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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118647
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/40 20060101AFI20240826BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20240826BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
H01L23/40 Z
H05K1/02 F
H01L23/36 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025035
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺島 健史
【テーマコード(参考)】
5E338
5F136
【Fターム(参考)】
5E338AA02
5E338AA16
5E338BB75
5E338CC04
5E338CD24
5E338EE02
5F136BA30
5F136BB18
5F136DA27
5F136EA04
5F136FA02
5F136FA03
5F136FA14
5F136FA16
5F136FA18
(57)【要約】
【課題】内部に生じる損傷の発生を低減する。
【解決手段】放熱ベース30は、締結部32b,32dと放熱部31との境界部は、平面視でケース40の上面開口部46aの外側に位置すると共に、境界部もしくは締結部32b,32dは、側面視で放熱部31のおもて面よりも低位に配置されている。このような半導体装置1を設置対象物2の略平坦な設置領域に配置して、半導体装置1の締結孔及び固定孔をねじ3により設置対象物2のねじ孔2aに螺合する。放熱ベース30の締結部32b,32dは放熱部31よりも厚さが薄いため、応力により変形する。このため、半導体装置1の内部に生じる応力の発生を低減する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップと、
前記半導体チップがおもて面に接合される基板と、
前記基板が配置される基板領域がおもて面に設定された放熱部と平面視で前記放熱部の外縁に設けられた、締結孔が形成された締結部とを含み、平板状を成す放熱ベースと、
開口領域が中央部に形成され、前記締結孔に対応する挿通部が形成された保護部を外縁に含んで、枠状を成し、前記放熱ベース上に配置され、前記基板が前記開口領域に収納され、前記保護部が前記締結部に配置されるケースと、
を含み、
前記放熱ベースは、
前記締結部と前記放熱部との境界部は、平面視で前記ケースの前記開口領域の外側に位置すると共に、前記境界部もしくは前記締結部は、側面視で前記放熱部のおもて面よりも低位に配置されている、
半導体装置。
【請求項2】
前記放熱ベースの前記放熱部は、平面視で、矩形状を成しており、
前記締結部は、前記放熱部の対向する一対の短辺側にそれぞれ含まれている、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記締結部は、前記放熱部の前記一対の短辺の幅と同じ幅を有し、前記放熱部の前記一対の短辺にそれぞれ含まれ、前記境界部は、前記放熱部の前記一対の短辺に平行に設けられている、
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記締結部は、前記放熱部の4つの角部にそれぞれ含まれている、
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記境界部は、前記締結部が扇型状を成すように前記放熱ベースの前記4つの角部にそれぞれ設けられている、
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記締結部は、前記放熱部の対向する前記一対の短辺に、前記一対の短辺からそれぞれ外側に突出するように含まれている、
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記境界部は、前記締結部の前記放熱部の前記一対の短辺から突出する領域を横断して設けられている、
請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記境界部のみに、平面視で連続する溝が形成されている、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記境界部の延伸方向に対して直交する断面は、凹状、U字状、V字状のいずれかを成している、
請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記締結部の剛性は、前記放熱部の剛性よりも小さい、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記締結部の厚さは、前記放熱部の厚さよりも薄い、
請求項10に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記締結部の厚さは、前記放熱部の厚さの30%以下である、
請求項11に記載の半導体装置。
【請求項13】
平面視で、前記境界部は前記放熱部の前記基板領域から所定の距離以上、離間している、
請求項10に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記保護部の厚さは、前記締結部のおもて面から前記放熱部のおもて面までの高さに略等しい、
請求項11に記載の半導体装置。
【請求項15】
側面視で、前記保護部の前記開口領域側の内壁は前記締結部と前記放熱部との段差に当接している、
請求項14に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、台形部が設けられた放熱板と当該台形部に直接接合された、半導体素子を搭載した絶縁基板とを含む(例えば、特許文献1を参照)。また、半導体装置は、絶縁基板と絶縁基板が配置される領域よりも厚さが小さい薄肉部を設ける金属ベース板とを含む(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-086741号公報
【特許文献2】特開2017-010970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、内部に生じる損傷の発生が低減された半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一観点によれば、半導体チップと、前記半導体チップがおもて面に接合される基板と、前記基板が配置される基板領域がおもて面に設定された放熱部と平面視で前記放熱部の外縁に設けられた、締結孔が形成された締結部とを含み、平板状を成す放熱ベースと、開口領域が中央部に形成され、前記締結孔に対応する挿通部が形成された保護部を外縁に含んで、枠状を成し、前記放熱ベース上に配置され、前記基板が前記開口領域に収納され、前記保護部が前記締結部に配置されるケースと、を含み、前記放熱ベースは、前記締結部と前記放熱部との境界部は、平面視で前記ケースの前記開口領域の外側に位置すると共に、前記境界部もしくは前記締結部は、側面視で前記放熱部のおもて面よりも低位に配置されている、半導体装置が提供される。
【0006】
前記放熱ベースの前記放熱部は、平面視で、矩形状を成しており、前記締結部は、前記放熱部の対向する一対の短辺側にそれぞれ含まれてよい。
前記締結部は、前記放熱部の前記一対の短辺の幅と同じ幅を有し、前記放熱部の前記一対の短辺にそれぞれ含まれ、前記境界部は、前記放熱部の前記一対の短辺に平行に設けられてよい。
【0007】
