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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118648
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】超音波トランスデューサ
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/00 20060101AFI20240826BHJP
   A61B 8/00 20060101ALI20240826BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
H04R17/00 330H
A61B8/00
H04R17/00 332
H04R3/00 330
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025038
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】田川 憲男
【テーマコード(参考)】
4C601
5D019
【Fターム(参考)】
4C601BB03
4C601EE04
4C601EE14
4C601GB06
4C601GB15
4C601HH05
4C601HH12
5D019BB19
5D019BB25
5D019BB29
5D019FF03
(57)【要約】
【課題】単一の送受信系で送信波形を動的に変化できる超音波トランスデューサを提供すること。
【解決手段】超音波トランスデューサは、対向する第1主面及び第2主面を有する圧電素子と、圧電素子の第1主面に形成された第1電極層と、圧電素子の第2主面に形成された第2電極層と、第2電極層に形成された複数の圧電層と、複数の圧電層の各々の厚さを制御する制御部とを備え、圧電素子の第1主面は平坦であり、超音波の出射方向に対して垂直である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する第1主面及び第2主面を有する圧電素子と、
前記圧電素子の前記第1主面に形成された第1電極層と、
前記圧電素子の前記第2主面に形成された第2電極層と、
前記第2電極層に形成された複数の圧電層と、
複数の前記圧電層の各々の厚さを制御する制御部と
を備え、
前記圧電素子の前記第1主面は平坦であり、超音波の出射方向に対して垂直である、超音波トランスデューサ。
【請求項2】
前記制御部は、複数の前記圧電層の各々と前記第2電極層との間に印加する電圧を制御する、請求項1に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項3】
対向する第1主面及び第2主面を有する圧電素子と、
前記圧電素子の前記第1主面に形成された第1電極層と、
前記圧電素子の前記第2主面に形成された第2電極層と、
前記第1電極層に形成される複数の貫通孔を有するマスクと
を備え、
前記マスクは、超音波の出射方向に対して垂直、且つ平坦な面を有する、超音波トランスデューサ。
【請求項4】
対向する第1主面及び第2主面を有する複数の圧電素子と、
複数の前記圧電素子の前記第1主面に形成された複数の第1電極層と、
複数の前記圧電素子の前記第2主面に形成された第2電極層と、
複数の前記圧電素子の各々から出射される超音波のオンオフを切り替える制御部と
を備え、
複数の前記圧電素子は、前記超音波の出射方向に対して垂直、且つ平坦な面を有する、超音波トランスデューサ。
【請求項5】
前記制御部は、複数の前記圧電素子の各々に印加する電圧をオンオフする、請求項4に記載の超音波トランスデューサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波トランスデューサに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波イメージングでは、アレイトランスデューサの使用が一般的である。2次元(2D)アレイによる3次元(3D)イメージングはその電子回路の複雑さに起因する製造コスト増が課題となっている。送受信系の簡潔化、例えば送受信を1つの回路で実現する3Dセンサの開発は、小型化と価格軽減につながる。その結果、3Dセンシングの適用性が大幅に広がることになる。
医療系では、センサの小型化はカテーテル画像等の進化に貢献し、センサの低価格化は体表面貼付に適するため常時計測(心臓など)に貢献する。5G通信環境を活用し、空中や水中でのセンサネットワークとしての展開も期待できる。
