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特開2024-11868表面調整剤、レベリング剤、樹脂組成物および塗膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011868
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】表面調整剤、レベリング剤、樹脂組成物および塗膜
(51)【国際特許分類】
   C09D 7/47 20180101AFI20240118BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20240118BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20240118BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240118BHJP
   C08K 5/06 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
C09D7/47
C09D201/00
C09K3/00 R
C08L101/00
C08K5/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114164
(22)【出願日】2022-07-15
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パイレックス
(71)【出願人】
【識別番号】390014856
【氏名又は名称】日本乳化剤株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 恒寛
【テーマコード(参考)】
4J002
4J038
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002AB011
4J002BB021
4J002BB111
4J002BC021
4J002BC061
4J002BD031
4J002BD141
4J002BE021
4J002BF021
4J002BG021
4J002BN151
4J002CC031
4J002CC181
4J002CD001
4J002CF001
4J002CG001
4J002CH031
4J002CK011
4J002CK021
4J002CL001
4J002CP031
4J002ED026
4J002FD206
4J002GH01
4J002GH02
4J038CB001
4J038CC031
4J038CG001
4J038CG141
4J038DA161
4J038DB001
4J038DD001
4J038DF022
4J038DG001
4J038DL031
4J038FA001
4J038FA071
4J038KA07
4J038NA01
4J038PA17
4J038PA19
(57)【要約】
【課題】表面張力低下能が高く、かつ、破泡性(破泡性)が良好である表面調整剤を提供する。
【解決手段】式(1)で表される化合物を含む、表面調整剤;式(1)中、RおよびRは、CH基であり、a~cは、それぞれ独立して、0~10の整数であり、このとき、a~cの合計は、4以上14以下であり、Rは、それぞれ独立して、直鎖状または分枝状の炭素数1~6のアルキレン基であり、mおよびnは、それぞれ独立して、0~50の数を表し、このとき、mおよびnの合計は、3~50であり、ここで、mおよびnは、(ポリ)アルキレングリコール基における(RO)の付加モル数を表し、mおよび/またはnが2以上の場合、各ポリアルキレングリコール基を構成するRの種類はそれぞれ異なっていてもよく、Rは、それぞれ独立して、水素または直鎖状もしくは分枝状の炭素数1~8のアルキル基である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】

式(1)中、
およびRは、CH基であり、
a~cは、それぞれ独立して、0~10の整数であり、このとき、a~cの合計は、4以上14以下であり、
は、それぞれ独立して、直鎖状または分枝状の炭素数1~6のアルキレン基であり、
mおよびnは、それぞれ独立して、0~50の数を表し、このとき、mおよびnの合計は、3~50であり、
ここで、mおよびnは、(ポリ)アルキレングリコール基における(RO)の付加モル数を表し、mおよび/またはnが2以上の場合、各ポリアルキレングリコール基を構成するRの種類はそれぞれ異なっていてもよく、
は、それぞれ独立して、水素または直鎖状もしくは分枝状の炭素数1~8のアルキル基である、
で表される化合物を含む、表面調整剤。
【請求項2】
前記式(1)において、a~cの合計は、8以上10以下である、請求項1に記載の表面調整剤。
【請求項3】
レベリング剤である、請求項1または2に記載の表面調整剤。
【請求項4】
請求項1または2に記載の表面調整剤と、樹脂または当該樹脂を構成する単量体と、分散媒と、を含む、樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂100質量部に対して、前記表面調整剤を0.1質量部以上で含む、請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の樹脂組成物が塗装されることにより形成される、塗膜。
【請求項7】
被塗装物に、請求項6に記載の樹脂組成物を塗装して塗膜を形成する工程を含む、塗膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面調整剤、レベリング剤、樹脂組成物および塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
