレーダ設備を認識し、認識されたレーダ設備に応じた教育コンテンツをコンテンツ記憶部721から読み出す。
コンテンツ抽出部740は、画像データからレーダ設備に付帯された識別体を認識し、認識された識別体に応じた教育コンテンツをコンテンツ記憶部721から読み出す。
【0037】
出力部750は、各種出力をする。出力部750は、頭部装着表示部751と放音部752とを有する。
【0038】
頭部装着表示部751は、学習をするユーザの頭部に装着可能であり、教育コンテンツを表示する。頭部装着表示部751は、透過型である。
頭部装着表示部751は、AR(Augmented Reality)によって、実物の模擬装置等に対して重畳させるようにして各種コンテンツを表示するAR表示モードを有する。ユーザは、表示端末70を頭部に装着させた状態であっても、眼前に位置する頭部装着表示部751を透過して前方にある物体を視認することができるとともに、頭部装着表示部751に表示された表示内容を、当該物体に重畳された状態で視聴することができる。
また、頭部装着表示部751は、VR(Virtual Reality)によって、実物のレーダ設備をCGによって表現された各種コンテンツを表示するVR表示モードを有する。ユーザは、VRによってレーダ設備に関するコンテンツを視聴することができ、これにより、実際にレーダ設備まで出向くことなく、レーダ設備の外観や機能等を学習することができる。
AR表示モードとVR表示モードのいずれによって表示するかについては、教官用端末50から指示される学習項目に応じて決まるようにしてもよい。
【0039】
放音部752は、音を出力する。放音部752は、例えば、スピーカ、イヤフォン、ヘッドフォンのうちいずれかであってもよい。
【0040】
検出部760は、各種検出をする機能を有する。検出部760は、行動検出部761、位置検出部762を有する。
行動検出部761は、教育コンテンツを視聴するユーザの行動(視線、指の操作等)と操作入力との少なくともいずれか一方を含むユーザの行動を検出する。行動検出部761は、検出されたユーザの行動を表す行動データを、通信部710を介して教官用端末50に送信する。
【0041】
位置検出部762は、レーダ設備のうち同じ学習対象の設備に対して学習する複数のユーザの学習対象の設備に対するそれぞれの位置を検出する。
【0042】
出力制御部770は、学習項目に対応するレーダ設備の教育コンテンツをコンテンツ記憶部721から読み出して頭部装着表示部751に表示させる。
出力制御部770は、教育コンテンツに基づいて、実物大の大きさに応じた表示サイズでレーダ設備を表示させる。
出力制御部770は、コンテンツ抽出部740によって抽出された教育コンテンツを、頭部装着表示部751から透過されるレーダ設備の対応する位置に重畳させて表示させる。
出力制御部770は、コンテンツ抽出部740によって抽出された教育コンテンツを、認識された識別体の位置に対応する位置に表示させる。
【0043】
出力制御部770は、整備手順に従って、レーダ設備の操作手順または整備手順を説明する説明内容を表示させる。整備手順は、例えば、再生する教育コンテンツを再生する順序が再生シナリオとして規定されており、制御部790によって教育プログラムが実行されると、出力制御部770が再生シナリオに沿って教育コンテンツを再生することで、整備手順を順に説明するコンテンツが再生される。この教育コンテンツの再生中において、ユーザUからの操作入力を受け付けることができる。
出力制御部770は、レーダ設備に応じた音の教育コンテンツを放音部752から出力させる。
出力制御部770は、レーダ設備がアンテナである場合に、モデル画像を頭部装着表示部に表示させる。モデル画像は、例えば、アンテナから放射される電波のビーム幅を表すモデルの画像である。
【0044】
出力制御部770は、頭部装着表示部751を装着した各ユーザの学習ランクを学習状況記憶部522から通信部710を介して取得(受信)し、学習項目に対応するレーダ設備の教育コンテンツをコンテンツ記憶部721から抽出し、抽出された教育コンテンツを対応するユーザの頭部装着表示部751に対し、当該ユーザの学習ランクに応じて異なる表示態様で表示させる。
出力制御部770は、複数のユーザのそれぞれの学習ランクに応じた、教育コンテンツに含まれる教育内容の詳細度に基づいて教育コンテンツの表示態様を変えて出力させる。
出力制御部770は、検出された位置に応じた視点から学習対象の設備を見た場合の教育コンテンツを、ユーザの位置に応じて頭部装着表示部751に表示させる。
出力制御部770は、頭部装着表示部751に対して通信ネットワークを介して教育コンテンツを送信することで教育コンテンツを表示させる。
【0045】
入力部780は、各種ユーザからの操作入力を受け付ける。入力部780は、各種スイッチであってもよいし、撮像部730によって撮像された画像データから、ユーザUの手や指による動きを抽出し、抽出された動きに応じた操作入力を受け付ける。動きに応じた操作入力は、スワイプ動作、選択肢のいずれかを指定する操作、仮想空間上(頭部装着表示部751)に表示されたソフトウェアキーボードやソフトウェアテンキー等に対する操作入力などである。
【0046】
制御部790は、表示端末70の各部を制御する。
【0047】
記憶部520、記憶部720は、記憶媒体、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。
この記憶部520、記憶部720は、例えば、不揮発性メモリを用いることができる。
【0048】
コンテンツ抽出部740、出力部750、検出部760、出力制御部770、入力部780、制御部790は、例えばCPU(中央処理装置)等の処理装置若しくは専用の電子回路で構成されてよい。
【0049】
《レーダ設備を対象とした表示端末70の利用場面》
図4は、レーダ設備教育システム1を利用してレーダ設備に関する教育を行う場合を示す概念図である。
教育を受けるユーザUは、教育を受ける対象の設備の前に行き、表示端末70を頭部に装着する。教育を受ける対象の設備はいずれでもよいが、ここでは例えば、模擬受信機30である。模擬受信機30の正面には、識別体SBが取り付けられている。