【0003】
送受信用の単一振動子の超音波が出射する面に、厚さが局所的に不規則に異なる音響マスクを貼付して、空間変調波の送受信により3次元画像を得る技術が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】P. Kruizinga, Pim van der Meulen, A. Fedjajevs, F. Mastik, G. Springeling, Nico de Jong, J. G. Bosch, and G. Leus, “Compressive 3D ultrasound imaging using a single sensor,” Sci Adv, vol. 3, no. 12, 2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した技術では、単一振動子の超音波が出射する面に、凹凸が形成されているマスクが形成される。単一振動子による送受信系では、1回の送受信によって3D情報が1本の時系列信号として圧縮されて獲得される。この時系列信号から3D情報を抽出し、復元するには、媒質中の各点を識別可能な「空間符号化」が必須である。異なる符号化による複数回の送受信により情報量を増やせる一方で、動的な対象では1回の送受信による情報量の多さが重要となる。これらを、トランスデューサの物理的構造から送受信方法に渡って検討しなければならない。
【0006】
単一振動子による送受信系では、エコー信号から効果的に情報を抽出し、復元することが重要である。高解像で高コントラストな特性に加えて、事前の実験等が極力不要で計算上の反復回数、収束条件等のパラメータによる依存性が少なく、雑音にロバストな安定な手法が要請される。
【0007】
本発明は、単一振動子によって送受信できる超音波トランスデューサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態は、対向する第1主面及び第2主面を有する圧電素子と、前記圧電素子の前記第1主面に形成された第1電極層と、前記圧電素子の前記第2主面に形成された第2電極層と、前記第2電極層に形成された複数の圧電層と、複数の前記圧電層の各々の厚さを制御する制御部とを備え、前記圧電素子の前記第1主面は平坦であり、超音波の出射方向に対して垂直である、超音波トランスデューサである。
本発明の一実施形態は、前述の超音波トランスデューサにおいて、前記制御部は、複数の前記圧電層の各々と前記第2電極層との間に印加する電圧を制御する。
本発明の一実施形態は、対向する第1主面及び第2主面を有する圧電素子と、前記圧電素子の前記第1主面に形成された第1電極層と、前記圧電素子の前記第2主面に形成された第2電極層と、前記第1電極層に形成される複数の貫通孔を有する遮音マスクとを備え、前記遮音マスクは、超音波の出射方向に対して垂直、且つ平坦な面を有する、超音波トランスデューサである。
本発明の一実施形態は、対向する第1主面及び第2主面を有する複数の圧電素子と、複数の前記圧電素子の前記第1主面に形成された複数の第1電極層と、複数の前記圧電素子の前記第2主面に形成された第2電極層と、複数の前記圧電素子の各々から出射される超音波のオンオフを切り替える制御部とを備え、複数の前記圧電素子は、前記超音波の出射方向に対して垂直、且つ平坦な面を有する、超音波トランスデューサである。
本発明の一実施形態は、前述の超音波トランスデューサにおいて、前記制御部は、複数の前記圧電素子の各々に印加する電圧をオンオフする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、単一振動子によって送受信できる超音波トランスデューサを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る超音波トランスデューサ100の一例を示す図である。
図2】本実施形態に係る超音波トランスデューサ100aの一例を示す図である。
図3】本実施形態に係る超音波トランスデューサ100bの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態に係る超音波トランスデューサを、図面を参照しつつ説明する。以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施形態は、以下の実施形態に限られない。
なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有するものは同一符号を用い、繰り返しの説明は省略する。
また、本願でいう「XXに基づく」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含む。また、「XXに基づく」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含む。「XX」は、任意の要素(例えば、任意の情報)である。
【0012】
(第1実施形態)
本発明の実施形態に係る超音波トランスデューサを、図面を参照して説明する。超音波センシングにおいて、2次元アレイトランスデューサによる3次元イメージングは有用であるものの、その導入コストから広く普及するに至っていない。本実施形態では、送受信系を一つに制限した超音波センサについて説明する。このように構成することで、電子回路の大幅な簡素化による簡潔で廉価な超音波センサを実現できる。単一の送受信系では、3次元の媒質空間の各点の識別が可能な空間符号化のなされた波形の送受信を行い、計測される1本の時系列から3次元情報を復元する。3次元イメージングに関しては、計算が安定かつ効率的であって、解像度やコントラストの高い方法について説明する。
【0013】
単一の送受信系では、1回の送受信によって3D情報が1本の時系列信号として圧縮されて獲得される。この時系列信号から3D情報を抽出し、復元するには、媒質中の各点を識別可能な「空間符号化」が必須である。異なる符号化による複数回の送受信により情報量を増やせる一方で、動的な対象では1回の送受信による情報量の多さが重要となる。これらを、トランスデューサの物理的構造から送受信方法にわたって検討した。
【0014】
図1は、本実施形態に係る超音波トランスデューサ100の一例を示す図である。超音波トランスデューサ100は、送受信系を一つとするトランスデューサである。超音波トランスデューサ100は、送受信用の1つの振動子の背面に2次元圧電素子アレイを貼付して、貼付した2次元圧電素子アレイそれぞれの厚みを、電圧を印加することによって不規則に変化させる。
【0015】
超音波トランスデューサ100は、第1電極層101と、圧電素子102と、第2電極層103と、圧電層104-11~104-77と、交流電源105-11~105-77とを備える。図1には、超音波トランスデューサ100に加えて、画像化部120が示されている。
【0016】
圧電素子102は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電性を持つ材料によって構成される。圧電素子102の形状の一例は、円柱状であり、所定の高さを有する。図1は、円柱状の圧電素子102を側面から見た場合を示している。圧電素子102は、対向する第1主面FMS及び第2主面SMSを有する。図1において、圧電素子102の対向する第1主面FMS及び第2主面SMSに垂直な方向をX軸とし、第1主面FMS及び第2主面SMSに平行な面をY軸及びZ軸とする。図中の矢印の方向が正方向であり、反対方向が負方向である。
【0017】
第1電極層101は、圧電素子102の第1主面FMSに形成されている。第2電極層103は、圧電素子102の第2主面SMSに形成されている。第1電極層101及び第2電極層103は、金又は銀、銅、錫等の蒸着、メッキ、スパッタリング、ペーストの印刷、焼付け等の導電性を有する材料によって形成される。
【0018】
圧電層104-11~104-77は、圧電性を持つ材料によって構成される。圧電層104-11~104-77は、X軸の負の方向から見た場合に第2電極層103に2次元アレイ状に形成されている。例えば、Y軸方向に7個、Z軸方向に7個の計49個の圧電層が、第2電極層103に形成されている。圧電層104-11~104-77と、第2電極層103との間は、それぞれ交流電源105-11~105-77を介して接続される。
【0019】
制御部106は、交流電源105-11から105-77の各々と配線(図示なし)によって接続されている。制御部106は、交流電源105-11から105-77の各々によって圧電層104-11~104-77の各々に印加される電圧を制御する。制御部106は、交流電源105-11~105-77の各々が圧電層104-11~104-77の各々に印加する電圧を不規則に変化させることが可能である。例えば、制御部106は、圧電層104-11~104-77のうち、電圧を印加する一又は複数の圧電層を不規則に変化させる。
