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特開2024-118674ポリヒドロキシアルカノエートの製造方法
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  • 特開-ポリヒドロキシアルカノエートの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118674
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】ポリヒドロキシアルカノエートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 7/62 20220101AFI20240826BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20240826BHJP
【FI】
C12P7/62
C12N1/20 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025089
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣田 翔悟
(72)【発明者】
【氏名】猪狩 尊史
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 康祐
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AD83
4B064CA02
4B064CC03
4B064CC09
4B064CC30
4B064CE02
4B064CE03
4B064CE16
4B064DA16
4B065AA01X
4B065AC14
4B065BB10
4B065BB40
4B065BC06
4B065CA12
4B065CA54
4B065CA60
(57)【要約】
【課題】培養液の単位量あたりのPHAの生産量を保持したまま、PHA産生微生物であるカプリアビダス属に属する細菌の培養に伴う発泡を抑制して、PHAのバッチ生産量を増やすこと。
【解決手段】ポリヒドロキシアルカノエート産生微生物を、炭素源を含む培養液中で培養することによるポリヒドロキシアルカノエートの製造方法であって、前記微生物がカプリアビダス(Cupriavidus)属に属する細菌であり、前記培養中、酸素濃度が50~100体積%のガスを前記培養液中に通気する工程Bを含む、ポリヒドロキシアルカノエートの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリヒドロキシアルカノエート産生微生物を、炭素源を含む培養液中で培養することによるポリヒドロキシアルカノエートの製造方法であって、
前記微生物がカプリアビダス(Cupriavidus)属に属する細菌であり、
前記培養中、酸素濃度が50~100体積%のガスを前記培養液中に通気する工程Bを含む、ポリヒドロキシアルカノエートの製造方法。
【請求項2】
前記培養中、前記工程Bの前に酸素濃度が18~25体積%のガスを前記培養液中に通気する工程Aを含む、請求項1に記載のポリヒドロキシアルカノエートの製造方法。
【請求項3】
前記工程Bにおける前記ガスの通気量が0.01~0.20vvmである、請求項1に記載のポリヒドロキシアルカノエートの製造方法。
【請求項4】
前記工程Aにおける前記ガスの通気量が0.20~0.40vvmである、請求項2に記載のポリヒドロキシアルカノエートの製造方法。
【請求項5】
前記炭素源が、油脂、廃食油、グリセリド及び脂肪酸からなる群より選択される1種以上を含む、請求項1~4の何れか1項に記載のポリヒドロキシアルカノエートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリヒドロキシアルカノエートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SDGsをはじめとした持続可能性への世界的な関心の高まりや、海洋マイクロプラスチック問題のような環境問題に対する関心の高まりを背景に、包装及び食品サービス、生物医学、農業等の産業を中心に、既存の石油由来の非生分解性プラスチックを生分解性材料に転換することが推進されている。近年、活発に産業生産が開始されている生分解性材料としては、例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシアルカノエート(以下、PHAと称する場合がある)等が挙げられる。これらのうち、PHAは、広範な微生物によって生成されるポリエステル型有機分子ポリマーであり、生分解性を有する熱可塑性高分子である。また、PHAは再生可能資源から産生されうる。これらのことから、PHAを環境調和型素材又は生体適合型素材として工業的に生産し、多様な産業で利用する試みが行われている。