前記締結部は、前記放熱部の4つの角部にそれぞれ含まれてよい。
前記境界部は、前記締結部が扇型状を成すように前記放熱ベースの前記4つの角部にそれぞれ設けられてよい。
【0008】
前記締結部は、前記放熱部の対向する前記一対の短辺に、前記一対の短辺からそれぞれ外側に突出するように含まれてよい。
前記境界部は、前記締結部の前記放熱部の前記一対の短辺から突出する領域を横断して設けられてよい。
【0009】
前記境界部のみに、平面視で連続する溝が形成されてよい。
前記境界部の延伸方向に対して直交する断面は、凹状、U字状、V字状のいずれかを成してよい。
前記締結部の剛性は、前記放熱部の剛性よりも小さくてよい。
【0010】
前記締結部の厚さは、前記放熱部の厚さよりも薄くてよい。
前記締結部の厚さは、前記放熱部の厚さの30%以下であってよい。
【0011】
平面視で、前記境界部は前記放熱部の前記基板領域から所定の距離以上、離間してよい。
前記保護部の厚さは、前記締結部のおもて面から前記放熱部のおもて面までの高さに略等しくてよい。
【0012】
側面視で、前記保護部の前記開口領域側の内壁は前記締結部と前記放熱部との段差に当接していてよい。
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となりうる。
【発明の効果】
【0013】
開示の技術によれば、内部に生じる損傷の発生が抑制されて、半導体装置の信頼性の低下の抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施の形態の半導体装置の平面図である。
図2】第1の実施の形態の半導体装置の短手方向の断面図である。
図3】第1の実施の形態の半導体装置の長手方向の断面図である。
図4】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
図5】第1の実施の形態の半導体装置の含まれる放熱ベースを示す図である。
図6】第1の実施の形態の半導体装置の含まれる半導体チップが配置された絶縁回路基板の平面図である。
図7】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれるケース取り付け工程(取り付け前)を示す図である。
図8】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれるケース取り付け工程(取り付け後)を示す図である。
図9】第1の実施の形態の半導体装置の設置対象物に対する締結を示す断面図である。
図10】第1の実施の形態(変形例1-1)の半導体装置に含まれる放熱ベースを示す図である。
図11】第1の実施の形態(変形例1-2)の半導体装置に含まれる放熱ベースを示す図である。
図12】第1の実施の形態(変形例1-3)の半導体装置に含まれる放熱ベースを示す図である。
図13】第2の実施の形態の半導体装置の含まれる放熱ベースの平面図である。
図14】第2の実施の形態の半導体装置の含まれる放熱ベースの断面図である。
図15】第2の実施の形態の半導体装置の長手方向の断面図である。
図16】第2の実施の形態の半導体装置の短手方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、「おもて面」及び「上面」とは、図の半導体装置1において、上側(+Z方向)を向いたX-Y面を表す。同様に、「上」とは、図の半導体装置1において、上側(+Z方向)の方向を表す。「裏面」及び「下面」とは、図の半導体装置1において、下側(-Z方向)を向いたX-Y面を表す。同様に、「下」とは、図の半導体装置1において、下側(-Z方向)の方向を表す。必要に応じて他の図面でも上記と同様の方向性を意味する。「高位」とは、図の半導体装置1において、上側(+Z方向)の位置を表す。同様に、「低位」とは、図の半導体装置1において、下側(-Z方向)の位置を表す。「おもて面」、「上面」、「上」と「裏面」、「下面」、「下」と「側面」とは、相対的な位置関係を特定する便宜的な表現に過ぎず、本発明の技術的思想を限定するものではない。例えば、「上」及び「下」は、必ずしも地面に対する鉛直方向を意味しない。つまり、「上」及び「下」の方向は、重力方向に限定されない。また、以下の説明において「主成分」とは、80vol%以上含む場合を表す。また、「略同一」とは、±10%以内の範囲であればよい。また、「垂直」並びに「直交」、「平行」とは、±10°以内の範囲であればよい。
【0016】
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態における半導体装置1について、図1図3を用いて説明する。図1は、第1の実施の形態の半導体装置の平面図である。図2は、第1の実施の形態の半導体装置の短手方向の断面図であり、図3は、第1の実施の形態の半導体装置の長手方向の断面図である。なお、図1では、封止部材80の図示を省略している。図2は、図1の一点鎖線X-Xの断面図を、図3は、図1の一点鎖線Y-Yをそれぞれ示している。図2及び図3では、制御ワイヤ61、配線ワイヤ62、主電流ワイヤ63並びに制御IC21の図示を省略している。
【0017】
半導体装置1は、半導体ユニット10とプリント基板20と半導体ユニット10及びプリント基板20を収納するケース40とを含んでいる。半導体ユニット10は、絶縁回路基板70と絶縁回路基板70に搭載された第1半導体チップ75及び第2半導体チップ76と放熱ベース30とを含む。なお、半導体ユニット10は、第1半導体チップ75及び第2半導体チップ76を6組、有している。
【0018】
絶縁回路基板70は、絶縁板71と金属板72と回路パターン73とを含んでいる。絶縁板71は、熱伝導性のよいセラミックスを主成分として構成される。セラミックスは、例えば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素を主成分とする材料により構成されている。また、このような絶縁板71は、平面視で、矩形状を成している。
【0019】
金属板72は、熱伝導性に優れた金属を主成分として構成されている。また、金属板72の角部にR面加工が施されてもよい。このような金属は、例えば、アルミニウム、鉄、銀、銅、または、少なくともこれらの一種を含む合金である。また、金属板72は、平面視で、矩形状を成しており、絶縁板71の裏面の外縁部を除いて全面に形成されている。金属板72の表面に対して、耐食性を向上させるために、めっき処理を行ってもよい。この際、用いられるめっき材は、例えば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金が挙げられる。
【0020】
回路パターン73は、所定の回路を構成する。回路パターン73は、例えば、3組の第1半導体チップ75及び第2半導体チップ76が搭載されている。回路パターン73は、合計6組の第1半導体チップ75及び第2半導体チップ76が設けられている場合を単に示している。第1半導体チップ75及び第2半導体チップ76は6組に限らず、半導体装置1の仕様に応じた組数と当該組数に応じて回路パターン73を設けてよい。複数の回路パターン73は、絶縁板71のおもて面にそれぞれ形成されている。また、回路パターン73は、導電性に優れた金属を主成分として構成される。このような金属は、例えば、銀、銅、ニッケル、または、少なくともこれらの一種を含む合金である。回路パターン73の表面に対して、耐食性を向上させるために、めっき処理を行ってもよい。この際、用いられるめっき材は、例えば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金である。このような回路パターン73は、絶縁板71の一方の面に形成された導電性の板または箔をエッチングして形成される。または、導電性の板を絶縁板71の一方の面に貼り合わせて形成される。回路パターン73の詳細については後述する。
