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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118694
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】廃棄物の油化方法および油化装置
(51)【国際特許分類】
   C10G 1/10 20060101AFI20240826BHJP
   B09B 3/40 20220101ALI20240826BHJP
   C10G 1/00 20060101ALI20240826BHJP
   C08J 11/14 20060101ALI20240826BHJP
   B09B 101/80 20220101ALN20240826BHJP
【FI】
C10G1/10
B09B3/40 ZAB
C10G1/00 B
C08J11/14
B09B101:80
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025122
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】520216105
【氏名又は名称】株式会社千輝
(71)【出願人】
【識別番号】503098850
【氏名又は名称】望月 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100206678
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100192795
【弁理士】
【氏名又は名称】小牧 哲也
(72)【発明者】
【氏名】望月 慎介
【テーマコード(参考)】
4D004
4F401
4H129
【Fターム(参考)】
4D004AA11
4D004BA03
4D004CA12
4D004CA25
4D004CA32
4D004CA39
4D004CB01
4D004CB31
4D004CC03
4D004CC20
4F401AA03
4F401AC02
4F401BA02
4F401CA08
4F401CA22
4F401CA73
4F401DA06
4F401EA46
4H129AA01
4H129BA03
4H129BA04
4H129BA07
4H129BA08
4H129BB03
4H129BC06
4H129BC08
4H129BC12
4H129BC35
4H129BC38
4H129NA20
4H129NA21
4H129NA43
(57)【要約】
【課題】廃棄物から純度の高い油成分を抽出することができる油化方法および油化装置を提供する。
【解決手段】タイヤチップを水蒸気とともに加熱することで、タイヤチップ中の油成分がガス化したガス化油および水蒸気が溶融した溶融ガスとオフガスとを含む混合ガスを生成する反応炉10と、混合ガスを冷却することで、混合ガスの溶融ガスをエマルジョン化したエマルジョン液を生成するエマルジョン生成部50と、エマルジョン液を、油成分と残渣とに分離することで、油成分を得る遠心分離機60とを備えている。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を水蒸気とともに加熱することで、当該廃棄物中の油成分がガス化したガス化油および前記水蒸気が溶融した溶融ガスと当該溶融ガス以外のガスであるオフガスとを含む混合気体を生成する溶融気化ステップと、
前記混合気体を冷却することで、前記混合気体の前記溶融ガスをエマルジョン化したエマルジョン液を生成するエマルジョン生成ステップと、
前記エマルジョン液を、油成分と当該油成分以外の残渣とに分離することで、当該油成分を得るエマルジョン分離抽出ステップと
を備えていることを特徴とする廃棄物の油化方法。
【請求項2】
前記水蒸気は、亜臨界水からなることを特徴とする請求項1に記載の廃棄物の油化方法。
【請求項3】
