(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118686
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】釣り用ルアー
(51)【国際特許分類】
A01K 85/14 20060101AFI20240826BHJP
A01K 85/12 20060101ALI20240826BHJP
A01K 91/053 20060101ALI20240826BHJP
A01K 95/00 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
A01K85/14
A01K85/12
A01K91/053
A01K95/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025109
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】591128659
【氏名又は名称】マルキユー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100151688
【弁理士】
【氏名又は名称】今 智司
(72)【発明者】
【氏名】早川 潤
【テーマコード(参考)】
2B307
【Fターム(参考)】
2B307AA03
2B307BA42
2B307BA45
2B307BA47
2B307BA49
2B307BA70
2B307EB11
2B307EB17
2B307JA06
2B307JA11
2B307JA12
2B307JA22
2B307JB01
(57)【要約】
【課題】釣針と釣糸とが絡みにくく、魚が興味を示す動きを容易にさせやすい釣り用ルアーを提供する。
【解決手段】釣り用ルアー1は、本体部10と、本体部10の縁部の一部に設けられる錘部20と、本体部10の縁部から離れた位置に設けられる釣糸係止部30と、本体部10の縁部の近傍に設けられる釣針連結部16とを備え、釣糸係止部30が、錘部20と釣針連結部16との間であって、錘部20及び釣針連結部16から離れた位置に設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
前記本体部の縁部の一部に設けられる錘部と、
前記本体部の前記縁部から離れた位置に設けられる釣糸係止部と、
前記本体部の前記縁部の近傍に設けられる釣針連結部と
を備え、
前記釣糸係止部が、前記錘部と前記釣針連結部との間であって、前記錘部及び前記釣針連結部から離れた前記位置に設けられる釣り用ルアー。
【請求項2】
前記釣糸係止部が、釣糸連結部に連結され、前記釣糸連結部の他端に前記釣糸を係止させた請求項1に記載の釣り用ルアー。
【請求項3】
前記釣針連結部に所定の連結部材を介して釣針を連結させた場合において、前記錘部の質量が、前記釣針の質量及び前記連結部材の質量の合計より大きい請求項1又は2に記載の釣り用ルアー。
【請求項4】
前記釣糸係止部に釣糸を係止し、前記釣糸により前記釣り用ルアーを空中に保持した場合、前記本体部と前記釣糸とがなす角度が0°を超え60°以下である請求項1又は2に記載の釣り用ルアー。
【請求項5】
前記釣針連結部に所定の連結部材を介して釣針を連結させた場合において、前記釣針の質量及び前記連結部材の質量の合計である合計質量に対する前記錘部の質量の比が1を超えると共に、前記錘部から前記釣糸係止部までの距離に応じ、当該比が決定された請求項1又は2に記載の釣り用ルアー。
【請求項6】
前記本体部が、板状体であり、
前記釣り用ルアーが水中に存在する場合、前記板状体が水圧を受ける請求項1又は2に記載の釣り用ルアー。
【請求項7】
前記錘部が、平面状の領域を有し、
前記釣り用ルアーが前記領域を平面に接触させて前記平面に載置された場合、前記平面と前記本体部とのなす角度が0°を超え90°未満である請求項1又は2に記載の釣り用ルアー。
【請求項8】
釣り用ルアーであって、
本体部と、
前記本体部の縁部の一部に設けられる錘部と、
前記本体部の前記縁部から離れた位置に設けられる釣糸係止部と、
前記本体部の前記縁部の近傍に設けられる釣針連結部と、
を備え、
前記釣糸係止部に釣糸が係止されて前記釣糸により前記釣り用ルアーが空中に保持された場合、前記釣糸が前記本体部に非接触になるように、前記釣糸係止部の前記本体部に設けられる前記位置が決定された釣り用ルアー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣り用ルアーに関する。特に、本発明は、板状体の本体部を有する釣り用ルアーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、魚釣り用ルアーの多くは、疑似餌であるがゆえにルアーの使用時にルアー本体の断面肉厚方向が鉛直方向に沿うように(例えば、水底に対して肉厚方向や幅広方向が鉛直方向に沿うように)構成されている(例えば、非特許文献1参照。)。一方、スプーン型ルアーのようにルアー本体を平板状にし、平板状の当該ルアー本体が略水平方向に沿うように(例えば、水面に対して当該ルアー本体が略水平方向に沿うように)構成されるルアーも存在する。