IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝エネルギーシステムズ株式会社の特許一覧

特開2024-118652太陽光発電システム点検装置および点検方法
<>
  • 特開-太陽光発電システム点検装置および点検方法 図1
  • 特開-太陽光発電システム点検装置および点検方法 図2
  • 特開-太陽光発電システム点検装置および点検方法 図3
  • 特開-太陽光発電システム点検装置および点検方法 図4
  • 特開-太陽光発電システム点検装置および点検方法 図5
  • 特開-太陽光発電システム点検装置および点検方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118652
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】太陽光発電システム点検装置および点検方法
(51)【国際特許分類】
   H02S 50/00 20140101AFI20240826BHJP
   B64U 10/13 20230101ALI20240826BHJP
   B64U 20/87 20230101ALI20240826BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240826BHJP
   B64U 101/26 20230101ALN20240826BHJP
【FI】
H02S50/00
B64U10/13
B64U20/87
H02J3/38 130
B64U101:26
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025045
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 弘達
(72)【発明者】
【氏名】星 岳志
(72)【発明者】
【氏名】高田 光則
(72)【発明者】
【氏名】向野 隆
(72)【発明者】
【氏名】川端 俊一
(72)【発明者】
【氏名】上田 紘司
(72)【発明者】
【氏名】笹川 憲二
(72)【発明者】
【氏名】高久 歴
【テーマコード(参考)】
5F251
5G066
【Fターム(参考)】
5F251KA08
5G066AA10
5G066HB06
(57)【要約】
【課題】太陽光発電パネルの下側の安定した点検が可能な太陽光発電システム点検装置および点検方法を提供する。
【解決手段】太陽光発電パネルの太陽光が照射される面と反対側のパネル下側を撮影するための太陽光発電システム点検装置であって、太陽光発電パネルの間の通路の上空を飛行する飛行移動機構と、パネル下側を撮影する撮影装置と、撮影装置の向きを調整する画角調整機構と、飛行移動機構から下方に向けて延在し、飛行移動機構と画角調整機構とを接続して、撮影装置をパネル下側を撮影可能な高さに位置させる接続部と、を具備している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電パネルの太陽光が照射される面と反対側のパネル下側を撮影するための太陽光発電システム点検装置であって、
前記太陽光発電パネルの間の通路の上空を飛行する飛行移動機構と、
前記パネル下側を撮影する撮影装置と、
前記撮影装置の向きを調整する画角調整機構と、
前記飛行移動機構から下方に向けて延在し、前記飛行移動機構と前記画角調整機構とを接続して、前記撮影装置を前記パネル下側を撮影可能な高さに位置させる接続部と、
を具備したことを特徴とする太陽光発電システム点検装置。
【請求項2】
請求項1記載の太陽光発電システム点検装置であって、
前記飛行移動機構または前記撮影装置の位置を取得するための位置取得機構と、
前記撮影装置を、地上から一定の高さに保持するための高さ制御機構と、
を具備したことを特徴とする太陽光発電システム点検装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の太陽光発電システム点検装置であって、
光の波長範囲が異なる画像を同時または個別に取得する画像取得機構を備えたことを特徴とする太陽光発電システム点検装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の太陽光発電システム点検装置であって、
前記飛行移動機構が、前記太陽光発電パネルの上面を同時に点検するための点検機構を備えたことを特徴とする太陽光発電システム点検装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の太陽光発電システム点検装置であって、
匂いセンサ、非接触温度計、レーザ距離計、レーザ振動計、可聴音マイク、超音波センサのうち、何れか一つ以上のセンサを備えたことを特徴とする太陽光発電システム点検装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の太陽光発電システム点検装置であって、