レベリング剤は塗料などの組成物を塗工した際に、塗膜を平滑化するために添加される。レベリング剤は乾燥過程の塗膜表面に配向することで塗膜の表面張力を低下させ、塗膜を平滑化する作用を有する。したがって、レベリング剤は、表面張力低下能が高いことが求められる。
【0003】
レベリング剤が起泡性を示す場合は、組成物を調製する際に脱泡の操作が必要となり、作業性が悪化する。また、塗膜に気泡が残留すると、いわゆるオレンジピール、ゆず肌、肌荒れなどの状態となり、塗膜の平滑性が悪化する。したがって、レベリング剤の物性としては、表面張力低下能に加えて、起泡性が低いことや、破泡性(消泡性)が高いことも重要である。
【0004】
高分子型のレベリング剤として、アクリル系、シリコーン系等のレベリング剤が提案されている(例えば、特許文献1、2)。また、低分子型のレベリング剤として、アセチレン化合物、フッ素化合物などの界面活性剤系のレベリング剤が提案されている(特許文献3、4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-515815号公報
【特許文献2】特開2021-92961号公報
【特許文献3】特開2018-83938号公報
【特許文献4】特開2018-106172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これまでの高分子型のレベリング剤は、表面張力低下能が低いものであり、レベリング性という点で未だ改善の余地があった。また、高分子型のレベリング剤には、組成物調製の際の相溶性、焼付塗装における焼成後の残留等の問題があった。一方、低分子型のレベリング剤は、起泡性が高く、破泡性も低いため、やはりレベリング性に劣るという問題があった。
【0007】
したがって、本発明は、表面張力低下能が高く、かつ、破泡性(消泡性)が良好である表面調整剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意研究を行った結果、下記式(1):
【0009】
【化1】
【0010】
式(1)中、
およびRは、CH基であり、
a~cは、それぞれ独立して、0~10の整数であり、このとき、a~cの合計は、4以上14以下であり、
は、それぞれ独立して、直鎖状または分枝状の炭素数1~6のアルキレン基であり、
mおよびnは、それぞれ独立して、0~50の数を表し、このとき、mおよびnの合計は、3~50であり、
ここで、mおよびnは、(ポリ)アルキレングリコール基における(RO)の付加モル数を表し、mおよび/またはnが2以上の場合、各ポリアルキレングリコール基を構成するRの種類はそれぞれ異なっていてもよく、
は、それぞれ独立して、水素または直鎖状もしくは分枝状の炭素数1~8のアルキル基である、
で表される化合物を含む、表面調整剤により、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、表面張力低下能が高く、かつ、破泡性が良好である表面調整剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を説明する。ただし、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。なお、本明細書において、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「質量%」および「質量部」を、「沸点」は常圧における沸点を意味する。また、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)/相対湿度40~50%RHの条件下で行われた。
【0013】
<表面調整剤>
本発明の表面調整剤は、下記式(1)で表される化合物を含む:
【0014】
【化2】
【0015】
式(1)中、
およびRは、CH基であり、
a~cは、それぞれ独立して、0~10の整数であり、このとき、a~cの合計は、4以上14以下であり、
は、それぞれ独立して、直鎖状または分枝状の炭素数1~6のアルキレン基であり、
mおよびnは、それぞれ独立して、0~50の数を表し、このとき、mおよびnの合計は、3~50であり、
ここで、mおよびnは、(ポリ)アルキレングリコール基における(RO)の付加モル数を表し、mおよび/またはnが2以上の場合、各ポリアルキレングリコール基を構成するRの種類はそれぞれ異なっていてもよく、
は、それぞれ独立して、水素または直鎖状もしくは分枝状の炭素数1~8のアルキル基である。
【0016】
また、本発明の好ましい実施形態に係る表面調整剤は、上記式(1)において、a~cの合計が8以上10以下である化合物を含む。
【0017】
本発明の好ましい実施形態に係る表面調整剤は、レベリング剤である。
【0018】
当該表面調整剤を、必要に応じて樹脂または当該樹脂を構成する単量体および分散媒と混合することにより、表面調整能を有する樹脂組成物が得られる。当該樹脂組成物を被塗装物に塗布し、必要に応じて硬化処理を施すと、被塗装物上に塗膜が形成される。本発明の表面調整剤は表面張力低下能が高く、破泡性が高いため、本発明の表面調整剤を含む樹脂組成物は、被塗装物上に良好な平滑性を有する塗膜を形成することができる。本発明の表面調整剤が、表面張力低下能が高く破泡性が高いという効果を奏するメカニズムは不明であるが、以下のように推測される。
【0019】
