(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011864
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】画像処理方法、太陽電池評価方法及び太陽電池評価装置
(51)【国際特許分類】
H04N 23/60 20230101AFI20240118BHJP
G01N 21/88 20060101ALI20240118BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20240118BHJP
【FI】
H04N5/232 290
G01N21/88 J
G03B15/00 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114158
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】599114760
【氏名又は名称】東芝環境ソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】諸澤 泰裕
(72)【発明者】
【氏名】志村 尚彦
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 幸司
【テーマコード(参考)】
2G051
5C122
【Fターム(参考)】
2G051AA73
2G051AB20
2G051CA03
2G051CA04
2G051EA12
5C122DA12
5C122DA16
5C122EA55
5C122FC01
5C122FG05
5C122FH15
5C122FH23
5C122HA88
5C122HB01
(57)【要約】
【課題】低コストで容易に検査ができる画像処理方法、太陽電池評価方法及び太陽電池評価装置を提供することを目的とする。
【解決手段】実施形態に係る画像処理方法は、カメラで撮影した画像に含まれる複数の画素ごとに第1輝度を算出し、前記各画素を複数の分割画素に分割し、前記第1輝度を入力とする空間フィルタリングにより前記分割画素ごとに第2輝度を算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラで撮影した画像に含まれる複数の画素ごとに第1輝度を算出し、
前記各画素を複数の分割画素に分割し、
前記第1輝度を入力とする空間フィルタリングにより前記分割画素ごとに第2輝度を算出する画像処理方法。
【請求項2】
前記空間フィルタリングは、平均化フィルタとハイライトフィルタを含み、
前記平均化フィルタは、前記分割画素の第1輝度に対して平均化フィルタ行列に基づく平均化フィルタ処理を実施して平均化輝度を出力し、
前記ハイライトフィルタは、前記平均化輝度に対してハイライトフィルタ行列に基づくハイライトフィルタ処理を実施してハイライト輝度を前記第2輝度として出力する請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項3】
前記ハイライトフィルタによる処理回数に対して上限値を設定し、上限値まで連続で前記ハイライトフィルタを実施する請求項2に記載の画像処理方法。
【請求項4】
分割上限値を設定し、前記各画素に対する分割画素の数を前記分割上限値以内とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の画像処理方法。
【請求項5】
Electro Luminescence撮像により撮影した太陽電池モジュールの画像を請求項1に記載の画像処理方法で処理する太陽電池評価方法。
【請求項6】
赤外光を受光可能なCCDカメラで撮影した画像を前記画像処理方法で処理する請求項5に記載の太陽電池評価方法。
【請求項7】
赤外光を受光可能なCCDカメラで撮影した画像に含まれる複数の画素ごとに第1輝度を算出する輝度算出部と、
前記各画素を前記各画素に対して算出された第1輝度を持つ複数の分割画素に分割する画素分割部と、
