(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118673
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】音声調整制御装置、及び音声調整制御方法
(51)【国際特許分類】
B60R 11/02 20060101AFI20240826BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20240826BHJP
H04R 3/04 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
B60R11/02 S
B60R11/02 Z
H04R3/00 310
H04R3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025088
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小田 敬介
【テーマコード(参考)】
3D020
5D220
【Fターム(参考)】
3D020BA10
3D020BA20
3D020BC02
3D020BE04
5D220AA01
5D220AB04
5D220AB08
(57)【要約】
【課題】車両の前方の状態の変化に基づいて車内で再生される音声を調整できる音声調整制御装置及び音声調整制御方法を提供する。
【解決手段】車両の少なくとも前方の画像を取得する画像取得部21と、取得した画像に基づいて車両の前方の道路状態を解析する解析部26と、車両の走行速度を取得する車両速度取得部25と、取得した走行速度で走行する際の走行音を取得する音声取得部22と、前方の道路状態、走行音及び該走行音に対応する調整値がそれぞれ紐づけられた調整値データを記憶部13に記憶する記憶制御部23と、前方の道路状態の解析結果及び取得した走行速度と調整値データとを照合して、前方の画像と走行速度から該前方の道路状態が変わるまでに、解析結果に対応する調整値となるように音声の調整を行う音声調整部27とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されて車内で再生される音声の調整を行う音声調整制御装置であって、
車両の少なくとも前方の画像を取得する画像取得部と、
取得した前記画像に基づいて前記車両の前方の状態を解析する解析部と、
前記車両の走行速度を取得する車両速度取得部と、
取得した走行速度で走行する際の走行音を取得する音声取得部と、
前記前方の状態、前記走行音及び該走行音に対応する調整値がそれぞれ紐づけられた調整値データを記憶部に記憶する記憶制御部と、
前記前方の状態の解析結果及び取得した前記走行速度と前記調整値データとを照合して、前記前方の画像と前記走行速度から該前方の状態が変わるまでに、前記解析結果に対応する前記調整値となるように前記音声の調整を行う音声調整部と、を備える音声調整制御装置。
【請求項2】
前記音声調整部は、前記前方の状態が変わるまでの間に前記音声の調整を開始し、徐々に前記調整値までの調整を行う、請求項1に記載の音声調整制御装置。
【請求項3】
前記解析部が解析する前記前方の状態は、道路の色、道路の濡れ、道路の凹凸及びトンネルの有無のうちの少なくとも一つを含む、請求項1または2に記載の音声調整制御装置。
【請求項4】
前記調整値は、音量とイコライザーレベルとを含む、請求項1または2に記載の音声調整制御装置。
【請求項5】
車両に搭載されて車内で再生される音声の調整を行う音声調整制御方法であって、
車両の少なくとも前方の画像を取得するステップと、
取得した前記画像に基づいて前記車両の前方の状態を解析するステップと、
前記車両の走行速度を取得するステップと、
取得した走行速度で走行する際の走行音を取得するステップと、
前記前方の状態、前記走行音及び該走行音に対応する調整値がそれぞれ紐づけられた調整値データを記憶部に記憶するステップと、
前記前方の状態の解析結果及び取得した前記走行速度と前記調整値データとを照合して、前記前方の画像と前記走行速度から該前方の状態が変わるまでに、前記解析結果に対応する前記調整値となるように前記音声の調整を行うステップと、