【0003】
PHAの製造には、PHA産生能力を有する微生物を培養して当該微生物にPHAを蓄積させる方法が行なわれており、例えば、特許文献1-3に示されるように生産性の効率化を向上する取り組みがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-080529号公報
【特許文献2】特開2009-077678号公報
【特許文献3】国際公開第2014/115815号
【0005】
【非特許文献1】Wilde, E., Schlegel, H.G. Oxygen tolerance of strictly aerobic hydrogen-oxidizing bacteria. Antonie van Leeuwenhoek 48, 131-143 (1982)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
PHA産生能力を有する微生物の培養の際の培地としては、微生物の成長増殖に資する栄養源を含んだ液体の培地(培養液)が多用され、微生物の良好な培養のために培養液への通気及び培養液の攪拌が行われるところ、培養液への通気及び培養液の攪拌に伴う発泡が多くの微生物培養プロセスにおいて課題となっている。発泡を抑制しない場合には、培養槽に充填し得る培養液量の低減、発泡過剰によるオーバーフローによる培養液のロス等、正常な培養操作は不可能となる。
【0007】
そのため、発泡を抑制する方法として、一般的に、消泡剤の添加によって泡を抑制する化学的方法、超音波を泡面に充て消泡させる物理的方法が用いられている。しかし、消泡剤の添加により、酸素移動速度を低下させる等培養プロセスそのもののみならず、培養生産物の分離精製操作においても樹脂の劣化等の悪影響を及ぼすことが知られ、また、超音波を泡面に充てることにより、泡のみならず微生物菌体自体を破壊することが知られている。このように、一般的な発泡を抑制する方法には、培養生産そのものに悪影響を及ぼし得る短所がある。
【0008】
本発明は、以上に鑑み、培養液の単位量あたりのPHAの生産量を保持したまま、PHA産生微生物であるカプリアビダス属に属する細菌の培養に伴う発泡を抑制して、PHAのバッチ生産量を増やすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、カプリアビダス属に属する細菌の培養液中に高酸素濃度のガスを通気することで、十分なPHAの生産量を保持したまま、培養に伴う発泡を抑制できることを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち本発明は、ポリヒドロキシアルカノエート産生微生物を、炭素源を含む培養液中で培養することによるポリヒドロキシアルカノエートの製造方法であって、前記微生物がカプリアビダス(Cupriavidus)属に属する細菌であり、前記培養中、酸素濃度が50~100体積%のガスを前記培養液中に通気する工程Bを含む、ポリヒドロキシアルカノエートの製造方法に関する。
前記ポリヒドロキシアルカノエートの製造方法において、前記培養中、前記工程Bの前に酸素濃度が18~25体積%のガスを前記培養液中に通気する工程Aを含んでもよい。
前記ポリヒドロキシアルカノエートの製造方法において、前記工程Bにおける前記ガスの通気量が0.01~0.20vvmであってもよい。
前記ポリヒドロキシアルカノエートの製造方法において、前記工程Aにおける前記ガスの通気量が0.20~0.40vvmであってもよい。
前記ポリヒドロキシアルカノエートの製造方法において、前記炭素源が、油脂、廃食油、グリセリド及び脂肪酸からなる群より選択される1種以上を含んでもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、培養液の単位量あたりのPHAの生産量を保持したまま、PHA産生微生物であるカプリアビダス属に属する細菌の培養に伴う発泡を抑制して、PHAのバッチ生産量を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】カプリアビダス属に属する細菌の培養中の総液量の経時変化を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施態様を詳細に説明するが、本発明はこれら実施態様に限定されるものではない。
【0014】
本発明の実施態様は、ポリヒドロキシアルカノエート産生微生物を、炭素源を含む培養液中で培養することによるポリヒドロキシアルカノエートの製造方法であって、前記微生物がカプリアビダス(Cupriavidus)属に属する細菌であり、前記培養中、酸素濃度が50~100体積%のガスを前記培養液中に通気する工程Bを含む、ポリヒドロキシアルカノエートの製造方法に関する。
【0015】
(ポリヒドロキシアルカノエート)