空間フィルタリングにより前記分割画素に対する第2輝度を算出するフィルタ部とを備えた画像処理装置を備えた太陽電池評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、太陽電池モジュールのEL撮像評価に適用する画像処理方法、太陽電池評価方法及び太陽電池評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換型半導体である太陽電池モジュールは太陽光を受けると発電することが知られているが、外部から電流を印可すると発光する特性がある。この特性を利用し、劣化等による発光の強弱や、発電部の割れ等により発光しない部分を画像として視覚的に得ることができる。これは太陽電池モジュールの品質評価方法の一つでElectro Luminescence(EL)評価と呼ばれている。シリコン型(Si型)の太陽電池モジュールのEL発光波長は約1100nm程度の赤外光であり、人間の目では直接確認できず通常のCCDカメラでは撮像できないため、EL評価では一般的に、赤外光に対して高い感度をもつ赤外光CCDカメラが使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2007-129585号公報
【特許文献2】特開2012-089790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、赤外光CCDカメラは高価である上、受光しにくい微弱な光を得るために1ピクセルごとの受光素子の面積を広くとる必要があり解像度が低く、解像度を高めるためには台数を増やしたり、赤外光CCDカメラを移動可能にする駆動部を設置して撮影回数を増やしたりするなどのため、設備の大きさやコストの増大などが問題となる。また、複数の撮影により画像を得る場合、複数の画像を繋ぎ合わせるなどの必要があり、繋ぎ目のわずかな輝度差による画像の評価品質の低下の可能性があり、評価コストや無駄な太陽電池廃棄の増大に繋がる。太陽電池の需要増加に向けて、適正な太陽電池のリサイクル及びリユースなどに係る評価技術の確立が急務である。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、低コストで容易に検査ができる画像処理方法、太陽電池評価方法及び太陽電池評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る画像処理方法は、カメラで撮影した画像に含まれる複数の画素ごとに第1輝度を算出し、各画素を複数の分割画素に分割し、第1輝度を入力とする空間フィルタリングにより分割画素ごとに第2輝度を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係る太陽電池モジュールの評価システムの概念図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る画像処理装置による画像分割例を示す概念図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る画像処理装置のフィルタの例を示す概念図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る画像処理装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施形態に係る画像処理装置の処理結果の例を示すイメージ図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る画像処理装置の各処理ステップ後の太陽電池モジュールの画像の第1の例である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る画像処理装置の各処理ステップ後の太陽電池モジュールの画像の第2の例である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る画像処理装置で実際にデータ取得した際の空間フィルタリングのフィルタ係数の例である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
(実施形態)
本実施形態においては、外部から電流を印加して発光させることで太陽電池モジュールを評価するEL評価方法において、赤外光に対して高い感度を持つCharge-Coupled Device(CCD)カメラを使用して撮影した画像を処理することで、容易に太陽電池モジュールの検査を実施する画像処理装置、太陽電池評価システム、及び太陽電池評価方法を示す。