識別体SBは、レーダ設備のうちいずれの機器であるかを識別する識別情報が二次元バーコードとして表された媒体である。識別体SBは、二次元バーコードが印刷媒体に印刷されたものであってもよい。
ユーザUは、表示端末70を装着しつつ、模擬受信機30を視認可能な方向に向くことで、眼前に位置する表示端末70の表示画面を透過して前方にある模擬受信機30を視認することができる。この場合、表示端末70の撮像部730は、ユーザUが向く方向を撮像方向として撮像する。これにより撮像部730は、模擬受信機30を撮像することができ、また、模擬受信機30に取り付けられた識別体SBを撮像することができる。撮像部730は、識別体SBが撮像された画像データから識別体SBを抽出し、抽出された識別体SBに応じた識別情報をコンテンツ抽出部740に出力する。
【0050】
《教官用端末50と表示端末70との間におけるデータの流れの一例》
図5は、教官用端末50と表示端末70との間におけるデータの流れを説明する概念図である。
ユーザUに対して、レーダ設備に関する教育を行う場合、ユーザUは、表示端末70を頭部に装着し、ログインをするための操作入力をする。これにより表示端末70は、認証サーバ80と通信を行い、表示装置70自体がネットワーク装置90に対してアクセスする権限があるか否かに関するアクセス権限の確認処理を行う。表示端末70は、認証サーバ80から、ネットワーク装置90へのアクセスが許可されると、ログインの操作入力に応じたユーザ認証処理の要求を教官用端末50に対し送信し、教官用端末50からログインが許可されると、教官用端末50と通信を開始する。
教官用端末50の制御部560は、ログインされた表示端末70に対して、学習項目に応じた教育コンテンツを送信する。ここで送信される教育コンテンツは、少なくとも今回学習する対象の学習項目において必要となる教育コンテンツを纏めて送信するようにしてもよい。これにより、学習が開始された後は、追加で教育コンテンツを教官用端末50から受信することなく教育を実施することができる。
【0051】
教官用端末50を操作する教官は、教官用端末50に接続された入力装置を介して、教育プログラムの実行の指示を入力する。教官用端末50は、この指示の入力に基づいて、表示端末70に対して、教育プログラムの実行指示(実行命令)を送信する。ここでは、教官用端末50は、ログインの際に表示端末70から得られるユーザIDに基づいて表示端末70を装着したユーザUを特定し、そのユーザUの学習ランク(能力、進捗など)を指示する。表示端末70は、教育コンテンツに含まれる整備手順を説明する説明内容について、指示された学習ランクに応じた詳細度によって表示する。例えば、表示端末70は、ある程度教育が進んでいるユーザに対しては、必要な情報を表示させるが、必要な情報を補足する補足情報は表示せず、教育を受けた受講履歴が浅いユーザに対しては、必要な情報とともに、必要な情報を補足する補足情報についても表示する。
【0052】
表示端末70は、教官用端末50からの指示に応じた教育コンテンツを頭部装着表示部751に表示する。ユーザUは、頭部装着表示部751に表示されたコンテンツを視認することで、各種学習内容を確認し、学習することができる。例えば、アンテナの外観を表す画像を視認することができる。
また、表示端末70は、教育コンテンツが音である場合には、放音部752から教育コンテンツに応じた音を放音する。ユーザUは、放音部752から出力される音を聞くことで、各種学習内容を確認し、学習することができる。例えば、アンテナが回転する場合に生じる回転音を聞くことができる。
【0053】
表示端末70の制御部は、各種コンテンツを出力し、ユーザUが学習している間における各種情報を教官用端末50に送信する。ここで送信されるデータは、例えば、表示端末70におけるメモリ使用率、ディスク空き容量(記憶部720の空き容量)、ディスク容量(記憶部720の容量)、無線LANの電波強度、表示端末70のバッテリーの残量、実行中の教育プログラム、教育プログラムの実行中におけるユーザUの行動(手や指の操作内容、視界や視線を表す情報等)である。
このような各種情報を教官用端末50にフィードバック(送信)することで、教官用端末50は、各表示端末70における学習の進捗状況や表示端末70の稼動状況等を管理することができ、また、フィードバックされた情報に基づいて、ユーザUの能力や教育プログラムの進捗状況に応じた教育プログラムを表示させるよう表示端末70に対して指示をすることができる。また、教官用端末50を操作する教官は、ユーザUのそれぞれの学習状況や表示端末70の状態を把握することができるため、これらに基づいて、次にどのような学習項目について学習してもらうかを検討し、各表示端末70に対して指示を教官用端末50から送信することができる。
【0054】
図6は、レーダ設備教育システム1の動作を説明する流れ図である。
教育が開始されると、教官用端末50は、教官から入力された指示が表示端末70を使用する教育プログラムの実行指示であるか否かを判定する(ステップS101)。
表示端末70を使用する教育プログラムの実行指示である場合(ステップS101-YES)、教官用端末50は、表示端末70へ教育プログラムの実行指示を送信する。ここでは、教官用端末50は、教官によって選択入力された学習項目を指定しつつ教育プログラムの実行指示を送信する。これにより、例えば、「受信機の電源ユニットの交換」、「受信機の冷却ファン清掃」等の各種学習項目のうち、いずれかの学習項目が指定される。
【0055】
表示端末70の制御部790は、教官用端末50から学習項目の指定と教育プログラムの実行指示を通信部710を介して受信すると、指示された学習項目に応じた教育プログラムを記憶部720から読み出して実行する(ステップS112)。
教育プログラムが実行されると、コンテンツ抽出部740が再生対象のコンテンツをコンテンツ記憶部721から読み出し、コンテンツが読み出されると、出力制御部770は、教育コンテンツを再生シナリオに沿って再生する(ステップS113)。例えば、「受信機の電源ユニットの交換」の学習項目に応じた教育コンテンツが再生されると、受信機の電源ユニットを交換する手順を説明するコンテンツが再生される。
