(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118698
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240826BHJP
H02H 7/18 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
H02J7/00 Q
H02H7/18
H02J7/00 302C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025126
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 康浩
(72)【発明者】
【氏名】泉 純太
(72)【発明者】
【氏名】三木 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】木村 健治
(72)【発明者】
【氏名】伴 尊行
(72)【発明者】
【氏名】水野 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】戸村 修二
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 直樹
(72)【発明者】
【氏名】大塚 一雄
(72)【発明者】
【氏名】塚田 浩司
【テーマコード(参考)】
5G053
5G503
【Fターム(参考)】
5G053AA06
5G053BA01
5G503BA03
5G503BB01
5G503BB02
5G503CA01
5G503EA09
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】電池ストリングおいて漏電が生じている場合、漏電が生じている電池回路モジュールを特定する。
【解決手段】電池ストリングStは、複数の電池回路モジュールMを直列接続可能に構成される。制御装置100は、漏電診断モードにおいて、リレー40を遮断し、グランド線GLに設けた第3スイッチ60をON状態にする。負極線PLに近い電池回路モジュールMから正極線PL側の電池回路モジュールMへ、順番に電池回路モジュールMを駆動状態に切り換える。グランド線GLに設けた電流センサ50で検出する電流が変化しないときに、駆動状態である電池回路モジュールMに漏電が生じていると判定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池と、前記電池に並列に接続された第1スイッチと、前記電池に直列に接続された第2スイッチと、前記第1スイッチがOFF状態かつ前記第2スイッチがON状態であるときに前記電池の電圧が印加される第1出力端子及び第2出力端子とを含む、電池回路モジュールと、
複数の前記電池回路モジュールを直列接続した電池ストリングと、
前記電池ストリングを制御する制御装置と、
前記電池ストリングの負極線を接地するグランド線と、
前記グランド線に設けられた、電流センサ、第3スイッチ、および制限抵抗と、を備え、
前記制御装置は、
前記第1スイッチをOFF状態かつ前記第2スイッチをON状態とする駆動状態と、前記第1スイッチをON状態かつ前記第2スイッチをOFF状態とするスルー状態とを切り換え可能であり、
漏電診断モードにおいて、前記第3スイッチをON状態にし、ひとつの前記電池回路モジュールを前記駆動状態かつ他の前記電池回路モジュールを前記スルー状態に切り換えるとともに、前記駆動状態の前記電池回路モジュールを順次切り換え、前記電流センサで検出した電流値に基づいて、漏電している前記電池回路モジュールを判定するよう構成されている、電源システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記漏電診断モードにおいて、前記負極線側の前記電池回路モジュールから前記電池ストリングの正極線側の前記電池回路モジュールへ、前記駆動状態の前記電池回路モジュールを順次切り換え、
前記電流値が変化しないときの前記駆動状態の前記電池回路モジュールが漏電していると判定する、請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記漏電診断モードにおいて、前記電池ストリングの正極線側の前記電池回路モジュールから前記負極線側の前記電池回路モジュールへ、前記駆動状態の前記電池回路モジュールを順次切り換え、