本開示におけるPHAとしては、微生物が生産し得るポリヒドロキシアルカノエートである限り特に限定されないが、1種のヒドロキシアルカノエートから構成される単独重合体であってもよいし、2種以上のヒドロキシアルカノエートから構成される共重合体であってもよい。ポリマーとしての応用範囲が広いという観点から、少なくとも3-ヒドロキシアルカノエート単位を含むPHAが好ましく、3-ヒドロキシアルカノエート単位の単独重合体、又は、3-ヒドロキシアルカノエート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体がより好ましい。
【0016】
例えば、炭素数4~16の3-ヒドロキシアルカノエートから選択される1種のモノマーの単独重合体、炭素数4~16の3-ヒドロキシアルカノエートから選択される少なくとも1種のモノマーとその他のヒドロキシアルカノエート(例えば、炭素数4~16の4-ヒドロキシアルカノエート、乳酸等)の共重合体、及び、炭素数4~16の3-ヒドロキシアルカノエートから選択される2種以上のモノマーの共重合体等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
より具体的には、例えば、3-ヒドロキシブチレート(略称:3HB)のホモポリマーであるP(3HB)、3HBと3-ヒドロキシ吉草酸(略称:3HV)の共重合体P(3HB-co-3HV)(略称:P3HB3HV)、3HBと3-ヒドロキシヘキサン酸(略称:3HH)の共重合体P(3HB-co-3HH)(略称:P3HB3HH)、3HBと4-ヒドロキシブチレート(略称:4HB)の共重合体P(3HB-co-4HB)、乳酸(略称:LA)を構成成分として含むPHA、例えば3HBとLAの共重合体P(LA-co-3HB)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
これらのなかでも、P3HB3HV及びP3HB3HHが好ましく、P3HB3HHが特に好ましい。
【0019】
なお、生産されるPHAの種類は、使用する微生物の保有するあるいは別途導入されたPHA合成酵素遺伝子の種類や、その合成に関与する代謝系の遺伝子の種類、培養条件などによって適宜選択しうる。
【0020】
(カプリアビダス属に属する細菌)
ポリヒドロキシアルカノエート産生微生物は、PHAを生産する能力を有する微生物であるところ、ポリヒドロキシアルカノエート産生微生物として、カプリアビダス属に属する細菌を用いることができる。当該細菌の中でも、多量のPHAを蓄積可能であるため、カプリアビダス・ネケータ(Cupriavidus necator)が好ましい。
【0021】
当該カプリアビダス属に属する細菌は、PHAを生産するため、PHA合成酵素遺伝子を有する必要があるが、PHA合成酵素遺伝子を本来的に有する天然から単離された微生物や菌株の寄託機関(例えば、IFO、ATCC等)に寄託されている微生物、又はそれらから調製し得る変異体や形質転換体等を使用できる。変異体や形質転換体としては、特に、本来PHAの生産能力を有しない細菌、又はPHAの生産量が低い細菌について、当該細菌に目的とするPHA合成酵素遺伝子及び/又はその変異体を導入して得られる形質転換体が挙げられる。
【0022】
(PHA合成酵素遺伝子)
形質転換により導入されるPHA合成酵素遺伝子としては特に限定されず、Aeromonas caviae、Aeromonas hydrophila、Pseuromonas SP 61-3、Cupriavidus necator由来のPHA合成酵素遺伝子や、それらの改変体などが挙げられる。前記改変体とは、1以上のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入、又は置換されたアミノ酸配列を有するPHA合成酵素をコードする塩基配列のことをいう。
【0023】
(培養)
カプリアビダス属に属する細菌を、炭素源を含む培養液中で培養することで、その微生物の体内にPHAを蓄積させることができる。本開示において、「培養」とは、カプリアビダス属に属する細菌にポリヒドロキシアルカノエートを高濃度に蓄積させることを目的に行う最終段階の「本培養」を指す。「本培養」の前に行う「前培養」及び「種母培養」は、本開示における「培養」には含まれない。
【0024】
培養の条件は、炭素源を含む培養液を用いること、及び培養中に酸素濃度が50~100体積%のガスを培養液中に通気する工程Bを含むこと以外は、通常の微生物培養法に従うことができ、培養スケール、攪拌条件、培養温度、培養時pH、及び培養時間などは特に限定されない。培養にあたっては、炭素源を含む培養液にカプリアビダス属に属する細菌を混合して、攪拌、振とう等により分散させることが好ましい。
【0025】
(培養液)
前記培養液としては、微生物の成長増殖に資する栄養源を含んだ液体の培地であれば良い。前記培養液は、炭素源の他、窒素源、リン源、硫黄源、無機塩類、その他の有機栄養源を含むことが好ましい。前記培養液は、発泡抑制のために消泡剤を添加することもできる。