制御部790は、教育プログラムが最後まで実行されたか否かを判定し(ステップS114)、最後まで実行されていない場合(ステップS114-NO)、引き続き再生シナリオにそって教育コンテンツを再生する。一方、制御部790は、教育プログラムが最後まで実行された場合には(ステップS114-YES)、教育プログラムを終了させる。
【0056】
ステップS101において、表示端末70を使用する教育プログラムではないと判定された場合(ステップS101-NO)、教官用端末50は、教育プログラムの実行指示を模擬装置に送信する(ステップS121)。ここでは、教官用端末50は、教官によって選択入力された学習項目に応じた模擬装置(例えば模擬送信機20)に教育プログラムの実行指示を送信する。
模擬送信機20は、教官用端末50から教育プログラムの実行指示を受信すると、模擬信号を出力する。例えば、模擬信号は、送信信号を空中線から出力させる送信信号を模擬した信号である。模擬信号は、送信信号を模擬した信号であるため、模擬信号を出力したとしても、空中線から電波が放射されることがない。
ユーザUは、測定器を用いて模擬送信機20に設けられた模擬信号出力ユニットに測定器を接続し、模擬信号を測定する(ステップS123)。模擬信号が正しく測定できていなければ、測定を継続し(ステップS124-NO)、模擬信号が正しく測定できた場合には(ステップS124-YES)、教育プログラムが終了する。
【0057】
図7は、レーダ設備教育システム1の動作を説明するフローチャートであり、特に、図6ステップS113とステップS114との動作を説明するフローチャートである。
表示端末70の撮像部730は、模擬装置を撮像する(ステップS151)。ここでは、ユーザUが模擬装置(模擬受信機30)の方に顔を向けることで、撮像部730の撮像範囲に模擬装置が収まるため、撮像部730が模擬装置を撮像することができる。
コンテンツ抽出部740は、撮像部730によって模擬装置が撮像されると、撮像された画像データに基づいて模擬装置の機種を識別し、識別結果に基づいて、撮像された模擬装置に応じた教育コンテンツをコンテンツ記憶部721から読み出す。画像データに基づいて模擬装置を識別する場合、識別体を用いる方法と、識別体を用いない方法がある。
【0058】
識別体を用いる場合、コンテンツ抽出部740は、撮像部730によって撮像された画像データから模擬装置に取り付けられた識別体SBを抽出し、抽出された識別体SBに基づいて、レーダ設備の機種を特定することで、いずれの機器であるかを特定する。例えば、コンテンツ抽出部740は、識別体SBに基づいて、模擬装置が模擬送信機20であることを特定し、模擬送信機20に関する教育コンテンツをコンテンツ記憶部721から読み出す。
識別体を用いない場合、コンテンツ抽出部740は、撮像部730によって撮像された画像データに含まれる模擬装置の四隅のコーナー点や模擬装置の外周面における特徴点を抽出し、この特徴点のお互いの位置関係の組み合わせに基づいて、模擬装置を特定し、特定された模擬装置に対応するコンテンツを読み出す。
【0059】
コンテンツ抽出部740は、「受信機の電源ユニットの交換」の学習項目に該当する教育コンテンツであって、画像データに基づいて特定された模擬装置の機種に応じた教育コンテンツを読み出す。ここでは、例えば、電源ユニットを交換する手順に関する説明が含まれる詳細画面のデータと、電源ユニットを交換する手順をフローチャートによって表した図のデータとを抽出する。
【0060】
教育コンテンツが抽出されると出力制御部770は、教育コンテンツの再生シナリオに沿って、詳細画面とフローチャートの画面とを頭部装着表示部751に表示させる。これにより、ユーザUは、頭部装着表示部751を透過した状態で模擬装置を視認しつつ、頭部装着表示部751に表示されたコンテンツを、模擬装置に重畳された状態で視認することができる。
また、ここでの再生シナリオは、例えば、教育コンテンツに含まれるフローチャートに従った順である。例えば、フローチャートの開始時点では、フローチャートの最初のステップの背景色が他のステップとは異なる色によって表示される。ユーザUは、ARによって表示されたフローチャートのステップに対して指でタッチするような動作を行うことで、操作入力をすることができる。行動検出部761は、このようなユーザUのタッチをするような指の動きを検出することによって、そのタッチ操作が行われた空間上の位置を検出するとともに、その座標上に表示されたコンテンツ(ここではフローチャートのステップ)の位置を検出することで、フローチャートのいずれのステップに対して指示されたかを検出する。
【0061】
ステップに応じた整備が行われたことがユーザUの指の動作に基づいて検出されると、フローチャートの次のステップのみ背景色を他のステップとは異なる色によって表示する。ステップに応じた整備が行われたか否かの検出は、例えば、ユーザUによって実行中のフローチャートのステップに対して指による操作入力を検出することである。
このように、フローチャートの処理の順にステップの背景色を切り替えることで、ユーザUに対して、次に何をすれば整備が進められるかの手順を提示することができるため、ユーザUは、整備手順を学習することができ、整備に関する理解度を深めることができる。
また、ここでは、フローチャートの他に詳細画面も表示されるため、ユーザUは、詳細画面に記述された内容を読むことで、整備に関する理解度を深めることができる。
【0062】
制御部790は、フローチャートのステップが最後まで到達したか否かを判定することで、教育プログラムが最後まで実行されたか否かを判定する(ステップS155)。制御部790は、フローチャートの最後まで進んでいない場合には(ステップS155-No)、処理をステップS154に戻すことで、フローチャートの次のステップに対する操作入力の受け付けをし、フローチャートが最後まで進んだ場合には(ステップS155-YES)、教育プログラムを終了する。
【0063】
図8は、ユーザUに装着された表示端末70から見える様子の一例を示す図である。
