(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118672
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】釣り糸洗浄用スプールとその巻き替え装置
(51)【国際特許分類】
A01K 97/00 20060101AFI20240826BHJP
A01K 97/06 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
A01K97/00 Z
A01K97/06 502
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025082
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】523061308
【氏名又は名称】株式会社ネオテック
(74)【代理人】
【識別番号】100100918
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 公治
(72)【発明者】
【氏名】片岡 幸哉
【テーマコード(参考)】
2B109
【Fターム(参考)】
2B109FA08
(57)【要約】
【課題】大物釣りに使用した釣り糸の塩抜きに適した洗浄用スプールを提供する。
【解決手段】洗浄用スプール10は、対向する、中心孔15を有する二枚の円板11,12と、二枚の円板11,12を繋ぐ、中心孔15の同心円上に間隔を空けて配置された複数本の棒状体14と、一方の円板11の他方の円板12に対向する面に立設された、中心孔15と連通するネジ孔131を有するボス13とを備える。円板11,12の中心孔15から挿入した二本のジョイントの先端がボス13に螺合されて、洗浄用スプール10と二本のジョイントが固定され、円板11,12から突出するジョイントの部分が巻き替え装置で支持される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する、中心孔を有する二枚の円板と、
前記二枚の円板を繋ぐ、前記中心孔の同心円上に間隔を空けて配置された複数本の棒状体と、
一方の前記円板の他方の円板に対向する面に立設された、前記中心孔と連通するネジ孔を有するボスと、
を備える釣り糸洗浄用スプール。
【請求項2】
請求項1に記載の釣り糸洗浄用スプールに釣り糸を巻き付ける巻き替え装置であって、
前記釣り糸洗浄用スプールの前記二枚の円板の前記中心孔からそれぞれ挿入されて、一端が前記ボスに螺合固定される二つのジョイントと、
前記ジョイントが固定された前記釣り糸洗浄用スプールの前記ジョイントの部分を回転可能に支持するスプールカバーと、
前記釣り糸が収納されたリールを支持するリール台と、
を備え、
前記ジョイントは、前記ボスに前記一端が固定された状態で、他端が前記円板から突出する長さを有する支軸と、前記支軸の前記円板から突出する支軸部分にそれぞれ遊嵌された係合用ワッシャと、を有し、
前記スプールカバーは、前記釣り糸洗浄用スプールの前記二枚の円板の間隔よりも広い間隔で対向する側壁を備え、
前記側壁には、前記係合用ワッシャを収容して該係合用ワッシャの動きを制限するワッシャ支承部が付設されており、
前記側壁及びワッシャ支承部には、前記ジョイントの前記円板から突出する前記支軸部分を上方から装着可能なU字状溝が形成され、前記支軸部分を前記U字状溝に装着して、前記係合用ワッシャを前記ワッシャ支承部に収容したとき、該係合用ワッシャは、前記支軸の長手方向の動きに追随できなくなる、
巻き替え装置。
【請求項3】
請求項2に記載の巻き替え装置であって、
前記ジョイントの前記支軸部分には、さらに、コイルバネが遊嵌され、前記支軸部分を前記U字状溝に装着したとき、前記コイルバネは、前記スプールカバーの前記側壁と前記釣り糸洗浄用スプールの前記円板との間に配置される、巻き替え装置。
【請求項4】
請求項3に記載の巻き替え装置であって、
前記ジョイントの、前記スプールカバーから突出する前記支軸の先端に回転機を装着し、前記回転機を駆動して前記釣り糸洗浄用スプールを回転させる、巻き替え装置。
【請求項5】
請求項4に記載の巻き替え装置であって、