前記撮影装置により取得したデータを保存し、点検箇所の正常・異常を判定するデータ判定装置を備えたことを特徴とする太陽光発電システム点検装置。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の太陽光発電システム点検装置であって、
ネットワークに接続し、取得したデータを送信する通信装置を備えたことを特徴とする太陽光発電システム点検装置。
【請求項8】
太陽光発電パネルの太陽光が照射される面と反対側のパネル下側を撮影するための太陽光発電システム点検方法であって、
前記太陽光発電パネルの間の通路の上空を飛行する飛行移動機構と、
前記パネル下側を撮影する撮影装置と、
前記撮影装置の向きを調整する画角調整機構と、
前記飛行移動機構から下方に向けて延在し、前記飛行移動機構と前記画角調整機構とを接続して、前記撮影装置を前記パネル下側を撮影可能な高さに位置させる接続部と、
を具備した太陽光発電システム点検装置を用いることを特徴とする太陽光発電システム点検方法。
【請求項9】
請求項8記載の太陽光発電システム点検方法であって、
前記太陽光発電システム点検装置が、
前記飛行移動機構または前記撮影装置の位置を取得するための位置取得機構と、
前記撮影装置を、地上から一定の高さに保持するための高さ制御機構と、
を具備したことを特徴とする太陽光発電システム点検方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、太陽光発電システム点検装置および点検方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電システムの運用および保守点検は、近年の自然災害の激甚化や、電気保安人材の将来的な不足に対する懸念などから、自動点検装置などによる省力化・無人化が求められている。
【0003】
特にメガソーラと呼ばれる、出力が1MWを超える大規模太陽光発電所では、広大かつ環境の異なる敷地内に設置された太陽光発電パネルを効率的に点検する必要がある。また、太陽光発電パネルは、ため池などの水中や山間部、雑草地帯、豪雪地帯に設置される場合もあり、設置環境に対してロバストな点検技術が要求される。
【0004】
従来からドローン等の飛行移動機体(Unmanned aerial vehicle:UAV)を用いた太陽光発電パネルの点検装置、点検方法などが提案されているが(例えば、特許文献1、特許文献2など)、これらの従来手法は、太陽光発電パネルの上面、すなわち太陽光が照射される面の健全性の点検に限定されており、太陽光発電パネル下側の部位についての点検手法は示されていない。
【0005】
太陽光発電パネル下側におけるバックパネルの劣化や焼損、ジャンクションボックスの劣化や焼損、架台の錆や固定ボルトの緩み、ケーブル断線、アース線外れ、虫の巣などの異常発見は、太陽光発電システムの保守点検において重要であり、放置すると発電量の低下、システム全体の寿命低下、自然災害による損壊といった危険につながるおそれがある。また、今後、両面発電パネルの普及が進む可能性があり、太陽光発電パネル下側の点検の必要性は、さらに高まると考えられる。太陽光発電パネル下側の点検装置、点検方法も提案されているが(例えば、特許文献3、特許文献4など)、これらの手法は、地上を走行する点検システムを用いており、設置環境の良好な太陽光発電パネルにおける点検に限定されていた。
【0006】
また、仮にUAVを用いて太陽光発電パネルの下側を撮影しようとすると、UAVを上空約1m以下で低空飛行させる必要があり、UAVの飛行安定性の問題や、太陽光発電パネルとの接触事故の可能性があり、安全性の問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5197642号公報
【特許文献2】特許第6970317号公報
【特許文献3】特許第7118234号公報
【特許文献4】特開2022-177417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
太陽光発電パネルの保守点検は、現場での目視による点検項目が多く、点検作業員の五感や観察力に大きく依存している。特にメガソーラなどの大型システムでは、保守点検に多くの人員・時間を要するという課題がある。
【0009】
また、先述の山間部や雑草地帯、豪雪地帯など、点検作業員のアクセスが難しい場所に設置された太陽光発電システムの場合は、システム全体の健全性を保証することが難しい。さらに感染症の流行などにより、点検作業員が確保できない事態も生じうるため、省人化・無人化に向けた技術開発が進められている。
【0010】
こうした課題に対して、例えばメガソーラを一括して点検する場合、UAVによる空撮で、短時間で効率良く異常を発見する方法が提案されている。しかし、その多くは点検項目として重要な、太陽光発電パネルを設置した地面側からの観察で検知される異常、そして、その検知結果に基いた異常個所の分析などには対応できていない。
【0011】
また、太陽光発電パネルを設置した地面側から観察する場合、設置環境の課題があり、UAVにより観察しようとすると、低空飛行を強いられるため、前述した通り安全性の課題がある。
【0012】
