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特開2024-118696半導体装置および半導体装置の製造方法
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  • 特開-半導体装置および半導体装置の製造方法 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118696
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】半導体装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/739 20060101AFI20240826BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20240826BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240826BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
H01L29/78 655G
H01L29/78 652J
H01L29/78 655B
H01L29/78 653A
H01L29/78 657D
H01L29/78 652K
H01L29/78 652T
H01L29/78 652P
H01L29/06 301V
H01L29/06 301G
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025124
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】御田村 直樹
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ラッチアップ耐量を確保しつつ、ターンオン損失を低減した半導体装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置100は、半導体基板10のおもて面に設けられ、ゲートトレンチ部40を含む複数のトレンチ部と、半導体基板に設けられた第1導電型のドリフト領域18と、ドリフト領域の上方に設けられた第2導電型のベース領域14と、ベース領域の上方に設けられ、ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い第1導電型のエミッタ領域12と、ベース領域の上方に設けられ、ベース領域よりもドーピング濃度の高い第2導電型のコンタクト領域15と、を備える。エミッタ領域は、ゲートトレンチ部の側壁と接して設けられ、トレンチ配列方向で、複数のトレンチ部のうちゲートトレンチ部と対向するダミートレンチ部30まで延伸せずに終端し、コンタクト領域は、トレンチ配列方向で、エミッタ領域の端部からダミートレンチ部の側壁まで設けられる。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板のおもて面に設けられ、ゲートトレンチ部を含む複数のトレンチ部と、
前記半導体基板に設けられた第1導電型のドリフト領域と、
前記ドリフト領域の上方に設けられた第2導電型のベース領域と、
前記ベース領域の上方に設けられ、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い第1導電型のエミッタ領域と、
前記ベース領域の上方に設けられ、前記ベース領域よりもドーピング濃度の高い第2導電型のコンタクト領域と、
を備え、
前記エミッタ領域は、前記ゲートトレンチ部の側壁と接して設けられ、トレンチ配列方向において、前記複数のトレンチ部のうち前記ゲートトレンチ部と対向する第1トレンチ部まで延伸せずに終端し、
前記コンタクト領域は、トレンチ配列方向において、前記エミッタ領域の端部から前記第1トレンチ部の側壁まで設けられている
半導体装置。
【請求項2】
前記半導体基板の上面視で、前記エミッタ領域は、トレンチ延伸方向において離散的に設けられている
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ゲートトレンチ部の側壁において、前記エミッタ領域のトレンチ延伸方向における長さは、前記コンタクト領域のトレンチ延伸方向における長さよりも大きい
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記エミッタ領域のトレンチ配列方向における長さは、0.1μm以上、1.0μm以下である
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記エミッタ領域のトレンチ延伸方向における長さは、前記コンタクト領域のトレンチ延伸方向における長さの0.5倍以上、10倍以下である
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体基板のおもて面の上方に設けられた、コンタクトホールを有する層間絶縁膜を備え、
前記エミッタ領域のトレンチ配列方向における終端位置は、前記コンタクトホールの下方にある
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記エミッタ領域のドーピング濃度は、2E19cm-3以上、4E20cm-3以下である
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記半導体基板の深さ方向において、前記コンタクト領域の厚さは、エミッタ領域の厚さよりも小さい
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記コンタクト領域のドーピング濃度は、1E19cm-3以上、2E20cm-3以下である
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記エミッタ領域は、前記第1トレンチ部の側壁から離間して設けられている
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記複数のトレンチ部は、ダミートレンチ部を含み、
前記第1トレンチ部は、前記ダミートレンチ部である
請求項10に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第1トレンチ部は、ゲートトレンチ部である
請求項10に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記エミッタ領域は、
前記ゲートトレンチ部の側壁と接して設けられ、トレンチ配列方向において、前記第1トレンチ部まで延伸せずに終端する第1エミッタ領域と、
前記第1トレンチ部の側壁と接して設けられ、トレンチ配列方向において、前記ゲートトレンチ部まで延伸せずに終端する第2エミッタ領域と、
を有し、
前記コンタクト領域は、トレンチ配列方向において、前記第1エミッタ領域の端部から前記第1トレンチ部の側壁まで設けられ、且つ、前記第2エミッタ領域の端部から前記ゲートトレンチ部の側壁まで設けられ、