上述したように、本発明の表面調整剤は、式(1)で表される化合物を含む。当該化合物は、主鎖として炭素数8~18の炭化水素を有し、側鎖として1つまたは2つのポリアルキレングリコール鎖を有する。一般的に、界面活性能を有する化合物を含む表面調整剤を用いると、起泡性が高いために塗膜に気泡が残留しやすく、塗膜の平滑性が悪化するという問題がある。これに対し、式(1)で表される化合物は、親水性を付与するポリアルキレングリコール鎖と、疎水性を付与する炭化水素(主鎖)とが、適度なバランスで存在する。また、ポリアルキレングリコール鎖は、第2級炭素の側鎖として存在する。これにより、表面張力低下能と高い破泡性とがバランスよく発揮される。特に、式(1)で表される化合物において主鎖の炭化水素が炭素数12~14の炭化水素であることにより、式(1)で表される化合物を含む表面調整剤は、表面張力低下能を効率的に発揮することができる。その結果、本発明の表面調整剤を含む樹脂組成物の被塗装物に対する濡れ性が向上する。ゆえに、本発明の表面調整剤を含む樹脂組成物は、被塗装物への塗布性が良好であり、被塗装物において良好な平滑性も付与できる。
【0020】
なお、本発明は、上記メカニズムに何ら制限されるものではない。
【0021】
表面調整剤に含まれる下記式(1)で表される化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。以下、下記式(1)で表される化合物を「化合物(1)」とも称する。
【0022】
【化3】
【0023】
上記式(1)中、RおよびRは、CH基(メチル基)である。
【0024】
上記式(1)中、a~cは、それぞれ独立して、0~10の整数であり、好ましくは0~8の整数であり、より好ましくは1~6である。また、a~cの合計は、4以上14以下であり、好ましくは6以上12以下であり、さらに好ましくは8以上10以下である。
【0025】
上記式(1)中、Rは、それぞれ独立して、直鎖状または分枝状の炭素数1~6のアルキレン基である。式(1)において、Rは、好ましくは直鎖状または分枝状の炭素数1~5のアルキレン基であり、より好ましくは直鎖状または分枝状の炭素数2~4のアルキレン基である。直鎖状または分枝状の炭素数1~6のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基等が挙げられる。式(1)において、「RO」は、オキシアルキレン基を表し、例えば、Rがエチレン基の場合、オキシエチレン基(-(CHCH-O)-)を表し;Rがイソプロピレン基の場合、オキシプロピレン基(-(CH-CH(CH)-O)-)を表し;Rがブチレン基の場合、オキシブチレン基(-(CH-CH(CHCH)-O)-)を表す。式(1)において、複数存在するRは、同一であっても異なっていてもよい。
【0026】
上記式(1)中、「-(RO)-」および「-(RO)-」は、ポリオキシアルキレン鎖を表している。mおよびnは、(ポリ)アルキレングリコール基(-(RO)-)の平均付加モル数を表す。mおよびnは、それぞれ独立して、0~50の数を表し、このとき、mおよびnの合計は、3~50である。表面調整剤が表面張力低下能をより一層発揮するという観点から、mおよびnは、それぞれ独立して、好ましくは0~30の数を表し、より好ましくは0~20の数を表し、さらに好ましくは0~18の数を表し、さらにより好ましくは0~15の数を表し、特に好ましくは0~14の数を表し、最も特に好ましくは1~12の数を表す。また、mおよびnの合計は、3~50であるのが好ましく、3~25であるのがより好ましく、3~22であるのがさらに好ましく、3~18がさらにより好ましく、3~15が特に好ましく、3~12であるのが最も好ましい。nおよび/またはmが2以上の場合、各ポリアルキレングリコール基を構成するRの種類はそれぞれ異なっていてもよい。
2~4の数である。
【0027】
式(1)において、複数存在するRは、同一であっても異なっていてもよく、ひとつのポリオキシアルキレン鎖(「-(RO)-」、「-(RO)n-」)において、Rは、同一であっても異なっていてもよい。ひとつのポリオキシアルキレン鎖(「-(RO)-」、「-(RO)n-」)が2種以上のRで構成されたオキシアルキレン基である場合、配列は、ランダム型、ブロック型のいずれでもよい。
【0028】
上記式(1)で表される化合物としては、例えば、直鎖または分岐ドデカンジオール、直鎖または分岐トリデカンジオール、直鎖または分岐テトラデカンジオール等のエチレンオキサイド(EO)付加物などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
上記式(1)中、Rは、それぞれ独立して、水素または直鎖状もしくは分枝状の炭素数1~8のアルキル基である。式(1)において、Rは、水素または直鎖状もしくは分枝状の炭素数1~4のアルキル基であり、さらに好ましくは水素または直鎖状もしくは分枝状の炭素数1~2のアルキル基である。直鎖状もしくは分枝状の炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基等が挙げられる。これらのうち、Rは、水素、メチル基、エチル基が好ましく、水素、メチル基がより好ましい。式(1)において2つ存在するRは、同一であっても異なっていてもよい。
【0030】
上記式(1)で表される化合物の製造方法は、特に制限されない。例えば、特開昭50-159595号公報に記載の方法により、ジオール化合物(R-(CH-CH(OH)-(CH-CH(OH)-(CH-R;R、Rおよびa~cは、それぞれ上記式(1)のR、Rおよびa~cと同義)にポリアルキレングリコール鎖を導入することができる。具体的には、三フッ化ホウ素(BF)またはその錯体化合物を触媒として、ジオール化合物(R-(CH-CH(OH)-(CH-CH(OH)-(CH-R;R、Rおよびa~cは、それぞれ上記式(1)のR、Rおよびa~cと同義)にアルキレンオキサイドを付加反応することにより得られる。さらに得られた反応混合物を、水酸化カルシウムおよび酸化カルシウムから選択される少なくともひとつのカルシウム化合物と、水(カルシウム化合物と等モル量)とで処理することにより本発明に適した式(1)で表される化合物を得ることができる。
【0031】
