(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118695
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】SiC pチャネルMOSFET及びSiC相補型MOSデバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20240826BHJP
H01L 21/8238 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
H01L29/78 301Q
H01L29/78 301B
H01L27/092 C
H01L29/78 301X
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025123
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木本 恒暢
(72)【発明者】
【氏名】三上 杏太
【テーマコード(参考)】
5F048
5F140
【Fターム(参考)】
5F048AA08
5F048AC03
5F048BA14
5F048BB05
5F048BB09
5F048BC15
5F048BC16
5F048BD06
5F048BD07
5F048BF03
5F048BF07
5F048BG13
5F048CB07
5F140AA29
5F140AB03
5F140AC01
5F140BA02
5F140BA20
5F140BB05
5F140BC15
5F140BD05
5F140BE07
5F140BE09
5F140BE18
5F140BF04
5F140BF07
5F140BJ04
5F140BJ07
5F140CB01
5F140CB04
(57)【要約】
【課題】チャネル移動度の大きいSiC pチャネルMOSFETを提供する。
【解決手段】SiC pチャネルMOSFETは、表面の面方位が(0001)からなるSiC基板10と、SiC基板の表面に対して垂直に突出したSiCからなるフィン部100とを備え、フィン部は、ソース領域30、ドレイン領域40、及びソース領域とドレイン領域とに挟まれたチャネル領域50を有し、チャネル領域の側面及び上面を跨ぐように、ゲート酸化膜60を介してゲート電極70が形成されており、チャネル領域50の側面は、(1-100)面からなる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の面方位が(0001)からなるSiC基板と、
前記SiC基板の表面に対して垂直に突出したSiCからなるフィン部と
を備え、
前記フィン部は、ソース領域、ドレイン領域、及び前記ソース領域と前記ドレイン領域とに挟まれたチャネル領域を有し、
前記チャネル領域の側面及び上面を跨ぐように、ゲート酸化膜を介してゲート電極が形成されており、
前記チャネル領域の側面は、(1-100)面からなる、SiC pチャネルMOSFET。
【請求項2】
前記SiC基板の表面にフィールド酸化膜が形成されており、
前記フィン部は、前記SiC基板から、前記フィールド酸化膜を貫通して形成されている、請求項1に記載のSiC pチャネルMOSFET。
【請求項3】
前記チャネル領域を流れる電流の方向は、前記SiC基板のc軸<0001>方向に垂直である、請求項1に記載のSiC pチャネルMOSFET。
【請求項4】
前記SiC基板は、<1-100>方向を示すオリエンテーションフラットを有し、
前記フィン部は、前記オリエンテーションフラットと平行な方向、または、前記オリエンテーションフラットに対して60度の角度で交差する方向に延びている、請求項1に記載のSiC pチャネルMOSFET。
【請求項5】
SiC pチャネルMOSFETとSiC nチャネルMOSFETとを備えたSiC相補型MOSデバイスであって、
前記SiC pチャネルMOSFET、及び前記SiC nチャネルMOSFETは、表面の面方位が(0001)からなるSiC基板上に形成されており、
前記SiC pチャネルMOSFETは、請求項1に記載されたSiC pチャネルMOSFETと同じ構造を有し、
前記SiC nチャネルMOSFETは、前記SiC pチャネルMOSFETと同じ構造を有し、
前記SiC pチャネルMOSFET、及び前記SiC nチャネルMOSFETの前記チャネル領域の側面は、(1-100)面からなる、SiC相補型MOSデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SiC基板を用いたSiC pチャネルMOSFET、及びSiC相補型MOSデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