【0009】
図1は、実施形態に係る太陽電池モジュールの評価システムの概念図である。
【0010】
画像処理装置1は、演算機能、制御機能などを備え、ソフトウェアなどのプログラムを実行するCPUや、データを記憶する揮発性メモリや不揮発性メモリなどを備えたコンピュータであり、例えば、パーソナルコンピュータ、スマートフォンなど任意のコンピュータ装置であってよい。画像処理装置1は、任意の外部装置と接続可能であり、例えばカメラから画像を取得したり、モニタへ表示データを出力したりすることができる。
【0011】
画像処理部10は、撮影部2から入力される画像データをデジタル処理する。画像処理部10は、CPUで実行されるソフトウェア(プログラム)であってもよいし、IC回路などのハードウェアであってもよいし、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせで実現されてもよい。本実施形態における画像処理部10は、輝度算出部101、画素分割部102、平均化フィルタ101、ハイライトフィルタ104を含む。
【0012】
輝度算出部101は、撮影部2から入力される画像データの画素ごとに輝度(カラー画像の場合、RGB輝度と称する場合もある)を画素値として算出する。画素値(RGB輝度)の算出方法は任意の方法が考えられるが、画素のR、G、Bカラーモデルの値を用いて例えば次式のように算出される。
RGB輝度=0.299×R+0.587×G+0.114×B
ただし、R、G、Bはそれぞれ8ビットで示される0から255の値とする。
【0013】
画素分割部102は、画像データの画素のエリアをさらに細かく分割する。
【0014】
図2は、実施形態に係る画像処理装置による画素分割例を示す概念図であり、
図2(a)は、画像データの4ピクセルの画素の例を示し、
図2(b)は、
図2(a)の各画素をそれぞれ4つに分割した例を示す。
【0015】
例えば、画素分割部102は、
図2(a)の画素Aを
図2(b)に示すように4つの分割画素A1、A2、A3、A4に分割する。分割画素A1、A2、A3、A4のRGB輝度は、画素Aに対して輝度算出部101が求めるRGB輝度と同一である。画素分割部102は、画素B、C、Dについても同様に分割画素を生成する。一画素に対する分割画素数を特に画素分割数と称し、例えば
図2の例では画素分割数は4である。検討の結果、画素分割数は、なるべく大きな値とすることが望ましいが、大きすぎる値は望ましくないために、画素分割数に対して上限値を設定してもよい。例えば、画像処理装置1の図示せぬメモリなどに画素分割数及びその上限値を設定できるようにしておき、画素分割数の設定値が、設定された上限値を上回っている場合は、画素分割数をその上限値とする判定機能を備えてもよい。
【0016】
図1に戻り、平均化フィルタ103は、ある分割画素Aに対してその周囲の分割画素の画素値を用いて分割画素Aの画素値として求めるフィルタであり、空間フィルタリング手法の一種である。以降、平均化フィルタ103が画素値を求めようとする分割画素Aを着目分割画素と称し、算出に用いられる分割画素Aの周囲の分割画素を周囲分割画素と称する。また平均化フィルタ103によって求める画素値を平均化画素値と称する。なお、平均化フィルタ101は、平滑化フィルタなど一般的な任意のフィルタであってもよい。例えば、中心の要素W(2,2)のみを0(他は1)とする平滑化フィルタであってもよく、フィルタ係数の各要素に対する値は平均化フィルタ101と同様の効果を有するように選択された任意の値でよい。
【0017】
図3は、実施形態に係る画像処理装置のフィルタの例を示す概念図である。
【0018】
図3(a)は、フィルタ行列の例である。フィルタ行列の縦と横の要素数をフィルタサイズと称し、例えば
図3(a)の例の場合、フィルタサイズを3×3(全要素数は9)のように示す。
図3(a)において、フィルタ行列の各要素の値(重み)をW(i,j)(ただし、i,jは行番号、列番号を示し、それぞれ1から3の整数)と示す。
【0019】
図3(b)は、
図2(b)の各分割画素をフィルタへの入力X(i,j)(ただし、i、jは行番号、列番号を示し、それぞれ1から4の整数)に置き換えた図を示す。領域Calc_for_X(2,2)は、着目分割画素X(2,2)を求める際に、フィルタ行列と重なる領域を示す。