例えば、略楕円形の板体状に形成され中央部分が湾曲して凹部が形成されたルアー本体と、ルアー本体の湾曲の膨らんだ側の側面に設けられルアー本体の長手方向に沿って立設された整流用の板状のフィンと、ルアー本体の長手方向の一端部に形成された釣針取付部と、ルアー本体の長手方向の反対の端部に設けられた釣糸取付部が設けられているスプーン形ルアーが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、略一様な厚みでかつ略長円形をした板状体と、この板状体において相対向する端部間の距離が最も長い方向を長手方向とすると共にこの両端部を通る仮想線を長手方向軸線とするとき、この長手方向軸線上における板状体の両端部に形成された貫通穴と、長手方向軸線上における板状体の対向端部間の略二等分位置を板状体の中心点とするとき、板状体の一方の表面には長手方向軸線上における中心点より偏位した位置に表面から突き出した第1の突起部が形成されているルアーが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-229941号公報
【特許文献2】特開2003-250391号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】株式会社シマノ“ボディ構造、泳ぎ、フラッシング…エクスセンス ストロングアサシンで攻める磯のヒラスズキ”、[online]、[令和5年2月6日検索]、インターネット<URL:https://fish.shimano.com/ja-JP/content/fishingstyle/article/lure-x/2021/210225/index.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、一般的にスプーンと呼ばれているルアーにおいては、ルアー本体の一端に釣針が設けられ、他端に釣糸が設けられていることから、ルアーを水中へと投擲した場合、釣糸と釣針とが絡まる場合がある。また、特許文献1や特許文献2に記載されているルアーは本体の一端に釣針を設け、他端に釣糸を設けていることから、ルアーが水中に存在している状態で釣糸を引くと、水がルアー本体表面をすべるように流れていくので、ルアー本体には水圧があまりかからず、振れを大きくするような動きを容易にさせることが困難である。
【0007】
したがって、本発明の目的は、釣針と釣糸とが絡みにくく、魚が興味を示す動きを容易にさせやすい釣り用ルアーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するため、本体部と、本体部の縁部の一部に設けられる錘部と、本体部の縁部から離れた位置に設けられる釣糸係止部と、本体部の縁部の近傍に設けられる釣針連結部とを備え、釣糸係止部が、錘部と釣針連結部との間であって、錘部及び釣針連結部から離れた位置に設けられる釣り用ルアーが提供される。
【0009】
また、本発明は、上記目的を達成するため、釣糸係止部が、釣糸連結部に連結され、釣糸連結部の他端に釣糸を係止させることもでき、釣針連結部に所定の連結部材を介して釣針を連結させた場合において、錘部の質量が、釣針の質量及び連結部材の質量の合計より大きいことが好ましい。また、上記釣り用ルアーにおいて、釣糸係止部に釣糸を係止(又は釣糸係止部に所定の釣糸連結部を連結した後、当該釣糸連結部の他端に釣糸を係止)し、釣糸により釣り用ルアーを空中に保持した場合、本体部と釣糸とがなす角度が0°を超え40°以下であることが好ましい。
【0010】
また、上記釣り用ルアーにおいて、釣針連結部に所定の連結部材を介して釣針を連結させた場合において、釣針の質量及び連結部材の質量の合計である合計質量に対する錘部の質量の比が1を超えると共に、錘部から釣糸係止部までの距離に応じ、当該比が決定されていることが好ましい。
【0011】
また、上記釣り用ルアーにおいて、本体部が、板状体であり、釣り用ルアーが水中に存在する場合、板状体が水圧を受けることが好ましい。更に、上記釣り用ルアーにおいて、錘部が、平面状の領域を有し、釣り用ルアーが当該領域を平面に接触させて平面に載置された場合、平面と本体部とのなす角度が0°を超え90°未満であることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、上記目的を達成するための釣り用ルアーであって、本体部と、本体部の縁部の一部に設けられる錘部と、本体部の縁部から離れた位置に設けられる釣糸係止部と、本体部の縁部の近傍に設けられる釣針連結部とを備え、釣糸係止部に釣糸が係止(又は釣糸係止部に所定の釣糸連結部を連結した後、当該釣糸連結部の他端に釣糸を係止)されて釣糸により釣り用ルアーが空中に保持された場合、釣糸が本体部に非接触になるように、釣糸係止部の本体部に設けられる位置が決定された釣り用ルアーが提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る釣り用ルアーによれば、釣針と釣糸とが絡みにくく、魚が興味を示す動きを容易にさせやすい釣り用ルアーを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る釣り用ルアーの構成図である。
【
図2】本実施形態に係る釣り用ルアーの使用状態を示す図である。
【
図3】本実施形態に係る釣り用ルアーの使用方法を示す図である。
【
図4】本実施形態に係る釣り用ルアーの使用方法を示す図である。