【0020】
交流電源105-11~105-77の各々が、圧電層104-11~104-77の各々に印加する電圧を不規則に変化させることによって、圧電層104-11~104-77に空間的な厚み分布を不規則に与えることができるため、圧電素子102から空間変調された超音波を送信できる。空間的な厚み分布を送受信と同期させて動的に変化させることによって、音響インピーダンスが等しい圧電体の直列接続により「全体が一つの共振器」となり、圧電層104-11~104-77の各々の厚み変化が全体の共振周波数を変化させ、送受信用素子である圧電素子102の共振Q値にも影響を与える。仮想点音源からの球面波の不規則狭帯域化が、送信波形の変調を実現するためである。
【0021】
画像化部120は、超音波トランスデューサ100において画像化媒質内の各位置で取得したエコー波形を取得する。画像化部120は、取得したエコー波形を処理することによって、3次元画像を取得する。例えば、画像化部120は、1回の超音波パルスの送受信によって得られる1次元エコー波形を処理することで、3次元画像を取得する。
【0022】
超音波トランスデューサ100の圧電素子102の第1主面FMSの任意の2点を送受信点とする「双方向伝達関数」が、それらの経路長にのみ依存する近似的なモデルで表現できる。例えば、中心位置を送受信点とし、その軸上に画像化点を置いての実験あるいはシミュレーションによってこの場合の伝達関数を定める。定めた伝達関数を利用して任意の送受信点に対する伝達関数が計算可能である。画像化部120は、伝達関数の計算結果を用いて、3次元画像を取得する。このように構成することによって、電子的に切り替える空間符号化送信それぞれに応じた実験等を不要にできるため、画像化効率を大幅に向上できる。
【0023】
前述した実施形態では、超音波トランスデューサ100において、第2電極層103に圧電層104-11~104-77が形成される場合について説明したが、この例に限られない。例えば、第2電極層103に圧電層104-11~104-nm(nはn>1の整数、mはm>1の整数)が形成されてもよい。また、圧電層104-11~104-77の形状は、三角柱、四角柱などの角柱、円柱などであってもよい。圧電層104-11~104-77において、全てが同じ大きさであってもよいし、少なくとも一部の大きさが異なっていてもよい。
【0024】
本実施形態に係る超音波トランスデューサ100によれば、超音波トランスデューサ100は、対向する第1主面FMS及び第2主面SMSを有する圧電素子102と、圧電素子102の第1主面FMSに形成された第1電極層101と、圧電素子102の第2主面に形成された第2電極層103と、第2電極層103に形成された複数の圧電層104-11~104-nmと、複数の圧電層104-11~104-nmの各々の厚さを制御する制御部106とを備える。圧電素子102の第1主面FMSは平坦であり、超音波の出射方向に対して垂直である。
このように構成することによって、圧電素子102の第2主面SMSに形成された第2電極層103に形成された複数の圧電層104-11~104-nmの各々の厚さを制御できるため、圧電素子102から空間変調された超音波を送信できる。
【0025】
非特許文献1に記載の方法では送受信時にパルスが振動子前面の凹凸部分を通る際、屈折や遮蔽等、複雑な影響を受けるため、画像化対象媒質内の各位置に対する送受信伝達関数を正確に計測しておく必要がある。これに対して、本実施形態に係る超音波トランスデューサ100は、送受信面は平坦な構造を有するため、例えば送受信面の中心軸に沿った正面の一点に対する伝達関数を計測しておくことで、任意の位置に対する伝達関数を計算で求めることが可能となる。
【0026】
超音波トランスデューサ100において、制御部106は、複数の圧電層104-11~104-nmの各々と第2電極層103との間に印加する電圧を制御する。
このように構成することによって、制御部106は、複数の圧電層104-11~104-nmの各々と第2電極層103との間に印加する電圧を制御することによって複数の圧電層104-11~104-nmの各々の厚さを制御できる。複数の圧電層104-11~104-nmの各々の厚さを制御できるため、電子的に変調波を変更できる。つまり、電気的な制御によって動的に送信波形を変えることが可能である。このため、より多くの情報量の獲得が可能である。
【0027】
(第2実施形態)