前記電流値が変化したとき、ひとつ前に前記駆動状態であった前記電池回路モジュールが漏電していると判定する、請求項1に記載の電源システム。
【請求項4】
前記電池ストリングは、負荷に接続されており、
前記制御装置は、
前記漏電診断モードを開始する際に、前記電池ストリングと前記負荷の接続を遮断する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電源システム。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記負荷を含む電気回路において漏電が検出されたとき、前記漏電診断モードを開始する、請求項4に記載の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2022-120255号公報(特許文献1)には、複数の電池回路モジュールを直列に接続可能とした電池ストリングを用いて、交流電力(交流電圧)を出力する電源システムが開示されている。電池ストリングに含まれる電池回路モジュールは、電池と、電池に並列に接続された第1スイッチと、電池に直列に接続された第2スイッチと、第1スイッチがOFF状態かつ第2スイッチがON状態であるときに電池の電圧が印加される第1出力端子及び第2出力端子とを備える。第1スイッチと第2スイッチは、ゲート駆動信号によって、ON/OFF状態が制御され、ゲート駆動信号は、直列接続された次段の電池回路モジュールへ、所定の遅延時間をもって伝達される。電池ストリングに含まれる各電池回路モジュールの第1スイッチ及び第2スイッチをゲート駆動信号によって制御することで、電池ストリングの出力電圧を所望の大きさに調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電源システムを含む電気回路(電力回路)で漏電が発生したとき、電池ストリングに含まれる電池回路モジュールにおいて、漏電が生じている可能性もある。特許文献1では、電池ストリングにおける漏電箇所の特定については、言及されていない。
【0005】
本開示の目的は、電池ストリングおいて漏電が生じている場合、漏電が生じている電池回路モジュールを特定することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の電源システムは、電池回路モジュールと、複数の電池回路モジュールを直列接続した電池ストリングと、電池ストリングを制御する制御装置と、を備える。電池回路モジュールは、電池と、電池に並列に接続された第1スイッチと、電池に直列に接続された第2スイッチと、第1スイッチがOFF状態かつ第2スイッチがON状態であるときに電池の電圧が印加される第1出力端子及び第2出力端子とを含む。電源システムは、さらに、電池ストリングの負極線を接地するグランド線と、グランド線に設けられた、電流センサ、第3スイッチ、および制限抵抗と、を備える。制御装置は、第1スイッチをOFF状態かつ第2スイッチをON状態とする駆動状態と、第1スイッチをON状態かつ第2スイッチをOFF状態とするスルー状態とを切り換え可能であり、漏電診断モードにおいて、第3スイッチをON状態にし、ひとつの電池回路モジュールを駆動状態かつ他の電池回路モジュールをスルー状態に切り換えるとともに、駆動状態の電池回路モジュールを順次切り換え、電流センサで検出した電流値に基づいて、漏電している電池回路モジュールを判定するよう構成されている。
【0007】
この構成によれば、電池回路モジュールの第1スイッチと第2スイッチをON/OFFするデューティ比が制御されることにより、接続される電池回路モジュールの数が制御され、電池ストリングの出力電圧が制御される。電池ストリングの負極線は、電流センサ、第3スイッチ、および制限抵抗を介して、グランド線によって接地される。本開示における「接地」とは、グランド線を電源システムの筐体等に接続するフレームグラウンドであってよく、地面に接続するものであってもよい。
【0008】