【
図5】実験例における釣り用ルアーの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施の形態]
<釣り用ルアーの概要>
【0016】
従来のルアーの多くは細長形状の本体部の一方の端に釣糸が係止される部分を設け、他方の端に釣針が設けられる形状を有している。しかし、係る従来のルアーを用いると、釣りの最中に釣糸が釣針に絡まる事態が頻発する。また、従来の魚を模したようなルアーは、当該魚の断面肉厚方向が鉛直方向に沿うように(つまり、水中においてルアーを引いた場合、断面肉厚方向が重力方向に沿うように)構成されている。更に、従来のルアーにおいては本体部の端部に釣糸を設けて釣糸を引く。その結果、従来のルアーは、水中で釣糸が引かれる方向にそのまま進まざるを得ず、魚が興味を示すとは必ずしも限らない状態であった。
【0017】
そこで本発明者は発想を転換させ、ルアーの本体部の内側部分において釣糸を係止すること、及びルアーの本体部の断面肉厚方向若しくは幅広方向が水中において鉛直方向(重力方向)に沿わないように(つまり、水中においてルアーを引いた場合、断面肉厚方向若しくは幅広方向が鉛直方向及びルアーの進行方向に対して垂直方向に沿うように)することで、従来とは異なる結果が得られるのではないかと考えた。そして、ルアーの本体部の内側部分に釣糸を係止すると共に、ルアーを空中に吊り下げた場合、ルアーの本体部が釣糸に接触せず、かつ、鉛直方向に向く釣糸に対して本体部が所定の角度を有するように釣糸係止部の本体部における位置を決定した釣り用ルアーを試作したところ、想像以上の釣果が得られた。本発明は係る発明者の知見に基づいて創作された。
【0018】
すなわち、本実施形態に係る釣り用ルアーは、例えば、平板状の本体部の縁部(例えば、本体部が細長形状の場合、長手方向の一方の端)に錘部が設けられると共に、他の縁部近傍(例えば、本体部が細長形状の場合、長手方向の他方の端の近傍)に釣針が設けられ、かつ、正面視にて本体部の内側に釣糸が係止される釣糸係止部が設けられて構成される。つまり、本実施形態に係る釣り用ルアーにおいて釣糸係止部は、平板状の本体の内側領域に設けられる。このような本実施形態に係る釣り用ルアーによれば、釣糸と釣針とが絡むことを抑制できる。また、本実施形態に係る釣り用ルアーによれば、釣糸を引く力を加減することで平板状の本体部に加わる水圧を調整できるので、魚が興味を示すような様々な動きを釣り用ルアーにさせることができる。
【0019】
<釣り用ルアー1の詳細>
図1は、本実施形態に係る釣り用ルアーの構成の一例を示す。具体的に、
図1(a)は釣り用ルアー1の斜視図の一例を示し、
図1(b)は釣り用ルアー1の正面図の一例を示し、
図1(c)は釣り用ルアー1の側面図の一例を示す。
【0020】
本実施形態に係る釣り用ルアー1は、本体部10と、本体部10の端部14に設けられる錘部20と、本体部10の内側に設けられる釣糸係止部30と、本体部10の縁部近傍に設けられる釣針連結部16とを備える。なお、本体部10は「ボディー」とも称し、釣糸係止部30は「アイ」とも称する。なお、釣糸係止部30は、本体部10の内側に形成された開口部12に設けてもよい。また、
図1の例において本体部10には開口部12が図示されているが、開口部12を本体部10に設けず、本体部10に釣糸係止部30を直接設けてもよい。
【0021】
(本体部10)
本体部10は、板状体を有して構成されることが好ましい。例えば、本体部10は、平板状であり、略楕円形状であってよい。なお、本体部10の形状は面状部分を有する限り略楕円形状に限らず、略円形状、略n角形状(nは3以上の整数)等の様々な形状にすることができる。一例として本体部10は、略楕円形状の板状体であって、長軸の長さが20mm程度、短軸の長さが10mm程度、厚さが1mm程度のサイズを有して構成できる。また、本体部10の表面に、所定の凹凸や溝を設けることもできる。更に、本体部10の表面に所定の模様や色彩等を付すこともできる。
【0022】
また、本体部10は、木材、合成樹脂、及び/又は金属材料を用いて構成できる。また、本体部10は、サーキットボードを用いて構成してもよい。合成樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウタレン、ポリ乳酸、ポリテトラフルオロエチレン、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、又はポリエステル等を用いることができる。また、金属材料としては、例えば、鉄、真鍮、ステンレス、アルミニウム、チタン、タングステン等の金属やその他合金を用いることができる。更に本体部10は、金属と樹脂との複合材料を用いて構成してもよい。なお、本体部10は、1つの材料から1枚の板状体として構成することも、複数の材料を用いて1枚の板状体として構成することもできる。更に本体部10は、複数枚の板状体を組み合わせて構成してもよい(この場合において各板状体を構成する材料は同一でも異なっていてもよい。)。
【0023】
(錘部20)
錘部20は、本体部10の縁部の一部に設けられる。例えば、本体部10が、板状体であって細長形状(一例として、略楕円形状)を有する場合、錘部20は、本体部10の長手方向における一方の端部(この端部が縁部の一部である。)に固定される。