【0026】
前記炭素源としては、カプリアビダス属に属する細菌が資化可能な原料であれば、特に限定されず、例えば、油脂、廃食油、グリセリド、脂肪酸、グリセロール、糖類、並びにペプトン、肉エキス、酵母エキス等を含むその他の有機炭素等が挙げられる。
【0027】
また、本開示に係るカプリアビダス属に属する細菌が二酸化炭素、一酸化炭素、メタン、メタノール、エタノール等のガスやアルコール類を利用可能である場合、これらを炭素源として使用することもできる。
【0028】
前記炭素源は、油脂、廃食油、グリセリド及び脂肪酸からなる群より選択される1種以上を含むことが好ましい。これらの炭素源は、それ自体及びそれらの炭素源の微生物による分解物が、泡の薄膜を形成し得ることから発泡の大きな原因になるところ、本開示のポリヒドロキシアルカノエートの製造方法は、カプリアビダス属に属する細菌の培養に伴う発泡を抑制できるので、このような発泡の大きな原因になり得る炭素源を用いる場合に好適である。
【0029】
前記油脂は、構成脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物であるトリグリセリドを含む。構成脂肪酸は、1つ以上の炭素-炭素不飽和結合を有する不飽和脂肪酸、及び/又は、炭素-炭素不飽和結合を持たない飽和脂肪酸を含み得る。前記油脂としては、特に限定されず、動物性油脂、植物性油脂、それらの混合油脂、エステル交換油、分別油、又はそれらの精製副産物等を使用でき、これらの油脂を単独又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0030】
動物性油脂の具体例としては、牛脂、豚脂、乳脂、魚油;これらの油脂の分別油、硬化油、及びエステル交換油;並びに、その構成成分である脂肪酸、脂肪酸塩、脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0031】
植物性油脂の具体例としては、大豆油、菜種油、ひまわり油、オリーブ油、ゴマ油、キャノーラ油、綿実油、米油、サフラワー油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、シア脂、サル脂、イリッペ脂、カカオ脂、ヤトロファ油、コーン油、ナッツ油等が挙げられる。これらの植物性油脂、これらの植物性油脂の混合油脂、エステル交換油、分別油等の中でも、パーム核油、ヤシ油、及びこれらの油脂を分別して得られる分別油脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種の油脂が好ましい。
【0032】
分別油脂としては、パーム油やパーム核油を分別した低融点分画であるパームオレイン、パームダブルオレイン、パーム核油オレイン等が挙げられる。
【0033】
前記油脂の構成脂肪酸は、炭素数2~4の短鎖脂肪酸、炭素数5~12の中鎖脂肪酸、炭素数12以上の長鎖脂肪酸を含む。中でも、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、パルミトレイン酸、ヘプタデカン酸、オレイン酸、リノール酸、エルカ酸、及びリノレン酸からなる群より選択される少なくとも3種類の構成脂肪酸を含む油脂が好ましい。更には、パルミトレイン酸、ヘプタデカン酸、オレイン酸、リノール酸、エルカ酸、及びリノレン酸からなる群より選択される少なくとも2種類の構成脂肪酸を含む油脂が特に好ましい。
【0034】
廃食油は、食用油のうち、調理等の使用の有無にかかわらず、廃棄される油脂をいう。
【0035】
グリセリドとしては、トリ-、ジ-、モノ-グリセリドの何れでもよく、ステアリングリセリド、パルミチングリセリド、ラウリングリセリド等が挙げられる。
【0036】
脂肪酸としては、遊離脂肪酸、脂肪酸塩、及び脂肪酸エステル等が挙げられ、これらを単独又は混合物で用いることができる。用いる微生物が代謝経路を持つ脂肪酸類であれば本開示において好適に用い得ることが可能であり、微生物が利用する際に加水分解する必要が無いことから、微生物が利用しやすい形態としては油脂類より脂肪酸類の方がより好ましい。脂肪酸としては、具体的には、例えば、ラウリン酸、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸やそれらの誘導体等が挙げられる。
【0037】
前記糖類としては、水への溶解度が高い糖質が好ましく、例えば、グルコース、フルクトース、シュークロース、及びキシロース等が挙げられる。
【0038】
前記炭素源としては、環境への負荷を考慮し、非石油由来であることが好ましく、一般的に動植物油類及び動植物油由来のものであることが好ましい。また、食料問題への影響を考慮し、非可食用途のものを用いることが更に好ましい。
【0039】