制御装置は、漏電診断モード時、第3スイッチをON状態にする。そして、制御装置は、ひとつの電池回路モジュールを駆動状態(第1スイッチがOFF状態かつ第2スイッチがON状態)、かつ、他の電池回路モジュールをスルー状態(第1スイッチがON状態かつ第2スイッチがOFF状態)にするとともに、駆動状態の電池回路モジュールを順次切り換える。制御装置は、電流センサによって検出された、駆動状態の電池回路モジュールが切り換えられたときの電流値に基づいて、漏電している電池回路モジュールの判定を行う。
【0009】
漏電診断モード時、第3スイッチがON状態であるので、電池ストリングの負極線は、グランド線を介して接地電位となる。電池ストリングに含まれるいずれかの電池回路モジュールにおいて漏電が生じていると、漏電が生じている電池回路モジュールの電位は、接地電位になる。このため、漏電が生じている電池回路モジュールより負極線側にある電池回路モジュールが駆動状態になると、駆動状態の電池回路モジュールと漏電箇所とグランド線の接地箇所とを繋ぐ閉回路が形成され、駆動状態の電池回路モジュールの電圧によって、電流センサで検出される電流が変化する。また、漏電が生じている電池回路モジュールを含んで、正極線側にある電池回路モジュールが駆動状態になっても、駆動状態の電池回路モジュールを含む閉回路が形成されないので、電流センサで検出される電流は変化しない。したがって、駆動状態の電池回路モジュールを順次切り換えることによって、電流センサで検出した電流値に基づいて、漏電している電池回路モジュールを判定することができ、漏電が生じている電池回路モジュールを特定できる。
【0010】
(2)制御装置は、漏電診断モードにおいて、負極線側の電池回路モジュールから電池ストリングの正極線側の電池回路モジュールへ、駆動状態の電池回路モジュールを順次切り換え、電流値が変化しないときの駆動状態の電池回路モジュールが漏電していると判定するようにしてもよい。
【0011】
この構成によれば、負極線に近い電池回路モジュールから、順番に、駆動状態に切り換えるので、電流センサで検出される電流値が変化しないときの駆動状態の電池回路モジュールが、漏電していると判定することができる。
【0012】
(3)制御装置は、漏電診断モードにおいて、電池ストリングの正極線側の電池回路モジュールから負極線側の電池回路モジュールへ、駆動状態の前記電池回路モジュールを順次切り換え、電流値が変化したとき、ひとつ前に駆動状態であった電池回路モジュールが漏電していると判定するようにしてもよい。
【0013】
この構成によれば、正極線に近い電池回路モジュールから、順番に、駆動状態に切り換えるので、電流センサで検出される電流値が変化したとき、ひとつ前に駆動状態であった電池回路モジュールが、漏電していると判定することができる。
【0014】
(4)上記(1)~(3)において、電池ストリングは、負荷に接続されており、制御装置は、漏電診断モードを開始する際に、電池ストリングと負荷の接続を遮断するようにしてもよい。
【0015】
この構成によれば、電池ストリングに接続される負荷が、電力系統に接続されていたり、他の電源システムを備えたりしていても、制御装置は、漏電診断モードを開始する際に、電池ストリングと負荷の接続を遮断するので、確実に、漏電している電池回路モジュールを判定できる。
【0016】
(5)上記(4)において、制御装置は、負荷を含む電気回路において漏電が検出されたとき、漏電診断モードを開始するようにしてもよい。
【0017】
この構成によれば、負荷を含む電気回路において漏電が検出されたとき、電池ストリングに含まれる電池回路モジュールに漏電が生じていれば、漏電している電池回路モジュールを特定することができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、電池ストリングおいて漏電が生じている場合、漏電が生じている電池回路モジュールを特定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示の実施の形態に係る電源システムの一部構成を示す図である。
【
図2】(A)~(D)は、ゲート信号によって制御される電池回路モジュールの動作の説明する図である。
【
図3】本実施の形態における、電源システムの全体の概略構成を示す図である。
【