図1の例で錘部20は、本体部10の長手方向の一方の端部14に固定される。本体部10に対する錘部20の固定方法に特に限定はない。例えば、本体部10の端部の一部を錘部20内に埋め込むことや、接着剤等の固定部材を用いて本体部10の端部の一部を錘部20に固定することができる。
【0024】
また、錘部20は、
図1(b)に示すように正面視にて略矩形状を有してよい。また、
図1(c)に示すように錘部20は、側面視にて上面(本体部10が固定される側)が本体部10側に向かって湾曲した形状を有し、下面が略平坦な形状を有し、錘部20の下面は平面状の領域を有して構成されてよい。錘部20の形状は上記に限らず、用途に応じ下面を平面ではなく、丸みを帯びた形状等の他の形状にしてもよい。
【0025】
錘部20は、金属材料を用いて構成される。金属材料としては、例えば、鉛、鉄、真鍮、タングステン、又はその他の合金等が挙げられる。また、錘部20の比重は、本体部10の比重より大きいことが好ましい。一例として錘部20は、1g若しくは1.5g程度の質量を有して構成できる。
【0026】
(釣糸係止部30)
釣糸係止部30は、釣糸又は後述の釣糸連結部55が係止される部材である。釣糸係止部30は、平板状の本体部10の縁部から離れた位置に設けられる。すなわち、釣糸係止部30は、本体部10の内側に設けられる。そして、釣糸係止部30は、釣針連結部16よりも錘部20に近い本体部10の内側領域に設けられることが好ましい。
【0027】
また、釣糸係止部30は、
図1(a)及び
図1(c)に示すように側面視にて半円環形状又は円形状を有し、本体部10に設けられた開口部12を介し、本体部10の表面から離れる方向に突き出した形状を有して構成される。釣糸係止部30は、例えば、針金状の部材(以下、「針金部材」という。)を用いて構成される。一例として、針金部材の一方の端を錘部20に固定する。そして、針金部材の一方の端と他方の端との間に釣糸係止部30としての半円環形状部分を形成し、この半円環形状部分を本体部10の裏面側から開口部12に挿入して本体部10の表面から離れる方向に突き出させる。この場合において、半円環形状部分を除く部分、すなわち、針金部材の一方の端から半円環形状部分の一方の端部までの部分を第1固定部32とし、半円環形状部分の他方の端部から針金部材の他方の端までの部分を第2固定部34とする。そして、
図1(c)に示すように第1固定部32及び第2固定部34を本体部10の裏面に接触及び固定させる。これにより釣糸係止部30は、本体部10に固定される。なお、別の方法として、釣糸係止部30としてのネジ付属の円形状のアイ(例えば、ヒートンのような形状のアイ)を本体部10にねじ込んで固定してもよい。その場合、本体部10は開口部12を有さずに構成される。
【0028】
釣糸係止部30は、例えば、金属材料を用いて構成される。金属材料としては、一例として、ステンレス等が挙げられる。
【0029】
(釣針連結部16)
釣針連結部16は、釣針が連結される部分である。釣針連結部16は、本体部10の縁部(ただし、錘部20が設けられる縁部からは離れた縁部)の近傍に設けられる。例えば、本体部10が板状体であって細長形状(一例として、略楕円形状)を有する場合、釣針連結部16は、本体部10の長手方向における他方の端部18(一方の端部14には錘部20が設けられている)近傍に設けられる。具体的に釣針連結部16は本体部10の他方の端部18近傍に設けられる孔部(なお、「貫通穴」とも称する。)であってよい。この孔部である釣針連結部16に、例えば、円環状の部材を介して釣針が連結される。
【0030】
(釣糸係止部30の位置の詳細)
本実施形態に係る釣り用ルアー1においては、本体部10に設けられる釣糸係止部30の位置(具体的には、釣糸係止部30に釣糸が係止された点)を支点とした場合、錘部20と釣針連結部16に連結される釣針とのバランスが所定のバランスになり、それにより所期の効果が発揮される。すなわち、釣糸係止部30は、錘部20と釣針連結部16とから離れた本体部10の位置に設けられる。具体的に、釣糸係止部30は、錘部20から釣糸係止部30までの距離が、釣針連結部16から釣糸係止部30までの距離より短くなる本体部10の位置に設けられる。
【0031】
例えば、本体部10が平板状で細長形状(例えば、略楕円形状)である場合を説明する。この場合、錘部20と釣糸係止部30とを結ぶ仮想線を想定し、当該仮想線の延長線と本体部10との2つの接点の一方の接点部分に錘部20が設けられ、他方の接点部分近傍に釣針連結部16が設けられる。そして、釣糸係止部30は、錘部20と釣針連結部16とを結んだ仮想線上において錘部20及び釣針連結部16から離れた位置(つまり、錘部20と釣針連結部16との間の位置)に設けられ、かつ、釣針連結部16より錘部20に近い領域に設けられる。
【0032】
なお、錘部20の重心、及び本体部10(若しくは、釣針40)の重心を規定し、釣糸係止部30の位置を規定してもよい。すなわち、釣糸係止部30は、錘部20の重心と本体部10の重心との間の本体部10の位置に設けられる。そして、釣糸係止部30は、錘部20から離れた本体部10の内側の位置であって、本体部10の重心よりも錘部20の重心に近い位置(錘部20の重心によった位置)に設けられてもよい。
【0033】