ここでは模擬装置に取り付けられた識別体SBが視野の中に収まっており、この識別体SBが検出されることに応じたコンテンツが実空間に対して重畳するようにARによって表示される。ここでは、模擬装置に隣接して詳細画面SGが重畳されるように表示されるとともに、詳細画面SGに隣接する位置にフローチャートFCが実空間に対して重畳されるように表示される。ユーザUは、実空間の模擬装置を視認しつつ各種コンテンツを視認することができる。
【0064】
図9は、ユーザUに装着された表示端末70から見える様子の一例を示す図である。
図8では、フローチャートが表示される場合の一例であるが、図9では、説明選択メニューが表示される場合の一例を示す。
図9では、模擬装置に取り付けられた識別体SBが認識されると、詳細画面が表示される。ここでは、詳細画面SGa、詳細画面SGb、詳細画面SGcとして、模擬装置に対する複数箇所に表示されている。出力制御部770は、識別体SBが検出されている位置を基準として、詳細画像を表示する位置を決める。例えば、模擬装置に対して識別体SBが取り付けられる位置が予め定められており、出力制御部770は、識別体SBを検出することで、模擬装置が相対的にいずれの位置にあるかを識別する。そして出力制御部770は、識別体SBの位置を基準にして、模擬装置とは重ならない位置、あるいは重なる位置となるように各詳細画像の表示位置を決定し、表示する。これにより、出力制御部770は、レーダ設備(ここでは模擬装置)に対応する位置に対して各種画像を表示させることができる。
【0065】
ここで出力制御部770は、模擬装置の位置について、識別体SBの位置を基準にして特定したが、模擬装置の外観から得られる特徴点を複数抽出し、その抽出された複数の特徴点の位置関係の組み合わせに基づいて、模擬装置の位置を特定するようにしてもよい。
また、ここでは、フローチャートではなく、メニューMEが模擬装置に対して重畳して表示される。メニューMEに対してユーザUによって操作入力されると、メニューMEのうちいずれのボタンに対して指示入力をしようとしているかのターゲット画像TGが表示され、ターゲット画像TGを手がかりにして指で押すような動作をすることで、ターゲット画像TGに応じた位置のボタンが操作されたものとして検出される。これにより、操作入力された選択肢に応じた次のコンテンツがシナリオに沿って表示される。
【0066】
図10は、ユーザUに装着された表示端末70から見える様子の一例を示す図である。ここでは、教官用端末50から模擬装置を用いずに学習するための教育プログラムを表示端末70が受信した場合には、模擬装置がない場合であっても、教育コンテンツを視聴することができる。この場合、表示端末70は、VR表示モードによって表示する。
ユーザUは、表示端末70を装着し、メニュー画面から、いずれのレーダ設備についてのコンテンツを視聴するかを選択する。あるいは、教官用端末50から視聴する対象のコンテンツが指示されることで、その指示を教官用端末50から指示を表示端末70が受信し、指示されたコンテンツを再生するようにしてもよい。
この図10では、レーダ設備におけるアンテナANをCG(computer graphics)によって表現された三次元画像が表示端末70に表示される。さらに、アンテナANに設けられた各部品の取り付け位置に対応づけて、その部品の名称NAが表示される。これにより、通常はレドームの中に収容されており、かつ、レドームの中に立ち入る機会が少ない場合であっても、ユーザUは、レーダ設備が設置された拠点に出向く必要がなく、また、レドームの中に立ち入らなくてもアンテナANの構成について三次元画像によって把握することができる。
【0067】
図11は、表示端末70に表示されたレーダ設備の三次元画像について拡大・縮小・回転等をさせる場合について説明する図である。図11では、レーダ設備の一例としてCGによって表現されたアンテナANをVR表示モードによって表示した場合について図示されている。
ユーザUは、表示端末70に表示されたアンテナANが表示された状態において、アンテナANの左側と右側からそれぞれ指でつまみながら両手の距離が離れるような操作入力をすることで、アンテナANの表示サイズを拡大することができ、両手の距離が近づくような操作入力をすることで、アンテナANの表示サイズを縮小することができる。また、片手でアンテナANをつまみながら右方向または左方向に手を動かすことで、アンテナANを右回転または左回転させることができる。
これにより、実際のレーダ設備がなくても、レーダ設備をAR画像によってさまざまな角度から観察することができ、また、拡大や縮小することで、細部の確認や全体像の把握をすることができる。また、立ち入ることが難しいレーダ設備については、立ち入ることができるエリアに制約がある場合もあるが、表示端末70に表示させることで、様々な視点から観察することができる。例えば、アンテナANについて実物を頂部側から観察しようとすると、レドームの中に足場や脚立などを準備しなければならないが、レドームの中に入る機会が少なく、また、空中線は継続的に回転しているため回転を停止させる必要がある。そのため、このような足場を準備することは現実的には難しい。これに対し、表示端末70にアンテナANを表示させ、様々な視点から観察できるようにしたため、表示レーダ設備に対する理解を深めることができる。
【0068】
図12は、レーダ設備の三次元画像と付加情報とが表示端末70に表示された場合の画面の一例を示す図である。図12では、レーダ設備の一例としてCGによって表現されたアンテナANをVR表示モードによって表示した場合について図示されている。
ここでは,例えば、アンテナANは、実際に稼働している場合の回転速度が概ね同じ回転速度によって回転している状態の動画が画面の右側に表示される。また、アンテナANは回転だけでなく仰角を変更するように稼働することが可能であるため、仰角が変更される場合の稼動状況を表す動画についても表示することができる。これにより、遠隔地にある巨大な構造物の動作や振る舞いを確認しながら、操作方法を学習することができる。