図4】(A)および(B)は、電池回路モジュールに漏電が生じた場合に形成される、閉回路について説明する図である。
【
図5】(A)および(B)は、電池回路モジュールに漏電が生じた場合に形成される閉回路について説明する図である。
【
図6】制御装置で実行される、漏電診断モードの処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】変形例において、制御装置で実行される、漏電診断モードの処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図中、同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0021】
図1は、本開示の実施の形態に係る電源システム1の一部構成を示す図である。
図1を参照して、電源システム1は、電池ストリングStと、制御装置100とを含む。制御装置100はコンピュータであってよく、たとえばプロセッサと記憶装置と通信I/F(インターフェース)とを備える。記憶装置には、たとえば、プロセッサによって実行されるプログラム、及びプログラムで使用される情報(たとえば、マップ、数式、及び各種パラメータ)が記憶されている。
【0022】
電池ストリングStは、複数の電池回路モジュールM(M1~Mn:nは正の整数)を備える。電池ストリングStに含まれる電池回路モジュールMの数は任意であり、5~50個であってもよいし、100個以上であってもよい。
【0023】
電池回路モジュールMはそれぞれ、電力回路SUBと、カートリッジCgとを含む。カートリッジCgは、電池Bと、監視ユニットBSとを含む。電力回路SUBと電池Bとがそれぞれ接続されることによって、電池Bを含む電池回路モジュールMが形成されている。駆動回路SU(SU1~SUn)は、電池回路モジュールMに含まれるスイッチング素子(後述するSW11及びSW12)を駆動するように構成される。電池Bは、ニッケル水素二次電池、あるいは、リチウムイオン二次電池であってよく、電動車両で使用された二次電池を直列に接続することにより、電池Bを製造してよい。
【0024】
図1に示すように、電池回路モジュールMは、電力回路SUBと、カートリッジCgと、遮断器RB1及びRB2(以下、区別しない場合は「遮断器RB」と称する)とを含む。電力回路SUBとカートリッジCgとは、遮断器RB1及びRB2を介して、互いに接続されている。遮断器RBは、制御装置100からの指令によって、電力回路SUBとカートリッジCgとの接続状態(導通/遮断)を切り替える。遮断器RBは、ユーザが手動でON/OFFできるように構成されてもよく、この構成によって、カートリッジCgが、電力回路SUBに対して着脱可能にされている。
【0025】
カートリッジCgにおいて、監視ユニットBSは、電池Bの状態(たとえば、電圧、電流、及び温度)を検出して、検出結果を制御装置100へ出力するように構成される。
【0026】
電池ストリングStに含まれる電池回路モジュールMは、共通の電線SLによって接続されている。電線SLは、各電池回路モジュールMの出力端子OT1及びOT2を含む。電池回路モジュールMの出力端子OT2が、当該電池回路モジュールMに隣接する電池回路モジュールMの出力端子OT1と接続されることによって、電池ストリングStに含まれる電池回路モジュールM同士が接続されている。
【0027】
電力回路SUBは、第1スイッチング素子11(以下、「SW11」と称する)と、第2スイッチング素子12(以下、「SW12」と称する)と、第1ダイオード13と、第2ダイオード14と、チョークコイル15と、コンデンサ16と、出力端子OT1及びOT2とを備える。SW11及びSW12の各々は、駆動回路SUによって駆動される。この実施の形態に係るSW11、SW12は、それぞれ本開示に係る「第1スイッチ」、「第2スイッチ」の一例に相当する。
【0028】
電力回路SUBの出力端子OT1及びOT2間には、SW11と、コンデンサ16と、電池Bとが並列に接続されている。SW11は、電線SL上に位置し、出力端子OT1と出力端子OT2との接続状態(導通/遮断)を切り替えるように構成される。出力端子OT1は電線BL1を介して電池Bの正極に接続されており、出力端子OT2は電線BL2を介して電池Bの負極に接続されている。電線BL1には、SW12及びチョークコイル15がさらに設けられている。電池回路モジュールMにおいては、電池Bと直列に接続されたSW12がON状態(接続状態)であり、かつ、電池Bと並列に接続されたSW11がOFF状態(遮断状態)であるときに、出力端子OT1及びOT2間に電池Bの電圧が印加される。