本発明の表面調整剤について、ウィルヘルミー法(プレート法)における0.1質量%での静的表面張力は、好ましくは20~45mN/mであり、より好ましくは25~40mN/mであり、さらに好ましくは30~35mN/mであり、特に好ましくは30~33mN/mである。静的表面張力は、表面張力計(KRUSS社製、K100)を用いてウィルヘルミー法(プレート法)により0.1質量%水溶液の25℃における表面張力を測定した値である。
【0032】
本発明の表面調整剤について、最大泡圧法における15Hzでの動的表面張力は、好ましくは25~55mN/mであり、より好ましくは30~50mN/mであり、さらに好ましくは30~45mN/mであり、特に好ましくは30~40mN/mである。動的表面張力は、バブルプレッシャー動的表面張力計(KRUSS社製、BP100)を用いて最大泡圧法により1質量%水溶液の15Hzの表面張力を測定した値である。
【0033】
本発明の表面調整剤は、ロスマイルス法(JIS K 3362;2008)にて行った起泡性試験において、直後の泡の高さが、好ましくは20cm未満であり、より好ましくは15cm未満であり、さらに好ましくは10cm未満であり、特に好ましくは5cm未満であり、5分後の泡の高さは、好ましくは5cm未満であり、より好ましくは3cm未満であり、さらに好ましくは2cm未満であり、特に好ましくは1cm未満である。すなわち、本発明の表面調整剤は起泡性も低く、かつ破泡性が高い。よって、発明の表面調整剤を含む樹脂組成物は、被塗装物への塗布性が良好であり、被塗装物において良好な平滑性も付与できる。
【0034】
本発明の表面調整剤は、化合物(1)のみで使用されていてもよく、他の表面調整剤と併用されてもよい。また、表面調整剤として、樹脂や分散媒等の他の成分を含んでいてもよい。
【0035】
好ましい実施形態において、本発明の表面調整剤は、レベリング剤である。本発明の表面調整剤は、表面張力低下能が高く、破泡性が高いため、本発明の表面調整剤を含む組成物を被塗装物に塗布することで、平滑性の良好な塗膜が形成できる。
【0036】
<樹脂組成物>
本発明の表面調整剤は、樹脂や分散媒等の他の成分とともに樹脂組成物を構成してもよい。すなわち、本発明は、上記表面調整剤と、樹脂または当該樹脂を構成する単量体と、分散媒と、を含む、樹脂組成物についても提供する。当該樹脂組成物は、表面張力低下能が十分に高く、高い破泡性を発揮するため、良好な平滑性を有する塗膜を形成することができる。
【0037】
本発明の樹脂組成物において、表面調整剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上であり、より好ましくは0.05質量部以上であり、さらにより好ましくは0.1質量部以上である。表面調整剤の含有量が上記下限値以上であれば、被塗装物に対する表面張力低下効果が十分に得られ、樹脂組成物の濡れ性が十分に高い。また、本発明の樹脂組成物において、表面調整剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは30質量部以下であり、より好ましくは20質量部以下であり、さらに好ましくは15質量部以下であり、さらにより好ましくは10質量部以下であり、特に好ましくは7質量部以下であり、最も好ましくは5質量部以下である。表面調整剤の含有量が上記上限値以下であれば、被塗装物に対する表面張力低下効果が十分に得られ、形成される塗膜の平滑性も良好である。
【0038】
[樹脂]
樹脂組成物は、樹脂または当該樹脂を構成する単量体を含む。本発明に係る樹脂組成物は、具体的には、表面調整剤および樹脂または当該樹脂を構成する単量体を分散媒に分散または溶解させたものである。このような樹脂組成物は、例えば、表面調整剤および樹脂または当該樹脂を構成する単量体を分散媒に分散または溶解させることにより製造することができる。なかでも、樹脂組成物は、表面調整剤および分散媒とともに、上記樹脂を構成する単量体を含むことが好ましい。
【0039】
樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS樹脂)、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ヒドロキシエチルセルロース樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエチレングリコール(PEG)樹脂、ポリエチレンオキサイド樹脂、ポリプロピレンオキサイド樹脂、多糖類系樹脂、その他の光重合性樹脂、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0040】
これらの中でも、樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂およびシリコーン樹脂からなる群より選択される1種以上であるのが好ましい。
【0041】
本発明の一実施形態において、樹脂として好ましくは、各種の(メタ)アクリル酸エステルモノマーを単独重合または共重合させてなる(メタ)アクリル樹脂が用いられる。
【0042】
上記樹脂を構成する単量体としては、例えば、(メタ)アクリルモノマー、その他のモノマー、アミド基を有する不飽和エチレン性モノマー、ウレア基を有する不飽和エチレン性モノマー、イソシアネート基を有する不飽和エチレン性モノマー、ウレタン基を有する不飽和エチレン性モノマー等が挙げられる。
【0043】
単官能(メタ)アクリルモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の炭素数1~18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0044】
多官能(メタ)アクリルモノマーの具体例としては、ポリエチレングリコールジアクリレート、デカンジオールジアクリレート、ノナンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