図2は、本実施形態に係る超音波トランスデューサ100aの一例を示す図である。超音波トランスデューサ100aは、送受信系を一つとするトランスデューサである。超音波トランスデューサ100aは、振動子の前面に不規則な位置に貫通穴の空いた(形成された)遮音マスクを貼付する。
【0028】
超音波トランスデューサ100aは、第1電極層101aと、圧電素子102aと、第2電極層103aと、バッキング(Backing)108aと、遮音マスク109aとを備える。図2には、超音波トランスデューサ100aに加えて、画像化部120aが示されている。
圧電素子102aは、PZT等の圧電性を持つ材料によって構成される。圧電素子102aの形状の一例は、円柱状であり、所定の高さを有する。図2は、円柱状の圧電素子102aを側面から見た場合を示している。圧電素子102aは、対向する第1主面FMS及び第2主面SMSを有する。図2において、圧電素子102aの対向する第1主面FMS及び第2主面SMSに垂直な方向をX軸とし、第1主面FMS及び第2主面SMSに平行な面をY軸及びZ軸とする。図中の矢印の方向が正方向であり、反対方向が負方向である。
【0029】
第1電極層101aは、圧電素子102aの第1主面FMSに形成されている。第2電極層103aは、圧電素子102aの第2主面SMSに形成されている。第1電極層101a及び第2電極層103aは、金又は銀、銅、錫等の蒸着、メッキ、スパッタリング、ペーストの印刷、焼付け等の導電性を有する材料によって形成される。
【0030】
遮音マスク109aは、X軸の正の方向から見た場合に第1電極層101aに形成されている。遮音マスク109aには、複数の貫通孔THが形成されている。複数の貫通孔THは、X軸の正方向から見た場合に円形であってもよいし、三角、四角などの矩形であってもよいし、円形と矩形とが混在していてもよい。また、複数の貫通孔THの大きさは、全て同じであってもよいし、少なくとも一部が異なっていてもよい。遮音マスク109aは、プラスチックなどの遮音性を有する材料によって形成される。
送受信用の振動子である圧電素子102aの第1主面FMSに貫通孔が形成された遮音マスク109aを形成することによって、圧電素子102aの第1主面上で異なる位置から超音波を送信できる。
【0031】
画像化部120aは、超音波トランスデューサ100aにおいて画像化媒質内の各位置で取得したエコー波形を取得する。画像化部120aは、取得したエコー波形を処理することによって、3次元画像を取得する。例えば、画像化部120aは、1回の超音波パルスの送受信によって得られる1次元エコー波形を処理することで、3次元画像を取得する。
【0032】
超音波トランスデューサ100aの圧電素子102aの第1主面FMSの貫通孔の2点を送受信点とする「双方向伝達関数」が、それらの経路長にのみ依存する近似的なモデルで表現できる。例えば、貫通孔の位置を送受信点とし、その軸上に画像化点を置いての実験あるいはシミュレーションによってこの場合の伝達関数を定める。定めた伝達関数を利用して任意の貫通孔の位置に対する伝達関数が計算可能である。画像化部120aは、伝達関数の計算結果を用いて、3次元画像を取得する。このように構成することによって、電子的に切り替える空間符号化送信それぞれに応じた実験等を不要にできるため、画像化効率を大幅に向上できる。
【0033】
前述した実施形態において、遮音マスク109aを機械的に回転させる回転機構を備えるようにしてもよいし、機械的に並進させる並進機構を備えるようにしてもよい。このように構成することによって、廉価で簡素な構造で、動的に送信波形を変えることが可能である。このため、より多くの情報量の獲得が可能である。
【0034】
本実施形態に係る超音波トランスデューサ100aによれば、超音波トランスデューサ100aは、対向する第1主面FMS及び第2主面SMSを有する圧電素子102aと、圧電素子102aの第1主面FMSに形成された第1電極層101aと、圧電素子102aの第2主面SMSに形成された第2電極層103aと、第1電極層101aに形成される複数の貫通孔THを有する遮音マスク109aとを備える。遮音マスク109aは、超音波の出射方向に対して垂直、且つ平坦な面を有する。
このように構成することによって、圧電素子102aの第1主面SMSに形成された遮音マスク109aに形成された複数の貫通孔THの各々から、複数の経路でパルスを伝搬できるため、空間変調された超音波を送信できる。
【0035】