【0029】
出力端子OT1,OT2と電池Bとの間には、電線BL1及び電線BL2の各々に接続されたコンデンサ16が設けられている。SW11及びSW12の各々は、たとえばFET(電界効果トランジスタ)である。第1ダイオード13、第2ダイオード14は、それぞれSW11、SW12に対して並列に接続されており、還流ダイオードとして機能する。なお、SW11及びSW12の各々は、FETに限られず、FET以外のスイッチング素子であってもよい。
【0030】
制御装置100は、ゲート信号を生成する。駆動回路SU(SU1~SUn)は、電池回路モジュールM(M1~Mn)ごとに設けられており、ゲート信号に従ってSW11及びSW12を駆動するGD(ゲートドライバ)21と、ゲート信号を遅延させる遅延回路22とを含む。電池回路モジュールMに含まれるSW11及びSW12の各々は、ゲート信号に従ってON/OFF制御される。
【0031】
図2は、ゲート信号によって制御される電池回路モジュールMの動作の説明する図である。
図2(A)は、電池回路モジュールMの動作の一例を示すタイムチャートであり、本実施の形態では、SW11及びSW12を駆動するためのゲート信号として、矩形波信号を採用する。
図2(A)中に示されるゲート信号の「Low」、「High」は、それぞれゲート信号(矩形波信号)のLレベル、Hレベルを意味する。また、「出力電圧」は、出力端子OT1及びOT2間に出力される電圧を意味する。電池回路モジュールMの初期状態では、駆動回路SUにゲート信号が入力されず(ゲート信号=Lレベル)、SW11、SW12がそれぞれON状態、OFF状態になっている。SW11及びSW12は、ゲート信号の立ち上がり/立ち下がりに応じて状態(ON/OFF)が切り替わる。制御装置100は、ゲート信号を用いてPWM制御を行なう。
【0032】
駆動回路SUにゲート信号が入力されると、GD21が、入力されたゲート信号に従ってSW11及びSW12を駆動する。
図2に示す例では、タイミングt1で、ゲート信号がLレベルからHレベルに立ち上がり、ゲート信号の立ち上がりと同時にSW11がON状態からOFF状態に切り替わる。そして、ゲート信号の立ち上がりから所定の時間(デッドタイムdt1)だけ遅れたタイミングt2で、SW12がOFF状態からON状態に切り替わる。これにより、電池回路モジュールMが駆動状態(接続状態)になり、
図2(B)に示すように、SW11がOFF状態かつSW12がON状態になることで、出力端子OT1及びOT2間に電池Bの電圧が印加される。なお、本開示において、「SW11がOFF状態かつSW12がON状態」であり、電池回路モジュールMが接続状態であることを、「駆動状態」と称する。
【0033】
図2(A)を参照して、タイミングt3で、ゲート信号がHレベルからLレベルに立ち下がると、ゲート信号の立ち下がりと同時にSW12がON状態からOFF状態に切り替わる。これにより、電池回路モジュールMがスルー状態になる。スルー状態の電池回路モジュールMでは、SW12がOFF状態になることで、出力端子OT1及びOT2間に電池Bの電圧が印加されなくなる。その後、ゲート信号の立ち下がりから所定の時間(デッドタイムdt2)だけ遅れたタイミングt4で、SW11がOFF状態からON状態に切り替わる。なお、デッドタイムdt1とデッドタイムdt2とは互いに同じであっても異なってもよい。
【0034】
デッドタイムdt1、dt2においては、
図2(C)に示すように、SW11とSW12の両方がOFF状態になる。これにより、SW11及びSW12が同時にON状態になること(電池回路モジュールMが短絡状態になること)が抑制される。
【0035】
デッドタイムdt2の終了(t4)から電池回路モジュールMが駆動状態になるまでの期間を「停止期間」と称すると、停止期間では、
図2(D)に示すように、初期状態と同様に、SW11がON状態かつSW12がOFF状態になる。なお、本開示において、「SW11がON状態かつSW12がOFF状態」であり、電池回路モジュールMが非駆動状態であることを、「スルー状態」とも称する。