廃棄物を水蒸気とともに加熱することで、当該廃棄物中の油成分がガス化したガス化油および前記水蒸気が溶融した溶融ガスと当該溶融ガス以外のガスであるオフガスとを含む混合気体を生成する溶融加熱部と、
前記混合気体を冷却することで、前記混合気体の前記溶融ガスをエマルジョン化したエマルジョン液を生成するエマルジョン生成部と、
前記エマルジョン液を、油成分と当該油成分以外の残渣とに分離することで、当該油成分を得るエマルジョン分離抽出部と、
を備えていることを特徴とする廃棄物の油化装置。
【請求項4】
廃棄物を加熱することで、当該廃棄物中の油成分がガス化したガス化油と当該ガス化油以外のガスであるオフガスとを含む混合気体を生成する気化ステップと、
前記混合気体を冷却することで、前記混合気体の前記ガス化油が液化した液化油を生成する液化油生成ステップと、
前記液化油と当該液化油中の油成分以外の成分に吸着する添加剤とを混合した混合液を生成する混合液生成ステップと、
前記混合液を、油成分と当該油成分以外の残渣とに分離することで、当該油成分を得る液化油分離抽出ステップと
を備えていることを特徴とする廃棄物の油化方法。
【請求項5】
廃棄物を加熱することで、当該廃棄物中の油成分がガス化したガス化油と当該ガス化油以外のガスであるオフガスとを含む混合気体を生成する気化加熱部と、
前記混合気体を冷却することで、前記混合気体の前記ガス化油が液化した液化油を生成する液化油生成部と、
前記液化油と当該液化油中の油成分以外の成分に吸着する添加剤とを混合した混合液を生成する混合液生成部と、
前記混合液を、油成分と当該油成分以外の液体成分とに分離することで、当該油成分を得る混合液分離抽出部と
を備えていることを特徴とする廃棄物の油化装置

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物から油成分を抽出する廃棄物の油化方法および油化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、廃タイヤ等の廃棄物を有効に活用するための一手法として、例えば、廃棄物を熱分解することで回収した熱分解ガスを凝縮させて熱分解油を得ることで(特許文献1参照)、廃棄物に含有されている油成分を抽出することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-246685号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、廃棄物を無駄なく活用するために、廃棄物をそのまま焼却処分等するのではなく、その廃棄物に含有されている油成分を抽出することが従来から行われている。この廃棄物から油成分を抽出するにあたり、従来から、純度の高い油成分を抽出することが望まれていた。
【0005】
本発明は、廃棄物から純度の高い油成分を抽出することができる油化方法および油化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、廃棄物を水蒸気とともに加熱することで、当該廃棄物中の油成分がガス化したガス化油および前記水蒸気が溶融した溶融ガスと当該溶融ガス以外のガスであるオフガスとを含む混合気体を生成する溶融気化ステップと、
前記混合気体を冷却することで、前記混合気体の前記溶融ガスをエマルジョン化したエマルジョン液を生成するエマルジョン生成ステップと、
前記エマルジョン液を、油成分と当該油成分以外の残渣とに分離することで、当該油成分を得るエマルジョン分離抽出ステップと
を備えていることを特徴とする廃棄物の油化方法である。
【0007】
また、本発明は、前記水蒸気は、亜臨界水からなるようにしてもよい。
【0008】
本発明は、廃棄物を水蒸気とともに加熱することで、当該廃棄物中の油成分がガス化したガス化油および前記水蒸気が溶融した溶融ガスと当該溶融ガス以外のガスであるオフガスとを含む混合気体を生成する溶融加熱部と、
前記混合気体を冷却することで、前記混合気体の前記溶融ガスをエマルジョン化したエマルジョン液を生成するエマルジョン生成部と、
前記エマルジョン液を、油成分と当該油成分以外の残渣とに分離することで、当該油成分を得るエマルジョン分離抽出部と、