SiC基板を用いたMOS型トランジスタ(SiC MOSFET)において、SiC基板の表面に熱酸化でSiO2膜(ゲート酸化膜)を形成した場合、SiO2膜とSiC基板との界面における欠陥密度が高いため、SiC MOSFETのチャネル移動度が低い。
【0003】
非特許文献1には、チャネル移動度を高めるために、SiC基板の表面に熱酸化によりSiO2膜を形成した後、NO(一酸化窒素)ガス雰囲気中で熱処理を行い、SiO2膜とSiC基板との界面を窒化することにより、SiO2膜とSiC基板との界面における欠陥密度を低減する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】G.Y. Chung et al., IEEE Electron Device Lett., vol.22, 176(2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
nチャネルMOSFETとpチャネルMOSFETとで構成された相補型MOSデバイスは、スイッチング時を除いて電流が流れず、静的消費電力がほぼゼロのため、SiC集積回路における基本デバイスとなる。
【0006】
しかしながら、SiC MOSFETでは、pチャネルMOSFETのチャネル移動度が、nチャネルMOSFETのチャネル移動度に比べて著しく小さい。そのため、pチャネルMOSFETの特性は、相補型MOSデバイスの性能を制限する大きな要因となっており、チャネル移動度の大きいpチャネルMOSFETの実現が望まれている。
【0007】
本発明は、チャネル移動度の大きいSiC pチャネルMOSFETを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るSiC pチャネルMOSFETは、表面の面方位が(0001)からなるSiC基板と、SiC基板の表面に対して垂直に突出したSiCからなるフィン部とを備え、フィン部は、ソース領域、ドレイン領域、及びソース領域とドレイン領域とに挟まれたチャネル領域を有し、チャネル領域の側面及び上面を跨ぐように、ゲート酸化膜を介してゲート電極が形成されており、チャネル領域の側面は、(1-100)面からなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、チャネル移動度の大きいSiC pチャネルMOSFETを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】試作したプレーナ型のpチャネルMOSFETの構造を示した図である。
【
図2】(A)及び(B)は、チャネル面の面方位が(1-100)のpチャネルMOSFETのチャネル移動度を測定した結果を示したグラフである。
【
図3】(A)及び(B)は、チャネル面の面方位が(11-20)のpチャネルMOSFETのチャネル移動度を測定した結果を示したグラフである。
【
図4】チャネル移動度の結晶面依存性を示したグラフである。
【
図5】チャネル移動度のチャネル方向依存性を示したグラフである。
【
図6】本実施形態におけるフィン型のpチャネルMOSFETの構造を模式的に示した斜視図である。
【
図7】
図6に示したpチャネルMOSFETにおいて、ゲート酸化膜及びゲート電極を省略した斜視図である。
【
図8】
図6のVIII-VIII線に沿った断面図である。
【
図11】SiC基板に、<1-100>方向を示すオリエンテーションフラットを形成した図である。
【
図12】(A)~(C)は、本実施形態におけるSiC pチャネルMOSFETの製造方法を説明した図である。
【
図13】(A)~(C)は、本実施形態におけるSiC pチャネルMOSFETの製造方法を説明した図である。
【
図14】本実施形態におけるSiC相補型MOSデバイスの構成を模式的に示した斜視図である
【
図15】
図14に示したSiC相補型MOSデバイスにおいて、ゲート酸化膜及びゲート電極を省略した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本願発明者等は、表面の面方位が(11-20)及び(1-100)のSiC基板を用いて、
図1に示すようなプレーナ型のpチャネルMOSFETを試作し、チャネル移動度の結晶面依存性を調べた。プレーナ型のMOSFETでは、SiC基板の表面の面方位が、チャネル領域の面方位となる。なお、結晶学上、格子面の負の指数は、数字の上に「-」(バー)を付けて表すことになっているが、本明細書では、記載の都合上、数字の前に「-」(マイナス記号)を付けて表している。