このように、釣り用ルアー1においては、錘部20と釣針連結部16(及び釣針連結部16に連結される釣針40)との間に釣糸係止部30を設けるので、釣糸係止部30を支点としてシーソーのように釣り用ルアー1を動かして魚を誘っても、針絡み等の不具合の発生を抑制できる。
【0034】
<釣り用ルアー1の使用状態の例>
図2は、本実施形態に係る釣り用ルアーの使用状態の一例を示す。具体的に
図2(a)は、本実施形態に係る釣り用ルアー1に釣針40及び釣糸50を付けた状態の一例を示し、
図2(b)は、本実施形態に係る釣り用ルアー1を空中で吊り下げた状態の一例を示し、
図2(c)は、本実施形態に係る釣り用ルアー1を平坦面に載置した状態の一例を示す。更に、
図2(d)は、本実施形態の変形例に係る釣り用ルアーに釣針40及び釣糸50を付けた状態の一例を示し、
図2(e)は、本実施形態の更に他の変形例に係る釣り用ルアーに釣針40及び釣糸50を付けた状態の一例を示す。
【0035】
図2(a)に示すように、一例として、釣り用ルアー1の釣糸係止部30に釣糸50が係止され、円環状の連結部材42を介して釣針連結部16に釣針40が連結されることで釣り用ルアー1は釣りに用いられる。なお、釣針40の形状は図示された形状に限らない。釣る対象の魚、釣りをする場所、及び/又は天候等に応じ、様々な形状の釣針40を用いることができる。なお、連結部材42は「係合リング」とも称する。
【0036】
そして、
図2(b)に示すように、釣糸係止部30に釣糸50を係止し、釣糸50により釣り用ルアー1を空中に保持した場合、本体部10と釣糸50とがなす角度θ
1(つまり、側面視において本体部10と釣糸50とがなす角度θ
1)が0°を超え、90°未満であることが最低条件である。すなわち、釣り用ルアー1において、釣糸係止部30の本体部10における位置を支点とした場合において、釣糸50により釣り用ルアー1を空中に保持したときに釣糸50が本体部10に非接触になるように、釣糸係止部30の本体部10に設けられる位置が決定される。錘部20を力点、釣針連結部16を作用点とすれば、錘部20が下がり、釣針連結部16が上がり、かつ、釣糸50と本体部10とが接触しないバランスになるように、支点である釣糸係止部30の本体部10における位置が決定される。
【0037】
そして、釣糸係止部30に釣糸50を係止し、釣糸50により釣り用ルアー1を空中に保持した場合、本体部10と釣糸50とがなす角度θ1は60°以下であることが好ましく、40°以下であることがより好ましい。なす角度θ1が60°を超えると、釣り用ルアー1を水中に投入した場合、魚の種類によっては魚が興味を示すような様々な動きを釣り用ルアーにさせ難くなる。ただし、釣り用ルアー1を用いる場所の状況(釣り用ルアー1を用いる場所が川、海、若しくは湖であるか否か、風速等の天候がいかなる状況であるか等)、釣りの対象の魚の種類、及び/又は投げ釣りの要否等によっては、なす角度θ1は60°を超え90°未満であることを妨げない。
【0038】
このように釣り用ルアー1においては、本体部10の下部に錘部20が位置し、本体部10の上部に釣針40が位置しているため、魚が釣針40に掛かりやすくすることができる(つまり、針掛かりしやすくできる。)。
【0039】
更に、
図2(c)に示すように、釣り用ルアー1を地面や水底等の平面100に載置した場合を説明する。この場合、錘部20が有する平面状の領域20aが平面100に接触し、釣り用ルアー1が平面100に載置される。係る場合において、平面100と本体部10とのなす角度θ
2が0°を超え90°未満になるように錘部20の質量と釣針40の質量とのバランスが決定される。係るなす角度θ
2は、60°以下が好ましく、40°以下がより好ましい。
【0040】
また、錘部20の質量は、本体部10の質量、又は釣針40の質量と連結部材42の質量との合計質量より重いことが好ましい。具体的に、錘部20の質量は、釣糸係止部30の本体部10に設けられる位置に応じ、釣針40の質量及び連結部材42の質量の合計質量(以下、「合計質量」という。)より重くすることが好ましい。
【0041】
例えば、本体部10(一例として、略楕円形状を有する本体部10)の中心から長軸方向に沿って一方の端部までの距離、すなわち、長半径を4等分した場合において、本体部10の中心位置を「A位置」、中心から長軸に沿って一方の端部側に長半径の1/4離れた位置を「B位置」、中心から長軸に沿って一方の端部側に長半径の1/2離れた位置を「C位置」、中心から長軸に沿って一方の端部側に長半径の3/4離れた位置を「D位置」とする。
【0042】
この場合、釣糸係止部30の位置が本体部10の中心、すなわち「A位置」である場合(なお、この場合、本体部10の一方の端部を覆うように錘部20が本体部10に固定されるので、釣糸係止部30は釣針連結部16より錘部20の方に近い位置になる。)、錘部20の質量は、合計質量以上であることを要し、合計質量の1.5倍以上であることが好ましい。また、釣糸係止部30の位置が「B位置」である場合、錘部20の質量は、合計質量の4倍以上が好ましく、5倍以上がより好ましい。また、釣糸係止部30の位置が「C位置」である場合、錘部20の質量は、合計質量の10倍以上が好ましく、15倍以上がより好ましい。更に、釣糸係止部30の位置が「D位置」である場合、錘部20の質量は、合計質量の35倍以上が好ましく、45倍以上がより好ましい。
【0043】
更に、