このような課題を解決するためには、UAVを飛行が安定する高さで飛行させ、太陽光発電パネルの設置面側から得られる情報を取得する装置および手法が必要となる。これにより太陽光発電システムを構成する架台、接続箱、ケーブルなどの太陽光発電パネル以外の構成要素、および太陽光発電パネルの背面側などに対して必要な点検項目に安定して対応することができ、システム全体の健全性に関わる異常を発見することができる。
【0013】
以上のように、従来においてはUAVによる空撮では確認できなかった部位の異常を対象にすることで、点検項目、点検範囲を拡大し、さらに自動機と組み合わせることで、点検効率の向上、点検の省人化・無人化が実現することが望まれている。また、地上を走行する車両を用いた太陽光発電パネル下面の点検では、走行路面の状況により、不安定だった撮影や搭載不可だった機能を解消することも望まれている。
【0014】
本発明は、上記した従来の事情に対処してなされたものであり、その目的は、太陽光発電パネルの下側の安定した点検が可能な太陽光発電システム点検装置および点検方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
実施形態の太陽光発電システム点検装置は、太陽光発電パネルの太陽光が照射される面と反対側のパネル下側を撮影するための太陽光発電システム点検装置であって、前記太陽光発電パネルの間の通路の上空を飛行する飛行移動機構と、前記パネル下側を撮影する撮影装置と、前記撮影装置の向きを調整する画角調整機構と、前記飛行移動機構から下方に向けて延在し、前記飛行移動機構と前記画角調整機構とを接続して、前記撮影装置を前記パネル下側を撮影可能な高さに位置させる接続部と、を具備したことを特徴とする。
【0016】
実施形態の太陽光発電システム点検方法は、太陽光発電パネルの太陽光が照射される面と反対側のパネル下側を撮影するための太陽光発電システム点検方法であって、前記太陽光発電パネルの間の通路の上空を飛行する飛行移動機構と、前記パネル下側を撮影する撮影装置と、前記撮影装置の向きを調整する画角調整機構と、前記飛行移動機構から下方に向けて延在し、前記飛行移動機構と前記画角調整機構とを接続して、前記撮影装置を前記パネル下側を撮影可能な高さに位置させる接続部と、を具備した太陽光発電システム点検装置を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の実施形態によれば、太陽光発電パネルの下側の安定した点検が可能な太陽光発電システム点検装置および点検方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係る太陽光発電システム点検装置の基本構成を模式的に示す図。
図2】第1実施形態に係る太陽光発電システム点検装置の変形例の構成を模式的に示す図。
図3】第1実施形態に係る太陽光発電システム点検装置の他の変形例の構成を模式的に示す図。
図4】第1実施形態に係る太陽光発電システム点検装置の他の変形例の構成を模式的に示す図。
図5】第2実施形態に係る太陽光発電システム点検装置の構成を模式的に示す図。
図6】第2実施形態におけるデータ通信内容の例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態に係る太陽光発電システム点検装置および点検方法について、図面を参照して説明する。
【0020】
(第1実施形態)
図1図2は、第1実施形態に係る太陽光発電システム点検装置および点検方法の概略構成を模式的に示す図である。本発明では、先述の通り、太陽光発電システムの保守点検の省人化・無人化を課題としているが、その基本構成を図1に示し、飛行位置や飛行高さの制御を撮影装置近くの装置で実施する構成を図2に示している。
【0021】
例えば、メガソーラと呼ばれる大規模な太陽光発電システムにおいては、多数の太陽光発電パネルが配設されている。図1図2に示す例では、点検対象の太陽光発電パネル1と、これに隣接する太陽光発電パネル2が、通路3を隔てて配列されている。本実施形態では、太陽光発電パネル1の太陽光が直接照射される面の反対側、すなわち太陽光発電パネル1の下側から観察・点検することを可能にするため、太陽光発電パネル1、太陽光発電パネル2の間にある通路3の上空を飛行する点検装置10が、基本構成となる。
【0022】
点検装置10は、通路3上空を飛行する飛行移動機構11、太陽光発電パネル1の下側を撮影する撮影装置12、撮影装置12の撮影方向を所望の方向に向けるための画角調整機構13、飛行移動機構11と画角調整機構13とを接続する接続部14を具備している。また、点検装置10は、撮影位置情報を取得する位置取得装置15、撮影高さを制御するための高さ制御機構16を具備している。図1に示す例は、これらの位置取得装置15、高さ制御機構16は、飛行移動機構11が具備しているものを使用する例について示している。
【0023】