【0021】
なお、絶縁回路基板70は、DCB(Direct Copper Bonding)基板、AMB(Active Metal Brazed)基板を用いることができる。なお、このような構成を有する半導体ユニット10の回路パターン73の形状、配置位置及び個数、第1半導体チップ75及び第2半導体チップ76の配置位置及び個数は一例であり、図1図3に限らず、設計等により適宜設定される。
【0022】
第1半導体チップ75及び第2半導体チップ76は、シリコンを主成分として構成されるパワー半導体チップである。第1半導体チップ75は、スイッチング素子を含んでいる。スイッチング素子は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、パワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)が挙げられる。第1半導体チップ75がIGBTである場合には、裏面に入力電極としてコレクタ電極を、おもて面に、制御電極としてゲート電極及び出力電極としてエミッタ電極をそれぞれ備えている。第1半導体チップ75がパワーMOSFETである場合には、裏面に入力電極としてドレイン電極を、おもて面に、制御電極としてゲート電極及び出力電極としてソース電極をそれぞれ備えている。
【0023】
上記の第1半導体チップ75は、その裏面が回路パターン73上に接合部材(図示を省略)により接合されている。なお、接合部材は、本実施の形態において、はんだまたは金属焼結体が用いられる。はんだは、所定の合金を主成分とする鉛フリーはんだにより構成される。所定の合金とは、例えば、錫-銀からなる合金、錫-亜鉛からなる合金、錫-アンチモンからなる合金のうち少なくともいずれかの合金である。はんだには、銅、ビスマス、インジウム、ニッケル、ゲルマニウム、コバルトまたはシリコン等の添加物が含まれてもよい。金属焼結体は、例えば、アルミニウム、銅が用いられる。
【0024】
第2半導体チップ76は、ダイオード素子を含んでいる。ダイオード素子は、例えば、SBD(Schottky Barrier Diode)、PiN(P-intrinsic-N)ダイオード等をFWD(Free Wheeling Diode)として用いる。このような第2半導体チップ76は、裏面に出力電極としてカソード電極を、おもて面に入力電極としてアノード電極をそれぞれ備えている。上記の第2半導体チップ76は、その裏面が回路パターン73上に接合部材により接合されている。
【0025】
また、第1半導体チップ75及び第2半導体チップ76に代えて、IGBTとFWDとの機能を合わせ持つRC(Reverse-Conducting)-IGBTを含む半導体チップを用いてよい。または、第1半導体チップ75及び第2半導体チップ76に代えて、炭化シリコンにより構成されるパワーMOSFETを含む半導体チップを用いてよい。この半導体チップは、パワーMOSFETと共にFWDを備えている。
【0026】
放熱ベース30は、熱伝導性に優れた金属を主成分として構成されている。金属は、例えば、銅、アルミニウムまたは、少なくともこれらの一種を含む合金である。金属板の耐食性を向上させるために、めっき処理を行ってもよい。この際、用いられるめっき材は、例えば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金である。当該放熱ベース30上に、絶縁回路基板70は既述の接合部材を介して設けられる。なお、放熱ベース30の詳細については後述する。
【0027】
プリント基板20は、ケース40のプリント領域42aに設けられている。なお、プリント領域42aに設けられたプリント基板20は、平面視で、絶縁回路基板70に隣接している。このようなプリント基板20は、絶縁板と当該絶縁板のおもて面に形成された複数の上部回路パターンとを備えている。また、プリント基板20は、当該絶縁板の裏面に複数の下部回路パターンを備えていてもよい。
【0028】
絶縁板は、平板状であって絶縁性の材質により構成されている。このような材質は、基体に対して樹脂を浸漬させたものが用いられる。この基体は、例えば、紙、ガラス布、ガラス不織布を主成分として構成されている。樹脂には、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂が挙げられる。絶縁板の具体例としては、紙フェノール基板、紙エポキシ基板、ガラスエポキシ基板、ガラスポリイミド基板、ガラスコンポジット基板が挙げられる。このような絶縁板もまた、平面視で矩形状である。絶縁板は、角部がR面取りまたはC面取りされていてもよい。
【0029】
上部回路パターン及び下部回路パターンは、所定の回路が構成されるよう複数で、所定のパターン形状を成している。上部回路パターン及び下部回路パターンは、導電性に優れた材質により構成されている。このような材質として、例えば、銀、銅、ニッケル、または、少なくともこれらの一種を含む合金等により構成されている。上部回路パターン及び下部回路パターンの表面に対して、耐食性を向上させるために、めっき処理を行ってもよい。このめっき処理で用いられる材料は、例えば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金が挙げられる。
【0030】
このようなプリント基板20は、例えば、次のようにして形成することができる。絶縁板のおもて面及び裏面にそれぞれ金属箔を張り付けて、所定形状のレジストを印刷する。印刷したレジストをマスクとして、絶縁板のおもて面及び裏面のそれぞれの金属箔をエッチングして、残ったレジストを除去する。これにより、絶縁板のおもて面及び裏面に上部回路パターン及び下部回路パターンがそれぞれ形成される。
【0031】
また、プリント基板20には電子部品として制御IC21が設けられ、上部回路パターンと電気的に接続されている。本実施の形態では、制御IC21は、図1に示されるように、第1半導体チップ75のゲート電極等の制御電極に制御ワイヤ61により電気的かつ機械的に接続されている。制御IC21は、所定のタイミングにより、第1半導体チップ75に対して制御電圧を印加する。なお、この際、用いられる制御ワイヤ61は、導電性に優れた材質により構成されている。当該材質として、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、または、少なくともこれらの1種を含む合金により構成されている。また、制御ワイヤ61の径は、例えば、100μm以上、250μm以下である。なお、プリント基板20には、制御IC21の他に、必要な別の電子部品を搭載してもよい。このような電子部品は、例えば、サーミスタ、コンデンサ、抵抗、電流センサ、温度センサが挙げられる。
【0032】
また、絶縁回路基板70内で、例えば、第1半導体チップ75と第2半導体チップ76との間、第2半導体チップ76と回路パターン73との間が配線ワイヤ62により電気的かつ機械的に接続されている。プリント基板20と絶縁回路基板70の回路パターン73との間もまた主電流ワイヤ63により電気的かつ機械的に接続されている。ここで用いられる配線ワイヤ62及び主電流ワイヤ63もまた記述の導電性に優れた材質により構成されている。また、配線ワイヤ62及び主電流ワイヤ63の径は、例えば、100μm以上、1.00mm以下である。
【0033】
ケース40について説明する。ケース40は、底部42と底部42の周縁部を取り囲んで一体的に形成された枠部41と枠部41の後述する側壁部41b,41dの裏面に形成された保護部44b,44dとを含んでいる。なお、底部42は、図2に例示するように、枠部41(図2では側壁部41a,41c)の裏面(その境界を破線で示す)に形成されている。さらに、ケース40は、主電流接続端子50a~50eと制御端子53とを含んでいる。なお、以下では、主電流接続端子50a~50eを特に区別しない場合には、主電流接続端子50として説明する。