を備えていることを特徴とする廃棄物の油化装置である。
【0009】
本発明は、廃棄物を加熱することで、当該廃棄物中の油成分がガス化したガス化油と当該ガス化油以外のガスであるオフガスとを含む混合気体を生成する気化ステップと、
前記混合気体を冷却することで、前記混合気体の前記ガス化油が液化した液化油を生成する液化油生成ステップと、
前記液化油と当該液化油中の油成分以外の成分に吸着する添加剤とを混合した混合液を生成する混合液生成ステップと、
前記混合液を、油成分と当該油成分以外の残渣とに分離することで、当該油成分を得る液化油分離抽出ステップと
を備えていることを特徴とする廃棄物の油化方法である。
【0010】
本発明は、廃棄物を加熱することで、当該廃棄物中の油成分がガス化したガス化油と当該ガス化油以外のガスであるオフガスとを含む混合気体を生成する気化加熱部と、
前記混合気体を冷却することで、前記混合気体の前記ガス化油が液化した液化油を生成する液化油生成部と、
前記液化油と当該液化油中の油成分以外の成分に吸着する添加剤とを混合した混合液を生成する混合液生成部と、
前記混合液を、油成分と当該油成分以外の液体成分とに分離することで、当該油成分を得る混合液分離抽出部と
を備えていることを特徴とする廃棄物の油化装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、廃棄物から純度の高い油成分を抽出することができる廃棄物の油化方法および油化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る第一実施形態の油化装置の構成を模式的に示すブロック図である。
図2】本発明に係る第二実施形態の油化装置の構成を模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。まず、図1に基づいて、本発明に係る第一実施形態の油化装置を説明する。
【0014】
<第一実施形態に係る油化装置の全体構成>
図1に示すように、油化装置1は、廃棄物である廃タイヤから油成分を抽出するためのものであり、概して、反応炉(溶融加熱部)10と、熱交換器20、油水分離槽30および脱臭槽40を有するエマルジョン生成部50と、遠心分離機(エマルジョン分離抽出部)60とを備えている。また、油化装置1には、廃タイヤを細かく切断してタイヤチップとする切断部(図示せず)と、この切断部のタイヤチップを反応炉10に投入する投入コンベア(図示せず)とが設けられており、この投入コンベアを介してタイヤチップが反応炉10に投入されるようになっている。
【0015】
<反応炉>
反応炉10は、本体部とこの本体部に内蔵された加熱炉とを有している(いずれも図示せず)。反応炉10は、タイヤチップが投入された加熱炉内において、このタイヤチップを亜臨界水からなる水蒸気とともに加熱することでタイヤチップを熱分解するものである。これによって、タイヤチップ中の(廃棄物中)油成分がガス化したガス化重油(ガス化油)と水蒸気とが溶融した溶融ガスおよびこの溶融ガス以外のガスであるオフガス(例えば、カーボンがガス化したカーボンガス等)とを含む混合ガス(混合気体)が生成される。ここで、亜臨界水からなる水蒸気に代えて、純水(真水)を用いるようにしても良いが、純度の高い油成分を抽出するという観点では、亜臨界水からなる水蒸気を用いることが望ましい。
【0016】
なお、反応炉10の本体部や加熱炉の素材としては、以下の(1)、(2)等を用いることができ、加熱炉用のパッキンとしては、耐熱性に優れた石綿素材よりも耐熱性が高いグラファイト(膨張黒鉛)を素材としたパッキン(グラファイトパッキン)が用いられているが、これらに限定されず、仕様等に応じて適宜変更可能であることは言うまでもない。
(1)NCF800
高温雰囲気において強度と耐酸化性に優れ、長時間保持にも組織が安定しており、シグマ相が折出し難い。また、湿潤環境での耐食性も良好で加工性も良い。炭素・チタン・アルミニュウム含有量の細かいコントロールと1150度の高温熱処理によって高いクリープ強度を持つ。