図3(a)に示したフィルタ行列の各要素W(i,j)に対する正方形の領域は、
図3(b)に示した各分割画素X(i,j)の領域と同一の大きさである。すなわち、フィルタ行列の1要素(例えば、W(2,2))は、1分割画素X(例えば、X(2,2))に対する重みとなる。また、領域Calc_for_X(3,3)は、着目分割画素X(3,3)を求める際に、フィルタ行列と重なる領域を示す。
【0020】
図3(c)は、平均化フィルタのフィルタ行列(平均化フィルタ行列と称することもある)の具体例である。
【0021】
本実施形態の平均化フィルタ101は、
図3(a)のようなフィルタ行列を備え、フィルタ行列を入力行列X(i,j)に適用して、各分割画素の平均化画素値を算出する。より具体的に
図3(b)における分割画素X(2,2)に対して平均化画素値を求める場合について以下に示す。
【0022】
図3(b)の着目分割画素X(2,2)に
図3(a)のフィルタ行列の中心W(2,2)を重ねるようにフィルタ行列を置き、フィルタ行列と重なる領域である領域Calc_for_X(2,2)内の分割画素を用いて、着目分割画素X(2,2)を算出する。具体的に分割画素X(2,2)に対する平均化画素値は、次式のように求められる。
【0023】
【0024】
また同様に
図3(b)のX(3,3)の平均化画素値は、X(3,3)にフィルタ行列の中心W(2,2)を重ねるようにフィルタ行列を置き、フィルタ行列と重なる領域である領域Calc_for_X(3,3)内の分割画素を用いて求める。具体的に分割画素X(3,3)に対する平均化画素値は、次式となる。
【0025】
【0026】
すなわち、
図3(a)のフィルタ行列の中心の値W(2,2)を、フィルタ行列によって平均化画素値を求めようとする着目分割画素の上に重ねて、着目分割画素の画素値を重ねられたフィルタ行列の値で重み付け平均することで、任意の着目分割画素に対する平均化画素値を求めることができる。
【0027】
図3(c)の平均化フィルタ行列を用いたときの分割画素X(2,2)の平均化画素値は、以下のように算出される。
分割画素X(2,2)の平均化画素値=
{X(1,1)+X(1,2)+X(1,3)
+X(2,1)+X(2,2)+X(2,3)
+X(3,1)+X(3,2)+X(3,3)}/9。
【0028】
また
図3(b)の例において端の分割画素(X(2,2)、X(2,3)、X(3,2)、X(3,3)以外の分割画素)に対してフィルタ行列を用いて平均化画素値を求める場合、
図3(a)のフィルタ行列の値W(2,2)を着目分割画素に重ねると、フィルタ行列の領域にRGB輝度値(画素値)のない分割画素が含まれるため、正確な平均化画素値を求めることができない。
【0029】
例えば、着目分割画素X(1,1)にフィルタ行列のW(2,2)を重ねる場合、フィルタ行列のW(1,1)、W(1,2)、W(1,3)、W(2,1)、W(3,1)の領域には、分割画素が存在しない。このような場合は、例えばW(1,1)、W(1,2)、W(1,3)、W(2,1)、W(3,1)の領域の分割画素に適当な画素値を入れて計算してもよい。ただし、
図3(b)では4ピクセルの画素を分割した4×4の分割画素の例を示しているが、実際の画像の画素は100万程度あり、その場合、分割画素数は、4×4×100万=1600万となり、画像の端の分割画素の評価への影響については無視できるほどに小さい場合が多いため、画像の端の分割画素の画素値を評価に用いないようにすることでもよい。
【0030】
図1に戻り、ハイライトフィルタ104は、ある画素Aに対してその周囲の画素の画素値を用いて画素Aの画素値を求めるフィルタであり、平均化フィルタ103同様、空間フィルタリング手法の一種である。以降、平均化フィルタ103の場合と同様に、ハイライトフィルタ104が画素値を求めようとする分割画素Aを着目分割画素と称し、算出に用いられる分割画素Aの周囲の分割画素を周囲分割画素と称する。またハイライトフィルタ104によって求める画素値をハイライト画素値と称する。なお、ハイライトフィルタ104は、画像のエッジを強調するために用いられる微分フィルタと呼ばれる任意の一般的フィルタであってもよい。
【0031】
ハイライトフィルタ104においても、平均化フィルタ101と同様、上記した