図2(d)は、本実施形態の変形例に係る釣り用ルアー1の概要を示す。
図2(a)等において釣り用ルアー1は、釣糸係止部30に釣糸50を直接付けている。一方、
図2(d)における釣り用ルアーにおいては、釣糸係止部31に釣糸連結部55を付け、更に釣糸連結部55の他端に釣糸50を付けて構成される。具体的に
図2(d)に示すように、本実施形態の変形例に係る釣り用ルアー1は、本体部11に開口部12を設けずに、本体部11の所定の位置に釣糸係止部31を設ける。そして、釣糸係止部31に釣糸連結部55の一端を連結させ、釣糸連結部55の他端に釣糸50を連結することもできる。釣糸連結部55は、例えば、リング、ヨリモドシ、スナップ等を用いるとよい。更に
図2(e)においては、一例として、釣糸50を細長状のスナップ等の釣糸連結部56に予め付けておき、この釣糸連結部56を釣糸係止部30に付けた構成の釣り用ルアーを示す。釣糸50をスナップに予め付けた上で当該スナップを釣糸係止部30に係止できるようにすることで、釣り用ルアーの本体部10への釣糸50の着脱がスムーズにでき、また、細長状の釣糸連結部56を用いることで釣り用ルアーをより効果的に動かすことができる効果も発揮させることができる。
【0044】
<釣り用ルアー1の使用方法の例>
図3は、本実施形態に係る釣り用ルアーの使用方法の一例を示す。
【0045】
釣り用ルアー1の釣糸係止部30に釣竿(図示しない)の釣糸50を係止し、釣針連結部16に連結部材42を介して釣針40を連結する。この状態で釣り用ルアー1を投擲し、水中に投入することができる。この場合、釣り用ルアー1の錘部20が投擲方向に向き、錘部20から水中へと釣り用ルアー1は沈んでいく。すなわち、本実施形態に係る釣り用ルアー1を用いると、釣り用ルアー1のキャスト時(投擲時)には錘部20が投擲方向に向くので、従来のルアーに比べて釣り用ルアー1の飛距離を長くすることができる。
【0046】
そして、釣り用ルアー1は、
図3(a)に示すように錘部20の下部の平坦な領域20aを水底に接するように水中に沈む。これにより、ユーザが釣竿を介して釣糸50を引くことができる状態になる。
【0047】
ここで、ユーザが釣糸50を引く力F
1が所定の力以下である場合、釣り用ルアー1は特異な動きをする。まず、釣り用ルアー1の本体部10の面10a、すなわち、釣糸50が係止されている釣糸係止部30が突き出ている側の面10aは平坦な面である。釣り用ルアー1は水中に存在しているので、この状態でユーザが釣糸50を引くと、釣糸50に力F
1が加わる。そして、本体部10、すなわち、本体部10の面10aはこの力F
1に応じた水圧を受ける(以下、「
図3(a)の状態」という。)。なお、所定の力とは、釣糸50を引いた場合に、本体部10の面10aと水面とがなす角度が所定の水圧を受ける角度になる力であってよい。
【0048】
続いて
図3(b)に示すように、釣り用ルアー1は面10aに水圧を受けた状態で釣糸50が引かれる方向へと浮き上がり(以下、「
図3(b)の状態」という。)、ユーザが釣糸50を引く力を弱めると、浮き上がった場所の真下へと素早く再び沈んで水底に錘部20の領域20aが接することになる(
図3(a)の状態に戻る。)。更にユーザが再び釣糸50を同程度の力で引くと、釣り用ルアー1は
図3(a)の状態から
図3(b)の状態になり、ユーザが釣糸50を引く力を弱めると再び
図3(a)の状態に戻る。すなわち、釣糸50を引く力を適切な力(弱い力)に調整することで、本体部10の面10aの釣り用ルアー1の進行方向に対してなす角度を確保することができるので、面10aに加わる水圧を確保でき(つまり、面10aにおいて水の抵抗を受けることができ)、水中での釣り用ルアー1の移動距離を短くできる。
【0049】
つまり、
図3(a)の状態から
図3(b)の状態になり、
図3(b)の釣り用ルアー1が浮き上がっている場所の真下に釣り用ルアー1が沈んで着底した場合に、
図3(a)に示した釣り用ルアー1の場所から
図3(b)に示した釣り用ルアー1の場所の真下の位置までの距離を短くできる。換言すると、釣糸50を弱い力で引くこと、及び当該力を弱めることを繰り返すことで、
a)釣り用ルアー1を水底から所定距離だけ浮かせる。
b)釣糸50を引く方向に釣り用ルアー1を短距離、進ませる。
c)釣り用ルアー1を素早く着底させる。
というa)、b)、及びc)の動作を釣り用ルアー1に繰り返させることができる。すなわち、釣糸50を所定の力で引き、引いた後に当該力を緩めることで、釣り用ルアー1を、水底において小刻みに弾むように移動させることができる(つまり、水底に釣り用ルアー1を小刻みに着底させて動かすことができる。)。なお、a)乃至c)の動作中、釣り用ルアー1は錘部20を水底側に向けた状態で動作する。
【0050】
<釣り用ルアー1の使用方法の例2>
図4は、本実施形態に係る釣り用ルアーの使用方法の他の一例を示す。
【0051】
釣り用ルアー1の釣糸係止部30に釣竿の釣糸50を係止し、釣針連結部16に連結部材42を介して釣針40を連結する。この状態で釣り用ルアー1を投擲し、水中に投入する。ここで、ユーザが釣糸50を引く力F
2が所定の力を超える場合(少なくとも、
図3において説明した例における力F
1を超える場合)、釣り用ルアー1は更に特異な動きをする。まず、釣り用ルアー1の錘部20が釣糸50を引く力F