【0036】
ゲート信号は、遅延回路22によって、所定の遅延時間Tdずつ遅延されて、上流の駆動回路SUから下流の駆動回路SUへ伝達される。そして、制御装置100は、最も下流の駆動回路SU(SUn)の遅延回路22からゲート信号を受けると、新たなゲート信号を、最も上流側の駆動回路SU(SU0)に出力する。ゲート信号の周期Tは、電池ストリングStに含まれる遅延回路22の遅延時間Tdの合計であり、電池ストリングStに含まれるすべての電池回路モジュールMの数(電池回路モジュールMの総数)をNoとすると、周期Tは、「T=Td×No」として設定される。そして、ゲート信号のデューティ比(Hレベルの時間:オン時間Ton)を制御することにより、駆動状態の電池回路モジュールMの数(同時に駆動状態になる電池回路モジュールMの数)を調整することができる。
【0037】
電池ストリングStに含まれる電池回路モジュールMを、上述のように制御することにより、駆動状態の電池回路モジュールMの数(同時に駆動状態になる電池回路モジュールMの数)を調整することができる。これにより、電池ストリングStの正極端子25と負極端子26との間の電圧(出力電圧)を制御することができる。これにより、電池ストリングStは、0[V]から、電池ストリングStに含まれる各電池B(カートリッジCg)の電圧の総和までの電圧を出力可能とされている。
【0038】
図3は、本実施の形態における、電源システム1の全体の概略構成を示す図である。電池ストリングStの正極端子25は、正極線PLに接続され、負極端子26は、負極線NLに接続される。正極線PLと負極線NLとの間には、平滑コンデンサ30が設けられ、正極線PLおよび負極線NLは、リレー40を介して負荷に接続される。なお、電池回路モジュールMnおよび駆動回路SUnにおいて、符号nは、最も正極線PL側(上流側)が「1」(電池回路モジュールM1、駆動回路SU1)であり、最も負極線NL側(下流側)が「n」(電池回路モジュールMn,駆動回路SUn)である。
【0039】
負極線NLは、グランド線GLを介して、電源システム1の金属製の筐体に接地されている。グランド線GLには、電流センサ50、第3スイッチ60、および、制限抵抗70が設けられている。第3スイッチ60がON状態(閉成)されることにより、グランド線GLが導通する。なお、電流センサ50、第3スイッチ60、および、制限抵抗70は、直列に配列されていれば、その位置は任意であってよい。
【0040】
電源システム1および負荷を含む電気回路には、漏電検出器200が設けられている。漏電検出器200は、電気回路に漏電(地絡)が生じると、制御装置100へ漏電信号を出力する。
【0041】
図4は、電池回路モジュールMに漏電が生じた場合に形成される、閉回路について説明する図である。
図4(A)および(B)では、電池回路モジュールMn-2の負極側で漏電(地絡)が生じている状態を示している。第3スイッチ60をON状態にする。そして、各駆動回路SUのGD21によって、最も負極線NLに近い電池回路モジュールMnを駆動状態(SW11がOFF状態かつSW12がON状態)とし、他の電池回路モジュールM(M1~Mn-1)をスルー状態(SW11がON状態かつSW12がOFF状態)とすると、
図4(A)の一点鎖線で示すように、グランド線GLの接地箇所と電池回路モジュールMn-2の漏電箇所(地絡箇所)とを繋ぐ閉回路が形成される。このため、電流センサ50によって電流が検出され、電流値が変化する。次に、電池回路モジュールMn-1を駆動状態とし、他の電池回路モジュールM(M1~Mn-2、Mn)をスルー状態とした場合にも、同様に、閉回路が形成され、電流センサ50によって電流が検出され、電流値が変化する。
【0042】
電池回路モジュールMn-2を駆動状態とし、他の電池回路モジュールM(M1~Mn-3、Mn-1、Mn)をスルー状態にすると、
図4(B)に示すように、電流センサ50を通る閉回路は形成されず、電流センサ50によって電流は検出されない(電流値はゼロから変化しない)。また、電池回路モジュールMn-2よりも正極線PL側(上流側)の電池回路モジュールM(M1~Mn-3)のいずれかひとつを駆動状態とし、他の電池回路モジュールMをスルー状態とした場合も、同様に、電流センサ50を通る閉回路は形成されず、電流センサ50によって電流は検出されず、電流値は変化しない。