を音声調整制御装置が実行する音声調整制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声調整制御装置、及び音声調整制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に車両に搭載されて楽曲等の音声(オーディオ)を再生する音声再生装置が知られている。この種の音声再生装置においては、車両走行中のロードノイズの騒音が邪魔するため、再生された音声がクリアに聴こえないという問題がある。この問題を解決する手法として、特許文献1には、車両の位置情報に応じて、出力(再生)される音声の音量を自動的に調整する技術、すなわち車両がロードノイズの大きい高速道路を走行中、出力音量が自動的に増加するように調整される装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ロードノイズは、車両の走行速度だけでなく、車両の前方の状態(例えば走行する道路状態など)によって大きく変化する。従来の技術では、高速道路を走行中の位置情報と走行速度とに基づき音量を調整するため、例えば道路状態が変化した場合であっても、この道路状態の変化によるロードノイズの変化に対応して音声を調整することは困難であり、この点で改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、車両の前方の状態の変化に基づいて車内で再生される音声を調整できる音声調整制御装置及び音声調整制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、車両に搭載されて車内で再生される音声の調整を行う音声調整制御装置であって、車両の少なくとも前方の画像を取得する画像取得部と、取得した画像に基づいて車両の前方の状態を解析する解析部と、車両の走行速度を取得する車両速度取得部と、取得した走行速度で走行する際の走行音を取得する音声取得部と、前方の状態、走行音及び該走行音に対応する調整値がそれぞれ紐づけられた調整値データを記憶部に記憶する記憶制御部と、前方の状態の解析結果及び取得した走行速度と調整値データとを照合して、前方の画像と走行速度から該前方の状態が変わるまでに、解析結果に対応する調整値となるように音声の調整を行う音声調整部とを備える。
【0007】
また、本発明は、車両に搭載されて車内で再生される音声の調整を行う音声調整制御方法であって、車両の少なくとも前方の画像を取得するステップと、取得した画像に基づいて車両の前方の状態を解析するステップと、車両の走行速度を取得するステップと、取得した走行速度で走行する際の走行音を取得するステップと、前方の状態、走行音及び該走行音に対応する調整値がそれぞれ紐づけられた調整値データを記憶部に記憶するステップと、前方の状態の解析結果及び取得した走行速度と調整値データとを照合して、前方の画像と走行速度から該前方の状態が変わるまでに、解析結果に対応する調整値となるように音声の調整を行うステップと、を音声調整制御装置が実行する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両の前方の状態の変化に基づいて車内で再生される音声を調整できるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る音声調整制御装置を有する音声再生装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、道路の色や状態、走行速度をそれぞれ区分けした一例を示す図である。
【
図3】
図3は、調整値データベースの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る音声調整制御装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照しながら、本発明に係る音声調整制御装置、及び音声調整制御方法の実施形態を説明する。なお、以下の実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0011】
図1は、本実施形態に係る音声調整制御装置を有する音声再生装置の構成を示すブロック図である。
図2は、道路の色や状態、走行速度をそれぞれ区分けした一例を示す図である。
図3は、調整値データベースの一例を示す図である。音声再生装置10は、車両に搭載されて、この車両前方の道路状態(前方の状態)を解析し、解析結果に基づいて、道路状態などの変化に適した音声の調整処理を行う。この音声は、例えば、記録媒体に記録された音声ファイルであるが、ラジオ放送やテレビ放送を受信した音声であってもよい。音声再生装置10は、
図1に示すように、カメラ11と、マイク12と、記憶部13と、スピーカ14と、通信部15と、制御部(音声調整制御装置)20とを備える。
【0012】
カメラ11は、車両に設置されて車両の少なくとも前方の車外映像を撮影する。カメラ11は、例えば、エンジンが始動してから停止するまでの間、つまり車両が動作している間は、車外映像を常時撮影する。車外映像は、例えば30フレーム/秒の画像から構成される動画像である。カメラ11は、撮影した車外映像を制御部20の画像取得部21へ出力する。
【0013】