炭素源の培養液への添加方法は、特に限定されず、一度に大量に添加する、分割して添加する、連続的に、断続的に又は間欠的に添加する(連続添加、断続添加又は間欠添加)等の方法が考えられるが、カプリアビダス属に属する細菌を含む培地に、炭素源を連続添加若しくは断続添加しながら行うこと、又は連続添加しながら行うことが好ましい。ここで「連続添加」とは、経時的に途切れることなく継続して添加する態様をいい、「断続添加」とは、断続的に、一時的な休止期間を置きながら繰り返し添加する態様をいう。
【0040】
炭素源を連続添加する時の添加量は特に限定されないが、培地中の炭素源濃度が一定範囲内に収まるように留意しながら炭素源を添加することが望ましい。
【0041】
炭素源を含む培養液の調製のため、培養液中への炭素源のPHAの平均時間生産量1.5g/L/h以上が達成されるように酸素移動速度を制御し、且つ、上記平均時間生産量が達成されるように炭素源を供給することが好ましい。ここで、PHAの平均時間生産量とは、培養開始を0(h)とし培養終了時(A(h))における培養液中のPHA濃度(B(g/L))からB/A(g/L/h)として計算する。
【0042】
窒素源としては、例えば、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等のアンモニウム塩の他、硝酸、硝酸塩、亜硝酸塩、ペプトン、肉エキス、酵母エキス等が挙げられる。
【0043】
リン源としては、リン酸2水素カリウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸マグネシウム、リン酸アンモニウム等のリン酸塩の他、無機リン酸、ペプトン、肉エキス、酵母エキス等が挙げられる。
【0044】
無機塩類としては、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、その他微量金属元素(鉄、コバルト、ニッケル、銅等)の塩化物、リン酸化物、硝酸化物、亜硝酸化物、硫酸化物、亜硫酸化物等が挙げられる。
【0045】
その他の有機栄養源としては、例えば、グリシン、アラニン、セリン、スレオニン、プロリン等のアミノ酸;及びビタミンB1、ビタミンB12、ビタミンC等のビタミン等が挙げられる。
【0046】
(工程B)
本開示のポリヒドロキシアルカノエートの製造方法は、カプリアビダス属に属する細菌の培養中、酸素濃度が50~100体積%のガスを培養液中に通気する工程Bを含む。
【0047】
非特許文献1において、Alcaligenes eutrophus等の一部の細菌が高濃度酸素雰囲気下でも生育可能であるとの報告があるものの、一般的に、培養にこのような高濃度酸素を使用すると酸素中毒により菌体がほとんど増殖しないことが知られている。
【0048】
一方で、本開示のポリヒドロキシアルカノエートの製造方法によれば、カプリアビダス属に属する細菌の増殖、及びその体内でのPHAの蓄積の何れも十分に可能であり、その結果、培養液の単位量あたりのPHAの生産量を保持したまま、カプリアビダス属に属する細菌の培養に伴う発泡を抑制することができる。そのため、発泡抑制により培養槽に充填し得る培養液量を増やして、バッチ生産量を増やすことができる。なお、本開示において、バッチ生産量とは、一度の培養で生産できるPHAの量をいう。
【0049】
酸素濃度が50~100体積%のガスを培養液中に通気する工程Bは、培養の全期間を通じて又は培養のある段階において、連続的に、断続的に、又は間欠的になされてよいが、連続的に、又は、断続的になされることが好ましく、連続的になされることがより好ましい。なお、連続的とは、経時的に途切れることなく継続すること、断続的とは、一時的に途切れながらも継続すること、また、間欠的とは、一定の時間をおいて通気したり、途切れたりを繰り返すことをいう。
【0050】
培養の全期間とは、培養における培養開始から培養終了時までの全期間を意味する。培養は、培養開始から培養終了時までに、菌体増殖期、及び菌体内部にポリヒドロキシアルカノエートを蓄積する蓄積期の主に2つのフェーズに分けられる。
【0051】
菌体増殖期は、菌体増殖が活発に行われ、単位時間あたりの培地中の酸素消費量及び二酸化炭素の排出量が多く、ポリヒドロキシアルカノエートの蓄積速度が比較的小さい培養開始初期のフェーズをいい、蓄積期は、菌体増殖が制限され、単位時間あたりの培地中の酸素消費量及び二酸化炭素の排出量が比較的少なく、ポリヒドロキシアルカノエートの蓄積速度が大きくなった後半のフェーズをいう。フェーズの区分は、呼吸商が0.2以上である期間を菌体増殖期、0.2未満となった後の期間を増殖期として、呼吸商を一つの指標とすればよい。また、培養時間としては、培養開始からおよそ12~15時間までが菌体増殖期、15時間より後が増殖期の目安とし得る。なお、呼吸商は以下の式により算出できる。
呼吸商=単位時間当たりの二酸化炭素排出量/単位時間当たりの酸素消費量(体積比)
【0052】
工程Bは、培養液の単位量あたりのPHA生産量を増やす観点から、少なくとも蓄積期に含むことが好ましく、蓄積期の全期間において工程Bを含むことがより好ましい。
【0053】