【0034】
このようなケース40は、例えば、熱可塑性樹脂を用いて射出成形により、主電流接続端子50と制御端子53とを含んで形成される。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリアミド樹脂、または、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂が挙げられる。
【0035】
底部42は、平面視で矩形状を成している。底部42は、そのおもて面(底面)に絶縁回路領域である開口領域42b及びプリント領域42aがそれぞれ設定されている。なお、プリント領域42aは、図2に例示するように、底部42のおもて面に破線で示される範囲に設定されている。開口領域42bには絶縁回路基板70が配置され、プリント領域42aにはプリント基板20が配置される。すなわち、底部42のおもて面に、図1に示されるように、平面視で下側に開口領域42bが、上側にプリント領域42aがそれぞれ設定されている。なお、開口領域42bの開口縁部の裏面側にテーパが形成されてもよい。さらに、底部42の裏面(底部裏面)に下面開口部46bが形成されている。下面開口部46bは開口領域42bに対応する箇所は開口されている。底部42の含まれる下面開口部46bの裏面側から半導体ユニット10が取り付けられる。すなわち、放熱ベース30が下面開口部46bに取り付けられて、絶縁回路基板70が、開口領域42bから露出される。なお、底部42の下面開口部46bに対して放熱ベース30は接着部材(図示を省略)により取り付けられる。このようにして取り付けられた放熱ベース30の裏面は底部42の裏面よりも外側(図2及び図3中下側)に突出してよい。または、放熱ベース30の裏面が底部42の裏面に対して同一平面を成してもよい。
【0036】
保護部44b,44dは、放熱ベース30の図5に記載されている締結部32b,32dを覆う。また、保護部44b,44dは、放熱ベース30に形成された図7及び図8に記載されている、締結孔33b,33dに対応する固定孔44b1,44d1が形成されている。また、固定孔44b1,44d1の一部の周りは平面視でケース40の挿通部43b,43dに取り囲まれている。なお、保護部44b,44dの固定孔44b1,44d1には記載を省略する金属製のリングを設けてよい。また、保護部44b,44dの厚さは、放熱ベース30の後述する放熱部31と締結部32b,32dの段差の高さに対応する。保護部44b,44dの平面視の形状は、放熱ベース30の後述する締結部32b,32dと同様に等脚台形状を成してよい。
【0037】
このような保護部44b,44dの裏面は、側壁部41a,41cの裏面よりも下方(-Z方向)に位置している。すなわち、ケース40は、側壁部41b,41d及び保護部44b,44dを合わせた(±Z方向の)厚さは、側壁部41a,41cの同方向の厚さよりも厚く構成される。
【0038】
放熱ベース30を底部42の下面開口部46bに接合する接着部材は、例えば、熱硬化性樹脂系接着剤またはエラストマー系接着剤が用いられる。熱硬化性樹脂系接着剤は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂を主成分とする。エラストマー系接着剤は、例えば、シリコーンゴム、クロロプレンゴムを主成分とする。好ましくは、エポキシ樹脂またはシリコーンゴムを主成分とする。
【0039】
プリント領域42aは、底部42のおもて面に、開口領域42bの側壁部41aの反対側に隣接して設定されている。プリント領域42aにプリント基板20が、例えば、接着部材を介して配置される。
【0040】
枠部41は、平面視で枠型を成している。このような枠部41は、底部42の各辺にそれぞれ一体的に形成された側壁部41a~41dを備える。また、枠部41は、底部42を取り囲んで開口領域42bが構成される。側壁部41a~41dの高さは、全て同一の高さである。側壁部41a,41cは、底部42の長辺にそれぞれ設けられている。また、側壁部41a,41cの内側には、段差部45a,45cがそれぞれ設けられている。側壁部41b,41dは、底部42の短辺にそれぞれ設けられている。また、側壁部41b,41dの内側には、段差部45b,45dがそれぞれ設けられている。側壁部41a及び底部42には、主電流接続端子50a~50eがそれぞれ側壁部41aに沿って一体成形されている。また、側壁部41c及び底部42には、制御端子53が側壁部41cに沿ってそれぞれ一体成形されている。
【0041】
主電流接続端子50は、側面視で、図2に示されるように、L字形状を成している。具体的には、主電流接続端子50は、L字型に曲げられた板状の部材で形成されている。なお、図2では、主電流接続端子50bを例示している。主電流接続端子50bは、外部接続部51bと内部接続部52bとを有している。外部接続部51bは一端部が側壁部41aの上面から上方に延伸して、他端部は側壁部41a内で内部接続部52bに一体的に接続される。内部接続部52bの他端部は段差部45aから露出されている。内部接続部52bの他端部は回路パターン73に主電流ワイヤ63により電気的かつ機械的に接続されている。主電流接続端子50a,50c~50eは、同様に、外部接続部51a,51c~51eと内部接続部52a,52c~52eとを有している。外部接続部51a,51c~51eは一端部が側壁部41aの上面から上方に延伸している。他端部は側壁部41a,41b,41d内で内部接続部52a,52c~52eに一体的に接続される。内部接続部52a,52c~52eの他端部は段差部45aから露出されている。内部接続部52a,52c~52eの他端部は回路パターン73に主電流ワイヤ63により電気的かつ機械的に接続されている。なお、主電流接続端子50a~50eが備える外部接続部51a~51e及び内部接続部52a~52eは、それぞれ特に区別しない場合には、図2に示されるように、外部接続部51及び内部接続部52として説明する。主電流接続端子50は、導電性に優れた材質により構成されている。このような材質として、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、または、少なくともこれらの一種を含む合金等により構成されている。主電流接続端子50の表面に対して、めっき処理を行ってもよい。このめっき処理で用いられる材料は、ニッケル、または、ニッケル合金がある。
【0042】
制御端子53は、側面視で、図2に示されるように、L字形状を成している。具体的には、制御端子53は、L字型に曲げられた角柱状あるいは円柱形状の部材で形成されている。このような制御端子53は、側壁部41cから上方に延伸する外部接続部54と側壁部41cの段差部45cから露出する内部接続部55とを備える。内部接続部55とプリント基板20との図示を省略するワイヤにより電気的に接続されてよい。
【0043】
このようにして、プリント基板20は、制御端子53の内部接続部52に電気的に接続される。そして、制御IC21は、プリント基板20から制御信号が入力されると、制御ワイヤ61を経由して第1半導体チップ75のゲート電極に対して制御信号を出力する。制御端子53は、導電性に優れた材質により構成されている。このような材質として、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、または、少なくともこれらの一種を含む合金により構成されている。制御端子53の表面に対して、めっき処理を行ってもよい。このめっき処理で用いられる材料は、例えば、ニッケル、または、ニッケル合金が挙げられる。
【0044】
側壁部41b,41dには、挿通部43b,43dを設けてもよい。後述するように半導体装置1を設置対象物にねじにより螺合する際に、挿通部43b,43dに、ねじが挿通される。
【0045】