図3(a)のようなフィルタ行列を備え、フィルタ行列の中心W(2,2)を着目分割画素に置き、フィルタ行列と重なる領域に含まれる分割画素を用いてハイライト画素値を算出する。ハイライト画素値の算出方法は、上記した平均化画素値の空間フィルタリングの算出方法と同様であるため、説明は省略する。
図3(d)は、ハイライトフィルタ104のフィルタ行列(ハイライトフィルタ行列と称することもある)の具体例である。
【0032】
すなわち、本実施形態における平均化フィルタ101とハイライトフィルタ104の差異は、空間フィルタリングにおいて用いられるフィルタ行列が異なることのみと見ることもできる。本実施形態においては、平均化フィルタ101の出力である平均化画素値をハイライトフィルタ104への入力とする。またハイライトフィルタ104の出力であるハイライト画素値を再度ハイライトフィルタ104への入力として、ハイライトフィルタ104による処理を複数回実施してもよい。この場合、ハイライトフィルタ104による処理の繰り返し回数に上限値を設けることが望ましい。繰り返し回数の上限値は、予め評価などにより得た実験値としてもよい。例えば、画像処理装置1にハイライトフィルタ104による処理の繰り返し回数及びその上限値を設定できるようにしておき、ハイライトフィルタ104は、繰り返し処理回数が設定された上限値になったときに、結果の画素値(ハイライト画素値)を出力するようにする。
【0033】
平均化フィルタ101とハイライトフィルタ104の例として、
図3にフィルタサイズ3×3のフィルタ行列の例を示したが、両フィルタとも着目分割画素に対し、十分に多くの周囲分割画素がフィルタ行列に含められるようにフィルタサイズを設定することが望ましい。例えば、フィルタサイズ3×3のフィルタ行列の場合では、着目分割画素を1周取り囲むように周囲分割画素を含めることができるが、フィルタサイズ5×5、7×7として着目分割画素を中心として2周分、3周分の周囲分割画素を増加させることでもよい。また、本実施形態においては、平均化フィルタ101とハイライトフィルタ104のフィルタ行列のフィルタサイズを双方とも同じ3×3とした例を示したが、異なるフィルタサイズとしてもよい。また、ハイライトフィルタ行列については、着目分割画素に適用する行列の中心要素(
図3(a)のW(2,2)に相当)の値やフィルタサイズを、ハイライトフィルタ104の繰り返し時(
図4のステップS106のYesに相当)に異なる値としてもよい。
【0034】
入力部11は、撮影部2と画像処理装置1とのインターフェースの機能であり、例えば、撮影部2から画像データを受信する。入力部11は、撮影部2とのインターフェースに応じて、有線、無線に関わらず任意のデータ通信プロトコルを備えていてよい。
【0035】
出力部12は、画像処理装置1と表示部3とのインターフェースの機能であり、例えば、モニタ表示するための表示データを出力する。出力部12は、表示部3とのインターフェースに応じて、有線、無線に関わらず任意のデータ通信プロトコルを備えていてよい。
【0036】
撮影部2は、動画像などの撮影をするカメラであり、本実施形態においては、赤外光に対して高い感度を持つCCDカメラ(通常のCCDカメラと区別するために、以降、赤外光CCDカメラと称する場合もある)とする。赤外光CCDカメラは、約1100nm程度以下の特殊な波長領域を撮像可能である。
【0037】
赤外光CCDカメラは、通常受光しにくい微弱な光を得るために、1ピクセルごとの受光素子の面積を広くとる必要があり、解像度を高めるためには設備の大きさや金額が増大するなどの理由のため、一般的に解像度が低い。一般にEL評価における撮像に使われる赤外光CCDカメラの解像度は10万~100万画素ほどであり、太陽電池モジュールの大きさ(例えば一般に広く出回っている250W程度の場合、1650mm×950mm程度)の細かな欠陥評価には解像度が不足している。
【0038】
このため、一般にEL評価においては、複数台のカメラを用いたりまたは複数回撮影したりすることによって解像度の高い検査画像を得ている。この場合、1.カメラを複数台購入するための設備コストの増大、2.カメラ位置を変えて複数回撮影するための駆動部追加による設備コストの増大、3.ELの微弱な発光を撮像するために数秒~10秒程度の露光時間を要しこれを複数回撮影するための工数コストの増大、4.複数枚の画像を繋ぎ合わせるために発生する繋ぎ目のわずかな輝度差による評価画像品質の低下による評価コストの増大などの問題が考えられる。本実施形態においては、画像処理装置1によって、EL評価における上記のような問題点を解決する。