本開示のポリヒドロキシアルカノエートの製造方法は、大気(酸素濃度:21体積%)を通気する場合に対し、培養液中における酸素移動速度、つまり、気相(ガス)中の酸素が液相(培養液)中に移動し溶存酸素になる速度を維持でき、培養液の単位量あたりのPHAの生産量を保持できる。
【0054】
工程Bにおける前記ガスの酸素濃度は、培養液中での酸素移動速度を維持したまま、培養液中への通気量を減らして、より高い発泡抑制効果を実現する観点から、70~100体積%が好ましく、90~100体積%がより好ましい。
【0055】
前記工程Bにおける前記ガスの通気量は、培養液中での酸素移動速度を維持したまま、培養液中への通気量を減らして、より高い発泡抑制効果を実現する観点から、0.01~0.20vvmが好ましく、0.01~0.15vvmがより好ましく、0.01~0.10vvmが最も好ましい。本開示において、vvmとは、培養槽の単位容量あたりの通気量であって、1分あたりの通気量[L/min]/培養槽の容量[L]にて算出できる。
【0056】
培養における発泡の原因としては、培養液へ通気するガス、微生物からの排泄物及び分泌物、微生物が分解した炭素源の分解物、攪拌並びに振とう等が考えられる。そのうち、従来、発泡の原因の多くは、微生物からの排泄物及び分泌物、並びに微生物が分解した炭素源の分解物中に含まれる成分によるものであり、これらの成分が気相と培養液の界面に濃縮し、簡単に破壊されない液の薄膜を形成することから、通気量の低減による発泡の抑制効果があるとは考えられていなかった。
【0057】
前記工程Bにおける前記培養液中に通気するとは、例えば、培養液中にガスの吹出口を設ける等により、培養液中にそのガスによる気泡ができるような状態で通気すること、言い換えれば、液中通気又は気泡通気することをいう。
【0058】
また、培養液への酸素供給量を向上させられるため、培養液を攪拌する攪拌翼のせん断力により、その気泡を微細化することがより好ましい。ただし、攪拌により培養液への酸素供給量が向上すれば、発泡量の増加につながり得る。
【0059】
(工程A)
前記培養中、前記工程Bの前に酸素濃度が18~25体積%のガスを前記培養液中に通気する工程Aを含むことが好ましい。これにより、培養液の単位量あたりのPHA生産量を増やすことができる。
【0060】
酸素濃度が18~25体積%のガスを培養液中に通気する工程Aは、培養中、工程Bの前であれば特に限定されないが、菌体増殖を活発にし、培養液の単位量あたりのPHA生産量をより増やす観点から、培養中の菌体増殖期に含むことが好ましい。
【0061】
また、工程Aは連続的に、断続的に、又は間欠的になされてよいが、連続的に、又は、断続的になされることが好ましく、連続的になされることがより好ましく、菌体増殖期の全期間において、連続的になされることが更に好ましい。
【0062】
工程Aにおける前記ガスの酸素濃度は、菌体増殖をより活発にし、培養液の単位量あたりのPHA生産量をより増やす観点から、19~25体積%が好ましく、20~22体積%がより好ましい。
【0063】
前記工程Aにおける前記ガスの通気量は、菌体増殖をより活発にし、培養液の単位量あたりのPHA生産量をより増やす観点から、0.20~0.40vvmが好ましく、0.20~0.35vvmがより好ましく、0.20~0.30vvmが更に好ましい。
【0064】
前記工程Aにおける前記培養液中に通気するとは、工程Bと同様に、例えば、培養液中にガスの吹出口を設ける等により、培養液中にそのガスによる気泡ができるような状態で通気すること、言い換えれば、液中通気又は気泡通気することをいう。
【0065】
また、培養液への酸素供給量を向上させられるため、培養液を攪拌する攪拌翼のせん断力により、その気泡を微細化することがより好ましい。
【0066】
(PHA回収)
培養を適切な時間行って菌体内にPHAを蓄積させた後、周知の方法を用いて菌体からPHAを回収すればよい。その回収方法は特に限定されないが、例えば、次のような方法によって実施することができる。一例として、培養終了後、培養液から遠心分離機等で菌体を分離し、その菌体を蒸留水、メタノール等により洗浄し、乾燥させる。この乾燥菌体から、クロロホルム等の有機溶剤を用いてPHAを抽出する。このPHAを含んだ溶液から、濾過等によって菌体成分を除去し、そのろ液にメタノールやヘキサン等の貧溶媒を加えてPHAを沈殿させる。更に、濾過や遠心分離によって上澄み液を除去し、乾燥させてPHAを回収することができる。
【0067】
別の例として、培養液から遠心分離機等で菌体を分離し、その菌体を蒸留水、エタノール、メタノール等により洗浄する。続いて、洗浄サンプルをラウリル硫酸ナトリウム(SDS)溶液と混合し、超音波破砕により細胞膜を破壊し、遠心分離機等で菌体成分とPHAを分離し、PHAを乾燥させることによりPHAを回収することもできる。
【0068】
(PHA生産量)