2の方向に向いた状態で水面方向へと移動する。つまり、釣糸50が強い力で引かれると、釣針40よりも錘部20の位置が上になった状態で釣り用ルアー1は水中を上昇する(以下、「
図4の状態」という。)。ここで、所定の力を超える力(強い力)とは、釣糸50を引いた場合に、本体部10の面10aと水面とがなす角度が所定の水圧を受けにくくなる角度になる力であってよい。例えば、本体部10の長手方向が水面の法線方向に近くなると、本体部10は水圧を受けにくくなる。したがって、釣糸50を所定の力を超える力で引くと、本体部10に加わる水の抵抗が減少するので、釣り用ルアー1をスムーズに移動させることができる。続いて、釣糸50を引く力を弱めると釣り用ルアー1は、上昇した位置の真下に錘部20を下側に向けて沈み(
図4の「A」の方向に錘部20が下がりつつ沈み)、水底に錘部20が接地する。
【0052】
つまり、
図3(a)の状態から
図4の状態になり、
図4の釣り用ルアー1が浮き上がっている場所の真下に釣り用ルアー1が沈んで着底することになる。釣糸50を強い力で引くこと、及び当該強い力を弱めることを繰り返すことで、
d)釣り用ルアー1が錘部20を水面側に向けてスムーズに浮き上がる。
e)釣り用ルアー1が釣糸50を引く方向に長距離(少なくとも
図3の例における距離より長い距離)、進む。
f)釣り用ルアー1が素早く着底する。
というd)、e)、及びf)の動作を釣り用ルアー1に繰り返させることができる。換言すれば、釣糸50を所定の力で強く引き、強く引いた後に当該力を緩めることで、錘部20を水面側に向けて釣り用ルアー1が浮き上がり、続いて、錘部20を水底側に向けて釣り用ルアー1が沈むというダイナミックな動きを釣り用ルアー1にさせることができる。
【0053】
図3及び
図4に示したように、釣糸50を引く力の強弱により水中における錘部20の位置を上側若しくは下側に変えることができる。その結果、釣り用ルアー1によれば、釣り用ルアー1が水中で跳ね上がる軌道及び釣り用ルアー1自体の姿勢を、釣糸50を引く力を変えるだけで自在に調整できる。なお、本体部10のサイズ、質量、及び/又は形状を適宜調整することで、釣糸50を引いたときに釣り用ルアー1に加わる水の抵抗、水中における軌道、及び/又は姿勢(跳ね上がり方)を調整することができる。
【0054】
<実施の形態の効果>
本実施形態に係る釣り用ルアー1においては、本体部10を平板状にし、本体部10の一方の端に錘部20を設けると共に他方の端に釣針連結部16を設け、錘部20と釣針連結部16との間に釣糸係止部30を設けているので、釣糸50を引く力を適宜変化させることで魚が興味を示す動きを釣り用ルアー1にさせることができる。また、釣り用ルアー1においては、本体部10の下端に錘部20が設けられ、上部に釣針連結部16を介して釣針40が設けられるので、釣針と釣糸とが絡むような不具合の発生を抑制できる。これにより釣り用ルアー1においては、釣針と釣糸とが絡みにくいだけでなく、魚が興味を示す動きをさせやすくすることができる。
【0055】
また、一般的にスプーンと称される従来のルアーは釣糸を引いて止めた(糸を緩めた)場合、ルアーが水の抵抗をあまり受けないので、ルアーは釣糸を引いた力の惰性で水中を前(釣り人側)に進み、釣り人の手元まですぐに戻ってくる。そのため、従来のルアーにおいては魚を釣針に食い付かせる機会が減り、釣果も相対的に少なくなる。これに対して本実施形態に係る釣り用ルアー1においては、釣り用ルアー1を水中へと投擲し、釣糸を引いて止めた(糸を緩めた)場合、釣り用ルアー1が水の大きな抵抗を受けるので、当該止めた位置のほぼ直下に釣り用ルアー1は落ちる。このように、釣り用ルアー1が釣り人の手元まで戻りにくい状態をつくることで、その分、誘いを入れながら魚を食いつかせる機会を多くできることから釣果を増やすことができる。
【0056】
<実験例>
図5は、実験例における釣り用ルアーの模式的な図の一例を示す。
【0057】
釣り用ルアー1における錘部20の質量と、釣針40の質量及び連結部材42の質量の合計質量との関係に基づく、釣糸50と本体部10とがなす角度θ1の関係を以下のように確認した。
【0058】
本体部10として、略楕円形状のアクリル板(長半径L:5cm、短半径2.5cm)を準備した。そして、長軸方向の一方の端に貫通穴(釣針連結部16)を設け、貫通穴に係合リング(連結部材42)を介して釣針40を連結した。そして、本体部10の中心位置を「A位置110」とし、本体部10の長半径を4等分した場合において中心から長軸に沿って一方の端部側(錘部20が設けられる側)に長半径Lの1/4(つまり、1.25cm)離れた位置を「B位置112」、中心から長軸に沿って一方の端部側に長半径Lの1/2(つまり、2.5cm)離れた位置を「C位置114」、中心から長軸に沿って一方の端部側に長半径Lの3/4(つまり、3.75cm)離れた位置を「D位置116」とした。
【0059】
そして、釣針40の質量及び連結部材42の質量の合計である合計質量を「1」としたときの錘部20の質量の比率(以下、「錘質量倍数」という。錘質量倍数は、合計質量に対する錘部20の質量の比である。)を変化させ、釣糸係止部30に釣糸50を係止して釣り用ルアー1を空中に持ち上げたときの釣糸50と本体部10とのなす角度θ1を測定した。その結果を表1に示す。なお、釣針40の質量は0.6g、連結部材42の質量は0.55gであり、合計質量は1.15gである。したがって、錘質量倍数は、錘部の質量を合計質量で除して算出される。