前記第1エミッタ領域および前記第2エミッタ領域は、トレンチ延伸方向において、互い違いに設けられている
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記第1トレンチ部は、ゲートトレンチ部である
請求項13に記載の半導体装置。
【請求項15】
半導体基板のおもて面に、ゲートトレンチ部を含む複数のトレンチ部を形成する段階と、
前記半導体基板に、第1導電型のドリフト領域を形成する段階と、
前記ドリフト領域の上方に、第2導電型のベース領域を形成する段階と、
前記ベース領域の上方に、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い第1導電型のエミッタ領域を形成する段階と、
前記ベース領域の上方に、前記ベース領域よりもドーピング濃度の高い第2導電型のコンタクト領域を形成する段階と、
を備え、
前記エミッタ領域は、前記ゲートトレンチ部の側壁と接して形成され、トレンチ配列方向において、前記ゲートトレンチ部と対向する第1トレンチ部まで延伸せずに終端し、
前記コンタクト領域は、トレンチ配列方向において、前記エミッタ領域の端部から前記第1トレンチ部の側壁まで形成される
半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記コンタクト領域は、前記ベース領域と同じマスクでイオン注入することにより形成される
請求項15に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記エミッタ領域は、前記コンタクト領域を形成した後に、第2導電型の領域を第1導電型の領域に打ち返すことで形成される
請求項15に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体基板のおもて面にN+型エミッタ層およびP+型コンタクト層が交互に設けられたトランジスタ部を有する半導体装置が記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開平11-345969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ラッチアップ耐量を確保しつつ、ターンオン損失を低減した半導体装置および半導体基板の製造方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、半導体基板のおもて面に設けられ、ゲートトレンチ部を含む複数のトレンチ部と、前記半導体基板に設けられた第1導電型のドリフト領域と、前記ドリフト領域の上方に設けられた第2導電型のベース領域と、前記ベース領域の上方に設けられ、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い第1導電型のエミッタ領域と、前記ベース領域の上方に設けられ、前記ベース領域よりもドーピング濃度の高い第2導電型のコンタクト領域と、を備え、前記エミッタ領域は、前記ゲートトレンチ部の側壁と接して設けられ、トレンチ配列方向において、前記複数のトレンチ部のうち前記ゲートトレンチ部と対向する第1トレンチ部まで延伸せずに終端し、前記コンタクト領域は、トレンチ配列方向において、前記エミッタ領域の端部から前記第1トレンチ部の側壁まで設けられている、半導体装置が提供される。
【0005】
前記半導体基板の上面視で、前記エミッタ領域は、トレンチ延伸方向において離散的に設けられてよい。
【0006】
前記ゲートトレンチ部の側壁において、前記エミッタ領域のトレンチ延伸方向における長さは、前記コンタクト領域のトレンチ延伸方向における長さよりも大きくてよい。
【0007】
前記エミッタ領域のトレンチ配列方向における長さは、0.1μm以上、1.0μm以下であってよい。
【0008】
前記エミッタ領域のトレンチ延伸方向における長さは、前記コンタクト領域のトレンチ延伸方向における長さの0.5倍以上、10倍以下であってよい。
【0009】
半導体装置は、前記半導体基板のおもて面の上方に設けられた、コンタクトホールを有する層間絶縁膜を備え、前記エミッタ領域のトレンチ配列方向における終端位置は、前記コンタクトホールの下方にあってよい。
【0010】
前記エミッタ領域のドーピング濃度は、2E19cm-3以上、4E20cm-3以下であってよい。
【0011】
前記半導体基板の深さ方向において、前記コンタクト領域の厚さは、エミッタ領域の厚さよりも小さくてよい。
【0012】
前記コンタクト領域のドーピング濃度は、1E19cm-3以上、2E20cm-3以下であってよい。
【0013】
前記エミッタ領域は、前記第1トレンチ部の側壁から離間して設けられてよい。
【0014】
前記複数のトレンチ部は、ダミートレンチ部を含み、前記第1トレンチ部は、前記ダミートレンチ部であってよい。
【0015】
前記第1トレンチ部は、ゲートトレンチ部であってよい。
【0016】
前記エミッタ領域は、前記ゲートトレンチ部の側壁と接して設けられ、トレンチ配列方向において、前記第1トレンチ部まで延伸せずに終端する第1エミッタ領域と、前記第1トレンチ部の側壁と接して設けられ、トレンチ配列方向において、前記ゲートトレンチ部まで延伸せずに終端する第2エミッタ領域と、を有し、前記コンタクト領域は、トレンチ配列方向において、前記第1エミッタ領域の端部から前記第1トレンチ部の側壁まで設けられ、且つ、前記第2エミッタ領域の端部から前記ゲートトレンチ部の側壁まで設けられ、前記第1エミッタ領域および前記第2エミッタ領域は、トレンチ延伸方向において、互い違いに設けられてよい。
【0017】
前記第1トレンチ部は、ゲートトレンチ部であってよい。
【0018】
本発明の第2の態様においては、半導体基板のおもて面に、ゲートトレンチ部を含む複数のトレンチ部を形成する段階と、前記半導体基板に、第1導電型のドリフト領域を形成する段階と、前記ドリフト領域の上方に、第2導電型のベース領域を形成する段階と、前記ベース領域の上方に、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い第1導電型のエミッタ領域を形成する段階と、前記ベース領域の上方に、前記ベース領域よりもドーピング濃度の高い第2導電型のコンタクト領域を形成する段階と、を備え、前記エミッタ領域は、前記ゲートトレンチ部の側壁と接して形成され、トレンチ配列方向において、前記ゲートトレンチ部と対向する第1トレンチ部まで延伸せずに終端し、前記コンタクト領域は、トレンチ配列方向において、前記エミッタ領域の端部から前記第1トレンチ部の側壁まで形成される、半導体装置の製造方法が提供される。
【0019】
前記コンタクト領域は、前記ベース領域と同じマスクでイオン注入することにより形成されてよい。
【0020】
前記エミッタ領域は、前記コンタクト領域を形成した後に、第2導電型の領域を第1導電型の領域に打ち返すことで形成されてよい。
【0021】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A】実施例に係る半導体装置100の一例を示す上面図である。