また付加情報ADが、アンテナANの左側に並べて表示される。付加情報ADは、例えば、グラフである。アンテナANの仰角を変更しながらレーダによって観測対象を観測した場合の観測値と仰角の関係を示すグラフが付加情報ADとして表示される。これにより、アンテナANの動作と、その動作をした場合における観測結果の関係を学習することができる。
また、ここでは、アンテナANが回転しているときの稼働音や、アンテナANが仰角を変更しているときの稼働音を表示端末70の放音部752から出力するようにしてもよい。これにより、稼働時の音についてもユーザUに体感してもらいつつ、操作方法を学習してもらうことができる。
【0069】
図13は、レーダ設備の三次元画像と付加情報とが表示端末70に表示された場合の画面の一例を示す図である。図13では、レーダ設備の一例としてCGによって表現されたアンテナANをVR表示モードによって表示した場合について図示されている。
図12は付加情報としてグラフが表示される場合について説明したが、図13では、アンテナANの整備・保守をする場合について説明する詳細情報が付加情報として表示される場合について説明する。
画面の左側には、背面側から見たアンテナANの三次元画像であって、背面パネルの一部が取り外された状態を表す図が表示されている。そして、背面パネルが取り外された部分の拡大図が詳細情報SGdとして表示され、さらに整備や保守に関する説明文と写真が含まれる詳細情報SGeが表示される。
これにより、ユーザUは、アンテナANの背面パネルを実際に取り外さなくても、表示端末70を用いてCGによって表現された三次元画像によって把握することができ、また、整備や保守の方法を学習することができる。
【0070】
図14は、レーダ設備がCGによって表現された三次元画像がVR表示モードによって表示端末70に表示された場合の画面の一例を示す図である。この図では、レーダ設備が実物大の大きさであって、アンテナANを下から見上げた場合について図示されている。ユーザは、頭部の姿勢を下から見上げるようにすることで、このような画像が表示される。また、視線が正面に向くように頭部の姿勢を正面に向けた場合には、表示端末70の行動検出部761が頭部の姿勢が正面側に向いたことを検出することで、出力制御部770は、頭部の姿勢に応じてアンテナANの正面側を見たときの画像を、実物大の大きさで表示する。
このように、表示端末70によってレーダ設備を実物大となるように表示することによって、遠隔地の立ち入りができない施設の機器であっても実物大で学習することができる。例えば、レーダ設備において利用される周波数帯にもよるが、レドームの直径は数メートルから12メートル程度となる場合がある。このような設備を一般的なディスプレイに表示された画像や、書籍に掲載された写真によって確認することができるが、実際の大きさを体験することが難しい。本実施形態によれば、表示端末70を用いて実物大のサイズによって表示させ、また、頭部に姿勢に応じた視点からみた場合の画像を表示させるようにしたので、大型の設備であっても、実際の大きさを容易に体験することができる。これにより、ユーザUの目の前にアンテナ等のレーダ設備が設置されているかのようにして見ることができ、実際には目の前ないものについてのリアルさを感じながらレーダ設備の大きさを体感することができ、レーダ設備に対する理解を深めることができる。
【0071】
上述したVR表示モードにおいて、出力制御部770は、アンテナANから放射される電波のビーム幅を仮想的に表すモデル画像を表示するようにしてもよい。例えば、出力制御部770は、AR表示モードでは、実際のアンテナ、あるいは模擬装置に対して重畳させるようにしてモデル画像を頭部装着表示部751に表示させるようにしてもよい。また、出力制御部770は、VR表示モードでは、アンテナを表す3次元画像にモデル画像を表示させるようにしてもよい。これにより、実際には目に見えないものであっても、ユーザUに対して稼動状態を仮想的な画像を用いることで視覚的に把握してもらうことができ、理解を深めることができる。
【0072】
図15は、レーダ設備がCGによって表現された三次元画像がVR表示モードによって表示端末70に表示された場合の画面の一例を示す図である。
この図では、レーダ設備に用いられるレーダ用機器MCの整備手順が表示された場合の例である。また、この図では、レーダ用機器MCをCGによって表現した3次元画像が左側に表示される。そしてレーダ用機器MCの画像に対して並ぶように、詳細画像ADfと、詳細画像SGgが表示される。
詳細画像SGgには、レーダ用機器MCの整備手順のうちある手順についての説明文が表示される。詳細画像SGfには、詳細画像SGgの整備手順に関連する画像が表示される。ここでは、詳細画像SGgでは整備手順を文章によって説明したものであるが、詳細画面SGfは、文章だけでなくどこの部分に対して作業をすればよいかを把握可能な画像または動画が表示される。これにより、文章での説明では理解しにくかった場合であっても、画像または動画を手がかりにして、整備手順を容易に理解できるようになっている。
また、実際に整備手順に従って整備し、整備対象のユニットを取り外した場合には、どのようにして本体から引き出されるかについて、3次元画像によって表示される。これにより、整備に関する理解を深めることができる。
【0073】
図16は、レーダ設備がCGによって表現された三次元画像がVR表示モードによって表示端末70に表示された場合の画面の一例を示す図である。
この図では、レーダ設備に用いられるレーダ用機器MCの整備手順が表示された場合の例である。また、この図では、レーダ用機器MCをCGによって表現した3次元画像が左側に表示される。そしてレーダ用機器MCの画像に対して並ぶように、詳細画像ADfと、詳細画像SGgが表示される。
図15では、レーダ用機器MCに対して整備手順を表す文章と整備対象部分を示す画像とが表示されたが、この図では、整備手順を表すフローチャートが詳細画像SGiとして表示され、整備を行う際の確認事項を示す詳細画像SGhが表示される。
これにより、整備手順がフローチャートに示されているため、整備の全体の流れを把握し易い。
【0074】