飛行移動機構11は、通路3の設置環境に依らず安定して撮影装置12を運搬することのできる機構である。安定した飛行移動が可能であれば、飛行航路は問わず、例えばドローンやヘリコプターによる自由な航路での飛行、通路3上に設置したレールやケーブル、電子制御航路を伝って移動する飛行が考えられる。飛行移動機構11の移動制御は、人による遠隔操作や航路を学習させることによる自動飛行等があり、その方法は問わない。また飛行移動機構11には太陽光発電パネル1の上面を点検するための点検機構22(図4参照。)を搭載してもよい。点検機構22に用いるカメラの形態は問わず、飛行移動機構11が搭載しているカメラ、一般的なカメラの他、温度測定のためのサーモカメラ等を使用することができる。
【0024】
撮影装置12は、太陽光発電パネル1の下側を撮影するための装置である。撮影装置12が取得するデータについて、画像および動画等の形式は問わない。太陽光発電パネル1の下側を撮影可能であれば、装置の形式は問わず、一般的なカメラの他、全天球カメラやスマートフォン内蔵カメラ、ステレオカメラ等が考えられる。またカメラとして、サーモカメラやマルチスペクトルカメラのように、光の波長範囲が異なる画像を同時または個別に取得する画像取得機構21を用いてもよい。カメラとして画像取得機構21を用いた場合の構成図を図3に示す。
【0025】
画角調整機構13は、撮影装置12(又は画像取得機構21)の向きをある方向に調整し、所望の範囲の画像を取得する。画角調整機構13は、撮影装置12の物理的な固定や電子制御による駆動及び固定等による機構を使用することができ、スタビライザ(ジンバル)、三脚(雲台)等を使用することができる。
【0026】
接続部14は、飛行移動機構11から下方に向けて延在し、飛行移動機構11と画角調整機構13とを接続することにより、太陽光発電パネル1、2の上方において、飛行移動機構11をその姿勢が安定する高さで飛行させながら、撮影装置12が太陽光発電パネル1の下側を撮影可能な位置に配置できるようにする。接続部14は、飛行移動機構11で運搬可能であれば材料や構造は問わず、例えば、単一のゴム紐での接続、複数のゴム紐での接続、プラスチック棒等の剛体による接続、ウインチやモータと併設した長さ可変式の接続、等を用いることができる。
【0027】
位置取得装置15は、撮影装置12の撮影データを点検結果として管理するために撮影した位置と紐づける、飛行移動機構11または撮影装置12の位置情報を取得する装置である。この位置取得装置15としては、例えばGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)が挙げられる。ここでGPSとは、人工衛星を利用した地球上での現在位置を測定するためのシステムのことである。なおGPSは発信機があればどのようなものでもよく、その発信機は例えば飛行移動機構11に内蔵される発信機や外付けの小型発信機等が考えられる。図1では飛行移動機構11に発信機を内蔵した構成を示している。
【0028】
また、位置取得装置15として、例えば、SLAM(Simulated Localization and Mapping)を用いることもできる。ここでSLAMとは、周囲環境の撮像データから環境地図を作成し、同時に環境地図と撮像データを統合することで、位置情報を特定する手法である。SLAMに用いるカメラの種類は問わず、例えばステレオカメラや全天球カメラが挙げられる。図2では位置取得装置15として全天球カメラを搭載した構成を示している。
【0029】
高さ制御機構16は、撮影装置12の上空高さを所望の高さに保持し、常に所望の高さから太陽光発電パネル1の下側を撮影するための機構である。この高さ制御機構16としては、例えば、図1に示すような飛行移動機構11に内蔵された上空高さ測定に基づいた飛行高さ制御が挙げられる。また例えば、図2に示すように、撮影装置12と同一のレベルに配設された高さ測定機構16aと、高さ測定機構16aによって測定される上空高さに基づいて、接続部14の長さを変更する長さ変更機構16bとによって、撮影装置12の高さを一定にする高さ制御機構16を用いることもできる。ここで上空高さの測定方法として、例えばレーザや超音波による計測方法が挙げられる。また、長さ変更機構16bによる接続部14の長さ制御方法としては、例えばウインチや伸縮構造、金属ベルト、ジャッキ等が挙げられる。
【0030】
図4に、上述した基本構成に加えて追加で装置を搭載した構成例を示す。図4に示すように、点検装置10に加えて、目視点検で確認できない異常を検出するためのセンサ23を追加で用いてもよい。目視以外で、点検作業員の五感に頼る点検項目として、例えば焼損や錆により発する匂い、太陽光発電パネル内部の断線による局所的な過熱、接続箱内部の異常音、ボルト締結部の緩み、地滑りによる架台のぐらつき等が挙げられる。これらに対して、匂いセンサ、非接触温度計、可聴音マイク、レーザ振動計、レーザ距離計、超音波センサ等により計測可能であるが、その他のセンサ23を用いてもよい。
【0031】
また、点検装置10に加えて、撮影装置12が撮影したデータを基に異常の有無を判定するデータ判定装置24を備えてもよい。データ判定装置24は撮影装置12から送信される画像または動画データに対して、画像処理または学習を実施し、太陽光発電パネル1の下側に発生する異常を検出する。先述の通り、太陽光発電パネル1の下側では、バックパネルの劣化や焼損、ジャンクションボックスの劣化や焼損、架台の錆や固定ボルトの緩み、ケーブル断線、アース線外れ、虫の巣等多様な異常が発生する。これらを検出可能な画像処理または学習方法が望ましい。例えば、教師無し学習による異常有無の分類や、正常な太陽光発電パネル下側の撮影データを学習させることによる異常検知が挙げられる。