【0045】
その他のモノマーの具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸とポリエチレングリコールとのモノエステル化物、(メタ)アクリル酸-2-アミノエチルおよびその塩、(メタ)アクリル酸のカプロラクトン変性物、(メタ)アクリル酸-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、(メタ)アクリル酸-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム、(メタ)アクリル酸アンモニウム等の(メタ)アクリル酸塩;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル;(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル;エチレン、プロピレン等のα-オレフィン;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等のハロゲン含有α,β-不飽和脂肪族炭化水素;スチレン、ジビニルベンゼン、α-メチルスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム等のα,β-不飽和芳香族炭化水素等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよいが、2種以上併用することが好ましい。
【0046】
アミド基を有する不飽和エチレン性モノマーの具体例としては、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-tert-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル-N-メチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ビニルアセトアミド等が挙げられる。
【0047】
ウレア基を有する不飽和エチレン性モノマーの例としては、(メタ)アクリロイルオキシエチルエチレンウレア、(メタ)アクリロイルオキシプロピルエチレンウレア等が挙げられる。イソシアネート基を有する不飽和エチレン性モノマーの例として、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等が挙げられる。ウレタン基を有する不飽和エチレン性モノマーの例として、(メタ)アクリロイルオキシエチルカルバミン酸メチル、ウレタンアクリレート等が挙げられる。これらの単量体は、樹脂組成物やそれにより形成される塗膜に必要とされる特性に応じて適宜組み合わせて使用することができる。
【0048】
本発明に係る表面調整剤は、樹脂または当該樹脂を構成する単量体を含む樹脂組成物に含有されることにより、樹脂組成物を被塗装物に塗布して得られる塗膜の平滑性を向上させることができる。この観点からは、例えば、本発明に係る表面調整剤を、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の炭素数1~18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリロニトリルおよびウレタンアクリレートから選択される1種以上の単量体または当該単量体から構成される樹脂と組み合わせて樹脂組成物とするのが好ましい。
【0049】
本発明の樹脂組成物に対する樹脂または当該樹脂を構成する単量体の含有量は、特に制限されないが、例えば10~90質量%であるのが好ましく、20~80質量%であるのがより好ましく、30~70質量%であるのがさらに好ましい。樹脂は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上の樹脂(または単量体)を用いる場合、樹脂(または単量体)の含有量は合計量である。
【0050】
[分散媒]
本明細書において、樹脂組成物は、分散媒(溶媒)を含有する。分散媒(溶媒)は、樹脂組成物の粘度を調整し、樹脂組成物を被塗装物に塗布する際に塗布性を向上させる。樹脂組成物が被塗装物に塗布され、必要に応じて硬化工程を経た後の塗膜においては、分散媒(溶媒)を含んでいてもよいし、分散媒(溶媒)は揮発等により除去されていてもよい。
【0051】
分散媒(溶媒)の種類は特に限定されないが、プロトン性極性溶媒、非プロトン性極性溶媒または非極性溶媒を含むことが好ましい。プロトン性極性溶媒としては、例えば、水;エチルアルコール、メチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール(1-ブタノール)、2-ブチルアルコール(2-ブタノール)、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系溶媒:酢酸;等が挙げられる。非プロトン性極性溶媒としては、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のモノアルキレングリコールエーテル系溶媒;ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のジアルキレングリコールエーテル系溶媒が挙げられる。非極性溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、デカリン、テトラリン、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタンこれらの誘導体などが挙げられる。なお、水は、特に制限されず、工業用水、精製水、イオン交換水、超純水などいずれの水であってもよい。溶媒は単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよく、水との混合溶媒としてもよい。
【0052】