図1B図1Aにおけるa-a断面の一例を示す図である。
図1C図1Aにおけるb-b断面の一例を示す図である。
図2A】エミッタ領域12の延伸方向長さとdI/dtとの相関の一例を示す図である。
図2B】dI/dtとターンオン損失Eonとの相関の一例を示す図である。
図3A】比較例に係る半導体装置1100の一例を示す上面図である。
図3B図3Aにおけるa'-a'断面の一例を示す図である。
図4】半導体装置100の変形例を示す上面図である。
図5】半導体装置100の変形例を示す上面図である。
図6】半導体装置100の製造方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0024】
本明細書においては半導体基板の深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」または「おもて」、他方の側を「下」または「裏」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面をおもて面、他方の面を裏面と称する。「上」、「下」の方向は、重力方向または半導体装置の実装時における方向に限定されない。
【0025】
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。直交座標軸は、構成要素の相対位置を特定するに過ぎず、特定の方向を限定するものではない。例えば、Z軸は地面に対する高さ方向を限定して示すものではない。なお、+Z軸方向と-Z軸方向とは互いに逆向きの方向である。正負を記載せず、Z軸方向と記載した場合、+Z軸および-Z軸に平行な方向を意味する。
【0026】
本明細書では、半導体基板のおもて面および裏面に平行な直交軸をX軸およびY軸とする。また、半導体基板のおもて面および裏面と垂直な軸をZ軸とする。本明細書では、Z軸の方向を深さ方向と称する場合がある。また、本明細書では、X軸およびY軸を含めて、半導体基板のおもて面および裏面に平行な方向を、水平方向と称する場合がある。
【0027】
本明細書において「同一」または「等しい」のように称した場合、製造ばらつき等に起因する誤差を有する場合も含んでよい。当該誤差は、例えば10%以内である。
【0028】
本明細書においては、不純物がドーピングされたドーピング領域の導電型をP型またはN型として説明している。本明細書においては、不純物とは、特にN型のドナーまたはP型のアクセプタの何れかを意味する場合があり、ドーパントと記載する場合がある。本明細書においては、ドーピングとは、半導体基板にドナーまたはアクセプタを導入し、N型の導電型を示す半導体またはP型の導電型を示す半導体とすることを意味する。
【0029】
本明細書においては、ドーピング濃度とは、熱平衡状態におけるドナーの濃度またはアクセプタの濃度を意味する。本明細書においては、ネット・ドーピング濃度とは、ドナー濃度を正イオンの濃度とし、アクセプタ濃度を負イオンの濃度として、電荷の極性を含めて足し合わせた正味の濃度を意味する。一例として、ドナー濃度をN、アクセプタ濃度をNとすると、任意の位置における正味のネット・ドーピング濃度はN-Nとなる。
【0030】
ドナーは、半導体に電子を供給する機能を有している。アクセプタは、半導体から電子を受け取る機能を有している。ドナーおよびアクセプタは、不純物自体には限定されない。例えば、半導体中に存在する空孔(V)、酸素(O)および水素(H)が結合したVOH欠陥は、電子を供給するドナーとして機能する。
【0031】
本明細書においてP+型またはN+型と記載した場合、P型またはN型よりもドーピング濃度が高いことを意味し、P-型またはN-型と記載した場合、P型またはN型よりもドーピング濃度が低いことを意味する。また、本明細書においてP++型またはN++型と記載した場合には、P+型またはN+型よりもドーピング濃度が高いことを意味する。
【0032】
本明細書において化学濃度とは、電気的な活性化の状態によらずに測定される不純物の濃度を指す。化学濃度は、例えば二次イオン質量分析法(SIMS)により計測できる。上述したネット・ドーピング濃度は、電圧-容量測定法(CV法)により測定できる。また、拡がり抵抗測定法(SR法)により計測されるキャリア濃度を、ネット・ドーピング濃度としてよい。CV法またはSR法により計測されるキャリア濃度は、熱平衡状態における値としてよい。また、N型の領域においては、ドナー濃度がアクセプタ濃度よりも十分大きいので、当該領域におけるキャリア濃度を、ドナー濃度としてもよい。同様に、P型の領域においては、当該領域におけるキャリア濃度を、アクセプタ濃度としてもよい。
【0033】
また、ドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度分布がピークを有する場合、当該ピーク値を当該領域におけるドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度としてよい。ドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度がほぼ均一な場合等においては、当該領域におけるドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度の平均値をドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度としてよい。
【0034】
SR法により計測されるキャリア濃度が、ドナーまたはアクセプタの濃度より低くてもよい。拡がり抵抗を測定する際に電流が流れる範囲において、半導体基板のキャリア移動度が結晶状態の値よりも低い場合がある。キャリア移動度の低下は、格子欠陥等による結晶構造の乱れ(ディスオーダー)により、キャリアが散乱されることで生じる。
【0035】
CV法またはSR法により計測されるキャリア濃度から算出したドナーまたはアクセプタの濃度は、ドナーまたはアクセプタを示す元素の化学濃度よりも低くてよい。一例として、シリコンの半導体においてドナーとなるリンまたはヒ素のドナー濃度、あるいはアクセプタとなるボロン(ホウ素)のアクセプタ濃度は、これらの化学濃度の99%程度である。一方、シリコンの半導体においてドナーとなる水素のドナー濃度は、水素の化学濃度の0.1%から10%程度である。
【0036】
図1Aは、実施例に係る半導体装置100の一例を示す上面図である。図1Aにおいては、各部材を半導体基板のおもて面に投影した位置を示している。図1Aにおいては、半導体装置100の一部の部材だけを示しており、一部の部材は省略している。
【0037】
半導体装置100は、半導体基板を備えている。本明細書で単に上面視と称した場合、半導体基板のおもて面側から見ることを意味している。本例の半導体基板は、上面視において互いに向かい合う2組の端辺を有する。図1Aにおいては、X軸およびY軸は、何れかの端辺と平行である。またZ軸は、半導体基板のおもて面と垂直である。
【0038】