【0039】
表示部3は、例えばディスプレイであり、画像処理装置1が出力した表示データを表示する。
【0040】
電気信号出力部4は、EL評価の評価対象である太陽電池モジュール5に入力するための電流を出力する。
【0041】
太陽電池モジュール5は、シリコン型(Si型)の光電変換型半導体であり、本実施形態による評価対象である。太陽電池モジュール5は、1以上の太陽電池セルを含む。太陽電池モジュール5は、太陽光を受けて発電するが、外部から電流を印可されると発光する特性がある。EL評価は、太陽電池モジュール5のこの特性を利用した評価方法である。
【0042】
図4は、実施形態に係る画像処理装置の動作例を示すフローチャートである。
【0043】
画像処理装置1の入力部11は、撮影部2が撮像した画像データを取得する(ステップS101)。撮影部2が撮像した画像はカラー画像データであり、画像データは、画像を構成する画素のRGBデータとする。
【0044】
入力部11は画像データを画像処理部10へ出力し、画像データは画像処理部10の輝度算出部101に入力される。輝度算出部101は、入力された画像データの画素ごとにRGB輝度(第1輝度)を算出する(ステップS102)。ステップS102において算出された画素値は、コントラスト調整を含む処理がなされた後、画素分割部102に入力される。
【0045】
画素分割部102は、
図2に示したように、画像データの画素を分割し、分割画素を生成する(ステップS103)。
【0046】
ステップS103において、分割画素は画素の複製とみなすこともできる。例えば
図2(a)の例の場合、2つの隣あった異なる情報(画素値)を持つ画素セルA、Bに対し、
図2(b)のように分割画素A1、A2、B1、B2とそれぞれのセルを複製することで1次元的に2画素から4画素に増やす。この時点で画像全体の大きさが同じであれば見かけ上は変化せず、
図2(b)は、画素セルA、Bの複製である分割画素A1、A2、B1、B2が、画像全体の大きさが変わらないように縮小されている例である。
【0047】
画素分割部102が生成する分割画素は、平均化フィルタ103に入力され、平均化フィルタ103は、分割画素ごとに画素値(RGB輝度)の平均化フィルタ処理を実施して平均化画素値を出力する(ステップS104)。
【0048】
平均化画素値は、ハイライトフィルタ104に入力され、ハイライトフィルタ104は、ハイライトフィルタ処理を実施してハイライト画素値を求める(ステップS105)。
【0049】
ハイライトフィルタ104によるハイライトフィルタ処理を繰り返す場合は、ステップS105において求めたハイライト画素値を再度ハイライトフィルタ104に入力し、ハイライトフィルタ処理を実施する(ステップS106のYes)。
【0050】
ステップS105、S106においては、ハイライトフィルタ104によるハイライトフィルタ処理回数をカウントしておき、例えば予め設定された処理回数に到達するまで、ハイライトフィルタ処理を繰り返すようにしてもよい。またS106においては、ハイライトフィルタ処理ごとにハイライト画素値から画像の空間周波数などを算出し、空間周波数の分散などを評価値として求めて、評価値に応じてハイライトフィルタ処理を繰り返すか、停止するかを判定するようにしてもよい。
【0051】
画像処理部10は、出力部12から分割画素ごとのハイライトフィルタ処理後のハイライト画素値(第2輝度)を表示データとして表示部3へ出力する(ステップS107)。ステップS107は、表示データを画像データとして図示せぬメモリになどに格納してもよい。
表示部3は、受信した表示データに基づき画像を表示する(ステップS108)。例えば太陽電池モジュールの検査者は、表示部3に表示された画像を見て、故障の有無を判定するなどの検査をしてもよい。また、AI(人工知能)などに、表示データに基づいて故障の有無を判定させるようにしてもよいし、表示データを図示せぬ記憶装置などのメモリに格納して蓄積し、表示データを機械学習などに使用してもよい。