【0012】
プレーナ型のpチャネルMOSFETは、以下の方法により作製した。
【0013】
n型のSiC基板200の上に、n型不純物(窒素)濃度が5×1015~8×1017cm-3のn型領域210を形成した後、n型領域210の表面に、p型のソース領域220、及びドレイン領域230を形成した。ソース領域220とドレイン領域230との間が、チャネル領域240となる。その後、ソース領域220、ドレイン領域230、及びチャネル領域240の表面に、熱酸化により膜厚が40nmのゲート酸化膜250を形成した後、NO(一酸化窒素)ガス雰囲気中で熱処理を行い、最後に、ゲート電極260,ソース電極270、及びドレイン電極280を形成した。なお、チャネル長は100μmとし、チャネル幅は50μmとした。
【0014】
図2(A)、(B)及び
図3(A)、(B)は、作製したpチャネルMOSFETのチャネル移動度(ドレイン電圧:-0.1V)を測定した結果を示したグラフで、
図2(A)、(B)は、チャネル面の面方位が(1-100)の場合を示し、
図3(A)、(B)は、チャネル面の面方位が(11-20)の場合を示す。また、
図2(A)、
図3(A)は、チャネル方向(ドレイン電流の方向)が、c軸<0001>方向に垂直な場合を示し、
図2(B)、
図3(B)は、チャネル方向が、c軸<0001>方向に平行な場合を示す。また、
図2(A)、(B)で、矢印A、B、Cで示したグラフは、それぞれ、チャネル領域240の不純物濃度(チャネル濃度)が、1×10
16cm
-3、5×10
16cm
-3、4×10
17cm
-3の場合を示す。また、
図3(A)、(B)で、矢印A、B、Cで示したグラフは、それぞれ、チャネル領域240の不純物濃度(チャネル濃度)が、5×10
15cm
-3、8×10
16cm
-3、8×10
17cm
-3の場合を示す。
【0015】
<チャネル移動度の結晶面依存性>
図4は、
図2(A)及び
図3(A)に示した測定結果を基に、チャネル移動度の結晶面依存性を示したグラフである。横軸は、チャネル濃度を示し、縦軸は、チャネル方向がc軸に垂直なチャネル移動度の最高値を示す。四角で示したグラフは、チャネル面の面方位が(1-100)の場合を示し、三角で示したグラフは、チャネル面の面方位が(11-20)の場合を示す。なお、丸で示したグラフは、比較のために、チャネル面の面方位が(0001)の場合を示す。
【0016】
<チャネル移動度のチャネル方向依存性>
また、
図5は、
図2(A)、(B)及び
図3(A)、(B)に示した測定結果を基に、チャネル移動度のチャネル方向依存性を示したグラフである。横軸は、チャネル濃度を示し、縦軸は、チャネル移動度の最高値を示す。四角で示したグラフは、チャネル面の面方位が(1-100)の場合を示し、三角で示したグラフは、チャネル面の面方位が(11-20)の場合を示す。また、実線で示したグラフは、チャネル方向がc軸に垂直な場合を示し、破線で示したグラフは、チャネル方向がc軸に平行な場合を示す。
【0017】
図4に示すように、チャネル面の面方位が(1-100)の場合の方が、(11-20)に比べて、チャネル移動度が大きいことが分かる。また、
図5に示すように、チャネル面が同じ面方位であっても、チャネル方向がc軸に垂直な場合の方が、c軸に平行な場合よりも大きいことが分かる。
【0018】
すなわち、チャネル面の面方位が(1-100)で、かつ、チャネル方向がc軸に垂直なpチャネルMOSFETを作製することができれば、チャネル移動度の大きいpチャネルMOSFETを実現することが可能となる。
【0019】
ところで、上記に示した測定結果は、
図1に示したようなプレーナ型のMOSFETを、表面の面方位が、チャネル面の面方位と同じとなるSiC基板を用いてMOSFETを作製して測定したものである。しかしながら、量産工程で使用されるSiC基板は、大口径化が容易、高品質結晶成長が容易等の理由により、表面の面方位が(0001)のSiC基板がほとんど使用されている。従って、表面の面方位が(0001)のSiC基板を用いて、プレーナ型のMOSFETを作製する限り、チャネル面の面方位が(1-100)で、かつ、チャネル方向がc軸に垂直なpチャネルMOSFETを実現することができない。
【0020】
本発明は、表面の面方位が(0001)のSiC基板を用いて、チャネル面の面方位が(1-100)で、かつ、チャネル方向がc軸に垂直となる構造のフィン型のSiC pチャネルMOSFETを提供するものである。
【0021】