半導体基板には活性部120が設けられている。活性部120は、半導体装置100が動作した場合に半導体基板のおもて面と裏面との間で、深さ方向(Z軸方向)に主電流が流れる領域である。本例では、後述するエミッタ電極52に対応する領域を活性部120とする。
【0039】
活性部120には、IGBT等のトランジスタ素子を含むトランジスタ部70が設けられている。活性部120には、還流ダイオード(FWD)等のダイオード素子を含むダイオード部がさらに設けられていてもよい。トランジスタ部70は、半導体基板のおもて面側に、N型のエミッタ領域、P型のベース領域、ゲート導電部およびゲート絶縁膜を有するゲート構造が周期的に配置されている。
【0040】
半導体装置100は、半導体基板の上方に1つ以上のパッドを有してよい。半導体装置100は、ゲートパッド、アノードパッド、カソードパッドおよび電流検出パッド等のパッドを有してもよい。各パッドは、端辺の近傍に配置されている。端辺の近傍とは、上面視における端辺と、エミッタ電極52との間の領域を指す。半導体装置100の実装時において、各パッドは、ワイヤ等の配線を介して外部の回路に接続されてよい。
【0041】
ゲートパッドには、ゲート電位が印加される。ゲートパッドは、活性部120のゲートトレンチ部の導電部と電気的に接続されている。半導体装置100は、ゲートパッドとゲートトレンチ部とを電気的に接続するゲートランナー48を備える。
【0042】
ゲートランナー48は、上面視において活性部120と半導体基板の端辺との間に配置されている。本例のゲートランナー48は、上面視において活性部120を囲んでいる。上面視においてゲートランナー48に囲まれた領域を活性部120としてもよい。
【0043】
ゲートランナー48は、半導体基板の上方に配置されている。本例のゲートランナー48は、不純物がドープされたポリシリコン等で形成されてよい。ゲートランナー48は、ゲートトレンチ部の内部にゲート絶縁膜を介して設けられたゲート導電部と電気的に接続する。ゲートランナー48は、ゲートパッドに印加されたゲート電圧を、トランジスタ部70に供給する。
【0044】
本例の半導体装置100は、活性部120の外周に設けられた耐圧構造部を備える。本例の耐圧構造部は、ゲートランナー48と端辺との間に配置されている。耐圧構造部は、半導体基板のおもて面側の電界集中を緩和する。
【0045】
耐圧構造部は、活性部120を囲んで環状に設けられたフィールドプレートおよびリサーフのうちの少なくとも一つを更に備えていてもよい。フィールドプレートは、エミッタ電極52と同じ材料であってよい。
【0046】
また、半導体装置100は、ポリシリコン等で形成されたPN接合ダイオードである不図示の温度センス部や、活性部120に設けられたトランジスタ部と同様な動作をする不図示の電流検出部を備えてもよい。
【0047】
半導体装置100は、半導体基板のおもて面側に設けられたゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域11、エミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15を備える。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30は、それぞれがトレンチ部の一例である。
【0048】
また、本例の半導体装置100は、半導体基板のおもて面の上方に設けられたエミッタ電極52を備える。エミッタ電極52およびゲートランナー48と、半導体基板のおもて面との間には層間絶縁膜が設けられているが、図1Aでは省略している。本例の層間絶縁膜には、コンタクトホール54、55および56が、当該層間絶縁膜を貫通して設けられている。図1Aにおいては、それぞれのコンタクトホールに斜線のハッチングを付している。
【0049】
エミッタ電極52は、ゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域11、エミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15の上方に設けられている。エミッタ電極52は、コンタクトホール54によって、半導体基板のおもて面におけるエミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15と電気的に接続する。
【0050】
また、エミッタ電極52は、コンタクトホール56によってダミートレンチ部30内のダミー導電部と接続されている。エミッタ電極52とダミー導電部との間には、不純物がドープされたポリシリコン等の、導電性を有する材料で形成された接続部25が設けられてよい。接続部25は、層間絶縁膜およびダミートレンチ部30のダミー絶縁膜等の絶縁膜を介して半導体基板のおもて面に設けられている。
【0051】
ゲートランナー48とエミッタ電極52とは層間絶縁膜および酸化膜などの絶縁物により電気的に分離されている。本例のゲートランナー48は、コンタクトホール55の下方から、ゲートトレンチ部40の先端部41まで設けられている。ゲートトレンチ部40の先端部41においてゲート導電部は半導体基板のおもて面に露出しており、ゲートランナー48と接続する。ゲートランナー48は、半導体基板のおもて面において、ゲートトレンチ部40内のゲート導電部に接続する。ゲートランナー48は、ダミートレンチ部30内のダミー導電部およびエミッタ電極52には電気的に接続しない。
【0052】
エミッタ電極52は、金属を含む導電性材料で形成される。例えば、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とした合金(例えば、アルミニウム-シリコン合金等)で形成される。各電極は、アルミニウム等で形成された領域の下層にチタンやチタン化合物等で形成されたバリアメタルを有してよい。
【0053】
エミッタ電極52は、コンタクトホール内に設けられたプラグと接続されてよい。プラグは、コンタクトホールの側壁に設けられたバリアメタルと、バリアメタルに接するようにコンタクトホール内に埋め込まれたタングステンとを有してよい。
【0054】
プラグは、コンタクト領域15またはベース領域14に接するコンタクトホールに設けられている。プラグが設けられたコンタクトホールの下方には、コンタクト領域15よりもドーピング濃度が高いP++型のプラグ領域が設けられてもよい。プラグ領域は、バリアメタルとコンタクト領域15との接触抵抗を改善することによりラッチアップ耐量を向上させる。
【0055】
ウェル領域11は、ゲートランナー48と重なって、活性部120の外周を延伸し、上面視で環状に設けられている。ウェル領域11は、ゲートランナー48と重ならない範囲にも、所定の幅で延伸し、上面視で環状に設けられている。本例のウェル領域11は、コンタクトホール54の延伸方向(Y軸方向)の端から、ゲートランナー48側に離れて設けられている。ウェル領域11は、ベース領域14よりもドーピング濃度の高い第2導電型の領域である。ゲートランナー48は、ウェル領域11と電気的に絶縁されている。
【0056】