以上説明した実施形態によれば、模擬装置(模擬空中線制御器10、模擬送信機20、模擬受信機30)は、実際のレーダ設備ではなく、また、実際のレーダ設備とは異なる拠点に設置される。そして、この模擬装置を利用し、ユーザUは表示端末70に表示された教育コンテンツを視聴しながら整備に関する教育を受けることができる。これにより、ユーザUは、実際のレーダ設備まで出向くことなく教育を受けることができ、また、レドームの中などのように、立ち入りする機会が少ない設備であっても模擬装置を利用して教育を受けることができ、場所の制約が低減される。また、実際のレーダ設備を利用せず、模擬装置を利用して学習することができるため、実際のレーダ設備の稼働を停止させる必要がなく、また、レーダ設備のメンテナンス時に合わせて学習する必要がない、レーダ設備に起因する時間の制約を受けることなく、教育を受けることができる。
【0075】
また、レーダ設備は教育目的であっても、自由に電波を放射することができないが、模擬装置から疑似信号を出力させ、疑似信号に基づいて表示端末70を利用して実際のレーダ設備の動作を模擬した状態を体験することができるため、実際の動作や整備を理解する上で制約を受けずに教育を受けることができる。
【0076】
《第2実施形態》
次に、レーダ設備教育システム1の第2実施形態について説明する。
第2実施形態におけるレーダ設備教育システム1の構成は、第1実施形態と共通する部分があるため、相違する部分について説明する。第2実施形態におけるレーダ設備教育システム1は、第1実施形態におけるレーダ設備教育システム1の機能に対して機能が追加されている。以下、その追加された機能を主に説明し、共通する部分について説明を省略する。
【0077】
第2実施形態において、1台の模擬装置に対して、複数のユーザが共同で学習する場合について説明する。
教官用端末50は、第1実施形態において説明したように、表示端末70を用い教育が行われるごとに、表示端末70から送信される行動データを受信し、行動データ記憶部523に記憶する。行動データは、例えば、教育コンテンツを視聴するユーザの視線、操作入力等を検出した検出結果が含まれる。
【0078】
図17は、行動データ記憶部523に記憶されるデータの一例を示す図である。
行動データは、ユーザ識別情報と行動内容とが対応付けられたデータである。
ユーザ識別情報は、ユーザをそれぞれ識別する識別情報である。
行動内容は、学習項目毎の、指の操作、視線、受講履歴が含まれる。学習項目は、例えば「受信機の電源ユニットの交換」、「送信機の冷却ファン清掃」等である。行動内容を参照することで、例えば、「受信機の電源ユニットの交換」を受講したときに、教育コンテンツにおいて操作入力が求められたときにユーザが指によってどのような操作入力を行ったかの履歴や、教育コンテンツの視聴中においてどこを見ていたかを表す視線の履歴を残すことができる。受講履歴は、学習項目を受講した日時が記憶される。
【0079】
《学習ランクの決定》
教官用端末50の学習ランク決定部530は、行動データ記憶部523に記憶された行動データに基づいて学習ランクを決定する。学習ランクを決めるにあたり、学習ランク決定部530は、ユーザの能力と、学習項目の進捗との少なくともいずれか一方に基づく学習状況に応じて学習ランクを決定する。
【0080】
学習ランク決定部530は、ユーザの能力について、指の操作と視線との少なくともいずれか一方に基づいて、学習ランクを決定する。例えば、学習ランク決定部530は、指の操作において、学習項目において定められた整備手順について、その整備手順に沿って正しく操作入力されていたか否かを判定し、正しく操作入力されていた場合には、正解と判定し、正しく操作入力されていない場合には不正解と判定し、この正解の数と不正解の数に基づいて、学習ランクを決定する。例えば、学習ランク決定部530は、正解数と不正解数との割合において正解数の方が多いほど、高い学習ランクを付与し、正解数と不正解数との割合において不正解数の方が多いほど、低い学習ランクを付与する。
「電源ボタンを「切」に切り替えてください」という操作入力が求められた場合、ユーザが、表示端末70に表示された模擬受信機30の電源ボタンを指で押す動作ができた場合には、正解とし、別のボタンが押された場合や、一定時間経過してもいずれのボタンを押せなかった場合には、不正解とする。これにより、レーダ設備の機器に対するユーザの知識を評価することができる。
【0081】
また、例えば、学習ランク決定部530は、視線において、学習項目において定められた整備手順に基づいて、整備対象の部位が指定された場合に、その部位に視線を向けることができたか否かを判定し、正しく視線を向けることができた場合には、正解と判定し、別の方向へ視線が向いている場合には不正解と判定し、この正解の数と不正解の数に基づいて、学習ランクを決定する。例えば、学習ランク決定部530は、正解数と不正解数との割合において正解数の方が多いほど、高い学習ランクを付与し、正解数と不正解数との割合において不正解数の方が多いほど、低い学習ランクを付与する。
例えば、「電源ボタンを「切」に切り替えてください」という操作入力が求められた場合、ユーザが、電源ボタンに視線を向けることができた場合には、正解とし、別のボタンや別の操作子に視線を向けた場合には、不正解とする。また、電源ボタンを探すように複数のボタンに順に視線を向けるように視線が移動する場合には、不正解の数が増えるようにしてもよい。これにより、レーダ設備の機器に対するユーザの知識を評価することができる。
【0082】
また、学習ランク決定部530は、受講履歴に基づくことで学習項目の進捗に応じた学習ランクを求める。例えば、「受信機の電源ユニットの交換」の受講回数が0回(未受講)であるユーザについては、低い学習ランクを付与し、「受信機の電源ユニットの交換」の受講回数が多いほど、高い学習ランクを付与するようにしてもよい。1つの学習項目について複数受講しているユーザについては、ある程度の知識が蓄積されていると推定されるため、学習ランクが高くなるようにしてもよい。
【0083】