前記回転機の駆動時に、前記釣り糸洗浄用スプールを前記スプールカバーの前記側壁の間で移動させて前記釣り糸洗浄用スプールに巻き付く釣り糸の巻回厚さを調整する、巻き替え装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣りに使用した釣り糸をリールから巻き替えて洗浄するための洗浄用スプールと、その巻き替えを実施する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
使用後の釣り糸には、塩分等の異物が付着しているため、リールに巻き取ったまま放置していると、釣り糸が劣化し、寿命が短くなる。
それを避けるため、下記特許文献1に記載されているように、リールに収めた使用後の釣り糸を洗浄用のスプールに巻き取り、そのスプールを、水を満たした容器に入れて塩抜きすることが広く行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、マグロ等の大物釣りに使用した釣り糸を効率的に塩抜きできる洗浄用スプールや、その洗浄用スプールに使用後の釣り糸を巻き替える装置は知られていない。
【0005】
本発明は、こうした事情を考慮して創案したものであり、大物釣りに使用した釣り糸の塩抜きに適した洗浄用スプールと、その洗浄用スプールへの釣り糸の巻き替えを効率的に行うことができる巻き替え装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の釣り糸洗浄用スプールは、対向する、中心孔を有する二枚の円板と、前記二枚の円板を繋ぐ、中心孔の同心円上に間隔を空けて配置された複数本の棒状体と、一方の円板の他方の円板に対向する面に立設された、前記中心孔と連通するネジ孔を有するボスと、を備える。
この洗浄用スプールでは、塩抜き時に、洗浄水がスプールの内部にまで入り込み易いため、効率的な塩抜きが可能である。
【0007】
また、本発明の巻き替え装置は、前記釣り糸洗浄用スプールの二枚の円板の中心孔からそれぞれ挿入されて、一端が前記ボスに螺合固定される二つのジョイントと、前記ジョイントが固定された釣り糸洗浄用スプールのジョイントの部分を回転可能に支持するスプールカバーと、釣り糸が収納されたリールを支持するリール台と、を備えている。
そして、前記ジョイントは、前記ボスに一端が固定された状態で、他端が前記円板から突出する長さを有する支軸と、前記支軸の円板から突出する支軸部分に遊嵌された係合用ワッシャと、を有し、また、前記スプールカバーは、釣り糸洗浄用スプールの二枚の円板の間隔よりも広い間隔で対向する側壁を備え、前記側壁には、係合用ワッシャを収容してこの係合用ワッシャの動きを制限するワッシャ支承部が付設され、前記側壁及びワッシャ支承部には、ジョイントの円板から突出する支軸部分を上方から装着可能なU字状溝が形成されている。そして、前記支軸部分をU字状溝に装着し、係合用ワッシャをワッシャ支承部に収容したとき、係合用ワッシャは、支軸の長手方向の動きに追随できなくなる。
この巻き替え装置には、種々の長さの洗浄用スプールを装着することができる。
【0008】
また、本発明の巻き替え装置では、前記ジョイントの支軸部分に、さらに、コイルバネが遊嵌され、前記支軸部分をU字状溝に装着したとき、コイルバネは、スプールカバーの前記側壁と釣り糸洗浄用スプールの円板との間に配置される。
コイルバネは、スプールカバーの側壁の間で左右(側壁に直交する方向)に移動する洗浄用スプールの動きを円滑にする。
【0009】
また、本発明の巻き替え装置では、スプールカバーから突出する前記ジョイントの支軸の先端に回転機を装着し、回転機を駆動して釣り糸洗浄用スプールを回転させることができる。
回転機を使用することで、釣り糸を洗浄用スプールに高速で巻き付けることができる。
【0010】
また、本発明の巻き替え装置では、回転機の駆動時に、釣り糸洗浄用スプールをスプールカバーの側壁の間で移動させて、釣り糸洗浄用スプールに巻き付く釣り糸の巻回厚さを調整することができる。
洗浄用スプールを、スプールカバーの側壁の間で左右(側壁に直交する方向)に動かすことで、洗浄用スプールに巻き付く釣り糸の巻回厚さが、洗浄用スプールの長手方向において略均一になるように調整することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の洗浄用スプールは、大物釣りに使用された長尺の釣り糸が巻き付けられた場合でも、効率的な塩抜きが可能である。
【0012】
また、本発明の巻き替え装置は、種々の長さの洗浄用スプールを装着することが可能である。
【0013】
また、洗浄用スプールに固定する二つのジョイントは、洗浄用スプールのボスを介して一本の棒のように結合されるため、片方のジョイントを回転すれば、他方のジョイント及び洗浄スプールが安定的に回転する。