カメラ11は、例えば車両が前進する場合に、車両の前方の状態を撮影可能である。ここで、前方の状態とは、車両走行時における走行音(例えばロードノイズ)の原因となるものであり、本実施形態では、道路の色、道路の濡れ、道路の凹凸及びトンネルの有無の少なくとも1つを含む。なお、道路の濡れ、道路の凹凸及びトンネルの有無を区別しない場合には、単に道路状態という。一般に、車両が走行時に道路の色や状態が変化すると、この変化に伴って走行音が変化する。道路の色は、道路の構成材の材質により異なるため、道路の路面の色(材質)によって発生する走行音が異なる。道路の濡れは、道路の路面がどの程度濡れているかを示し、例えば、道路が濡れている場合には、水切音を含む走行音が発生する。道路の凹凸は、道路の路面がどの程度平坦であるかを示し、例えば、道路上の凹凸が大きいほど、より大きな走行音が発生する。トンネルの有無は、道路上にトンネルがあるか否かを示す。トンネル内の道路では、音がトンネルの内壁で反射することにより、トンネル外の道路と比べて大きな走行音が発生する。
【0014】
マイク12は、車内において聞こえる走行音を収音するマイクロフォンである。ここで、車内とは搭乗者が搭乗する車室内をいい、エンジンルームやトランクルームを含むものではない。マイク12は、収音した走行音を制御部20の音声取得部22へ出力する。
【0015】
記憶部13は、各種情報を記憶するものであり、例えば、メモリカードなどの記憶媒体や、HDDやSSDなどの不揮発性の外部記憶媒体を用いることができる。記憶部13は、制御部20の記憶制御部23から出力された制御信号に基づいて、上記した道路の色や状態、走行音信号及び調整値をそれぞれ紐づけた調整値データベース(調整値データ)が記憶される。
【0016】
道路の色や状態は、車両がこれから走行する前方の道路の色や状態を示す。本実施形態では、
図2に示すように、道路の色は、例えば灰色、黒、白の3つに区分けされており、それぞれ1~3の番号が付されている。また、道路状態1は、道路の濡れの程度を3つに区分けして規定し、それぞれ1~3の番号が付されている。道路状態2は、道路の凹凸の程度を3つに区分けして規定し、それぞれ1~3の番号が付されている。道路状態3は、トンネルの有無を2つに区分けして規定し、それぞれ1~2の番号が付されている。また、走行速度(車速ともいう)は、上記した色や状態の道路を走行する際の走行速度であり、速度範囲を3つに区分けして規定し、それぞれ1~3の番号が付されている。この
図2は、道路の色や状態、走行速度を複数に区分けした一例を示したものであり、区分けする項目、手法及び数については適宜変更が可能である。
【0017】
走行音信号は、上記した色や状態の道路を走行した際の走行音の信号情報であり、実際に走行した場合に発生するロードノイズの大きさや特徴的な周波数帯域を含む。調整値は、音声再生中に、上記した走行音(ロードノイズ)が発生した場合に、この走行音に対して音声を適切に調整するための情報である。本実施形態では、調整値として、音量(オーディオレベルともいう)と、イコライザーレベルとを調整する。このイコライザーレベルは、走行音の周波数帯域に対応して、特定の周波数帯域部分の強度を強くしたり、弱くしたり調整するものである。
【0018】
調整値データベースは、道路の色や状態、走行音信号及び調整値をそれぞれ紐づけて形成されたデータ群である。調整値データベースは、道路の色や状態及び走行音信号の組み合わせの各パターンに対応して各調整値が事前に設定されている。
図3の例では、調整値データベースには、上記した走行速度及び道路の色の区分けがそれぞれ2であり、道路状態1~3の区分けがそれぞれ1の場合、これらの組み合わせのパターンに対応する走行音信号(ロードノイズ信号)と、音量及びイコライザーレベルとが設定されている。具体的には、音量を10とするとともに、イコライザーレベルとして、100Hz帯域を6dB強くするように設定されている。
【0019】
記憶部13には、例えば、車両の種別及びこの車両に装着されたタイヤの種別に適合した調整値データベースが記憶されている。例えば、季節用タイヤなど新しい種別のタイヤに変更した場合には、このタイヤの種別に適合した調整値データベースを、サーバ装置(不図示)から取得して記憶してもよい。また、調整値データベースには、すべての組み合わせパターンに対応する調整値が事前に記憶されている必要はなく、使用に応じて取得された組み合わせパターン及び走行音信号に対応した調整値を新たに設定し、調整値データベースを補正してもよい。
【0020】
スピーカ14は、再生された音声(音楽)を出力する装置である。スピーカ14は、複数設置されていてもよい。スピーカ14は、制御部20の出力部24から出力された音声信号に基づいて、音声を出力する。
【0021】
通信部15は、無線通信を行う通信ユニットである。通信部15は、インターネットまたは携帯電話回線などいずれの方法で通信を行う。通信部15は、例えばサーバ装置(不図示)と通信可能に構成され、このサーバ装置に記憶された調整値データベースを受信(ダウンロード)可能としてもよい。また、記憶部13に記憶された調整値データベースが補正された場合、この補正された後の調整値データベースをサーバ装置に送信(アップロード)可能としてもよい。