これらのうち、化合物(1)の分散性の観点から、エチルアルコール、メチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、2-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トルエン、キシレンが好ましく、2-ブチルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、キシレンがより好ましい。
【0053】
分散媒(溶媒)は、樹脂組成物に含まれる成分に応じて適宜選択することができるが、例えば、樹脂が(メタ)アクリル樹脂から構成される場合、溶媒はトルエンであるのが好ましい。
【0054】
[重合開始剤]
樹脂組成物が単量体を含む場合、当該樹脂組成物は、上記単量体を重合させるための熱重合開始剤、光重合開始剤等の重合開始剤を使用することが好ましく、これらは単独で使用しても2種以上を併用してもよい。重合開始剤の添加量は、全単量体の合計量100質量部に対して、好ましくは0.1~5質量部であることが好ましい。
【0055】
熱重合開始剤の例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセテートパーオキサイド、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-2-メチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ヘキシルハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキサイド、m-トルオイルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ-3-メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ-s-ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3-メチル-3-メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、α,α’-ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノオエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシマレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメトルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシ-m-トルイルベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t-ブチルパーオキシ)イソフタレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(m-トルイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、t-ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン等の有機過酸化物系開始剤;2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-フェニルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(4-クロロフェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドリドクロリド、2,2’-アゾビス[N-(4-ヒドロフェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(フェニルメチル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-プロペニル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(2-ヒドロキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-1,3-ジアゼピン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(5-ヒドロキシ-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)、ジメチル-2,2-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、2,2’-アゾビス[2-(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等のアゾ系開始剤;等が挙げられる。なお、これらの熱重合開始剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0056】
光重合開始剤の例としては、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N-ジメチル-N-[2-(1-オキソ-2-プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4-ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2-(3-ジメチルアミノ-2-ヒドロキシ)-3,4-ジメチル-9H-チオキサントン-9-オンメソクロリド等のチオキサントン類;2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフォンオキサイド類;オキシムエステル類;カチオン系光重合開始剤;分子内水素引抜型光重合開始剤;等が挙げられる。なお、これらの光重合開始剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0057】