半導体装置1の裏面(放熱ベース30の裏面)に冷却器(図示を省略)を、例えば、はんだ、銀ろう、放熱グリースあるいは放熱シートを介して取り付けて放熱性を向上させてもよい。この場合の冷却器は、例えば、熱伝導性に優れた金属を主成分として構成される。このような金属は、例えば、アルミニウム、鉄、銀、銅、または、少なくともこれらの一種を含む合金が挙げられる。また、冷却器として、例えば、ヒートシンク並びに水冷による冷却装置を適用することができる。また、放熱ベース30の裏面にこのような冷却器を一体化させてもよい。
【0046】
このような部品を含むケース40の上面開口部46aに封止部材80が充填され上面開口部46a内が封止部材80により封止されている。封止部材80は、熱硬化性樹脂と当該熱硬化性樹脂に含有されている無機物フィラーとを含んでいる。熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂を含む群から選択される少なくとも1種を主成分とする。好ましくは、熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂を主成分とする。また、無機物フィラーには、酸化珪素を主成分とする無機物が用いられる。また、ハロゲン系、アンチモン系、水酸化金属系等の難燃剤を配合することなく、高い難燃性を保つことができる。無機物フィラーは、封止材料全体の70vol%以上、90vol%以下である。
【0047】
次に、半導体装置1の製造方法について、図4を用いて説明する。図4は、第1の実施の形態の半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。まず、半導体装置1の構成部品を用意する(ステップS1)。構成部品は、例えば、第1半導体チップ75、第2半導体チップ76、絶縁回路基板70、放熱ベース30、ケース40、封止部材80の封止材料を用意する。これら以外でも半導体装置1の製造に必要な構成部品を用意する。さらに、半導体装置1の製造に必要な製造装置を用意してよい。
【0048】
ここで構成部品の例として、放熱ベース30について図5を用いて説明する。図5は、第1の実施の形態の半導体装置の含まれる放熱ベースを示す図である。なお、図5(A)は、放熱ベース30の平面図、図5(B)は、図5(A)を+Y方向に見た側面図である。
【0049】
放熱ベース30は、既述の通り、熱伝導性に優れた金属を主成分として構成されている。ここでの金属は、銅系の材料を主成分として構成されている。また、ここではニッケルによるめっき処理が施されてよい。放熱ベース30は、放熱部31と締結部32b,32dとを含んでいる。放熱部31は平面視で矩形状を成している。放熱部31は、四方が順に側面30a~30dにより囲まれている。側面30a,30cは、長辺に、側面30b,30dは短辺にそれぞれ対応している。また、放熱部31のおもて面には、破線で示される範囲に絶縁回路基板70が搭載されるユニット領域31aが設定されている。なお、放熱部31の厚さは、例えば、2mm以上、6mm以下である。ここでは、3mmであってよい。
【0050】
締結部32b,32dは、放熱部31の側面30b,30dにそれぞれ一体的に設けられている。すなわち、締結部32b,32dは、放熱部31の側面30b,32dにそれぞれ長手方向の外側に突出している。締結部32b,32dと放熱部31との境界は、放熱部31の側面30b,30dから突出する部分(締結部32b,32d)を横断するように構成されることになる。このような締結部32b,32dは平面視で台形状(等脚台形)を成している。締結部32b,32dの下底側が放熱部31の側面30b,30dに一体的に設けられている。なお、平面視で締結部32bの下底側とは、+X方向側の側面であり、締結部32dの下底側とは、-X方向側の側面である。因みに、平面視で締結部32bの上底側とは、-X方向側の側面であり、締結部32dの上底側とは、+X方向側の側面である。締結部32b,32dは、矩形状であってもよい。この場合、締結部32b,32dのそれぞれの上底側の側面がそれぞれの下底側の側面と同じ長さであってよい。さらに、締結部32b,32dのそれぞれの上底及び下底が、放熱部31の側面30b,30dと同じ長さであってもよい。また、締結部32b,32dは、ケース40の固定孔44b1,44d1に対応する締結孔33b,33dがそれぞれ形成されている。このような放熱部31との境界を含む締結部32b,32dの厚さは、放熱部31の厚さの15%以上、30%以下であってよい。この場合、締結部32b,32dの厚さは、例えば、0.5mm以上、1mm以下であってよい。すなわち、締結部32b,32dのおもて面は、放熱部31のおもて面よりも低位に位置する。締結部32b,32dのおもて面と放熱部31のおもて面とは段差が構成されている。締結部32b,32dのおもて面と放熱部31のおもて面との高さの差が段差に対応する。
【0051】
既述の通り、締結部32b,32dは、ケース40の保護部44b,44dが取り付けられる。ケース40が放熱ベース30に取り付けられると、締結部32b,32dと放熱部31との境界は、平面視で、放熱ベース30のユニット領域31aから所定の距離以上離れており、さらに、ケース40の上面開口部46a及び下面開口部46bの外側に位置する。これにより、後述するように、半導体装置1を設置対象物2に締結する際(図9を参照)、この境界とユニット領域31aとが十分に離れているため、絶縁回路基板70に対する半導体装置1の締結による応力の影響を確実に低減することができる。
【0052】
このような放熱ベース30は、以下のようにして製造される。例えば、均一の厚さの金属板から、平面視で図5(A)のような形状を切り出す。側部から突出した部分のおもて面を研削して薄箔化し、締結孔33b,33dを開口する。これにより、放熱部31と締結部32b,32dとを含む放熱ベース30が得られる。このため、締結部32b,32dと放熱部31の側面30b,30dとの境界では、締結部32b,32dは放熱部31の側面30b,30dに連続的に接続されている。なお、締結孔33b,33dの直径は任意に定められる。例えば、締結部32b,32dの領域(面積)は、少なくとも締結孔33b,33dの面積の3倍以上であることが望ましい。この場合、締結孔33b,33dが形成されても、締結部32b,32dの強度が一定以上維持される。
【0053】
締結部32b,32dの放熱部31の側面30b,30dに対する段差面(Z-Y面)は、締結部32b,32dのおもて面(X-Y面)に対して実質的に垂直であればよい。例えば、当該段差面は、締結部32b,32dのおもて面(X-Y面)に±5°の範囲で傾斜してもよい。
【0054】
別の構成部品の例として、絶縁回路基板70について図6を用いて説明する。図6は、第1の実施の形態の半導体装置の含まれる半導体チップが配置された絶縁回路基板の平面図である。
【0055】
絶縁回路基板70は、既述の通り、絶縁板71と金属板72と回路パターン73とを含んでいる。なお、図6では、絶縁板71の裏面に形成されている金属板72の記載は省略している。また、図6では、回路パターン73に第1半導体チップ75及び第2半導体チップ76が配置されている場合を示している。
【0056】
回路パターン73は、さらに、回路パターン73a~73eを含んでいる。回路パターン73aは、絶縁板71の-X方向の短辺及び+Y方向の長辺の半分にそれぞれ面すると共に、-Y方向の長辺の-X方向の端部に面している。回路パターン73aには、1組の第1半導体チップ75及び第2半導体チップ76が±Y方向に沿って一列に配置され、±X方向に3組配列されている。回路パターン73bは回路パターン73aの+X方向に隣接して絶縁板71に形成されている。回路パターン73bには、1組の第1半導体チップ75及び第2半導体チップ76が配置されている。回路パターン73c,73dは、回路パターン73b,73cにそれぞれ+X方向に隣接して絶縁板71に形成されている。また、回路パターン73c,73dには、1組の第1半導体チップ75及び第2半導体チップ76がそれぞれ配置されている。回路パターン73eは、絶縁板71の+X方向の短辺及び-Y方向の長辺の+X方向の部分にそれぞれ面している。