(2)SUS310S
主に高温環境下で用いられる耐熱ステンレス鋼。オーステナイト系ステンレス鋼の一種で、その中でも特に多くクロムとニッケルを含有する。最も流通量が多いステンレス鋼である「SUS304」よりも耐食性が高く、耐熱ステンレス鋼である「SUS309S」よりも耐熱性に優れる。
【0017】
また、反応炉10は、設定温度が蒸気投入開始温度(例えば、300度前後)に設定された第一電子ヒータと、設定温度が反応維持温度の下限値(例えば、400度前後)に設定された第二電子ヒータと、設定温度が反応維持温度の上限値(例えば、450度前後)に設定された第三電子ヒータとを有している(いずれも図示せず)。なお、反応維持温度の上限値および下限値の範囲については、上述の値に限定されないが、溶融ガスを効率的に生成するために、反応炉10の加熱炉が真空にならない程度の範囲に設定することが望ましい。なお、本明細書において、上記蒸気投入開始温度の300度等というように、具体的な数値を掲げることがあるが、この種の数値は一例であり、仕様等に応じて適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0018】
本実施形態では、これらの第一乃至第三電子ヒータにて加熱炉の昇温を行い、蒸気投入開始温度に到達した時点で、加熱炉内に亜臨界水からなる蒸気を投入した後、第一乃至第三電子ヒータによって加熱炉内の温度が反応温度の上限値および下限値の間で、反応維持時間(例えば、1時間)の間、維持するように制御する。この反応維持時間の計時は、蒸気投入開始温度に到達してから開始されるようになっており、この反応維持時間が経過したら、第一乃至第三電子ヒータを停止するように制御する。これにより、加熱炉内に投入されたタイヤチップは、亜臨界水からなる水蒸気とともに加熱されて亜臨界水反応することで、上述のように、溶融ガスとオフガスとを含む混合ガスが生成されることとなる。
【0019】
<亜臨界水の説明>
亜臨界水とは、以下のものをいう。水の温度・圧力を374度、22MPa以上まで上げると、水(液体)でも水蒸気(気体)でもない状態となる。この点を水の臨界点といい、臨界点よりもやや低い近傍の領域を亜臨界水と呼ぶ。なお、臨界点より上の領域を超臨界水と呼ぶ。亜臨界水には次のような特徴がある。亜臨界水は,常温常圧の水に比べてイオン積が103倍程度大きく、酸または塩基触媒として作用する可能性がある。また,水の比誘電率は温度の上昇とともに著しく低下し、亜臨界水と呼ばれる領域では常温常圧での有機溶媒のそれに近くなる。
【0020】
<亜臨界水反応の説明>
上記亜臨界水反応は、高温高圧の水の性質を利用した反応である。亜臨界水反応により、タイヤチップ等の有機物の分子が分解され(なお、例えばでんぷんやたんぱく質は、それぞれブドウ糖やアミノ酸に分解される)、低分子化されることにより、固形分が液状化される。また、タイヤチップ(廃タイヤ)等の環境汚染物質を分解し、無害化できる。亜臨界水が有機物の溶解作用と強い加水分解作用を有する理由として、まず、通常の水の比誘電率の値は80程度であるのに対して、亜臨界水となると誘電率の値は20~30程度となり、油を溶かすことに使われるメタノールに近くなるため、油を溶かす性質を持つようになることが挙げられる。また、亜臨界水の温度領域である250度程度のところでは、水が非常に大きなイオン積を持ち、水素イオンと水酸化物イオンに分離する割合が大きくなるため、強い分解力を持つことになる。なお、超臨界水は亜臨界水より強い分解力をもつが、分解が進みすぎて、有機物は二酸化炭素まで分解されてしまい、有用な資源として取り出すことは出来ないが、亜臨界水は超臨界水より低温であるため、分解の程度が調度良く、資源化を行うのには適している。
【0021】