[任意成分]
本発明の樹脂組成物は、表面調整剤、樹脂または当該樹脂を構成する単量体、および分散媒、並びに上述した重合開始剤に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、公知の添加剤をさらに含有してもよい。添加剤としては、例えば、顔料、可塑剤、分散剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤、紫外線吸収剤、香料等が挙げられる。その含有量は、特に限定されないが、樹脂に対して0.01~30質量%が好ましく、0.1~20質量%がより好ましい。
【0058】
本発明に係る表面調整剤の使用形態は特に制限されない。例えば、樹脂を構成する単量体と、分散媒とを混合した後、表面調整剤を添加して得られた分散液を樹脂組成物としてもよいし、表面調整剤を分散媒に分散させた後、当該分散液に樹脂を構成する単量体を添加して樹脂組成物としてもよいし、これらを適宜組み合わせた形態であっても構わない。また、表面調整剤、樹脂、および分散媒を任意の順序で添加して、樹脂を含む樹脂組成物としてもよい。
【0059】
[塗膜]
本発明によれば、上記樹脂組成物からなる塗膜も提供される。すなわち、上記樹脂組成物が塗装されることにより形成される塗膜もまた、本発明において提供される。本発明に係る樹脂組成物は、上述のように、本発明に係る表面調整剤の効果が発揮されるものであるため、本発明に係る塗膜も表面調整剤の効果が発揮され、高い平滑性を有する。
【0060】
本発明に係る塗膜は、本発明に係る樹脂組成物を被塗装物上に塗布し、乾燥および必要に応じて重合することにより得られる。乾燥条件、重合条件は、特に制限されず、例えば溶液重合の場合は、重合温度は使用する重合開始剤の種類によって適宜設定することができるが、好ましくは50~120℃である。また、重合時間についても、特に制限されないが、好ましくは1~10時間である。
【0061】
紫外線を照射して重合する場合、照射光源としては、水銀ランプ(例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ)、メタルハライドランプなどを用いることができる。紫外線の照射条件は、特に制限されないが、積算光量は100mJ/cm以上が好ましく、200mJ/cm以上がより好ましい。また、照射時間についても、特に制限されないが、好ましくは0.01~300秒である。
【0062】
[塗布物]
本発明によれば、被塗装物と、前記被塗装物上に形成された本発明に係る塗膜と、を有する塗布物も提供される。本発明に係る塗膜は、上述のように、本発明に係る表面調整剤の効果が発揮されるものであり、したがって、このような塗膜を被塗装物上に有する塗布物は、また本発明に係る表面調整剤の効果を発揮することができる。
【0063】
被塗装物および塗膜を含む塗布物としては、具体的には、建物、構造物(橋梁・タンクなど)、船舶、道路車両、電気機械、金属製品、木工製品等を挙げることができる。塗膜の形状および厚さも特に制限されず、その用途によって所望の厚さを採用することができる。
【0064】
塗膜が形成される被塗装物については、金属、プラスチック(樹脂)などの有機物、セラミックス、ガラスなどの無機物、紙および木材など、その素材は特に限定されない。被塗装物としてポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、タルク含有の塩素化ポリプロピレン等の樹脂を用いた場合、本発明に係る表面調整剤は、被塗装物に対する影響を特に低減でき、本発明に係る表面調整剤を含む樹脂組成物と被塗装物との密着性を維持することができる。
【0065】
なお、本発明の樹脂組成物を被塗装物上に塗布して塗膜を形成する方法としては、従来公知の塗布方法を特に限定することなく採用することができる。よって、本発明によれば、被塗装物に、上記樹脂組成物を塗装して塗膜を形成する工程を含む、塗膜形成方法も提供される。なお、本発明において、被塗装物のない塗膜、すなわち、樹脂組成物のみでなる膜も塗膜の概念に含まれる。
【実施例0066】
本発明を、以下の実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0067】
<表面調整剤の合成>
[合成例1:ジオールEO付加物の合成]
特開昭50-159595号公報の1頁目に記載の方法で、ジオール化合物(CH-(CH-CH(OH)-(CH-CH(OH)-(CH-CH;a~cは、それぞれ独立して、0~10の整数であり、a~cの合計は8~10)を合成した後、当該ジオール化合物に所望のEO付加モル数となる量に調整してEOを付加させ、ジオールEO付加物を準備した。
【0068】
具体的に、ジオール化合物に3モルのEOを付加させる場合で説明する。なお、以下では、ジオールEO付加物において、ジオール化合物に付加されたEOのモル数(数値)を「EO付加物」の前に付けて称する(例えば、EOを3モル付加した化合物は「ジオール3EO付加物」と表記する)。
【0069】
ジオール化合物(CH-(CH-CH(OH)-(CH-CH(OH)-(CH-CH;a~cは、それぞれ独立して、0~10の整数であり、a~cの合計は8~10)は、炭素数12~14のn-パラフィンを分子状酸素含有ガスで液相酸化して得られた、1分子内に平均して2個のヒドロキシル基が主として第2級炭素にランダムに結合したものである。なお、ジオール化合物の炭素数は、ガスクロマトグラフィーにより分析し、C12/C13/C14/その他高沸点物質=3/42/53/2の質量比で存在することを確認した。ジオール化合物が第1級アルコールでないことはNMR分析により確認し、ヒドロキシル基を2個有することはNMR分析により確認した。