非特許文献1に記載の方法では送受信時にパルスが振動子前面の凹凸部分を通る際、屈折や遮蔽等、複雑な影響を受けるため、画像化対象媒質内の各位置に対する送受信伝達関数を正確に計測しておく必要がある。これに対して、本実施形態に係る超音波トランスデューサ100aは、送受信面は平坦な構造を有するため、例えば送受信面の中心軸に沿った正面の一点に対する伝達関数を計測しておくことで、任意の位置に対する伝達関数を計算で求めることが可能となる。
【0036】
(第3実施形態)
図3は、本実施形態に係る超音波トランスデューサ100bの一例を示す図である。超音波トランスデューサ100bは、送受信系を一つとするトランスデューサである。超音波トランスデューサ100bは、複数の振動子が、2Dアレイ状に形成され、複数の振動子の各々へ印加する電圧のオンオフが切り替えられる。
【0037】
超音波トランスデューサ100bは、第1電極層101b-11~101b-77と、圧電素子102b-11~102b-77と、第2電極層103bと、バッキング108bと、制御部106bとを備える。図1には、超音波トランスデューサ100bに加えて、画像化部120bが示されている。
【0038】
圧電素子102b-11~102b-77は、それぞれPZT等の圧電性を持つ材料によって構成される。圧電素子102b-11~102b-77の形状の一例は、三角柱、四角柱などの角柱、円柱などの柱状であり、所定の高さを有する。圧電素子102b-11~102b-77の各々の大きさは全て同じであってもよいし、少なくとも一部の大きさが異なってもよい。図3は、柱状の圧電素子102b-11~102b-77を側面から見た場合を示している。圧電素子102b-11~102b-77は、それぞれ対向する第1主面FMS及び第2主面SMSを有する。
【0039】
圧電素子102b-11~102b-77は、X軸の正の方向から見た場合に第2電極層103に2次元アレイ状に形成されている。例えば、Y軸方向に7個、Z軸方向に7個の計49個の圧電素子が、第2電極層103に形成されている。図3において、圧電素子102b-11~102b-77の対向する第1主面FMS及び第2主面SMSに垂直な方向をX軸とし、第1主面FMS及び第2主面SMSに平行な面をY軸及びZ軸とする。図中の矢印の方向が正方向であり、反対方向が負方向である。
【0040】
第1電極層101b-11~101b-77は、それぞれ圧電素子102b-11~102b-77の第1主面FMSに形成されている。第2電極層103は、圧電素子102b-11~102b-77の第2主面SMSに形成されている。第1電極層101b-11~101b-77及び第2電極層103は、金又は銀、銅、錫等の蒸着、メッキ、スパッタリング、ペーストの印刷、焼付け等の導電性を有する材料によって形成される。
第1電極層101b-11~101b-77の各々と第2電極層103との間には、それぞれスイッチSW11~SW77を介して交流電源112が接続される。
【0041】
制御部106bは、スイッチSW11~SW77の各々と配線(図示なし)によって接続されている。制御部106bは、スイッチSW11~SW77の各々のオンオフを切り替える。スイッチSW11~SW77の各々のオンオフが切り替えられることによって、圧電素子102b-11~102b-77の各々に印加される電圧を切り替えることができる。圧電素子102b-11~102b-77の各々に印加される電圧を切り替えることによって、電子的に活性化した振動子の配置パターンの切り替えが可能である。
【0042】
画像化部120bは、超音波トランスデューサ100bにおいて画像化媒質内の各位置で取得したエコー波形を取得する。画像化部120bは、取得したエコー波形を処理することによって、3次元画像を取得する。例えば、画像化部120bは、1回の超音波パルスの送受信によって得られる1次元エコー波形を処理することで、3次元画像を取得する。
【0043】
超音波トランスデューサ100bの圧電素子102の振動子対を送受信点とする「双方向伝達関数」が、それらの経路長にのみ依存する近似的なモデルで表現できる。例えば、中心位置を送受信点とし、その軸上に画像化点を置いて実験あるいはシミュレーションによってこの場合の伝達関数を定める。定めた伝達関数を利用して任意の送受信点に対する伝達関数が計算可能である。画像化部120bは、伝達関数の計算結果を用いて、3次元画像を取得する。このように構成することによって、電子的に切り替える空間符号化送信それぞれに応じた実験等を不要にできるため、画像化効率を大幅に向上できる。
【0044】