【0057】
次いで、放熱ベース30に絶縁回路基板70、第1半導体チップ75及び第2半導体チップ76を配置する第1配置工程を行う(ステップS2)。放熱ベース30のユニット領域31aに接合部材を介して絶縁回路基板70を配置する。さらに、絶縁回路基板70の回路パターン73a~73dに第1半導体チップ75及び第2半導体チップ76をそれぞれ同様に接合部材を介して配置する。なお、この接合部材は、例えば、はんだ板が挙げられる。
【0058】
次いで、ステップS2で配置された放熱ベース30、絶縁回路基板70、第1半導体チップ75及び第2半導体チップ76をそれぞれ接合する接合工程を行う(ステップS3)。ステップS2で配置された放熱ベース30、絶縁回路基板70、第1半導体チップ75及び第2半導体チップ76を加熱して、接合部材を溶融し、硬化する。これにより、絶縁回路基板70は放熱ベース30のユニット領域31aに接合され、第1半導体チップ75及び第2半導体チップ76は回路パターン73にそれぞれ接合される。以上により、半導体ユニット10が製造される。なお、接合工程における加熱により、放熱ベース30及び絶縁回路基板70が下に凸に反りが発生してもよい。
【0059】
次いで、ステップS3で製造された半導体ユニット10にケース40を取り付けるケース取り付け工程を行う(ステップS4)。取り付け工程について、図7及び図8を用いて説明する。図7は、第1の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれるケース取り付け工程(取り付け前)を示す図である。図8は、第1の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれるケース取り付け工程(取り付け後)を示す図である。なお、図7及び図8は、図3の断面に対応している。
【0060】
まず、図7に示されるように、半導体ユニット10の放熱ベース30上にケース40を位置合わせする。この際、ケース40の下面開口部46bは絶縁回路基板70に対応付けられる。さらに、ケース40の保護部44b,44dは、放熱ベース30の締結部32b,32dに対応付けられる。この際、ケース40の底部42の裏面及び放熱ベース30のおもて面の外縁部の少なくとも一方に接着部材を塗布しておく。
【0061】
その後、ケース40を放熱ベース30に移動させ、図8に示されるように、放熱ベース30に取り付ける。ケース40の保護部44b,44dは、放熱ベース30の締結部32b,32dに重なり、ケース40の固定孔44b1,44d1が放熱ベース30の締結孔33b,33dに合わせられる。さらに、ケース40の保護部44b,44dの上面開口部46a側の内壁が、締結部32b,32dと放熱部31との段差に当接する。また、放熱ベース30上の第1半導体チップ75及び第2半導体チップ76が搭載された絶縁回路基板70はケース40の下面開口部46bからケース40内に収納される。
【0062】
次いで、ケース40のプリント領域42aにプリント基板20を配置する第2配置工程を行う(ステップS5)。ケース40のプリント領域42aにプリント基板20を接着部材を介して配置する。なお、ステップS5はこのタイミングで行わずに、例えば、ステップS1の用意工程で、ケース40のプリント基板20に予め配置しておいてもよい。
【0063】
次いで、ケース40内で各部材間の配線を行う配線工程を行う(ステップS6)。プリント基板20の制御IC21と第1半導体チップ75の制御電極との間を制御ワイヤ61で接続する。第1半導体チップ75及び第2半導体チップ76の間、第2半導体チップ76と回路パターン73との間を配線ワイヤ62によりそれぞれ接続する。ケース40の主電流接続端子50と絶縁回路基板70の回路パターン73との間を主電流ワイヤ63により接続する。
【0064】
次いで、ケース40の上面開口部46aから封止部材80の材料を充填してケース40内を封止する封止工程を行う(ステップS7)。ケース40の上面開口部46aから封止部材80の材料を充填する。この材料が硬化すると、放熱ベース30上の絶縁回路基板70、第1半導体チップ75、第2半導体チップ76、プリント基板20、制御ワイヤ61、配線ワイヤ62、主電流ワイヤ63が封止部材80の材料により封止される。以上により、図1図3の半導体装置1が得られる。
【0065】
次に、このような半導体装置1を設置対象物に対して取り付ける場合について、図9を用いて説明する。図9は、第1の実施の形態の半導体装置の設置対象物に対する締結を示す断面図である。なお、図9は、なお、図3図7図8の断面位置に対応している。
【0066】
半導体装置1を設置対象物2に配置する。設置対象物2は、半導体装置1を必要とし、半導体装置1が配置されるあらゆる物が考えられる。設置対象物2は、例えば、冷却装置が挙げられる。設置対象物2には、ねじ3が螺合されるねじ孔2aが形成される。
【0067】
設置対象物2の略平坦な設置領域に半導体装置1を配置すると、半導体装置1の締結孔33b,33d及び固定孔44b1,44d1が、設置対象物2のねじ孔2aに対応する。そして、締結孔33b,33d及び固定孔44b1,44d1にねじ3を挿通して、ねじ3をねじ孔2aに螺合する。
【0068】
この際、半導体装置1では、放熱ベース30の締結部32b,32dは、放熱部31よりも厚さが薄い。このため、放熱ベース30にねじ3の締結により応力が生じても、締結部32b,32dが変形することで、当該応力が緩和される。このため、放熱ベース30の放熱部31の反りが低減されて、放熱部31に設けられた絶縁回路基板70に生じる反りも低減され、絶縁回路基板70(特に、絶縁板71)中のクラックの発生が低減される。
【0069】
ここで、半導体装置1において、放熱ベース30の全体の厚さが略同一である場合、すなわち、放熱ベース30の締結部32b,32dと放熱部31とが同じ厚さである場合について説明する。なお、ここで説明する半導体装置は、半導体装置1において、放熱ベース30の締結部32b,32dと放熱部31とが同じ厚さである。また、ケース40の枠部41の裏面は同一平面を成している。これ以外の構成は半導体装置1と同様である。
【0070】
この場合も上記と同様に、設置対象物2に半導体装置を配置してねじ3で締結孔33b及び固定孔44b1と、締結孔33d及び固定孔44d1とを順に締結する。例えば、先に、設置対象物2に対して、半導体装置の締結孔33b及び固定孔44b1をねじ3で締結する。すると、半導体装置は締結孔33b及び固定孔44b1を支点として締結孔33d及び固定孔44d1側が浮いてしまうことがある。特に、絶縁回路基板70を放熱ベース30に接合する際の加熱により、放熱ベース30が下に凸に反ってしまうことがある。絶縁回路基板70は、反った状態の放熱ベース30に接合される。半導体装置が、このように反った状態の放熱ベース30を含む場合、半導体装置の締結孔33b及び固定孔44b1のねじ3による締結時の、半導体装置の締結孔33d及び固定孔44d1側の浮きが顕著となる。
【0071】
次いで、半導体装置の締結孔33d及び固定孔44d1をねじ3により設置対象物2に締結すると、半導体装置全体が上に凸に反ってしまう。このため、半導体装置の内部に応力が発生する。例えば、半導体装置のこのような反りにより、放熱ベース30に接合部材で接合されていた絶縁回路基板70に応力が発生し、絶縁回路基板70の特に絶縁板71にクラックが発生してしまう。また、絶縁回路基板70と放熱ベース30とを接合する接合部材にクラックが発生してしまう。このような損傷が半導体装置の内部に発生すると、半導体装置の信頼性が低下してしまう。