本例のベース領域14はP型であり、ウェル領域11はP+型である。また、ウェル領域11は、半導体基板のおもて面から、ベース領域14の下端よりも深い位置まで形成されている。ベース領域14は、ウェル領域11に接して設けられている。よって、ウェル領域11はエミッタ電極52と電気的に接続されている。
【0057】
トランジスタ部70は、配列方向(X軸方向)に複数配列されたトレンチ部を有する。本例のトランジスタ部70には、配列方向に沿って1以上のゲートトレンチ部40が設けられている。
【0058】
本例のゲートトレンチ部40は、配列方向と垂直な延伸方向(Y軸方向)に沿って延伸する2つの延伸部分39(延伸方向に沿って直線状であるトレンチの部分)と、2つの延伸部分39を接続する先端部41とを有する。
【0059】
先端部41の少なくとも一部は、上面視において曲線状に設けられてよい。2つの延伸部分39のY軸方向における端部同士を先端部41がゲートランナー48と接続することで、ゲートトレンチ部40へのゲート電極として機能する。一方、先端部41を曲線状にすることにより延伸部分39で完結するよりも、端部における電界集中を緩和できる。
【0060】
トランジスタ部70には、配列方向に沿って1以上のゲートトレンチ部40と1以上のダミートレンチ部30とが交互に設けられてよい。トランジスタ部70において、ダミートレンチ部30はゲートトレンチ部40のそれぞれの延伸部分39の間に設けられている。それぞれの延伸部分39の間には、1本のダミートレンチ部30が設けられてよく、複数本のダミートレンチ部30が設けられていてもよい。
【0061】
あるいは、それぞれの延伸部分39の間には、ダミートレンチ部30が設けられなくてもよく、ゲートトレンチ部40が設けられてもよい。このような構造により、エミッタ領域12からの電子電流を増大することができるため、オン電圧が低減する。
【0062】
ダミートレンチ部30は、延伸方向に延伸する直線形状を有してよく、ゲートトレンチ部40と同様に、延伸部分と先端部とを有していてもよい。図1Aに示した半導体装置100は、先端部を有さない直線形状のダミートレンチ部30のみが配列されているが、他の例においては、半導体装置100は、上面視において曲線状の先端部を有するダミートレンチ部30を含んでもよい。
【0063】
ウェル領域11の拡散深さは、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の深さよりも深くてよい。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30のY軸方向の端部は、上面視においてウェル領域11に設けられている。つまり、各トレンチ部のY軸方向の端部において、各トレンチ部の深さ方向の底部は、ウェル領域11に覆われている。また、X軸方向の端部に設けられるトレンチ部は、ウェル領域11に覆われていてもよい。これにより、各トレンチ部の当該底部における電界集中を緩和できる。
【0064】
配列方向において各トレンチ部の間には、メサ部60が設けられている。メサ部60は、半導体基板の内部において、トレンチ部に挟まれた領域を指す。一例として、メサ部60の深さ位置は、半導体基板のおもて面からトレンチ部の底部までである。本例のメサ部60は、X軸方向において隣接するトレンチ部に挟まれ、半導体基板のおもて面において、トレンチ部に沿って延伸方向(Y軸方向)に延伸して設けられている。
【0065】
それぞれのメサ部60には、ベース領域14が設けられている。それぞれのメサ部60には、上面視においてベース領域14に挟まれた領域に、第1導電型のエミッタ領域12および第2導電型のコンタクト領域15が設けられている。本例のエミッタ領域12はN+型であり、コンタクト領域15はP+型である。エミッタ領域12およびコンタクト領域15は、半導体基板の深さ方向において、ベース領域14と半導体基板のおもて面との間に設けられてよい。本例のベース領域14のドーピング濃度は、1E17cm-3以上、1E18cm-3以下であり、エミッタ領域のドーピング濃度は、2E19cm-3以上、4E20cm-3以下であり、コンタクト領域のドーピング濃度は、1E19cm-3以上、2E20cm-3以下である。
【0066】
メサ部60は、半導体基板のおもて面に露出したエミッタ領域12を有する。本例のエミッタ領域12は、ゲートトレンチ部40の側壁と接して設けられている。本例のエミッタ領域12は、配列方向において、ゲートトレンチ部40から、隣接するダミートレンチ部30まで延伸せずに終端する。本例のコンタクト領域15は、配列方向において、エミッタ領域12の端部からダミートレンチ部30の側壁まで設けられている。
【0067】
本例において、エミッタ領域12の延伸方向における長さはDn、コンタクト領域15の延伸方向における長さはDpである。エミッタ領域12の延伸方向における長さDnおよびコンタクト領域15の延伸方向における長さDpはいずれも、メサ部60の幅Wmよりも大きい。ここで、メサ部60の幅Wmは、配列方向において、トレンチ部の側壁から対向するトレンチ部の側壁までの距離である。
【0068】
ゲートトレンチ部40の側壁において、エミッタ領域12の延伸方向における長さDnは、コンタクト領域15の延伸方向における長さDpよりも大きい。エミッタ領域12の延伸方向における長さDnは、コンタクト領域15の延伸方向における長さDpの0.5倍以上、10倍以下である。
【0069】
なお、ダミートレンチ部30は、複数のトレンチ部のうち、エミッタ領域12が接するゲートトレンチ部40と対向する第1トレンチ部の一例である。本例のエミッタ領域12は、ダミートレンチ部30の側壁から離間して設けられている。
【0070】
また、本例のエミッタ領域12は、半導体基板の上面視で、延伸方向において離散的に設けられている。ゲートトレンチ部40の側壁にエミッタ領域12が設けられていない領域では、コンタクト領域15は、配列方向において、ゲートトレンチ部40から隣接するダミートレンチ部30まで、メサ部60にわたって延伸して設けられている。つまり、エミッタ領域12は、半導体基板の上面視で、コンタクト領域15に囲まれてドット状に設けられている。
【0071】
それぞれのメサ部60の上方には、コンタクトホール54が設けられている。コンタクトホール54は、延伸方向においてベース領域14に挟まれた領域に配置されている。コンタクトホール54は、メサ部60の配列方向における中央に配置されてよい。
【0072】
図1Bは、図1Aにおけるa-a断面の一例を示す図である。a-a断面は、エミッタ領域12およびコンタクト領域15を通過するXZ面である。本例の半導体装置100は、当該断面において、半導体基板10、層間絶縁膜38、エミッタ電極52およびコレクタ電極24を有する。エミッタ電極52は、半導体基板10および層間絶縁膜38の上面に設けられている。
【0073】
コレクタ電極24は、半導体基板10の裏面23に設けられている。コレクタ電極24は、金属等の導電材料で形成されている。本明細書における深さ方向は、エミッタ電極52とコレクタ電極24とを結ぶ方向である。本例における深さ方向はZ軸方向である。
【0074】