この亜臨界水を用いる利点としては、温度と水を制御するだけで、反応を進めることができる(利点1)、反応速度が速く、処理時間は15~60分程度で大量処理が可能(利点2)、溶謀が水で環境負荷が小さく、後処理が容易である(利点3)等が挙げられる。また、亜臨界水反応技術で処理できる有価物(有機物)は、以下の(1)乃至(8)が挙げられる。また、亜臨界水反応技術で処理できる有価物は、以下の(1)乃至(8)の混合処理も可能である。換言すれば、廃棄物としては、上述の廃タイヤ以外に以下の(1)乃至(8)およびこれらの混合物も用いることができる。これらの有価物を飽和水蒸気による亜臨界水反応で有機物や環境ホルモン等の有害化学物を分解・無害化することができる。この亜臨界水処理によりセルロースやリグニンはグルコースやオリゴ糖類に、タンパク質系は各種アミノ酸類に分解される。都市ごみの中には、プラスチック類が混合されているが、亜臨界水反応によりプラスチック類は加水分解し、破壊され二酸化炭素と水(液体)とになり減容化されることとなる。
(1)食品廃棄物
(2)生ごみ
(3)廃プラスチック
(4)畜産排泄物
(5)農業残渣
(6)可燃性一般廃棄物
(7)可燃性産業廃棄物
(8)医療廃棄物等の有機性廃棄物全般
【0022】
<エマルジョン生成部50>
エマルジョン生成部50は、反応炉10にて生成された混合ガスを冷却することで、混合ガスの溶融ガスをエマルジョン化したエマルジョン液(エマルジョン油)を生成するものであり、上述のように、熱交換器20、油水分離槽30および脱臭槽40を有している。本実施形態では、油水分離槽30および脱臭槽40とはこれらを収納する収納室R内に互いに隣接するように配置されている。
【0023】
<熱交換器>
熱交換器20は、例えば、いわゆるシェルチューブ式のもの等を用いることができ、反応炉10の加熱炉で発生した溶融ガスとオフガスとを含む混合ガスを冷却するコンデンサである。熱交換器20と反応炉10の加熱炉とは混合ガスが通過するダクト(図示せず)によって連結されており、加熱炉内で発生した混合ガスがダクトを介して熱交換器20に流入するようになっている。熱交換器20に流入した混合ガスは、熱交換器20の作用により冷却されることで、溶融ガスが液化した溶融液とオフガスとに分離する。これらの溶融液およびオフガスは、熱交換器20と収納室Rとの間に設けられたダクト(図示せず)を介して収納室Rに送り出されるようになっている。
【0024】
<油水分離槽および脱臭槽>
収納室Rに送り出された溶融液およびオフガスは、収納室R内の油水分離槽30および脱臭槽40との間を循環する。この循環の過程で、溶融液のエマルジョン化、脱臭、オフガスの排出を行う。油水分離槽30内には、常に所定の設定温度(例えば、50程度)に維持された冷却水が一定量投入されている状態となっている。この油水分離槽30に溶融液が流入して冷却されることで溶融液がエマルジョン化したエマルジョン液(油滴が水に分散した状態)として生成されることとなる。また、脱臭槽40には、オゾン発生器(図示せず)が搭載されており、油水分離槽30の内気と脱臭槽40の内気とを循環させてオゾン脱臭するようになっている。また、収納室R内にて、溶融液およびオフガスが循環している間に、収納室Rに設けられた排出ダクトを介して、収納室R内のオフガスが排出されていく。このようにすることで、収納室R内にはエマルジョン液のみが残ることとなり、このエマルジョン液(油滴が水内に分散した液体)は、ダクトを介して遠心分離機60に送り出される。
【0025】
<遠心分離機>
遠心分離機60は、収納室Rから送られてきたエマルジョン液に対して、遠心力を加えることにより、油成分とそれ以外の残渣(例えば、水等)に分離するものである。本実施形態では所定の遠心力(例えば、1000G~3000G程度)をエマルジョン液に対して加えるようになっている。これによって、エマルジョン液が、油成分と残渣とに分離され、油成分は、遠心分離機60に設けられた油移送パイプ(図示せず)を介して油収納タンク(図示せず)に収納され、残渣は、遠心分離機60に設けられた残渣移送パイプ(図示せず)を介して残渣収納タンク(図示せず)に収納される。
【0026】
<第一実施形態に係る廃棄物の油化方法>
<<溶融気化ステップ>>