【0022】
制御部20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などで構成された演算処理装置である。制御部20は、記憶されているプログラムをメモリにロードして、プログラムに含まれる命令を実行する。制御部20には図示しない内部メモリが含まれ、内部メモリは制御部20におけるデータの一時記憶などに用いられる。このため、制御部20は、音声再生装置10における音声調整制御方法を実行させる。また、制御部20は、本発明に係る音声調整制御方法を実行するプログラムを動作させるコンピュータである。制御部20は、画像取得部21と、音声取得部22と、記憶制御部23と、出力部24と、車両速度取得部25と、解析部26と、音声調整部27と、音声再生部28と、調整値情報補正部29と、通信制御部30と、これら各部を接続するバス40とを備える。
【0023】
画像取得部21は、カメラ11が撮影した走行中の車両の前方の状態(道路状態等)の画像を取得する。画像取得部21は、取得した画像を記憶部13と解析部26とに送る。
【0024】
音声取得部22は、マイク12が収音した走行中の車両の走行音を取得する。音声取得部22は、取得した走行音をA/D変換した走行音信号を記憶部13に送る。
【0025】
記憶制御部23は、記憶部13に記憶された内容を制御する。具体的には、記憶制御部23は、道路の色や状態、走行音信号及び調整値をそれぞれ紐づけて形成された調整値データベースを記憶部13に記憶する。また、記憶制御部23は、調整値データベースの一部が調整値情報補正部29により補正された場合、この補正された調整値データベースを記憶部13に記憶する。
【0026】
出力部24は、スピーカ14に音声を出力する制御を行う。出力部24は、例えば音声再生部28で再生された各種の音声をスピーカ14に出力する。
【0027】
車両速度取得部25は、CAN(Controller Area Network)などを介して車両の走行速度情報を取得する。車両速度取得部25は、取得した走行速度情報を記憶部13と解析部26と音声調整部27とにそれぞれ送る。
【0028】
解析部26は、取得した画像に基づき、道路の色及び各道路状態を解析する。解析部26は、道路の色及び各道路状態を解析した解析結果を記憶部13と音声調整部27とに送る。解析部26は、取得した画像に基づき、例えば、道路の色が黒く、濡れていて、凹凸のある道路でトンネルが有る場合は、
図3に示すように、「道路の色:2」、「道路状態1:1」、「道路状態2:1」、「道路状態3:1」と解析し、この解析結果を記憶部13と音声調整部27とに送る。また、解析部26は、道路の色や状態が変化するまでの距離と走行速度とから該道路状態等が変化するまでの時間を算出し、この時間も上記した解析結果に含めて送る。
【0029】
音声調整部27は、上記した解析結果に基づき、前方の道路の色や状態に適した調整値に音声を調整する。音声調整部27は、解析結果と記憶部13に記憶された調整値データベースとの照合を行い、前方の道路の色や状態に適した調整値として音量及びイコライザーレベルを取得し、音量とイコライザーレベルとをそれぞれ調整する。上記解析結果の場合には、
図3に示すように、音量を10とするとともに、イコライザーレベルとして、100Hz帯域を6dB強くするように調整する。この場合、音声調整部27は、道路状態等が変化するまでの時間に基づき、道路状態等の変化地点に到達するまでに徐々に目標のオーディオレベル、イコライザーレベルに近づけるように調整する。音声調整部27は、調整された音声を音声再生部28に送る。この場合、音声調整部27は、前方の道路状態が変わるまでの間に音声の調整を開始し、徐々に調整値までの調整を行ってもよい。
【0030】
音声再生部28は、音声調整部27で調整された内容で音声を再生する。より詳しくは、音声再生部28は、記録媒体(不図示)に記録された音声ファイルを読み出し、この音声ファイルに対して、音声調整部27で調整された内容を付加して音声を再生する。再生された音声は、出力部24を介して、スピーカ14から出力される。
【0031】
調整値情報補正部29は、調整値データベースの一部の調整値を補正する。より詳しくは、調整値情報補正部29は、前方の道路の色や状態の組み合わせパターンに対応する調整値が調整値データベースに登録されていない場合には、この組み合わせパターンの道路(路面)を走行した際に取得した走行音に基づき、この走行音に対応する調整値(音量及びイコライザーレベル)を新たに設定し、調整値データベースを補正(更新)する。調整値の設定方法は、運転者(または搭乗者)が音量またはイコライザーレベルを入力部(不図示)により調整した値を調整値として設定してもよい。また、音声調整部27により調整された内容で音声が出力されている状態で、運転者(または搭乗者)が音量またはイコライザーレベルを入力部(不図示)により変更する操作を行った場合、調整値情報補正部29は、変更操作後の音量及びイコライザーレベルを調整値として設定し、調整値データベースを補正(更新)してもよい。