半導体基板10は、シリコン基板であってよく、炭化シリコン基板であってよく、窒化ガリウム等の窒化物半導体基板等であってもよい。本例の半導体基板10はシリコン基板である。当該断面の半導体基板10のおもて面21側には、P型のベース領域14が設けられている。
【0075】
当該断面において、トランジスタ部70における半導体基板10のおもて面21側には、N+型のエミッタ領域12およびP+型のコンタクト領域15、P型のベース領域14およびN+型の蓄積領域16が、半導体基板10のおもて面21側から順番に設けられている。
【0076】
本例のエミッタ領域12の厚さは、0.05μm以上、1.0μm以下であり、コンタクト領域15の厚さは、0.05μm以上、2.0μm以下である。ここで、厚さとは、半導体基板10の深さ方向において、半導体基板10のおもて面21から、当該領域の下端までの距離をいう。図1Bでは、コンタクト領域15およびエミッタ領域12は同じ厚さで示されているが、コンタクト領域15の厚さは、エミッタ領域12の厚さよりも小さくてよい。
【0077】
本例において、エミッタ領域12の配列方向における長さはWn、コンタクト領域15の配列方向における長さはWpである。エミッタ領域12の配列方向における長さWnは、ゲートトレンチ部40の側壁から終端位置、すなわちコンタクト領域15との境界までの距離である。図1Bにおいて、コンタクト領域15の配列方向における長さWpは、ダミートレンチ部30の側壁から、エミッタ領域12との境界までの距離である。図1Bにおいて、エミッタ領域12の長さWnおよびコンタクト領域15の長さWpの和は、メサ部60の幅Wmに等しい。
【0078】
エミッタ領域12の配列方向における長さWnは、0.1μm以上、3.0μm以下である。本例のエミッタ領域12の配列方向における長さWnは、0.1μm以上、1.0μm以下である。エミッタ領域12の配列方向における終端位置は、コンタクトホール54の下方にある。つまり、本例のコンタクトホール54は、エミッタ領域12およびコンタクト領域15の境界の上方に設けられている。
【0079】
トランジスタ部70の動作時に、コレクタ領域22からの正孔電流は、ゲートトレンチ部40の側壁に沿って上昇し、次に、エミッタ領域12の下端に沿ってコンタクト領域15へと流れ込む。従って、正孔電流の経路において、エミッタ領域12の下端に沿って移動する距離が短いほど、正孔の引き抜きが促進され、ラッチアップ耐量が向上する。
【0080】
本例のエミッタ領域12は、配列方向において、ゲートトレンチ部40からダミートレンチ部30まで延伸せずに終端し、コンタクト領域15と接するので、メサ部60にわたって延伸する場合よりもトランジスタ部70の動作時における正孔電流の経路が短くなる。従って、エミッタ領域12の延伸方向における長さDnを大きくしても、ラッチアップ耐量を確保することができる。
【0081】
トランジスタ部70において、蓄積領域16の下方にはN-型のドリフト領域18が設けられている。ドリフト領域18とベース領域14との間に、ドリフト領域18よりも高濃度の蓄積領域16を設けることで、キャリア注入促進効果(IE効果)を高めて、オン電圧を低減することができる。
【0082】
本例の蓄積領域16は、トランジスタ部70の各メサ部60に設けられている。蓄積領域16は、各メサ部60におけるベース領域14の下面全体を覆うように設けられてよい。ドリフト領域18の下方にはN+型のバッファ領域20が設けられている。蓄積領域16は、深さ方向に複数設けられてよい。
【0083】
バッファ領域20は、ドリフト領域18の下方に設けられている。バッファ領域20のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。バッファ領域20は、ベース領域14の下面から広がる空乏層が、P+型のコレクタ領域22に到達することを防ぐフィールドストップ層として機能してよい。バッファ領域20の下方には、P+型のコレクタ領域22が設けられている。
【0084】
半導体基板10のおもて面21側には、1以上のゲートトレンチ部40、および、1以上のダミートレンチ部30が設けられている。各トレンチ部は、半導体基板10のおもて面21から、ベース領域14を貫通して、ドリフト領域18に到達するように設けられている。エミッタ領域12、コンタクト領域15および蓄積領域16の少なくともいずれかが設けられている領域においては、各トレンチ部はこれらの領域も貫通して、ドリフト領域18に到達している。
【0085】
トレンチ部がドーピング領域を貫通するとは、ドーピング領域を形成してからトレンチ部を形成する順序で製造したものに限定されない。トレンチ部を形成した後に、トレンチ部の間にドーピング領域を形成したものも、トレンチ部がドーピング領域を貫通しているものに含まれる。
【0086】
ゲートトレンチ部40は、半導体基板10のおもて面21側に設けられたゲート絶縁膜42およびゲート導電部44を有する。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチ部40の内壁を覆って設けられている。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチ部40の内壁の半導体を酸化または窒化して形成されてよい。ゲート導電部44は、ゲートトレンチ部40の内部においてゲート絶縁膜42よりも内側に設けられている。つまりゲート絶縁膜42は、ゲート導電部44と半導体基板10とを絶縁している。ゲート導電部44は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。
【0087】
ゲート導電部44は、ゲート絶縁膜42を挟んでベース領域14と対向する領域を含む。当該断面におけるゲートトレンチ部40は、半導体基板10のおもて面21において層間絶縁膜38により覆われている。ゲート導電部44に所定の電圧が印加されると、ベース領域14のうちゲートトレンチに接する界面の表層に電子の反転層によるチャネルが形成される。
【0088】
ダミートレンチ部30は、当該断面において、ゲートトレンチ部40と同一の構造を有してよい。ダミートレンチ部30は、半導体基板10のおもて面21側に設けられたダミートレンチ、ダミー絶縁膜32およびダミー導電部34を有する。ダミー絶縁膜32は、ダミートレンチの内壁を覆って設けられている。ダミー導電部34は、ダミートレンチの内部に設けられ、且つ、ダミー絶縁膜32よりも内側に設けられている。ダミー絶縁膜32は、ダミー導電部34と半導体基板10とを絶縁する。ダミー導電部34は、ゲート導電部44と同一の材料で形成されてよい。
【0089】
図1Cは、図1Aにおけるb-b断面の一例を示す図である。b-b断面は、コンタクト領域15を通過するXZ面である。b-b断面は、半導体基板10のおもて面21にエミッタ領域12が設けられていない点を除き、図1Bのa-a断面と共通する。
【0090】