【0052】
図5は、実施形態に係る画像処理装置の処理結果の例を示すイメージ図であり、
図2に示した画像例に対する処理結果の例である。
【0053】
図5(a)は、
図4のステップS102において、輝度算出部101が、カラー画像の各画素に対し、RGBデータからRGB輝度へ変換するイメージを示す。処理前の図(左図)は、輝度算出部101への入力画像を示し、処理後の図(右図)は、輝度算出部101から出力される画像を示す。
図5(a)の処理前の図に示した各分割画素の斜線の違いはカラーの違いを表す。また
図5(a)の処理後の図に示した各分割画素のドットは、RGB輝度を表し、ドットが大きくなるほどRGB輝度が低くなり暗くなるイメージを表す(
図5(a)以外の図も同様)。
【0054】
図5(b)は、
図4のステップS103において、画素分割部102が画像データの画素を分割して分割画素を生成するイメージである。処理前の図(左図)は、画素分割部102への入力画像を示し、処理後の図(右図)は、画素分割部102から出力される分割画像を示す。画素分割処理後の各分割画素のRGB輝度は、分割元の画素のRGB輝度と同一である。
【0055】
図5(c)は、平均化フィルタ103が平均化フィルタ処理を実行して、分割画素ごとに平均化画素値(RGB輝度)を算出するイメージである。処理前の図(左図)は、平均化フィルタ103へ入力される分割画像を示し、処理後の図(右図)は、平均化フィルタ103から出力される分割画像を示す。
【0056】
図5(d)は、
図4のステップS105において、ハイライトフィルタ104が分割画素ごとに画素値(RGB輝度)のハイライトフィルタ処理を実施するイメージである。処理前の図(左図)は、ハイライトフィルタ104へ入力される分割画像を示し、処理後の図(右図)は、ハイライトフィルタ104から出力される分割画像を示す。
図5(d)に示すように、ハイライトフィルタ104は、分割画素間の濃淡(エッジ)を際立たせる効果がある。
【0057】
以上の手順により、赤外光に対して高い感度を持つCCDカメラを使用して撮影した画像を用いて容易に太陽電池モジュールの検査を実施することができ、従来判別できなかったエッジを判別することが可能となる。
【0058】
図6は、実施形態に係る画像処理装置の各処理ステップ後の太陽電池モジュールの画像の第1の例である。
【0059】
図6(a)は、EL撮像により撮影部2で撮影し、出力した画像データ(EL撮像生データ)であり、100万画素の赤外光CCDカメラ1台、撮影枚数1枚の構成により撮像したEL画像である。太陽電池モジュール5(パネル)は1以上の太陽電池セルから構成され、
図6(a)においては、約15cm角の太陽電池セルが6×10個並べられて、約1m×約1.5mの太陽電池モジュール5が構成されている例が示されている。
【0060】
図6(b1)は、
図6(a)の画像データを輝度変換処理して得られた画像データであり、輝度算出部101の出力である。
【0061】
図6(b2)は、
図6(b1)の画像の一部(点線枠の部分)を拡大した画像の図である。
【0062】
図6(c1)は、
図6(a)の画像データを輝度変換、画素分割、フィルタリング処理して得られた画像データであり、画像処理部10の出力である。
図6(c1)は、
図6(b1)の画像に対して、画素分割部102の画素分割数を16、ハイライトフィルタ104の処理回数を2として処理した結果の画像データである。平均化フィルタ103、ハイライトフィルタ104で用いたフィルタ及びフィルタ係数は、後述する
図8に示す。
【0063】
図6(c2)は、
図6(c1)の画像の一部(点線枠の部分)を拡大した画像の図である。
図6(c2)では、
図6(b2)に比べて荒い画像ではわからなかった微細な変色や輝度の強弱(太陽電池の発光出力の低下)部分を確認できるようになっており、画素分割及びフィルタリングの効果が確認できる。画素分割及びフィルタリングにより、解像度があがって表現できる範囲が広がったものと考えられる。
【0064】
図7は、実施形態に係る画像処理装置の各処理ステップ後の太陽電池モジュールの画像の第2の例であり、画素分割の効果を見るための試験結果である。
【0065】
図7(a)は、
図6(b1)の画像データを画素分割せずに、フィルタリング処理して得られた画像データである。