次に、上述した構成の廃棄物の油化装置1を用いた廃棄物の油化方法について説明する。まず、反応炉10の加熱炉の温度を蒸気投入開始温度にまで上昇させた後に、亜臨界水からなる水蒸気を加熱炉内に投入する。その後、加熱炉の温度が反応温度の下限値に到達したら、タイヤチップを加熱炉内に投入する。そして、タイヤチップを水蒸気とともに、反応温度が上限値および下限値の間になるよう維持しつつ反応維持時間に達するまで加熱する。これによって、タイヤチップ中の油成分がガス化してガス化重油となり、このガス化重油は、亜臨界水からなる水蒸気と溶融することで溶融ガスとなる。一方、タイヤチップ中の油成分以外の成分(例えば、カーボン)がガス化してオフガスとなり、結果として、溶融ガスとオフガスとが混合した混合ガスが生成される。
【0027】
<<エマルジョン生成ステップ>>
次に、上記混合ガスをエマルジョン生成部50の熱交換器20にて冷却することで、溶融ガスが液化した溶融液となる一方、オフガスはオフガスのまま存在することとなる。その後、これらの溶融液とオフガスとを収納室Rの油水分離槽30と脱臭槽40との間を循環させることで、収納室Rからオフガスを排出する一方で、溶融液の脱臭および溶融液のエマルジョン化を行う。これによって、収納室R内には溶融液がエマルジョン化したエマルジョン液が生成される。
【0028】
<<エマルジョン分離ステップ>>
その後、エマルジョン液を遠心分離機60によって、油成分とその他の残渣に分離することで、エマルジョン液から油成分を抽出する。
【0029】
以上説明したように、本実施形態では、溶融気化ステップにて、タイヤチップを熱分解する際に亜臨界水からなる水蒸気を用いることで、当該水蒸気とタイヤチップから発生したガス化重油とが亜臨界水反応により溶融するため、タイヤチップ内の油成分が基となった溶融ガスとその他の成分が基となったオフガスとに効率的に分離することができる。その後、エマルジョン生成ステップにて、不要なオフガスを排出しつつ、溶融液をエマルジョン化したエマルジョン液とすることで、タイヤチップからの混合ガスから、不純物となり得るオフガスを効率的に除去することができる。そして、このエマルジョン液を、油成分とそれ以外の残渣とに分離することで、油成分を得るようにしている。この結果、タイヤチップから純度の高い油成分を抽出することができる。
【0030】
<第二実施形態に係る油化装置の全体構成>
次に、図2に基づいて、本発明に係る第二実施形態の油化装置を説明するが、その説明にあたり、上述の第一実施形態と同様な構成要素には同一の符号を付することにより、その説明を省略または簡略化するものとする。図2に示すように、第二実施形態に係る油化装置3は、概して、反応炉(気化加熱部)10において亜臨界水からなる水蒸気を用いていない点、熱交換器20がガス化重油を冷却することでガス化油を液化油として生成する液化油生成部として機能する点、液化油と添加剤とを混合した混合液を生成する混合液生成部としてのフィルター槽70を有している点、遠心分離機60が混合液を油成分とそれ以外の液体成分とに分離する混合液分離部として機能する点、熱交換器20とダクト(図示せず)によって接続されているとともに、熱交換器20からオフガスを吸引しつつ油化装置3外にオフガスを排出するオフガス処理装置80を有している点、が第一実施形態と主に異なる。
【0031】
<反応炉、熱交換器>
本実施形態における反応炉10の構造は、第一実施形態と同様であるが、反応炉10の加熱炉内に亜臨界水からなる水蒸気を投入しない点が第一実施形態と異なる。このため、加熱炉内に投入されて加熱されたタイヤチップは、いわゆる空焚きの状態となり、加熱炉内が真空に近くなることとなる。この加熱炉内では、タイヤチップ中の油成分がガス化したガス化重油(ガス化油)とこのガス化重油以外のガスであるオフガス(例えば、カーボンがガス化したカーボンガス等)とを含む混合ガス(混合気体)が生成される。この混合ガスは、加熱炉と熱交換器20との間に連結されたダクトを介して熱交換器20に送られ、熱交換器20にて冷却されることで、ガス化重油が液化した液化重油(液化油)とオフガスとに分離される。この熱交換器20のオフガスは、オフガス処理装置80を介して排出される。なお、オフガス処理装置80としては、熱交換器20からオフガスを吸引しつつ油化装置3外に排出するファン等を用いることができる。