【0043】
したがって、負極線NL側(下流側)の電池回路モジュールMnから正極線PL側の電池回路モジュールMへ、駆動状態の電池回路モジュールMを順次切り換え、電流センサ50の電流値が変化しなかったときの(電流値がゼロから変化しないときの)電池回路モジュールMに漏電が生じていると特定することができる。
【0044】
図5は、電池回路モジュールMに漏電が生じた場合に形成される閉回路について説明する図である。
図5(A)および(B)では、電池回路モジュールMn-2の正極側で漏電(地絡)が生じている状態を示している。第3スイッチ60をON状態にする。そして、各駆動回路SUのGD21によって、すべての電池回路モジュールMをスルー状態にすると、
図5(A)の一点鎖線で示すように、グランド線GLの接地箇所と電池回路モジュールMn-2の漏電箇所(地絡箇所)とを繋ぐ閉回路が形成される。このため、電流センサ50によって、漏電箇所の電圧(電位)に相当する電流が検出される。最も負極線NLに近い電池回路モジュールMnを駆動状態とし、他の電池回路モジュールM(M1~Mn-1)をスルー状態に維持すると、
図5(B)の一点鎖線で示すように、駆動状態の電池回路モジュールMnを含む閉回路が形成される。このため、駆動状態の電池回路モジュールMnの電圧によって、電流センサ50で検出される電流値が変化する。次に、電池回路モジュールMn-1を駆動状態とし、他の電池回路モジュールM(M1~Mn-2、Mn)をスルー状態とした場合にも、同様に、閉回路が形成され、電流センサ50検出される電流値が変化する。
【0045】
漏電箇所が電池回路モジュールMn-2の正極側であるので、電池回路モジュールMn-2を駆動状態とし、他の電池回路モジュールM(M1~Mn-3、Mn-1、Mn)をスルー状態しても、電池回路モジュールMn-2の電圧は、閉回路に印加されず、電流センサ50で検出される電流値は変化しない。また、電池回路モジュールMn-2よりも正極線PL側(上流側)の電池回路モジュールM(M1~Mn-3)のいずれかひとつを駆動状態とし、他の電池回路モジュールMをスルー状態とした場合も、同様である。
【0046】
したがって、負極線NL側(下流側)の電池回路モジュールMnから正極線PL側の電池回路モジュールMへ、駆動状態の電池回路モジュールMを順次切り換え、電流センサ50で電流値が変化しなかったときの電池回路モジュールMに漏電が生じていると特定することができる。
【0047】
図6は、制御装置100で実行される、漏電診断モードの処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、漏電検出器200で漏電が検出されたとき、あるいは、電源システム1の起動時におけるイニシャルチェックの際に、実行される。
【0048】
漏電検出器200で漏電が検出されたとき、あるいは、イニシャルチェックの際に、この処理が開始されると、まず、ステップ(以下、ステップを「S」と略す)10において、リレー40を遮断するとともに第3スイッチ60をON状態(閉成)したあと、S11へ進み、mにnを設定する。続く、S12では、電池回路モジュールMm(最初にS12が処理されるときは、m=nであるので、電池回路モジュールMn)を駆動状態にするとともに、他の電池回路モジュールMをスルー状態したあと、S13へ進む。
【0049】
S13では、電流センサ50で検出した電流値が変化したか否かを判定する。電流値の変化があると、S13で肯定判定されS14へ進む。S14では、mをm-1に設定し、S15へ進む。S15では、mが0であるか否かを判定する。mが0でない場合(m≠0)、S15で否定判定され、S12へ戻る。mが0である場合(m=0)、S15で肯定判定され、今回の処理を終了する。
【0050】
S15に続くS12では、電池回路モジュールMm(最初のS15で否定判定されたときは、m=n-1であるので、電池回路モジュールMn-1)を駆動状態にするとともに、他の電池回路モジュールMをスルー状態としたあと、S13へ進む。
【0051】