【0032】
通信制御部30は、通信部15を制御する。例えば、車両に取り付けられたタイヤの種別が変更された場合に、通信制御部30は、変更後のタイヤに合致した調整値データベースをサーバ装置から受信(ダウンロード)する制御を行う。また、記憶部13に記憶された調整値データベースが補正(更新)された場合に、補正された調整値データベースをサーバ装置に送信(アップロード)する制御を行ってもよい。
【0033】
次に、制御部20における処理の流れについて説明する。
図4は、本実施形態に係る音声調整制御装置の処理の流れを示すフローチャートである。このフローチャートでは、車両が走行していることを前提とする。
【0034】
制御部20は、音声を再生する(ステップS11)。詳しくは、制御部20は、音声再生部28により、例えば、運転者または搭乗者の操作に基づいて選択された音声ファイルを再生する。次に、制御部20は、車両前方の画像を取得する(ステップS12)。詳しくは、制御部20は、画像取得部21により、カメラ11が撮影した車両前方の車外映像を取得する。制御部20は、画像取得部21により、取得した車両前方の画像を解析部26に送る。
【0035】
次に、制御部20は、画像から道路状態を解析する(ステップS13)。詳しくは、制御部20は、解析部26により、車両前方の画像に基づき、車両の前方の状態として、道路の色や状態を解析する。解析部26は、撮影画像に基づき、例えば、道路の色が黒く、濡れていて、凹凸のある道路でトンネルが有る場合は、「道路の色:2」、「道路状態1:1」、「道路状態2:1」、「道路状態3:1」と解析する。また、解析部26は、撮影画像に基づき、例えば、道路の色が白く、少し濡れていて、平坦な道路でトンネルが無い場合は、「道路の色:3」、「道路状態1:2」、「道路状態2:3」、「道路状態3:2」と解析する。制御部20は、解析部26により、解析結果を音声調整部27に送る。
【0036】
次に、制御部20は、車速から道路状態が変化する位置に到達するまでの時間を算出する(ステップS14)。詳しくは、制御部20は、解析部26により、車両の前方の状態が変化する位置までの距離と車速(走行速度)とから該状態が変化する位置に到達するまでの時間を算出する。制御部20は、解析部26により、算出した時間を解析結果に含めて音声調整部27に送る。
【0037】
次に、制御部20は、解析結果及び車速と調整値データベースとの照合を行う(ステップS15)。詳しくは、制御部20は、音声調整部27により、記憶部13に記憶された調整値データベースと解析結果及び車速とを照合する。この調整値データベースは、上記のように、道路の色や状態を含む前方の状態と、この前方の状態の道路を所定の車速で走行した際の走行音信号と、この走行音信号に対応する再生音声の調整値をそれぞれ紐づけて形成されたデータ群である。
【0038】
次に、制御部20は、解析結果及び車速に紐づけられた調整値が調整値データベースにあるか否かを判定する(ステップS16)。詳しくは、制御部20は、音声調整部27により、照合した調整値データベースに、前方の道路の色や状態に適した調整値として音量及びイコライザーレベルが規定されているか否かを判定する。この判定において、解析結果及び車速に紐づけられた調整値が調整値データベースに無い場合(ステップS16;No)には、処理はステップS17に進む。また、解析結果及び車速に紐づけられた調整値が調整値データベースにある場合(ステップS16;Yes)には、処理はステップS18に進む。
【0039】
次に、制御部20は、解析結果に該当する道路状態の位置における走行中の走行音を取得し、この走行音に対応する調整値により調整値データベースを補正(更新)する(ステップS17)。すなわち、制御部20は、前方の道路の色や状態の組み合わせパターンに対応する調整値が調整値データベースに規定されていない場合には、この組み合わせパターンに対応する調整値を調整値データベースに新たに設定する。詳しくは、制御部20は、音声取得部22により、解析結果に該当する道路状態の位置を走行中の走行音を取得するとともに、調整値情報補正部29により、この取得した走行音(走行音信号)に基づき、この走行音に対応する調整値(音量及びイコライザーレベル)を新たに設定し、調整値データベースを補正する。制御部20は、調整値データベースを補正した後、処理をステップS12に戻す。
【0040】