前述した実施形態では、超音波トランスデューサ100bにおいて、第2電極層103bに圧電素子102b-11~102b-77が形成される場合について説明したが、この例に限られない。例えば、第2電極層103bに圧電素子102b-11~102b-nm(nはn>1の整数、mはm>1の整数)が形成されてもよい。
前述した実施形態において、送信時にある素子群をオンにし、それに対応する受信の際に別の素子群に切り替えるようにしてもよい。つまり、複数の圧電素子102b-11~102b-nmのうち、送信する場合にオンにする圧電素子と、受信する場合にオンにする圧電素子とを異なるようにする。このように構成することによって、送信信号と受信信号との不規則性、多様性を増やすことが可能である。
【0045】
本実施形態に係る超音波トランスデューサ100bによれば、超音波トランスデューサ100bは、対向する第1主面FMS及び第2主面SMSを有する複数の圧電素子102b-11~102b-nmと、複数の圧電素子102b-11~102b-nmの第1主面FMSに形成された複数の第1電極層101b-11~101b-nmと、複数の圧電素子102b-11~102b-nmの第2主面SMSに形成された第2電極層103bと、複数の圧電素子102b-11~102b-nmの各々から出射される超音波のオンオフを切り替える制御部106bとを備える。複数の圧電素子102b-11~102b-nmは、超音波の出射方向に対して垂直、且つ平坦な面を有する。
このように構成することによって、複数の圧電素子102b-11~102b-nmの各々から出射される超音波のオンオフを切り替えることができるため、複数の圧電素子102b-11~102b-nmの各々から空間変調された超音波を送信できる。
【0046】
非特許文献1に記載の方法では送受信時にパルスが振動子前面の凹凸部分を通る際、屈折や遮蔽等、複雑な影響を受けるため、画像化対象媒質内の各位置に対する送受信伝達関数を正確に計測しておく必要がある。これに対して、本実施形態に係る超音波トランスデューサ100は、送受信面は平坦な構造を有するため、例えばシステム中心軸に沿った正面の一点に対する伝達関数を計測しておくことで、任意の位置に対する伝達関数を計算で求めることが可能となる。
【0047】
超音波トランスデューサ100bにおいて、制御部106bは、複数の圧電素子102b-11~102b-nmの各々に印加する電圧をオンオフする。
このように構成することによって、制御部106bは、複数の圧電素子102b-11~102b-nmの各々に印加する電圧を制御することによって複数の圧電素子102b-11~102b-nmの各々の厚さを制御できる。複数の圧電素子102b-11~102b-nmの各々の厚さを制御できるため、電子的に変調波を変更できる。つまり、電気的な制御によって動的に送信波形を変えることが可能である。例えば、複数の圧電素子102b-11~102b-nmのうち、電圧を印加する一又は複数の圧電素子のパターンを予め複数設定し、複数のパターンを不規則に選出して送受信を行うようにしてもよい。これによって、超音波トランスデューサ100bは、より多くの情報量の獲得が可能である。
【0048】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組合わせを行うことができる。これら実施形態及びその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0049】
なお、前述の制御部106、106b、画像化部120、120a、120bは内部にコンピュータを有している。そして、前述した各装置の各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどをいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。
さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
100、100a、100b…超音波トランスデューサ、 101、101a、101b-11~101b-nm…第1電極層、 102、102a、102b-11~102b-nm…圧電素子、 103、103a、103b…第2電極層、 104-11~104-nm…圧電層、 105-11~105-nm、112b…交流電源、 106、106b…制御部、 108a、108b…バッキング、 109a…遮音マスク、 120、120a、120b…画像化部
図1
図2
図3