【0032】
<フィルター槽、遠心分離機>
フィルター槽70は、その内部の液体を攪拌する攪拌部(図示せず)が設けられているとともに、フィルター槽70内にはカーボンに吸着しやすい添加剤(例えば、ゼオライト等)が投入されている。フィルター槽70と熱交換器20とは、液化重油が通過するパイプ(図示せず)によって連結されており、熱交換器20にて生成された液化重油がパイプを介してフィルター槽70内に流入する。このフィルター槽70内では、上述の添加剤と液化重油とが攪拌部によって攪拌されることで、液化油と添加剤とが混合した混合液となる。この混合液は、フィルター槽70からダクトを介して遠心分離機60に送り出される。遠心分離機60において、混合液は、液化重油内のカーボンが添加剤に吸着することで、液化重油が油成分とカーボン等の残渣とに分離される。これによって、混合液から油成分を得ることができる。なお、添加剤としては、混合ガスのうち、ガス化重油以外のガスと吸着しやすいものを用いればよく、そのガス化重油以外のガスに応じた適宜のものを用いるようにすればよいことは言うまでもない。
【0033】
<第二実施形態に係る廃棄物の油化方法>
<<気化ステップ>>
次に、上述した構成の廃棄物の油化装置3を用いた廃棄物の油化方法について説明する。まず、反応炉10の加熱炉の温度を所定の温度(適宜設定可能であり、例えば、第一実施形態の反応維持温度の上限値と同じでも良いし、これとは異なる温度であってもよい)にまで上昇させた後に、タイヤチップを加熱炉内に投入する。これによって、タイヤチップが加熱されて、タイヤチップ内の油成分がガス化したガス化重油とこのガス化重油以外のガスであるオフガスとが混合した混合ガスが生成される。
【0034】
<<液化油生成ステップ>>
次に、上記混合ガスを熱交換器20にて冷却することで、ガス化重油が液化した液化重油となる一方、オフガスはオフガスのまま存在することとなり、このオフガスはオフガス処理装置80を介して油化装置3外に排出される。これによって、タイヤチップから液化重油を得る。
【0035】
<<混合液生成ステップ>>
次に、フィルター槽70内にて、液化重油と添加剤とを攪拌することにより、液化油と添加剤とが混合した混合液が生成される。
【0036】
<<液化油分離抽出ステップ>>
その後、混合液は、遠心分離機60内にて、液化重油内のカーボンが添加剤に吸着することで、液化重油が油成分とカーボン等の残渣とに分離される。これによって、混合液から油成分を抽出する。
【0037】
以上説明したように、本実施形態では、気化ステップにて、ガス化重油とオフガスとの混合ガスを得た後、液化油生成ステップにて、ガス化重油を液化重油とする一方で不要なオフガスを排出することで、タイヤチップからの混合ガスから、不純物となり得るオフガスを効率的に除去することができる。そして、混合液生成ステップおよび液化油分離抽出ステップにて、液化重油に含有されているカーボンを液化重油から分離するための添加剤を添加した上で、液化重油を油成分とそれ以外の残渣とに分離することで、油成分を得るようにしている。この結果、タイヤチップから純度の高い油成分を抽出することができる。
【0038】
なお、本発明は、上述の各種実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形が可能である。
【0039】
例えば、第一実施形態では、単一のエマルジョン生成部50を設けているが、これに代えて、複数のエマルジョン生成部50を設けるようにしても良い。この場合、反応炉10からの混合ガスを複数のエマルジョン生成部50にて処理することができるため、単位時間あたりの作業効率の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0040】
1、3 油化装置
10 反応炉(溶融加熱部、気化加熱部)
20 熱交換器(液化油生成部)
50 エマルジョン生成部
60 遠心分離機(エマルジョン分離抽出部、混合液分離抽出部)
70 フィルター槽(混合液生成部)


図1
図2