【0060】
【0061】
表1を参照すると分かるように、釣糸係止部30が「A位置110」に設けられている場合、錘質量倍数が1.7倍の時にθ1が36°であり、1.9倍の時に35°であり、5.0倍の時に18°であることが示された。
【0062】
また、釣糸係止部30が「B位置112」に設けられている場合、錘質量倍数が4.7倍の時にθ1が38°であり、5.0倍の時に36°であり、6.3倍の時に30°であり、7.9倍の時に23°であり、9.6倍の時に21°であり、12.6倍の時に18°であり、16.6倍の時に15°であることが示された。
【0063】
また、釣糸係止部30が「C位置114」に設けられている場合、錘質量倍数が16.6倍の時にθ1が30°であることが示された。更に、釣糸係止部30が「D位置」に設けられている場合、錘質量倍数が54.8倍の時にθ1が21°であることが示された。
【0064】
このように、釣糸係止部30の位置に応じ、釣針40の質量と連結部材42の質量との合計質量と錘部20の質量との対応関係を調整することでなす角θ1を適切な角度に調整できることが示された。すなわち、合計質量に対する錘部20の質量の比を錘部20から釣糸係止部30までの距離に応じて調整することで所望のなす角θ1を有する釣り用ルアー1を構成できることが示された。
【実施例0065】
以下に実施例を挙げて更に具体的に説明する。なお、実施例は例示であり、限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
【0066】
[実施例1]
実施例1として
図1に示すような釣り用ルアー1を準備した。具体的に、略楕円形状のガラスエポキシ樹脂板(長半径:10mm[長さ20mm]、短半径:5mm、茶色塗料で塗装。)の本体部10の長軸方向の一方の端に貫通穴(釣針連結部16)を設け、貫通穴に係合リング(連結部材42)を介して釣針40を連結した。そして、本体部10の他方の端に錘部20を設け、本体部10の長軸に沿って錘部20の端から2mm離れた個所(A箇所)から3mm離れた個所(B箇所)までに設けた開口部12(A箇所からB箇所までが長さが3mmの細長の開口になる。)に釣糸係止部30を設けることで実施例1に係る釣り用ルアー1を準備した。実施例1に係る釣り用ルアー1の質量は1.3gである。
【0067】
[比較例1、比較例2]
比較例1に係るルアーとして、ノリーズの「トラウトZX」(質量:3.5g、長さ:30mm)を準備した。また、比較例2に係るルアーとしてノリーズの「鱒玄人ブーン」(質量:2.5g、長さ:18mm)を準備した。
【0068】
そして、実施例1に係る釣り用ルアー1、比較例1及び比較例2に係るルアーのそれぞれを用い、発明者が以下の条件で実釣りをした。
【0069】
(実釣り条件)
・実施日:2023年2月13日(月)
・場所:アングラーズベース赤城山(住所:群馬県前橋市柏倉町1964)
・天候:雨
・気温:9℃
・水温:7℃
・対象魚:ニジマス
【0070】
表2は実釣りの結果を示す。
【0071】
【0072】
表2を参照すると分かるように、実施例1に係る釣り用ルアー1を用いた場合、比較例1及び比較例2に係るルアーに比べ、魚信数及び釣果尾数共に多いことが示された。また、実施例1に係る釣り用ルアー1を用いた場合、キャスト数に対する魚信数は同一であった。これは、実施例1に係る釣り用ルアー1の本体部10に釣糸が絡まなかったことにより、釣り用ルアー1の動きを最大限に活かすことができたと共に、当該動きが優れた動きであったため、釣果を向上させることができたと考えられる。
【0073】
以上、本発明の実施の形態及び実施例を説明したが、上記に記載した実施の形態及び実施例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態及び実施例の中で説明した特徴の組み合わせの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0074】
なお、本実施形態に係る釣り用ルアー1は、特許請求の範囲と混同されるべきでない以下の付記項でも言及できる。
【0075】
(付記項1)
本体部と、
前記本体部の縁部の一部に設けられる錘部と、
前記本体部の前記縁部から離れた位置に設けられる釣糸係止部と、
前記本体部の前記縁部の近傍に設けられる釣針連結部と、
を備え、
前記釣糸係止部が、前記錘部の重心と前記本体部の重心との間であって、前記錘部から離れた位置であって、前記本体部の前記重心より前記錘部の前記重心に近い位置に設けられる釣り用ルアー。
(付記項2)
釣り用ルアーであって、
本体部と、
前記本体部の縁部の一部に設けられる錘部と、
前記本体部の前記縁部から離れた位置に設けられる釣糸係止部と、
前記本体部の前記縁部の近傍に設けられる釣針連結部と、
を備え、
前記釣糸係止部に釣糸が係止されると共に、前記釣針連結部に所定の連結部材を介して釣針が連結され、前記釣糸により前記釣り用ルアーが空中に保持された場合、前記釣糸が前記本体部に非接触になるように、前記連結部材の質量と前記釣針の質量との合計の質量である合計質量に対する前記錘部の質量の比率に応じて前記釣糸係止部の前記本体部に設けられる前記位置が決定された釣り用ルアー。