【0072】
そこで、半導体装置1は、第1半導体チップ75及び第2半導体チップ76と、絶縁回路基板70と、放熱ベース30と、ケース40とを含む。絶縁回路基板70は、第1半導体チップ75及び第2半導体チップ76がおもて面に接合される。放熱ベース30は、絶縁回路基板70が配置されるユニット領域31aがおもて面に設定された放熱部31と平面視で放熱部31の外縁に設けられた、締結孔33b,33dが形成された締結部32b,32dとを含み、平板状を成す。ケース40は、上面開口部46aが中央部に形成され、締結孔33b,33dに対応する固定孔44b1,44d1が形成された保護部44b,44dを外縁に含んで、枠状を成し、放熱ベース30上に配置され、絶縁回路基板70が上面開口部46aに収納され、保護部44b,44dが締結部32b,32dに配置される。この際、放熱ベース30は、締結部32b,32dと放熱部31との境界部は、平面視でケース40の上面開口部46aの外側に位置すると共に、境界部もしくは締結部32b,32dは、側面視で放熱部31のおもて面よりも低位に配置されている。このような半導体装置1を設置対象物2の略平坦な設置領域に配置して、半導体装置1の締結孔33b,33d及び固定孔44b1,44d1をねじ3により設置対象物2のねじ孔2aに螺合する。放熱ベース30の締結部32b,32dは放熱部31よりも厚さが薄いため、応力により変形する。このため、半導体装置1の内部に生じる応力の発生を低減する。すなわち、絶縁回路基板70、及び絶縁回路基板70と放熱ベース30とを接合する接合部材におけるクラックの発生が低減される。また、ケース40は保護部44b,44dが設けられることで、枠部41の締結される箇所の厚さが厚くなる。このため、ケース40の強度が高まり、外部からの衝撃、螺合時の応力に対する耐性が向上する。この結果、半導体装置1の信頼性の低下が抑制される。
【0073】
すなわち、半導体装置1の放熱ベース30は、放熱部31との境界を含む締結部32b,32dの剛性が放熱部31の剛性よりも小さいことを要する。この場合に、放熱ベース30の締結部32b,32dは、ねじ3による設置対象物2に対する締結時に変形可能となる。第1の実施の形態では、このような締結部32b,32dを実現するために、放熱部31との境界を含む締結部32b,32dの厚さを放熱部31の厚さよりも小さくしている。以下では、締結部32b,32dの様々な変形例について説明する。
【0074】
(変形例1-1)
変形例1-1について、図10を用いて説明する。図10は、第1の実施の形態(変形例1-1)の半導体装置に含まれる放熱ベースを示す図である。なお、図10(A)は放熱ベース30の平面図、図10(B)は放熱ベース30の+Y方向に見た側面図をそれぞれ示している。
【0075】
変形例1-1の放熱ベース30は、平面視で矩形状を成しており、四方が順に側面30a~30dにより囲まれている。側面30a,30cは、長辺に、側面30b,30dは短辺にそれぞれ対応している。放熱ベース30は、放熱ベース30は、放熱部31と締結部32b,32dとを含んでいる。放熱部31は、平面視で矩形状を成している。この場合も、放熱部31のおもて面には、破線で示される範囲に絶縁回路基板70が搭載されるユニット領域31aが設定されている。
【0076】
締結部32b,32dは、放熱部31の±X方向の両側にそれぞれ一体的に設けられている。締結部32b,32dは放熱部31と±Y方向の長さが等しい。すなわち、締結部32b,32dと放熱部31との境界は、放熱ベース30の一対の側面30b,30dから所定の距離、長辺方向の内側に入り込んで、一対の側面30b,30dに平行に設けられている。
【0077】
また、締結孔33b,33dは、締結部32b,32dの側面30b,30d側が開口するように形成されている。ここでも、締結部32b,32dの厚さは、放熱部31の厚さよりも薄い。すなわち、締結部32b,32dのおもて面は、放熱部31のおもて面よりも低位に位置している。
【0078】
また、図示を省略するものの、ケース40もまた、放熱ベース30の締結部32b,32dの形状に対応するように保護部44b,44dが形成される。このように構成されたケース40を変形例1-1の放熱ベース30に取り付けた場合でも、締結部32b,32dと放熱部31との境界は、平面視で、ケース40の上面開口部46a及び下面開口部46bの外側に位置する。
【0079】
変形例1-1の放熱ベース30を含む半導体装置では、第1の実施の形態の半導体装置1と同様の効果が得られる。なお、ここでの締結部32b,32dの平面視の形状は一例である。変形例1-1の締結部32b,32dは第1の実施の形態と同様に、等脚台形を成していてよい。また、締結孔33b,33dは一例であって、第1の実施の形態と同様に、円形であってよい。
【0080】
(変形例1-2)
変形例1-2について、図11を用いて説明する。図11は、第1の実施の形態(変形例1-2)の半導体装置に含まれる放熱ベースを示す図である。なお、図11(A)は放熱ベース30の平面図、図11(B)は放熱ベース30の+Y方向に見た側面図をそれぞれ示している。
【0081】
変形例1-2の放熱ベース30は、平面視で矩形状を成しており、四方が順に側面30a~30dにより囲まれている。側面30a,30cは、長辺に、側面30b,30dは短辺にそれぞれ対応している。放熱ベース30は、四隅に締結孔33b,33dがそれぞれ形成されている。このような放熱ベース30は、放熱部31と締結孔33b,33dがそれぞれ形成された締結部32b,32dとを含んでいる。放熱部31のおもて面には、破線で示される範囲に、絶縁回路基板70が搭載されるユニット領域31aが設定されている。締結部32b,32dは、締結孔33b,33dを含み、平面視で、側面30aから側面30b、側面30bから側面30c、側面30cから側面30aを横切るような扇型をそれぞれ成している。また、これらの締結部32b,32dの厚さは放熱部31の厚さよりも小さい。ここでも、締結部32b,32dのおもて面の高さは、放熱部31のおもて面の高さよりも低位にしている。なお、締結部32b,32dの平面視の形状は扇型に限らず、例えば、矩形状であってもよい。但し、締結部32b,32dが矩形状である場合、ねじ3による螺合時の応力が矩形の角部に集中してしまうことがある。応力を確実に緩和するためには、締結部32b,32dは角部を含まない扇型であることが好ましい。
【0082】
また、図示を省略するものの、ケース40もまた、放熱ベース30の4つの角部に形成された締結部32b,32dの形状及び位置に対応するように保護部が構成される。このように構成されたケース40を変形例1-2の放熱ベース30に取り付けた場合でも、締結部32b,32dと放熱部31との境界は、平面視で、ケース40の上面開口部46a及び下面開口部46bの外側に位置する。このような放熱ベース30を含む半導体装置では、第1の実施の形態の半導体装置1と同様の効果が得られる。
【0083】
(変形例1-3)
変形例1-3について、図12を用いて説明する。図12は、第1の実施の形態(変形例1-3)の半導体装置に含まれる放熱ベースを示す図である。なお、図12(A)は放熱ベース30の平面図、図12(B)は図12(A)の一点鎖線Y-Yにおける断面図である。
【0084】
変形例1-3の放熱ベース30は、平面視で、第1の実施の形態の放熱ベース30と同様の構成を成している。すなわち、矩形状の放熱部31と当該放熱部31の側面30b,30dから等脚台形状の突出した部分とを含んでいる。但し、変形例1-3の放熱ベース30の厚さは全体的に略等しい。突出した部分には締結孔33b,33dがそれぞれ含まれている。
【0085】