ここで、学習ランク決定部530は、指の操作に基づく学習ランクと、視線に基づく学習ランクとに基づいて、平均値を求めることで、行動に関する学習ランクを求めるようにしてもよい。また、学習ランク決定部530は、行動に関する学習ランクと、受講履歴に基づく学習ランクとに基づいて、総合的な学習ランクを求めるようにしてもよい。例えば、学習ランク決定部530は、行動に関する学習ランクが高く、かつ、受講履歴に基づく学習ランクが高いほど、総合的な学習ランクを高くなるように求める。また学習ランク決定部530は、行動に関する学習ランクが低く、かつ、受講履歴に基づく学習ランクが高い場合には、受講を重ねても正解する割合が低いため、学習の理解度があまり進んでいないと推定することができるため、総合的な学習ランクを中程度、あるいは低くなるように求めるようにしてもよい。
【0084】
学習ランク決定部530は、このようにして、学習ランクをユーザ毎に求め、得られた学習ランクをユーザ識別情報に対応づけて学習ランク記憶部524に記憶する。学習ランク決定部530は、1つの学習項目の学習が終了する毎に、学習ランクを更新するようにしてもよい。
【0085】
図18は、学習ランク記憶部524に記憶される学習ランクデータの一例を示す図である。学習ランクデータは、ユーザ識別情報と学習ランクとが対応づけられたデータである。
【0086】
図19は、第2実施形態におけるレーダ設備教育システム1の利用状況の概念を示す概念図である。
ここでは、1台の模擬装置を複数のユーザ(ユーザUa、ユーザUb)が共有しつつ、同じ学習項目の学習を行う場合について図示されている。模擬装置は、例えば、模擬受信機30である。学習項目としては、「受信機の電源ユニット交換」である。電源ユニットを交換する場合、交換担当者1名で交換する場合もあるが、2名等の複数名が協働しながら交換する場合もある。このような協働して行われる整備を1つの模擬受信機30を複数のユーザが共有して利用し、一緒に同じ学習項目を受講しながら実習を行うことができる。
【0087】
表示端末70aは、ユーザUaに装着され、表示端末70bは、ユーザUbに装着される。表示端末70aと表示端末70bの機能は表示端末70と同様であるので詳細な説明は省略する。
教官は、1つの模擬受信機30を共有して「受信機の電源ユニット交換」の教育をユーザUaとユーザUbに行う場合、表示端末70aと表示端末70bを教育対象として指定するとともに、学習項目「受信機の電源ユニット交換」を指定する操作入力をする。教官用端末50は、教官からの操作入力に基づいて、表示端末70aと表示端末70bに対して、学習項目「受信機の電源ユニット交換」を指定するとともに、教育プログラムの実行指示を送信する(符号700、符号701)。この指示において、表示端末70aと表示端末70bには、同じ学習項目の教育コンテンツが表示される。これにより、表示端末70aと表示端末70bは、同じ教育コンテンツが再生されるため、映像を共有することができる。また、表示端末70aと表示端末70bは、同じ教育コンテンツが再生されるため、共同で操作入力を行い、共同で作業を行うことができる。例えば、ユーザUaが模擬送信機20の電源を切る操作入力をした後、ユーザUbが電源ユニットのビスを取り外すための操作入力をし、ビスが取り外された後、電源ユニットの一方の端部をユーザUaが保持し、電装ユニットのもう一方の端部をユーザUbが保持し、二人で電装ユニットを引抜くような操作をすることができる。
【0088】
教育コンテンツが再生されている間、一定時間毎に、表示端末70a、表示端末70bからそれぞれ、ユーザの視線、指の動作等が検出された結果である行動データが教官用端末50に送信される(符号705、符号706)。これにより、各ユーザUが学習している状況が教官用端末50に対してフィードバックされる。
【0089】
《学習ランクに応じたコンテンツ出力》
教官用端末50は、教育プログラムの実行指示を送信する際、送信対象の表示端末70を装着したユーザUのユーザ識別情報に対応する学習ランクを学習ランク記憶部524から読み出し、教育プログラムの実行指示とともに送信するようにしてもよい。ユーザUのユーザ識別情報は、例えば、表示端末70にログインした際のログインIDに基づいて特定されてもよい。
表示端末70の出力制御部770は、教官用端末50から学習ランクを受信すると、受信した学習ランクに応じて、教育コンテンツの表示態様を変えて表示させるようにしてもよい。表示態様を変えて表示する場合、例えば、出力制御部770は、ユーザの学習状況に応じた、教育コンテンツに含まれる教育内容の詳細度に基づいて教育コンテンツの表示させるようにしてもよい。
【0090】
図20は、表示端末70aに表示される表示画面Gaの一例を示す図であり、図21は、表示端末70bに表示される表示画面Gbの一例を示す図である。ここでは、学習項目「受信機の電源ユニットの交換」において、整備手順「電源ボタンを切る」における表示画面が図示されている。
図20において、ユーザUaの学習ランクがユーザUbの学習ランクよりも高い場合、ユーザUaの表示端末70aは、模擬受信機30に対して、詳細画面SGjが表示されることで、電源を切断する手順である説明文が表示されるが、電源を切断する場合の操作対象が電源ボタンであることの説明は表示されておらず、また、電源ボタンがどの位置に配置されているかについての案内画面も表示されない。
ユーザUaは、学習ランクがユーザUbよりも高いため、レーダ設備に対する理解度が進んでいると推定される。そのため、詳細画面が表示される数や詳細画面に表示される内容が少なくなっており、詳細度が低い状態で教育コンテンツが表示される。例えば、ユーザUaは、学習項目「受信機の電源ユニットの交換」の受講が3回目であり、指の操作や視線に基づく正解数が多くなっている場合には、このように、詳細度が低い状態で教育コンテンツが表示されることで、学習の難易度が高くなるようにして学習することができる。
【0091】
一方、図21において、ユーザUbの表示端末70bは、模擬受信機30に対して、詳細画面SGkが表示されることで、電源を切断する手順である説明文が表示され、また、電源を切断する場合の操作対象が電源ボタンであることの説明及び、電源ボタンがどの位置に配置されているかについての案内画面(位置を示す吹き出し状の図形)が表示される。