【0032】
以上のように構成された本第1実施形態によれば、次のような(1)~(4)の作用効果を得ることができる。
(1)点検装置10を用いることで、山間部や雑草地帯、豪雪地帯等、設置環境が悪い太陽光発電所において太陽光発電パネル1の下側について画角や撮影位置を安定させて撮影可能である。すなわち、設置環境や飛行環境に依らずロバストなパネル下側点検が可能である。これにより、従来では点検員が実施してきた太陽光発電パネル1の下側の目視点検を代替することができる。
(2)飛行移動機構11の飛行制御を自動化することで、目視点検の自動化が可能である。これにより、点検コストの削減だけでなく遠隔地にある太陽光発電所への出張等によるコストも削減可能である。
(3)画像取得機構21、点検機構22、様々なセンサ23などにより、目視点検で検出不可な異常を検出可能とすることができる。目視点検で検出不可な異常として、例えば太陽光発電パネル1の局所的な過熱、焼損や錆のにおい、接続箱内部の異常音、ボルト締結部の緩み、地滑りによる架台のぐらつき等が挙げられる。これにより、目視点検以外の点検作業も代替可能とすることができる。
(4)データ判定装置24により、パネル下側に発生する異常の有無を判定可能になる。これと位置取得装置15から得た位置情報と紐づけることで、位置に紐づいた異常有無の管理が可能である。これにより、点検結果の管理を簡略化し、維持管理に要するコストを削減することができる。
【0033】
(第2実施形態)
本第2実施形態では、第1実施形態で説明した点検装置10に通信機能を搭載し、データの送受信を可能にした点検装置30について説明する。図5に通信装置31を搭載した点検装置30の概略構成を模式的に示す。なお第2実施形態において、第1実施形態と同様の部分については、第1実施形態と同一の符号を記すことによって説明を簡略化し、または省略する。
【0034】
点検装置30が、第1実施形態の点検装置10と異なる点は、通信装置31を介して点検装置30が取得したデータを送信し、遠隔地用通信装置32で受信するように構成されている点である。図5に示す例では、遠隔地用通信装置32がデータ判定装置24に接続されており、このデータ判定装置24によって、太陽光発電パネル1の下側の異常の有無を判定する構成となっている。
【0035】
図6に通信を介したデータの送受信内容の例を示す。図6に示すように、点検装置30の通信装置31から撮影装置12の撮影データや位置取得装置15の撮影位置等を送信し、遠隔地用通信装置32でデータを受信する。受信したデータは遠隔地で閲覧および解析が可能であり、例えばデータ判定装置24を遠隔地に設置することで遠隔地にて異常の有無を判定可能である。受信したデータに基づいて新たな情報を遠隔地用通信装置32から送信して、通信装置31で受信することが可能である。例えば受信データに基づいて新規の詳細点検用航路を設定し、その航路に沿って飛行移動機構11が飛行して得られた撮影データ等の通信が可能である。また遠隔地用通信装置32が受信したデータはクラウドストレージ33に蓄積され、以降の点検において、点検結果の履歴を表示可能である。
【0036】
以上のように構成された本第2実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果(1)~(4)と同様な作用効果を奏するほか、次のような作用効果(5)および(6)を得ることができる。
(5)通信装置31を介してデータ送受信することで、点検装置30に搭載する装置を削減することができるという利点がある。これにより、飛行移動機構11に要求される可搬重量が低減され、飛行移動機構11の小型化が可能である。
(6)通信装置31を介したデータ送信と自動で航路を設定して飛行する飛行移動機構11を組み合わせることで、太陽光発電所に点検員がいなくても自動で目視点検を実施し、点検結果を閲覧および管理することが可能になる。これにより、太陽光発電所の目視点検に要するコストを削減できる。
【0037】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として掲示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0038】
1……太陽光発電パネル(点検対象)、2……太陽光発電パネル、3……通路、10……点検装置、11……飛行移動機構、12……撮影装置、13……画角調整機構、14……接続部、15……位置取得装置、16……高さ制御機構、16a……高さ測定機構、16b……長さ変更機構、21……画像取得機構、22……点検機構、23……センサ、24……データ判定装置、30……点検装置、31……通信装置、32……遠隔地用通信装置、33……クラウドストレージ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6