<フィン型のpチャネルMOSFETの構造>
図6は、本実施形態におけるフィン型のpチャネルMOSFETの構造を模式的に示した斜視図である。
図7は、
図6に示したpチャネルMOSFETにおいて、ゲート酸化膜及びゲート電極を省略した斜視図である。
図8は、
図6のVIII-VIII線に沿った断面図である。
図9は、
図6のIX-IX線に沿った断面図である。
【0022】
図6~
図9に示すように、本実施形態におけるpチャネルMOSFETは、表面の面方位が(0001)からなるn型のSiC基板10と、SiC基板10の表面に対して垂直に突出したSiCからなるフィン部100とを備えている。フィン部100は、p型のソース領域30、p型のドレイン領域40、及びソース領域30とドレイン領域40とに挟まれたn型のチャネル領域50を有している。SiC基板10の表面には、フィールド酸化膜20が形成されており、フィン部100は、SiC基板10から、フィールド酸化膜20を貫通して形成されている。チャネル領域50の側面及び上面を跨ぐように、ゲート酸化膜60を介してゲート電極70が形成されている。ソース領域30及びドレイン領域40の上面には、ソース電極80及びドレイン電極90が形成されている。
【0023】
図10は、SiC結晶の結晶方位を示した図である。
図10に示すように、(1-100)面は、(0001)面に垂直な面となっている。従って、フィン部100は、SiC基板10の表面に対して垂直に突出して形成されているため、チャネル領域50の側面(チャネル面)は、(1-100)面からなる。また、
図7に示すように、ドレイン電流I
Dの方向は、SiC基板10の表面と平行であるため、チャネル方向は、c軸に垂直となる。
【0024】
従って、
図6に示した構造のSiC pチャネルMOSFETは、チャネル面の面方位が(1-100)で、かつ、チャネル方向がc軸に垂直となるため、チャネル移動度の大きいpチャネルMOSFETを実現することが可能となる。
【0025】
なお、
図10に示すように、(11-20)面も、(0001)面と垂直な面になっているため、チャネル領域50の側面が、(1-100)面になるよう、SiC基板10の表面に、フィン部100を形成する必要がある。
【0026】
具体的な方法としては、例えば、
図11に示すように、市販されているSiC(0001)基板(ウェハ)10には、一般に<1-100>方向を示すオリエンテーションフラット11が形成されている。そこで、フィン部100を、オリエンテーションフラット11と平行な方向に延びるように形成することによって、チャネル領域50の側面(チャネル面)を(1-100)面とすることができる。なお、オリエンテーションフラット11の代わりに、<1-100>方向を示すノッチを形成してもよい。
【0027】
なお、SiC結晶は、(1-100)面と60度の角度で交差する(01-10)面及び(10-10)面も、(1-100)面と等価なため、
図11に示すように、フィン部100を、オリエンテーションフラット11に対して60度の角度で交差する方向に延びるように形成してもよい。
【0028】
本明細書において、チャネル面(1-100)というときは、(1-100)面と等価な(01-10)面及び(10-10)面を含む意味をなす。
【0029】
<SiC pチャネルMOSFETの製造方法>
図12(A)~(C)及び
図13(A)~(C)を参照しながら、本実施形態におけるSiC pチャネルMOSFETの製造方法を説明する。なお、SiC pチャネルMOSFETの製造方法は、これに限定されるものではない。
【0030】
まず、
図12(A)に示すように、表面の面方位が(0001)からなるn型のSiC基板10を用意する。SiC基板10は、
図11に示したように、ウェハ状のものを用いることができる。
【0031】
次に、
図12(B)に示すように、SiC基板10の表面に、フォトリソグラフィー法を用いて、p型不純物(アルミニウムまたはボロン)を選択的にイオン注入して、p型のソース領域30及びドレイン領域40を形成する。なお、必要に応じて、ソース領域30及びドレイン領域40に挟まれたn型のチャネル領域50にも、n型不純物(窒素あるいは燐)を選択的にイオン注入してもよい。
【0032】
次に、
図12(C)に示すように、フォトリソグラフィー法を用いて、ソース領域30、チャネル領域50、及びドレイン領域40を選択的にエッチングして、フィン部100を形成する。このとき、同時に、フィン部100直下に、SiC基板10の一部12が残るように、SiC基板10の表面をエッチングする。フィン部100を形成するためのエッチングには、プラズマを用いた反応性イオンエッチングを用いるのが一般的である。