【0014】
また、この巻き替え装置では、洗浄用スプールに巻き付ける釣り糸の巻回厚さが局所的に厚くならないように簡単に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る巻き替え装置の全体を示す図
【
図3】(a)洗浄用スプールと、(b)その円板とボスとの関係を示す図
【
図5】(a)二つのジョイントを洗浄用スプールに固定する前と、(b)固定した後を示す図
【
図7】スプールカバーに洗浄用スプールを装着した状態を示す図
【
図8】(a)(b)(c)スプールカバーの中で移動する洗浄用スプールを示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る巻き替え装置(この明細書では「リサイクラー」と言う場合がある。)の全体形状を示している。
この装置は、釣り糸洗浄用スプール10(この明細書では「シリンダー」と言う場合がある。)に装着されたジョイント20(201,202)の部分を支持するスプールカバー30(この明細書では「シリンダーカバー」と言う場合がある。)と、リール50を支持するリール台40とを備えている。
【0017】
図1、
図2に示すように、リール台40は、竿を模した竿状体41が固定される固定具42を有し、リール50は、この竿状体41に、釣竿に取付ける要領で装着される。
なお、
図1では、ベイト型リール50を示しているが、スピニングリールでも同様に取り付けることができる。
【0018】
シリンダー10は、
図3(a)に示すように、中心孔15を有する二枚の円板11、12と、二枚の円板11,12を繋ぐ、中心孔15の同心円上に間隔を空けて配置された複数本の棒状体14と、一方の円板11の他方の円板12に対向する面に立設されたボス13とを備えている。ボス13は、円板11の中心孔15と連通するネジ孔131を有している。
図3(b)には、円板11とボス13との関係を示している。他方の円板12はボス13を持たない。
リール50から送り出された釣り糸60(
図1)は、シリンダー10の複数の棒状体14の外周に巻き付けられる。
【0019】
シリンダー10の円板11、12の中心孔15から挿入されてシリンダー10に固定されるジョイント201、202は、
図4に示すように、一端にネジ部27が形成され、他端に頭部28が形成された支軸21,22と、支軸21,22に遊嵌された係合用ワッシャ24と、同様に、支軸21,22に遊嵌されたコイルバネ25と、コイルバネ25の両端で支軸21,22に遊嵌された平ワッシャ26とを有している。
支軸21,22の頭部28は、係合用ワッシャ24の抜け止めの役割を果たしている。また、コイルバネ25の両端の平ワッシャ26は、コイルバネ25の力が作用する面積を拡げる役割を果たしている。
【0020】
図5(a)(b)に示すように、ボス13を有する円板11の中心孔15から挿入されるジョイント201の支軸21は、ボスを持たない円板12の中心孔15から挿入されるジョイント202の支軸21よりも短い。ジョイント201の支軸21は、円板11の中心孔15から挿入され、円板11に固定されたボス13のネジ孔131に先端がネジ込まれてシリンダー10に固定される。
【0021】
一方、ジョイント202の支軸22は、円板12の中心孔15から、その先端がボス13のネジ孔131に達するまで挿入された後、ボス13のネジ孔131に先端がネジ込まれてシリンダー10に固定される(
図5(b))。
シリンダー10に固定された支軸21及び支軸22は、シリンダー10の円板11又は円板12から同程度の長さだけ突出している。
【0022】
シリンダー10に固定されたジョイント201、202の支軸21、22を支持するシリンダーカバー30は、
図6に示すように、支軸21、22を支持する側壁31にU字状の溝33を備えている。また、各側壁31には、ジョイント201、202の支軸21、22に遊嵌された係合用ワッシャ24の動きを規制するためのワッシャ支承部32が付設されており、このワッシャ支承部32を形成する壁面にもU字状の溝321が設けられている。
【0023】
そのため、シリンダー10に固定されたジョイント201、202の支軸21、22が、シリンダーカバー30の側壁31に形成されたU字状の溝33、及び、ワッシャ支承部32に形成されたU字状の溝321に嵌り、且つ、係合用ワッシャ24がワッシャ支承部32に収容されるように、ジョイント201、202をシリンダーカバー30に向けて下降させることで、シリンダー10をシリンダーカバー30にセットすることができる。