図7(b)は、
図6(c1)に示した画像データであり、
図6(a)の画像データを輝度変換、画素分割、フィルタリング処理して得られた画像データであり、画像処理部10の出力である。
【0066】
図7(a)、
図7(b)を比較すると、
図7(a)では画像データのノイズが目立ち、
図7(b)ではノイズが取り除かれていることから、画素分割の効果が確認できる。
【0067】
図8は、実施形態に係る画像処理装置の空間フィルタリングのフィルタ係数の例であり、
図6、
図7の画像データ取得に実際に用いたフィルタである。
図8(a)は、フィルタ係数の全要素の値を1としたフィルタサイズ9×9のフィルタであり、平均化フィルタ103に適用したフィルタである。
図8(b)は、フィルタ係数の中心要素(
図3のW(2,2)に相当)の値のみを100とし、他の要素を-1としたフィルタサイズ9×9のフィルタであり、ハイライトフィルタ104の1回目のハイライトフィルタ処理に適用したフィルタである。
図8(c)は、フィルタ係数の中心要素(
図3のW(2,2)に相当)の値のみを60とし、他の要素を-1としたフィルタサイズ7×7のフィルタであり、ハイライトフィルタ104の2回目のハイライトフィルタ処理に適用したフィルタである。
【0068】
本実施形態は、様々な検討、実験の基に完成したものである。以下に本実施形態の検討過程について示す。
【0069】
ELにより発光された対象物(本実施形態では太陽電池モジュール5)の光源による明るさは本来放射状に広がっているはずである。すなわち対象物の光源部分が最も明るく、その周辺は放射状に徐々に暗くなると考えられる。このような対象物を画素数の少ないカメラで撮影した場合、本来、光源がない部分が同一の画素セルに含まれてしまい、その画素セル内で光量の平均化が行われてしまい情報が損失する。そこで画素分割部102を設けて画素セルを分割することで、周辺の光量に伴う環境情報を書き込む容量が増加する。すなわち分割画素の導入により周辺の光量に伴う環境情報をより詳細に考慮することが可能になる。フィルタ処理によって、周辺の環境情報から計算または推算された光量を書きこむための容量(スペース、空き)ができたものと理解することもできる。従って、分割画素に平均化フィルタ103や、ハイライトフィルタ104を適用することで、EL評価による故障検知の性能が改善される。
【0070】
本実施形態により、装置に工学的な変更を加えることなく解像度の低い撮像データを高画質化し、太陽電池モジュールSiウェハの割れや欠損を正確に評価することが可能となる。これにより、評価装置の製造コスト、撮像時間コスト、運用コストなどのコスト低減、画像品質低下の低減が可能となる。
【0071】
以上に述べた少なくとも1つの実施形態によれば、低コストで容易に検査ができる画像処理方法、太陽電池評価方法及び太陽電池評価装置を提供することができる。
【0072】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。また、フローチャート、シーケンスチャートなどに示す処理は、CPU、ICチップ、デジタル信号処理プロセッサ(Digital Signal ProcessorまたはDSP)などのハードウェアもしくはマイクロコンピュータを含めたコンピュータなどで動作させるソフトウェア(プログラムなど)またはハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって実現してもよい。また請求項を制御ロジックとして表現した場合、コンピュータを実行させるインストラクションを含むプログラムとして表現した場合、及び前記インストラクションを記載したコンピュータ読み取り可能な記録媒体として表現した場合でも本発明の装置を適用したものである。また、使用している名称や用語についても限定されるものではなく、他の表現であっても実質的に同一内容、同趣旨であれば、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0073】
1…画像処理装置、2…撮影部、3…表示部、4…電気信号出力部、5…太陽電池モジュール、10…画像処理部、11…入力部、12…出力部、101…輝度算出部、102…画素分割部、103…平均化フィルタ、104…ハイライトフィルタ。