また、制御部20は、道路状態が変化する位置に到達するまでに調整値に基づいて音声を調整する(ステップS18)。詳しくは、制御部20は、音声調整部27により、前方の道路の色や状態に適した調整値として音量及びイコライザーレベルを取得し、道路状態が変化する位置に到達するまでに調整値に基づいて音声を調整する。
図3に示す例では「走行速度:2」において、「道路の色:2」、「道路状態1:1」、「道路状態2:1」、「道路状態3:1」と解析された場合、音量を10とするとともに、イコライザーレベルとして、100Hz帯域を6dB強くするように調整する。この構成によれば、車両走行中に、車両前方の道路状態を解析して、道路状態が変化する位置に車両が到達するまでに再生される音声の音量及びイコライザーレベルの調整を徐々に実施することで、例えば、道路状態の変化が激しい高速道路でも自然にクリアな音声を聴くことができる。
【0041】
次に、制御部20は、音声の再生が終了したか否かを判定する(ステップS19)。詳しくは、制御部20は、音声再生部28により、選択された音声ファイルの再生が終了したか否かを判定する。この判定において、音声の再生が終了していなければ(ステップS19;No)、処理をステップS12に戻す。また、音声の再生が終了していれば(ステップS19;Yes)、処理を終了する。
【0042】
以上、本実施形態に係る音声調整制御装置は、車両に搭載されて車内で再生される音声の調整を行うものであって、車両の少なくとも前方の画像を取得する画像取得部21と、取得した画像に基づいて車両の前方の道路状態を解析する解析部26と、車両の走行速度を取得する車両速度取得部25と、取得した走行速度で走行する際の走行音を取得する音声取得部22と、前方の道路状態、走行音及び該走行音に対応する調整値がそれぞれ紐づけられた調整値データを記憶部13に記憶する記憶制御部23と、前方の道路状態の解析結果及び取得した走行速度と調整値データとを照合して、前方の画像と走行速度から該前方の道路状態が変わるまでに、解析結果に対応する調整値となるように音声の調整を行う音声調整部27とを備える。この構成によれば、車両走行中に、車両前方の道路状態を解析して、道路状態が変化する位置に車両が到達するまでに再生される音声の音量及びイコライザーレベルの調整を徐々に実施することで、例えば、道路状態の変化が激しい高速道路でも自然にクリアな音声を聴くことができる。
【0043】
また、本実施形態に係る音声調整制御装置において、音声調整部27は、前方の道路状態が変わるまでの間に音声の調整を開始し、徐々に調整値までの調整を行うため、音声が急激に調整されることが防止され、自然にクリアな音声を聴くことができる。
【0044】
また、本実施形態に係る音声調整制御装置において、解析部26が解析する前方の状態は、道路の色、道路の濡れ、道路の凹凸及びトンネルの有無のうちの少なくとも一つを含むため、車両がこれから走行する前方の状態を正確に解析することができる。
【0045】
また、本実施形態に係る音声調整制御装置において、調整値は、音量とイコライザーレベルとを含むため、車両の前方の道路状態に適した音声に容易に調整することができる。
【0046】
これまで本発明に係る音声調整制御装置について説明したが、上述した実施形態以外にも種々の異なる形態にて実施されてよい。図示した音声調整制御装置及び音声再生装置の各構成要素は、機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていなくてもよい。すなわち、各装置の具体的形態は、図示のものに限られず、各装置の処理負担や使用状況などに応じて、その全部または一部を任意の単位で機能的または物理的に分散または統合してもよい。
【0047】
音声調整制御装置の構成は、例えば、ソフトウェアとして、メモリにロードされたプログラムなどによって実現される。上記実施形態では、これらのハードウェアまたはソフトウェアの連携によって実現される機能ブロックとして説明した。すなわち、これらの機能ブロックについては、ハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、または、それらの組み合わせによって種々の形で実現できる。
【0048】
上記した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものを含む。さらに、上記した構成は適宜組み合わせが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において構成の種々の省略、置換または変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
10 音声再生装置
11 カメラ
12 マイク
13 記憶部
20 制御部(音声調整制御装置)
21 画像取得部
22 音声取得部
23 記憶制御部
25 車両速度取得部
26 解析部
27 音声調整部
28 音声再生部
29 調整値情報補正部