【0033】
なお、フィン部100の上面もチャネル面となるが、その面方位は(0001)であるため、チャネル移動度の向上に寄与しない。そのため、
図13(A)に示すように、フィン部100の側面の高さをH、上面の幅をWとしたとき、アスペクト比(H/W)は、2以上が好ましい。アスペクト比が2より小さいと、フィン部100の上面におけるチャネル面のチャネル移動度に対する寄与が相対的に大きくなり、本発明の効果が小さくなる。なお、フィン部100の幅に厳密な制約はないが、0.05~2μm程度が適切である。
【0034】
次に、
図13(A)に示すように、フィン部100を除くSiC基板10の表面に、フィールド酸化膜20を選択的に形成する。具体的には、化学気相堆積法によりSiO
2膜を全面に堆積した後、フォトリソグラフィー法を用いてフィン部100の上面および側面のSiO
2膜を除去する。
【0035】
次に、
図13(B)に示すように、チャネル領域の側面及び上面を跨ぐように、ゲート酸化膜60を選択的に形成する。具体的には、フィン部100の側面及び上面に熱酸化膜を形成した後、フォトリソグラフィー法を用いて、熱酸化膜を選択的にエッチングすることにより、ゲート酸化膜60を形成することができる。熱酸化は1150~1300℃程度の温度で行い、厚さ5~80nm程度の酸化膜を形成するのが一般的である。熱酸化の代わりに堆積法により酸化膜を形成してもよい。
【0036】
最後に、
図13(C)に示すように、フォトリソグラフィー法を用いて、ゲート酸化膜60を覆うように、ゲート電極70を形成するとともに、ソース領域30及びドレイン領域40の上面に、ソース電極80及びドレイン電極90を形成する。これにより、
図6に示したSiC pチャネルMOSFETが完成する。ゲート電極には低抵抗の多結晶Siを用いるのが一般的であるが、Mo、Wなどの金属でもよい。
【0037】
<SiC相補型MOSデバイス>
本実施形態におけるSiC pチャネルMOSFETは、高いチャネル移動度が得られるため、同様の構造を有するSiC nチャネルMOSFETとでSiC相補型MOSデバイスを構成することによって、相互コンダクタンスが大きく、スイッチング速度の速いSiC相補型MOSデバイスを実現することができる。
【0038】
図14は、本実施形態におけるSiC相補型MOSデバイスの構成を模式的に示した斜視図である。
図15は、
図14に示したSiC相補型MOSデバイスにおいて、ゲート酸化膜及びゲート電極を省略した斜視図である。
【0039】
図14に示すように、表面の面方位が(0001)からなるSiC基板10上に、SiC nチャネルMOSFET、及びSiC pチャネルMOSFETが形成されている。
図15に示すように、SiC基板10の表面に対して垂直に突出したSiCからなるフィン部100を備え、フィン部100には、nチャネルMOSFETのソース領域30A、チャネル領域50A、ドレイン領域40A、及びpチャネルMOSFETのソース領域30B、チャネル領域50B、ドレイン領域40Bが形成されている。
【0040】
nチャネルMOSFET及びpチャネルMOSFETは、それぞれ、チャネル面の面方位が(1-100)で、かつ、チャネル方向がc軸に垂直となっている。
【0041】
nチャネルMOSFET及びpチャネルMOSFETにおいて、それぞれ、チャネル領域50A、50Bの側面及び上面を跨ぐように、ゲート酸化膜60を介してゲート電極70A、70Bが形成されている。なお、ゲート電極70A、70Bは、フィールド酸化膜20に形成された配線95で接続されている。また、ソース領域30A、ドレイン領域40A、及びソース領域30B、ドレイン領域40Bの上面には、それぞれ、ソース電極80A、ドレイン電極90A、及びソース電極80B、ドレイン電極90Bが形成されている。なお、ドレイン電極90A及び90Bは、共通電極となっている。
【0042】
以上、本開示を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、もちろん、種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0043】
10 SiC基板
11 オリエンテーションフラット
20 フィールド酸化膜
30、30A、30B ソース領域
40、40A、40B ドレイン領域
50、50A、50B チャネル領域
60 ゲート酸化膜
70、70A、70B ゲート電極
80、80A、80B ソース電極
90、90A、90B ドレイン電極
95 配線
100 フィン部