さらに、変形例1-3の放熱ベース30は、締結孔33b,33dよりも(±X方向の)内側であって、突出した部分を横断するように溝部34b,34dがそれぞれ形成されている。溝部34b,34dの外側は締結部32b,32dである。すなわち、溝部34b,34dは、締結部32b,32dと放熱部31との境界を成している。溝部34b,34dの深さは、例えば、放熱ベース30の厚さに対して、30%以上、50%以下であってよい。なお、溝部34b,34dの断面は、例えば、凹状、U字状、V字状のいずれかであってよい。
【0086】
このような変形例1-3の放熱ベース30に対して、第1の実施の形態と同様に、第1半導体チップ75及び第2半導体チップ76が配置された絶縁回路基板70が接合されて、ケース40を取り付ける。この際、締結部32b,32dと放熱部31との境界である溝部34b,34dは、平面視で、ケース40の上面開口部46a及び下面開口部46bの外側に位置する。なお、この際のケース40の枠部41の底面は同一平面を成してよい。
【0087】
図9に示したように、設置対象物2に配置された半導体装置1の締結孔33b,33d及び固定孔44b1,44d1にねじ3を挿通して、ねじ3をねじ孔2aに螺合する。この際、放熱ベース30はねじ3の締結により応力が生じても、溝部34b,34dで締結部32b,32dが変形することで、当該応力が緩和される。このため、放熱ベース30の放熱部31の反りが防止されて、放熱部31に設けられた絶縁回路基板70に生じる反りも防止され、絶縁回路基板70(特に、絶縁板71)中のクラックの発生が低減される。
【0088】
なお、溝部34b,34dは、側面30b,30dに対して平行を成してもよい。例えば、図5において、放熱ベース30の放熱部31と締結部32b,32dと厚さが等しい場合に、放熱部31と締結部32b,32dとの境界の位置に、溝部34b,34dが形成されてよい。または、図10及び図11においても放熱ベース30の放熱部31と締結部32b,32dと厚さが等しい場合に同様に境界に溝部34b,34dが形成されてよい。但し、溝部34b,34dは、ユニット領域31aよりも外側であることを要する。但し、溝部34b,34dもまた、平面視で、曲線であることが好ましい。溝部34b,34dが曲線である場合には、応力が一か所に集中することが防止されて、応力を確実に緩和することができる。
【0089】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態では、第1の実施の形態とは別の形態の放熱ベース30並びにケース40を例に挙げる。まず、第2の実施の形態の放熱ベース30について、図13及び図14を用いて説明する。図13は、第2の実施の形態の半導体装置の含まれる放熱ベースの平面図であり、図14は、第2の実施の形態の半導体装置の含まれる放熱ベースの断面図である。なお、図14(A)は、図13の放熱ベース30の一点鎖線X-Xにおける断面図、図14(B)は、図13の放熱ベース30の一点鎖線Y-Yにおける断面図である。
【0090】
第2の実施の形態の放熱ベース30は、放熱部31と締結部32b,32dとを含んでいる。放熱部31は平面視で矩形状を成しており、四方が順に側面30a~30dにより囲まれている。側面30a,30cは長辺に、側面30b,30dは短辺にそれぞれ対応している。放熱部31のおもて面は、ユニット領域31aを含む放熱領域31bとさらに外側の外周領域31cとが設定されている。放熱部31では、放熱領域31b内の厚さが外周領域31cの厚さよりも厚く構成されている。
【0091】
締結部32b,32dは、放熱部31の側面30b,30dにそれぞれ一体的に設けられている。締結部32b,32dは、第1の実施の形態と同様に、平面視で台形状(等脚台形)を成している。締結部32b,32dの下底側が放熱部31の側面30b,30dに一体的に設けられている。なお、既述の通り、平面視で締結部32bの下底側とは、+X方向側の側面であり、締結部32dの下底側とは、-X方向側の側面である。因みに、平面視で締結部32bの上底側とは、-X方向側の側面であり、締結部32dの上底側とは、+X方向側の側面である。また、締結部32b,32dは、締結孔33b,33dが形成されている。このような締結部32b,32dの厚さは、放熱部31の外周領域31cと同じ厚さである。すなわち、放熱ベース30は、放熱領域31bと外周領域31c及び締結部32b,32dとでは厚さが異なっている。放熱領域31bのおもて面は、外周領域31c及び外周領域31c及び締結部32b,32dのおもて面よりも上位に位置している。
【0092】
次に、このような放熱ベース30に取り付けられた第2の実施の形態のケース40について、図15及び図16を用いて説明する。図15は、第2の実施の形態の半導体装置の長手方向の断面図であり、図16は、第2の実施の形態の半導体装置の短手方向の断面図である。なお、図15及び図16は、図3及び図2の断面位置に対応している。また、図15及び図16でも、制御ワイヤ61、配線ワイヤ62、主電流ワイヤ63並びに制御IC21の図示を省略している。
【0093】
第2の実施の形態のケース40の枠部41の裏面に、ケース40の締結部32b,32dのみならず外周領域31cにも対応する保護部44b,44dが形成されている。このようなケース40を放熱ベース30に取り付けて、配線並びに封止部材80による封止を行って、半導体装置1が得られる。このような半導体装置1は、図15及び図16に示されるように、ケース40の保護部44b,44dが、放熱ベース30の締結部32b,32d及び外周領域31cに重なり、ケース40の固定孔44b1,44d1が放熱ベース30の締結孔33b,33dに合わせられる。また、放熱ベース30上の第1半導体チップ75及び第2半導体チップ76が搭載された絶縁回路基板70はケース40の下面開口部46bからケース40内に収納される。
【0094】
このような半導体装置1を設置対象物2に配置して、締結孔33b,33d及び固定孔44b1,44d1を設置対象物2のねじ孔2aに螺合すると、放熱ベース30の締結部32b,32dは放熱部31よりも厚さが薄いため、応力により変形する。このため、半導体装置1の内部に生じる応力の発生を低減する。したがって、絶縁回路基板70、絶縁回路基板70と放熱ベース30とを接合する接合部材に対するクラックの発生が抑制される。また、ケース40は保護部44b,44dが設けられることで、枠部41の全体の厚さが厚くなる。このため、ケース40の強度が高まり、外部からの衝撃、螺合時の応力に対する耐性が向上する。この結果、半導体装置1の信頼性の低下が抑制される。さらに、第2の実施の形態の放熱ベース30は、第1の実施の形態の放熱ベース30よりも体積を減少させることができる。このため、放熱ベース30のコストを削減でき、半導体装置1の製造における合理化を図ることができる。
【符号の説明】
【0095】
1 半導体装置
2 設置対象物
2a ねじ孔
3 ねじ
10 半導体ユニット
20 プリント基板
21 制御IC
30 放熱ベース
30a~30d 側面
31 放熱部
31a ユニット領域
31b 放熱領域
31c 外周領域
32b,32d 締結部
33b,33d 締結孔
34b,34d 溝部
40 ケース
41 枠部
41a~41d 側壁部
42 底部
42a プリント領域
42b 開口領域
43b,43d 挿通部
44b,44d 保護部
44b1,44d1 固定孔
45a,45b,45c,45d 段差部
46a 上面開口部
46b 下面開口部
50,50a~50e 主電流接続端子
51,51a~51e 外部接続部
52,52a~52e 内部接続部
53 制御端子
54 外部接続部
55 内部接続部
61 制御ワイヤ
62 配線ワイヤ
63 主電流ワイヤ
70 絶縁回路基板
71 絶縁板
72 金属板
73,73a~73e 回路パターン
75 第1半導体チップ
76 第2半導体チップ
80 封止部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16