図1Cに示すように、ゲートトレンチ部40の側壁にエミッタ領域12が設けられていない領域では、コンタクト領域15は、配列方向において、ゲートトレンチ部40から隣接するダミートレンチ部30まで、メサ部60にわたって延伸して設けられている。図1Cにおいて、コンタクト領域15の配列方向における長さWpは、メサ部60の幅Wmに等しい。コレクタ領域22からの正孔電流は、ゲートトレンチ部40の側壁に沿って上昇し、正孔がコンタクト領域15で引き抜かれることにより、ラッチアップが抑制される。
【0091】
図2Aは、エミッタ領域12の延伸方向長さとdI/dtとの相関の一例を示す図である。横軸は、エミッタ領域12の拡散前の延伸方向長さ[μm]、縦軸は、ターンオン時のdI/dt[kV/μs]を示す。図2Aからわかるように、ターンオン時のdI/dtは、エミッタ領域12の延伸方向長さに比例する。
【0092】
図2Bは、dI/dtとターンオン損失Eonとの相関の一例を示す図である。横軸は、ターンオン時のdI/dt[kV/μs]を示し、縦軸は、ターンオン損失Eonを示す。図2Bからわかるように、ターンオン損失Eonはターンオン時のdI/dtに反比例する。よって、図2Aおよび図2Bから、エミッタ領域12の延伸方向長さが大きいほど、ターンオン損失Eonを低減できることがわかる。
【0093】
但し、エミッタ領域12の延伸方向長さが大きくなると、トランジスタ部70の動作時の正孔電流の経路が長くなり、ラッチアップ耐量が低下する。そこで、ラッチアップ耐量を確保しつつ、ターンオン損失Eonを低減することが望ましい。
【0094】
また、例えば、車載用の製品では、ターンオン時のdI/dtの上限値が定められている場合があり、dI/dtのばらつきが大きいと、標準条件のdI/dtを低く設定しなければならない場合がある。そこで、dI/dtのばらつきを低減するために、エミッタ領域12およびコンタクト領域15の延伸方向長さのばらつきを低減することが望ましい。
【0095】
図3Aは、比較例に係る半導体装置1100の一例を示す上面図である。ここでは、実施例に係る半導体装置100との共通の要素には同じ符号を付し、説明を省略する。図3Bは、図3Aにおけるa'-a'断面の一例を示す図である。a'-a'断面は、エミッタ領域112を通過するXZ面である。なお、図3Aにおけるb'-b'断面は、図1Cに示すコンタクト領域15を通過するXZ面と同一なので、図示を省略する。
【0096】
半導体装置1100のメサ部60において、コンタクト領域15およびエミッタ領域112のそれぞれは、配列方向における一方のトレンチ部から、他方のトレンチ部まで設けられている。半導体装置1100のメサ部60において、コンタクト領域15およびエミッタ領域112は、延伸方向に沿って交互に配置されている。つまり、エミッタ領域112の配列方向における端部はコンタクト領域15と接しておらず、延伸方向における端部のみがコンタクト領域15と接している。
【0097】
エミッタ領域112の延伸方向における長さはDn'、配列方向における長さはWn'である。コンタクト領域15の延伸方向における長さはDp'である。エミッタ領域112の配列方向における長さWn'は、メサ部60の幅Wmに等しい。エミッタ領域112の延伸方向における長さDn'およびコンタクト領域15の延伸方向における長さDp'はいずれも、メサ部60の幅Wmよりも大きい。エミッタ領域112の延伸方向における長さDn'のコンタクト領域15の延伸方向における長さDp'に対する比率は、エミッタ領域12の延伸方向における長さDnのコンタクト領域15の延伸方向における長さDpに対する比率と同じであってよい。
【0098】
上述したように、トランジスタ部70の動作時に、コレクタ領域22からの正孔電流は、ゲートトレンチ部40の側壁に沿って上昇し、次に、エミッタ領域112の下端に沿ってコンタクト領域15へと流れ込む。従って、正孔電流の経路において、エミッタ領域112の下端に沿って移動する距離が短いほど、正孔の引き抜きが促進され、ラッチアップ耐量が向上する。
【0099】
半導体装置1100のエミッタ領域112は、配列方向において、ゲートトレンチ部40からダミートレンチ部30まで延伸している。エミッタ領域112の配列方向における長さWn'は、メサ部60の幅Wmに等しい。つまり、ゲートトレンチ部40の側壁に沿ってエミッタ領域112の下端に到達した正孔電流は、配列方向に移動してもコンタクト領域15に到達できないため、延伸方向に移動してコンタクト領域15へと流れ込む。
【0100】
エミッタ領域112の延伸方向における長さDn'は、メサ部60の幅Wmよりも大きい。従って、半導体装置1100では、トランジスタ部70の動作時における正孔電流の経路が、半導体装置100よりも長くなる。そこで、半導体装置1100では、エミッタ領域112の延伸方向における長さDn'を、半導体装置100のエミッタ領域12の延伸方向における長さDnよりも小さくし、ラッチアップ耐量の低下を抑制する必要がある。
【0101】
これに対し、半導体装置100のエミッタ領域12は、配列方向において、ゲートトレンチ部40から、隣接するダミートレンチ部30まで延伸せずに終端するので、エミッタ領域12の延伸方向における長さDnを大きくしても、トランジスタ部70の動作時における正孔電流の経路が長くならず、ラッチアップ耐量を確保することができる。このように、半導体装置100では、エミッタ領域12の延伸方向における長さDnを大きくすることにより、ラッチアップ耐量を確保しつつ、ターンオン損失Eonを低減することができる。
【0102】
図4は、半導体装置100の変形例を示す上面図である。本例のトランジスタ部70には、複数のゲートトレンチ部40が設けられ、ダミートレンチ部30が設けられていない点で、図1Aに示す半導体装置100と異なる。ここでは、図1Aに示す半導体装置100と共通の要素には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0103】
本例のエミッタ領域12は、配列方向において、ゲートトレンチ部40から、隣接するゲートトレンチ部40まで延伸せずに終端する。本例のコンタクト領域15は、配列方向において、エミッタ領域12の端部からゲートトレンチ部40の側壁まで設けられている。
【0104】
本例において、エミッタ領域12が接していないゲートトレンチ部40は、複数のトレンチ部のうち、エミッタ領域12が接するゲートトレンチ部40と対向する第1トレンチ部の一例である。本例では、エミッタ領域12が接しているゲートトレンチ部40と、エミッタ領域12が接していないゲートトレンチ部40とが、配列方向において交互に配列されている。このような構成であっても、トランジスタ部70の動作時における正孔電流の経路が長くならず、図1Aに示す半導体装置100と同様の効果を得ることができる。
【0105】
図5は、半導体装置100の変形例を示す上面図である。本例のトランジスタ部70には、複数のゲートトレンチ部40が設けられ、ダミートレンチ部30が設けられていない点で、図4に示す半導体装置100と共通する。但し、本例では、全てのゲートトレンチ部40の側壁にエミッタ領域12が接している点で、図4に示す半導体装置100と異なる。ここでは、図1Aまたは図4に示す半導体装置100と共通の要素には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0106】