S13において、電流値の変化がないと、否定判定されS16へ進む。S16では、電池回路モジュールMmに漏電が生じていると判定し、今回の処理を終了する。たとえば、S12において、電池回路モジュールMn-2が駆動状態とされ、S13で否定判定されたときには、電池回路モジュールMn-2に漏電が生じていると判定する。
【0052】
本実施の形態によれば、制御装置100で漏電診断モードの処理が開始されると、リレー40を遮断するとともに第3スイッチ60をON状態にする。そして、負極線NL側に近い電池回路モジュールM(Mn)から正極線PL側の電池回路モジュールMへ、駆動状態の電池回路モジュールMを順次切り換え(他の電池回路モジュールMは、スルー状態とする)、電流センサ50で検出された電流値の変化がないときの駆動状態の電池回路モジュールMが漏電していると判定する。これにより、電池ストリングStおいて漏電が生じている場合、漏電が生じている電池回路モジュールMを特定することができる。
【0053】
(変形例)
図7は、変形例において、制御装置100で実行される、漏電診断モードの処理を示すフローチャートである。このフローチャートも、漏電検出器200で漏電が検出されたとき、あるいは、電源システム1のイニシャルチェックの際に、実行される。S20では、S10と同様に、リレー40を遮断するとともに第3スイッチ60をON状態(閉成)する。続くS21では、mに1を設定する。S22では、電池回路モジュールMm(最初にS22が処理されるときは、m=1であるので、電池回路モジュールM1)を駆動状態にするとともに、他の電池回路モジュールMをスルー状態したあと、S23へ進む。
【0054】
S23では、電流センサ50で検出した電流値が変化したか否かを判定する。電流値が変化しない場合には、S23で否定判定されS24へ進む。S24では、mをm+1に設定し、S25へ進む。S25では、mがnより大きいか否か否かを判定する。mがnより大きくない場合(m≦n)、S25で否定判定され、S22へ戻る。mがnより大きい場合(m>n)、S25で肯定判定され、今回の処理を終了する。
【0055】
S25に続くS22では、電池回路モジュールMm(最初のS25で否定判定されたときは、m=2であるので、電池回路モジュールM2)を駆動状態にするとともに、他の電池回路モジュールMをスルー状態としたあと、S23へ進む。
【0056】
電流センサ50で検出した電流値が変化し、S23において肯定判定されると、S26へ進む。S26では、電池回路モジュールMm-1に漏電が生じていると判定し、今回の処理を終了する。たとえば、S22において、電池回路モジュールMn-1が駆動状態とされ、S23で肯定判定されたときには、電池回路モジュールMn-2に漏電が生じていると判定する。
【0057】
この変形例によれば、制御装置100で漏電診断モードの処理が開始されると、リレー40を遮断するとともに第3スイッチ60をON状態にする。そして、正極線PL側に近い電池回路モジュールM(M1)から負極線NL側の電池回路モジュールMへ、駆動状態の電池回路モジュールMを順次切り換え(他の電池回路モジュールMは、スルー状態とする)、電流センサ50で検出した電流値に変化があったとき、ひとつ前に駆動状態であった電池回路モジュールMが漏電していると判定する。これにより、電池ストリングStおいて漏電が生じている場合、漏電が生じている電池回路モジュールMを特定することができる。なお、変形例では、電池回路モジュールMnにおいて漏電が生じている場合には、漏電している電池回路モジュールMを特定できない。この場合は、上記実施の形態と組み合わせて用いることが好ましい。
【0058】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0059】
1 電源システム、11 第1スイッチング素子(SW)、12 第2スイッチング素子(SW)、21 ゲートドライバ(GD)、22 遅延回路、25 正極端子、26 負極端子、40 リレー、50 電流センサ、60 第3スイッチ、70 制限抵抗、100 制御装置、200 漏電検出器、B 電池、Cg カートリッジ、GL グランド線、M 電池回路モジュール、NL 負極線、OT1,OT2 出力端子、PL 正極線、St 電池ストリング、SU 駆動回路、SUB 電力回路。