図7は、シリンダーカバー30にシリンダー10をセットした状態を示し、
図8(a)は、その平面図を示している。
【0024】
なお、このとき、ジョイント201、202のコイルバネ25と、その前後の平ワッシャ26とは、シリンダーカバー30の側壁31の内側に来る。
シリンダーカバー30にセットされたシリンダー10は、支軸21又は支軸22を長手方向に押したり引いたりすることで、長手方向に動かすことができる。ジョイント201、202のコイルバネ25と、その前後の平ワッシャ26は、そうした動きを円滑にする作用を果たしている。
【0025】
しかし、ワッシャ支承部32に収容された係合用ワッシャ24は、そうした支軸21、22の長手方向の動きに追随することができない。
【0026】
図8(b)(c)は、ジョイント201、202の支軸21、22を押したり引いたりしたときのシリンダーカバー30に対するシリンダー10、係合用ワッシャ24及びコイルバネ25の動きを示している。
【0027】
図1のリサイクラーにより、リール50に巻かれた使用後の釣り糸を塩抜きする場合、リール台40に固定された竿状体41にリール50を装着し、また、釣り糸を巻付けるシリンダー10にジョイント201,202を固定して、それをシリンダーカバー30にセットする。
【0028】
次いで、リール50から引き出した釣り糸60の先端をシリンダー10の棒状体14に係止した後、ジョイント201(又は202)の支軸21(又は22)の頭部28に装着した回転機を駆動して、リール50に収納された釣り糸をシリンダー10に巻き替える。
このとき、シリンダー10に巻付ける釣り糸の巻回厚さが、シリンダー10の長手方向で略均等になるように、回転機で支軸21を押したり引いたりして、シリンダーカバー30の側壁31内におけるシリンダー10の位置を調整する。
【0029】
こうして、リール50の釣り糸をシリンダー10に巻き替えた後、シリンダーカバー30からシリンダー10を取り外す。そして、ジョイント201、202を外したシリンダー10を洗浄水に浸けて塩抜きする。
【0030】
塩抜きが終了すると、シリンダー10に巻き付いた状態の釣り糸を乾燥させ、乾燥が終了すると、そのシリンダー10に再びジョイント201、202を接続した後、リサイクラーのシリンダーカバー30に装着し、リール台40に固定したリール50のリール回転により、シリンダー10に巻き付いた釣り糸をリール50に戻す。
【0031】
このシリンダー10は、釣り糸を巻付ける複数の棒状体14が互いに間隔を空けて配置されているので、塩抜き時に、洗浄水がシリンダー10の内部にまで入り込み易い。そのため、シリンダー10に巻付ける釣り糸の量が多い場合でも、効率的な塩抜きが可能である。従って、大物釣りの釣り糸の塩抜きに適している。
【0032】
また、このリサイクラーは、シリンダー10に固定したジョイント201,202の部分をシリンダカバー30で支える構成であるため、長さの異なる種々のシリンダー10を装着することができる。
【0033】
また、シリンダー10に固定する二つのジョイント201,202は、シリンダー10のボス13を介して一本の棒のように結合されるため、片方のジョイント201の支軸21を回転すれば、他方のジョイント202及びシリンダー10が、揺らぐこと無く安定的に回転する。
【0034】
また、このリサイクラーでは、シリンダー10に巻き付けられる釣り糸の巻回厚さが、シリンダー10の長手方向で略均一になるように調整することが容易である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の釣り糸洗浄用スプール及び巻き替え装置は、釣りに使用した釣り糸の洗浄に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0036】
10 釣り糸洗浄用スプール(シリンダー)
11 円板
12 円板
13 ボス
131 ネジ孔
14 棒状体
15 中心孔
20 ジョイント
201 ジョイント
202 ジョイント
21 支軸
22 支軸
24 係合用ワッシャ
25 コイルバネ
26 平ワッシャ
30 スプールカバー(シリンダーカバー)
31 側壁
32 ワッシャ支承部
321 U字状溝
33 U字状溝
40 リール台
41 竿状体
42 固定具
50 リール
60 釣り糸