本実施形態によれば、培養液の単位量あたりのPHAの生産量を保持したまま、PHA産生微生物であるカプリアビダス属に属する細菌の培養に伴う発泡を抑制して、PHAのバッチ生産量を増やすことができる。
【0069】
以下の各項目では、本開示における好ましい態様を列挙するが、本発明は以下の項目に限定されるものではない。
[項目1]
ポリヒドロキシアルカノエート産生微生物を、炭素源を含む培養液中で培養することによるポリヒドロキシアルカノエートの製造方法であって、前記微生物がカプリアビダス(Cupriavidus)属に属する細菌であり、前記培養中、酸素濃度が50~100体積%のガスを前記培養液中に通気する工程Bを含む、ポリヒドロキシアルカノエートの製造方法。
[項目2]
前記培養中、前記工程Bの前に酸素濃度が18~25体積%のガスを前記培養液中に通気する工程Aを含む、項目1に記載のポリヒドロキシアルカノエートの製造方法。
[項目3]
前記工程Bにおける前記ガスの通気量が0.01~0.20vvmである、項目1又は2に記載のポリヒドロキシアルカノエートの製造方法。
[項目4]
前記工程Aにおける前記ガスの通気量が0.20~0.40vvmである、項目2又は3に記載のポリヒドロキシアルカノエートの製造方法。
[項目5]
前記炭素源が、油脂、廃食油、グリセリド及び脂肪酸からなる群より選択される1種以上を含む、項目1~4の何れか1項に記載のポリヒドロキシアルカノエートの製造方法。
【実施例0070】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0071】
(比較例1)
ポリヒドロキシアルカノエート産生微生物として、カプリアビダス属に属する細菌であるKNK-005株(米国特許US7384766参照)を用いて、下記に示した方法で(1)種母培養、(2)前培養、及び(3)本培養を順次実施した。
【0072】
(1)種母培養
まず、KNK-005株のグリセロールストック(50μl)を種母培地(10ml)に接種して24時間培養し種母培養を行なった。
【0073】
種母培地の組成は1w/v% Meat-extract、1w/v% Bacto-Tryptone、0.2w/v% Yeast-extract、0.9w/v% NaHPO・12HO、0.15w/v% KHPO、(pH6.8)とした。
【0074】
(2)前培養
次に種母培養液を、3.7Lの前培養培地を入れた10Lジャーファーメンター(丸菱バイオエンジ製MDL L 10L型)に1.0v/v%接種した。運転条件は、培養温度34℃、攪拌速度400rpm、通気は液中通気、通気には大気を使用、通気量4.0L/min(0.40vvm)とし、pHは6.4~6.6の間でコントロールしながら24時間培養し、前培養を行なった。pHコントロールには25%水酸化アンモニウム水溶液(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)を使用した。
【0075】
前培養培地の組成は1.1w/v% NaHPO・12HO、0.19w/v% KHPO、1.29w/v%(NHSO、0.1w/v% MgSO・7HO、0.5v/v% 微量金属塩溶液(0.1N塩酸に1.6w/v% FeCl・6HO、1w/v% CaCl・2HO、0.02w/v% CoCl・6HO、0.016w/v% CuSO・5HO、0.012w/v% NiCl・6HOを溶かしたもの)とした。炭素源はパーム油を10g/Lの濃度で一括添加した。
【0076】
(3)本培養
次に前培養液を、70Lの生産培地を入れた200L培養槽(丸菱バイオエンジ製 カネカ特注)に5.0v/v%接種した。運転条件は、培養温度34℃、攪拌速度474rpm、通気は液中通気(培養液中に配管を挿入し、培養液中にガスの吹出口を設けることにより気泡通気を行った)、通気には大気を使用、通気量58.0L/min(0.29vvm)、通気は本培養の全期間を通じて連続的に行い、pHは6.4~6.6の間でコントロールしながら、本培養を行った。pHコントロールには25%水酸化アンモニウム水溶液を使用した。炭素源は断続的に添加した。油脂としては、パーム油を使用した。
【0077】
本培養培地(PHA生産培地)の組成は0.385w/v% NaHPO・12HO、0.067w/v% KHPO、0.291w/v% (NHSO、0.1w/v% MgSO・7HO、0.5v/v% 微量金属塩溶液(0.1N 塩酸に1.6w/v% FeCl・6HO、1w/v% CaCl・2HO、0.02w/v% CoCl・6HO、0.016w/v% CuSO・5HO、0.012w/v% NiCl・6HOを溶かしたもの)、0.05w/v% BIOSPUREX200K(消泡剤:コグニスジャパン社製)とした。
【0078】
本培養は48時間行い、本培養中の最大発泡時に、以下の計算式で最大発泡率を計算した。本培養終了後に一部をサンプリングし、PHA含量を以下の操作で測定し、PHA生産量を算出した。本培養の諸条件及び最大発泡率、並びにPHA生産量を表1に示す。また、本培養中の総液量の経時変化を図1に示す。