ユーザUbは、学習ランクがユーザUaよりも低いため、レーダ設備に対する理解度があまり進んでいない推定される。そのため、詳細画面が表示される数や詳細画面に表示される内容が表示端末70aに比べて多くなっており、詳細度が高い状態で教育コンテンツが表示される。例えば、ユーザUbは、学習項目「受信機の電源ユニットの交換」の受講が0回目(未経験)であり、指の操作や視線に基づく正解数についても検出される前であるため、詳細度が低い状態で教育コンテンツが表示されることで、学習の難易度が低くなるようにして学習することができる。
ここでは、ユーザUaとユーザUbは、共通の教育コンテンツを視聴しつつ同じ学習項目において共同で作業を行う場合であっても、表示される教育コンテンツの詳細度が異なるため、各ユーザの能力や経験に応じた学習をすることができる。
【0092】
複数のユーザが、共通の教育コンテンツを視聴しつつ同じ学習項目において共同で作業を行う場合、模擬装置に対するユーザの立ち位置が異なる。この場合、例えば表示端末70aの位置検出部762が、表示端末70aを装着したユーザUaの位置を検出する。検出の仕方については、頭部装着表示部751の表示画面上における、識別体SBの位置に基づいて模擬装置に対するユーザUaの相対的な位置と模擬装置に対するユーザの向きを検出する。
【0093】
表示端末70aの出力制御部770は、位置検出部762によって検出されたユーザの位置と向きに応じた視点から学習対象の設備を見た場合の教育コンテンツを、ユーザの位置と向きに応じて頭部装着表示部に表示させる。例えば、ユーザUaが模擬送信機20に向かって左側に立ち、やや斜め方向に向いて模擬送信機20を見ている場合には、その位置と方向に応じて、詳細画像が表示される位置を補正し、表示する。これにより、詳細画面の吹き出しの基点の位置が、模擬送信機20における差し示す位置に対応するように補正される。
表示端末70bについても同様に、模擬送信機20に対するユーザUbの位置と向きに応じて表示されるコンテンツの位置が補正され表示される。
【0094】
模擬装置に対するユーザUの位置検出は、識別体SBを用いる場合について説明したが、模擬装置の外周面における特徴点を抽出し、この特徴点のお互いの位置関係の組み合わせに基づいて、模擬装置を特定し、特定された模擬装置に対応するコンテンツを読み出す。このように、識別体SBが無い場合であっても、模擬装置に対するユーザの位置を検出することができる。
【0095】
上述した第2実施形態によれば、複数のユーザが同じグループに属して同じ学習項目を共同で受講する場合であっても、ユーザの個々の学習項目に対する理解度や進捗に応じて異なるコンテンツを提示しつつ、共同でレーダ設備の整備などの実習を行うことができる。
また、上述した第2実施形態によれば、ユーザが多人数であり、多拠点に分散している場合であっても、教官用端末50が各ユーザの学習項目の進捗状況や表示端末70の状況等を集約して管理することができる。例えば、教官は、東京に設置された教官用端末50を利用し、あるユーザが北海道において表示端末70を利用し、別のユーザが沖縄において表示端末70を利用する場合であっても、教官用端末50においてこれらユーザの学習状況を管理しつつ、共同で同じ学習項目の実習を遠隔であっても共同して実習を行うことができる。
【0096】
第2実施形態において、教官用端末50の制御部560が、学習ランクに応じて個別の学習内容(教育コンテンツ)を生成し、送信先のユーザの学習ランクに応じた教育コンテンツを送信するようにしてもよい。
【0097】
第2実施形態においては、1台の模擬装置(模擬受信機30)を複数のユーザが共有して学習項目を受講する場合について説明したが、離れた拠点にそれぞれ設けられた同じ機種の模擬装置をそれぞれユーザが利用し、同じ学習項目を受講するようにしてもよい。これにより遠隔の拠点にいるユーザ同士であっても、同じ学習項目を遠隔地にいながら表示端末70を用いて共同で実習を行うことができる。
【0098】
また、第2実施形態において、模擬装置を用いて複数のユーザが受講する場合について説明したが、模擬装置はVRであってもよい。すなわち、実物の模擬装置として設置されたものではなく、レーダ設備を仮想空間上(表示端末70)にVRによって再現するようにしてもよい。
【0099】
なお、上述した第1実施形態及び第2実施形態において、学習ランク決定部530は、教官用端末50ではなく、表示端末70に搭載されるようにしてもよい。コンテンツ抽出部740、出力制御部770は、表示端末70ではなく教官用端末50に搭載され、表示させる教育コンテンツを教官用端末50から表示端末70に送信することで、表示させるようにしてもよい。
【0100】
また、上述した実施形態では、設備教育システムが教育等を行う対象の設備がレーダ設備である場合に、設備教育システムをレーダ設備教育システムとして用いる場合について説明したが、設備教育システムをレーダ設備以外の設備に用いるようにしてもよい。レーダ設備以外の設備としては、例えば、通信設備であってもよい。
【0101】
上述した実施形態における教官用端末50、表示端末70をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0102】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0103】
1…レーダ設備教育システム、10…模擬空中線制御器、20…模擬送信機、30…模擬受信機、40…生徒用端末、50…教官用端末、60…大型表示器、70,70a,70b…表示端末、80…認証サーバ、90…ネットワーク機器、91…有線LANスイッチ部、92…無線LANアクセスポイント部、510…通信部、520…記憶部、521…コンテンツ記憶部、522…学習状況記憶部、523…行動データ記憶部、524…学習ランク記憶部、530…学習ランク決定部、540…入力部、550…出力部、560…制御部、710…通信部、720…記憶部、721…コンテンツ記憶部、730…撮像部、740…コンテンツ抽出部、750…出力部、751…頭部装着表示部、752…放音部、760…検出部、761…行動検出部、762…位置検出部、770…出力制御部、780…入力部、790…制御部
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