本例のエミッタ領域12は、ゲートトレンチ部40Aの側壁と接して設けられ、配列方向において、隣接するゲートトレンチ部40Bまで延伸せずに終端する第1エミッタ領域12Aと、ゲートトレンチ部40Bの側壁と接して設けられ、配列方向において、隣接するゲートトレンチ部40Aまで延伸せずに終端する第2エミッタ領域12Bとを有する。
【0107】
本例のゲートトレンチ部40Aおよびゲートトレンチ部40Bは、いずれもゲートトレンチ部40の一例である。ゲートトレンチ部40Aおよびゲートトレンチ部40Bは、配列方向において交互に配列されている。ゲートトレンチ部40Aの側壁と接して設けられた第1エミッタ領域12Aを中心に見る場合、ゲートトレンチ部40Aに隣接するゲートトレンチ部40Bが、第1トレンチ部の一例である。ゲートトレンチ部40Bの側壁と接して設けられた第2エミッタ領域12Bを中心に見る場合、ゲートトレンチ部40Bに隣接するゲートトレンチ部40Aが、第1トレンチ部の一例である。
【0108】
コンタクト領域15は、配列方向において、第1エミッタ領域12Aの端部からゲートトレンチ部40Bの側壁まで設けられ、且つ、第2エミッタ領域12Bの端部から前記ゲートトレンチ部の側壁まで設けられ、第1エミッタ領域12Aおよび第2エミッタ領域12Bは、延伸方向において、互い違いに設けられている。
【0109】
このように、いずれのエミッタ領域12も、配列方向においてコンタクト領域15と接しているので、トランジスタ部70の動作時における正孔電流の経路が長くならず、図1Aに示す半導体装置100と同様の効果を得ることができる。さらに、本例では、全てのゲートトレンチ部40の側壁に接してエミッタ領域12が設けられており、トランジスタ特性を向上させることができる。
【0110】
図6は、半導体装置100の製造方法の一例を示す図である。ここでは主に、エミッタ領域12の形成に関連するプロセスを説明し、他のプロセスについては説明を省略する。
【0111】
ステップS110において、半導体基板10のおもて面21をエッチングすることにより、複数のトレンチ部を形成する。トレンチ部は、ドリフト領域18となる領域(半導体基板10において、他のドーピング領域が設けられずに残存する領域)に到達する深さまでエッチングして形成される。次に、複数のトレンチ部の側壁に、酸化膜を形成する。この酸化膜は、ダミー絶縁膜32およびゲート絶縁膜42となる。次に、ダミー絶縁膜32およびゲート絶縁膜42で側壁が覆われた複数のトレンチ部に不純物がドープされたポリシリコン等を充填し、ダミー導電部34およびゲート導電部44をそれぞれ形成する。半導体基板10のおもて面21に堆積した余剰の酸化膜等をエッチングで除去し、ダミートレンチ部30およびゲートトレンチ部40が形成される。
【0112】
ステップS120において、ベース領域14およびコンタクト領域15を形成する。ベース領域14およびコンタクト領域15は、同じマスクを使用して、半導体基板10のおもて面21にP型ドーパントをイオン注入することにより形成される。一例として、ベース領域14のドーズ量は2E13cm-2、注入加速度は400kevであり、コンタクト領域15のドーズ量は3E15cm-2、注入加速度は120kevである。ドーズ量は、所定のドーピング濃度になるよう適宜調整してよい。
【0113】
メサ部に蓄積領域16を設ける場合は、ステップS120で半導体基板10のおもて面21にN型ドーパントをイオン注入することにより、蓄積領域16を形成する。蓄積領域16は、ベース領域14およびコンタクト領域15と同じマスクを使用してもよく、異なるマスクを使用してもよい。
【0114】
次に、ステップS130において、エミッタ領域12を形成する。エミッタ領域12は、コンタクト領域15を形成した後に、半導体基板10のおもて面21にN型ドーパントをイオン注入し、P型の領域をN型の領域に打ち返すことにより形成される。一例として、エミッタ領域12のドーズ量は6E15cm-2、注入加速度は180kevである。エミッタ領域12を形成するための注入加速度は、コンタクト領域15を形成するための注入加速度よりも大きい。ドーパントの注入後、アニール工程による熱拡散が行われる。一例として、アニール条件は、970℃、140分である。なお、アニール工程はステップS120およびS130のそれぞれで行われてもよく、ステップS130で一括して行われてもよい。
【0115】
エミッタ領域12の厚さは、0.05μm以上、1.0μm以下であり、コンタクト領域15の厚さは、0.05μm以上、2.0μm以下であってよい。本例のエミッタ領域12の厚さは、0.1μm以上、1.0μm以下であり、コンタクト領域15の厚さは、0.1μm以上、1.0μm以下である。本例のコンタクト領域15の厚さは、エミッタ領域12の厚さよりも小さくてよい。本例のエミッタ領域12は、P型のコンタクト領域15をN型に打ち返すことにより形成されるので、コンタクト領域15を形成するための注入加速度よりも大きい注入加速度で、コンタクト領域15の下端よりも深い領域まで形成される必要がある。コンタクト領域15の厚さを小さくすることにより、正孔の注入量が抑制されるので、閾値電圧の過度な上昇を防止することができる。
【0116】
また、本例のエミッタ領域12は、コンタクト領域15を打ち返すことにより形成されるので、コンタクト領域15は、ベース領域14と同じマスクを使用して形成することができる。そのため、コンタクト領域15を形成するためのマスクを削減することができ、パターニングのばらつきも抑制することができる。これにより、エミッタ領域12およびコンタクト領域15の延伸方向長さのばらつきを低減することができ、dI/dtのばらつきを抑制することができる。
【0117】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0118】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0119】
10・・・半導体基板、11・・・ウェル領域、12・・・エミッタ領域、14・・・ベース領域、15・・・コンタクト領域、16・・・蓄積領域、18・・・ドリフト領域、20・・・バッファ領域、21・・・おもて面、22・・・コレクタ領域、23・・・裏面、24・・・コレクタ電極、25・・・接続部、30・・・ダミートレンチ部、32・・・ダミー絶縁膜、34・・・ダミー導電部、38・・・層間絶縁膜、39・・・延伸部分、40・・・ゲートトレンチ部、41・・・先端部、42・・・ゲート絶縁膜、44・・・ゲート導電部、48・・・ゲートランナー、52・・・エミッタ電極、54・・・コンタクトホール、55・・・コンタクトホール、56・・・コンタクトホール、60・・・メサ部、70・・・トランジスタ部、100・・・半導体装置、112・・・エミッタ領域、120・・・活性部、1100・・・半導体装置
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6