【0079】
(最大発泡率)
最大発泡率(%)=最大発泡時の発泡量(L)/最大発泡時の総液量(L)
最大発泡時=培養槽内の泡面の高さが最も高い位置にある時
総液量=培養槽内容物である液体部分及び泡部分の合計量(液量+発泡量であって、液面及び/又は泡面の高さを計測して求めた値)
発泡量=総液量-総添加液量
総添加液量=培養開始時の培養液量+培養中に添加した各種液量
【0080】
(PHA生産量)
PHAの生産量を以下の手順によって測定した:
(a)本培養終了後の培養液を5g、50mlファルコンチューブに量り取り、エタノール(富士フイルム和光純薬(株)社製)で20mlまでメスアップし、スラリーを分散させてから遠心分離(9500rpm、5分間)を行った。
(b)上清を除去後、上記チューブに蒸留水を添加し、20mlまでメスアップして沈降物を分散させ、遠心分離(9500rpm、5分間)を行った。
(c)上清を除去後、上記チューブに3.3%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液(ドデシル硫酸ナトリウム(花王製)を蒸留水に3.3重量%になるように溶解させた水溶液)を添加し、30mlまでメスアップし、沈降物を分散させた。
(d)超音波破砕機(株式会社日本精機製作所製超音波ホモジナイザーUS-150T)を用いて、1分間、菌体破砕を行った。
(e)上記(d)を3回繰り返した。
(f)遠心分離(9500rpm、5分間)を行い、上清を除去後、蒸留水を添加し、20mlまでメスアップして沈降物を分散させ、遠心分離(9500rpm、5分間)を行った。
(g)上清を除去後、上記チューブにエタノールを添加し、20mlまでメスアップして沈降物を分散させ、遠心分離(9500rpm、5分間)を行った。
(h)上清を除去後、60℃に設定した真空乾燥器を用いて、12時間、乾燥させた。
(i)(h)で得た乾燥物の重量を測定し、以下の式に従ってPHA含量を算出した。
PHA含量(%)=(乾燥物の重量(g)/培養液の重量(g))
また、比較例1のPHA含量(%)を基準値100として指数化した値を培養液の単位量あたりのPHA生産量とした。
【0081】
(実施例1)
本培養における200L培養槽において、大気に代えて、酸素濃度が90体積%のガス(O:N(体積比)=90:10)を通気し、その通気量を13.5L/min(0.07vvm)に変更した以外は比較例1と同じ方法にて培養を行った。本培養の諸条件及び最大発泡率、並びにPHA生産量を表1に示す。また、本培養中の総液量の経時変化を図1に示す。
【0082】
(実施例2)
前培養における10Lジャーファーメンターに入れた前培養培地を4.5Lに、本培養における200L培養槽にいれた生産培地を84.0Lに、本培養の培養時間15~48時間目に、大気に代えて、酸素濃度が90体積%のガス(O:N(体積比)=90:10)を通気し、その通気量を13.5L/min(0.07vvm)に変更した以外は比較例1と同じ方法にて培養を行った。本培養の諸条件及び最大発泡率、並びにPHA生産量を表1に示す。また、本培養中の総液量の経時変化を図1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
表1より次のことがわかる。比較例1は、48時間の本培養中の通気に大気を使用したものであり、最大発泡時の液面高さが180L、最大発泡時の液量が97.4L、最大発泡時の発泡量が82.6L、最大発泡率は45.9%であった。そのため、オーバーフローの回避を考慮し、200Lの培養槽であれば、最大108.2Lまでしか培養液を充填できないことになる。
【0085】
一方、実施例1は、48時間の本培養中、通気に酸素濃度が90体積%のガスを使用したものであり、最大発泡時の液面高さが110L、最大発泡時の液量が97.1L、最大発泡時の発泡量が12.9L、最大発泡率は11.7%であった。そのため、200Lの培養槽であれば、最大176.6Lまで培養液を充填できる。培養液の単位量あたりのPHA生産量は比較例1に対し95.5%であり十分な生産量を保持しているので、最大量の培養液を充填したとしても、比較例1に対しPHAのバッチ生産量をおよそ1.6倍にすることができる。
【0086】
実施例2は、48時間の本培養中、最初の14時間目までは通気に大気を使用し、15~48時間目に通気に酸素濃度が90体積%のガスを使用したものであり、工程Bの前に工程Aを含むものであるところ、最大発泡時の液面高さが150L、最大発泡時の液量が119.7L、最大発泡時の発泡量が30.3L、最大発泡率は20.2%であった。そのため、200Lの培養槽であれば、最大159.6Lまで養液を入れることができる。培養液の単位量あたりのPHA生産量は比較例1に対し98.6%であり十分な生産量を保持しているので、最大量の培養液を充填した場合の比較例1に対してもPHAのバッチ生産量をおよそ1.5倍にすることができる。
図1