【0070】
攪拌装置、温度計、EO導入管付きのSUSオートクレーブに原料アルコールであるジオール化合物(CH-(CH-CH(OH)-(CH-CH(OH)-(CH-CH;a~cは、それぞれ独立して、0~10の整数であり、a~cの合計は8~10)394.3質量部を仕込み、窒素置換した。その後、BF・OEt0.8質量部を仕込み、初期窒素圧0.05MPa、65±5℃にてEOを原料アルコール1モルに対して3モルフィードして付加した。その後、パイレックス製ビーカーに上記で得た原料アルコールのジオール3EO付加物エトキシレート、吸着処理剤(キョーワード500SH:協和化学工業株式会社製)4質量部を仕込み、60±5℃にて窒素バブリングをしながら1時間攪拌を続けた。その後、吸着処理剤をろ過し、ろ液をナスフラスコに仕込んだ。エバポレーションにより低沸点成分を除去し、ジオール3EO付加物を得た。
【0071】
[実施例および比較例で用いた化合物]
・ジオール3EO付加物(a~cは、それぞれ独立して、0~10の整数であり、a~cの合計は8~10;n+m=3)
・ジオール5EO付加物(a~cは、それぞれ独立して、0~10の整数であり、a~cの合計は8~10;n+m=5)
・ジオール7EO付加物(a~cは、それぞれ独立して、0~10の整数であり、a~cの合計は8~10;n+m=7)
・ジオール9EO付加物(a~cは、それぞれ独立して、0~10の整数であり、a~cの合計は8~10;n+m=9)
・ジオール12EO付加物(a~cは、それぞれ独立して、0~10の整数であり、a~cの合計は8~10;n+m=12)
・ジオール40EO10PO付加物(a~cは、それぞれ独立して、0~10の整数であり、a~cの合計は8~10;n+m=50)
・サーフィノール465(アセチレングリコール系界面活性剤、EO付加モル数:10.5、日信化学工業株式会社製);比較化合物
・サーフィノール485(アセチレングリコール系界面活性剤、EO付加モル数:30、日信化学工業株式会社製);比較化合物
・1級モノアルコール59EO付加物(炭素数12~13の1級モノアルコールにEO付加);比較化合物
・2級モノアルコール40EO付加物(CH-(CH-CH(-O(CHO)H)-(CH-CH;p、qは、それぞれ独立して、0~10の整数であり、p,qの合計は8~10;r=40);比較化合物。
【0072】
<評価>
[起泡力・消泡性]
各化合物の1質量%水溶液について、ロスマイルス法(JIS K 3362;2008 8.5.1)により、規定濃度の試料水溶液200 mLを規定の温度条件で900 mmの高さから30秒間で液面上に落下させたときに生じる泡の高さ(直後)を測定して起泡力として,その5分後の高さを消泡性として測定する。評価結果は表1に示す。
【0073】
[接触角]
各化合物において、0.1質量%水溶液および1質量%水溶液の接触角を測定した。具体的には、乾燥状態(25℃/50%RH)で、接触角計(協和界面科学株式会社製、型番:CA-XP)を用い、液体として0.1質量%水溶液および1質量%水溶液をそれぞれ使用して約1μLの液滴を針先に作り、これをパラフィルム(Bemis製)表面に接触させて液滴を作った。パラフィルムと液体とが接する点における、液体表面に対する接線とパラフィルム表面とがなす角で、液体を含む側の角度を接触角とした。評価結果は表1に示す。
【0074】
[静的表面張力]
各化合物の0.1質量%水溶液および1質量%水溶液について、ウィルヘルミー法(プレート法)に基づき、表面張力計(KRUSS社製、K100)にて25℃(50%RH)における表面張力(mN/m)を測定した。表面張力が低いほど、被塗装物に対する濡れ性が高いことを示す。評価結果は表1に示す。
【0075】
[動的表面張力]
各化合物の0.1質量%水溶液および1質量%水溶液を調製し、最大泡圧法によりバブルプレッシャー動的表面張力計(KRUSS社製、BP100)にて25℃(50%RH)における動的表面張力を測定した。具体的には、各化合物の0.1質量%水溶液および1質量%水溶液の15Hzおよび0.08Hzの値を測定したものである。評価結果は表1に示す。
【0076】
[臨界ミセル濃度(CMC)]
各化合物について5質量%水溶液を調製し、ウィルヘルミー法(プレート法)に基づき、表面張力計(KRUSS社製、表面張力計K100)にて5質量%水溶液を水にて0.01質量%まで希釈し、25℃(50%RH)におけるCMCを測定した。評価結果は表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
表1に示すように、実施例1~6の本発明の表面調整剤と、比較例1~4の比較化合物とでは、静的表面張力、動的表面張力の結果から、同程度の表面張力を有していることがわかった。一方で、実施例1~6の本発明の表面調整剤は、比較例1~4の比較化合物に比べて、接触角が小さく、被塗装物に対して濡れ性を向上させることがわかった。また、実施例3~6の本発明の表面調整剤は、比較例1、2の比較化合物と比べて、CMCが小さく、少ない添加量で表面張力低下能を発揮できることがわかった。
【0079】
また、起泡力・消泡性試験において、実施例1~5の本発明の表面調整剤は、比較例1~4の比較化合物に比べて、起泡直後の起泡性も低く、5分経過後の消泡性も高いことがわかった。実施例6の本発明の表面調整剤は、アルキレンオキサイドの付加モル数が近い比較例3、4の比較化合物と比べて起泡性および消泡性(破泡性)が良好なことがわかった。
【0080】
これらの結果から、本発明の表面調整剤は、少量の添加であっても、表面張力低下能が高く、かつ、破泡性に優れていることができることがわかった。よって、本発明の表面調整剤によれば、表面調整剤を含む樹脂組成物により形成される塗膜においても、被塗装物に対して良好な濡れ性と、良好な平滑性を付与できることが示唆された。